説明

車両

【課題】レゾルバを用いて検出された回転角に含まれる誤差を適切に補正する。
【解決手段】制御装置40は、レゾルバからの電気信号をレゾルバ−デジタル変換回路で変換して得られるレゾルバ検出角θorgを用いてモータの理想回転角θ0を設定し、理想回転角θ0とレゾルバ検出角θorgとの差分の波形を誤差学習値θeとして記憶する(43)。さらに、制御装置40は、実際のモータ回転速度Nmに対応する位相遅れ時間Tpを算出し(45)、位相遅れ時間Tp分だけレゾルバ検出角θorgを理想回転角θ0に沿って変位させた波形を用いて基準信号Kのずれ時間ΔTnmを算出し(46)、ずれ時間ΔTnmから真の回転角と理想回転角θ0とのオフセット量θofsを算出する(47)。制御装置40は、誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを用いてレゾルバ検出角θorgを補正する(48)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバを用いて回転体の回転角を算出する装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバを用いてモータなどの回転体の回転角を検出する手法が知られている。通常、レゾルバが出力する電気信号はアナログ信号であり、レゾルバ−デジタル変換回路によって算出装置で演算可能なデジタル信号に変換された後、算出装置に出力される。算出装置は、レゾルバ−デジタル変換回路からのデジタル信号を用いてモータの回転角を検出(算出)する。
【0003】
また、レゾルバが出力する電気信号は、レゾルバのロータとステータ間の軸心のずれ等に起因する誤差を含んでいることが知られている。特開2001−165707号公報(特許文献1)には、より高精度な回転角を得るために、モータ回転速度ごとに予め定められた誤差を用いて、レゾルバを用いて検出された回転角に含まれる誤差を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−165707号公報
【特許文献2】特開2008−236959号公報
【特許文献3】特開2004−222448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータ回転速度ごとの誤差が常に一定とは限らないため、特許文献1の技術ではレゾルバを用いて検出された回転角に含まれる誤差を適切に補正できない場合がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、レゾルバを用いて検出された回転角に含まれる誤差を適切に補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車両は、モータと、モータの回転角に同期して周期的に変動する同期誤差がモータの真の回転角に重畳された第1信号を出力するレゾルバと、レゾルバから入力される第1信号を第1信号よりも位相が遅れた第2信号に変換する変換回路と、変換回路から入力される第2信号に基づいてモータの回転角を算出する算出装置とを備える。第1信号に対する第2信号の位相遅れ時間はモータの回転速度に応じて変化する。算出装置は、第2信号を用いてモータの理想回転角を設定し理想回転角と第2信号が示す回転角との差分を学習する学習部と、モータの実際の回転速度に対応する位相遅れ時間を算出し算出された位相遅れ時間を用いて真の回転角と理想回転角とのオフセット量を算出するオフセット算出部と、差分の学習値およびオフセット量を用いて第2信号が示す回転角を補正してモータの回転角を算出する補正部とを含む。
【0008】
好ましくは、オフセット算出部は、第1信号に対する第2信号の位相遅れ幅とモータの回転速度との対応関係を予め記憶しておき、対応関係を用いてモータの実際の回転速度に対応する位相遅れ幅を算出し、算出された位相遅れ幅と実際の回転速度とから位相遅れ時間を算出する。
【0009】
好ましくは、オフセット算出部は、第2信号が示す回転角を位相遅れ時間分だけ理想回転角に沿って変位させることで第1信号が示す回転角を再現し、再現された回転角が基準値となる時点と第2信号が示す回転角が基準値となる時点との間のずれ時間を算出し、ずれ時間および理想回転角の変化率からオフセット量を算出する。
【0010】
好ましくは、補正部は、第2信号が示す回転角から差分の学習値を減じた値にオフセット量を加えた値を、モータの回転角として算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レゾルバを用いて検出された回転角に含まれる誤差を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】車両の全体構成図である。
