説明

車体の前部構造

【課題】 車両前部に作用する衝突荷重を効率良く分散できる車体の前部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 車両2前部に配置されたラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分6aを、車幅方向の両側から支持する一対の第1のラジエータサポート支持部材4と、この一対の第1のラジエータサポート支持部材4より車幅方向における内側に配置され後方から支持する第2のラジエータサポート支持部材11,12とによって、車体の骨格9に連結し、車両衝突時において、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分6aに対する衝突荷重を、第1のラジエータサポート支持部材4と、この第1のラジエータサポート支持部材4の車幅方向の内側に配置された第2のラジエータサポート支持部材11,12とを介して、車体の骨格9に伝達させ効率的に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の各種車両における車体の前部構造では、他の車両との衝突時における衝撃を吸収するための構造が採用されている。この種の車体の前部構造としては、ラジエータの周縁部を支持するラジエータサポートの上端部を、エンジンルームの外枠上部を構成するエプロンアッパメンバによって車幅方向から支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−43071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、近年にあっては、衝突荷重を分散させることが望まれている。そして、上記特許文献1に記載の従来技術に比して、車両前部における衝突荷重を、より効率良く分散させることが求められている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、車両前部に作用する衝突荷重を効率良く分散できる車体の前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車体の前部構造は、車両における車幅方向両側に配置され車両の客室の前部を形成する一対のフロントピラーを骨格の一部とする、その車体の前部構造であって、ラジエータを支持するラジエータサポートと、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を、車幅方向両側から支持してフロントピラーに連結する一対の第1のラジエータサポート支持部材と、一対の第1のラジエータサポート支持部材より車幅方向における内側に配置され、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を後方から支持して車体の骨格に連結する一対の第2のラジエータサポート支持部材と、を備えることを特徴としている。
【0006】
このような車体の前部構造によれば、車両前部に配置されたラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分が、車幅方向の両側から支持する一対の第1のラジエータサポート支持部材と、この一対の第1のラジエータサポート支持部材より車幅方向における内側に配置され後方から支持する第2のラジエータサポート支持部材とによって、車体の骨格に連結されているため、車両衝突時において、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第1のラジエータサポート支持部材と、この第1のラジエータサポート支持部材の車幅方向の内側に配置された第2のラジエータサポート支持部材とを介して、車体の骨格に伝達され効率的に分散される。また、第1のラジエータサポート支持部材より車幅方向における内側に配置された第2のラジエータサポート支持部材によって、支持点距離が短くなり、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分にかかる曲げモーメントが減少するため、従前に比して、より高い衝突荷重に耐えることができる。
【0007】
ここで、一対のフロントピラーの前部同士を連結するカウル部を備え、第2のラジエータサポート支持部材は、カウル部に連結されていると、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第2のラジエータサポート支持部材を介してカウル部に伝達され、車体の骨格に効率的に分散される。
【0008】
また、カウル部における第2のラジエータサポート支持部材を支持する部分とフロントピラーとを連結するカウル支持部材を備える構成としてもよい。このような構成であると、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第2のラジエータサポート支持部材を介してカウル部に伝達され、カウル支持部材によってフロントピラーに伝達され、車体の骨格に効率的に分散される。
【0009】
