説明

車両部品の支持・移動装置

【課題】 トランスミッション等の車両部品を車両に対し簡易且つ迅速に着脱すること。
【解決手段】 車両上のエンジン1に水平に対する傾斜方向から接続されるトランスミッション3を該エンジン1に着脱するトランスミッション支持・移動装置10において、トランスミッション3を支持する受台19を水平に対する傾斜方向にスライドするスライド装置18を備えてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトランスミッション等の車両部品の支持・移動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両上の部品、例えばエンジンに接続されるトランスミッションをエンジンに着脱するトランスミッション支持・移動装置として、台車の上に昇降装置を介して昇降可能に搭載された受台を有してなるものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】トランスミッションは車両上のエンジンに水平から、又は水平に対する傾斜方向から接続されている。このため、従来のトランスミッションをエンジンに着脱するに際し、トランスミッションを支持した受台を水平、又は水平に対する傾斜方向に移動する必要があり、従来のトランスミッション支持・移動装置では、昇降装置により受台を微妙に昇降し、同時に台車を微妙に前後進させる必要があり、作業性が悪い。
【0004】本発明の課題は、トランスミッション等の車両部品を車両に対し簡易且つ迅速に着脱することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、車両上の部品を該車両に着脱する車両部品の支持・移動装置において、前記部品を支持する受台をスライドするスライド装置を備えてなるようにしたものである。
【0006】請求項2の発明は、車両上の部品を該車両に着脱する車両部品の支持・移動装置において、床面を移動する台車と、台車に昇降装置を介して昇降可能に搭載される昇降テーブルと、昇降テーブルに左右傾動装置及び前後傾動装置を介して左右及び前後に傾動可能に搭載される傾動テーブルと、傾動テーブルにスライド装置を介してスライド可能に搭載され、前記部品を支持可能とする受台とを有し、受台を水平に対する傾斜方向にスライド可能としてなるようにしたものである。
【0007】請求項3の発明は、請求項2の発明において更に、前記昇降装置が油圧アクチュエータへの作動油の給排により昇降テーブルを昇降可能とし、油圧アクチュエータの排油路を互いに並列をなす第1排油路と第2排油路に分岐し、第1排油路に小径流路を設けるとともに、この小径流路を足踏式逃し弁により導通可能とするとともに、第2排油路を外部ハンドルにより駆動される開閉弁により開閉可能としてなるようにしたものである。
【0008】
【作用】請求項1の発明によれば下記■の作用がある。
■車両上の部品を該車両に着脱するに際し、該部品を受台に支持した後、スライド装置により受台を単にスライドすることにより、該部品を該車両に対し簡易且つ迅速に着脱できる。
【0009】請求項2の発明によれば下記■の作用がある。
■車両上の部品を水平に対する傾斜方向から該車両に着脱するに際し、昇降装置により受台を該部品の支持高さにセットし、且つ左右傾動装置及び前後傾動装置により受台を該部品の傾斜配置角度にセットすることにより、該部品を受台に安定支持できる。その後、スライド装置により受台を単にその傾斜方向にスライドすることにより、該部品を該車両に対し簡易且つ迅速に着脱できる。
【0010】請求項3の発明によれば下記■の作用がある。
■油圧アクチュエータの第1排油路に設けた小径流路を導通する足踏式逃し弁と、第2排油路を開閉するように外部ハンドルにより駆動される開閉弁とを設けた。従って、部品を車両に対し着脱する際に、部品の高さ位置を調整するために受台を微妙に下降させる必要があるが、作業者は床面から高いレベルに上昇せしめられた受台及び部品を両手で安定的に保持しながら足踏式逃し弁を足踏操作して昇降装置を微妙に下降調整できるから、作業性が良い。この足踏操作で昇降装置を急速に下降させると危険であるから、昇降装置を緩速で下げるために第1排油路に小径流路を設けてある。また、部品を車両に取付けた後は、外部ハンドルにより開閉弁を駆動することにて、昇降装置を急速に下降させることができ、生産性を向上できる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1はトランスミッション支持・移動装置を示す側面図、図2は図1の正面図、図3は受台の前後傾斜状態を示す側面図、図4は受台の左右傾斜状態を示す正面図、図5は油圧シリンダの排油路の構成を示す回路図、図6は車両のパワートレーンを示す平面図である。
【0012】車両のパワートレーンは、図6に示す如く、エンジン1、クラッチ2、トランスミッション3、プロペラシャフト4、デファレンシャル5、車軸6、車輪7の順で接続されている。このとき、本実施形態のトランスミッション3は側面視でエンジン1、クラッチ2に水平に対する傾斜方向(角度θ)で接続される(図3R>3)。
【0013】トランスミッション支持・移動装置10は、図1〜図5に示す如くに構成され、トランスミッション3のドライブ軸をエンジン1側のクラッチ2に着脱可能とする。
