説明

車両駆動用電源システム

【課題】エネルギ効率が改善された、キャパシタを搭載する車両駆動用電源システムを提供する。
【解決手段】車両駆動用電源システムは、メインバッテリB1と、キャパシタ40と、メインバッテリB1よりも電源電圧が低い補機バッテリB2と、DC/DCコンバータ50と、制御装置30とを備える。制御装置30は、メインバッテリB1の電力受入れが制限される場合には、車両の停止指示に応じて、キャパシタ40が蓄積していたエネルギによって補機バッテリB2の充電が行なわれるようにDC/DCコンバータ50を制御する。好ましくは、制御装置30は、停止指示に応じて昇降圧コンバータ12にキャパシタ40の電圧を降圧させてメインバッテリB1側に出力させメインバッテリB1または補機バッテリB2の充電を行なわせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両駆動用電源システムに関し、特に二次電池とキャパシタとを備える車両駆動用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動力源としてモータを備える電気自動車およびハイブリッド車両が近年注目されている。たとえば、特開2002−17048号公報(特許文献1)は、メインバッテリと補機バッテリとキャパシタとを含む車両の電源装置を開示している。
【特許文献1】特開2002−17048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
蓄電装置としてメインバッテリとキャパシタとを搭載する車両では、車両の電源システムをオフする際に、キャパシタのエネルギをメインバッテリに移すことが考えられる。キャパシタの大容量化が進み特性も改善されてきているが、現在のところ、キャパシタの方がメインバッテリに比べて自己放電が進みやすい。したがって、キャパシタからメインバッテリにエネルギを移すことで、システム起動後に移したエネルギを再活用可能となる確率が高まり燃費の改善につながる。
【0004】
しかしながら、メインバッテリも常にキャパシタのエネルギを受入れ可能とは限らない。そのような場合には、キャパシタのエネルギをメインバッテリに移すことができず、たとえば熱エネルギとして無駄に放出するしかなかった。
【0005】
この発明の目的は、エネルギ効率が改善された車両駆動用電源システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、要約すると、車両駆動用電源システムであって、主バッテリと、主バッテリから車両負荷に電力を供給する電力供給経路上に接続されるキャパシタと、主バッテリよりも電源電圧が低い補機バッテリと、補機バッテリとキャパシタとの間で電圧変換を行なう電圧変換器と、電圧変換器の制御を行なう制御装置とを備える。制御装置は、主バッテリの電力受入れが制限される場合には、車両を走行可能状態から走行不可状態に移行させる停止指示に応じて、キャパシタが蓄積していたエネルギによって補機バッテリの充電が行なわれるように電圧変換器を制御する。
【0007】
好ましくは、車両駆動用電源システムは、主バッテリとキャパシタとの間に配置され、主バッテリの電圧を昇圧してキャパシタに供給し、かつキャパシタの電圧を降圧して主バッテリに供給する昇降圧コンバータをさらに備える。電圧変換器は、昇降圧コンバータの主バッテリ側に接続される。制御装置は、停止指示に応じて昇降圧コンバータにキャパシタの電圧を降圧させて主バッテリ側に出力させ主バッテリまたは補機バッテリの充電を行なわせる。
【0008】
好ましくは、車両駆動用電源システムは、キャパシタを電力供給経路に接続する第1のリレーをさらに備える。制御装置は、補機バッテリへの充電が行なわれてキャパシタの電圧が主バッテリの電圧に低下したときに、第1のリレーを切離す。
【0009】
より好ましくは、車両駆動用電源システムは、主バッテリを電力供給経路に接続する第2のリレーをさらに備える。制御装置は、停止指示に応じて第2のリレーを切離す。
【0010】
好ましくは、キャパシタは、直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源システムのエネルギ効率が改善され、車両の燃費が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の構成を示す回路図である。
図1を参照して、車両100は、メインバッテリB1と、キャパシタ40と、エンジン4と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構3と、制御装置30とを含む。モータジェネレータMG2の回転軸は、図示しない減速ギヤや差動ギヤを介して車輪を駆動する。
【0014】
