車体前部構造
【課題】フロントサイドフレームの曲げに対する剛性を確保することができ、かつ軽量化を図ることができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、外側衝撃吸収部63の内側壁78を左フロントサイドフレーム11の外側壁33に対して車体幅方向中心48側に配置することで、外側衝撃吸収部63の後端部75bおよび左フロントサイドフレーム11の前端部11aが一部重ね合わされた重複部81を形成した。そして、重複部81で衝撃荷重の一部を外側壁33に伝えるようにした。
【解決手段】車体前部構造10は、外側衝撃吸収部63の内側壁78を左フロントサイドフレーム11の外側壁33に対して車体幅方向中心48側に配置することで、外側衝撃吸収部63の後端部75bおよび左フロントサイドフレーム11の前端部11aが一部重ね合わされた重複部81を形成した。そして、重複部81で衝撃荷重の一部を外側壁33に伝えるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームに衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパービームを設けた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フロントサイドフレームの車体外側にアッパメンバーを備え、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を離間させて備え、内外側の衝撃吸収部にバンパービームを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−190964号公報
【0003】
この衝撃吸収構造を図14に基づいて説明する。
図14は従来の車体前部構造でオフセット衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
車体前部構造200は、左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202の前端部にそれぞれ内外側の衝撃吸収部203,204を設けることで、衝撃吸収部の横幅が拡げられている。
【0004】
よって、バンパービーム205に衝撃荷重fが作用した場合に、内外側の衝撃吸収部203,204が横方向に倒れることを防いで、作用した衝撃荷重fを内外側の衝撃吸収部203,204を経て左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202に伝えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外衝撃吸収部204は内側壁204aが、左フロントサイドフレーム201の外側壁201aに対して車体外側に距離Sだけ離れて設けられている。
このため、相手車両210が左側にずれてオフセット衝突した場合に、バンパービーム205に作用した衝撃荷重fは、内外側の衝撃吸収部203,204を経て左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202に矢印a、矢印bの如くそれぞれ伝わる。
【0006】
ここで、相手車両210がオフセット衝突した場合、バンパービーム205は想像線で示すように変形する。
バンパービーム205の変形で、左バンパービーム205に車体幅方向中心側に向けて矢印cの如く衝撃荷重が作用する。この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム201に作用して、左フロントサイドフレーム201を矢印dの如く曲げ変形させようとする。
【0007】
そこで、左フロントサイドフレーム201の剛性を確保するために、左フロントサイドフレーム201に補強部材としてスチフナ(仕切りプレート)を設け、左フロントサイドフレーム201が矢印dの如く変形することを防いでいる。
しかし、左フロントサイドフレーム201をスチフナで補強すると、左フロントサイドフレーム201の重量が増し、その観点から改良の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、フロントサイドフレームの曲げに対する剛性を確保することができ、かつ軽量化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、前記フロントサイドフレームの上側後方にフロントピラーを設け、前記フロントピラーから前方に向けてアッパメンバーを延ばすとともに、前記アッパメンバーを前記フロントサイドフレームの外側に配置し、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を内側と外側とに設け、前記内外側の衝撃吸収部で衝撃荷重を吸収する車体前部構造において、前記外側衝撃吸収部の内側壁を前記フロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、前記外側衝撃吸収部の後端部および前記フロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成し、前記重複部で前記衝撃荷重の一部を前記外側壁に伝えるように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2は、前記フロントサイドフレームは、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出され、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部の略中央部から車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出され、前記内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3は、前記圧縮荷重支えフレーム部の外側部が曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成されることで、前記フロントサイドフレームが略湾曲状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの前端部およびアッパメンバーの前端部に内外側の衝撃吸収部をそれぞれ内側と外側とに設けた。そして、外側衝撃吸収部の内側壁をフロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、外側衝撃吸収部の後端部およびフロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成した。
【0013】
よって、例えば、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、外側衝撃吸収部に作用する衝撃荷重を、重複部を経由させてフロントサイドフレームの外側壁に効率よく伝えることができる。
【0014】
このように、フロントサイドフレームの外側壁に衝撃荷重を伝えることで、フロントサイドフレームを車体幅方向中心側に向けて曲げようとする曲げ荷重を、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
これにより、フロントサイドフレームに補強部材を設けることなく、フロントサイドフレームの曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出された圧縮荷重支えフレーム部を備えた。
