説明

車体側部構造

【課題】フロントフェンダエプロンとフロントピラーとを損傷なく連結でき、かつ、車体前側に加わった衝撃がフロントフェンダエプロンからフロントピラーに効率よく伝達する車体側部構造を提供する。
【解決手段】フロントピラーとフロントフェンダエプロンとを、フロントピラーに溶接されるピラー側接合部とピラー側接合部に隣接して形成されフロントフェンダエプロンに溶接されるエプロン側接合部とをもつ連結部材を介して連結し、連結部材の肉厚をフロントピラーよりも厚肉かつフロントフェンダエプロンよりも薄肉にする。連結部材の肉厚がフロントピラーよりも厚肉かつフロントフェンダエプロンよりも薄肉であるため、溶接加工する際にフロントピラーやフロントフェンダエプロンに穴あきが生じることはない。ピラー側接合部とエプロン側接合部とが隣接しているため、フロントフェンダエプロンからフロントピラーまでの衝撃の伝達経路は短く、フロントフェンダエプロンからフロントピラーへの衝撃の伝達が非常に効率よくなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントフェンダエプロンがフロントピラーに連結されてなる自動車の車体側部構造において、フロントフェンダエプロンとフロントピラーとは、一般には溶接により連結される(例えば、特許文献1参照)。一般的な車体側部構造を模式的に表す要部拡大斜視図を図4に示し、図4中A−A’における断面を模式的に表す断面図を図5に示す。
【0003】
フロントピラー101は、車室を区画する車両構造部材の一部を構成する。フロントピラー101は左右のフロントドア(図略)の前側に配置され、一般には、車体の前下方から後上方に延びる。フロントピラー101は、ボデーシェルを構成する他部材(図略、例えばサイドメンバなど)に連結される。フロントフェンダエプロン102はフロントピラー101の前方に配置され、車体の前後方向に延びる。フロントフェンダエプロン102の後側端部120はフロントピラー101の前側壁110に連結される。前突時の衝撃や走行時の振動などの車体前側に入力した力は、フロントフェンダエプロン102を経てフロントピラー101に伝達する。フロントピラー101に伝達した力は、ボデーシェル全体に分散する。すなわち、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とを連結することで、車体前側に入力した力を車体全体に分散させることができ、衝撃や振動に起因する車体前側の損傷を低減できる。
【0004】
一般に、フロントフェンダエプロン102は比較的厚肉に形成され、フロントピラー101は比較的薄肉に形成されている。例えば、フロントフェンダエプロン102の一般的な肉厚は1.6〜2.0mm程度であり、フロントピラー101の一般的な肉厚は0.65〜0.75mm程度である。このようにフロントフェンダエプロン102とフロントピラー101との肉厚差が大きいために、従来の車体下部構造では、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とを溶接する際にフロントピラー101が損傷する場合があった。例えば、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とをアーク溶接する場合には、薄肉のフロントピラー101に穴があく場合があった。
【0005】
また、一般に、フロントフェンダエプロン102の上壁であるエプロン上壁123には、フードヒンジ(図略)を取り付けるヒンジ取付孔135が設けられ、フード(図略)はフードヒンジを介してフロントフェンダエプロン102に固定される。フードの意匠面(フードの上面)がエプロン上壁123よりも遙かに上方に配置される車両では、フードヒンジをエプロン上壁123よりもさらに上方に取り付ける必要がある。このような車両における車体側部構造では、エプロン上壁123よりも上方に隆起する上壁をもつブラケットをエプロン上壁123に取り付け、ブラケットの上壁にヒンジ取付孔135を設けて、ヒンジ取付孔135をエプロン上壁123よりも上方に形成した上で、フードヒンジとフロントフェンダエプロン102とをブラケットを介して固定する場合がある。しかし、車体の構造上、フードヒンジはフロントピラー101に近接した位置に取り付ける必要があるため、エプロン上壁123にブラケットを取り付けると、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とを溶接するための空間が充分に確保できない。
【0006】
図6に示すように、ブラケット107をフロントピラー102に直接溶接すれば、エプロン上壁123にブラケット107を取り付けつつ、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とをブラケット107を介して連結できると考えられる。
【0007】
