説明

車両編成用の車両ネットワークシステムおよび車両ネットワーク制御装置

【課題】ネットワーク管理の負担を減らして帯域を有効に使い、車両編成情報生成に要する時間を短縮しながら任意の車両で車両編成情報を得られる車両ネットワークシステムおよび車両ネットワーク制御装置を提供する。
【解決手段】車両ネットワーク制御装置が、各車両の1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、各車両の2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された前記車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、車両ネットワークシステムが前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数車両からなる車両編成で用いられる車両ネットワークシステムおよび車両ネットワークシステムを構成する車両ネットワーク制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両編成を構成する各車両に搭載された様々な装置を連携して有機的に作動させるために、これらの装置を相互に接続して監視・制御するために車両ネットワークシステムが必要である。そして、この車両ネットワークシステムのネットワーク上の情報の流れを制御するために車両ネットワーク制御装置が必要になる。各車両に搭載された様々な装置の状態や運転状況などの車両に係る情報(以後、「車両情報」という。)を収集し監視・制御を行なうためのネットワーク技術として標準化されて世の中で広く使われているローカルエリアネットワークすなわちLANの技術が用いられることが多い。
【0003】
LANの方式としては、スター型、バス型、またはスター型とバス型とリング型とのハイブリッド型、等を挙げることができる。直列に車両が接続される例えば鉄道車両の編成では、LANを構成する配線の簡易化の観点からは、バス方式が望ましいと考えられる。バス構造としては、イーサネット(登録商標)バス、GP−IBバス、RS232Cバス、S100バス、VLバス、ISAバス、EISAバス、PCIバス、またはセントロニクスバス、等のバス構造が候補となる。またバス構造を構成する伝送媒体としては、光ファイバーケーブル、同軸ケーブル、ツイストペア線、等を用いることができる。
【0004】
上記のLAN方式の中で、接続している端末が増えても十分な応答速度を得られる鉄道車両用の情報伝送システムの通信プロトコルとして、トークン・リング(IEEE(米国電気電子技術者協会)の802.5委員会で規格化)を用いてデータの伝送が実行される鉄道車両用伝送システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
トークンリングは、トークンを得た送信元がネットワークを占有するので、輻輳が起こらないという利点があるが、送信元へデータを戻すことで動作が完結するなど、ネットワーク上のデータ伝送の際のオーバーヘッドが大きく、カメラデータなどの情報量が多いアプリケーションでは帯域が不足するようになってきた。そこでカメラデータを送るために、LANケーブルの他に同軸線路を用意することも考えられるが、同軸線路のコスト負担の他に線材の重量が増えるという問題もあって車両の軽量化を目指す方向に逆行することとなる。従って、車両ネットワークシステムのネットワーク構成を検討するに際しては上記の問題点を意識する必要がある。
【0006】
次に、車両ネットワークシステムでは各車両に搭載された様々な装置を特定するために車両編成情報が重要である。複数車両からなる車両編成の一例として軌道上を走行する列車には、列車全体の様子を監視する監視装置が備えられており、列車を構成する各車両の状況を先頭車両等に配置した監視制御装置で集中監視するようになっている。たとえば、両端の先頭車両には監視制御装置を、各中間車両には監視制御装置への情報を送る監視端末器をそれぞれ設置し、これらをネットワークケーブルで接続することで、先頭車両の監視制御装置に接続された表示装置に各車両の状況が表示することが行われていた。
【0007】
この監視装置は、ドアが正常に閉鎖しているか否かなどを各車両に搭載した監視端末器で検知し、その情報をネットワークを通じて先頭車両の監視制御装置に集約し、これをモニタ表示装置の表示画面に表示するようになっている。
【0008】
このような装置で各車両の状況を集中監視するためには、当該列車を編成している複数の車両がどのような並び順で連結されているか(並び順)を認識すること、すなわち車両編成情報が極めて重要である。すなわち、各車両からその車両の車両番号を付した情報が転送されてきても、その車両番号の車両が実際の編成内でどの車両に相当するかを認識する必要があるからである。
【0009】
従来、車両編成を認識する仕組みとして、監視制御装置や監視端末器などの装置をネットワークに順次カスケード接続し、それらネットワークの途中の監視端末器がネットワークのケーブルをリレー回路によって順番に開閉することで監視端末器の並び順を認識するものがあった。
【0010】
また、各車両に設備される監視端末器に、番号設定用のデジタルスイッチを設け、各車両のデジタルスイッチを実際の車両の並び順に合致した番号に予め手動で設定しておくものがある。
【0011】
さらに並んだ車両の向き情報は、たとえば、監視制御装置、監視端末器に”方向スイッチ”というものを設け、車両の接続向きが変わるときは、このスイッチの設定を手動で変更することで、車両の接続向きが変わったことを監視制御装置の側で認識することも行なわれていた。
【0012】
ここで車両の並び順や車両の接続方向を手動でスイッチ設定するものでは、スイッチを手動で設定するための作業工数が嵩むほか、人為的な設定誤りの生じる可能性がある。さらに、監視端末器が故障により、新たなものに振り替える場合や、車両自体を他のものに振り替える場合に、各スイッチを再度、適切な値に設定し直さなければならないという問題があった。
【0013】
上記問題点を解決するための車両ネットワーク制御装置の例として、車両ネットワークシステムで使用される情報通信用の通信回線と引き通し信号線を別系統にした車両編成認識装置が報告されている(例えば、特許文献2参照)。この中では、先頭車両に搭載されたモニタ制御装置からの問いかけに、各車両のモニタ端末器が返信する形で、順次配列番号を取得するように構成されている。具体的には、先頭車両などに配置されたモニタ制御装置から通信回線を通じて車号設定開始指令を送信する。各モニタ端末器自端末の有する中継部は車両の両端を識別するために予め定める車両の一方の端を意味する1端と、車両の他方の端を意味する2端間の中継をしない非中継状態に設定する。この状態で、モニタ制御装置は引き通し線に確認信号を送出する。この確認信号を始めて受信したモニタ端末器は所定の配列番号割付要求を通信回線を介して送出する。最初は、先頭車両に搭載されたモニタ端末器のみが確認信号を受信し、配列番号割付要求を送出することになる。モニタ制御装置は、モニタ端末器からの配列番号割付要求を受信するたびに番号を順次変えて通信回線を通じて送信する。配列番号を受信したモニタ端末器は、1端側と2端側間のデータ転送可能な中継状態に切り替える。このように順次、引き通し線の中継状態を切り替えて車両の並び順を認識する。
【0014】
この方式では、監視制御装置が置かれた先頭車両からだけ、全車両の車両情報を見ることができることになり車両の保守管理で必要になる中間車両における車両情報の取得の柔軟性に欠けるという問題点がある。さらに、従来のネットワーク構成では、ネットワークを全体として管理するために、ネットワーク管理のオーバーヘッドが大きく、物理層で実現されるネットワーク帯域を有効に使えないという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−228403号公報
【特許文献2】特開2000−302039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1の鉄道車両用情報伝送システムは営業運転中の多様な車両編成の変更(編成車両の併合または分割)の際の車両編成ネットワークの再構成を自動的に行うものであるが、トークン・パッシングを用いているので、車両編成の変更があるとノードアドレスが重複しないようにアドレスを再設定したノード管理テーブルを車両間で順次転送して、各車両にノード管理テーブルをネットワーク全体で再分配する必要がある。また、トークンにより発信権を与えられるので、ネットワーク全体でのトークンの管理が必要になりネットワークの管理負担が大きいという問題点がある。
【0017】
また、特許文献2の車両編成識別装置は、車両編成情報を自動で生成するものであるが、情報通信用の通信回線と引き通し信号線を別系統にして、先頭車両からの順次問い合わせに応えるという方式(ポーリング方式)なので、システム構成が複雑であるとともに車両編成情報を生成できるのが先頭車両などの予め定めた特定車両に限られ、保守管理する際に中間車両での情報取得および車載装置の制御の要求に応えることが難しいという問題点がある。
【0018】
よって本発明は、上述した従来の状況に鑑み、ネットワーク管理の負担を減らして物理層で確保された帯域を有効に情報伝送に使い、車両編成情報生成に要する時間を短縮しながら任意の車両で車両編成情報を得られる車両ネットワークシステムおよび車両ネットワーク制御装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載された車両ネットワークシステムは、複数車両で構成される車両編成の各車両に搭載された、複数の端末装置およびそれらの複数の端末装置が接続される車両ネットワーク制御装置を備え、前記車両ネットワーク制御装置が前記端末装置を監視制御するためのネットワークを制御する車両ネットワークシステムであって、前記車両ネットワーク制御装置が、前記各車両の予め定めた1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、前記各車両の予め定めた2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御することを特徴としている。ここで車両ネットワークシステムは、車両編成を構成する各車両に搭載された、複数のドア、エアコンなどの端末装置とこれらの端末装置が接続された各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置とを含んで車両編成全体を覆うものである。
【0020】
請求項1に記載された車両ネットワーク制御装置によれば、自らに接続された複数の端末装置から取得した装置情報を含む自車両に係る自車両情報および第1通信手段又は第2通信手段を介して隣接車両の車両ネットワーク制御装置から取得した前記隣接車両に係る隣接車両情報を自隣接車両情報として、車両情報取得蓄積手段に蓄積するので、各車両の車両情報取得蓄積手段には、自車両の自車両情報と両隣接車両の隣接車両情報の合わせて3両分(端の車両の場合は2両分)の車両情報が自隣接車両情報として蓄積されている。また、隣接車両の車両情報取得蓄積手段に蓄積された3両分(端の車両の場合は2両分)の自隣接車両情報を収集して、整理することで、車両の配列状態を表す車両編成情報を生成することができる。ここで、3両分の車両情報は、1端側と2端側が明確に判別されているので3両編成の中での車両の配列が明確になっている。例えば、車両編成の全体がイ、ロ、ハ、ニ、ホという車両の配列の場合、自隣接車両情報として、車両イは車両イ、ロ、車両ロは車両イ、ロ、ハ、車両ハは車両ロ、ハ、ニ、車両ニは車両ハ、ニ、ホ、車両ホは車両ニ、ホに掛かる自隣接車両情報を持つ。そうすると、車両ハは、隣接車両ロから、車両イ、ロ、ハに掛かる自隣接車両情報を取得し、車両ニから車両ハ、ニ、ホに掛かる自隣接車両を取得することになる。このように両端の隣接車両から自隣接車両情報を取得することで、自車両と隣接車両の自隣接車両情報に基づいて、イ、ロ、ハ、ニ、ホという車両編成であることが分かるので、ネットワークシステムは全車両の自隣接車両情報に基いて、各車両に搭載された複数の端末装置を特定して監視制御することができる。なお、自隣接車両情報は、先頭車両以外の中間車両では3両分の車両情報が含まれるので、車両ネットワークシステムとしては、3両毎に自隣接車両情報に集めることで、情報収集の高速化が図れる。また、車両の配列を知るために一部車両の情報を重複して収集したい場合は、先頭車両から数えて、偶数番の車両の自隣接車両情報を収集しても良い。