これにより、内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を圧縮荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0016】
さらに、フロントサイドフレームに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出された曲げ荷重支えフレーム部を備えた。
そして、曲げ荷重支えフレーム部で、内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支えるようにした。
よって、例えば、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に発生する曲げ荷重を、曲げ荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0017】
加えて、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、外側衝撃吸収部に作用する衝撃荷重を、重複部を経由させてフロントサイドフレームの外側壁に効率よく伝えることができる。
フロントサイドフレームの外側壁に衝撃荷重を伝えることで、フロントサイドフレームを車体幅方向中心側に向けて曲げようとする曲げ荷重を、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
【0018】
このように、曲げ荷重支えフレーム部で曲げ荷重を支えるとともに、外側壁に伝えられた衝撃荷重で曲げ荷重を相殺することで、フロントサイドフレームに作用する曲げ荷重を一層確実に支えることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の外側部を曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成した。
このように、圧縮荷重支えフレーム部の外側部を略湾曲状に形成することで、フロントサイドフレームを略湾曲状に形成することができる。
【0020】
よって、重複部を経てフロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重は、外側壁や曲げ荷重支えフレーム部に沿うように作用する。
これにより、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重を外側壁や曲げ荷重支えフレーム部で効率よく支えることができる。
【0021】
加えて、フロントサイドフレームを略湾曲状に形成することで、フロントサイドフレームの幅寸法を大きくする必要がない。
これにより、フロントサイドフレームの重量増を抑えて軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0023】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側に左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12を備え、左フロントサイドフレーム11の上側後方に左フロントピラー(フロントピラー)13を設け、左フロントピラー13の下端部13aから前方に向けて左アッパメンバー(アッパメンバー)15を延ばすとともに、左アッパメンバー15を左フロントサイドフレーム11の外側に配置し、右フロントサイドフレーム12の上側後方に右フロントピラー(フロントピラー)14を設け、右フロントピラー14の下端部14aから前方に向けて右アッパメンバー(アッパメンバー)16を延ばすとともに、右アッパメンバー16を右フロントサイドフレーム12の外側に配置した自動車の構造である。
【0024】
左フロントサイドフレーム11と左アッパメンバー15との間に、左前輪(図示せず)を覆う左ホイールハウス18が設けられている。
右フロントサイドフレーム12と右アッパメンバー16との間に、右前輪(図示せず)を覆う右ホイールハウス19が設けられている。
【0025】
図2は第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aと左アッパメンバー15の前端部15aとが車体幅方向に向けて配置されて各前端部11a,15aが互いに連結され、右フロントサイドフレーム12の前端部12aと右アッパメンバー16の前端部16aとが車体幅方向に向けて配置されて各前端部12a,16aが互いに連結され、前端部11a,15aおよび前端部12a,16aに衝撃吸収構造20が備えられている。
【0026】
衝撃吸収構造20は、前端部11a,15aに左取付プレート21を介して左衝撃吸収ユニット25が設けられ、前端部12a,16aに右取付プレート22を介して右衝撃吸収ユニット26が設けられ、左右の衝撃吸収ユニット25,26に亘ってバンパービーム27が架け渡され、バンパービーム27にエネルギー吸収部材28が設けられている。
すなわち、バンパービーム27は、左端部27aが左衝撃吸収ユニット25に取り付けられ、右端部27bが右衝撃吸収ユニット26に取り付けられている。
【0027】
ここで、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のアッパメンバー15,16は左右対称の部材であり、右フロントサイドフレーム12、右アッパメンバー16の説明を省略する。
また、左右の衝撃吸収ユニット25,26は左右対称の部材であり、右衝撃吸収ユニット26の構成部材に左衝撃吸収ユニット25と同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
図3は図2の3部拡大図、図4(a)は図3の4a−4a線断面図、図4(b)は図4(a)の分解図である。
左フロントサイドフレーム11は、車体前後方向に延びるとともに開口部32が車体外側に向けて配置された断面略コ字形のサイドフレーム部材31と、サイドフレーム部材31の開口部32に嵌合した断面略コ字形のサイド外側壁(外壁部)33とを備える。
【0029】
サイドフレーム部材31は、水平に配置された上面部34と、上面部34の内側辺から下方に延びた内壁部35と、内壁部35の下辺から車体幅方向外側に向けて延びた下面部36とを備える。
サイド外側壁33は、上下の折曲片33a,33bがサイドフレーム部材31の開口部32に沿って設けられている。
【0030】
左アッパメンバー15は、車体前後方向に延びるとともに開口部42が車体内側に向けて配置された断面略コ字形のアッパメンバー部材41と、アッパメンバー部材41の中央開口部42aに嵌合した断面略コ字形のアッパ内側壁43とを備える。
アッパメンバー部材41は、車幅方向に水平に延びた上面部44と、上面部44の外側辺から下方に延びた外壁部45と、外壁部45の下辺から車体幅方向内側に向けて延びた下面部46とを備える。
【0031】
アッパ内側壁43は、上下の折曲片43a,43bがアッパメンバー部材41の中央開口部42aに沿って設けられている。
上面部44は、前端部に車体幅方向中心48(図2参照)に向けて張り出す上張出部51が設けられている。上張出部51は先端部51aがサイドフレーム部材31の上面部34に溶接で接合されている。
【0032】
下面部46は、上面部44と同様に、前端部に車体幅方向中心48に向けて張り出す下張出部52が設けられている。
下張出部52は先端部52aがサイドフレーム部材31の下面部36に溶接で接合されている。
【0033】
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aは、車体幅方向に向けて配置されて互いに連結されている。
