車体の前部構造
【課題】エンジンフード部材を反力部材として、有効に機能させることが出来る車体の前部構造を提供する。
【解決手段】エンジンフード部材2の前端縁2a近傍には、ワイヤ部材6を、車幅方向に挿通してガイドするガイド部材7…が、各々設けられている。
フードリッジ部材4,4の内部には、左,右一対の各リトラクタ装置9,9が、各々固着されている。
ガイド部材7…によって、エンジンフード部材2の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に配索されたワイヤ部材6は、滑車部材8,8によって、エンジンフード部材2と、各フードリッジ部材4,4との間に、各々張設されて、リトラクタ装置9,9によって、フードリッジ部材4,4のワイヤ挿通開口4f,4fから送出及び収納される。
【解決手段】エンジンフード部材2の前端縁2a近傍には、ワイヤ部材6を、車幅方向に挿通してガイドするガイド部材7…が、各々設けられている。
フードリッジ部材4,4の内部には、左,右一対の各リトラクタ装置9,9が、各々固着されている。
ガイド部材7…によって、エンジンフード部材2の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に配索されたワイヤ部材6は、滑車部材8,8によって、エンジンフード部材2と、各フードリッジ部材4,4との間に、各々張設されて、リトラクタ装置9,9によって、フードリッジ部材4,4のワイヤ挿通開口4f,4fから送出及び収納される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体の前部構造に関し、特に、入力荷重を有効に受け止めることができる車体の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前部に形成されるエンジンルームの上方を閉塞するエンジンフード部材の内側面周縁に設けられる外骨材及び、この外骨材間に掛け渡される内骨材とを有する車体の前部構造が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような車体の前部構造では、前記外骨材及び、内骨材の内部に、ワイヤ部材が、緊結状態で、挿通されている。
【0004】
次に、この従来の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0005】
この従来の車体の前部構造では、前記エンジンフード部材の内側面周縁に設けられた前記外骨材及び、内骨材の内部に、ワイヤ部材が、緊結状態で、挿通されている。
【0006】
このため、前記内骨材端部が、このワイヤ部材に係合されて、位置決め状態が保持されることにより、前記外骨材と、前記内骨材とが、一体化される。
【0007】
従って、重量の増大を抑制しつつ、前記エンジンフード部材の強度を向上させることができる。
【特許文献1】特開平6−72355号公報(第0011段落乃至第0022段落、図1乃至図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の車体の前部構造においては、図19に示すように、車両1の前部1aに衝撃荷重が加わると、エンジンフード部材2の後部2gに、大きなモーメントが発生し、このエンジンフード部材2の前端縁2aからめくれるように、車両上方へ向けて、屈曲する場合がある。
【0009】
このような場合も含めて、補強されたエンジンフード部材2では、与えられた衝撃荷重を受けきれず、緩和が充分に行われない虞があり、この車両1に対して、前記衝撃荷重を与えた歩行者等の衝突体の保護の観点を満たすことが困難であるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、エンジンフード部材を反力部材として、有効に機能させることが出来る車体の前部構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、エンジンルームの上部開口部の周縁に設けられた車体側構造材と、前記エンジンルームの上部開口部を、開閉可能として設けられたエンジンフード部材と、該エンジンフード部材の前端縁及び前記車体側構造材との間に張設される連結部材とを有する車体の前部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、前記エンジンフード部材及び前記車体側構造材との間に、前記連結部材が張設されているので、前記エンジンフード部材に、車両前方から衝撃荷重が加わっても、該エンジンフード部材の前端縁が、前記車体側構造体から離間することを抑制することが出来る。
【0013】
このため、前記エンジンフード部材の前端縁が、めくれるように屈曲変形する虞が減少し、該衝撃荷重の入力を、前部から後方に向けて座屈させる圧縮変形として、該エンジンフード部材が受け止める構成とすることにより、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークを設定できる。
【0014】
従って、該エンジンフード部材を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施の形態の車体の前部構造を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1乃至図18は、この発明の実施の形態の車体の前部構造を示すものである。なお、前記図19に示した車体の前部構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0017】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車体の前部構造では、図3に示すように、車両1の前部1aに形成されたエンジンルーム3の上部開口部3aには、エンジンフード部材2が、後部2gの車幅方向両側縁近傍に一対設けられたヒンジ部2h,2hを回動中心として、回動可能に設けられている。
【0018】
そして、このヒンジ部2h,2hによる回動で、このエンジンフード部材2の前端縁2aを上下方向に揺動させることにより、このエンジンルーム3の上部開口部3aを、開閉動作可能とするように構成されている。
【0019】
このエンジンフード部材2は、図4に示すように、上面側外側面部を構成する略平板状のフードアウタ2cと、このフードアウタ2cの裏面側に貼設されて、複数のビード状部2e…が形成されることにより、このエンジンフード部材2の剛性を向上させる補強が行われるフードインナ2dとを有して、主に構成されている。
【0020】
そして、これらのビード状部2e…のうち、エンジンフード部材2の前端縁2a近傍に位置する部分には、接続部材としてのワイヤ部材6が、挿通されるワイヤ挿通孔2f…及び両端に位置するワイヤ挿通孔2j,2jが、車幅方向に沿って、一直線上に並べられて、穿設形成されている。
【0021】
更に、これらのビード状部2e…のエンジンフード部材2の前端縁2a近傍に位置する前記フードアウタ2c側対向面には、図1に示すように、前記ワイヤ部材6を、車幅方向に挿通してガイドするガイド部材7…が、各々設けられている。
【0022】
また、このエンジンフード部材2の前端縁2a近傍で、車幅方向略中央には、図4に示すように、フードロック機構のストライカ部材2bが、固設されている。
【0023】
この実施の形態では、車体側構造材としての一対のフードリッジ部材4,4が、前記エンジンルーム3の上部開口部3aの車幅方向両側縁部に沿って、一対設けられている。
【0024】
このフードリッジ部材4,4は、図1に示すように、各々、フードリッジインナパネル4a及びフードリッジアウタパネル4bとが、各上,下フランジ部間を接合させることにより、車幅方向の断面形状が、略閉断面ロ字状を呈するように構成されている。
【0025】
この左,右のフードリッジ部材4,4は、各々図2に示すように、車両1の車幅方向両側面部の一部を構成するダッシュサイドパネル部材5に、各後端部4dが接続されて、車体側の強度部材と一体になるように、連設されている。
【0026】
また、このフードリッジ部材4,4の内部には、このダッシュサイドパネル部材5,5から、車両前方に向けて延設された前記フードリッジインナパネル4a及びフードリッジアウタパネル4bとの間に位置するように、車両前後方向に沿って、前記ワイヤ部材6を挿通可能な閉断面空間部4c,4cが、各々延設形成されている。
【0027】
このうち、前記フードリッジインナパネル4a,4aの前端部4e,4e近傍には、前記エンジンルーム3内空間と、この閉断面空間部4c,4cとを連通させて、前記ワイヤ部材6を挿通するワイヤ挿通開口4f,4fが、開口形成されている。
【0028】
このワイヤ挿通開口4f,4fは、前記両フードリッジインナパネル4a,4aの対向面に形成されて、車両前後長さ寸法及び上下方向寸法が、前記エンジンフード部材2が、開閉動作に伴って揺動して、前記ワイヤ挿通孔2j,2jの位置が、車両前後方向へ移動しても、前記張設されたワイヤ部材6が、このワイヤ挿通開口4f,4fの開口周縁部に摺接しないように設定されている。
【0029】
また、このワイヤ挿通開口4f,4fの周縁部後側縁と、前記フードリッジアウタパネル4bとの間には、滑車部材8,8が、各回転軸8c,8c方向を車幅方向に沿わせて、回動自在となるように設けられている。
【0030】
これらの滑車部材8,8は、図2に示すように、前記ワイヤ部材6が、ワイヤ係合溝8aに係合されることによって、前記車両前後方向に沿う前記閉断面空間部4c延設方向と、これらの各ワイヤ挿通開口4f,4fから前記エンジンフード部材2の前記ワイヤ挿通孔2j,2jに向けて、送出される車両略上下方向との間で、前記ワイヤ部材6が張設される方向が、変換されることにより、このワイヤ部材6の配索される延長方向が変えられるように構成されている。
【0031】
すなわち、この滑車部材8,8は、各々前記ワイヤ部材6が、捲き廻されて係合されるワイヤ係合溝8a,8aが、外周面車幅方向略中央部に環状に凹設形成されていると共に、このワイヤ係合溝8a,8aの各両側部に設けられたワイヤ規制フランジ8b,8bによって、係合が容易に解除されないように、構成されている。
【0032】
そして、このワイヤ係合溝8a,8aに係合された前記ワイヤ部材6が、これらの滑車部材8,8の回転に伴って、滑動する際に、各前記ワイヤ規制フランジ8b,8bによって、ガイドされて、前記ワイヤ挿通開口4f,4fを介して、前記エンジンルーム3内空間と、この閉断面空間部4c,4cとの間で、車両略上下方向へ出没可能に張設されている。
【0033】
また、前記フードリッジ部材4,4の内部には、図2に示すように、前記ダッシュサイドパネル部材5,5と重合接続される後端部4d,4d位置で、左,右一対の各リトラクタ装置9,9が、各々固着されている。
【0034】
そして、前記ガイド部材7…によって、前記エンジンフード部材2の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に配索された前記ワイヤ部材6は、前記滑車部材8,8によって、前記エンジンフード部材2と、前記フードリッジ部材4,4との間に、各々張設されている。
【0035】
また、この各滑車部材8,8から、フードリッジ部材4,4内の閉断面空間部4c,4c延設方向に向けて、車両後方へ挿通される前記ワイヤ部材6の各端部6a,6aが、これらの各リトラクタ装置9,9の略ボックス状の筐体9c,9c内部に回転可能に枢着された各巻き取り軸部9a,9aに接続されることにより、前記滑車部材8,8と、リトラクタ装置9,9との間に、ワイヤ部材6が張設されて、一対のフードリッジ部材4,4間が、このワイヤ部材6で連結されるように構成されている。
【0036】
これらの各リトラクタ装置9,9の各巻き取り軸部9a,9aは、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞時には、回転により、この巻き取られたワイヤ部材6を各々送出及び送出されたワイヤ部材6を巻き取って収納可能に構成されている。
【0037】
また、これらの各リトラクタ装置9,9は、送出されたワイヤ部材6が、巻き取られて、収納されるように、このリトラクタ装置9,9に設けられたバネ部材9b,9bによって、前記エンジンフード部材2の開放の妨げとならない程度のバネ力が、前記各巻き取り軸部9a,9aに与えられて、巻き取り方向に付勢されている。
【0038】
更に、この実施の形態では、衝撃荷重が加わった場合若しくは、このワイヤ部材6の張力が、所定値以上に、増大した場合には、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機能を有するロック機構10,10が、これらのリトラクタ装置9,9に各々設けられている。
【0039】
この実施の形態のロック機構10は、図2に示すように、前記リトラクタ装置9の筐体9c内部に設けられていて、前記巻き取り軸部9aに巻き取られた前記ワイヤ部材6の外周面部と対向する上壁部に、ヒンジ部10aを介して、このワイヤ部材6と近接及び離反可能に揺動自在に軸支されるブレーキ片10bを有して、主に構成されている。
【0040】
このブレーキ片10bは、通常状態では、図2又は、図5に示すように、前記筐体9cの後壁部側に傾倒していると共に、歩行者等の衝突体の前記車両1の前部1aへの荷重入力により、所定値以上の衝撃荷重が、車両1の前部1aに加わると、図6に示すように、車両前方方向へ下辺部を揺動移動させて、ワイヤ部材6に下辺部を当接させて、噛み合わせることにより、このワイヤ部材6の送出が、拘束されるように構成されている。
【0041】
次に、この実施の形態の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0042】
この実施の形態の車体の前部構造では、通常状態では、図2又は、図5に示すように、前記ロック機構10のブレーキ片10bが、筐体9cの後壁部側に傾倒されている。
【0043】
従って、ブレーキ片10bの下辺部は、前記ワイヤ部材6に、当接すること無く、ロックされていない状態で、これらのワイヤ部材6は、車幅方向左,右両側のリトラクタ装置9,9の前記各巻き取り軸部9a,9aのバネ部材9b,9bの付勢力に逆らって、各々引き出される。