【0021】
請求項2に記載された車両ネットワーク制御装置は、複数車両で構成される車両編成の各車両に搭載された複数の端末装置を監視制御するための車両ネットワークシステムを前記複数の端末装置とともに構成し、前記車両ネットワークシステムのネットワークを制御する車両ネットワーク制御装置であって、前記各車両の予め定めた1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、前記各車両の予め定めた2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御する車両ネットワークシステムのネットワークを制御することを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載された車両ネットワーク制御装置によれば、複数車両で構成される車両編成の各車両に搭載された複数の端末装置を監視制御するための車両ネットワークシステムを前記複数の端末装置とともに構成し、前記車両ネットワークシステムのネットワークを制御する車両ネットワーク制御装置であって、前記各車両の予め定めた1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、前記各車両の予め定めた2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御する車両ネットワークシステムのネットワークを制御するので、車両編成全体を覆う車両ネットワークシステムが、各車両に備えられた車両ネットワーク制御装置による並行処理、分散処理により蓄積された車両情報に基いて動作することになる。
【0023】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載され車両ネットワーク制御装置において、前記各車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第3の通信手段を備え、前記車両情報取得蓄積手段が、前記各車両に搭載された前記車両ネットワーク制御装置と前記第3の通信手段を介して交信して、当該車両ネットワーク制御装置から当該車両の前記自隣接車両情報を取得して前記車両情報取得蓄積手段に蓄積し、蓄積された前記各車両からの自隣接車両情報が相互に矛盾の無い様に各車両の並び順を決めることで車両編成を構成する各車両の接続関係を表す車両編成情報を生成し、該車両編成情報および各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置の車両情報取得蓄積手段に蓄積された前記自隣接車両情報に基いて前記各車両に搭載された端末装置を監視制御する車両ネットワークシステムのネットワークを制御することを特徴としている。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載された車両ネットワーク制御装置が、前記各車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第3の通信手段を備えていて、各車両から当該車両の前記自隣接車両情報を取得して前記車両情報取得蓄積手段に蓄積し、蓄積された前記各車両からの自隣接車両情報が相互に矛盾の無い様に各車両の並び順を決めることで車両編成を構成する各車両の接続関係を表す車両編成情報を生成するので、編成の全車両の相互の関係を把握することができる。そして、該車両編成情報に基いて前記各車両に搭載された端末装置が監視制御されることになる。ここで、第3の通信手段を介することで、各車両の車両ネットワーク制御装置は隣接車両を越えて他の車両の車両ネットワーク制御装置と車両情報を交換する。その結果、各車両において、全車両の車両情報が各車両の車両情報蓄積手段に蓄積されることとなる。集められた各車両の自隣接車両情報は、全て、2両又は3両分の情報が一体となっており、並び情報を含んだものになっている。例えば、車両がイ、ロ、ハ、ニ、ホの順番に並んでいるとして、車両ハは、車両ロから、イ、ロ、ハ又はハ、ロ、イの並び情報を取得し、自らの有するロ、ハ、ニまたはニ、ハ、ロという並び情報を合わせると、並び順としては、イ、ロ、ハ、ニまたは、ハ、ニ、ロ、イであることが容易に分かる。さらに、車両ニからの情報を合わせることで、車両の配列はイ、ロ、ハ、ニ、ホ又は、ホ、ニ、ハ、ロ、イという並び順であることも容易に分かる。従って、並び情報を矛盾無く並べることで第3の通信手段の交信範囲において容易に車両編成情報を生成することができる。
【0025】
請求項4に記載された発明は、請求項2または3に記載された車両ネットワーク制御装置が、前記通信手段を介した他の車両の車両ネットワーク制御装置との交信において、情報を送信する際に使用する通信手段を識別する付加情報を含めて送信し、情報を受信する際に受信した情報に含まれる付加情報に応じて所定の処理を行うことを特徴としている。付加情報は主となる情報の中に含めても良いし、情報を主データとして、それをパケット化する際の主情報とは異なるパケットに入れた付加情報としてもよい。パケットを主と副に分けた場合は、受信された主となる情報は付加情報を判別してからそれ以後の処理が行われる。
【0026】
請求項4に記載された発明によれば、付加情報として、例えば、車両の1端部の第1通信手段から送信される情報に符号Aを付加し、車両の2端部の第2通信手段から送信される情報に符号Cを付加すると、これらの情報を受信した際に符号Aが付加された情報は、符号A用に用意された処理が行われ、符号Cが付加された情報は、符号C用に用意された処理が行われることになる。この処理の一例として、送信と受信の符号が同一の場合は、情報を受け付けて以後の処理を行うが、符号が異なる場合は情報を破棄してもよい。また、初期設定あるいは処理プロセスのリセットで第1通信手段から送信される情報に符号Aを付加し、第2通信手段から送信される情報に符号Cを付加するように決めておくと、初期設定あるいは処理プロセスのリセット後に受信した符号を調べることで自車両の各端部に隣接する隣接車両の端部の種類が分かる。
【0027】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された車両ネットワーク制御装置において、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段からの送信情報に付加する付加情報と、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段が受信する情報に付加された付加情報のそれぞれ同異を判別して、1端側および前記第2端側における通信手段間の付加情報に係る同異情報を生成し、前記同異情報に基いて自車両と隣接車両の向きの関係を判別して車両向き情報を生成して前記車両向き情報を含む自隣接車両情報として前記車両情報取得蓄積手段に蓄積することを特徴としている。
【0028】
請求項5に記載された発明によれば、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段からの送信情報に付加する付加情報と、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段が受信する情報に付加された付加情報のそれぞれ同異を判別して、1端側および前記第2端側における通信手段間の付加情報に係る同異情報を生成し、前記同異情報に基いて自車両と隣接車両の向きの関係を判別して車両向き情報を生成して前記車両向き情報を含む自隣接車両情報として前記車両情報取得蓄積手段に蓄積するので、車両編成情報に、各車両の並びだけでなく各車両の向きも含まれることなる。そうすると、車両の両側にあるドアのように車両の向きで操作対象が決まる端末装置の監視制御を的確に行うことができる。
【0029】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載の車両ネットワーク制御装置において、複数の前記通信手段を有する通信手段切換装置と前記通信手段の付加情報に係る処理を行う判定制御部とを備え、前記同異情報が付加情報の同一を示すときは前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得し、前記同異情報が付加情報の違いを示すときは前記判定制御部が予め定められた規則に基いて前記付加情報について、車両内では異ならせ、前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴とする。上記の通信手段切換装置は、例えば市販されているL2スイッチなどで実現することができる。L2スイッチはその制御端子からの信号に基いて、ポート間のデータの転送先を決めるフォーワーディング データ ベース(FDB)の内容を書き換えて、スイッチの各ポート(通信手段の一部に相当する)間の転送経路を制御する。
【0030】
請求項6に記載された発明によれば、各車両の1端側と2端側での情報が混信しないように同一車両内では、付加情報を異ならせる。また、隣接車両との関係では、同一付加情報での情報交換を許す設定にした場合は、隣接した車両の通信手段の付加情報を同一となるように制御する。なお、初期設定では、1端側と2端側の付加情報が異なるようにしておくので、受信した付加情報を調べることで、隣接車両の端部の種類を判別することができる。ここで判定制御部はCPUとメモリで構成されるものでも、LSI化されたものでもよい。ネットワークを介した情報交換の制御は、通信モデルが7階層に分けてモデル化されている標準ネットワークアーキテクチャモデルであるOSI参照モデルの各層で行うことができる。L2スイッチは第1層である物理層の上位にある第2層のデータリンク層でのデータ転送を制御するものである。
【0031】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載の車両ネットワーク制御装置において、前記付加情報の再設定について、車両編成の1車両を予め定めた方法で選択して主車両として、前記主車両となった車両以外の車両を従車両として、主車両となった車両の隣接車両から順番に、各従車両内では付加情報を異ならせ、各従車両内の前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記各車両の前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴とする。ここで、主車両は通常、列車編成の先頭又は最後尾の車両を選択して順次再設定を行う。
【0032】
請求項7に記載された発明によれば、請求項6に記載の車両ネットワーク制御装置において、前記付加情報の再設定について、車両編成の1車両を予め定めた方法で選択して主車両として、前記主車両となった車両以外の車両を従車両として、主車両となった車両の隣接車両から順番に、各従車両内では付加情報を異ならせ、各従車両内の前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記各車両の前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得するので、車両内では付加情報の重複が無くなり、隣接車両との関係では付加情報が同一となるような付加情報の再設定を簡便に行うことができる。
【0033】
請求項8に記載された発明は、請求項2又は請求項3に記載の車両ネットワーク制御装置において、前記車両編成情報を表示するとともに前記各車両への制御情報が入力される監視・制御装置が接続される監視・制御装置接続部を有し、該監視・制御装置接続部に接続された前記監視・制御装置を介し入力された前記制御情報に基いて、前記自車両の前記車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報の表示と他車両の車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報の表示を行うとともに前記自車両および前記他車両に搭載された端末装置の制御を行なうための情報を出力することを特徴としている。