動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合され、これらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分割機構としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続される。なお動力分割機構3の内部にモータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。
【0015】
車両100は、さらに、メインバッテリB1の負極と接地ラインSLとの間に接続されるシステムメインリレーSMR3と、メインバッテリB1の正極と電源ラインPL1との間に接続されるシステムメインリレーSMR2と、メインバッテリB1の正極と電源ラインPL1との間に直列に接続されるシステムメインリレーSMR1および制限抵抗R1とを含む。システムメインリレーSMR1〜SMR3は、制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0016】
車両100は、さらに、メインバッテリB1の端子間の電圧VBを測定する電圧センサ10と、メインバッテリB1に流れる電流IBを検知する電流センサ11とを含む。
【0017】
メインバッテリB1としては、ニッケル水素、リチウムイオン等の二次電池などを用いることができる。
【0018】
車両100は、さらに、電源ラインPL1と接地ラインSL間に接続される平滑用コンデンサC1と、平滑用コンデンサC1の両端間の電圧VLを検知して制御装置30に対して出力する電圧センサ21と、平滑用コンデンサC1の端子間電圧を昇圧する昇降圧コンバータ12と、昇降圧コンバータ12によって昇圧された電圧を平滑化する平滑用コンデンサC2と、平滑用コンデンサC2の端子間電圧VHを検知して制御装置30に出力する電圧センサ13と、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に接続されるディスチャージ用抵抗R2と、昇降圧コンバータ12から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータジェネレータMG1に出力するインバータ14とを含む。
【0019】
昇降圧コンバータ12は、一方端が電源ラインPL1に接続されるリアクトルL1と、電源ラインPL2と接地ラインSL間に直列に接続されるIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2にそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。
【0020】
リアクトルL1の他方端はIGBT素子Q1のエミッタおよびIGBT素子Q2のコレクタに接続される。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続される。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続される。
【0021】
インバータ14は、昇降圧コンバータ12から昇圧された電圧を受けて、たとえばエンジン4を始動させるためにモータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される機械的動力によってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇降圧コンバータ12に戻す。このとき昇降圧コンバータ12は、降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0022】
インバータ14は、U相アーム15と、V相アーム16と、W相アーム17とを含む。U相アーム15,V相アーム16およびW相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に並列に接続される。
【0023】
U相アーム15は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続される。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続される。
【0024】
V相アーム16は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続される。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続される。
【0025】