【0044】
このため、前記エンジンフード部材2の開閉塞に伴って、前記リトラクタ装置9,9の巻き取り軸部9a,9aが回転されながら、前記滑車部材8,8を介して、前記ワイヤ挿通開口4f,4fから、送出される。
【0045】
前記ワイヤ部材6の前記リトラクタ装置9からの引き出し力は、主に、前記巻き取り軸部9aのバネ部材9bの付勢力に抗うのみで、前記エンジンフード部材2を、図2に示す閉塞状態から、円滑に前記図5に示す開放状態へと移行させることができる。
【0046】
この際、この実施の形態では、前記滑車部材8,8によって、前記ワイヤ部材6の引き出し方向が、前記車両前後方向に沿う前記閉断面空間部4c延設方向から、車両略上下方向に変換されている。
【0047】
このため、前記エンジンフード部材2のワイヤ挿通孔2j,2j位置が、このエンジンフード部材2の開放角度に応じて、車両前後方向へ移動し、前記ワイヤ挿通開口4fから引き出される角度が、変わった場合でも、この滑車部材8,8の円滑な回転動作が、確保されながら、追従出来る。
【0048】
従って、更に円滑に、エンジンルーム3の上面部を開放できるので、このワイヤ部材6によって、前記エンジンフード部材2の開放動作が、阻害される虞がない。
【0049】
更に、開放状態では、前記ワイヤ部材6が、エンジンルーム3の両側縁部に位置するフードリッジ部材4,4と、エンジンフード部材2の車幅方向両側縁に開口形成されたワイヤ挿通孔2j,2jとの間にのみ、前記リトラクタ装置9,9から引き出された状態で、張設されている。
【0050】
このため、前記エンジンルーム3の上部を大きく開放させることができて、特に、この車両1の前部1aでは、このエンジンルーム3の前縁部と、前記エンジンフード部材2の前端縁2aとの間に形成される空間からエンジンルーム3内への整備作業性が、良好で、メンテナンス性が損なわれる虞がない。
【0051】
また、このエンジンルーム3の各側縁部方向からのエンジンルーム3内への整備作業も、図5に示されるように、ワイヤ部材6が、左,右一本づつ張設されているだけなので、作業者が干渉する虞が少なく、メンテナンス性を良好なものとすることができる。
【0052】
更に、前記エンジンフード部材2を、図5に示す開放状態から、図2に示す前記閉塞状態に移行させる際、前記リトラクタ装置9,9の前記巻き取り軸部9a,9aが、バネ部材9b,9bによって、巻き取り方向に付勢力を与えられながら回転して、前記ワイヤ部材6が、この巻き取り軸部9a,9aの周囲に巻き取られる。
【0053】
このため、前記エンジンフード部材2の閉塞に伴って、前記ワイヤ挿通開口4f,4fから、前記滑車部材8,8を介して、前記フードリッジ部材4,4内の閉断面空間部4c,4c内に、前記ワイヤ部材6が引き込まれる。
【0054】
従って、前記ワイヤ部材6が、撓むことなく、端部6a,6aから前記巻き取り軸部9a,9aに巻き取られ、前記リトラクタ装置9,9の筐体9c,9c内部に収納されて、前記エンジンルーム3の両側縁部に位置するフードリッジ部材4,4と、エンジンフード部材2の車幅方向両側縁との間に挟まる虞が無い。
【0055】
しかも、この実施の形態では、車幅方向左,右一対のリトラクタ装置9,9によって、同時に、前記ワイヤ部材6が、端部6a,6aから、巻き取られる。
【0056】
このため、一つのリトラクタ装置9によって巻き取る場合の約2倍速の巻き取り速度で、巻き取って、収納できるので、前記エンジンフード部材2を比較的速い速度で閉塞しても、撓むことなく、エンジンフード部材2と、エンジンルーム3の上部開口部3a周縁との間に、挟み込んでしまう虞がない。
【0057】
次に、前記リトラクタ装置9,9のロック機構10が、ロック機能を発揮する場合について説明する。
【0058】
歩行者等の衝突体が、前記車両1の前部1aへ衝突した際の荷重入力若しくは、このワイヤ部材6の張力が、所定値以上に、増大した場合には、図6に示すように、前記ブレーキ片10bが、前記ヒンジ部10aを回動中心として、下辺部を車両前方方向へ揺動移動させて、前記ワイヤ部材6の外周面部に食い込むませるように、噛み合わせられる。
【0059】
このため、前記巻き取り軸部9aの回転は、ロック(拘束)停止されて、このワイヤ部材6の送出が、停止される。
【0060】
従って、図6に示すように、前記エンジンフード部材2は、閉塞されたまま、前記エンジンフード部材2及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6が張設される。
【0061】
よって、車両前方から、車両前部1aの前記エンジンフード部材2に、衝撃荷重が加わっても、このエンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材4,4から車両上方へ向けて、離間する変形が、抑制される。
【0062】
このため、図19に示すような前記エンジンフード部材2の前端縁2aが、めくれるように屈曲変形する虞が減少し、歩行者等の衝突等の衝撃荷重の入力を、図6に示すように、前部1aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2が受け止める構成とすることが出来る。
【0063】
このように、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークが、このエンジンフード部材2の車両前後方向長さを用いて、設定することができる。
【0064】
従って、このエンジンフード部材2を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0065】
また、前記エンジンフード部材2の裏面側に、車幅方向に挿通される前記ワイヤ部材6によって、エンジンルーム3の車幅方向両側縁部に位置する左,右一対のフードリッジ部材4,4間が、エンジンフード部材2の前端縁2aを介して、連結されている。
【0066】
このため、オフセット前面衝突時に、衝突側の何れか一方のフードリッジ部材4に加わる衝撃荷重を、非衝突側の他方のフードリッジ部材4に、このエンジンフード部材2を介して、伝達させて分散させることができる。
【0067】
従って、車両1の前部1aの衝撃吸収性を、更に、良好なものとすることができる。
【0068】
また、図4に示すように、この実施の形態の車体の前部構造では、エンジンフード部材2の前端縁2a近傍の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に張設された前記ワイヤ部材6が、前記複数のガイド部材7…によって、配索されている。
【0069】
このため、このワイヤ部材6が、配索された箇所の前記エンジンフード部材2の面内外方向の剛性は向上させつつ、車両前方から後方に向けての圧縮方向への剛性に対する寄与を少なくすることが出来、エンジンフード部材2の衝撃吸収量を減少させることはない。
【0070】
しかも、前記エンジンフード部材2では、前記ワイヤ部材6が、車幅方向に略直線状に配索された位置よりも、車両後方側の面内,外方向の剛性は、従来と略同様に、通常のエンジンフード部材2の様に、フードアウタ2c及びフードインナ2dを構成するビード状部2e…の材質,形状及び厚さによって設定できる。
【0071】
このため、歩行者の頭部保護等の衝突体への保護性能を低下させることが無い。
【0072】
更に、この実施の形態では、前記一対のリトラクタ装置9,9によって、通常使用時には、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞動作に伴って、前記ワイヤ部材6が、車両前後方向に延設される前記フードリッジ部材4,4の閉断面空間部4c,4c内から、前記ワイヤ挿通孔2j,2jを介して、送出及び収納される。
【0073】
このため、前記エンジンフード部材2が、開放される時には、前記ワイヤ部材6が、前記リトラクタ装置9,9から、前端縁2aが、車両上方へ回動される距離と略同じ寸法長さのみ、引き出されれば良い。
【0074】
従って、引き出し長さ寸法が、一つのリトラクタ装置9を用いて、この実施の形態の2倍の長さを引き出さなければならないものに比して、ワイヤ部材6が短くても良い分、小さなリトラクタ装置9,9で構成出来ると共に、滑車部材8,8等にワイヤ部材6が、絡まる虞も少なくなり、円滑に、送出及び巻き取りが行える。
【0075】
また、前記フードリッジ部材4,4内に各々引き込まれて収納される際には、前記ワイヤ部材6が、前記滑車部材8と、前記リトラクタ装置9との間で、直線状に張設されて、巻き取り時に、前記書き取り軸部9aに整然と巻き取られる。
【0076】
このため、この巻き取り軸部9aに、撓んだ前記ワイヤ部材6が、絡まり、巻き取り動作が、途中で停止する等の虞が減少する。
【0077】
従って、前記エンジンフード部材2の開閉動作が、前記ワイヤ部材6によって、阻害されることが無い。
【0078】
このように、前記ワイヤ部材6の送出及び巻き取りを伴うエンジンフード部材2の開閉動作は、円滑に行われる。
【0079】
また、前記エンジンフード2が開放された状態で、前記エンジンルーム3内へ前記上部開口部3aを介して行われる整備時にも、問題となりにくい箇所に、前記ワイヤ部材6,6が張設されるので、メンテナンス性を損なうことが無い。
【実施例1】
【0080】
図7は、この発明の実施の形態の実施例1の車体の前部構造で、ワイヤ部材6を拘束する拘束機構として、シートベルトの拘束若しくは、エアバックの展開制御に用いられる荷重センサ若しくは加速度センサ等の衝突検知センサからの出力信号を、コントローラに入力して、送出動作のロック(拘束)判断に、用いているものを示している。
【0081】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0082】
この実施例1では、前記リトラクタ装置9等と同様に、衝撃荷重が、エンジンフード部材2に加わった場合には、前記コントローラからの電気信号に応じて、アクチュエータ等が作動して、前記巻き取り軸部9aの回転若しくは、前記ワイヤ部材6に直接、制動力を与えて、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機構が用いられている。
【0083】
すなわち、図7に示すように、Step1では、エンジンフード部材2に入力荷重が、加わると、Step2では、この入力荷重が、荷重センサ若しくは加速度センサによって検知されて、電気信号に変換されて、コントローラに送られる。
【0084】
このコントローラでは、前記入力荷重の電気信号が、衝撃荷重の閾値である3kN以上か否かが判断される。
【0085】
そして、Step3で、荷重入力が、3kN以上で有る場合は、歩行者等の衝突体が、車両1の前部1aに衝突したと判断して、Step4に進み、前記リトラクタ装置9により、エンジンフード2が、閉塞された状態のまま、前記ロック機構10等によって、ワイヤ部材6を送出する巻き取り軸部9aの回転が、ロックされて、ワイヤ部材6の移動が拘束される。
【0086】
このため、車両1の前方から衝撃荷重が加わると、前記エンジンフード部材2が、前記エンジンルーム3の上部開口部3aを閉塞したまま、前記エンジンフード部材2の前端縁2a及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6が、張設される。
【0087】
従って、Step5では、図6に示すように、前記エンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材4,4から離間すること無く、図19に示すように、めくれるように、エンジンフード部材2が、屈曲変形する虞が減少する。
【0088】
このため、エンジンフード部材2に加わる衝撃荷重の入力が、車体の前部1aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2の面延設車両前後方向に加わり、図6に示すように、圧壊されながら、受け止められる。
【0089】
よって、エンジンフード部材2の車両前後方向に沿う寸法長さが、効果的に衝撃荷重の低減に寄与する為、このエンジンフード部材2を反力部材として、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークを設定できる。
【0090】
従って、このエンジンフード部材2の車両前後方向の寸法を利用して反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0091】
また、Step6では、前記コントローラが、前記入力荷重を、衝撃荷重の閾値である3kNに到達していない場合には、Step7で、歩行者等の衝突体が、車両1の前部1aに衝突していないと判断して、前記リトラクタ装置9の拘束機構による拘束を作動させない。
【0092】
このため、通常状態では、前記エンジンルーム3の上部を大きく開放させることができて、このエンジンルーム3の前縁部と、前記エンジンフード部材2の前端縁2aとの間に形成される空間からエンジンルーム3内へのアクセスが、良好で、メンテナンス性が損なわれる虞がない。
【0093】
他の構成及び、作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例2】
【0094】
図8乃至図10は、この発明の実施の形態の実施例2の車体の前部構造を示すものである。
【0095】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0096】
まず、構成上の相違から説明すると、この実施例2の車体の前部構造では、車両11の前部11aに設けられる車体側構造材としてのサイドメンバ部材14,14が、エンジンルーム3の車幅方向左,右側縁部に沿って、延在されている。
【0097】
このサイドメンバ部材14,14は、前記実施の形態のフードリッジ部材4,4よりも、車両上下方向で、比較的低い位置に、車両前後方向へ長手方向を沿わせて、延設されていて、内部に、中空形状を呈する閉断面空間部14c,14cが形成されている。
【0098】
そして、このサイドメンバ部材14,14内に、前記滑車部材8,8及び前記リトラクタ装置9,9が設けられている。