また、一対のフロントピラーの前部同士を連結するカウル部と、このカウル部に連結され客室の前壁を構成するダッシュパネルと、を備え、第2のラジエータサポート支持部材は、ダッシュパネルに連結されていると、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第2のラジエータサポート支持部材を介して、ダッシュパネルに伝達され、車体の骨格に効率的に分散される。
【0010】
ダッシュパネルにおける第2のラジエータサポート支持部材を連結する部分とカウル部とを連結するダッシュパネル支持部材を備える構成としてもよい。このような構成であると、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第2のラジエータサポート支持部材を介して、ダッシュパネルに伝達され、ダッシュパネル支持部材によってフロントピラーに伝達され、車体の骨格に効率的に分散される。
【0011】
また、第2のラジエータサポート支持部材は、車両の前後方向においてラジエータサポートとカウル部との間に配置された他の部材を介して、車体の骨格に連結されていると、上記作用が効果的に奏されると共に、第2のラジエータサポート支持部材を構成する個々の部材の長さを短くすることが可能となり、従前に比して、より大きな荷重に耐えることができる。また、第2のラジエータサポート支持部材の配置の自由度が向上される。
【0012】
また、他の部材は、サスペンションに用いられるショックアブソーバを車体側で支持するサスペンションタワーであると、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第2のラジエータサポート支持部材及びサスペンションタワーを介して伝達され、車体の骨格に効率的に分散されると共に、第2のラジエータサポート支持部材を構成する個々の部材の長さを短くすることが可能となり、従前に比して、より大きな荷重に耐えることができる。また、第2のラジエータサポート支持部材の配置の自由度が向上される。
【0013】
また、本発明による車体の前部構造は、車両における車幅方向両側に配置され車両の客室の前部を形成する一対のフロントピラーと、客室の下面に形成され車両の前後方向に延びるフロアトンネルと、を骨格の一部とする、その車体の前部構造であって、ラジエータを支持するラジエータサポートと、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を、車幅方向両側から支持してフロントピラーに連結する一対の第1のラジエータサポート支持部材と、車幅方向において、一対の第1のラジエータサポート支持部材より内側に配置され、車両の前後方向において、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分とフロアトンネルとの間に配置される一対の第2のラジエータサポート支持部材と、を備え、第2のラジエータサポート支持部材は、エンジンを間に介して配置されることを特徴としている。
【0014】
このような車体の前部構造によれば、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第1のラジエータサポート支持部材、第2のラジエータサポート支持部材及びエンジンを介して伝達され、車体の骨格に効率的に分散されると共に、第2のラジエータサポート支持部材を構成する個々の部材の長さを短くすることが可能となり、従前に比して、より大きな荷重に耐えることができる。また、第2のラジエータサポート支持部材の配置の自由度が向上される。また、第1のラジエータサポート支持部材より車幅方向における内側に配置された第2のラジエータサポート支持部材によって、支持点距離が短くなり、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分にかかる曲げモーメントが減少するため、従前に比して、より高い衝突荷重に耐えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車体の前部構造によれば、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分に対する衝突荷重が、第1のラジエータサポート支持部材と、この第1のラジエータサポート支持部材の車幅方向の内側に配置された第2のラジエータサポート支持部材とを介して、車体の骨格に伝達されるため、車両前部に作用する衝突荷重を効率良く分散させることが可能となる。また、ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分にかかる曲げモーメントが減少するため、従前に比して、より高い衝突荷重に耐えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の車体の前部構造の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車体の前部構造を前方側から示す斜視図、図2は、図1に示す車体の前部構造の平面図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、本明細書において、車両が直前進している際の前方方向を「前方」と定め、「前」「後」「左」「右」等の方向を表す語を用いることとする。
【0017】