【0034】
請求項8に記載された発明によれば、各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置が監視・制御装置接続部を有しているので、各車両において、監視・制御装置(モニタなど)を接続すること可能になり、各車両において、全車両の状態を監視し、また、必要な制御情報を送ることができる。
【0035】
請求項9に記載された発明は、請求項2又は請求項3に記載の車両ネットワーク制御装置において、車両編成全体を覆う編成内ネットワークと車両内を覆う車両内ネットワークとの間を接続するネットワークアドレス変換装置を有し、前記車両ネットワーク制御装置は、車両毎に異なる文字若しくは数字又は文字及び数字からなる車両識別符号を有する車両識別符号設定部から車両識別符号を入手し、該車両識別符号に基いて編成内ネットワーク用インタネットプロトコル(IP)アドレスを生成し、複数の前記通信手段および前記ネットワークアドレス変換装置に前記生成された編成内ネットワーク用IPアドレスを付与するとともに、前記車両ネットワークに接続された各車両に搭載される複数の端末装置の端末装置毎の予め定められた共通のIPアドレスと所定の前記編成内ネットワーク用のIPアドレスとを相互変換するための変換表を前記ネットワークアドレス変換装置に設定することを特徴としている。車両ネットワークシステムは大きく分けると、車両編成全体を覆う部分と各車両内を覆う部分に分けて考えることができる。その際に、車両内で使われるIPアドレスは、車両外へ流出させないことを前提とすれば、各車両の端末装置において、共通にすることができる。この共通のIPアドレスを、各車両に固有の車両識別符号に基いて、生成することで、各車両の各端末装置を車両編成全体の中で一意に決めることができる。
【0036】
請求項9に記載された発明によれば、各車両で共通のIPアドレスを付与された端末装置のIPアドレスがネットワークアドレス変換装置を介して編成内ネットワーク内で使用可能な固有の重複することの無いIPアドレスに変換されて編成内ネットワークを流通する。また、端末装置が搭載された車両外から編成ネットワークを通じて特定の端末装置へデータ送られる場合は、その端末装置固有のIPアドレスが使われ、そのIPアドレスは当該車両内のネットワークアドレス変換装置により、各車両共通の端末装置固有のIPアドレスに変換される。
【発明の効果】
【0037】
請求項1に記載された発明において、各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置は、各車両の車両情報蓄積手段に蓄積された中間車両では3両分、端の車両では2両分の自隣接車両情報に基いて車両の配列状態を表す車両編成情報を生成することができる。ここで、3両分の車両情報は、1端側と2端側が明確に判別されているので3両編成の中での車両の配列が明確になっている。さらに各車両から収集した車両情報を照合することで容易に、車両編成情報を生成し車両編成における自車両の位置を把握することができるので本発明の車両ネットワークシステムにおいては、従来のように車両編成情報を集めるための特別な配線が不要になり、ネットワーク構築が簡便にできるようになるとともに、処理が各車両において分散して行われるのでポーリングによる方式に比べて、車両編成情報の生成に要する時間を短縮することができる。またネットワーク構成が分散型であるのでネットワーク全体の管理が不要であるために、ネットワーク管理の負担が大きく低減されるとともにネットワークの帯域を有効に使うことができる。
【0038】
請求項2に記載された発明において、各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置が隣接車両情報を集めるので、車両ネットワークシステムで必要な情報が分散的に収集されることになり、車両ネットワークシステムの高速化が図れる。また、車両情報取得蓄積手段に蓄積された自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基づいて各車両の端末装置の監視制御が容易に行える。
【0039】
請求項3に記載された発明において、各車両の車両ネットワーク制御装置は、全車両の自隣接車両情報を取得して、それらが矛盾の無いように並べることで、容易に全車両を含む車両編成情報を生成することができる。車両の並び情報を得ることで、各車両に搭載された端末装置の制御を的確にすることができる。
【0040】
請求項4に記載された発明において、通信手段を介した他の車両の車両ネットワーク制御装置との交信において、情報を送信する際に使用する通信手段を識別する付加情報を含めて送信し、情報を受信する際に受信した情報に含まれる付加情報に応じて所定の処理を行うので、隣接車両の1端側と2端側のどちらが自車両に接続されているかが、付加情報を受信することで識別することが可能になる。
【0041】
請求項5に記載された発明において、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段からの送信情報に付加する付加情報と、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段が受信する情報に付加された付加情報のそれぞれ同異を判別して、1端側および前記第2端側における通信手段間の付加情報に係る同異情報を生成し、前記同異情報に基いて自車両と隣接車両の向きの関係を判別して車両向き情報を生成して前記車両向き情報を含む自隣接車両情報として前記車両情報取得蓄積手段に蓄積するので、車両情報取得蓄積手段には、向き情報を含んだ車両の並び情報が蓄積されることとなる。したがって、全車両の自隣接車両情報を集めて、矛盾無く並べることで、車両の向きを含めた車両編成情報を容易に得ることができる。
【0042】
請求項6に記載された発明において、車両ネットワーク制御装置が、複数の前記通信手段を有する通信手段切換装置と前記通信手段の付加情報に係る処理を行う判定制御部とを備え、前記同異情報が付加情報の同一を示すときは前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得し、前記同異情報が付加情報の違いを示すときは前記判定制御部が所定が予め定められた規則に基いて前記付加情報について、車両内では異ならせ、前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴としているので、車両内での情報の混信が起こること無く、隣接車両との情報交換も行うことができるようになる。本発明の構成により、市販の通信手段切換装置であるL2スイッチを用いた構成においても車両編成情報の生成が可能になる。
【0043】
請求項7に記載された発明は、前記付加情報の再設定について、車両編成の1車両を予め定めた方法で選択して主車両とし、前記主車両となった車両以外の車両を従車両として、主車両となった車両の隣接車両から順番に、前記従車両内では付加情報を異ならせ、前記各車両の前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記各車両の前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴としているので、L2スイッチなどの市販品を用いた構成において、効率的に車両編成情報を容易に得ることができる。
【0044】
請求項8に記載された発明において、各車両の車両ネットワーク制御装置が、監視・制御装置接続部を有し、ここへ、監視・制御装置を接続して、車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報の表示を行うとともに自車両および他車両に搭載された端末装置の制御を行なうための情報を出力することが可能になるので、車両編成の任意の車両から任意の車両に搭載された装置の監視・制御をすることができる。
【0045】
請求項9に記載された発明において、車両ネットワーク制御装置が、車両ネットワークに接続された各車両に搭載される複数の端末装置の端末装置毎の予め定められた共通のIPアドレスと所定の前記編成内ネットワーク用のIPアドレスとを相互変換するための変換表を前記ネットワークアドレス変換装置に設定するので、各車両に搭載される複数の端末装置の端末装置の監視・制御を他車両のネットワーク制御装置から行うことが可能になるとともに各車両に搭載された端末装置のIPアドレスは共通なので製造管理および装置交換時の保守管理が容易になるというメリットが生じる。また、編成ネットワークで使われるIPアドレスも各端末装置に付与されるので、車両編成の任意の車両から任意の端末装置の情報を監視し、制御情報を送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車両ネットワークシステムを構成する各車両の車両ネットワーク制御装置(CNC〔Car Network Controller〕)および端末装置を説明する図である。
【図2】第1実施例の車両ネットワーク制御装置の構成図である。
【図3】第2実施例の車両ネットワーク制御装置の構成図である。
【図4】車両ネットワーク制御装置に於ける処理の説明図である。
【図5】車両識別符号からIPアドレスを生成し、機器に付与する過程を説明する図である。
【図6】各車両における付与されたIPアドレスの一例を説明する図である。
【図7】本発明の車両間の接続状況と付加情報による情報交換可能範囲を示す図である。
【図8】各車両からの情報に基づいて車両編成情報を生成する過程を説明する図である。
【図9】単独および2両編成時の付加情報(AおよびC)の様子を説明する図である。
【図10】5両編成時の両端から矛盾無くAおよびC設定される様子を説明する図である。
【図11】5両編成時の両端からのAおよびCの付加情報が衝突して、再設定が行われる様子を説明する図である。
【図12】5両編成で主車両(マスター)と従車両(スレーブ)が有る場合の付加情報(AおよびC)の様子を説明する図である。
【図13】監視・制御装置の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明に係る車両ネットワークシステムついて図1を用いて説明する。車両ネットワークシステムは図1に記載されているような複数車両(1〜5)の各車両に搭載された複数の端末装置(ドア、モータ、エアコンなど)とこれらが接続される車両ネットワーク制御装置(CNC〔Car Network Controller〕)により構成される。ここで車両の両端部をそれぞれ識別するために、各車両の端部は予め1端部と2端部と命名される。図1においては車両の1端部にはイーサネット(登録商標)インタフェイスE1(6),車両の2端部にはイーサネット(登録商標)インタフェイスE2(7)が通信手段としておかれている。各車両のネットワーク制御装置は、車両のそれぞれの端部に隣接する隣接車両とE1とE2を介して互いに接続されて互いに相手装置から情報を取得する。各車両のネットワーク制御装置には、図示しない車両情報取得蓄積手段が備えられており、自車両の自車両情報および隣接車両の車両ネットワーク制御装置から取得した隣接車両情報が自隣接車両情報として蓄積されている。
【0048】
車両ネットワークシステムは、自らを構成する各車両の車両ネットワーク制御装置の車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報を使い、自らを構成する各車両に搭載された端末装置を監視制御する。具体的に、車両イにおいて、車両編成を構成する全車両の車両情報を知ろうとする場合は、車両イには、車両イと車両ロの情報が既にあるので、車両ニから自隣接車両情報(車両ハ、ニ、ホに係る車両情報)を取得すれば、全車両イ〜ホについての車両情報を得ることができる。本発明では、情報の取得が分散的に行われているので従来のように、先頭車両から順番に全車両から情報を取得する必要が無くなる。