【0099】
このうち、前記実施の形態のワイヤ挿通開口4fに相当するサイドメンバ上壁部14aには、車両上下方向に連通するようにワイヤ挿通開口14f,14fが、図9に示すように、開口形成されている。
【0100】
このワイヤ挿通開口14f,14fには、円筒パイプ状のガイド筒状部材15,15が、各々溶接部16,16により、固着されている。
【0101】
そして、このガイド筒状部材15の内部ガイド空間15aに、前記ワイヤ部材6が、挿通されるように構成されている。
【0102】
次に、この実施例2の車体の前部構造の作用効果について、前記実施の形態及び実施例1との相違点を中心に説明する。
【0103】
この実施例2の車体の前部構造では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、前記実施の形態のフードリッジ部材4,4よりも、上下方向で比較的低い位置に延在されている車体側構造材としてのサイドメンバ部材14,14内に、前記滑車部材8,8及びリトラクタ装置9,9が、設けられている。
【0104】
このため、前記滑車部材8から、前記エンジンフード部材2の裏面側に設けられるワイヤ挿通孔2jまでの上下方向高さ寸法h1を、実施の形態に比して、大きく設定できるので、前記エンジンフード部材2の開閉動作に伴って、前記滑車部材8,8を回動中心とするワイヤ部材6,6の車両前後方向への傾き角度の変化量を少なくすることができる。
【0105】
従って、ワイヤ挿通開口14f,14fの開口周縁に、前記ワイヤ部材6が、摺接される虞を減少させることが出来、前記サイドメンバ上壁部14aに、開口形成されるワイヤ挿通開口14f,14fの開口面積を小さく設定することにより、このサイドメンバ部材の14,14の剛性の低下を抑制できる。
【0106】
しかも、この実施例2では、前記ワイヤ挿通開口14fに、円筒パイプ状のガイド筒状部材15が、溶接部16により、固着されている。
【0107】
このガイド筒状部材15の内部ガイド空間15aにより、この内部ガイド空間15aの上下方向寸法h2内に位置する前記ワイヤ部材6は、略直線状となるように、車両上下方向に沿ってガイドされるので、更に、このワイヤ部材6が、ワイヤ挿通開口14fの周縁部に干渉したり、屈曲して、この周縁部に引っかかる等による円滑な前記エンジンフード部材2の開閉動作の妨げとなるようなワイヤ部材6の挙動が抑制される。
【0108】
しかも、この実施例2では、車体側構造材として、比較的剛性の高いサイドメンバ部材14,14に、前記滑車部材8,8及びリトラクタ装置9,9が、設けられている。
【0109】
このため、前記ワイヤ部材6及び、このワイヤ部材6の端部6a,6aが、支持剛性の高い部分によって支持されて、このワイヤ部材6から加わる衝撃荷重による張力を、前記サイドメンバ部材14,14から、車両の車体骨格部位に伝達して、充分に受け止めることができる。
【0110】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0111】
図11乃至図18は、この発明の実施の形態の実施例3の車体の前部構造を示すものである。
【0112】
なお、前記実施の形態及び実施例1,2と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0113】
まず、構成上の相違から説明すると、この実施例3の車体の前部構造では、車両21の前部21aに設けられる車体側構造材としてのフードリッジ部材24,24が、エンジンルーム3の車幅方向左,右側縁部に沿って、車両前後方向に延在されている。
【0114】
このフードリッジ部材24,24の内部には、車両前後方向に沿う中空形状の略閉断面空間部24c,24cが、設けられている。
【0115】
そして、このフードリッジ部材24,24の略閉断面空間部24c,24c内には、前記ワイヤ部材6を係合させて、滑動させる滑車部材8,8が、回動可能に枢着されている。 このワイヤ部材6の両端部6a,6aには、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞時には、前記ワイヤ部材6を前記フードリッジ部材24,24から、送出及び収納可能とする長手方向に伸縮可能な伸縮部材としての弦巻バネ部材25,25が、各々接続されて設けられている。
【0116】
この弦巻バネ部材25の一端25aは、衝撃荷重が加わった場合には、前記ワイヤ部材6の送出を停止させるストッパ機構26の一部を構成するストッパ部材28を介して、前記ワイヤ部材6の端部6aに連結されていると共に、他端25bが、フードリッジ部材24,24の後端部24d,24dに固着されて、両フードリッジ部材24,24間が、連結されている。
【0117】
この実施例3のストッパ機構26には、前記車体側構造体としてのフードリッジ部材24,24の内部で、長手方向略中央部に、この略閉断面空間部24c,24cを車両前後方向に区画するように、隔壁形状のストッパ当接壁部材27が、設けられている。
【0118】
このストッパ当接壁部材27には、前記ワイヤ部材6及び前記弦巻バネ部材25間に位置するストッパ部材28を、通常状態では、挿通可能とするストッパ部材挿通開口27aが、開口形成されている。
【0119】
このストッパ部材挿通開口27aの開口周縁部の後側面側27bには、衝撃荷重が加わった場合には、図12に示すように、前記ストッパ部材28を当接させて、前記弦巻バネ部材25の伸張を禁止することにより、前記フードリッジ部材24,24から、このワイヤ部材6の送出しないようにロックして停止させるストッパ機能を有して、構成されている。
【0120】
この実施例3のストッパ機能を有するストッパ機構26には、前記フードリッジ部材24,24の底面部24e,24eに固着されるストッパブラケット部材29と、このストッパブラケット部材29に車両前後方向に沿って、穿設形成されたロッド孔29aに、摺動自在に挿通されて、車両21の前部21aに衝撃荷重が加わった場合には、先端部30aの押圧により、長手方向に沿って後進することにより、前記ワイヤ部材6の送出をロックするロッド部材30とを有している。
【0121】
また、この実施例3のストッパ機構26には、前記ロッド部材30の後端部30bによって、押圧されて、図14又は図15に示すような前記ストッパブラケット部材29に形成された略L字状の被係止部29bとの係合を解除するピン部材31が設けられている。
【0122】
更に、このストッパ機構26には、スプリング部材33によって付勢されていて、突出により、前記ストッパ部材28を係止すると共に、このストッパ部材28を、前記ストッパ当接壁部材27のストッパ部材挿通開口27aの周縁部方向へ押圧して、係止させるロック部材32が、設けられている。
【0123】
そして、このロック部材32には、図14及び図15に示すように、前記ピン部材31をスライド自在に挿入するピンスライド孔32aが、開口形成されている。
【0124】
このロック部材32は、図14に示すように、通常状態では、前記ピン部材31を車両前側に突出させた状態で、前記被係止部29bに、係止面部31aを係止させている。
【0125】
また、車両前部21aに衝撃荷重が加わった場合には、図15に示すように、前記ロッド部材30の後進に伴い、このロッド部材30の後端部30bにより、前記ピン部材31が、車両後方へ押圧される。
【0126】
そして、被係止部29bへの前記係止面部31aの係止が、解除されると共に、ピンスライド孔32a内部に、このピン部材31がスライド挿入されて、前端部31cを没入させながら、後端部31bを車両後方に向けて、突出させるように構成されている。
【0127】
次に、この実施例3の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0128】
この実施例3の車体の前部構造では、前記実施の形態及び実施例1,2の作用効果に加えて、更に、前記衝撃荷重が加わった場合には、前記ワイヤ部材6の送出をロックするストッパ機能を有するストッパ機構26が、設けられている。
【0129】
このストッパ機構26は、通常状態では、図14に示すように、前記ピン部材31を車両前側に突出させた状態で、前記被係止部29bに、係止面部31aを係止させている。
【0130】
このため、前記ロック部材32は、スプリング部材33を圧縮させた状態で、前記ストッパブラケット部材29から所定寸法以上、突出せずに、係止されている状態が保持され、このロック部材32の先端部32bが、前記ストッパ部材挿通開口27a内のストッパ部材28の移動軌跡内に侵入することは、無い。
【0131】
よって、図12又は、図13に示すように、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27a内を、前記ストッパ部材28が、車両前後方向に沿って挿通自在となる。
【0132】
従って、通常状態では、前記エンジンフード部材2の開閉動作に伴って、前記ワイヤ部材6が、前記滑車部材8,8を滑動させると共に、前記弦巻バネ部材25,25が、前記略閉断面空間部24c,24c内で、長手方向に沿って伸縮可能となり、前記エンジンフード部材2の開閉動作が、円滑に行われる。
【0133】
例えば、図11に示す閉塞状態から、図13に示すように、前記エンジンフード部材2が、開放されると、前記弦巻バネ部材25が、伸張して、前記ストッパ部材28が、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27a内を、車両前方に向けて、挿通される。
【0134】
このため、前記ワイヤ部材6が、前記フードリッジ部材4,4の滑車部材8,8から、車両上方に向けて、円滑に引き出されて、前記エンジンフード部材2の開閉動作を妨げる虞が無い。
【0135】
また、図13に示す開放状態から、図11に示すように、前記エンジンフード部材2を閉めても、前記弦巻バネ部材25が、収縮するので、前記ワイヤ部材6は、撓んだり、屈曲することなく、これらの弦巻バネ部材25,25の収縮方向への付勢力で、前記フードリッジ部材24,24の略閉断面空間部24c,24c内に、各々略均等長さづつ、引き込まれて、収納されている。
【0136】
次に、図12に示すように、前記エンジンフード部材2の前端縁2aが位置する前記車両前部21aに、衝撃荷重が、加わった場合について説明する。
【0137】
前記車両前部21aに、衝撃荷重が加わると、前記ストッパ機構26のロッド部材30の先端30aが、車両後方に向けて押圧されて、前記ストッパブラケット部材29のロッド孔29a内を、このロッド部材30が、スライド移動して、後端部30bが、このストッパブラケット部材29から車両後方へ向けて、突出される。
【0138】
このロッド部材30の後端部30bは、図15に示すように、前記ピン部材31の前端面31cを押圧して、車両後方へ向けて、このピン部材31の前端部31cを、前記ピンスライド孔32a内に押し込むことにより、この前端部31cと、前記ロック部材32の前面部との車両前後方向位置が、略面一となると、このピン部材31の係止面部31aによる前記被係止部29bへの係止が、解除される。
【0139】
従って、前記スプリング部材33の弾性反力によって、前記ロック部材32は、車両後方へ押し出された前記ピン部材31の後端部31bと共に、前記ストッパ部材28の移動軌跡内に突入されて、このストッパ部材28を、突出されたこのピン部材31で、車両上方へ向けて押し上げる。
【0140】
このため、前記ストッパ部材28は、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27aの後側面27b及び、このロック部材32の先端部32b後側面に当接して、車両前方に向けての移動が禁止される。
【0141】
従って、図12に示すように、前記弦巻バネ部材25の伸張は、拘束されてロックされるので、前記ワイヤ部材6は、前記フードリッジ部材24,24から送出されず、前記エンジンフード部材2の前端縁2aは、前記フードリッジ部材24,24の前端部4e,4eに近接された状態で、保持される。
【0142】
このように、この実施例3のロック機構26では、前記エンジンフード部材2を、閉塞したまま、前記エンジンフード部材2及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6を張設することができる。
【0143】
よって、車両前方から、車両前部21aの前記エンジンフード部材2の前端縁2aに、衝撃荷重が加わっても、このエンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材24,24から車両上方へ向けて、離間する変形が、抑制される。
【0144】
このため、歩行者等の衝突等の衝撃荷重の入力を、図12に示すような、車両前部21aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2に、受け止めさせて、衝撃荷重が充分緩和されるストロークを、設定することができる。
【0145】
従って、このエンジンフード部材2を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0146】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1,2と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0147】
図16は、この発明の実施の形態の実施例4の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材42の裏面側を示すものである。
【0148】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至3と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0149】