図1及び図2に示す車体の前部構造1は、例えば乗用車等の車両2における車体の前部構造である。車両2は前部にエンジンルーム2aを備え、このエンジンルーム2aの後方には隔壁としてのダッシュパネル3を介して客室が形成されている。なお、図1には、右側のみを図示している。
【0018】
図1に示すように、車体の前部構造1は、エンジンルーム2aの前部に配置されラジエータ(不図示)を支持するラジエータサポート6と、エンジンルーム2aの枠体上部を構成するエプロンアッパメンバ(第1のラジエータサポート支持部材)4と、エンジン(不図示)を挟んで車幅方向両側に配置され前後方向に延在する一対のフロントサイドメンバ(一方のみを図示)5と、ダッシュパネル3の上方に配置され、車幅方向に延在するカウル部7とを備えている。
【0019】
ラジエータサポート6は、矩形の枠体を構成し、車幅方向に延在してラジエータの上端部を支持するラジエータサポートアッパ(ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分)6aと、車高方向に延在して上端部がラジエータサポートアッパ6aの端部に連結されラジエータの側部を支持する一対のラジエータサポートサイド6bと、車幅方向に延在して両端部がラジエータサポートサイド6bの下端部に連結されラジエータの下端部を支持するラジエータサポートロア6cとを有し、これらのラジエータサポートアッパ6a、ラジエータサポートサイド6b、ラジエータサポートロア6cで構成される枠体内にラジエータを収容する。そして、ラジエータサポートアッパ6aは、車幅方向両側から一対のエプロンアッパメンバ4によって支持されている。なお、ラジエータサポート6は、矩形の枠体を成しているが、ラジエータサポートロア6cやラジエータサポートサイド6bを有しない構成としてもよい。
【0020】
エプロンアッパメンバ4は、車両2の左右両側に配置され前後方向に延在し、エプロンアッパメンバ4の前部は、車幅方向の内側に向かって折曲し、上記したように、ラジエータサポートアッパ6aに連結されている。一方、エプロンアッパメンバ4の後端側は、車体の骨格部材の一部であり客室の前部を形成するフロントボデーピラーアッパーリインフォースメント(フロントピラー、以下Aピラーという)9に連結されている。また、エプロンアッパメンバ4の車幅方向の内側には、サスペンションに用いられるショックアブソーバ(不図示)の上部を車体側で支持するサスペンションタワー8が設けられている。このサスペンションタワー8は、車幅方向においてエプロンアッパメンバ4からエンジンルーム2a側に突出し、車高方向に延在する略筒状を成して、ショックアブソーバをエンジンルーム2a側から覆う形状とされ、当該ショックアブソーバを懸吊する構成とされている。
【0021】
車体の骨格部材の一部であるフロントサイドメンバ5は、その前部がラジエータサポートサイド6bに連結され、車両2の前後方向に延在し、ダッシュパネル3の前面に連結されていると共に、ダッシュパネル3の前面側から下方に屈曲され、客室のフロアパネルの下面側に延びている。フロントサイドメンバ5は、車体の強度や剛性を向上させるための部材でありかつ衝突時にバンパ(不図示)等の車両2前部で吸収しきれなかった衝撃を吸収する部材であり、所定の変形荷重を有する。
【0022】
カウル部7は、ダッシュパネル3の上端に連結されて車幅方向に延在し、カウル部7の両端部は、一対のAピラー9に連結されている。カウル部7は、車高方向に立設された前壁7a及び後壁7bと、これらの前壁7a及び後壁7bの下端部同士を互いに連結する底板7cと、前壁7a及び後壁7bの上端部同士を互いに連結する上板(図では上板が無い状態を示す)とを有し、フロントガラス(不図示)を下方から支持すると共に、エアコン(不図示)への空気の供給経路として利用される。
【0023】
ここで、本実施形態の車体の前部構造1は、一対のエプロンアッパメンバ4より車幅方向における内側に配置され、ラジエータサポートアッパ6aを後方から支持してカウル部7の前壁7aに連結する一対の第1の補強部材(ラジエータサポートアッパtoカウル部)11と、カウル部7の前壁7aにおける第1の補強部材を支持する部分とカウル部7の後壁7bとを連結するカウルバルク12と備えている。そして、これらの第1の補強部材11及びカウルバルク12が第2のラジエータサポート支持部材を構成している。
【0024】
第1の補強部材11は、車両2の前後方向に略水平に延在し、ラジエータサポートアッパ6aを後方から支持するものである。具体的には、第1の補強部材11の前端部11aは、ラジエータサポートアッパ6aの車幅方向において、エプロンアッパメンバ4による支持点より内側に連結されている。一方、第1の補強部材11の後端部11bは、カウル部7の前壁7aの前面に連結されている。第1の補強部材11のラジエータサポートアッパ6a及びカウル部7への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0025】
カウルバルク12は、カウル部7の前壁7aと後壁7bとの間に介在する補強部材であり、カウルバルク12の前端部が、第1の補強部材11の後端部11bに対応するカウル部7の前壁7aの部分に連結され、一方、カウルバルク12の後端部が、カウル部7の後壁7bに連結されている。なお、カウルバルク12のカウル部7の前壁7a及び後壁7bへの連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0026】