【0049】
次に、車両ネットワークシステムを構成し車両ネットワークシステムのネットワークを制御する車両ネットワーク制御装置の構成ついて説明する。図2には、車両ネットワーク制御装置20とこれに含まれる信号判定など様々な処理を行う信号判定部(CPU)21、必要なデータを蓄積するメモリ29、付加情報であるA設定の符号化/復号化部22、付加情報であるC設定の符号化/復号化部23、付加情報であるB設定の符号化/復号化部24、1端側の多重分離ハブ25、第2端側の多重分離ハブ26、複数の端末装置が接続されている多重分離ハブ28が記載されている。ここで、付加情報Aは車両の1端側の隣接車両、付加情報Cは車両の2端側の隣接車両、付加情報Bは車両編成を構成する全車両を情報取得の対象とするべく付加されたものである。メモリ29はダイナミックメモリ、スタティックメモリ又はハードディスクなどの蓄積装置など、情報の蓄積手段を意味する。また、信号判定部21には、ネットワーク制御装置の外部に置かれた車両識別符号設定部305やモニタ291を接続する接続手段が設けられている。ここで、A設定、C設定は隣接車両との接続を制御するためのもので、ハブのポートになるイーサネット(登録商標)インタフェースに付されると共に、当該ポートから外部へ送出されるデータ中にも付されるものであって、当該符号に基づいてデータの流れる経路を制御する。
【0050】
信号判定部21は、IPアドレス変換部27と多重/分離ハブ28を通して端末装置と接続され、端末装置からの情報収集と端末装置への制御指令を与えることができる。IPアドレス変換部27で使われる後述するIPアドレス変換表は信号判定部21に接続された車両識別符号設定部からの車両識別符号に基いて信号判定部21により生成されて、IPアドレス変換部27へ設定される。このIPアドレス変換部27を介して端末装置から収集した装置情報は、信号判定部に接続されたメモリ29に自車両情報の一部として蓄積され、このメモリは車両情報取得蓄積手段となる。また、車両ネットワーク制御装置には、後述するモニタ291を接続する端子が用意されている。
【0051】
多重/分離ハブ25、26、28は、いわゆるリピータハブでもスイッチングハブでも良い。多重/分離ハブの外部へのインタフェースはイーサネット(登録商標)インタフェースを用いることが好適である。車両の端の多重/分離ハブ25、26は例えばイーサネット(登録商標)インタフェースを介して隣接車両の多重/分離ハブのイーサネット(登録商標)インタフェースに接続される。接続されたイーサネット(登録商標)インタフェースはリンクパルスを出して物理層の接続を確認し、信号判定部の指示により送信元に自分のMACアドレスを入れてブロードキャスト信号を送信すると、それを受信した相手側のネットワーク制御装置は相手の設定(A、B,C)とMACアドレスを知ることができる。また、信号判定部21には、後述するIPアドレス変換部27が接続され、さらに多重/分離ハブ28のイーサネット(登録商標)インタフェイスE15ないしE20に複数の端末装置1ないし端末装置6がそれぞれ接続されている。
【0052】
A,B,C各設定における符号化/復号化を行う符号化/復号化部22、23、24は、外部へデータを送信するときは情報が通過する通信手段を識別する付加情報としてA,B,Cを付与し、外部からデータを受信する際は、A,B,Cの付加情報を信号判定部が処理できる形にして信号判定部へ送る。例えば、データの形状としてイーサネット(登録商標)フレームを使う場合は、1端側の隣接車両へデータを送信する際は、A設定符号化/復号化部22において主データの前に置かれるオプションコードに予めA設定に対応する値を挿入する。また、外部からのフレームにオプションコードのA設定に対応する値が有る場合は、A設定符号化/復号化部22でデータ部分にA設定であることが分かる値を追加したり、本体情報のフレームに先立って、A設定であることを示す情報を含むフレームを挿入して信号判定部が処理可能にする。C設定についても同様の処理がC設定符号化/復号化部23で行われる。
【0053】
車両編成を構成する全車両へ送信する信号判定部からのデータには、B設定符号化24で付加情報Bを本情報に付加する符号化が行われる。付加情報Bを有するデータは多重分離ハブ25、26から隣接車両へ送られる。付加情報Bを有するデータは隣接車両の多重分離ハブ25、26でB設定符号化/復号化部24へ送られる。このデータはBの付加情報を有するので、信号判定部21へ送られて所定の処理がされる。また、多重分離ハブ25からのデータは多重分離ハブ26へ、多重分離ハブ26からのデータは多重分離ハブ25へ、それぞれデータが転送される。こうして、付加情報Bを有するデータは車両編成を構成する全車両に伝送されることになる。
【0054】
任意の車両から、付加情報Bを付けて各車両の車両ネットワーク制御装置に対して自隣接車両情報を送るように要求すると、車両編成を構成する全車両から当該車両の自隣接車両情報が、要求を送付したネットワーク制御装置を宛先にしてBの付加情報を伴うデータとして送付されてくる。そして、この車両情報に基いて各車両に搭載された端末装置獲の監視・制御を行うことができる。このようにして、車両編成を構成する任意の車両において、全車両の車両情報を集めることも、各車両の端末装置を監視・制御することが容易に行える。
【0055】
第2実施例として図3を用いてスイッチングハブ(L2スイッチ)302を用いた構成を説明する。第2実施例の車両ネットワーク制御装置300は内部にL2スイッチを含んで構成される。L2スイッチには、1端側(END#1)で隣接車両の通信手段に接続されるイーサネット(登録商標)インタフェースE1とExおよび2段側(END#2)で隣接車両の通信手段に接続されるイーサネット(登録商標)インタフェースE2とEyが車両の外部への接続用に設けられている。また、車両内部では、ネットワークアドレス変換部(ルータ部)304との接続用にイーサネット(登録商標)インタフェースE3、判定制御部との接続用にイーサネット(登録商標)インタフェースE4、E5,E6が設けられている。また、L2スイッチ302の内部状態の設定用にRS232CのようなシリアルインタフェースC4が設けられている。
【0056】
判定制御部301はイーサネット(登録商標)インタフェースE10を介して複数の端末装置1〜端末装置6が接続されたハブに接続される。このハブを通じて、判定制御部は自車両情報の一部として各端末装置から情報を収集する。また、後述する車両IPアドレスの変換表は後述するように車両識別符号設定部305から取得した情報に基いて判定制御部で作られて制御用のインタフェイスC1,C2を介してルータ部304に設定される。
【0057】
第2実施例の車両ネットワーク制御装置300の特徴はデータリンク層のスイッチであるL2スイッチを含む構成を取ることである。隣接車両との交信を行なう通信手段としてのL2スイッチの各ポートに備えられたイーサネット(登録商標)インターフェースは、電線若しくは光ファイバなどの物理的な線路又は無線(光、電波)で接続されると、オートネゴシエーション機能により相手の物理的な状態と自分の物理的な状態を調べて最適な交信条件を自動的に選択し、インタフェース間ではイーサネット(登録商標)フレームを使った相互通信が可能となる。
【0058】
ここで、通信開始直後は相手のインタフェースのマックアドレス(MACアドレス)が不明なので、互いにブロードキャストフレームを送信すると自分のMACアドレスが相手のL2スイッチで学習され、ポートとそのポートの先に接続されているイーサネット(登録商標)インターフェースの送信元のMACアドレスとの対応表が作られる。
【0059】
隣接車両から受信したイーサネット(登録商標)フレームがブロードキャストフレームの場合、通常のL2スイッチではブロードキャストフレームは基本的にL2スイッチに備わる全てのポートに転送される。しかし、ここでは、1端側と第2端側を分離する必要があり、受信したフレームの転送先を制御する必要がある。つまり、1端側の通信手段は1端側に接続された通信手段とのみ交信して2端側に接続された通信手段とは交信しないことで、接続先を確実に特定することができる。これは2端側についても同様である。
【0060】
1端側と2端側の通信手段の情報交換可能な範囲を遮断するために、ブロードキャストフレームが転送される範囲を示すブロードキャストドメインをL2スイッチ内で複数設けるバーチャルLAN(以後、「VLAN」と言う。)を使うと、物理的な接続とは別に論理的な接続関係を設定することが出来る。同じことをネットワーク層で行うにはIPアドレスフィルタの手法を用いればよいし、トランスポート層で行なうにはポート番号で接続関係を制御してもよい。
【0061】
VLANを構成する方法に、ポートVLANと言われるものがある。これはスイッチ
のポートをグループ化し、それぞれのグループを独立したブロードキャストドメインとして扱う方法である。スイッチの各ポートはイーサネット(登録商標)インタフェースが備えられておりイーサネット(登録商標)フレームのブロードキャストドメインをポート毎にスイッチの制御端子から設定する。
【0062】
ここで図3に記載されたネットワーク制御装置に含まれるL2スイッチと判定制御部の関係を説明する。L2スイッチはスイッチを制御する判定制御部とイーサネット(登録商標)で接続されている。図3には初期設定時の各イーサネット(登録商標)インタフェースの設定値がVLANとして記載されている。イーサネット(登録商標)インタフフェイスE1、E4,E7はAに,イーサネット(登録商標)インタフフェイスE2、E6,E9はCに設定されていてそれぞれVLAN−AとVLAN−Cとしてグループ化されて、同一設定の範囲での情報交換が可能になっている。
【0063】
この状態で、初期設定後に隣接車両のネットワーク制御装置と通信手段を介して接続されて、互いに接続された通信手段のVLANの設定値が同一の場合は、同じVLANに属するのでそのままネットワーク制御装置間での情報交換が可能となる。
【0064】
また、車両の1端側に隣接車両の2端側が接続されていて、自車両と隣接車両の通信手段の設定が異なるVLANの場合は、相手車両のネットワーク制御装置から送信されたフレームの自車両のL2スイッチ内での転送が行われない。つまり、通信手段が受信した隣接車両の車両ネットワーク制御装置からのフレームが自車両の車両ネットワーク制御装置へ転送されないので通信手段が接続されても車両ネットワーク制御装置は相手装置に接続されないことになり、互いの情報の交換をすることができない。
【0065】
この場合は、隣接する2両の車両の片方の1端側または他方の第2端側の通信手段の設定値を変更する必要が生じる。ポートVLANASAkitaka SamejimaVALN → VLANの設定値の再設定は、図3に記載された判定制御部の制御ポートC3からスイッチ制御ポートC4を介して行なわれる。車両ネットワーク制御装置間の情報交換をするためには、接続された通信手段同士の設定値が同じになればよいので、接続された通信手段の片側の設定値を変更することになる。初期設定値は、AとCしかないので、後述の方法によって、双方の通信手段の片方の設定値のAをCに変えるかCをAに変えるように再設定すれば良いことになる。ただし、同一車両内で両端の通信手段の設定値が同一になると1端側と2端側の区別ができなくなるので、再設定は、A及びC設定を、隣接車両の設定を見ながら行うことになる。つまり、端の車両から通信手段の1端側と2端側の設定値を、A−C,C−A,A−C・・・のように隣接車両間で同じになるように設定が行われれば良い。この再設定又は再付与は、予め決めた方法により編成車両の一つの車両を主車両(マスター)とし、その他の車両を従車両(スレーブ)として、従車両の設定を主車両に合わせるようにしてもよい。端の車両を主車両として自動的に再設定する方法を後述する。
【0066】