まず、構成から説明すると、この実施例4のエンジンフード部材42では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材42を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2f,2f近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0150】
また、このエンジンフード部材42のこれらの一対のガイド部材7,7間には、3箇所の折り返し部となる前記ガイド部材7…が、車両前後方向で、交互となるように、固着されている。
【0151】
そして、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、折り返される前記ワイヤ部材6が、正面視略W字状を呈するように、配索されている。
【0152】
次に、この実施例4の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0153】
この実施例4では、前記実施の形態及び実施例1乃至3の作用効果に加えて、更に、前記ワイヤ部材6が、正面視略W字状を呈するように、前記エンジンフード部材42の裏面側に、配索されている。
【0154】
このため、更に、このワイヤ部材6の張設によって、前記エンジンフード部材42は、補強される為、エンジンフード部材42の略全面に渡る面内外方向の剛性を向上させるこことができる。
【0155】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至3と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例5】
【0156】
図17は、この発明の実施の形態の実施例5の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材52の裏面側を示すものである。
【0157】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至4と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0158】
まず、構成から説明すると、この実施例5のエンジンフード部材52では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2j,2j近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0159】
また、このエンジンフード部材52のこれらの一対のガイド部材7,7間には、5箇所の折り返し部となる前記ガイド部材7…が、車両前後方向で、交互となるように、固着されている。
【0160】
そして、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、折り返される前記ワイヤ部材6が、正面視で、略V字状を車幅方向に3つ連設する山谷状を呈するように、配索されている。
【0161】
この実施例4では、このワイヤ部材6の少なくとも一部6b,6bが、前記ビード状部2e,2e延設方向に沿って配索されて、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されている。
【0162】
次に、この実施例5の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0163】
この実施例5では、前記実施の形態及び実施例1乃至4の作用効果に加えて、更に、前記ワイヤ部材6が、正面視で、複数の略V字状を呈するように連設されて、前記エンジンフード部材52の裏面側に、配索されている。
【0164】
このため、更に、このワイヤ部材6の張設によって、前記エンジンフード部材52は、補強される為、エンジンフード部材52の略全面に渡る面内外方向の剛性を向上させるこことができる。
【0165】
更に、この実施例5では、前記ビード状部2e,2e延設方向に沿って配索されるワイヤ部材6の少なくとも一部6b,6bが、更に、剛性を効果的に向上させると共に、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されていて、外部からは見えにくい。
【0166】
このため、前記エンジンフード部材52の裏面側の外観品質も良好なものとすることができる。
【0167】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至4と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例6】
【0168】
図18は、この発明の実施の形態の実施例6の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材62の裏面側を示すものである。
【0169】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至5と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0170】
まず、構成から説明すると、この実施例6のエンジンフード部材62では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材62を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2j,2j近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0171】
また、このエンジンフード部材62のこれらの一対のガイド部材7,7間には、これらのガイド部材7,7の車両後方位置に設けられて、2箇所の略直角な折り返し部となる前記ガイド部材7,7が、車幅方向左右一対、固着されて設けられている。
【0172】
そして、裏面側の正面視では、これらの各ガイド部材7…を四隅とする略長方形形状を呈するように、略コ字状折り返される前記ワイヤ部材6が、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、配索されている。
【0173】
更に、この実施例6では、このワイヤ部材6の裏面側の正面視で、内側に、略長方形形状のネット状の金網部材63が、貼設されている。
【0174】
次に、この実施例6の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0175】
この実施例6では、前記実施の形態及び実施例1乃至5の作用効果に加えて、更に、前記金網部材63が、正面視で、略コ字状を呈するように配索されたワイヤ部材6の内側に貼設されている。
【0176】
このため、このワイヤ部材6の張設に加えて、更に、前記エンジンフード部材62は、この金網部材63によって、補強される為、エンジンフード部材62の略全面に渡る面内外方向の剛性を、効率よく、向上させるこことができる。
【0177】
また、前記エンジンフード部材62の裏面側が、略全面に渡り、この金網部材63で覆われるので、前記エンジンフード部材62の裏面側の外観品質も良好なものとすることができる。
【0178】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至5と略同様であるので、説明を省略する。
【0179】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1乃至6を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1乃至6に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0180】
即ち、前記実施の形態及び実施例1乃至6では、前記ワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材2等を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されているが、特に、これに限らず、例えば、フードインナ2dよりも更に、エンジンルーム内に位置するように、フードインナ2dの下面側に、一部若しくは、全部のワイヤ部材6を配索して、張設するように構成してもよい。
【0181】
また、実施例1では、前記コントローラからの電気信号に応じて、アクチュエータ等が作動して、前記巻き取り軸部9aの回転若しくは、前記ワイヤ部材6に直接、制動力を与えて、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機構が構成されているが、特にこれに限らず、例えば、専用の衝突検知センサを用いたり、或いは、機械的なロック機構によって、拘束機能を有するリトラクタ装置や、ワイヤ部材6の送出方向への移動を停止させるストッパ機構等によって、前記ワイヤ部材6等の連結部材を張設するように構成してもよい。
【0182】
更に、前記実施の形態では、リトラクタ装置9,9を車幅方向で、左右一対、合計2個、設けているが、特にこれに限らず、例えば、左右何れか片側1個のみで、反対側のワイヤ部材6の端部6を、前記フードリッジ部材4又は、サイドメンバ部材14に固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の実施の形態の車体の前部構造で、図3中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図2】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置でのフードリッジ部材内部の構成を模式的に説明する断面図である。
【図3】実施の形態の車体の前部構造で、車両の全体の構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の車体の前部構造で、エンジンフード部材の裏面側の構成を説明する模式的な平面図である。
【図5】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材を開放した様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図6】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材が閉じられたまま、圧壊される様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図7】実施の形態の実施例1の車体の前部構造で、ワイヤ部材によるエンジンフード部材の拘束、又は、非拘束制御を説明する流れ図である。
【図8】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当するサイドメンバ部材を一部切り欠いた部分断面図である
【図9】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図8中C部の拡大断面図である。
【図10】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図9中D−D線に沿った位置でのサイドメンバ部材の内部の構成を説明する断面図である。
【図11】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当する位置でのフードリッジ部材内部の構成を模式的に説明する断面図である。
【図12】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材が閉じられたまま、圧壊される様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図13】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材を開放した様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図14】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、ストッパ機構の要部の拡大断面図である。
【図15】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、ストッパ機構が、ストッパ機能を発揮した様子を説明する要部の拡大断面図である。
【図16】実施の形態の実施例4の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図17】実施の形態の実施例5の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図18】実施の形態の実施例6の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図19】従来例の車体の前部構造で、エンジンフード部材が、屈曲した様子を説明する模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0184】
1,11,21
車両
1a 前部
2,22,32,42,52,62
エンジンフード部材
2a 前端縁
3 エンジンルーム
4,4,24,24
フードリッジ部材(車体側構造材)
6 ワイヤ部材(連結部材)
6a,6a 端部
7,7 ガイド部材(折り返し部)
9,9 リトラクタ装置
10,10 ロック機構(拘束機能)
14,14 サイドメンバ部材(車体側構造材)
25 弦巻バネ部材(伸縮部材)
26,26 ストッパ機構(ストッパ機能)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体の前部構造に関し、特に、入力荷重を有効に受け止めることができる車体の前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前部に形成されるエンジンルームの上方を閉塞するエンジンフード部材の内側面周縁に設けられる外骨材及び、この外骨材間に掛け渡される内骨材とを有する車体の前部構造が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような車体の前部構造では、前記外骨材及び、内骨材の内部に、ワイヤ部材が、緊結状態で、挿通されている。