すなわち、ブラケット107を、エプロン上壁123よりも上方に配置され前後方向に延びるブラケット上壁170と、ブラケット上壁170の前端に連続し下方に延びるブラケット脚壁171とをもつ略L字状に形成する。ブラケット脚壁171の下端部には前方に延びる前フランジ172を形成する。ブラケット上壁170にはフードヒンジを取り付けるヒンジ取付孔135を設ける。ブラケット上壁170の後端部(ヒンジ取付孔135よりも後側)には上方に延びる後フランジ173を形成する。前フランジ172をエプロン上壁123に溶接し、後フランジ173をフロントピラー101の前側壁110に溶接する。すると、フロントフェンダエプロン102とフロントピラー101とはブラケット107を介して連結され、ヒンジ取付孔135はエプロン上壁123よりも上方に形成される。
【0008】
しかしこの場合には、図7に示すように、フロントフェンダエプロン102とブラケット107との溶接部分151と、ブラケット107とフロントピラー101との溶接部分150とが、前後方向に大きく離間する。このため、車体前側に入力しフロントフェンダエプロン102に伝達した衝撃や振動がフロントピラー101に効率よく伝達し難い問題があった。また、ヒンジ取付孔135が形成されるブラケット上壁170はエプロン上壁123よりも遙かに上方に配置され、後フランジ173はブラケット上壁170よりもさらに上方に延びる。前フランジ172はエプロン上壁123の上面に当接する。このため、フロントフェンダエプロン102とブラケット107(前フランジ172)との溶接部分151と、ブラケット107(後フランジ173)とフロントピラー101との溶接部分150とが上下方向に大きく離間する。このことによっても、フロントフェンダエプロン102からフロントピラー101までの衝撃の伝達経路が長くなり、車体前側に入力しフロントフェンダエプロン102に伝達した衝撃や振動がフロントピラー101に効率よく伝達し難かった。
【特許文献1】特開平10−218028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、フロントフェンダエプロンとフロントピラーとを損傷なく連結でき、かつ、車体前側に加わった衝撃がフロントフェンダエプロンからフロントピラーに効率よく伝達する車体側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車体側部構造は、自動車の車体の一部を構成するフロントピラーと、フロントピラーよりも厚肉に形成されフロントピラーの前方に配置されているフロントフェンダエプロンと、が連結されてなる車体側部構造であって、フロントピラーとフロントフェンダエプロンとは、フロントピラーに溶接されるピラー側接合部とピラー側接合部に隣接して形成されフロントフェンダエプロンに溶接されるエプロン側接合部とをもつ連結部材を介して連結され、連結部材は、フロントピラーよりも厚肉かつフロントフェンダエプロンよりも薄肉であることを特徴とする。
【0011】
本発明の車体側部構造は、下記の構成(1)〜(4)の何れかを備えることが好ましい。構成(1)〜(4)の複数を備えることが望ましい。
(1)上記フロントフェンダエプロンと上記連結部材との肉厚比は4:3〜2:1であり、上記連結部材と上記フロントピラーとの肉厚比は4:3〜24:13である。
(2)上記エプロン側接合部と上記ピラー側接合部との前後方向の距離は、30mm以下である。
(3)上記エプロン側接合部と上記ピラー側接合部との上下方向の距離は、30mm以下である。
(4)上記連結部材は、上記フロントフェンダエプロンの上壁に溶接され、上記フロントフェンダエプロンの上壁よりも上方に配置される連結上壁を持つとともに連結上壁にフードヒンジを取り付けるヒンジ取付孔を持ち、上記ピラー側接合部は連結上壁よりも下方に形成され、上記エプロン側接合部はヒンジ取付孔よりも上記フロントピラー側に形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車体側部構造では、フロントフェンダエプロンとフロントピラーとが連結部材を介して連結される。そして、連結部材はフロントフェンダエプロンよりも薄肉かつフロントピラーよりも厚肉に形成されている。このため、フロントフェンダエプロンとフロントピラーとが損傷なく連結される。すなわち、連結部材はフロントフェンダエプロンよりも薄肉であるために、例えば、フロントピラーと連結部材とをアーク溶接してもフロントピラーに穴あきが生じることはない。また、連結部材はフロントピラーよりも厚肉であるために、例えば、連結部材とフロントフェンダエプロンとをアーク溶接してもフロントフェンダエプロンに穴あきが生じることはない。
【0013】
また、本発明の車体側部構造では、連結部材のエプロン側接合部はピラー側接合部と隣接して形成されている。このため、フロントフェンダエプロンからフロントピラーまでの衝撃の伝達経路は短い。このため、車体前側に入力しフロントフェンダエプロンに伝達した衝撃や振動がフロントピラーに伝達する速度が速くなり、かつ、車体前側に入力した衝撃は車体前側やフロントフェンダエプロンで減衰することなく(或いは僅かに減衰するのみで)フロントピラーに伝達する。よって、車体前側からフロントフェンダエプロンに伝達した衝撃がフロントピラーに効率よく伝達され、衝撃により車体前側に作用する力が充分に緩和される。