隣接車両との接続ができると、各車両のネットワーク制御装置は1端側と2端側のそれぞれの隣接車両から隣接車両情報を取得して、自車両の情報と併せて自隣接車両情報として車両情報取得蓄積手段となるメモリ、ハードディスクなどの蓄積手段に蓄積することができる。ここで、ネットワーク制御装置は、自車両と1端側と2端側のそれぞれの隣接車両の3両分の並び方を認識することができる。なお、車両情報として、各車両に固有に与えられた車両識別符号を取得することで各車両が個別に簡便に識別され、さらに、後述する方法で車両識別符号から生成されたIPアドレスを車両ごとの固有のネットワークアドレスとして車両情報に含めると以後の情報収集が容易になる。
【0067】
次に、車両ネットワークシステムの車両編成全体を覆う車両編成ネットワークを実現する方法を説明する。図3において、隣接車両のL2スイッチに設けられたExポートとEyポート間を、E1ポートとE2ポートの接続とは別の配線で接続しておき、車両編成全体を共通のVLANの属性たとえば、VLAN−Bとすると、図3において、各車両の判定制御部はVLAN−Bの属性を有するポートE5およびE8を介して、他車両のVLAN−Bの属性を設定されたポートを有する判定制御部と情報交換をすることができる。つまり、車両編成全体の車両ネットワーク制御装置間での情報交換が可能になる。
【0068】
ここで、タグVLANを使うとスイッチ間の接続を簡便化することができる。タグVLANはIEEE802・1Q(ドットワンキュー)で規格化されたもので、イーサネット(登録商標)フレームの送信元アドレスとデータの間にVLANの識別情報を埋め込んだタグによりVLANを構築するものである。イーサネット(登録商標)フレームに4オクテットの識別情報を付けることによって一つのポートを複数のVLANに所属させることができる。このように、複数のVLANに所属するポートのことをオーバーラップポートと呼び、逆に1つのVLANのみに所属するポートはクライアントポートと呼ばれている。ポートVLANではクライアントポートしか作成できないが、タグに対応可能なポートはタグポートと呼ばれこのポートをタグVLANではオーバーラップポートとすることができるところにタグVLANの特徴がある。
【0069】
図3において、各車両のL2スイッチの隣接車両と接続されるイーサネット(登録商標)インタフェイスE1とE2の設定をタグイーサネット(登録商標)インタフェイスとして、このイーサネット(登録商標)インタフェイスの属性を、AおよびB又はCおよびBに設定する。そうすると、イーサネット(登録商標)インタフェイスE1およびイーサネット(登録商標)インタフェイスE2を介して、編成車両全体での情報交換ができるようになり、イーサネット(登録商標)インタフェイスExおよびイーサネット(登録商標)インタフェイスEyで使用した配線の省略が可能となる。また、冗長化のためにイーサネット(登録商標)インタフェイスEx,Ey間の配線とイーサネット(登録商標)インタフェイスE1,E2間の配線を重複させて2重系として耐故障性を高めても良い。
【0070】
ここで、L2スイッチ間を複数の線路で接続するとループが出来てブロードキャストフレームが周回する惧れがある。通常は一回線のみで容量が足りるのであれば、スパンニングツリープロトコル(STP)を使うことによって、片方の回線が遮断されてループの形成が無くなる。また、2回線を常時使用するためには、初期設定後の隣接車両との情報交換後に、隣接車両と接続されるイーサネット(登録商標)インタフェイスE1,E2,Ex,EyのVLAN属性を全てBとして、リンクアグリゲーションコントロールプロトコル(LACP)を予め走らせてから接続しても良い。なお、STPとVLANの相性を改善したマルチプルスパンニングツリープロトコル(MSTP)を適用しても良い。
【0071】
第1実施例では、付加情報としてAおよびCの情報を付して、情報を送信し、隣接車両からA又はCの情報を付加された情報を受信して、それを識別して処理することで、隣接車両の車両ネットワーク制御装置と交信して各車両の車両ネットワーク制御装置は自車両と自分の隣接車両の車両情報、即ち自隣接車両情報を持つことが出来る。、第2実施例では、A設定およびC設定をV−LANの設定としてL2スイッチを使い、VLAN−AおよびVLAN−Cを使って隣接車両と交信することで各車両は自分と自分の隣接車両の車両情報即ち自隣接車両情報を持つことが出来る。
【0072】
次に車両編成情報を生成について説明する。第1実施例では、B設定、第2実施例では、B設定に相当するVLAN−Bを使って車両編成全体で各車両の持つ隣接車両を含めた車両情報を共有することで、以下に具体的に説明するように各車両において車両編成情報を生成することができる。
【0073】
第1の方法は、B設定(VLAN−B)を使用して、全ての車両ネットワーク制御装置に対して、ポーリング信号を発することである。車両編成ネットワーク全体のネットワークアドレスを172.17.0.0/16として、ブロードキャストパケットとして宛先のIPアドレスを172.17.255.255も使い各車両の車両ネットワーク制御装置から発信するとブロードキャストパケットとして各車両に転送される。このパケットを受信した各車両の車両ネットワーク制御装置は、ブロードキャストパケットの送信元を新たな宛先として、自車両と1端側および第2端側の車両情報の3両分の車両情報を返信する。ブロードキャストパケットを送信した車両ネットワーク制御装置は、各車両から返信された各3両分の車両情報を整理することで、自分を含めた車両編成情報を生成することができる。なお、端の車両からは、2両分のみの車両情報が返信されるので、当該車両が先頭又は最後尾の車両であることが分かる。
【0074】
上記の過程を具体的に説明すると、図1において車両ハがブロードキャストパケットを送信して、車両ニからは車両ハ、ニ、ホの3両分、車両ホからは車両ニとホの2両分のデータを受信すると、車両ハは、車両ハは自車両の1端側に車両ニが連結され、その先に車両ホが連結されていることを認識することができる。2端側についても同様に、車両ロの先に車両イが連結されていることを認識することができるので、車両ハは自車両を含めた車両イ〜車両ホで構成された車両編成情報を生成することができる。
【0075】
第2の方法は、順番に問い合わせる方法である。例えば、車両ハが自車両の1端側の車両ニに問い合わせると車両ニは、車両ハ、ニ、ホの3両分の車両情報を返信する。そうすると、車両ハは、自車両の1端側に連結された車両ニの先に、車両ホが連結されていることを認識する。次に、設定Bを使って返信された車両情報に含まれる後述の車両固有のネットワークIPアドレスなどを用いて車両ホに車両情報を問い合わせる。そうすると車両ホは自車両を含め3者両分の車両情報を返信する。この作業を繰り返すことで、長い編成の列車の片側についての車両編成情報の生成をすることができる。同様に、第2端側でも車両編成情報を生成することができるので、両端の車両編成情報を併せることで全体の車両編成情報を生成することができる。
【0076】
次に、車両の向きの判別について説明する。図1においては、車両ハの第2端側と車両ロ1端側の設定値が初期設定では異なっているために情報交換をすることができない。そこで、車両ハの2端側の設定値をCからAに再設定することで、隣接車両の設定値と同一となり情報交換が可能になる。図3において、L2スイッチの設定値の再設定による変更は、図3に示す判定制御部からL2スイッチへの制御指令により行われる。ここで判定制御部から設定値の変更に関して、各車両の車両ネットワーク制御装置において、当該車両ネットワーク制御装置の通信手段の設定値を記録しておくことで、隣接車両の接続された通信手段の設定の初期状態での同異が判別できる。また、期設定と同じか否かの履歴をフラグを立てて記録しておくことで、交信可能になった設定値の状態が初期状態と同じか否かを判定制御部は知るようにしてもよい。
【0077】
初期設定における各車両の通信手段と隣接車両の通信手段の設定を対比することで得られた自車両と隣接車両との向きの相互関係は、B設定の範囲の車両に対して配信することができるので、Bに設定されたポートを有する全ての車両ネットワーク制御装置は、B設定の範囲の車両の向き情報を入手することができ、各車両の車両ネットワーク制御装置は向き関係を含めた車両編成情報をそれぞれ生成することができる。ここで、B設定された通信手段は特許請求の範囲における第3通信手段に相当する。
【0078】
L2スイッチでVLANを使って1端側と2端側のデータを分離するには各車両のL2スイッチ内で1端側と2端側それぞれのVLANの設定を違えることが必要になる。車両編成全体で、矛盾無く、VLANの再設定を行う手法は後述する。
【0079】
次に、図3を用いて車両ネットワーク制御装置の動作について詳細に説明する。図3に示す車両ネットワーク制御装置には、今まで説明したL2スイッチと判定制御部301の他に車両識別番号設定部305、ルータ部304、ハブ303が収められている。そして、ハブ303の各ポートには、端末装置(End Device:ED)としてドア制御器、監視カメラ、モータ、空調装置、ブレーキ装置、照明装置、放送装置、案内表示装置などが接続される。また、判定制御部には、図示しない演算装置としてCPUが置かれ、データ蓄積手段としてメモリがCPUに接続されている。
【0080】
車両ネットワーク制御システムの車両ネットワーク制御装置300には表示・制御情報入力装置291を接続するための接続部が備えられていて、表示・制御情報入力装置(モニタ)291を接続することで、自車両だけでなく車両編成全体の車両情報を把握することができ、制御情報を入力することもできる。ユーザインタフェースを良くするために、車両をモニタ上に図示し(図14参照)、異常があるときは、色を変えるなどとすることで、各車両に搭載した装置の管理を含め、車両の管理が容易になる。
【0081】
全ての車両の判定制御部は共通の動作をするので、代表として図3に示す車両ハの判定制御部301の動作を説明する。ここで、イーサネット(登録商標)インタフェースE1などをポート1とも呼ぶことにする。L2スイッチは隣接車両と接続されるポート1及びポート2と、判定制御部に接続されるポート4〜6と、判定制御部からの制御信号を受けるC4を有する。判定制御部のポート7〜9がそれぞれL2スイッチのポート4〜6に接続され、それぞれのVLANの設定は、ポート4、7がVLAN−A、ポート5、8がVLAN−B,ポート6、9がVLAN-Cに設定されている。
【0082】
各車両に搭載された図3に示す車両ネットワーク制御システムの車両ネットワーク制御装置300の動作を、図4のフローチャートを使って説明する。電源投入あるいは動作開始指令により動作を開始すると、IPアドレスの生成と生成したIPアドレスの付与を行なう(S41)。以下、IPアドレスの生成。付与について詳細に説明する。
【0083】
IPアドレスは、交信範囲の中で互いにアドレスが重複しないように付与されることが必要になる。図2においては、CPUに各車両で重複しない車両識別符号がスイッチやメモリなどに記録された車両識別符号設定部305が接続されている。また、図3において判定制御部301にも車両識別符号設定部305が接続されている。図2のCPU21と図3の判定制御部301のCPUは車両識別符号設定部305から車両識別符号を入手して、これからIPアドレスを生成する。ここで生成されるIPアドレスは、各車両固有のものであり、生成後には変化することが無い静的IPアドレスである。
【0084】
車両識別符号と生成される静的IPアドレスとは一対一に対応しており、その関係を予め表として生成して用意しても良いし、予め定めた規則(アルゴリズム)でその都度生成しても良い。IPアドレス生成の方法として予め車両識別符号とプライベートIPアドレスの対応表を用意しておき、これをメモリに置いておくことで、車両識別符号を入手した判定制御部は対応表を参照することで、当該車両識別符号に対応したネットワークアドレスを簡便に生成することができる。
【0085】
例えば、車両識別符号からクラスBの重複しないプライベート静的IPアドレスとして生成する場合について説明する。32ビットのIPアドレスを8ビットずつに区切って10進数表示して、aaa、bbb、ccc、dddと表し、aaaには172の固定値、bbbには017の固定値をそれぞれ割り当て、ccc及びdddについては、車両識別符号に基いて生成する。
【0086】