このように構成された車体の前部構造1によれば、車両2が例えば他の車両等の障害物と、車両2の前方側で衝突した際には、図2に示すように、ラジエータサポートアッパ6aに対して前方から荷重Fがかかり、このラジエータサポートアッパ6aに対する荷重Fは、エプロンアッパメンバ4及び第1の補強部材11に伝達され、エプロンアッパメンバ4に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される一方で、第1の補強部材11に伝達された荷重は、カウル部7、カウルバルク12、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される。このように本実施形態の車体の前部構造1によれば、ラジエータサポートアッパ6aに対する衝突荷重が、車体の骨格に効率的に分散される。また、エプロンアッパメンバ4より車幅方向における内側に配置された第1の補強部材11によって、支持点距離Lが短くなり、ラジエータサポートアッパ6aにかかる曲げモーメントが減少するため、従前に比して、より高い衝突荷重に耐えることができる。
【0027】
なお、上記第1実施形態においては、第2のラジエータサポート支持部材を、第1の補強部材11及びカウルバルク12を別部材として、カウル部7の前壁7aを挟んで第1の補強部材11とカウルバルク12とを連結する構成としているが、第1の補強部材11とカウルバルク12とを一体物として、カウル部7の前壁7aを貫通する構成としても良い。因みに、特に好ましい構成として第1実施形態では、カウルバルク12を用いているが、第1の補強部材11のみを備える構成を採用しても良い。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態に係る車体の前部構造について、図3及び図4を参照しながら説明する。この第2実施形態の車体の前部構造21が第1実施形態の車体の前部構造1と違う点は、ラジエータサポートアッパ6aとカウル部7とを連結する第1の補強部材11に代えて、サスペンションタワー(他の部材)8を介してラジエータサポートアッパ6aとカウル部7とを連結する第2の補強部材(ラジエータサポートアッパtoサスペンションタワー)23及び第3の補強部材(サスペンションタワーtoカウル部)24を用いた点である。そして、これらの第2の補強部材23、第3の補強部材24及びカウルバルク12が第2のラジエータサポート支持部材を構成している。
【0029】
第2の補強部材23は、車両22の前後方向に略水平に延在し、ラジエータサポートアッパ6aを後方から支持するものである。具体的には、第2の補強部材23の前端部23aは、ラジエータサポートアッパ6aの車幅方向における内側に連結されている。一方、第2の補強部材23の後端部23bは、サスペンションタワー8の上部かつ車幅方向における内側の前側に連結されている。第2の補強部材23のラジエータサポートアッパ6a及びサスペンションタワー8への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0030】
第3の補強部材24は、車両22の前後方向に略水平に延在し、サスペンションタワー8及び第2の補強部材23を介して、ラジエータサポートアッパ6aを後方から支持するものである。具体的には、第3の補強部材24の前端部24aは、サスペンションタワー8の上部かつ車幅方向における内側の後側に連結されている。一方、第3の補強部材24の後端部24bは、カウル部7の前壁7aの前面に連結されている。第3の補強部材24のサスペンションタワー8及びカウル部7への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0031】
カウルバルク12は、第1実施形態と同様に、カウル部7の前壁7aと後壁7bとの間に介在する補強部材であり、カウルバルク12の前端部が、第3の補強部材24の後端部24bに対応するカウル部7の前壁7aの部分に連結され、一方、カウルバルク12の後端部が、カウル部7の後壁7bに連結されている。なお、カウルバルク12のカウル部7の前壁7a及び後壁7bへの連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0032】
このように構成された車体の前部構造21において、車両22が例えば他の車両等の障害物と、車両22の前方側で衝突した際に、ラジエータサポートアッパ6aにかかる荷重F(図4参照)は、エプロンアッパメンバ4及び第2の補強部材23に伝達され、エプロンアッパメンバ4に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される一方で、第2の補強部材23に伝達された荷重は、サスペンションタワー8を介して第3の補強部材24に伝達され、第3の補強部材24に伝達された荷重は、カウル部7、カウルバルク12、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される。