【0014】
本発明の車体側部構造が上記構成(1)を備える場合には、フロントフェンダエプロンと連結部材との肉厚差、および連結部材とフロントピラーとの肉厚差が充分に小さい。よって、フロントフェンダエプロンと連結部材との溶接時、および、連結部材とフロントピラーとの溶接時における、穴あきの発生をより確実に防止できる。よって、フロントフェンダエプロンとフロントピラーとをより確実に損傷なく連結することができる。
【0015】
本発明の車体側部構造が上記構成(2)、(3)の少なくとも一方を備える場合には、フロントフェンダエプロンからフロントピラーまでの衝撃の伝達経路が非常に短くなる。よって、車体前側からフロントフェンダエプロンに伝達した衝撃がより効率よくフロントピラーに伝達され、衝撃により車体前側に作用する力がより充分に緩和される。
【0016】
本発明の車体側部構造が上記構成(4)を備える場合には、フードの意匠面がフロントフェンダエプロンと離間した上方の位置に配置される車両においても、フロントフェンダエプロンからフロントピラーまでの衝撃の伝達経路を充分に短くできる。よって、上述した衝撃により車体前側に作用する力が充分に緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の車体側部構造において、エプロン側接合部は、フロントフェンダエプロンの車幅方向の側壁(左右側壁)に溶接しても良いし、エプロン上壁に溶接しても良い。ピラー側接合部はフロントピラーの車幅方向の側面(左右側壁)に溶接しても良いし、フロントピラーの前側側壁に溶接しても良い。
【0018】
連結部材には、エプロン側接合部を複数設けても良い。この場合、複数のエプロン側接合部のなかで最もフロントピラーに近い位置に配置されているエプロン側接合部(以下、主エプロン側接合部と呼ぶ)が、ピラー側接合部に隣接していればよい。また、連結部材にはピラー側接合部を複数設けても良い。この場合には、複数のピラー側接合部のなかで最もフロントフェンダエプロンに近い位置に配置されているピラー側接合部(以下、主ピラー側接合部と呼ぶ)がエプロン側接合部に隣接していればよい。複数のエプロン側接合部とピラー側接合部とを連結部材に設ける場合には、主ピラー側接合部と主エプロン側接合部とが隣接していればよい。
【0019】
本発明の車体側部構造において、連結部材の上壁は、上下方向の位置がフロントフェンダエプロンの上壁と同程度の位置になるように配置することもできるし、フロントフェンダエプロンの上壁よりも遙かに上方に配置することもできる。連結部材の上壁は、フロントフェンダエプロンの上壁よりも下方に配置することもできる。すなわち、本発明の車体側部構造は、フードの意匠面がエプロン上壁よりも遙かに上方に配置される車両に用いることもできるし、フードの意匠面がエプロン上壁に近接して配置される車両に用いることもできる。ヒンジ取付孔は、連結部材の上壁に形成しても良いし、エプロン上壁に形成しても良い。ヒンジ取付孔は、連結部材の上壁やエプロン側壁以外の部分(例えば連結部材の側壁やフロントフェンダエプロンの側壁など)に形成しても良い。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の車体側部構造を図面を基に説明する。
【0021】
(実施例1)
実施例1の車体側部構造は、上記構成(1)〜(5)を備える。実施例1の車体側部構造を模式的に表す要部拡大斜視図を図1に示す。図1中A−A’における断面図を図2に示す。以下、実施例の車体側部構造において、上、下、左、右、前、後とは、図1に示す上、下、左、右、前、後を指す。
【0022】
実施例1の車体側部構造は、図1に示すように、フロントピラー1と、フロントフェンダエプロン2と、連結部材3とを備える。フロントピラー1は左右のフロントドア(図略)の前側にそれぞれ配置され、車体の前下方から後上方に延びている。フロントピラー1の肉厚は0.75mmである。フロントフェンダエプロン2はそれぞれのフロントピラー1の前方に配置され、車体の前後方向に延びている。詳しくは、フロントフェンダエプロン2の後側端部20はフロントピラー1の前側壁10の前方に配置され、フロントフェンダエプロン2の後側端部20とフロントピラー1の前側壁10とは僅かに離間している。フロントフェンダエプロン2は筒状をなし、断面略L字状のエプロンアッパメンバ21と、断面略L字状のエプロンロアメンバ22とが溶接されて接合している。フロントフェンダエプロン2の一般部(エプロンアッパメンバ21とエプロンロアメンバ22との接合部以外の部分)の肉厚は1.6mmである。
【0023】
連結部材3は、下方に開口する箱状をなし、連結上壁30と前側壁31と左側壁32と右側壁33と後側壁34とをもつ。連結部材3の開口は前側壁31、左側壁32、右側壁33および後側壁34の下端で区画されている。連結上壁30には、ヒンジ取付孔35が形成されている。連結部材3の肉厚は1.2mmである。連結部材3は、フロントピラー1よりも厚肉であり、フロントフェンダエプロン2よりも薄肉である。フロントフェンダエプロン2と連結部材3との肉厚比は4:3である。連結部材3とフロントピラー1との肉厚比は8:5である。