車両識別符号は、例えば、モ1234のように、車両の性格を示す文字と数字で表される場合があるが、文字は、例えば、ASCIIコードのような一定の規則により適当な数字に置き換えて処理を行なうことで、各車両は重複することのない数値を車両識別符号設定部から得た情報により得ることができる。図6には、車両識別符号#5601〜#5603を付された車両が記載されている。
【0087】
判定制御部が読み込んだ車両識別符合とメモリ上の車両識別符合の両者を比較して一致していれば、すでに車両識別符号とIPアドレスの対応テーブルができてルータに設定されているので、各搭載装置(ED)がルータを使ってそのIPアドレスが変換されて車両編成ネットワーク(Train Network)に接続される(S57)。
【0088】
また、読み込んだ両者の値を比較して不一致の場合は、新たに車両識別符号設定器から読み込んだ車両識別符号とIPアドレス対応テーブルから、車両のネットワークアドレスを生成するとともに搭載装置の車両ネットワークアドレスと装置のローカルアドレスの対応表(ネットワーク アドレス テーブル:NAT)を作成する(S54)。そして、生成したNAT情報をルータに設定する(S55)。
【0089】
また、車両識別符号設定器より読み込んだ車両識別符号の値をメモリへ記憶する(S56)。その後、外部に通用するアドレスと車両内のみで使えるアドレスの対応表を有する部分であるルータに読み込んだNAT情報に基いて、各搭載装置のIPアドレスの変換をして、車両ネットワークへ接続する(S57)。
【0090】
上記の様にして生成したIPアドレスを車両ネットワーク制御装置はL2スイッチ、ルータ部、自分自身、ハブなど必要に応じて付与する(S41)。
【0091】
ここで、図6を使ってIPアドレスの具体的な生成について説明する。判定制御部301の内部のCPU(以下、図2のCPU21も同様に機能するものとする。)が車両識別符号設定部から読み込んだ符号を含むデータの数字部分から5600を引くことで、1〜3の数字を得る。ネットワークアドレスとして、cccについては、40に前記の値を加算したものを使い、dddとして1を使うことに決めておくと、図6に示すように、上記のようにして生成したIPアドレスの付与状況の一例が、車両識別符号#5601のネットワーク制御装置のIPアドレス172.17.41.1、車両識別符号#5602のネットワーク制御装置のIPアドレス172.17.42.1、車両識別符号#5603のネットワーク制御装置のIPアドレス172.17.43.1となる。
【0092】
次に、各車両に搭載されている装置のIPアドレスの付与について説明する。ここでは、装置に付与するIPアドレスはクラスCとすると、IPアドレスの上位16ビットが、192.168となり下位16ビットを各車両に搭載した装置へ付与することになる。
【0093】
例えば、IPアドレスの下位ビットを11からはじめるとすれば、図6に示すように、端末装置1(ED1)には、IPアドレス192.168.0.11から始まり、順次下位ビットの数字を変えて付与する。ここで、各車両において、各装置のIPアドレスは全て共通となっているので、装置の交換などがあっても、IPアドレスの再付与が不要になるので管理が容易になる。
【0094】
各装置に付与されたIPアドレスは各装置毎に共通なので、そのIPアドレスのまま車両の各搭載装置の情報を外へ出すことはできない。そこで、各車両の車両ネットワーク制御装置に付与されたネットワークアドレスを使って、車両編成全体を覆う車両編成ネットワークで通用するIPアドレスへ変換する必要がある。
【0095】
一つの方法として、ネットワークアドレスの上位3オクテットに、装置に付与されたIPアドレスの下位1オクテットをつなげて、4オクテットのIPアドレスとする。この対応の様子が、図6に示されている。上記の方法は一例であって、車両識別符号の符号を含めてASCIIコードなどで数値化して、その数値に対して、所定の数を加減算したものを256で割って、余りの部分(0〜255)を使うなどのやり方もある。
【0096】
以上の説明で、車両ネットワークに接続された全ての機器にIPアドレスが付与されることになる。次に、車両ネットワーク制御装置は、以前説明したように隣接車両との交信をして、車両情報の取得を行う(S42)。
【0097】
さらに、VLAN−Bの設定を判定制御部とL2スイッチに対して行い、車両編成全体での情報交換が可能な環境を作り、他車両と交信して他車両の情報を取得する(S43)。次に、得られた車両情報を整理することで、車両編成情報を生成する(S44)。
【0098】
自車両については、図3のE10とE14のポートを使い、ハブに接続された端末装置からの情報収集をして、情報収集蓄積部に収集して自車両情報として蓄積する。また、各端末に必要な制御情報を送り、所定の動作を行わせる。所定の動作には、ドアーの開閉、照明のオン・オフ、モータの制御、エアコン温度設定など多様な内容が含まれる(S45)。ここで、各車両の搭載装置IPアドレスが共通になっているので、車両ネットワーク制御装置の監視、制御プログラムを共通化することができる。
【0099】
車両ネットワーク制御装置には、表示と制御情報の人間による入力を受け付ける表示・制御装置を接続する接続部が設けられており、ここへ、表示・制御装置が接続されるとそれを感知して(S46)表示・制御装置の接続部へ所定の情報を送って表示する(S47)。表示の一例を図13に示す。
【0100】
表示・制御装置の使い方として、例えば車掌の居る最後部車両へ車両識別番号#5601の監視カメラ(ED2)からのデータを送る場合は、送信元のIPアドレス192.168.0.12が、ルータによって172.17.41.12に変換されて最後部車両の車掌の所へ届くことになる。また、逆に車掌から当該監視カメラの操作指令は、送信先のIPアドレス172.17.41.12として、送信されて、ネットワークアドレス172.17.41.1を有するルータで受信されて、そのIPアドレスを192.168.0.12に変換されて、監視カメラに届くことになる。また、一斉に片側のドアを開閉するなどの操作は、ネットワーク層でのブロードキャストパケットを使い、データ部分にドアを示すIPアドレスとドアに対する制御情報を入れて置く事で実現することができる。
【0101】
車両ネットワーク制御装置は、車両間の接続の遮断などにより車両の編成の変更の通知を受けると処理の最初へ戻る(S48)ので、故障により、車両編成が分断されても、分断後のそれぞれが新しい車両編成を構成することができる。イーサネット(登録商標)インタフェースにはリンクパルスの送信手段が備えられており、LANが物理的に接続されているのか否かを判定することができる。物理リンクの状況が変わる(物理リンクが有る→無くなる、若しくは、物理リンクが無い→有る)または、連結時に加圧されるデジタルインプット情報を別途持つことにより、車両が連結されたまたは開放されたことを判断する)または、連結時に加圧されるデジタルインプット情報を別途持つことにより、車両が連結されたまたは開放されたことを認識すると、車両が連結された、または解放されたと判断し、システムを初期化ルーチン(S41)に戻り、編成情報の収集をやり直す。特に、車両編成の変更が無い通常の場合は電源のオン・オフを検知して電源が入っていれば、S45の処理へ戻る(S49)。
【0102】
以上説明したように、各車両の車両ネットワーク制御装置は、隣接車両と情報を交換するとともに、列車を構成する車両情報を得ることができる。車両情報としては、各車両に搭載されている端末装置の情報の他に各車両の車両識別符号、車両の向き、各車両に搭載されている装置のIPアドレスなどがある。
【0103】
本発明においては、任意の車両において、モニタ291を編成車両ネットワーク制御システムの車両ネットワーク制御装置300に接続することで、全車両の全ての装置の情報を得ることができ、同時に、それらに対しての制御を行なうことができる。
【0104】
また、スイッチ間を接続してネットワークを構成しているので障害に強く、IPレベルのVLANを使って論理的に分割しているので、ネットワーク構成の自由度が大きく車両ネットワークの管理が容易になる。
【0105】
次に、L2スイッチにVLANの設定を行う場合について詳細に説明する。仕様上、前記A設定と前期C設定されたもの同士が交信できない場合は、A設定とC設定を一定時間毎に設定入替をし、A設定同士またはC設定同士が合致すると交信が成立したとして前記設定入替を停止して設定を固定し、隣接車両情報の交換を行っても良い。このときもそれぞれの車両が、1端側で隣接車両に接続される第1ポートおよび、第2端側で隣接車両に接続される第2ポートの位置は予め認識しているので、車両の向きを認識することができる。
【0106】
図7に、L2スイッチを用いた場合の初期設定でのVLANの設定の状態を示す。各車両の通信手段であるイーサネット(登録商標)インタフェースのVLAN設定は、E1がA,,E2がC,ExとEyがBである。また、内部での接続に使われるイーサネット(登録商標)インタフェースの設定は、図7に示すように、E3とE5がB、E4がA,E6がCに設定されている。この状態で、車両ハの1端側と車両ニの1端側は共にA設定なので、車両ハの車両ネットワーク制御装置と車両ニの車両ネットワーク制御装置とは接続ができる。しかし隣接する車両ロの1端側と車両ハの2端側とでは双方の設定値が異なるので、車両ロの車両ネットワーク制御装置と車両ハの車両ネットワーク制御装置とは接続されないので、どちらかを入れ替える必要がある。入替は、判定制御部からの制御信号により行われる。
【0107】
また、E1とE2をタグポートにして、A及びB設定又はC及びB設定にすることで、隣接車両との接続を単一の線路で行うことができる。判定制御部からのC設定のデータは判定制御部のE9,L2スイッチのE2を介して隣接車両へ送出される。また、判定制御部からのB設定のデータは判定制御部のE8、L2スイッチのE5から、L2スイッチのE1およびE2を介して両隣接車両へ送出される。
【0108】
ここで、車両編成情報の生成について図8を用いて詳しく説明する。車両イ、ロ、ハ、ニ、ホがこの順番になっている5両編成の車両編成を考える。車両ハに搭載された車両ネットワーク制御装置は、自車両と両隣接車両の3両分の車両情報として、ロ、ハ、ニ又はニ、ハ、ロを有している。端の車両は2両分、中間車両は3両分の車両方法をセットで有している。ポーリング又は順次隣接車両に問い合わせることで、車両イから、イ、ロ又はロ、イの情報を得る。車両ロからは、3両分のイ、ロ、ハ、又は、ハ、ロ、イの情報を得る。車両イ、車両ロ、車両ハの情報が矛盾無く並ぶためには、車両イ、車両ロ、車両ハの各車両の車両ネットワーク制御装置は、この3両の車両情報の並びについて1の並びまたは2の並びを車両編成として選択する。同様に、車両ハ、ニ、ホについても、矛盾の無い並びを選択する。そうすると、5両全体について1の並びを選択すると、イ、ロ、ハ、ニ、ホの並びが得られ、2の並びを選択すると、ホ、ニ、ハ、ロ、イという、車両編成情報を得ることができる。また、各車両の車両ネットワーク制御装置は、個別に、2両又は3両分の車両情報をセットで局部的に取得することで、それぞれ、局部的な車両編成情報を容易に生成して持つことができる。
【0109】
さらに、初期設定で、1端側をA,2端側をCとしていることから、図8において、#1は1端側、#2は2端側を示し、各車両は2端側から1端側を車両の向きとし、各車両の矢印は、各車両の向きを示している。この矢印、すなわち、車両の向き情報も各車両の車両ネットワーク制御装置は取得することができる。そうすると、車両の向きを含んだ、車両編成情報を各車両の車両ネットワーク制御装置が持つことができる。
【0110】
ここで、、車両イ〜車両ホの車両編成により構成される運行対象となる列車の進行方向は、運転席から発するマスター宣言により決められる。図1において、車両イの1端側(#1END)にある運転席からマスター宣言が発せられると、この列車は、車両イを先頭車両として運行されることになり、進行方向が決まるので、この列車の編成情報は、車両イを先頭とするイ、ロ、ハ、ニ、ホとなる。
【0111】
この、マスター宣言は、B設定の範囲で全車両に伝えることができる。各車両の車両ネットワーク制御装置は、上記のマスター宣言を自分のどちらの端のポートから受けたかを知っているので、列車の進行方向に対する自分の車両の向きを認識することができる。