【0014】トランスミッション支持・移動装置10は、床面を移動する台車11と、台車11に昇降装置12を介して昇降可能に搭載される昇降テーブル13と、昇降テーブル13に左右傾動装置14を介して左右に傾動可能に搭載される左右傾動テーブル15と、左右傾動テーブル15に前後傾動装置16を介して前後に傾動可能に搭載される前後傾動テーブル17と、前後傾動テーブル17にスライド装置18を介してX方向(前後方向)にスライド可能に搭載され、トランスミッション3を支持可能とする受台19とを有し、受台19を水平に対するX方向の傾斜方向(角度θ)にスライド可能としている。
【0015】台車11は、図1、図2に示す如く、台車11と昇降テーブル13の間に油圧シリンダ31、Xリンク32を介装することにより構成され、空圧スイッチ33のオンにより駆動されるポンプの作動によって油圧シリンダ31を機械的に伸長させ、又は足踏ペダル34のマニュアル操作により油圧シリンダ31を伸長させることにて昇降テーブル13を上昇させる。また、昇降装置12は、後に詳述する如く、逃し弁レバー35により油圧シリンダ31を一気に収縮させ、又は足踏逃し弁36により油圧シリンダ31を段階的に収縮させることにて昇降テーブル13を下降させる。
【0016】左右傾動装置14は、図3、図4に示す如く、昇降テーブル13に左右傾動支軸41を介して左右傾動テーブル15を支持し、左右傾動ハンドル42に連結されている左右傾動ねじ43を昇降テーブル13に揺動可能に支持し、左右傾動ねじ43に螺合するナット44を左右傾動テーブル15に揺動可能に支持しており、ハンドル42による左右傾動ねじ43の回転により左右傾動テーブル15を左右に例えば各最大10度の範囲で傾動可能とする。
【0017】前後傾動装置16は、図3、図4に示す如く、左右傾動テーブル15に前後傾動支軸45を介して前後傾動テーブル17を支持し、前後傾動ハンドル46に連結されている歯車列47、前後傾動ねじ48の軸受箱49を左右傾動テーブル15に揺動可能に支持し、前後傾動ねじ48に螺合するナット50を前後傾動テーブル17に揺動可能に支持しており、ハンドル46による前後傾動ねじ48の回転により前後傾動テーブル47を前後に例えば各最大10度の範囲で傾動可能とする。
【0018】スライド装置18は、図3、図4に示す如く、前後傾動テーブル17の左右に支持ローラ51(又はスライドガイド)を前後方向に配列して備え、受台19の底部に設けたスライドレール52を支持ローラ51の上面に載架するとともに、スライドハンドル53に連結されているスライドねじ54を前後傾動テーブル17の前後方向に延在させて支持し、スライドねじ54に螺合するナット55を受台19の底部に固定しており、スライドハンドル53によるスライドねじ54の回転により受台19を前後傾動テーブル17の傾斜角度方向に沿ってX方向にスライド可能とする。これにより、受台19は、前後傾動装置16が前後傾動テーブル17に付与した水平に対するX方向の傾斜方向に沿ってスライド可能とされる。
【0019】受台19は、図1〜図4に示す如く、左右に各2個のミッション保持アタッチメント57を備え、トランスミッション3の形状に応じて各トランスミッション3を安定的に保持する。
【0020】尚、昇降装置12を昇降させる油圧シリンダ31は、前述の空圧スイッチ33又は足踏ペダル34の操作により作動油を供給されて伸長し、前述の逃しレバー35又は足踏逃し弁36の操作により作動油を排出されて収縮する。このとき、油圧シリンダ31の排油路60は、図5に示す如く、互いに並列をなす第1排油路61と第2排油路62に分岐され、第1排油路61に小径流路61Aを設けるとともに、この小径流路61Aを足踏ペダル63により駆動される足踏逃し弁36(弁体36A)により導通可能とし、第2排油路62を逃し弁レバー35に設けた外部ハンドル35Aにより駆動される開閉弁64により開閉可能としている。
【0021】トランスミッション支持・移動装置10を用いたトランスミッション3の着脱作業手順は以下の通りになる。
【0022】(1)車両を不図示のリフト装置により上昇させる。
【0023】(2)トランスミッション3と、プロペラシャフト4との接続を分離する。
【0024】(3) 車両の下にトランスミッション支持・移動装置10を搬入する。
【0025】(4)トランスミッション支持・移動装置10の昇降装置12により昇降テーブル13を上昇させ、受台19をトランスミッション3の支持高さにセットする。同時に、左右傾動装置14により左右傾動テーブル15を左右傾動させ、前後傾動装置16により前後傾動テーブル17を前後傾動させ、受台19をトランスミッション3の水平に対する左右、前後の傾斜配置角度にセットし、トランスミッション3を支持する。
【0026】(5)トランスミッション支持・移動装置10のスライド装置18により受台19を水平に対するトランスミッション3の傾斜配置角度に沿って前後(X方向)にスライドし、トランスミッション3のドライブ軸をエンジン1側のクラッチ2から分離し、トランスミッション3を車両下より引出して整備又は交換する。
【0027】トランスミッション支持・移動装置10によりトランスミッション3をエンジン1側のクラッチ2に組付ける作業は上述(1)〜(5)と逆の手順による。