【0024】
連結部材3はエプロン上壁23に接合している。詳しくは、後側壁34の下端にはエプロン上壁23に沿って開口外方(後方)に延びる第1フランジ40が形成されている。図2に示すように、第1フランジ40の後端はフロントピラー1の前側壁10に当接している。第1フランジ40はエプロン上壁23のフロントピラー1側の端部にスポット溶接されて接合している。第1フランジ40のなかで、エプロン上壁23にスポット溶接されている部分がエプロン側接合部5(主エプロン側接合部50)となる。実施例1の車体側部構造では、図1に示すように、前側壁31、左側壁32および右側壁33の下端にも、エプロン上壁23に沿って開口外方に延びるフランジ42、43、44が形成されている。前側壁31の下端に形成されている前フランジ42、左側壁32の下端に形成されている左フランジ43、および、右側壁33の下端に形成されている右フランジ44もまた、エプロン上壁23にスポット溶接されている。すなわち、実施例1の車体側部構造では、前フランジ42、左フランジ43、および、右フランジ44にもエプロン側接合部5が形成されている。前フランジ42、左フランジ43、および、右フランジ44に形成されているエプロン側接合部5を一般エプロン側接合部51と呼ぶ。
【0025】
第1フランジ40の後端には、フロントピラー1の前側壁10に沿って上方に延びる第2フランジ41が形成されている。第2フランジ41はフロントピラー1の前側壁10に当接している。図2に示すように、第2フランジ41の上端は連結上壁30よりも下方に配置されている。第2フランジ41の上端はフロントピラー1の前側壁10にアーク溶接されて接合している。第2フランジ41のなかで、フロントピラー1にアーク溶接されている部分がピラー側接合部6となる。ピラー側接合部6と主エプロン側接合部50とは互いに隣接している。連結部材3は各一般エプロン側接合部51および第1フランジ40の主エプロン側接合部50がフロントフェンダエプロン2に接合し、第2フランジ41のピラー側接合部6がフロントピラー1に接合している。したがって、フロントピラー1とフロントフェンダエプロン2とは連結部材3を介して連結されている。
【0026】
実施例1の車体側部構造において、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との前後方向の距離は15mmである。なお、本発明の車体側部構造において、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との前後方向の距離とは、エプロン側接合部5の中心点とピラー側接合部6の中心点との前後方向(水平方向)の距離を指す。実施例1の車体側部構造において、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との上下方向の距離は10mmである。本発明の車体側部構造において、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との上下方向の距離とは、エプロン側接合部5の中心点とピラー側接合部6の中心点との上下方向(鉛直方向)の距離を指す。
【0027】
実施例1の車体側部構造は、フロントフェンダエプロン2とフロントピラー1とが連結部材3を介して連結されている。そして、連結部材3はフロントピラー1よりも厚肉かつフロントフェンダエプロン2よりも薄肉である。このため、連結部材3のピラー側接合部6とフロントピラー1とをアーク溶接しても、フロントピラー1に穴あきが生じることはない。したがって、実施例1の車体側部構造によると、フロントフェンダエプロン2とフロントピラー1とが損傷なく連結される。また、フロントピラー1とフロントフェンダエプロン2とを、フロントピラー1よりも厚肉かつフロントフェンダエプロン2よりも薄肉の連結部材3で連結するために、フロントピラー1やフロントフェンダエプロン2を所望する肉厚に形成できる。したがって、実施例1の車体側部構造によると、自動車の設計の自由度が高くなる。
【0028】
なお、本発明の車体側部構造では、フロントフェンダエプロン2と連結部材3との肉厚比が4:3〜2:1、連結部材3とフロントピラー1との肉厚比が4:3〜24:13であれば、フロントフェンダエプロン2とフロントピラー1とを損傷なく連結できる。好ましくは、フロントフェンダエプロン2と連結部材3との肉厚比は4:3〜8:5、連結部材3とフロントピラー1との肉厚比は4:3〜8:5であるのがよい。フロントフェンダエプロン2の一般的な肉厚は1.6〜2.0mm程度であり、フロントピラー1の一般的な肉厚は0.65〜0.75mm程度であるため、連結部材3の好ましい肉厚は1.0〜1.2mmである。
【0029】