【0112】
次に、隣接する通信手段の設定を同じに揃えると共に、車両内の1端側と2端側の設定を異なる値に設定する手法を説明する。
【0113】
図9には、単独車両と2両編成の車両編成が記載されている。単独車両の場合は、#1、#2共に物理リンクが無いので、その車両の車両ネットワーク制御装置は「単車両(自己の1両のみで、他に何も連結されている車両が無い)」と判断してVLANの切り替え、制御などは行わない。
【0114】
2両編成の場合、#1または#2のどちらか一方に物理リンクが有り、もう一方には物理リンクが無いので、その車両車両ネットワーク制御装置は「2両以上の編成の端の車両(先頭車)」であると判断する。
【0115】
2両成立の場合、端の車両は、それぞれ、自分のVLANの入替えは行わず、VLAN一時確定フラグを定期的に送信しながら、一定時間待つ。ここで、イの#2とロの#2はVLAN-C同士で一致するため、VLANが成立し、接続が確定する。
【0116】
2両不成立の場合は、LAN一時確定フラグを定期的に送信しながら、一定時間待つがイの#2とロの#12は物理的に接続されていてもVLANが不一致のため、VLANが成立しない。車両イおよび車両ロの車両ネットワーク制御装置は一定時間待ってもVLANが成立しないのでお互いのVLANが不一致であると判断する。ここで、車両イの#2のMACアドレスの値が車両ロの#1のMACアドレスの値よりも大きいとして、小さい方が、VLAN設定の1端側、2端側共に入れ替えることにすると、車両ロのVLAN設定を入れ替えて、車両間のVLANが成立する。
【0117】
図10に3両以上の編成で、端の車両からの一次確定フラグが他の端まで伝送される場合が示されている。先ず、#1および#2の両方に物理リンクが有る場合、その車両のネットワーク制御装置は自車両が「3両以上の編成の中間車」であると判断する。中間車両はVLAN設定について、端の車両からの要求に応えるものとする。
【0118】
車両イと車両ホは一方に物理リンクが無く、他方に物理リンクが有るので、それぞれの
車両ネットワーク制御装置は2両以上の編成の端の車両であると判断し、VLANの入替えは行わず、VLAN一時確定フラグを定期的に送信しながら、一定時間待つ。(状態1)
【0119】
中間車両ロおよびハおよびニは、#1側と#2側の両方に物理リンクが有るので、3両以上の編成の中間車両であると判断し、VLANをある定められた時間ごとに、「#1=VLAN−A、#2=VLAN-C」と「#1=VLAN-C、#2=VLAN−A」というようにVLANの設定の入替えを繰り返す。(状態1)
【0120】
中間車両ロとニは自車両のVLAN設定を定期的に入れ替えるので、端の車両のVLAN設定と同一になった際に、端の車両から一時確定フラグを受信する。中間車両はこの一時確定フラグを受信するとVLANの入替えを中止し、受信したVLAN一時確定フラグを他端へ定期的に送信しながら、一定時間待つ。ここで、車両ロは初期状態、車両ニは入れ替え状態で状態が確定する。(状態2)
【0121】
車両ハの車両ネットワーク制御装置は「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」のときにロおよびホとのVLANが一致し、ロおよびホより一時確定フラグを受信する。ハはこの一時確定フラグを受信すると、「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」のままで停止する。(状態3)
【0122】
車両ハの車両ネットワーク制御装置は、ロおよびホの両方より一時確定フラグを受け取っているので、VLANの矛盾が無いと判断し、VLANの設定をこのまま確定させ、ロおよびホへ確定フラグを送信する。(状態4)
【0123】
車両ロの車両ネットワーク制御装置は、車両ハより確定フラグを受信し、VLANの設定をこのまま確定させ、イへ確定フラグを送信する。(状態5)
【0124】
車両ニの車両ネットワーク制御装置は、ハより確定フラグを受信し、VLANの設定をこのまま確定させ、ホへ確定フラグを送信する。(状態5)
【0125】
車両イの車両ネットワーク制御装置は、ロより確定フラグを受信し、VLANの設定をこのまま確定させる。(状態6)
【0126】
車両ホの車両ネットワーク制御装置は、ニより確定フラグを受信し、VLANの設定をこのまま確定させる。(状態6)
以上により、VLANの設定が確定する。(状態6)
【0127】
次に、端車両に合わせるようにVLANの入替をした中間車両の間でVLANの不一致が有る場合について図11を使って説明する。
【0128】
端の車両イとホの車両ネットワーク制御装置は、一方の端に物理リンク無く、他方に物理リンクが有るので、編成の端の車両であると判断し、VLANの入替えは行わず、VLAN一時確定フラグを定期的に送信しながら、一定時間待つ。(状態1)
【0129】
車両ロおよびハおよびニの車両ネットワーク制御装置は、#1側と#2側の両方に物理リンクが有るので、3両以上の編成の中間車両であると判断し、VLANをある定められた時間ごとに、「#1=VLAN−A、#2=VLAN−C」と「#1=VLAN−C、#2=VLAN−A」というようにVLANの設定の入替えを繰り返す。(状態1)
【0130】
車両ロの車両ネットワーク制御装置は「#2=VLAN−C、#1=VLAN−A」のときにイ#2のVLAN−Cと一致し、イより一時確定フラグを受信する。ロはこの一時確定フラグを受信するとVLANの入替えを「#2=VLAN−C、#1=VLAN−A」のままで固定し、VLAN一時確定フラグをロ#1を通じてハ#1へ定期的に送信しながら、一定時間待つ。(状態2)
【0131】
車両ニの車両ネットワーク制御装置は「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」のときにホ#2のVLAN−Cと一致し、ホより一時確定フラグを受信する。ニはこの一時確定フラグを受信するとVLANの入替えを「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」のままで固定し、VLAN一時確定フラグをニ#2を通じてハ#2へ定期的に送信しながら、一定時間待つ。(状態2)
【0132】
車両ハの車両ネットワーク制御装置は「#2=VLAN−C、#1=VLAN−A」のときにロとのVLANが一致し、ロより一時確定フラグを受信する。ハはこの一時確定フラグを受信すると、「#2=VLAN−C、#1=VLAN−A」のままで固定する。(状態3)
【0133】
同様に、「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」のときはニと接続するが、早い側優先でも良いし、予め優先順位(例えば、#1側を優先)をつけておいてもよい。
【0134】
車両ハの車両ネットワーク制御装置は、ロより一時確定フラグを受け取り、VLAN設定を固定して、#2側のVLAN−Cの接続が成立するまで一定時間待つ。しかし、VLANは成立しないので、VLANの矛盾が有ると判断する。(状態4)
【0135】
同時に車両ニの車両ネットワーク制御装置も、一定時間待っても#2のVLANが成立しないので、VLANの矛盾が有ると判断する。(状態4)
【0136】
そこで、車両ハとニの車両ネットワーク制御装置は、車両ハの#2と車両二の#2のMACアドレスの値の大小を比較する。(ここでは車両ニ#2の方が大きいとする)車両ハは、車両二の#2のMACアドレスの値の方が大きいので、自分のVLAN設定を変更する必要があると判断する。一方、車両ニは、車両ニ#2のMACアドレスの値の方が大きいので、自分のVLAN設定を変更する必要がないと判断し、何もしない。
【0137】
次に、車両ハのネットワーク制御装置は、車両ロのネットワーク制御装置に対して、VLAN設定を入替え変更するよう要求する。(状態5)
【0138】
車両ロのネットワーク制御装置は、車両ハの車両ネットワーク制御装置からのVLAN変更要求を受理すると、ハに対してACKを返信する。ハは、ロからのACKを受信すると、VLAN設定を「#1=A、#2=C」から「#1=C、#2=A」へ入れ替え、一時確定フラグを定期的に送信する。(状態6)
【0139】
次に、車両ロのネットワーク制御装置は、イに対してVLAN設定を入替え変更するよう要求する。(状態6)
【0140】
車両イのネットワーク制御装置は、ロからのVLAN変更要求を受理すると、ロに対してACKを返信する。ロのネットワーク制御装置は、イからのACKを受信すると、VLAN設定を「#1=A、#2=C」から「#1=C、#2=A」へ入れ替え、一時確定フラグを定期的に送信する。(状態6)また、車両イのネットワーク制御装置は、「#1=A、#2=C」から「#1=C、#2=A」へ入れ替える。(状態6)
【0141】
車両イのネットワーク制御装置は、自らのVLAN設定を確定し、ロへ確定フラグを送信する。ロは、イより確定フラグを受信する。(状態8)
【0142】
車両ロのネットワーク制御装置は、自らのVLAN設定を確定し、ハへ確定フラグを送信する。ハは、ロより確定フラグを受信する。(状態9)
【0143】
車両ハのネットワーク制御装置は、自らのVLAN設定を確定し、ニへ確定フラグを送信する。ニは、ハより確定フラグを受信する。(状態10)
【0144】
車両ニのネットワーク制御装置は、自らのVLAN設定を確定し、ホへ確定フラグを送信する。ホは、ニより確定フラグを受信する。(状態11)
【0145】
そして、VLANの設定が確定する。(状態12)
【0146】
上記のVLANの再設定手順は、隣接車両同士で順番に行うものであるが、B設定の範囲での各車両のネットワーク制御装置の接続ができているときは、B設定の範囲で情報がやり取りできる。その場合は、隣接車両間の車両ネットワーク制御装置間で交信ができなくて待つ状態は不要になる。そして、上記の過程の説明で使用した一時確定フラグを使わずに隣接車両の物理的に接続される通信手段のVLAN設定を、端の車両から順番に再設定して行くことができる。その際に、端の車両のMACアドレスや車両識別符号の大小で優先順位を決め、優位に立つ車両の設定に合わせるように順番にAおよびC設定を決めることができる。
【0147】
以下、図12を用いて具体的に説明する。
【0148】
車両イおよびホの車両ネットワーク制御装置は、一方に物理リンクが無く、他方に物理リンクが有るため、自己が「編成の端の車両である」と判断し、VLAN−Bにその旨を宣言する。(状態1)
【0149】
また、車両ロおよびハおよびニの車両ネットワーク制御装置は、#1と#2の両方に物理リンクが存在するため、自己が「編成の中間車両である」と判断し、「#1=VLAN−A、#2=VLAN−C」と「#2=VLAN−A、#1=VLAN−C」を定期的に入替える。状態1)
【0150】
車両イの車両ネットワーク制御装置は、VLAN−Bを使用してホの車両ネットワーク制御装置と交信を行い。車両ホの車両識別符号又はMACアドレス値とイの識別符号又はMACアドレス値の大小を比較する。(ここでは、イの方が大きいものとする)
【0151】
車両イの車両ネットワーク制御装置は自分の車両識別符号の値(またはMACアドレスの値)が、ホの車両識別符号の値(またはMACアドレスの値)よりも大きいので、自分(イ)はマスターであると判断し、VLAN設定は変更せず、確定フラグを#2ポートのVLAN−Cを介して定期的に発信する。(状態1、状態2)
【0152】
同様に車両ホの車両ネットワーク制御装置は、VLAN−Bを使用して車両イの車両ネットワーク制御装置と交信を行い、車両イの車両識別符号又はMACアドレスと自分(ホ)の車両識別符号又はイのMACアドレス値と自己ホのMACアドレス値)の大小を比較して、自分の車両識別符号の値(またはMACアドレスの値)が、イの車両識別符号の値(またはMACアドレスの値)よりも小さいので、自分(ホ)はスレーブであると判断する。車両ホの車両ネットワーク制御装置は、「#1=VLAN−A、#2=VLAN−C」と「#1=VLAN−C、#2=VLAN−A」を定期的に入替える。(状態1、状態2)
【0153】
中間車両ロの#1がVLAN−A、#2がVLAN−Cのとき、イの#2とVLANが成立する。そのとき、ロはイから発信された確定フラグを受信する。(状態3)