【0004】
次に、この従来の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0005】
この従来の車体の前部構造では、前記エンジンフード部材の内側面周縁に設けられた前記外骨材及び、内骨材の内部に、ワイヤ部材が、緊結状態で、挿通されている。
【0006】
このため、前記内骨材端部が、このワイヤ部材に係合されて、位置決め状態が保持されることにより、前記外骨材と、前記内骨材とが、一体化される。
【0007】
従って、重量の増大を抑制しつつ、前記エンジンフード部材の強度を向上させることができる。
【特許文献1】特開平6−72355号公報(第0011段落乃至第0022段落、図1乃至図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の車体の前部構造においては、図19に示すように、車両1の前部1aに衝撃荷重が加わると、エンジンフード部材2の後部2gに、大きなモーメントが発生し、このエンジンフード部材2の前端縁2aからめくれるように、車両上方へ向けて、屈曲する場合がある。
【0009】
このような場合も含めて、補強されたエンジンフード部材2では、与えられた衝撃荷重を受けきれず、緩和が充分に行われない虞があり、この車両1に対して、前記衝撃荷重を与えた歩行者等の衝突体の保護の観点を満たすことが困難であるといった問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、エンジンフード部材を反力部材として、有効に機能させることが出来る車体の前部構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、エンジンルームの上部開口部の周縁に設けられた車体側構造材と、前記エンジンルームの上部開口部を、開閉可能として設けられたエンジンフード部材と、該エンジンフード部材の前端縁及び前記車体側構造材との間に張設される連結部材とを有する車体の前部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、前記エンジンフード部材及び前記車体側構造材との間に、前記連結部材が張設されているので、前記エンジンフード部材に、車両前方から衝撃荷重が加わっても、該エンジンフード部材の前端縁が、前記車体側構造体から離間することを抑制することが出来る。
【0013】
このため、前記エンジンフード部材の前端縁が、めくれるように屈曲変形する虞が減少し、該衝撃荷重の入力を、前部から後方に向けて座屈させる圧縮変形として、該エンジンフード部材が受け止める構成とすることにより、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークを設定できる。
【0014】
従って、該エンジンフード部材を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施の形態の車体の前部構造を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1乃至図18は、この発明の実施の形態の車体の前部構造を示すものである。なお、前記図19に示した車体の前部構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0017】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車体の前部構造では、図3に示すように、車両1の前部1aに形成されたエンジンルーム3の上部開口部3aには、エンジンフード部材2が、後部2gの車幅方向両側縁近傍に一対設けられたヒンジ部2h,2hを回動中心として、回動可能に設けられている。
【0018】
そして、このヒンジ部2h,2hによる回動で、このエンジンフード部材2の前端縁2aを上下方向に揺動させることにより、このエンジンルーム3の上部開口部3aを、開閉動作可能とするように構成されている。
【0019】
このエンジンフード部材2は、図4に示すように、上面側外側面部を構成する略平板状のフードアウタ2cと、このフードアウタ2cの裏面側に貼設されて、複数のビード状部2e…が形成されることにより、このエンジンフード部材2の剛性を向上させる補強が行われるフードインナ2dとを有して、主に構成されている。
【0020】
そして、これらのビード状部2e…のうち、エンジンフード部材2の前端縁2a近傍に位置する部分には、接続部材としてのワイヤ部材6が、挿通されるワイヤ挿通孔2f…及び両端に位置するワイヤ挿通孔2j,2jが、車幅方向に沿って、一直線上に並べられて、穿設形成されている。
【0021】
更に、これらのビード状部2e…のエンジンフード部材2の前端縁2a近傍に位置する前記フードアウタ2c側対向面には、図1に示すように、前記ワイヤ部材6を、車幅方向に挿通してガイドするガイド部材7…が、各々設けられている。
【0022】
また、このエンジンフード部材2の前端縁2a近傍で、車幅方向略中央には、図4に示すように、フードロック機構のストライカ部材2bが、固設されている。
【0023】
この実施の形態では、車体側構造材としての一対のフードリッジ部材4,4が、前記エンジンルーム3の上部開口部3aの車幅方向両側縁部に沿って、一対設けられている。
【0024】
このフードリッジ部材4,4は、図1に示すように、各々、フードリッジインナパネル4a及びフードリッジアウタパネル4bとが、各上,下フランジ部間を接合させることにより、車幅方向の断面形状が、略閉断面ロ字状を呈するように構成されている。
【0025】
この左,右のフードリッジ部材4,4は、各々図2に示すように、車両1の車幅方向両側面部の一部を構成するダッシュサイドパネル部材5に、各後端部4dが接続されて、車体側の強度部材と一体になるように、連設されている。
【0026】
また、このフードリッジ部材4,4の内部には、このダッシュサイドパネル部材5,5から、車両前方に向けて延設された前記フードリッジインナパネル4a及びフードリッジアウタパネル4bとの間に位置するように、車両前後方向に沿って、前記ワイヤ部材6を挿通可能な閉断面空間部4c,4cが、各々延設形成されている。
【0027】
このうち、前記フードリッジインナパネル4a,4aの前端部4e,4e近傍には、前記エンジンルーム3内空間と、この閉断面空間部4c,4cとを連通させて、前記ワイヤ部材6を挿通するワイヤ挿通開口4f,4fが、開口形成されている。
【0028】
このワイヤ挿通開口4f,4fは、前記両フードリッジインナパネル4a,4aの対向面に形成されて、車両前後長さ寸法及び上下方向寸法が、前記エンジンフード部材2が、開閉動作に伴って揺動して、前記ワイヤ挿通孔2j,2jの位置が、車両前後方向へ移動しても、前記張設されたワイヤ部材6が、このワイヤ挿通開口4f,4fの開口周縁部に摺接しないように設定されている。
【0029】
また、このワイヤ挿通開口4f,4fの周縁部後側縁と、前記フードリッジアウタパネル4bとの間には、滑車部材8,8が、各回転軸8c,8c方向を車幅方向に沿わせて、回動自在となるように設けられている。
【0030】
これらの滑車部材8,8は、図2に示すように、前記ワイヤ部材6が、ワイヤ係合溝8aに係合されることによって、前記車両前後方向に沿う前記閉断面空間部4c延設方向と、これらの各ワイヤ挿通開口4f,4fから前記エンジンフード部材2の前記ワイヤ挿通孔2j,2jに向けて、送出される車両略上下方向との間で、前記ワイヤ部材6が張設される方向が、変換されることにより、このワイヤ部材6の配索される延長方向が変えられるように構成されている。
【0031】
すなわち、この滑車部材8,8は、各々前記ワイヤ部材6が、捲き廻されて係合されるワイヤ係合溝8a,8aが、外周面車幅方向略中央部に環状に凹設形成されていると共に、このワイヤ係合溝8a,8aの各両側部に設けられたワイヤ規制フランジ8b,8bによって、係合が容易に解除されないように、構成されている。
【0032】
そして、このワイヤ係合溝8a,8aに係合された前記ワイヤ部材6が、これらの滑車部材8,8の回転に伴って、滑動する際に、各前記ワイヤ規制フランジ8b,8bによって、ガイドされて、前記ワイヤ挿通開口4f,4fを介して、前記エンジンルーム3内空間と、この閉断面空間部4c,4cとの間で、車両略上下方向へ出没可能に張設されている。
【0033】
また、前記フードリッジ部材4,4の内部には、図2に示すように、前記ダッシュサイドパネル部材5,5と重合接続される後端部4d,4d位置で、左,右一対の各リトラクタ装置9,9が、各々固着されている。
【0034】
そして、前記ガイド部材7…によって、前記エンジンフード部材2の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に配索された前記ワイヤ部材6は、前記滑車部材8,8によって、前記エンジンフード部材2と、前記フードリッジ部材4,4との間に、各々張設されている。
【0035】
また、この各滑車部材8,8から、フードリッジ部材4,4内の閉断面空間部4c,4c延設方向に向けて、車両後方へ挿通される前記ワイヤ部材6の各端部6a,6aが、これらの各リトラクタ装置9,9の略ボックス状の筐体9c,9c内部に回転可能に枢着された各巻き取り軸部9a,9aに接続されることにより、前記滑車部材8,8と、リトラクタ装置9,9との間に、ワイヤ部材6が張設されて、一対のフードリッジ部材4,4間が、このワイヤ部材6で連結されるように構成されている。
【0036】
これらの各リトラクタ装置9,9の各巻き取り軸部9a,9aは、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞時には、回転により、この巻き取られたワイヤ部材6を各々送出及び送出されたワイヤ部材6を巻き取って収納可能に構成されている。
【0037】
また、これらの各リトラクタ装置9,9は、送出されたワイヤ部材6が、巻き取られて、収納されるように、このリトラクタ装置9,9に設けられたバネ部材9b,9bによって、前記エンジンフード部材2の開放の妨げとならない程度のバネ力が、前記各巻き取り軸部9a,9aに与えられて、巻き取り方向に付勢されている。
【0038】
更に、この実施の形態では、衝撃荷重が加わった場合若しくは、このワイヤ部材6の張力が、所定値以上に、増大した場合には、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機能を有するロック機構10,10が、これらのリトラクタ装置9,9に各々設けられている。
【0039】
この実施の形態のロック機構10は、図2に示すように、前記リトラクタ装置9の筐体9c内部に設けられていて、前記巻き取り軸部9aに巻き取られた前記ワイヤ部材6の外周面部と対向する上壁部に、ヒンジ部10aを介して、このワイヤ部材6と近接及び離反可能に揺動自在に軸支されるブレーキ片10bを有して、主に構成されている。
【0040】
このブレーキ片10bは、通常状態では、図2又は、図5に示すように、前記筐体9cの後壁部側に傾倒していると共に、歩行者等の衝突体の前記車両1の前部1aへの荷重入力により、所定値以上の衝撃荷重が、車両1の前部1aに加わると、図6に示すように、車両前方方向へ下辺部を揺動移動させて、ワイヤ部材6に下辺部を当接させて、噛み合わせることにより、このワイヤ部材6の送出が、拘束されるように構成されている。
【0041】
次に、この実施の形態の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0042】
この実施の形態の車体の前部構造では、通常状態では、図2又は、図5に示すように、前記ロック機構10のブレーキ片10bが、筐体9cの後壁部側に傾倒されている。
【0043】
従って、ブレーキ片10bの下辺部は、前記ワイヤ部材6に、当接すること無く、ロックされていない状態で、これらのワイヤ部材6は、車幅方向左,右両側のリトラクタ装置9,9の前記各巻き取り軸部9a,9aのバネ部材9b,9bの付勢力に逆らって、各々引き出される。
【0044】
このため、前記エンジンフード部材2の開閉塞に伴って、前記リトラクタ装置9,9の巻き取り軸部9a,9aが回転されながら、前記滑車部材8,8を介して、前記ワイヤ挿通開口4f,4fから、送出される。
【0045】
前記ワイヤ部材6の前記リトラクタ装置9からの引き出し力は、主に、前記巻き取り軸部9aのバネ部材9bの付勢力に抗うのみで、前記エンジンフード部材2を、図2に示す閉塞状態から、円滑に前記図5に示す開放状態へと移行させることができる。
【0046】
この際、この実施の形態では、前記滑車部材8,8によって、前記ワイヤ部材6の引き出し方向が、前記車両前後方向に沿う前記閉断面空間部4c延設方向から、車両略上下方向に変換されている。
【0047】
このため、前記エンジンフード部材2のワイヤ挿通孔2j,2j位置が、このエンジンフード部材2の開放角度に応じて、車両前後方向へ移動し、前記ワイヤ挿通開口4fから引き出される角度が、変わった場合でも、この滑車部材8,8の円滑な回転動作が、確保されながら、追従出来る。
【0048】
従って、更に円滑に、エンジンルーム3の上面部を開放できるので、このワイヤ部材6によって、前記エンジンフード部材2の開放動作が、阻害される虞がない。
【0049】
更に、開放状態では、前記ワイヤ部材6が、エンジンルーム3の両側縁部に位置するフードリッジ部材4,4と、エンジンフード部材2の車幅方向両側縁に開口形成されたワイヤ挿通孔2j,2jとの間にのみ、前記リトラクタ装置9,9から引き出された状態で、張設されている。
【0050】
このため、前記エンジンルーム3の上部を大きく開放させることができて、特に、この車両1の前部1aでは、このエンジンルーム3の前縁部と、前記エンジンフード部材2の前端縁2aとの間に形成される空間からエンジンルーム3内への整備作業性が、良好で、メンテナンス性が損なわれる虞がない。
【0051】
また、このエンジンルーム3の各側縁部方向からのエンジンルーム3内への整備作業も、図5に示されるように、ワイヤ部材6が、左,右一本づつ張設されているだけなので、作業者が干渉する虞が少なく、メンテナンス性を良好なものとすることができる。