【図2】レゾルバ本来の検出角およびレゾルバ検出角θorgの時間変化の一例を示す図である。
【図3】制御装置の機能ブロック図である。
【図4】モータ回転速度Nmと位相遅れ幅との対応関係を示す図である。
【図5】ずれ時間ΔTnmおよびオフセット量θofsの算出手法を説明するための図である。
【図6】制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に従う車両1の全体構成図である。車両1は、直流電源10と、コンバータ12と、インバータ14と、モータM1と、平滑コンデンサC0,C1と、レゾルバ30と、レゾルバ−デジタル(以下、単に「R/D」という)変換回路35と、制御装置40とを含む。
【0015】
車両1は、モータM1が発生する動力を用いた走行が可能な電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池車等の電気エネルギによって走行可能な車両)である。
【0016】
直流電源10は、代表的には、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電装置により構成される。
【0017】
コンバータ12は、リアクトルと、2つのスイッチング素子と、2つのダイオードとを含む。コンバータ12は、制御装置40からの制御信号によって制御され、直流電源10とインバータ14(モータM1)との間で電圧変換を行なう。
【0018】
インバータ14は、正極線7および負極線5の間に並列に設けられる3相(U、V、W相)の各相の上下アーム(スイッチング素子)から成る。インバータ14は、制御装置40からの制御信号によって制御され、コンバータ12(直流電源10)とモータM1との間で電力変換を行なう。
【0019】
モータM1は、車両1を走行させるためのトルクを発生する。モータM1は、代表的には、3相の永久磁石型同期電動機であり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されて構成される。さらに、各相コイルの他端は、インバータ14の各相の上下アームの中間点と接続されている。モータM1は、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。
【0020】
平滑コンデンサC0は、正極線6と負極線5との間に接続され、正極線6および負極線5に含まれる電力変動成分を低減する。平滑コンデンサC1は、正極線7と負極線5との間に接続され、正極線7および負極線5に含まれる電力変動成分を低減する。
【0021】
レゾルバ30は、磁束の変化に基づいてモータM1の回転角に応じた電気信号(アナログ信号)を出力する。レゾルバ30が出力する電気信号には、モータM1の回転角に同期して周期的に変動する誤差成分(以下、「同期誤差」ともいう)が含まれる。すなわち、レゾルバ30は、モータM1の真の回転角に同期誤差が重畳された電気信号を出力する。レゾルバ30の構成そのものは周知のものを用いればよい。
【0022】
レゾルバ30の倍角数をn(nは自然数)とした場合、モータM1が1/n回転する間にレゾルバ30が出力する電気信号が示す回転角は360度分だけ変化する。なお、本発明は、いずれの倍角数のレゾルバにも適用可能である。以下では、倍角数nを「1」とする場合を例示的に説明する。
【0023】
R/D変換回路35は、レゾルバ30から入力される電気信号を角度信号(デジタル信号)に変換し、制御装置40に出力する。なお、図1では、R/D変換回路35がコンバータ12、インバータ14および制御装置40と別々に設けられているが、R/D変換回路35は、コンバータ12およびインバータ14と同じユニット内に設けられるようにしてもよいし、制御装置40の内部に設けられるようにしてもよい。
【0024】
以下では、R/D変換回路35が出力する角度信号が示す回転角を「レゾルバ検出角θorg」と称する。
【0025】
R/D変換回路35は、入力信号の誤差の位相に対する出力信号の誤差の位相がモータM1の回転速度に応じて遅れてしまうという特性(以下「位相遅れ特性」という)を有する。この位相遅れ特性の影響により、レゾルバ30の電気信号が示す本来の回転角(以下「レゾルバ本来の検出角」という)に含まれる本来の同期誤差に対するレゾルバ検出角θorgに含まれる同期誤差の位相遅れ時間は、モータM1の回転速度に応じて変化してしまう。以下では、レゾルバ検出角θorgに含まれる同期誤差を「遅れ同期誤差」とも称する。
【0026】
制御装置40は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵した電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成され、当該メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1の動作を制御する。