左フロントサイドフレーム11の前端部11aには、取付片37が張り出されている。また、左アッパメンバー15の前端部15aには、取付片47が張り出されている。
【0034】
図5は第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
左フロントサイドフレーム11の上面部34は、左フロントサイドフレーム11の略中央部11bから前端部11aに向けて外側辺34aが徐々に車体外側(左アッパメンバー15側)に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に形成されている。
【0035】
よって、上面部34は、略中央部11bから前端部11aに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
図4に示す下面部36も、上面部34と同様に、略中央部から前端部に向けて外側辺が徐々に車体外側に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に形成されている。
【0036】
サイド外側壁33は、略中央部11bから前端部11aに向けて外側辺34aに沿って徐々に車体外側(左アッパメンバー15側)に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に設けられている。
以下、左フロントサイドフレーム11のうち、略中央部11bから前端部11aまでの部位をサイド前半部54として説明する。
【0037】
左アッパメンバー15は、略中央部15bから前端部15aまで車体前方に向けて車体幅方向中心側に徐々に移動するように傾斜角θ2で傾斜状に形成されている。
以下、左アッパメンバー15のうち、略中央部15bから前端部15aまでの部位をアッパ前半部55として説明する。
【0038】
左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33を、サイド前半部54において傾斜角θ1で傾斜状に設けるとともに、左アッパメンバー15のアッパ前半部55を、傾斜角θ2で傾斜状に設けた。
これにより、サイドフレーム前端部11aおよびアッパメンバー前端部15aが近接された状態に配置される。
【0039】
ここで、前述したように、左アッパメンバー15は、前端部15aのうち、上面部44に上張出部51が設けられるとともに、下面部46に下張出部52(図4参照)が設けられている。
【0040】
上張出部51は先端部51aがサイドフレーム部材31の上面部34に溶接で接合されている。また、下張出部52は先端部52aがサイドフレーム部材31の下面部36に溶接で接合されている。
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aが強固に連結されている。
【0041】
左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aに、左取付プレート21を介して左衝撃吸収ユニット25が設けられている。
左衝撃吸収ユニット25にバンパービーム27の左端部27aが取り付けられている。
【0042】
左衝撃吸収ユニット25は、左取付プレート21を介して左フロントサイドフレーム11の前端部11aに一体に取り付けられた内側衝撃吸収部62と、左取付プレート21を介して左アッパメンバー15の前端部15aに一体に取り付けられた外側衝撃吸収部63とを備える。
【0043】
左取付プレート21は、前端部11aに取り付けられた内側取付部21aと、前端部15aに取り付けられた外側取付部21bとを有する。
内側取付部21aは、車幅方向に沿って平行に取り付けられたプレートである。
外側取付部21bは、内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させたプレートである。
【0044】
内側衝撃吸収部62は、略矩形状の内筒体65を備え、後端部に内後フランジ66を備え、前端部に内前取付片67を備える。
内筒体65は、平面視で先細状に形成されている。
この内側衝撃吸収部62は、内後フランジ66が、左取付プレート21の内側取付部21aを介して左フロントサイドフレーム11の取付片37にボルト68…、ナット69…で取り付けられている。
よって、内側衝撃吸収部62は、左フロントサイドフレーム11の前方に設けられている。
【0045】
外側衝撃吸収部63は、略矩形状の外筒体75を備え、後端部に外後フランジ76を備え、前端部に外前取付片77を備える。
この外側衝撃吸収部63は、内側衝撃吸収部62に対して外側に所定間隔離間させて配置され、外後フランジ76が、左取付プレート21の外側取付部21bを介して左アッパメンバー15の取付片47にボルト68…、ナット69…で取り付けられている。
よって、外側衝撃吸収部63は、左アッパメンバー15の前方に設けられている。
【0046】
ここで、バンパービーム27は、車両の意匠性などを考慮して、左端部27aが後方に向けて湾曲状に形成されている。このため、左端部27aは、左取付プレート21に近づくことになる。
そこで、前述したように、左取付プレート21の外側取付部21bを内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させることにした。
【0047】
よって、左端部27aと外側取付部21bとの間隔を略一定に確保することが可能になる。
これにより、外側衝撃吸収部63の内外側の側壁78,79を略同じ長さに確保することが可能になり、外側衝撃吸収部63の潰し代を良好に確保することができる。
【0048】
外側衝撃吸収部63の外筒体75は、内側壁78が前端部75aから後端部75bに向けて傾斜角θ4で傾斜状に形成されている。
ここで、傾斜角θ4は、左フロントサイドフレーム11の外側辺34aの傾斜角θ1と略同じ傾斜角に設定されている。すなわち、傾斜角θ4および傾斜角θ1の関係は、θ4≒θ1の関係が成立する。
【0049】
加えて、外筒体75の内側壁78は、左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33に対して車体幅方向中心48(図2参照)側に配置されている。
これにより、外筒体75の後端部75bおよび左フロントサイドフレーム11の前端部11aで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
【0050】
具体的には、外筒体75の後端部75bのうち内側壁78寄りの部位が、左フロントサイドフレーム11の前端部11aのうちサイド外側壁33寄りの部位に左取付プレート21を介在させた状態で重ね合わされている。
内側壁78寄りの部位とサイド外側壁33寄りの部位との重複幅はWである。
【0051】
重複部81の幅Wは、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、外筒体75の内側壁78に沿って後方に伝わった衝撃荷重がサイド外側壁33に効率よく伝達可能に決められている。
【0052】
内側衝撃吸収部62の内前取付片67および外側衝撃吸収部63の外前取付片77に、バンパービーム27の左端部27aが溶接されている。
バンパービーム27の前面27cにエネルギー吸収部材28が設けられている。
【0053】
つぎに、車体前部構造10に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)する例を図6に基づいて説明する。
図6(a),(b)は第1実施の形態に係る衝撃吸収構造でオフセット低速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット軽衝突)する。