【0033】
このような車体の前部構造21であっても、第1実施形態の車体の前部構造1と同様の効果を得ることができ、加えて、サスペンションタワー8を介してラジエータサポートアッパ6aとカウル部7とを連結する第2の補強部材23及び第3の補強部材24を備えているため、第2のラジエータサポート支持部材を構成する個々の部材23,24の長さを短くすることができ、従前に比して、より大きな荷重に耐えることができる。また、第2のラジエータサポート支持部材の配置の自由度が向上されている。
【0034】
なお、上記第2実施形態において、他の部材としてサスペンションタワー8を挙げ、このサスペンションタワー8を介してラジエータサポートアッパ6aと車体の骨格部材とを連結する車体の前部構造21としているが、車両22の前後方向においてラジエータサポート6とカウル部7との間に配置されたその他の部材を介して、ラジエータサポートアッパ6aと車体の骨格部材とを連結する車体の前部構造としてもよい。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態に係る車体の前部構造について、図5を参照しながら説明する。この第3実施形態の車体の前部構造31が第1実施形態の車体の前部構造1と違う点は、ラジエータサポートアッパ6aとカウル部7とを連結する第1の補強部材11に代えて、エンジン14を間に介してラジエータサポートアッパ6aと車体の骨格部材の一部であるフロアトンネル15との間に配置された第4の補強部材(ラジエータサポートアッパtoエンジン)33及び第5の補強部材(エンジンtoフロアトンネル)34を用いた点である。そして、これらの第4の補強部材33及び第5の補強部材34が第2のラジエータサポート支持部材を構成している。
【0036】
ここで、フロアトンネル15は、客室下部を構成するフロアパネルで形成され、車幅方向の中央で車両32の前後方向に延在している。
【0037】
第4の補強部材33は、車両32の前後方向に略水平に延在し、ラジエータサポートアッパ6aにかかる前方からの衝突荷重Fを後方のエンジン14に伝達するものである。具体的には、第4の補強部材33の前端部33aは、ラジエータサポートアッパ6aの車幅方向における内側に連結され、一方、第4の補強部材33の後端部33bは、エンジン14の前面に向かって延びている。第4の補強部材33のラジエータサポートアッパ6aへの連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0038】
第5の補強部材34は、車両32の前後方向に略水平に延在し、エンジン14にかかる前方からの衝突荷重Fを後方のフロアトンネル15に伝達するものである。具体的には、第5の補強部材34の前端部34aは、エンジン14の後面に対面するように配置され、一方、第5の補強部材34の後端部34bは、フロアトンネル15に連結されている。第5の補強部材34のフロアトンネル15への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0039】
このように構成された車体の前部構造31において、車両32が例えば他の車両等の障害物と、車両32の前方側で衝突した際に、ラジエータサポートアッパ6aにかかる荷重Fは、エプロンアッパメンバ4及び第4の補強部材33に伝達され、エプロンアッパメンバ4に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される一方で、第4の補強部材33に伝達された荷重は、エンジン14を介して第5の補強部材34に伝達され、第5の補強部材34に伝達された荷重は、フロアトンネル15に伝達されて車体の骨格部材に分散される。
【0040】
このような車体の前部構造31であっても、第1実施形態の車体の前部構造1と同様の効果を得ることができ、加えて、エンジン14を間に介してラジエータサポートアッパ6aとフロアトンネル15との間に配置された第4の補強部材33及び第5の補強部材34を備えているため、第2のラジエータサポート支持部材を構成する個々の部材33,34の長さを短くすることができ、従前に比して、より大きな荷重に耐えることができる。また、第2のラジエータサポート支持部材の配置の自由度が向上されている。
【0041】
次に、本発明の第4実施形態に係る車体の前部構造について、図6及び図7を参照しながら説明する。この第4実施形態の車体の前部構造41が第1実施形態の車体の前部構造1と違う点は、ラジエータサポートアッパ6aとカウル部7とを連結する第1の補強部材11に代えて、ラジエータサポートアッパ6aとダッシュパネル3とを連結する第6の補強部材(ラジエータサポートアッパtoダッシュパネル)43と、ダッシュパネル3における第6の補強部材43を連結する部分とカウル部7とを連結するダッシュパネル支持部材(ダッシュパネルtoカウル)44(図7参照)とを用いた点である。そして、第6の補強部材43が第2のラジエータサポート支持部材を構成している。
【0042】