【0027】
以上のような構成を有する車両1において、制御装置40は、レゾルバ検出角θorgを用いてモータM1の回転角を算出し、算出した結果を踏まえてモータM1の状態を制御する。
【0028】
図2は、レゾルバ本来の検出角およびレゾルバ検出角θorgの時間変化の一例を示す図である。なお、図2では、モータM1の回転速度(以下「モータ回転速度Nm」という)が一定である場合を例示している。
【0029】
レゾルバ本来の検出角の波形は、モータM1の真の回転角に本来の同期誤差が重畳した波形となる。これに対し、レゾルバ検出角θorgの波形は、R/D変換回路35の位相遅れ特性の影響によって、モータM1の真の回転角に本来の同期誤差に対して位相が遅れた遅れ同期誤差が重畳した波形となる。したがって、矢印αに示すように、レゾルバ検出角θorgの波形は、レゾルバ本来の検出角を真の回転角に沿ってスライド(変位)させたような波形となる。
【0030】
制御装置40は、レゾルバ検出角θorgから同期誤差の影響を排除するために、レゾルバ検出角θorgを用いてモータM1の理想回転角θ0を設定し、理想回転角θ0とレゾルバ検出角θorgとの差分の波形を「誤差学習値θe」として記憶する。そして、制御装置40は、記憶された誤差学習値θeを次のレゾルバ周期におけるレゾルバ検出角θorgの補正に用いる。
【0031】
ところが、理想回転角θ0は、モータM1の回転速度に応じて位相遅れ時間が変化する「遅れ同期誤差」を含むレゾルバ検出角θorgを基に設定される。その結果、理想回転角θ0と真の回転角との間には、モータ回転速度Nmに応じて変動する「角度オフセット(以下「オフセット量θofs」という)」が発生してしまう。この影響により、理想回転角θ0を基準として学習された誤差学習値θeを用いてレゾルバ検出角θorgを単純に補正しただけでは、モータM1の真の回転角を精度よく算出することができない。
【0032】
そこで、制御装置40は、本来の同期誤差に対する遅れ同期誤差の位相遅れ時間Tpをモータ回転速度Nmに応じて算出し、算出した位相遅れ時間Tp分だけレゾルバ検出角θorgを理想回転角θ0に沿って変位させることでレゾルバ本来の検出角の波形を再現し、再現された波形を用いて誤差学習値θeに含まれるオフセット量θofsを算出して記憶しておく。そして、制御装置40は、誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを用いて次のレゾルバ周期におけるレゾルバ検出角θorgを補正する。これにより、モータM1の回転角を精度よく算出する。この点が本願の最も特徴的な点である。
【0033】
図3は、レゾルバ検出角θorgを用いてモータM1の回転角を算出する際の制御装置40の機能ブロック図である。図3に示した各機能ブロックは、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0034】
制御装置40は、取得部41、生成部42、学習部43、算出部44〜47、補正部48を含む。
【0035】
取得部41は、R/D変換回路35からレゾルバ検出角θorgを取得し、生成部42、学習部43、算出部46、補正部48に出力する。
【0036】
生成部42は、レゾルバ検出角θorgが0度(=基準値)となる時点で基準信号Kを生成する。生成部42は、生成した基準信号Kを学習部43に出力する。
【0037】
学習部43は、レゾルバ周期毎に、上述の誤差学習値θeを求める。
まず、学習部43は、理想回転角θ0を設定する。理想回転角θ0は、前回の基準信号Kの生成時点から今回の基準信号Kの生成時点までの時間(レゾルバ検出角θorgが0度から360度変化して再び0度となるまでの時間)の全期間に渡ってレゾルバ検出角θorgが一定速度で変化したと仮定したときの回転角である。したがって、理想回転角θ0の傾き(変化率)は、360度を1レゾルバ周期で割った値となる。また、理想回転角θ0の傾きは、モータM1の真の回転角の傾きとほぼ同じ値となる(図2参照)。
【0038】
次に、学習部43は、設定された理想回転角θ0と取得部41からのレゾルバ検出角θorgとの差分の波形を「誤差学習値θe」として求める。すなわち、学習部43は、下記の式(1)を用いて誤差学習値θeを求める。
【0039】
θe=θorg−θ0 …(1)
そして、学習部43は、求めた誤差学習値θeを記憶する。記憶された誤差学習値θeは、次のレゾルバ周期でのレゾルバ検出角θorgの補正に用いられる。
【0040】
算出部44〜47は、上述の誤差学習値θeに含まれるオフセット量θofsを算出する。
【0041】
算出部44は、後述する補正部48が生成したレゾルバ補正角φの変化率から、モータ回転速度Nmを算出する。なお、モータ回転速度Nmを得る手法はこれに限定されず、他の手法でモータ回転速度Nmを算出あるいは取得するようにしてもよい。