【0054】
軽衝突(低速衝突)により生じた衝撃荷重F1は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て左衝撃吸収ユニット25に伝わる。
具体的には、内側衝撃吸収部62に矢印Aの如く衝撃荷重が伝わり、外側衝撃吸収部63に矢印Bの如く衝撃荷重が伝わる。
【0055】
(b)において、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを潰すことで衝撃荷重F1の一部を吸収する。
残りの衝撃荷重を左衝撃吸収ユニット25(内側衝撃吸収部62および外側衝撃吸収部63)を潰すことで吸収する。
【0056】
このように軽衝突の場合、左フロントサイドフレーム11や左アッパメンバー15に変形を生じさせることなく、衝撃荷重F1(すなわち、衝撃エネルギー)を吸収することができる。
よって、オフセット軽衝突後に、エネルギー吸収部材28、バンパービーム27および左衝撃吸収ユニット25をボルト68…を外して交換するという簡単な修理で対応することができる。
【0057】
つぎに、車体前部構造10に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で高速衝突する例を図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a),(b)は第1実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット高速衝突)する。
【0058】
(b)において、相手車両85がオフセット衝突(高速衝突)することで、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aが変形する。
バンパービーム27の左端部27aが変形することで、左端部27aに車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Cの如く衝撃荷重が作用する。
この衝撃荷重が内側衝撃吸収部62を介して左フロントサイドフレーム11に作用し、左フロントサイドフレーム11を矢印Dの如く曲げ変形させようとする。
【0059】
一方、高速衝突により生じた衝撃荷重F2は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て内側衝撃吸収部62に矢印Eの如く伝わるとともに、外側衝撃吸収部63に矢印Fの如く伝わる。
【0060】
ここで、外側衝撃吸収部63の内側壁78と左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁33に矢印Gの如く効率よく伝えることができる。
この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム11を矢印Hの如く(すなわち、矢印Dと反対方向に)曲げ変形させようとする。
【0061】
これにより、左フロントサイドフレーム11を車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Dの如く曲げようとする衝撃荷重を、左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
よって、左フロントサイドフレーム11が矢印Dの曲げ変形することを防ぐことができる。
【0062】
したがって、左フロントサイドフレーム11にスチフナなどの補強部材を設けることなく、左フロントサイドフレーム11の曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0063】
図8は第1実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
左フロントサイドフレーム11が矢印D(図7(b)参照)の曲げ変形することを防ぐことで、左フロントサイドフレーム11を良好に潰すように変形させることができる。
具体的には、左フロントサイドフレーム11の略中央部11bを略く字状に変形させて衝撃荷重を効率よく吸収することができる。
【0064】
このように、左フロントサイドフレーム11を略く字状に変形させることで、エンジンルーム86を有効に潰すクラッシャブルゾーンとすることが可能になる。
これにより、左フロントサイドフレーム11の変形量を十分に確保して、エンジンルーム86の後方の車室内が変形することを抑えることができる。
【0065】
つぎに、第2実施の形態の車体前部構造90を図9〜図11に基づいて説明する。なお、第2実施の形態において第1実施の形態の車体前部構造10と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の要部を示す平面図、図10(a)は図9の10a−10a線断面図、図10(b)は図9の10b−10b線断面図、図11は第2実施の形態に係る左フロントサイドフレームを示す分解平面図である。
車体前部構造90は、第1実施の形態の左右のフロントサイドフレーム11,12に代えて、左右のフロントサイドフレーム(右フロントサイドフレームは図示せず)91を設けたもので、その他の構成は第1実施の形態と同じである。
【0067】
左右のフロントサイドフレーム91の前端部91aおよび左右のアッパメンバー15,16の前端部15a,16a(16aは図1参照)に衝撃吸収構造20が備えられている。
なお、フロントサイドフレームとしての左右のフロントサイドフレーム91は左右対称の部材であり、左フロントサイドフレーム91で右フロントサイドフレームの説明を兼ねる。
【0068】
左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部95と、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48(図2参照)に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部96とが備えられている。
【0069】
圧縮荷重支えフレーム部95は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて直線状に延出され、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える部材である。
この圧縮荷重支えフレーム部95は、車体前後方向に延びるとともに開口部102(図10参照)が車体外側に向けて配置された断面略コ字形のサイドフレーム部材101と、サイドフレーム部材101の開口部102に設けられたサイド外側壁(外壁部)103とを備える。
圧縮荷重支えフレーム部95は、サイドフレーム部材101の開口部102をサイド外側壁103で塞ぐことで閉断面(図10参照)に形成されている。
【0070】
サイドフレーム部材101は、水平に配置された上面部105と、上面部105の内側辺から下方に延びた内壁部106と、内壁部106の下辺から車体幅方向外側に向けて延びた下面部107とを備える。
【0071】
このサイドフレーム部材101は、上面部105、内壁部106、下面部107で断面略コ字形に形成されている。
サイドフレーム部材101を断面略コ字形に形成することで、上面部105および内壁部106の交差部に凸角状の上稜線部108が形成され、下面部107および内壁部106の交差部に凸角状の下稜線部109が形成されている。
【0072】
サイドフレーム部材101の内壁部106は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて略直線状に延出されている。