W相アーム17は、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に直列接続されたIGBT素子Q7,Q8と、IGBT素子Q7,Q8とそれぞれ並列に接続されるダイオードD7,D8とを含む。ダイオードD7のカソードはIGBT素子Q7のコレクタと接続され、ダイオードD7のアノードはIGBT素子Q7のエミッタと接続される。ダイオードD8のカソードはIGBT素子Q8のコレクタと接続され、ダイオードD8のアノードはIGBT素子Q8のエミッタと接続される。
【0026】
モータジェネレータMG1は、三相の永久磁石同期モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々一方端が中点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端がIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端がIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端がIGBT素子Q7,Q8の接続ノードに接続される。
【0027】
車両100は、さらに、昇降圧コンバータ12に対してインバータ14と並列的に接続されるインバータ14Aと、昇降圧コンバータ12による昇圧後の電力を蓄積するキャパシタ40と、電源ラインPL2にキャパシタ40の一方電極を接続するシステムメインリレーC−SMRPと、接地ラインSLにキャパシタ40の他方電極を接続するシステムメインリレーC−SMRGとを含む。
【0028】
車両100は、負荷であるインバータ14,14Aに接続された電源ラインPL2とキャパシタ40の電極との間にシステムメインリレーC−SMRPと直列に接続されたIGBT素子Q9と、キャパシタの正電極から電源ラインPL2に向かう向きを順方向としてIGBT素子Q9に並列接続されるダイオードD9とをさらに備える。
【0029】
図示しないが、システムメインリレーC−SMRG,C−SMRPも、制御装置30から与えられる制御信号SEに応じて導通/非導通状態が制御される。
【0030】
車両100は、さらに、キャパシタ40の端子間の電圧VCを測定する電圧センサ44と、キャパシタ40に流れる電流ICを検知する電流センサ46と、キャパシタ40の温度TCを検知する温度センサ45とを含む。
【0031】
インバータ14Aは車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇降圧コンバータ12の出力する直流電圧を三相交流に変換して出力する。またインバータ14Aは、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇降圧コンバータ12に戻す。このとき昇降圧コンバータ12は降圧回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0032】
インバータ14Aは、U相アーム15Aと、V相アーム16Aと、W相アーム17Aとを含む。U相アーム15A,V相アーム16AおよびW相アーム17Aは、電源ラインPL2と接地ラインSLとの間に並列に接続される。U相アーム15A,V相アーム16AおよびW相アーム17Aの各構成は、U相アーム15,V相アーム16およびW相アーム17とそれぞれ同様であり、詳細な説明は繰返さない。
【0033】
車両100は、さらに、ヘッドランプ等の補機類に電力供給を行なう12Vの補機バッテリB2と、電源ラインPL1と補機バッテリB2および補機類との間に接続されるDC/DCコンバータ50と、補機バッテリB2の電圧VB2を測定する電圧センサ52とを含む。補機類には、ヘッドライトや各種ECUの電源等が含まれる。
【0034】
DC/DCコンバータ50は、制御装置30から与えられる降圧指示に応じて、電源ラインPL2の電圧を降圧して補機バッテリB2への充電や補機類への電力供給を行なうことが可能である。また、DC/DCコンバータ50は、制御装置30から与えられる昇圧指示に応じて、補機バッテリB2の電圧を昇圧して電源ラインPL2に対して供給することも可能である。
【0035】
制御装置30は、2つのモータジェネレータのトルク指令値、モータ回転数、モータ電流値と、電圧VB,VH,VC、電流IB,ICの各値と、起動信号IGとを受ける。そして制御装置30は、昇降圧コンバータ12に対して昇圧指示、降圧指示および動作禁止指示を出力する。
【0036】
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して、昇降圧コンバータ12の出力である直流電圧をモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇降圧コンバータ12側に戻す回生指示とを出力する。
【0037】