【0028】本実施形態によれば、以下の作用がある。
■車両上のエンジン1に水平に対する傾斜方向から接続されるトランスミッション3を着脱するに際し、昇降装置12により受台19をトランスミッション3の支持高さにセットし、且つ左右傾動装置14及び前後傾動装置16により受台19をトランスミッション3の傾斜配置角度にセットすることにより、トランスミッション3を受台19に安定支持できる。その後、スライド装置18により受台19を単にその傾斜方向にスライドすることにより、トランスミッション3をエンジン1側に簡易且つ迅速に着脱できる。
【0029】■油圧シリンダ31の第1排油路61に設けた小径流路61Aを導通する足踏式逃し弁36と、第2排油路62を開閉するように外部ハンドル35Aにより駆動される開閉弁64とを設けた。従って、トランスミッション3をエンジン1に対し着脱する際に、トランスミッション3の高さ位置を調整するために受台19を微妙に下降させる必要があるが、作業者は床面から高いレベルに上昇せしめられた受台19及びトランスミッション3を両手で安定的に保持しながら足踏式逃し弁36を足踏操作して昇降装置12を微妙に下降調整できるから、作業性が良い。この足踏操作で昇降装置12を急速に下降させると危険であるから、昇降装置12を緩速で下げるために第1排油路61に小径流路61Aを設けてある。また、トランスミッション3をエンジン1に取付けた後は、外部ハンドル35Aにより開閉弁64を駆動することにて、昇降装置12を急速に下降させることができ、生産性を向上できる。
【0030】以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明はトランスミッションに限らず、車両部品の着脱に際し広く適用できる。
【0031】また、本発明のスライド装置は、受台をX方向(前後方向)にスライドさせるだけでなく、例えば上下一対のスライド装置を積層状態でX方向とY方向に交差させる等により、受台をX方向(前後方向)とY方向(左右方向)の2方向にスライドできるようにすることができ、車両に対する部品の着脱作業性をより向上できる。
【0032】また、本発明のスライド装置は、水平面内をスライドできるだけのものでも良い。
【0033】また、昇降テーブルの昇降装置の昇降機構、傾動テーブルの傾動装置の傾動機構、受台のスライド装置のスライド機構は、図1〜図5のものに限らないし、それらの各機構は手動操作されるものでなく電動等により機械操作されるものであっても良い。
【0034】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、トランスミッション等の車両部品を車両に対し簡易且つ迅速に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はトランスミッション支持・移動装置を示す側面図である。
【図2】図2は図1の正面図である。
【図3】図3は受台の前後傾斜状態を示す側面図である。
【図4】図4は受台の左右傾斜状態を示す正面図である。
【図5】図5は油圧シリンダの排油路の構成を示す回路図である。
【図6】図6は車両のパワートレーンを示す平面図である。
【符号の説明】
1 エンジン
3 トランスミッション
10 トランスミッション支持・移動装置
11 台車
12 昇降装置
13 昇降テーブル
14 左右傾動装置
15 左右傾動テーブル
16 前後傾動装置
17 前後傾動テーブル
18 スライド装置
19 受台

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両上の部品を該車両に着脱する車両部品の支持・移動装置において、前記部品を支持する受台をスライドするスライド装置を備えてなることを特徴とする車両部品の支持・移動装置。
【請求項2】 車両上の部品を該車両に着脱する車両部品の支持・移動装置において、床面を移動する台車と、台車に昇降装置を介して昇降可能に搭載される昇降テーブルと、昇降テーブルに左右傾動装置及び前後傾動装置を介して左右及び前後に傾動可能に搭載される傾動テーブルと、傾動テーブルにスライド装置を介してスライド可能に搭載され、前記部品を支持可能とする受台とを有し、受台を水平に対する傾斜方向にスライド可能としてなることを特徴とする車両部品の支持・移動装置。
【請求項3】 前記昇降装置が油圧アクチュエータへの作動油の給排により昇降テーブルを昇降可能とし、油圧アクチュエータの排油路を互いに並列をなす第1排油路と第2排油路に分岐し、第1排油路に小径流路を設けるとともに、この小径流路を足踏式逃し弁により導通可能とするとともに、第2排油路を外部ハンドルにより駆動される開閉弁により開閉可能としてなる請求項2記載の車両部品の支持・移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−137769(P2002−137769A)
【公開日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−331382(P2000−331382)
【出願日】平成12年10月30日(2000.10.30)
【出願人】(000135737)株式会社バンザイ (17)
【出願人】(000114695)株式会社ヤスヰ (41)
【Fターム(参考)】