サイドフレーム部材101の上面部105は、前上面部111が平坦に形成され(図10(a)参照)、後上面部112が断面略L字形に形成されている(図10(b)参照)。
【0073】
前上面部111の外側辺111aは、前直線部111b、中央段差111c、後直線部111dを有する。中央段差111cは、前方から後方に向けて車体幅方向中央に近づくように傾斜されている。
よって、前上面部111の外側辺111aは、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
【0074】
後上面部112は、折曲片112aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
すなわち、サイドフレーム部材101の上面部105は、前上面部111の外側辺111aおよび後上面部112の折曲片112aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
よって、サイドフレーム部材101の上面部105は、サイドフレーム部材101の後端部101aから前端部101bに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
【0075】
図11に示す下面部107も、上面部105と同様に、外側辺107aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
よって、下面部107は、上面部105と同様に、サイドフレーム部材101の後端部101aから前端部101bに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
【0076】
サイド外側壁103は、前部121が断面略コ字形に形成され、後部122が断面略L字形に形成されている。
サイド外側壁103の前部121は、図10(a)に示すように、上下の折曲片121a,121bがサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられている。
【0077】
サイド外側壁103の後部122は、図10(b)に示すように、上片122aおよび下折曲片122bがサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられている。
すなわち、サイド外側壁103がサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられ、サイド外側壁103で開口部102が塞がれている。
【0078】
ここで、サイド外側壁103は、上面部105(外側辺111a、折曲片112a)および下面部107(外側辺107a)に設けられている。
よって、サイド外側壁103は、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って設けられている。
このサイド外側壁103は、詳細には、略中央部103aから後方に向けて後端部103bまで僅かに湾曲状に曲げ形成されている。
【0079】
曲げ荷重支えフレーム部96は、圧縮荷重支えフレーム部95の略中央部95aから車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に膨出され、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48に作用する衝撃荷重を支える部材である。
【0080】
曲げ荷重支えフレーム部96は、図10(b)に示すように、サイドフレーム部材101の上面部105に設けられた上面部125と、サイドフレーム部材101の下面部107に設けられた下面部126と、上面部125の内側辺125aおよび下面部126の内側辺126aに設けられた内壁部127とを備える。
【0081】
曲げ荷重支えフレーム部96は、上面部125、内壁部127、下面部126で断面略コ字形に形成されている。
曲げ荷重支えフレーム部96を断面略コ字形に形成することで、上面部125および内壁部127の交差部に凸角状の上稜線部128が形成され、下面部126および内壁部127の交差部に凸角状の下稜線部129が形成されている。
【0082】
この曲げ荷重支えフレーム部96をサイドフレーム部材101に設けることで、図10(b)に示すように、曲げ荷重支えフレーム部96およびサイドフレーム部材101の内壁部106で閉断面が形成されている。
このように、曲げ荷重支えフレーム部96に上下の稜線部128,129を備え、かつ、曲げ荷重支えフレーム部96を閉断面に形成することで、曲げ荷重支えフレーム部96の剛性を高めることができる。
【0083】
曲げ荷重支えフレーム部96の上面部125は、外側辺125bが後方に向けて略直線状に形成され、内側辺125aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部96の上面部125は、曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aから前端部96bに向けて横幅が徐々に狭まるように形成されている。
【0084】
図11に示す下面部126も、上面部125と同様に、外側辺126bが後方に向けて略直線状に形成され、内側辺126aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
よって、下面部126は、上面部125と同様に、曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aから前端部96bに向けて横幅が徐々に狭まるように形成されている。
【0085】
上面部125の内側辺125aおよび下面部126の内側辺126aに、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127が設けられている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127は、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
【0086】
この曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127は、詳細には、曲げ荷重支えフレーム部96の前端部96bから後方に向けて曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aまで僅かに湾曲状に曲げ形成されている。
【0087】
左フロントサイドフレーム91は、サイドフレーム部材101の内壁部106が内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて略直線状に延出されている。
よって、図9に示す左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて矢印Iの如く作用する衝撃荷重を圧縮荷重支えフレーム部95(特に、内壁部106や上下の稜線部108,109(図10参照))で効率よく支えることが可能である。
【0088】
また、左フロントサイドフレーム91は、サイド外側壁103が圧縮荷重支えフレーム部95の略中央部95aから後方に向けて僅かに湾曲状に形成されている。
さらに、左フロントサイドフレーム91は、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127が曲げ荷重支えフレーム部96の前端部96bから後方に向けて僅かに湾曲状に形成されている。
【0089】