【0042】
算出部45は、算出部44が算出したモータ回転速度Nmから、レゾルバ本来の検出角に対するレゾルバ検出角θorgの位相遅れ幅(すなわち本来の同期誤差に対する遅れ同期誤差の位相遅れ幅)を算出する。
【0043】
図4は、モータ回転速度Nmと位相遅れ幅との対応関係を示す図である。R/D変換回路35の位相遅れ特性によって、レゾルバ本来の検出角に対してレゾルバ検出角θorgの位相が遅れるが、その位相遅れ幅はレゾルバ30から入力される電気信号の周波数(モータ回転速度Nmに比例する値)が大きいほど大きくなる傾向にある。そのため、算出部45は、図4に示すようなモータ回転速度Nmと位相遅れ幅との対応関係を予め実験等で求めて記憶しておき、この対応関係を用いて実際のモータ回転速度Nmに対応する位相遅れ幅を算出する。そして、算出部45は、算出された位相遅れ幅とモータ回転速度Nmとから位相遅れ時間Tpを算出する。
【0044】
図3に戻って、算出部46は、レゾルバ検出角θorgと位相遅れ時間Tpとを用いて、本来の基準信号に対する実際の基準信号Kのずれ時間ΔTnmを算出する。算出部47は、ずれ時間ΔTnmを用いて真の回転角と理想回転角θ0との間のオフセット量θofsを算出する。
【0045】
図5は、ずれ時間ΔTnmおよびオフセット量θofsの算出手法を説明するための図である。
【0046】
算出部46は、レゾルバ検出角θorgを位相遅れ時間Tpだけ理想回転角θ0に沿ってスライド(変位)させる。すなわち、真の回転角の傾きと同じ傾きである理想回転角θ0に沿ってレゾルバ検出角θorgを位相遅れ時間Tpだけスライドさせることで、レゾルバ本来の検出角(=真の角度+本来の同期誤差)の波形を再現する。そして、算出部46は、再現されたレゾルバ本来の検出角を用いたときの基準信号Kの生成時点(レゾルバ本来の検出角が基準値である0度となる時点)と実際の基準信号Kの生成時点(レゾルバ検出角θorgが基準値である0度となる時点)との間の時間差を「ずれ時間ΔTnm」として算出する。
【0047】
算出部47は、真の回転角の傾きと理想回転角θ0の傾きとが同じであることを考慮し、ずれ時間ΔTnmに理想回転角θ0の傾きを乗じた値を、誤差学習値θeに含まれるオフセット量θofsとして算出して記憶しておく。
【0048】
図3に戻って、補正部48は、前回のレゾルバ周期における誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを読み出し、読み出した誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを用いて今回のレゾルバ周期におけるレゾルバ検出角θorgの誤差補正を行なう。補正部48は、下記の式(2)を用いて補正後のレゾルバ検出角φを算出する。
【0049】
φ=θorg−θe+θofs …(2)
図2を用いて説明すれば、時刻t1のレゾルバ検出角θorgは、前回のレゾルバ周期における同位相の時刻t0の誤差学習値θeを用いて補正されることになる。しかし、時刻t0の誤差学習値θeそのものがオフセット量θofsを含んでいる。そこで、補正部48は、時刻t1のレゾルバ検出角θorgから時刻t0の誤差学習値θeを減じた値に時刻t0のオフセット量θofsを加えた値(=θorg−θe+θofs)を、時刻t1の補正後のレゾルバ検出角φとする。これにより、時刻t1の補正後のレゾルバ検出角φはモータM1の真の回転角とほぼ同じ値となる。
【0050】
図6は、上述の機能を実現するための制御装置40の処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
S11にて、制御装置40は、R/D変換回路35からレゾルバ検出角θorgを取得する。
【0052】
S12にて、制御装置40は、レゾルバ検出角θorgが基準値(=0度)となる時点で基準信号Kを生成する。
【0053】
S13にて、制御装置40は、基準信号Kから理想回転角θ0を求め、理想回転角θ0とレゾルバ検出角θorgとの差分の波形を「誤差学習値θe」として求めて記憶する。
【0054】
S14にて、制御装置40は、モータ回転速度Nmを算出する。
S15にて、制御装置40は、モータ回転速度Nmに対応する位相遅れ幅を算出し(図4参照)、算出された位相遅れ幅とモータ回転速度Nmとから位相遅れ時間Tpを算出する。なお、モータ回転速度Nmから位相遅れ時間Tpを直接算出するようにしてもよい。
【0055】
S16にて、制御装置40は、レゾルバ検出角θorgを位相遅れ時間Tp分だけ理想回転角θ0に沿って変位させた波形を用いて、本来の基準信号に対する実際の基準信号Kのずれ時間ΔTnmを算出する(図5参照)。
【0056】