また、実施例1の車体側部構造では、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との上下方向の距離、および、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との前後方向の距離が非常に小さく、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6とが近接して形成されている。このため、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1までの衝撃の伝達経路が短く、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1への衝撃の伝達が非常に効率よくなされる。よって、衝撃により車体前側に作用する力が充分に緩和される。
【0030】
なお、本発明の車体側部構造では、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との前後方向の距離が30mm以下であるか、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との上下方向の距離が30mm以下であれば、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1までの衝撃の伝達経路が充分に短くなる。好ましくは、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との前後方向の距離が12mm以下、および/または、エプロン側接合部5とピラー側接合部6との上下方向の距離が8mm以下であるのがよい。
【0031】
本発明の車体側部構造では、連結上壁30がエプロン上壁23よりも上方に配置され、かつ、連結上壁30にヒンジ取付孔35が形成されているため、フードの意匠面(図略)がエプロン上壁23よりも遙かに上方に配置される車両に使用できる。また、ピラー側接合部6が連結上壁30よりも下方に形成されているために、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との上下方向の距離は充分に小さい。さらに、主エプロン側接合部50がヒンジ取付孔35よりもフロントピラー1側に形成されているため、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との前後方向の距離は充分に小さい。よって、実施例1の車体側部構造はフロントフェンダエプロン2からフロントピラー1までの衝撃の伝達経路が充分に短くなる。
【0032】
なお、実施例1の車体側部構造では、連結部材3が下方に開口する箱状をなすが、連結部材3は底壁をもつ中空直方体状であっても良い。また、左側壁32および右側壁33をもたない屈曲板状であっても良い。
【0033】
実施例1の車体側部構造では、第1フランジ40をエプロン上壁23にスポット溶接し、第1フランジ40に主エプロン側接合部50を形成しているが、第1フランジ40をエプロン上壁23に溶接しなくても良い。すなわち、第1フランジ40にエプロン側接合部5を形成しなくても良い。この場合には、左フランジ43または右フランジ44に形成されているエプロン側接合部5のなかで最もピラー側接合部6側に近い位置に配置されているエプロン側接合部5が主エプロン側接合部となる。このとき、左フランジ43または右フランジ44に形成されている主エプロン側接合部50がピラー側接合部6と隣接していれば、実施例1の車体側部構造と同様に、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1までの衝撃の伝達経路が充分に短くなる。
【0034】
(実施例2)
実施例2の車体側部構造は、第2フランジの形状、フロントピラーに対するピラー側接合部の溶接位置、ピラー側接合部とフロントピラーの前側壁との溶接方法、および、エプロン側接合部とエプロン上壁との溶接方法以外は実施例1の車体側部構造と同じである。実施例2の車体側部構造を模式的に表す断面図を図3に示す。
【0035】
実施例2の車体側部構造では、第2フランジ41はフロントピラー1の前側壁10に当接し、フロントピラー1の前側壁10に沿って下方に延びている。第2フランジ41とエプロン上壁23の後側端部、すなわち、フロントフェンダエプロン2の後側端部20とは当接している。
【0036】
第2フランジ41の下端は連結上壁30およびエプロン上壁23よりも下方に配置され、フロントピラー1の前側壁10にスポット溶接されて接合している。したがって、ピラー側接合部6は、エプロン側接合部5(50、51)よりも下方に配置されている。各一般エプロン側接合部51は、エプロン上壁23にアーク溶接されて接合している。第1フランジ40の主エプロン側接合部50はエプロン上壁23にスポット溶接されて接合している。実施例2の車体側部構造においては、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との前後方向の距離は15mmであり、主エプロン側接合部50とピラー側接合部6との上下方向の距離は13mmである。フロントピラー1、フロントフェンダエプロン2、および、連結部材3の肉厚は実施例1と同じである。