【0052】
更に、前記エンジンフード部材2を、図5に示す開放状態から、図2に示す前記閉塞状態に移行させる際、前記リトラクタ装置9,9の前記巻き取り軸部9a,9aが、バネ部材9b,9bによって、巻き取り方向に付勢力を与えられながら回転して、前記ワイヤ部材6が、この巻き取り軸部9a,9aの周囲に巻き取られる。
【0053】
このため、前記エンジンフード部材2の閉塞に伴って、前記ワイヤ挿通開口4f,4fから、前記滑車部材8,8を介して、前記フードリッジ部材4,4内の閉断面空間部4c,4c内に、前記ワイヤ部材6が引き込まれる。
【0054】
従って、前記ワイヤ部材6が、撓むことなく、端部6a,6aから前記巻き取り軸部9a,9aに巻き取られ、前記リトラクタ装置9,9の筐体9c,9c内部に収納されて、前記エンジンルーム3の両側縁部に位置するフードリッジ部材4,4と、エンジンフード部材2の車幅方向両側縁との間に挟まる虞が無い。
【0055】
しかも、この実施の形態では、車幅方向左,右一対のリトラクタ装置9,9によって、同時に、前記ワイヤ部材6が、端部6a,6aから、巻き取られる。
【0056】
このため、一つのリトラクタ装置9によって巻き取る場合の約2倍速の巻き取り速度で、巻き取って、収納できるので、前記エンジンフード部材2を比較的速い速度で閉塞しても、撓むことなく、エンジンフード部材2と、エンジンルーム3の上部開口部3a周縁との間に、挟み込んでしまう虞がない。
【0057】
次に、前記リトラクタ装置9,9のロック機構10が、ロック機能を発揮する場合について説明する。
【0058】
歩行者等の衝突体が、前記車両1の前部1aへ衝突した際の荷重入力若しくは、このワイヤ部材6の張力が、所定値以上に、増大した場合には、図6に示すように、前記ブレーキ片10bが、前記ヒンジ部10aを回動中心として、下辺部を車両前方方向へ揺動移動させて、前記ワイヤ部材6の外周面部に食い込むませるように、噛み合わせられる。
【0059】
このため、前記巻き取り軸部9aの回転は、ロック(拘束)停止されて、このワイヤ部材6の送出が、停止される。
【0060】
従って、図6に示すように、前記エンジンフード部材2は、閉塞されたまま、前記エンジンフード部材2及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6が張設される。
【0061】
よって、車両前方から、車両前部1aの前記エンジンフード部材2に、衝撃荷重が加わっても、このエンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材4,4から車両上方へ向けて、離間する変形が、抑制される。
【0062】
このため、図19に示すような前記エンジンフード部材2の前端縁2aが、めくれるように屈曲変形する虞が減少し、歩行者等の衝突等の衝撃荷重の入力を、図6に示すように、前部1aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2が受け止める構成とすることが出来る。
【0063】
このように、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークが、このエンジンフード部材2の車両前後方向長さを用いて、設定することができる。
【0064】
従って、このエンジンフード部材2を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0065】
また、前記エンジンフード部材2の裏面側に、車幅方向に挿通される前記ワイヤ部材6によって、エンジンルーム3の車幅方向両側縁部に位置する左,右一対のフードリッジ部材4,4間が、エンジンフード部材2の前端縁2aを介して、連結されている。
【0066】
このため、オフセット前面衝突時に、衝突側の何れか一方のフードリッジ部材4に加わる衝撃荷重を、非衝突側の他方のフードリッジ部材4に、このエンジンフード部材2を介して、伝達させて分散させることができる。
【0067】
従って、車両1の前部1aの衝撃吸収性を、更に、良好なものとすることができる。
【0068】
また、図4に示すように、この実施の形態の車体の前部構造では、エンジンフード部材2の前端縁2a近傍の裏面側に車幅方向に沿って、略直線状に張設された前記ワイヤ部材6が、前記複数のガイド部材7…によって、配索されている。
【0069】
このため、このワイヤ部材6が、配索された箇所の前記エンジンフード部材2の面内外方向の剛性は向上させつつ、車両前方から後方に向けての圧縮方向への剛性に対する寄与を少なくすることが出来、エンジンフード部材2の衝撃吸収量を減少させることはない。
【0070】
しかも、前記エンジンフード部材2では、前記ワイヤ部材6が、車幅方向に略直線状に配索された位置よりも、車両後方側の面内,外方向の剛性は、従来と略同様に、通常のエンジンフード部材2の様に、フードアウタ2c及びフードインナ2dを構成するビード状部2e…の材質,形状及び厚さによって設定できる。
【0071】
このため、歩行者の頭部保護等の衝突体への保護性能を低下させることが無い。
【0072】
更に、この実施の形態では、前記一対のリトラクタ装置9,9によって、通常使用時には、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞動作に伴って、前記ワイヤ部材6が、車両前後方向に延設される前記フードリッジ部材4,4の閉断面空間部4c,4c内から、前記ワイヤ挿通孔2j,2jを介して、送出及び収納される。
【0073】
このため、前記エンジンフード部材2が、開放される時には、前記ワイヤ部材6が、前記リトラクタ装置9,9から、前端縁2aが、車両上方へ回動される距離と略同じ寸法長さのみ、引き出されれば良い。
【0074】
従って、引き出し長さ寸法が、一つのリトラクタ装置9を用いて、この実施の形態の2倍の長さを引き出さなければならないものに比して、ワイヤ部材6が短くても良い分、小さなリトラクタ装置9,9で構成出来ると共に、滑車部材8,8等にワイヤ部材6が、絡まる虞も少なくなり、円滑に、送出及び巻き取りが行える。
【0075】
また、前記フードリッジ部材4,4内に各々引き込まれて収納される際には、前記ワイヤ部材6が、前記滑車部材8と、前記リトラクタ装置9との間で、直線状に張設されて、巻き取り時に、前記書き取り軸部9aに整然と巻き取られる。
【0076】
このため、この巻き取り軸部9aに、撓んだ前記ワイヤ部材6が、絡まり、巻き取り動作が、途中で停止する等の虞が減少する。
【0077】
従って、前記エンジンフード部材2の開閉動作が、前記ワイヤ部材6によって、阻害されることが無い。
【0078】
このように、前記ワイヤ部材6の送出及び巻き取りを伴うエンジンフード部材2の開閉動作は、円滑に行われる。
【0079】
また、前記エンジンフード2が開放された状態で、前記エンジンルーム3内へ前記上部開口部3aを介して行われる整備時にも、問題となりにくい箇所に、前記ワイヤ部材6,6が張設されるので、メンテナンス性を損なうことが無い。
【実施例1】
【0080】
図7は、この発明の実施の形態の実施例1の車体の前部構造で、ワイヤ部材6を拘束する拘束機構として、シートベルトの拘束若しくは、エアバックの展開制御に用いられる荷重センサ若しくは加速度センサ等の衝突検知センサからの出力信号を、コントローラに入力して、送出動作のロック(拘束)判断に、用いているものを示している。
【0081】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0082】
この実施例1では、前記リトラクタ装置9等と同様に、衝撃荷重が、エンジンフード部材2に加わった場合には、前記コントローラからの電気信号に応じて、アクチュエータ等が作動して、前記巻き取り軸部9aの回転若しくは、前記ワイヤ部材6に直接、制動力を与えて、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機構が用いられている。
【0083】
すなわち、図7に示すように、Step1では、エンジンフード部材2に入力荷重が、加わると、Step2では、この入力荷重が、荷重センサ若しくは加速度センサによって検知されて、電気信号に変換されて、コントローラに送られる。
【0084】
このコントローラでは、前記入力荷重の電気信号が、衝撃荷重の閾値である3kN以上か否かが判断される。
【0085】
そして、Step3で、荷重入力が、3kN以上で有る場合は、歩行者等の衝突体が、車両1の前部1aに衝突したと判断して、Step4に進み、前記リトラクタ装置9により、エンジンフード2が、閉塞された状態のまま、前記ロック機構10等によって、ワイヤ部材6を送出する巻き取り軸部9aの回転が、ロックされて、ワイヤ部材6の移動が拘束される。
【0086】
このため、車両1の前方から衝撃荷重が加わると、前記エンジンフード部材2が、前記エンジンルーム3の上部開口部3aを閉塞したまま、前記エンジンフード部材2の前端縁2a及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6が、張設される。
【0087】
従って、Step5では、図6に示すように、前記エンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材4,4から離間すること無く、図19に示すように、めくれるように、エンジンフード部材2が、屈曲変形する虞が減少する。
【0088】
このため、エンジンフード部材2に加わる衝撃荷重の入力が、車体の前部1aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2の面延設車両前後方向に加わり、図6に示すように、圧壊されながら、受け止められる。
【0089】
よって、エンジンフード部材2の車両前後方向に沿う寸法長さが、効果的に衝撃荷重の低減に寄与する為、このエンジンフード部材2を反力部材として、衝撃荷重を緩和可能な充分なストロークを設定できる。
【0090】
従って、このエンジンフード部材2の車両前後方向の寸法を利用して反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0091】
また、Step6では、前記コントローラが、前記入力荷重を、衝撃荷重の閾値である3kNに到達していない場合には、Step7で、歩行者等の衝突体が、車両1の前部1aに衝突していないと判断して、前記リトラクタ装置9の拘束機構による拘束を作動させない。
【0092】
このため、通常状態では、前記エンジンルーム3の上部を大きく開放させることができて、このエンジンルーム3の前縁部と、前記エンジンフード部材2の前端縁2aとの間に形成される空間からエンジンルーム3内へのアクセスが、良好で、メンテナンス性が損なわれる虞がない。
【0093】
他の構成及び、作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例2】
【0094】
図8乃至図10は、この発明の実施の形態の実施例2の車体の前部構造を示すものである。
【0095】
なお、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0096】
まず、構成上の相違から説明すると、この実施例2の車体の前部構造では、車両11の前部11aに設けられる車体側構造材としてのサイドメンバ部材14,14が、エンジンルーム3の車幅方向左,右側縁部に沿って、延在されている。
【0097】
このサイドメンバ部材14,14は、前記実施の形態のフードリッジ部材4,4よりも、車両上下方向で、比較的低い位置に、車両前後方向へ長手方向を沿わせて、延設されていて、内部に、中空形状を呈する閉断面空間部14c,14cが形成されている。
【0098】
そして、このサイドメンバ部材14,14内に、前記滑車部材8,8及び前記リトラクタ装置9,9が設けられている。
【0099】
このうち、前記実施の形態のワイヤ挿通開口4fに相当するサイドメンバ上壁部14aには、車両上下方向に連通するようにワイヤ挿通開口14f,14fが、図9に示すように、開口形成されている。
【0100】
このワイヤ挿通開口14f,14fには、円筒パイプ状のガイド筒状部材15,15が、各々溶接部16,16により、固着されている。
【0101】
そして、このガイド筒状部材15の内部ガイド空間15aに、前記ワイヤ部材6が、挿通されるように構成されている。
【0102】
次に、この実施例2の車体の前部構造の作用効果について、前記実施の形態及び実施例1との相違点を中心に説明する。
【0103】
この実施例2の車体の前部構造では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、前記実施の形態のフードリッジ部材4,4よりも、上下方向で比較的低い位置に延在されている車体側構造材としてのサイドメンバ部材14,14内に、前記滑車部材8,8及びリトラクタ装置9,9が、設けられている。
【0104】
このため、前記滑車部材8から、前記エンジンフード部材2の裏面側に設けられるワイヤ挿通孔2jまでの上下方向高さ寸法h1を、実施の形態に比して、大きく設定できるので、前記エンジンフード部材2の開閉動作に伴って、前記滑車部材8,8を回動中心とするワイヤ部材6,6の車両前後方向への傾き角度の変化量を少なくすることができる。
【0105】
従って、ワイヤ挿通開口14f,14fの開口周縁に、前記ワイヤ部材6が、摺接される虞を減少させることが出来、前記サイドメンバ上壁部14aに、開口形成されるワイヤ挿通開口14f,14fの開口面積を小さく設定することにより、このサイドメンバ部材の14,14の剛性の低下を抑制できる。
【0106】
しかも、この実施例2では、前記ワイヤ挿通開口14fに、円筒パイプ状のガイド筒状部材15が、溶接部16により、固着されている。
【0107】
このガイド筒状部材15の内部ガイド空間15aにより、この内部ガイド空間15aの上下方向寸法h2内に位置する前記ワイヤ部材6は、略直線状となるように、車両上下方向に沿ってガイドされるので、更に、このワイヤ部材6が、ワイヤ挿通開口14fの周縁部に干渉したり、屈曲して、この周縁部に引っかかる等による円滑な前記エンジンフード部材2の開閉動作の妨げとなるようなワイヤ部材6の挙動が抑制される。