S17にて、制御装置40は、ずれ時間ΔTnmに理想回転角θ0の傾きを乗じた値をオフセット量θofsとして算出して記憶する(図5参照)。
【0057】
S18にて、制御装置40は、前回のレゾルバ周期における誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを読み出す。
【0058】
S19にて、制御装置40は、今回のレゾルバ周期におけるレゾルバ検出角θorgから前回のレゾルバ周期における誤差学習値θeを減じた値に前回のレゾルバ周期におけるオフセット量θofsを加えた値(=θorg−θe+θofs)を、補正後のレゾルバ検出角φとして算出する。
【0059】
以上のように、本実施の形態による制御装置40は、レゾルバ検出角θorgを用いてモータM1の理想回転角θ0を設定し、理想回転角θ0とレゾルバ検出角θorgとの差分の波形を誤差学習値θeとして記憶する。さらに、制御装置40は、実際のモータ回転速度Nmに応じて位相遅れ時間Tpを算出し、算出された位相遅れ時間Tp分だけレゾルバ検出角θorgを理想回転角θ0に沿って変位させた波形を用いてオフセット量θofsを算出する。このように、実際のモータ回転速度Nmに対応する位相遅れ時間Tp分だけレゾルバ検出角θorgを理想回転角θ0に沿って変位させるため、実際のモータ回転速度Nmが変動したとしてもオフセット量θofsを適切に算出することができる。
【0060】
そして、制御装置40は、誤差学習値θeおよびオフセット量θofsを用いてレゾルバ検出角θorgを補正する。このような補正により、レゾルバ検出角θorgに含まれる遅れ同期誤差の影響を適切に排除することができる。その結果、レゾルバ30を用いてモータM1の回転角を精度よく算出することができる。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 車両、5 負極線、6,7 正極線、10 直流電源、12 コンバータ、14 インバータ、30 レゾルバ、35 変換回路、40 制御装置、41 取得部、42 生成部、43 学習部、44〜47 算出部、48 補正部、C0,C1 平滑コンデンサ、M1 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータの回転角に同期して周期的に変動する同期誤差が前記モータの真の回転角に重畳された第1信号を出力するレゾルバと、
前記レゾルバから入力される前記第1信号を前記第1信号よりも位相が遅れた第2信号に変換する変換回路と、
前記変換回路から入力される前記第2信号に基づいて前記モータの回転角を算出する算出装置とを備え、
前記第1信号に対する前記第2信号の位相遅れ時間は前記モータの回転速度に応じて変化し、
前記算出装置は、
前記第2信号を用いて前記モータの理想回転角を設定し前記理想回転角と前記第2信号が示す回転角との差分を学習する学習部と、
前記モータの実際の回転速度に対応する前記位相遅れ時間を算出し算出された前記位相遅れ時間を用いて前記真の回転角と前記理想回転角とのオフセット量を算出するオフセット算出部と、
前記差分の学習値および前記オフセット量を用いて前記第2信号が示す回転角を補正して前記モータの回転角を算出する補正部とを含む、車両。
【請求項2】
前記オフセット算出部は、前記第1信号に対する前記第2信号の位相遅れ幅と前記モータの回転速度との対応関係を予め記憶しておき、前記対応関係を用いて前記モータの実際の回転速度に対応する前記位相遅れ幅を算出し、算出された前記位相遅れ幅と前記実際の回転速度とから前記位相遅れ時間を算出する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記オフセット算出部は、前記第2信号が示す回転角を前記位相遅れ時間分だけ前記理想回転角に沿って変位させることで前記第1信号が示す回転角を再現し、再現された回転角が基準値となる時点と前記第2信号が示す回転角が前記基準値となる時点との間のずれ時間を算出し、前記ずれ時間および前記理想回転角の変化率から前記オフセット量を算出する、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記補正部は、前記第2信号が示す回転角から前記差分の学習値を減じた値に前記オフセット量を加えた値を、前記モータの回転角として算出する、請求項1に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72686(P2013−72686A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210677(P2011−210677)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】