第6の補強部材43は、車両42の前後方向に略水平に延在し、ラジエータサポートアッパ6aを後方から支持するものである。具体的には、第6の補強部材43の前端部43aは、ラジエータサポートアッパ6aの車幅方向における内側に連結されている。一方、第6の補強部材43の後端部43bは、ダッシュパネル3の前面に連結されている。第6の補強部材43のラジエータサポートアッパ6a及びダッシュパネル3への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0043】
ダッシュパネル支持部材44は、図7に示すように、ダッシュパネル3の後面にそって車高方向に延在し、ダッシュパネル3を後方から支持する補強部材であり、ダッシュパネル支持部材44の下端部44aは、ダッシュパネル3を挟んで、第6の補強部材43の後端部43bに連結され、一方、ダッシュパネル支持部材44の上端部44bは、カウル部7の底板7cの下面に連結されている。ダッシュパネル支持部材44のダッシュパネル3及びカウル部7への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0044】
このように構成された車体の前部構造41において、車両42が例えば他の車両等の障害物と、車両42の前方側で衝突した際に、ラジエータサポートアッパ6aにかかる荷重Fは、エプロンアッパメンバ4及び第6の補強部材43に伝達され、エプロンアッパメンバ4に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される一方で、第6の補強部材43に伝達された荷重は、ダッシュパネル3を介してダッシュパネル支持部材44に伝達され、ダッシュパネル支持部材44に伝達された荷重は、カウル部7、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される。このような車体の前部構造41であっても、第1実施形態の車体の前部構造1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、上記第4実施形態においては、特に好ましいとして、ダッシュパネル支持部材44を備える構成としているが、第6の補強部材43のみを備える構成を採用しても良い。
【0046】
次に、本発明の第5実施形態に係る車体の前部構造について、図8を参照しながら説明する。この第5実施形態の車体の前部構造51が第1実施形態の車体の前部構造1と違う点は、カウル部7におけるカウルバルク12の後端を支持する部分とAピラー9とを連結するカウル支持部材13を備える点である。
【0047】
このカウル支持部材13は、カウル部7の後壁7bの後面(客室)側に配置され、カウル部7の車幅方向における端部7dをAピラー9側から支持する補強部材であり、カウル支持部材13のカウル部7側の端部13aは、カウル部7及びカウルバルク12を介して第1の補強部材11の後端部11bに連結され、一方、カウル支持部材13のAピラー9側の端部13bは、Aピラー9の車幅方向における内(客室)側の面に連結され、なお、カウル支持部材13のカウル部7及びAピラー9への連結は、溶接を採用してもよく、ボルト等を用いて連結しても良い。
【0048】
このように構成された車体の前部構造51において、車両が例えば他の車両等の障害物と、車両の前方側で衝突した際に、ラジエータサポートアッパにかかる荷重Fは、エプロンアッパメンバ4及び第1の補強部材11に伝達され、エプロンアッパメンバ4に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される一方で、第1の補強部材11に伝達された荷重は、カウルバルク12、カウル部7を介してAピラー9、カウル支持部材13に伝達され、カウル支持部材13に伝達された荷重は、Aピラー9に伝達されて車体の骨格部材に分散される。このような車体の前部構造であっても、第1実施形態の車体の前部構造1と同様の効果を得ることができ、加えて、カウル支持部材13を備えているため、カウル部7をAピラー9で一層強固に支持することができる。
【0049】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態においては、第2のラジエータ支持部材を、カウル部7を介してAピラー9に連結する構成、フロアトンネル15に連結する構成としているが、その他の強度部材を介して車体の骨格部材と連結する構成としても良く、ダッシュクロスメンバ等のその他の車体の骨格部材に連結する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車体の前部構造を前方側から示す斜視図である。
【図2】図1に示す車体の前部構造の平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る車体の前部構造を前方側から示す斜視図である。
【図4】図3に示す車体の前部構造の平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る車体の前部構造を示す平面図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る車体の前部構造を前方側から示す斜視図である。
【図7】図6の車体の前部構造を後方側から示す斜視図である。