同様に制御装置30は、インバータ14Aに対して直流電圧をモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇降圧コンバータ12側に戻す回生指示とを出力する。
【0038】
キャパシタ40は、平滑用コンデンサC2よりも容量が大きい蓄電装置であり、たとえば直列接続される複数の電気二重層コンデンサ42とその間に接続されるフューズ43とを含む。なお、電気二重層コンデンサはエネルギ密度が高いが、1セル当たりの耐圧が2.5〜2.7V程度であるので、昇降圧コンバータ12が出力する300〜650V程度の電圧に用いるためには各セルに電圧を分担させるために複数の電気二重層コンデンサ42のセルを直列に接続して用いる必要がある。
【0039】
従来は、昇降圧コンバータ12の出力電圧のリップルを平滑化するのに十分な程度の容量、たとえば数千μFの平滑用コンデンサC2のみを搭載していたが、これと並列に容量が、たとえば0.5〜2.0F程度のキャパシタ40をさらに搭載する。
【0040】
これにより、たとえばエンジンを停止させてモータジェネレータのみで走行するEV走行時において追越しをするために急加速を行なおうとした場合に、モータジェネレータMG2が車輪を回転させるパワーを増加しつつ、さらにこれと並行してキャパシタ40で補填されるパワーでモータジェネレータMG1を回転させてエンジン4を始動し、エンジン4によって発生されるパワーをさらに加速パワーに加えることが可能となる。つまりキャパシタ40は瞬時における出力可能パワーがメインバッテリB1に比べると大きいので、キャパシタ40によってメインバッテリB1の電力を補うことにより加速応答性をさらに改善することができる。
【0041】
図1に示される車両駆動用電源システムは、要約すると、メインバッテリB1と、メインバッテリB1から車両負荷に電力を供給する電力供給経路上に接続されるキャパシタ40と、メインバッテリB1よりも電源電圧が低い補機バッテリB2と、補機バッテリB2とキャパシタ40との間で電圧変換を行なうDC/DCコンバータ50と、DC/DCコンバータ50の制御を行なう制御装置30とを備える。制御装置30は、メインバッテリB1の電力受入れが制限される場合には、車両を走行可能状態から走行不可状態に移行させる停止指示に応じて、キャパシタ40が蓄積していたエネルギによって補機バッテリB2の充電が行なわれるようにDC/DCコンバータ50を制御する。
【0042】
好ましくは、車両駆動用電源システムは、メインバッテリB1とキャパシタ40との間に配置され、メインバッテリB1の電圧を昇圧してキャパシタ40に供給し、かつキャパシタ40の電圧を降圧してメインバッテリB1に供給する昇降圧コンバータ12をさらに備える。DC/DCコンバータ50は、昇降圧コンバータ12のメインバッテリB1側に接続される。制御装置30は、停止指示に応じて昇降圧コンバータ12にキャパシタ40の電圧を降圧させてメインバッテリB1側に出力させメインバッテリB1または補機バッテリB2の充電を行なわせる。
【0043】
好ましくは、車両駆動用電源システムは、キャパシタ40を電力供給経路に接続するシステムメインリレーC−SMRP,C−SMRGをさらに備える。制御装置30は、補機バッテリB2への充電が行なわれてキャパシタ40の電圧がメインバッテリB1の電圧に低下したときに、システムメインリレーC−SMRP,C−SMRGを切離す。
【0044】
より好ましくは、車両駆動用電源システムは、メインバッテリB1を電力供給経路に接続するシステムメインリレーSMR2,SMR3をさらに備える。制御装置30は、停止指示に応じてシステムメインリレーSMR2,SMR3を切離す。
【0045】
図2は、図1の車両100で実行される電源システムの停止処理の手順を示したフローチャートである。
【0046】
図1、図2を参照して、まずステップS1において起動信号IGがオン状態からオフ状態に変化するか否かが監視される。ステップS1においてオン状態からオフ状態への変化が検知されなければ、繰り返しステップS1において起動信号IGの監視が継続される。
【0047】
一方、ステップS1においてオン状態からオフ状態への変化が検知されると、ステップS1からステップS2に処理が進む。ステップS2では、メインバッテリB1に充電する余裕があるか否かが判断される。
【0048】
メインバッテリB1は、車両制動時の回生電力を回収可能なように、またバッテリ寿命がなるべく長くなるように考慮され蓄電量の上限値と下限値が定められている。その時々の蓄電量が考慮され、制御装置30によって受入れ可能電力Winが定められている。制御装置30は、ステップS2において、この受入れ可能電力Winが所定値たとえば10kWより小さいか否かを判断する。
【0049】