よって、左フロントサイドフレーム91は、サイド外側壁103が略中央部から曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127に沿って車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に形成されている。
すなわち、左フロントサイドフレーム91は、曲げ荷重支えフレーム部96を備えた後半部が略湾曲状に形成されている。
【0090】
ここで、曲げ荷重支えフレーム部96は、上下の稜線部128,129を備え、かつ、閉断面に形成され、剛性が高めされている。
よって、図9に示す左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48(図2参照)に向けて矢印Gの如く作用する衝撃荷重を曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることが可能である。
【0091】
また、左フロントサイドフレーム91は、第1実施の形態と同様に、外側衝撃吸収部63の内側壁78とサイド外側壁103とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
さらに、サイド外側壁103は傾斜角θ1の傾斜線115に沿って設けられている。
【0092】
そして、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部が、傾斜角θ1の傾斜線115に対して略平行に作用する。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁103に矢印Kの如く効率よく伝えることができる。
【0093】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部95のサイド外側壁103は、曲げ荷重支えフレーム部96に沿わせて略湾曲状に形成されている。
このように、圧縮荷重支えフレーム部95のサイド外側壁103を略湾曲状に形成することで、左フロントサイドフレーム91を略湾曲状に形成することができる。
【0094】
よって、重複部81を経てサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重は、サイド外側壁103や曲げ荷重支えフレーム部96に沿うように作用する。
これにより、重複部81を経てサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重をサイド外側壁103や曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることができる。
【0095】
加えて、左フロントサイドフレーム91を略湾曲状に形成することで、左フロントサイドフレーム91の幅寸法を大きくする必要がない。
これにより、左フロントサイドフレーム91の重量増を抑えて軽量化を図ることができる。
【0096】
つぎに、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で衝突する例を説明する。
まず、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)する例について説明する。
衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)した場合、第1実施の形態の図6で説明したように、衝撃荷重を左衝撃吸収ユニット25(内側衝撃吸収部62および外側衝撃吸収部63)を潰すことで吸収することができる。
【0097】
すなわち、左フロントサイドフレーム91や左アッパメンバー15に変形を生じさせることなく、衝撃荷重(すなわち、衝撃エネルギー)を吸収することができる。
よって、オフセット軽衝突後に、エネルギー吸収部材28、バンパービーム27および左衝撃吸収ユニット25をボルト68…を外して交換するという簡単な修理で対応することができる。
【0098】
つぎに、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で高速衝突する例を図12〜図13に基づいて説明する。
図12(a),(b)は第2実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット高速衝突)する。
【0099】
(b)において、相手車両85がオフセット衝突(高速衝突)することで、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aが変形する。
バンパービーム27の左端部27aが変形することで、左端部27aに車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Lの如く衝撃荷重が作用する。
この衝撃荷重が内側衝撃吸収部62を介して左フロントサイドフレーム91に作用し、左フロントサイドフレーム91を矢印Mの如く曲げ変形させようとする。
【0100】
ここで、左フロントサイドフレーム91は、後半部に曲げ荷重支えフレーム部96を備えている。
曲げ荷重支えフレーム部96は、車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に形成されている。
よって、左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48に向けて矢印Lの如く作用する衝撃荷重を曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることが可能である。
【0101】
一方、高速衝突により生じた衝撃荷重F3は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て内側衝撃吸収部62に矢印Nの如く伝わるとともに、外側衝撃吸収部63に矢印Oの如く伝わる。
【0102】
ここで、外側衝撃吸収部63の内側壁78と左フロントサイドフレーム91のサイド外側壁103とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁103に矢印Pの如く効率よく伝えることができる。
この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム91を矢印Qの如く(すなわち、矢印Mと反対方向に)曲げ変形させようとする。
【0103】
これにより、左フロントサイドフレーム91を車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Mの如く曲げようとする衝撃荷重を、左フロントサイドフレーム91のサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
【0104】
このように、左フロントサイドフレーム91を矢印Mの如く曲げようとする衝撃荷重(曲げ荷重)を、曲げ荷重支えフレーム部96で曲げ荷重を支えるとともに、サイド外側壁103に伝えられた矢印P方向の衝撃荷重で相殺することで、左フロントサイドフレーム91に作用する曲げ荷重を一層良好に支えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム91が矢印Mの曲げ変形することを一層確実に防ぐことができる。
【0105】
したがって、左フロントサイドフレーム91にスチフナなどの補強部材を設けることなく、左フロントサイドフレーム91の曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0106】
図13は第2実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