【図8】本発明の第5実施形態に係る車体の前部構造を後方側から示す斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1,21,31,41,51…車体の前部構造、2,22,32,42…車両、3…ダッシュパネル、4…エプロンアッパメンバ(第1のラジエータサポート支持部材)、6…ラジエータサポート、6a…ラジエータサポートアッパ(ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分)、7…カウル部、8…サスペンションタワー(他の部材)、9…Aピラー(フロントピラー)、11…第1の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、12…カウルバルク(第2のラジエータサポート支持部材)、13…カウル支持部材、14…エンジン、15…フロアトンネル、23…第2の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、24…第3の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、33…第4の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、34…第5の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、43…第6の補強部材(第2のラジエータサポート支持部材)、44…ダッシュパネル支持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における車幅方向両側に配置され前記車両の客室の前部を形成する一対のフロントピラーを骨格の一部とする、その車体の前部構造であって、
ラジエータを支持するラジエータサポートと、
前記ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を、車幅方向両側から支持して前記フロントピラーに連結する一対の第1のラジエータサポート支持部材と、
前記一対の第1のラジエータサポート支持部材より車幅方向における内側に配置され、前記ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を後方から支持して前記車体の骨格に連結する一対の第2のラジエータサポート支持部材と、を備えることを特徴とする車体の前部構造。
【請求項2】
前記一対のフロントピラーの前部同士を連結するカウル部を備え、
前記第2のラジエータサポート支持部材は、前記カウル部に連結されていることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項3】
前記カウル部における前記第2のラジエータサポート支持部材を支持する部分と前記フロントピラーとを連結するカウル支持部材を備えることを特徴とする請求項2記載の車体の前部構造。
【請求項4】
前記一対のフロントピラーの前部同士を連結するカウル部と、
このカウル部に連結され前記客室の前壁を構成するダッシュパネルと、を備え、
前記第2のラジエータサポート支持部材は、前記ダッシュパネルに連結されていることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項5】
前記ダッシュパネルにおける前記第2のラジエータサポート支持部材を連結する部分と前記カウル部とを連結するダッシュパネル支持部材を備えることを特徴とする請求項4記載の車体の前部構造。
【請求項6】
前記第2のラジエータサポート支持部材は、車両の前後方向において前記ラジエータサポートと前記カウル部との間に配置された他の部材を介して、前記車体の骨格に連結されていることを特徴とする請求項2記載の車体の前部構造。
【請求項7】
前記他の部材は、サスペンションに用いられるショックアブソーバを前記車体側で支持するサスペンションタワーであることを特徴とする請求項6記載の車体の前部構造。
【請求項8】
車両における車幅方向両側に配置され前記車両の客室の前部を形成する一対のフロントピラーと、前記客室の下面に形成され車両の前後方向に延びるフロアトンネルと、を骨格の一部とする、その車体の前部構造であって、
ラジエータを支持するラジエータサポートと、
前記ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分を、車幅方向両側から支持して前記フロントピラーに連結する一対の第1のラジエータサポート支持部材と、
車幅方向において、前記一対の第1のラジエータサポート支持部材より内側に配置され、
前記車両の前後方向において、前記ラジエータの上部を支持するラジエータサポートの部分と前記フロアトンネルとの間に配置される一対の第2のラジエータサポート支持部材と、を備え、
前記第2のラジエータサポート支持部材は、エンジンを間に介して配置されることを特徴とする車体の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−193118(P2006−193118A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9353(P2005−9353)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】