したがって、ステップS2にてメインバッテリB1の蓄電量が管理上限値までまだ余裕がある場合(ステップS2でNO)にはステップS7に処理が進み、昇降圧コンバータ12の指令値を下げる。このようにすることにより、キャパシタ40の電圧がメインバッテリB1の電圧より高い場合にはキャパシタ40からメインバッテリB1に充電が行なわれる。
【0050】
逆に、ステップS2にてメインバッテリB1の蓄電量が管理上限値に近く余裕が無い場合には(ステップS2でYES)ステップS3に処理が進む。
【0051】
ステップS3では、補機バッテリB2に充電する余裕があるか否かが判断される。補機バッテリB2が鉛蓄電池である場合には、端子間電圧を判断することにより充電状態を判断することができる。したがって、ステップS3においては、電圧VB2が14Vより大きいか否かで補機バッテリB2に充電する余裕があるか否かが判断されている。
【0052】
ステップS3にて補機バッテリB2がほとんど満充電状態であり電力を受入れる余裕が無い場合には(ステップS3でYES)ステップS6に処理が進む。ステップS6では、モータジェネレータMG1,MG2に対してトルクを発生させない電流をステータコイルに流すように制御が行なわれ、熱消費によってキャパシタ40の余分なチャージを抜く。キャパシタ40を電極間が高電圧で放置すると寿命に若干の悪影響があるので、不要であれば高電圧をかけておかないほうが良いからである。
【0053】
一方、ステップS3において補機バッテリB2に電力を受入れる余裕がある場合には(ステップS3でNO)ステップS4に処理が進む。ステップS4ではDC/DCコンバータ50の補機バッテリB2側が現在の補機バッテリB2の電圧VB2より+αだけ高い電圧になるようにDC/DCコンバータ50の指令値が設定される。そして、ステップS5において昇降圧コンバータ12の指令値を下げる。このようにすることにより、キャパシタ40から電源ラインPL1に電流が流れ、その電流が補機バッテリB2に流れるので補機バッテリB2の充電が行なわれる。
【0054】
ステップS5、S6,S7のいずれかの処理が終了し、キャパシタ40の余分なエネルギが放出されキャパシタ40の電圧VCがメインバッテリB1の電圧VB1と大体等しくなると、ステップS8に処理が進む。
【0055】
ステップS8では、キャパシタ40を電源ラインPL2および接地ラインSLに接続していたシステムメインリレーC−SMRP,C−SMRGが開放され、キャパシタ40が切離される。そして、ステップS9においてメインバッテリB1を電源ラインPL1および接地ラインSLに接続していたシステムメインリレーSMR2,SMR3が開放され、メインバッテリB1が切離され、ステップS10で処理が終了する。
【0056】
図3は、図2のフローチャートに基づいて電源システムの停止処理が行なわれた状況の一例を示す波形図である。
【0057】
図1、図3を参照して、まず時刻t1以前では、昇降圧コンバータ電圧指令が400Vに設定され昇降圧コンバータ12によってメインバッテリB1の電圧が昇圧された結果、キャパシタの電圧VCは、メインバッテリB1の電圧VB1よりも昇圧された400Vとなっている。また、補機バッテリB2の電圧VB2は、12Vであり補機バッテリB2はまだ充電可能な状態である。
【0058】
時刻t1において、運転者によって電源システムの停止操作が行なわれて起動信号IGがオン状態からオフ状態に変化すると、上述した状態に電源システムがあるので、図2のフローチャートではステップS1→S2→S3→S4→S5の順に処理が進む。
【0059】
その結果、時刻t2では補機バッテリB2に充電された結果、電圧VB2は13Vに上昇し、応じてDC/DCコンバータ電圧指令値(VB2指令値)も13Vより少し上に設定されさらに補機バッテリB2への充電が続けられる。
【0060】
時刻t3では補機バッテリB2にさらに充電された結果、電圧VB2は14Vに上昇し、応じてDC/DCコンバータ電圧指令値(VB2指令値)も14Vより少し上に設定されさらに補機バッテリB2への充電が続けられる。
【0061】
時刻t4では補機バッテリB2にさらに充電された結果、電圧VB2は15Vに上昇し、応じてDC/DCコンバータ電圧指令値(VB2指令値)も15Vより少し上に設定されさらに補機バッテリB2への充電が続けられるが、キャパシタ電圧VCがメインバッテリB1の電圧VB1とほぼ等しくなっており、キャパシタの余分なチャージは抜けているので補機バッテリB2への充電は停止され、IGBT素子Q9がオフ状態に制御されその後システムメインリレーC−SMRP,C−SMRGが開放状態に制御される。
【0062】