左フロントサイドフレーム91が矢印M(図12(b)参照)の曲げ変形することを防ぐことで、左フロントサイドフレーム91を良好に潰すように変形させることができる。
具体的には、左フロントサイドフレーム91の略中央部91bを略く字状に変形させて衝撃荷重を効率よく吸収することができる。
【0107】
このように、左フロントサイドフレーム91を略く字状に変形させることで、エンジンルーム86を有効に潰すクラッシャブルゾーンとすることが可能になる。
これにより、左フロントサイドフレーム91の変形量を十分に確保して、エンジンルーム86の後方の車室内が変形することを抑えることができる。
【0108】
以上説明したように、第2実施の形態の車体前部構造90によれば、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、左取付プレート21の外側取付部21bを内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させた例について説明したが、これに限らないで、外側取付部21bを内側取付部21aに対して平行に配置することも可能である。
【0110】
また、前記第1、第2の実施の形態では、内側衝撃吸収部62を左フロントサイドフレーム11にボルトで取り付け、外側衝撃吸収部63を左アッパメンバー15にボルトで取り付けた例について説明したが、これに限らないで、内側衝撃吸収部62を左フロントサイドフレーム11に溶接で取り付け、外側衝撃吸収部63を左アッパメンバー15に溶接で取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームに衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパービームを設けた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】(a)は図3の4a−4a線断面図、(b)は図4(a)の分解図である。
【図5】第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
【図6】第1実施の形態に係る衝撃吸収構造でオフセット低速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
【図8】第1実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の要部を示す平面図である。
【図10】(a)は図9の10a−10a線断面図、(b)は図9の10b−10b線断面図である。
【図11】第2実施の形態に係る左フロントサイドフレームを示す分解平面図である。
【図12】第2実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
【図13】第2実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図14】従来の車体前部構造でオフセット衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0113】
10,90…車体前部構造、11,91…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a,12a,91a…左右のフロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左フロントピラー(フロントピラー)、14…右フロントピラー(フロントピラー)、15…左アッパメンバー(アッパメンバー)、15a,16a…左右のアッパメンバーの前端部、16…右アッパメンバー(アッパメンバー)、27…バンパービーム、33,103…サイド外側壁(フロントサイドフレームの外側壁)、48…車体幅方向中心、62…内側衝撃吸収部、63…外側衝撃吸収部、75b…内側壁の後端部(外側衝撃吸収部の後端部)、78…外側衝撃吸収部の内側壁、81…重複部、95…圧縮荷重支えフレーム部、95a…略中央部、96…曲げ荷重支えフレーム部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームに衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパービームを設けた車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造のなかには、フロントサイドフレームの車体外側にアッパメンバーを備え、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を離間させて備え、内外側の衝撃吸収部にバンパービームを取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−190964号公報
【0003】
この衝撃吸収構造を図14に基づいて説明する。
図14は従来の車体前部構造でオフセット衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
車体前部構造200は、左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202の前端部にそれぞれ内外側の衝撃吸収部203,204を設けることで、衝撃吸収部の横幅が拡げられている。
【0004】
よって、バンパービーム205に衝撃荷重fが作用した場合に、内外側の衝撃吸収部203,204が横方向に倒れることを防いで、作用した衝撃荷重fを内外側の衝撃吸収部203,204を経て左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202に伝えることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外衝撃吸収部204は内側壁204aが、左フロントサイドフレーム201の外側壁201aに対して車体外側に距離Sだけ離れて設けられている。
このため、相手車両210が左側にずれてオフセット衝突した場合に、バンパービーム205に作用した衝撃荷重fは、内外側の衝撃吸収部203,204を経て左フロントサイドフレーム201および左アッパメンバー202に矢印a、矢印bの如くそれぞれ伝わる。
【0006】
ここで、相手車両210がオフセット衝突した場合、バンパービーム205は想像線で示すように変形する。
バンパービーム205の変形で、左バンパービーム205に車体幅方向中心側に向けて矢印cの如く衝撃荷重が作用する。この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム201に作用して、左フロントサイドフレーム201を矢印dの如く曲げ変形させようとする。
【0007】
そこで、左フロントサイドフレーム201の剛性を確保するために、左フロントサイドフレーム201に補強部材としてスチフナ(仕切りプレート)を設け、左フロントサイドフレーム201が矢印dの如く変形することを防いでいる。