【0108】
しかも、この実施例2では、車体側構造材として、比較的剛性の高いサイドメンバ部材14,14に、前記滑車部材8,8及びリトラクタ装置9,9が、設けられている。
【0109】
このため、前記ワイヤ部材6及び、このワイヤ部材6の端部6a,6aが、支持剛性の高い部分によって支持されて、このワイヤ部材6から加わる衝撃荷重による張力を、前記サイドメンバ部材14,14から、車両の車体骨格部位に伝達して、充分に受け止めることができる。
【0110】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【実施例3】
【0111】
図11乃至図18は、この発明の実施の形態の実施例3の車体の前部構造を示すものである。
【0112】
なお、前記実施の形態及び実施例1,2と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0113】
まず、構成上の相違から説明すると、この実施例3の車体の前部構造では、車両21の前部21aに設けられる車体側構造材としてのフードリッジ部材24,24が、エンジンルーム3の車幅方向左,右側縁部に沿って、車両前後方向に延在されている。
【0114】
このフードリッジ部材24,24の内部には、車両前後方向に沿う中空形状の略閉断面空間部24c,24cが、設けられている。
【0115】
そして、このフードリッジ部材24,24の略閉断面空間部24c,24c内には、前記ワイヤ部材6を係合させて、滑動させる滑車部材8,8が、回動可能に枢着されている。 このワイヤ部材6の両端部6a,6aには、前記エンジンフード部材2の開放及び閉塞時には、前記ワイヤ部材6を前記フードリッジ部材24,24から、送出及び収納可能とする長手方向に伸縮可能な伸縮部材としての弦巻バネ部材25,25が、各々接続されて設けられている。
【0116】
この弦巻バネ部材25の一端25aは、衝撃荷重が加わった場合には、前記ワイヤ部材6の送出を停止させるストッパ機構26の一部を構成するストッパ部材28を介して、前記ワイヤ部材6の端部6aに連結されていると共に、他端25bが、フードリッジ部材24,24の後端部24d,24dに固着されて、両フードリッジ部材24,24間が、連結されている。
【0117】
この実施例3のストッパ機構26には、前記車体側構造体としてのフードリッジ部材24,24の内部で、長手方向略中央部に、この略閉断面空間部24c,24cを車両前後方向に区画するように、隔壁形状のストッパ当接壁部材27が、設けられている。
【0118】
このストッパ当接壁部材27には、前記ワイヤ部材6及び前記弦巻バネ部材25間に位置するストッパ部材28を、通常状態では、挿通可能とするストッパ部材挿通開口27aが、開口形成されている。
【0119】
このストッパ部材挿通開口27aの開口周縁部の後側面側27bには、衝撃荷重が加わった場合には、図12に示すように、前記ストッパ部材28を当接させて、前記弦巻バネ部材25の伸張を禁止することにより、前記フードリッジ部材24,24から、このワイヤ部材6の送出しないようにロックして停止させるストッパ機能を有して、構成されている。
【0120】
この実施例3のストッパ機能を有するストッパ機構26には、前記フードリッジ部材24,24の底面部24e,24eに固着されるストッパブラケット部材29と、このストッパブラケット部材29に車両前後方向に沿って、穿設形成されたロッド孔29aに、摺動自在に挿通されて、車両21の前部21aに衝撃荷重が加わった場合には、先端部30aの押圧により、長手方向に沿って後進することにより、前記ワイヤ部材6の送出をロックするロッド部材30とを有している。
【0121】
また、この実施例3のストッパ機構26には、前記ロッド部材30の後端部30bによって、押圧されて、図14又は図15に示すような前記ストッパブラケット部材29に形成された略L字状の被係止部29bとの係合を解除するピン部材31が設けられている。
【0122】
更に、このストッパ機構26には、スプリング部材33によって付勢されていて、突出により、前記ストッパ部材28を係止すると共に、このストッパ部材28を、前記ストッパ当接壁部材27のストッパ部材挿通開口27aの周縁部方向へ押圧して、係止させるロック部材32が、設けられている。
【0123】
そして、このロック部材32には、図14及び図15に示すように、前記ピン部材31をスライド自在に挿入するピンスライド孔32aが、開口形成されている。
【0124】
このロック部材32は、図14に示すように、通常状態では、前記ピン部材31を車両前側に突出させた状態で、前記被係止部29bに、係止面部31aを係止させている。
【0125】
また、車両前部21aに衝撃荷重が加わった場合には、図15に示すように、前記ロッド部材30の後進に伴い、このロッド部材30の後端部30bにより、前記ピン部材31が、車両後方へ押圧される。
【0126】
そして、被係止部29bへの前記係止面部31aの係止が、解除されると共に、ピンスライド孔32a内部に、このピン部材31がスライド挿入されて、前端部31cを没入させながら、後端部31bを車両後方に向けて、突出させるように構成されている。
【0127】
次に、この実施例3の車体の前部構造の作用効果について、説明する。
【0128】
この実施例3の車体の前部構造では、前記実施の形態及び実施例1,2の作用効果に加えて、更に、前記衝撃荷重が加わった場合には、前記ワイヤ部材6の送出をロックするストッパ機能を有するストッパ機構26が、設けられている。
【0129】
このストッパ機構26は、通常状態では、図14に示すように、前記ピン部材31を車両前側に突出させた状態で、前記被係止部29bに、係止面部31aを係止させている。
【0130】
このため、前記ロック部材32は、スプリング部材33を圧縮させた状態で、前記ストッパブラケット部材29から所定寸法以上、突出せずに、係止されている状態が保持され、このロック部材32の先端部32bが、前記ストッパ部材挿通開口27a内のストッパ部材28の移動軌跡内に侵入することは、無い。
【0131】
よって、図12又は、図13に示すように、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27a内を、前記ストッパ部材28が、車両前後方向に沿って挿通自在となる。
【0132】
従って、通常状態では、前記エンジンフード部材2の開閉動作に伴って、前記ワイヤ部材6が、前記滑車部材8,8を滑動させると共に、前記弦巻バネ部材25,25が、前記略閉断面空間部24c,24c内で、長手方向に沿って伸縮可能となり、前記エンジンフード部材2の開閉動作が、円滑に行われる。
【0133】
例えば、図11に示す閉塞状態から、図13に示すように、前記エンジンフード部材2が、開放されると、前記弦巻バネ部材25が、伸張して、前記ストッパ部材28が、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27a内を、車両前方に向けて、挿通される。
【0134】
このため、前記ワイヤ部材6が、前記フードリッジ部材4,4の滑車部材8,8から、車両上方に向けて、円滑に引き出されて、前記エンジンフード部材2の開閉動作を妨げる虞が無い。
【0135】
また、図13に示す開放状態から、図11に示すように、前記エンジンフード部材2を閉めても、前記弦巻バネ部材25が、収縮するので、前記ワイヤ部材6は、撓んだり、屈曲することなく、これらの弦巻バネ部材25,25の収縮方向への付勢力で、前記フードリッジ部材24,24の略閉断面空間部24c,24c内に、各々略均等長さづつ、引き込まれて、収納されている。
【0136】
次に、図12に示すように、前記エンジンフード部材2の前端縁2aが位置する前記車両前部21aに、衝撃荷重が、加わった場合について説明する。
【0137】
前記車両前部21aに、衝撃荷重が加わると、前記ストッパ機構26のロッド部材30の先端30aが、車両後方に向けて押圧されて、前記ストッパブラケット部材29のロッド孔29a内を、このロッド部材30が、スライド移動して、後端部30bが、このストッパブラケット部材29から車両後方へ向けて、突出される。
【0138】
このロッド部材30の後端部30bは、図15に示すように、前記ピン部材31の前端面31cを押圧して、車両後方へ向けて、このピン部材31の前端部31cを、前記ピンスライド孔32a内に押し込むことにより、この前端部31cと、前記ロック部材32の前面部との車両前後方向位置が、略面一となると、このピン部材31の係止面部31aによる前記被係止部29bへの係止が、解除される。
【0139】
従って、前記スプリング部材33の弾性反力によって、前記ロック部材32は、車両後方へ押し出された前記ピン部材31の後端部31bと共に、前記ストッパ部材28の移動軌跡内に突入されて、このストッパ部材28を、突出されたこのピン部材31で、車両上方へ向けて押し上げる。
【0140】
このため、前記ストッパ部材28は、前記ストッパ当接壁部材27に開口形成されたストッパ部材挿通開口27aの後側面27b及び、このロック部材32の先端部32b後側面に当接して、車両前方に向けての移動が禁止される。
【0141】
従って、図12に示すように、前記弦巻バネ部材25の伸張は、拘束されてロックされるので、前記ワイヤ部材6は、前記フードリッジ部材24,24から送出されず、前記エンジンフード部材2の前端縁2aは、前記フードリッジ部材24,24の前端部4e,4eに近接された状態で、保持される。
【0142】
このように、この実施例3のロック機構26では、前記エンジンフード部材2を、閉塞したまま、前記エンジンフード部材2及び前記フードリッジ部材4,4との間に、前記ワイヤ部材6を張設することができる。
【0143】
よって、車両前方から、車両前部21aの前記エンジンフード部材2の前端縁2aに、衝撃荷重が加わっても、このエンジンフード部材2の前端縁2aが、前記フードリッジ部材24,24から車両上方へ向けて、離間する変形が、抑制される。
【0144】
このため、歩行者等の衝突等の衝撃荷重の入力を、図12に示すような、車両前部21aから後方に向けて座屈させる圧縮変形として、このエンジンフード部材2に、受け止めさせて、衝撃荷重が充分緩和されるストロークを、設定することができる。
【0145】
従って、このエンジンフード部材2を反力部材として、有効に機能させることが出来、歩行者等の衝突体の保護性能を向上させることが出来る。
【0146】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1,2と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例4】
【0147】
図16は、この発明の実施の形態の実施例4の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材42の裏面側を示すものである。
【0148】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至3と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0149】
まず、構成から説明すると、この実施例4のエンジンフード部材42では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材42を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2f,2f近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0150】
また、このエンジンフード部材42のこれらの一対のガイド部材7,7間には、3箇所の折り返し部となる前記ガイド部材7…が、車両前後方向で、交互となるように、固着されている。
【0151】
そして、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、折り返される前記ワイヤ部材6が、正面視略W字状を呈するように、配索されている。
【0152】
次に、この実施例4の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0153】
この実施例4では、前記実施の形態及び実施例1乃至3の作用効果に加えて、更に、前記ワイヤ部材6が、正面視略W字状を呈するように、前記エンジンフード部材42の裏面側に、配索されている。
【0154】
このため、更に、このワイヤ部材6の張設によって、前記エンジンフード部材42は、補強される為、エンジンフード部材42の略全面に渡る面内外方向の剛性を向上させるこことができる。
【0155】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至3と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例5】
【0156】
図17は、この発明の実施の形態の実施例5の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材52の裏面側を示すものである。
【0157】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至4と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0158】
まず、構成から説明すると、この実施例5のエンジンフード部材52では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2j,2j近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0159】
また、このエンジンフード部材52のこれらの一対のガイド部材7,7間には、5箇所の折り返し部となる前記ガイド部材7…が、車両前後方向で、交互となるように、固着されている。
【0160】