【0154】
車両ロの車両ネットワーク制御装置はイより確定フラグを受信すると、VLANの設定をこのまま(#1=VLAN−A、#2=VLAN−C)で固定し、確定フラグを#1ポートのVLAN−Aを介して定期的に発信する。(状態4)
【0155】
ハの#1がVLAN−A、#2がVLAN−Cのとき、ロの#1とVLANが成立する。そのとき、ハはロから発信された確定フラグを受信する。(状態4)
【0156】
車両ハの車両ネットワーク制御装置はロより確定フラグを受信すると、VLANの設定をこのまま(#1=VLAN−A、#2=VLAN−C)で固定し、確定フラグを#2ポートのVLAN−Cを介して定期的に発信する。(状態5)
【0157】
中間車両ニの#1がVLAN−A、#2がVLAN−Cのとき、ハの#2とVLANが成立する。そのとき、ニはハから発信された確定フラグを受信する。(状態5)
【0158】
車両ニの車両ネットワーク制御装置はハより確定フラグを受信すると、VLANの設定をこのまま(#1=VLAN−A、#2=VLAN−C)で固定し、確定フラグを#1ポートのVLAN−Aを介して定期的に発信する。(状態6)
【0159】
車両ホの#1がVLAN−C、#2がVLAN−Aのとき、車両ニの#1とVLANが成立する。そのとき、車両ホの車両ネットワーク制御装置はニから発信された確定フラグを受信する。(状態6)
【0160】
車両ホの車両ネットワーク制御装置はニより確定フラグを受信すると、VLANの設定をこのまま(#1=VLAN−C、#2=VLAN−A)で固定し、VLANが成立確定する。(状態7)
【0161】
以上説明したように、ひとつの車両の両端のVLAN設定が異なり、隣接車両のVLANと同一になると、各車両は自車両と自分の1端側の隣接車両と2端側の隣接車両情報の257194347の257194347ASAkitaka Samejima257194347情報の → 重複計3両分(端の車両は2両分)の車両情報をまとめて発信することができる。その際、1端側と2端側の情報は互いに混ざることなく識別されているので、各車両から3両分の情報を収集して整理することで容易に車両編成情報を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明では、両編成ネットワークの伝送路は車両ネットワーク制御装置が多数個直列に接続された構成となっていて、複数車両が直列に接続される列車で応用する場合は遅延時間が問題となりうる。実施例では、いわゆるスイッチングハブを用いてネットワークを構成したが、従来、スイッチングハブは遅延が大きく列車の制御には向かないと思われているので、簡単に遅延時間について検討する。
【0163】
具体的な伝送路の構成の例としてスイッチングハブの直列接続を仮定すると、スイッチングハブが、ストア&フォワード方式で動作する場合、フレームが通過する際にフレーム長分の遅延が発生する。また、他のフレームを同じポートから既に送信中の場合には、送信完了まで待たされるため、この分の遅延も生じる。遅延時間はフレーム長に依存するが、すべてUDP/IPで伝送するものとし、データ伝送速度を100Mbpsとすると、イーサーネット(登録商標)の最小フレームと最大フレームの受信時間はデータ長(ヘッダを含む)を、制御情報が約100バイト、保守データ(車両機器31からの障害情報など)が約1500バイトとすると、それぞれ約0.005ms、約0.12msとなる。ここで、ストア&フォワード方式を使うと、スイッチングハブがフレームの整合性をチェックするため、エラーフレームが伝送路を不用意に流れることを防止できる。
【0164】
先頭のポートが送信した情報を末尾のポートが受信するまでの遅延時間を計算すると、スイッチングハブによる中継遅延はポート毎に0.01ms程度である。一つのスイッチングハブに2つのポートが信号の入り口、出口で必要となるので、図1のように5台のスイッチングハブが従属接続されている場合については、0.1ms程度の遅延を見ればよい。これにストア&フォワード方式の遅れを加味しても1ms以下の遅延で車両編成の端から端まで伝送することができるので、通常の制御信号として十分使用が可能である。
【0165】
以上説明したように、本願発明は、十分に実用性に富み複数車両で構成される列車などの車両ネットワークシステムの構築に大いに役立ち産業の発展に資するものである。
【符号の説明】
【0166】
1〜5 車両
6、7 インタフェイス
20 車両ネットワーク制御装置
21 信号判定部
22、23、24 符号化/復号化部
25、26、28 多重分離ハブ
27 IPアドレス変換部
29 メモリ(蓄積手段)
291 モニタ
300 車両ネットワーク制御装置
301 判定制御部
302 L2スイッチ
303 ハブ
304 ルータ部
305 車両識別符号設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数車両で構成される車両編成の各車両に搭載された、複数の端末装置およびそれらの複数の端末装置が接続される車両ネットワーク制御装置を備え、前記車両ネットワーク制御装置が前記端末装置を監視制御するためのネットワークを制御する車両ネットワークシステムであって、
前記車両ネットワーク制御装置が、
前記各車両の予め定めた1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、
前記各車両の予め定めた2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、
自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、
前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御することを特徴とする車両ネットワークシステム。
【請求項2】
複数車両で構成される車両編成の各車両に搭載された複数の端末装置を監視制御するための車両ネットワークシステムを前記複数の端末装置とともに構成し、前記車両ネットワークシステムのネットワークを制御する車両ネットワーク制御装置であって、
前記各車両の予め定めた1端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第1の通信手段と、
前記各車両の予め定めた2端側の隣接車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第2の通信手段と、
自らが搭載された車両の自車両情報および前記隣接車両に搭載された車両ネットワーク制御装置から前記通信手段を介して取得した前記隣接車両の隣接車両情報を自隣接車両情報として蓄積する車両情報取得蓄積手段と、を備え、
前記自隣接車両情報から得られる車両編成の全車両の車両情報に基いて前記各車両に搭載された前記端末装置を監視制御する車両ネットワークシステムのネットワークを制御することを特徴とする車両ネットワーク制御装置。
【請求項3】
前記自車両以外の前記各車両の車両ネットワーク制御装置との間で情報の送信および受信を行う第3の通信手段を備え、
前記車両情報取得蓄積手段が、前記各車両に搭載された前記車両ネットワーク制御装置と前記第3の通信手段を介して交信して、当該車両ネットワーク制御装置から当該車両の前記自隣接車両情報を取得して前記車両情報取得蓄積手段に蓄積し、蓄積された前記各車両からの自隣接車両情報が相互に矛盾の無い様に各車両の並び順を決めることで車両編成を構成する各車両の接続関係を表す車両編成情報を生成し、
該車両編成情報および各車両に搭載された車両ネットワーク制御装置の車両情報取得蓄積手段に蓄積された前記自隣接車両情報に基いて前記各車両に搭載された端末装置を監視制御する車両ネットワークシステムのネットワークを制御することを特徴とする請求項2に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項4】
前記通信手段を介した他の車両の車両ネットワーク制御装置との交信において、情報を送信する際に使用する通信手段を識別する付加情報を含めて送信し、情報を受信する際に受信した情報に含まれる付加情報に応じて所定の処理を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項5】
前記第1の通信手段および前記第2の通信手段からの送信情報に付加する付加情報と、前記第1の通信手段および前記第2の通信手段が受信する情報に付加された付加情報のそれぞれ同異を判別して、第1端側および前記第2端側における通信手段間の付加情報に係る同異情報を生成し、
前記同異情報に基いて自車両と隣接車両の向きの関係を判別して車両向き情報を生成して前記車両向き情報を含む自隣接車両情報として前記車両情報取得蓄積手段に蓄積することを特徴とする請求項4に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項6】
複数の前記通信手段を有する通信手段切換装置と前記通信手段の付加情報に係る処理を行う判定制御部とを備え、
前記同異情報が付加情報の同一を示すときは前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得し、前記同異情報が付加情報の違いを示すときは前記判定制御部が-予め定められた規則に基いて前記付加情報について、車両内では異ならせ、前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項7】
前記付加情報の再設定について、車両編成を構成する1車両を予め定めた方法で選択して主車両とし、前記主車両となった車両以外の車両を従車両として、主車両となった車両の隣接車両から順番に、前記従車両内では付加情報を異ならせ、前記各車両の前記隣接車両の通信手段との間では同一になるように再設定し、前記各車両の前記隣接車両の車両ネットワーク制御装置から前記自隣接車両情報を取得することを特徴とする請求項6に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項8】
前記車両編成情報を表示するとともに前記各車両への制御情報が入力される監視・制御装置が接続される監視・制御装置接続部を有し、該監視・制御装置接続部に接続された前記監視・制御装置を介し入力された前記制御情報に基いて、前記自車両の前記車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報の表示と他車両の車両情報取得蓄積手段に蓄積された情報の表示を行うとともに前記自車両および前記他車両に搭載された端末装置の制御を行なうための情報を出力することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両ネットワーク制御装置。
【請求項9】
車両編成全体を覆う編成内ネットワークと車両内を覆う車両内ネットワークとの間を接続するネットワークアドレス変換装置を有し、
車両毎に異なる文字若しくは数字又は文字及び数字からなる車両識別符号を有する車両識別符号設定部から車両識別符号を入手し、該車両識別符号に基いて編成内ネットワーク用インタネットプロトコル(IP)アドレスを生成し、複数の前記通信手段および前記ネットワークアドレス変換装置に前記生成された編成内ネットワーク用IPアドレスを付与するとともに、前記車両ネットワークに接続された各車両に搭載される複数の端末装置の端末装置毎の予め定められた共通のIPアドレスと所定の前記編成内ネットワーク用のIPアドレスとを相互変換するための変換表を前記ネットワークアドレス変換装置に設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両ネットワーク制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−205777(P2011−205777A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70179(P2010−70179)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】