【0037】
実施例2の車体側部構造では、ピラー側接合部6がエプロン側接合部5よりも下方に配置されているが、ピラー側接合部6と主エプロン側接合部50とは隣接して形成されている。したがって、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1までの衝撃の伝達経路は充分に短く、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1への衝撃の伝達が非常に効率よくなされる。
【0038】
また、エプロン上壁23の後側端部20と第2フランジ41とが当接し、第2フランジ41とフロントピラー1の前側壁10とが当接しているため、車体前部からフロントフェンダエプロン2に伝達した衝撃はほぼ直接フロントピラー1に伝達される。よって、実施例2の車体側部構造では、フロントフェンダエプロン2からフロントピラー1への衝撃の伝達が一層効率よくなされる。
【0039】
実施例2の車体側部構造では、一般エプロン側接合部51がエプロン上壁23にアーク溶接され、ピラー側接合部6がフロントピラー1の前側壁10にスポット溶接されているが、実施例1の車体側部構造と同様に、連結部材3がフロントピラー1よりも厚肉かつフロントフェンダエプロン2よりも薄肉であるため、フロントフェンダエプロン2とフロントピラー1とは損傷なく連結される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1の車体側部構造を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図2】実施例1の車体側部構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図3】実施例2の車体側部構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図4】従来の車体下部構造を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図5】従来の車体下部構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【図6】従来の車体下部構造を模式的に表す要部拡大斜視図である。
【図7】従来の車体下部構造を模式的に表す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:フロントピラー、2:フロントフェンダエプロン、3:連結部材、23:エプロン上壁、30:連結上壁、35:ヒンジ取付孔、5:エプロン側接合部、50:主エプロン側接合部、6:ピラー側接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体の一部を構成するフロントピラーと、該フロントピラーよりも厚肉に形成され該フロントピラーの前方に配置されているフロントフェンダエプロンと、が連結されてなる車体側部構造であって、
該フロントピラーと該フロントフェンダエプロンとは、該フロントピラーに溶接されるピラー側接合部と該ピラー側接合部に隣接して形成され該フロントフェンダエプロンに溶接されるエプロン側接合部とをもつ連結部材を介して連結され、
該連結部材は、該フロントピラーよりも厚肉かつ該フロントフェンダエプロンよりも薄肉であることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記フロントフェンダエプロンと前記連結部材との肉厚比は4:3〜2:1であり、前記連結部材と前記フロントピラーとの肉厚比は4:3〜24:13である請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記エプロン側接合部と前記ピラー側接合部との前後方向の距離は、30mm以下である請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記エプロン側接合部と前記ピラー側接合部との上下方向の距離は、30mm以下である請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記連結部材は、前記フロントフェンダエプロンの上壁に溶接され、前記フロントフェンダエプロンの上壁よりも上方に配置される連結上壁を持つとともに該連結上壁にフードヒンジを取り付けるヒンジ取付孔を持ち、
前記ピラー側接合部は該連結上壁よりも下方に形成され、前記エプロン側接合部は該ヒンジ取付孔よりも前記フロントピラー側に形成されている請求項1に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−176241(P2007−176241A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374850(P2005−374850)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】