そして、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、折り返される前記ワイヤ部材6が、正面視で、略V字状を車幅方向に3つ連設する山谷状を呈するように、配索されている。
【0161】
この実施例4では、このワイヤ部材6の少なくとも一部6b,6bが、前記ビード状部2e,2e延設方向に沿って配索されて、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されている。
【0162】
次に、この実施例5の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0163】
この実施例5では、前記実施の形態及び実施例1乃至4の作用効果に加えて、更に、前記ワイヤ部材6が、正面視で、複数の略V字状を呈するように連設されて、前記エンジンフード部材52の裏面側に、配索されている。
【0164】
このため、更に、このワイヤ部材6の張設によって、前記エンジンフード部材52は、補強される為、エンジンフード部材52の略全面に渡る面内外方向の剛性を向上させるこことができる。
【0165】
更に、この実施例5では、前記ビード状部2e,2e延設方向に沿って配索されるワイヤ部材6の少なくとも一部6b,6bが、更に、剛性を効果的に向上させると共に、前記エンジンフード部材52を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されていて、外部からは見えにくい。
【0166】
このため、前記エンジンフード部材52の裏面側の外観品質も良好なものとすることができる。
【0167】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至4と略同様であるので、説明を省略する。
【実施例6】
【0168】
図18は、この発明の実施の形態の実施例6の車体の前部構造に用いられてなるエンジンフード部材62の裏面側を示すものである。
【0169】
なお、前記実施の形態及び実施例1乃至5と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0170】
まず、構成から説明すると、この実施例6のエンジンフード部材62では、前記連結部材としてのワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材62を構成するフードアウタ2cの裏面側で、車幅方向両端部のワイヤ挿通孔2j,2j近傍に設けられた左,右一対のガイド部材7,7間に張設されている。
【0171】
また、このエンジンフード部材62のこれらの一対のガイド部材7,7間には、これらのガイド部材7,7の車両後方位置に設けられて、2箇所の略直角な折り返し部となる前記ガイド部材7,7が、車幅方向左右一対、固着されて設けられている。
【0172】
そして、裏面側の正面視では、これらの各ガイド部材7…を四隅とする略長方形形状を呈するように、略コ字状折り返される前記ワイヤ部材6が、これらの各ガイド部材7…に挿通されて、配索されている。
【0173】
更に、この実施例6では、このワイヤ部材6の裏面側の正面視で、内側に、略長方形形状のネット状の金網部材63が、貼設されている。
【0174】
次に、この実施例6の車体の前部構造の作用効果について説明する。
【0175】
この実施例6では、前記実施の形態及び実施例1乃至5の作用効果に加えて、更に、前記金網部材63が、正面視で、略コ字状を呈するように配索されたワイヤ部材6の内側に貼設されている。
【0176】
このため、このワイヤ部材6の張設に加えて、更に、前記エンジンフード部材62は、この金網部材63によって、補強される為、エンジンフード部材62の略全面に渡る面内外方向の剛性を、効率よく、向上させるこことができる。
【0177】
また、前記エンジンフード部材62の裏面側が、略全面に渡り、この金網部材63で覆われるので、前記エンジンフード部材62の裏面側の外観品質も良好なものとすることができる。
【0178】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1乃至5と略同様であるので、説明を省略する。
【0179】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1乃至6を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1乃至6に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0180】
即ち、前記実施の形態及び実施例1乃至6では、前記ワイヤ部材6が、前記エンジンフード部材2等を構成するフードアウタ2cと、フードインナ2dとの間に延在されているが、特に、これに限らず、例えば、フードインナ2dよりも更に、エンジンルーム内に位置するように、フードインナ2dの下面側に、一部若しくは、全部のワイヤ部材6を配索して、張設するように構成してもよい。
【0181】
また、実施例1では、前記コントローラからの電気信号に応じて、アクチュエータ等が作動して、前記巻き取り軸部9aの回転若しくは、前記ワイヤ部材6に直接、制動力を与えて、このワイヤ部材6の送出を拘束する拘束機構が構成されているが、特にこれに限らず、例えば、専用の衝突検知センサを用いたり、或いは、機械的なロック機構によって、拘束機能を有するリトラクタ装置や、ワイヤ部材6の送出方向への移動を停止させるストッパ機構等によって、前記ワイヤ部材6等の連結部材を張設するように構成してもよい。
【0182】
更に、前記実施の形態では、リトラクタ装置9,9を車幅方向で、左右一対、合計2個、設けているが、特にこれに限らず、例えば、左右何れか片側1個のみで、反対側のワイヤ部材6の端部6を、前記フードリッジ部材4又は、サイドメンバ部材14に固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の実施の形態の車体の前部構造で、図3中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図2】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置でのフードリッジ部材内部の構成を模式的に説明する断面図である。
【図3】実施の形態の車体の前部構造で、車両の全体の構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の車体の前部構造で、エンジンフード部材の裏面側の構成を説明する模式的な平面図である。
【図5】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材を開放した様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図6】実施の形態の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材が閉じられたまま、圧壊される様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図7】実施の形態の実施例1の車体の前部構造で、ワイヤ部材によるエンジンフード部材の拘束、又は、非拘束制御を説明する流れ図である。
【図8】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当するサイドメンバ部材を一部切り欠いた部分断面図である
【図9】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図8中C部の拡大断面図である。
【図10】実施の形態の実施例2の車体の前部構造で、図9中D−D線に沿った位置でのサイドメンバ部材の内部の構成を説明する断面図である。
【図11】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当する位置でのフードリッジ部材内部の構成を模式的に説明する断面図である。
【図12】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材が閉じられたまま、圧壊される様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図13】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、図3中B−B線に沿った位置に相当し、エンジンフード部材を開放した様子を説明するフードリッジ部材を一部切り欠いた模式的な部分断面図である。
【図14】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、ストッパ機構の要部の拡大断面図である。
【図15】実施の形態の実施例3の車体の前部構造で、ストッパ機構が、ストッパ機能を発揮した様子を説明する要部の拡大断面図である。
【図16】実施の形態の実施例4の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図17】実施の形態の実施例5の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図18】実施の形態の実施例6の車体の前部構造で、エンジンフード部材を裏面側から見た模式的な正面図である。
【図19】従来例の車体の前部構造で、エンジンフード部材が、屈曲した様子を説明する模式的な側面図である。
【符号の説明】
【0184】
1,11,21
車両
1a 前部
2,22,32,42,52,62
エンジンフード部材
2a 前端縁
3 エンジンルーム
4,4,24,24
フードリッジ部材(車体側構造材)
6 ワイヤ部材(連結部材)
6a,6a 端部
7,7 ガイド部材(折り返し部)
9,9 リトラクタ装置
10,10 ロック機構(拘束機能)
14,14 サイドメンバ部材(車体側構造材)
25 弦巻バネ部材(伸縮部材)
26,26 ストッパ機構(ストッパ機能)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの上部開口部の周縁に設けられた車体側構造材と、前記エンジンルームの上部開口部を、開閉可能として設けられたエンジンフード部材と、該エンジンフード部材の前端縁及び前記車体側構造材との間に張設される連結部材とを有することを特徴とする車体の前部構造。
【請求項2】
前記車体側構造材は、エンジンルームの車幅方向両側縁部に位置する一対のフードリッジ部材であると共に、前記連結部材は、前記エンジンフード部材の裏面側に、車幅方向に挿通されて、前記一対のフードリッジ部材間を連結するワイヤ部材であることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項3】
前記ワイヤ部材の端部は、前記エンジンフード部材の開放及び閉塞時には、該ワイヤ部材を送出及び収納するリトラクタ装置に接続されると共に、該リトラクタ装置には、衝撃荷重が加わった場合若しくは、該ワイヤ部材の張力が、所定値以上に、増大した場合には、該ワイヤ部材の送出を拘束する拘束機能を有することを特徴とする請求項2記載の車体の前部構造。
【請求項4】
前記ワイヤ部材の端部は、前記エンジンフード部材の開放及び閉塞時には、該ワイヤ部材を前記車体側構造体から、送出及び収納する長手方向に伸縮可能な伸縮部材に接続されると共に、該車体側構造体には、衝撃荷重が加わった場合は、該ワイヤ部材の送出方向への移動を停止させるストッパ機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項5】
前記連結部材を、前記エンジンフード部材の裏面側に、少なくとも、一箇所の折り返し部を設けて、配索することを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両の前部構造。
【請求項1】
エンジンルームの上部開口部の周縁に設けられた車体側構造材と、前記エンジンルームの上部開口部を、開閉可能として設けられたエンジンフード部材と、該エンジンフード部材の前端縁及び前記車体側構造材との間に張設される連結部材とを有することを特徴とする車体の前部構造。
【請求項2】
前記車体側構造材は、エンジンルームの車幅方向両側縁部に位置する一対のフードリッジ部材であると共に、前記連結部材は、前記エンジンフード部材の裏面側に、車幅方向に挿通されて、前記一対のフードリッジ部材間を連結するワイヤ部材であることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項3】
前記ワイヤ部材の端部は、前記エンジンフード部材の開放及び閉塞時には、該ワイヤ部材を送出及び収納するリトラクタ装置に接続されると共に、該リトラクタ装置には、衝撃荷重が加わった場合若しくは、該ワイヤ部材の張力が、所定値以上に、増大した場合には、該ワイヤ部材の送出を拘束する拘束機能を有することを特徴とする請求項2記載の車体の前部構造。
【請求項4】
前記ワイヤ部材の端部は、前記エンジンフード部材の開放及び閉塞時には、該ワイヤ部材を前記車体側構造体から、送出及び収納する長手方向に伸縮可能な伸縮部材に接続されると共に、該車体側構造体には、衝撃荷重が加わった場合は、該ワイヤ部材の送出方向への移動を停止させるストッパ機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の車体の前部構造。
【請求項5】
前記連結部材を、前記エンジンフード部材の裏面側に、少なくとも、一箇所の折り返し部を設けて、配索することを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両の前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−137554(P2009−137554A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319121(P2007−319121)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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