なお、充電途中で、補機バッテリB2の電圧が上限値に達した場合は、図2のステップS6で説明した熱消費によるディスチャージ処理に切換えられる。また、図2のステップS3における充電受入れ可能の判断の電圧値や図3の電圧VB2に示した電圧値は例示であり、補機バッテリB2の電圧上限値は電池の種類や性能実力値により異なるので、適宜これらを考慮して定められる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態によれば、熱として消費していたシステム停止時のキャパシタのエネルギを可能な限り回収可能となり、車両のエネルギ効率が改善される。
【0064】
なお、本実施の形態では動力分割機構によりエンジンの動力を車軸と発電機とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型ハイブリッドシステムに適用した例を示した。しかし本発明は、発電機を駆動するためにのみエンジンを用い、発電機により発電された電力を使うモータでのみ車軸の駆動力を発生させるシリーズ型ハイブリッド自動車や、モータのみで走行する電気自動車にも適用できる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の構成を示す回路図である。
【図2】図1の車両100で実行される電源システムの停止処理の手順を示したフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートに基づいて電源システムの停止処理が行なわれた状況の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0067】
3 動力分割機構、4 エンジン、10,13,21,44,52 電圧センサ、11,46 電流センサ、12 昇降圧コンバータ、14,14A インバータ、15,15A U相アーム、16,16A V相アーム、17,17A W相アーム、30 制御装置、40 キャパシタ、42 電気二重層コンデンサ、43 フューズ、45 温度センサ、50 DC/DCコンバータ、100 車両、B1 メインバッテリ、B2 補機バッテリ、C1,C2 平滑用コンデンサ、D1〜D9 ダイオード、L1 リアクトル、MG1,MG2 モータジェネレータ、PL1,PL2 電源ライン、Q1〜Q9 IGBT素子、R1 制限抵抗、R2 ディスチャージ用抵抗、C−SMRP,C−SMRG,SMR1〜SMR3 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用電源システムであって、
主バッテリと、
前記主バッテリから車両負荷に電力を供給する電力供給経路上に接続されるキャパシタと、
前記主バッテリよりも電源電圧が低い補機バッテリと、
前記補機バッテリと前記キャパシタとの間で電圧変換を行なう電圧変換器と、
前記電圧変換器の制御を行なう制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記主バッテリの電力受入れが制限される場合には、車両を走行可能状態から走行不可状態に移行させる停止指示に応じて、前記キャパシタが蓄積していたエネルギによって前記補機バッテリの充電が行なわれるように前記電圧変換器を制御する、車両駆動用電源システム。
【請求項2】
前記主バッテリと前記キャパシタとの間に配置され、前記主バッテリの電圧を昇圧して前記キャパシタに供給し、かつ前記キャパシタの電圧を降圧して前記主バッテリに供給する昇降圧コンバータをさらに備え、
前記電圧変換器は、前記昇降圧コンバータの前記主バッテリ側に接続され、
前記制御装置は、前記停止指示に応じて前記昇降圧コンバータに前記キャパシタの電圧を降圧させて前記主バッテリ側に出力させ前記主バッテリまたは前記補機バッテリの充電を行なわせる、請求項1に記載の車両駆動用電源システム。
【請求項3】
前記キャパシタを前記電力供給経路に接続する第1のリレーをさらに備え、
前記制御装置は、前記補機バッテリへの充電が行なわれて前記キャパシタの電圧が前記主バッテリの電圧に低下したときに、前記第1のリレーを切離す、請求項1に記載の車両駆動用電源システム。
【請求項4】
前記主バッテリを前記電力供給経路に接続する第2のリレーをさらに備え、
前記制御装置は、前記停止指示に応じて前記第2のリレーを切離す、請求項3に記載の車両駆動用電源システム。
【請求項5】
前記キャパシタは、
直列接続される複数の電気二重層コンデンサを含む、請求項1に記載の車両駆動用電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−274785(P2007−274785A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94888(P2006−94888)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】