しかし、左フロントサイドフレーム201をスチフナで補強すると、左フロントサイドフレーム201の重量が増し、その観点から改良の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、フロントサイドフレームの曲げに対する剛性を確保することができ、かつ軽量化を図ることができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、前記フロントサイドフレームの上側後方にフロントピラーを設け、前記フロントピラーから前方に向けてアッパメンバーを延ばすとともに、前記アッパメンバーを前記フロントサイドフレームの外側に配置し、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を内側と外側とに設け、前記内外側の衝撃吸収部で衝撃荷重を吸収する車体前部構造において、前記外側衝撃吸収部の内側壁を前記フロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、前記外側衝撃吸収部の後端部および前記フロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成し、前記重複部で前記衝撃荷重の一部を前記外側壁に伝えるように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2は、前記フロントサイドフレームは、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出され、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部と、前記圧縮荷重支えフレーム部の略中央部から車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出され、前記内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3は、前記圧縮荷重支えフレーム部の外側部が曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成されることで、前記フロントサイドフレームが略湾曲状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームの前端部およびアッパメンバーの前端部に内外側の衝撃吸収部をそれぞれ内側と外側とに設けた。そして、外側衝撃吸収部の内側壁をフロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、外側衝撃吸収部の後端部およびフロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成した。
【0013】
よって、例えば、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、外側衝撃吸収部に作用する衝撃荷重を、重複部を経由させてフロントサイドフレームの外側壁に効率よく伝えることができる。
【0014】
このように、フロントサイドフレームの外側壁に衝撃荷重を伝えることで、フロントサイドフレームを車体幅方向中心側に向けて曲げようとする曲げ荷重を、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
これにより、フロントサイドフレームに補強部材を設けることなく、フロントサイドフレームの曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出された圧縮荷重支えフレーム部を備えた。
これにより、内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を圧縮荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0016】
さらに、フロントサイドフレームに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出された曲げ荷重支えフレーム部を備えた。
そして、曲げ荷重支えフレーム部で、内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支えるようにした。
よって、例えば、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に発生する曲げ荷重を、曲げ荷重支えフレーム部で支えることができる。
【0017】
加えて、相手車両が左右どちらかにずれてオフセット衝突した場合に、外側衝撃吸収部に作用する衝撃荷重を、重複部を経由させてフロントサイドフレームの外側壁に効率よく伝えることができる。
フロントサイドフレームの外側壁に衝撃荷重を伝えることで、フロントサイドフレームを車体幅方向中心側に向けて曲げようとする曲げ荷重を、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
【0018】
このように、曲げ荷重支えフレーム部で曲げ荷重を支えるとともに、外側壁に伝えられた衝撃荷重で曲げ荷重を相殺することで、フロントサイドフレームに作用する曲げ荷重を一層確実に支えることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、圧縮荷重支えフレーム部の外側部を曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成した。
このように、圧縮荷重支えフレーム部の外側部を略湾曲状に形成することで、フロントサイドフレームを略湾曲状に形成することができる。
【0020】
よって、重複部を経てフロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重は、外側壁や曲げ荷重支えフレーム部に沿うように作用する。
これにより、フロントサイドフレームの外側壁に伝えられた衝撃荷重を外側壁や曲げ荷重支えフレーム部で効率よく支えることができる。
【0021】
加えて、フロントサイドフレームを略湾曲状に形成することで、フロントサイドフレームの幅寸法を大きくする必要がない。
これにより、フロントサイドフレームの重量増を抑えて軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は運転者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0023】
図1は本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部の左右側に左右のフロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)11,12を備え、左フロントサイドフレーム11の上側後方に左フロントピラー(フロントピラー)13を設け、左フロントピラー13の下端部13aから前方に向けて左アッパメンバー(アッパメンバー)15を延ばすとともに、左アッパメンバー15を左フロントサイドフレーム11の外側に配置し、右フロントサイドフレーム12の上側後方に右フロントピラー(フロントピラー)14を設け、右フロントピラー14の下端部14aから前方に向けて右アッパメンバー(アッパメンバー)16を延ばすとともに、右アッパメンバー16を右フロントサイドフレーム12の外側に配置した自動車の構造である。
【0024】
左フロントサイドフレーム11と左アッパメンバー15との間に、左前輪(図示せず)を覆う左ホイールハウス18が設けられている。
右フロントサイドフレーム12と右アッパメンバー16との間に、右前輪(図示せず)を覆う右ホイールハウス19が設けられている。
【0025】
図2は第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム11の前端部11aと左アッパメンバー15の前端部15aとが車体幅方向に向けて配置されて各前端部11a,15aが互いに連結され、右フロントサイドフレーム12の前端部12aと右アッパメンバー16の前端部16aとが車体幅方向に向けて配置されて各前端部12a,16aが互いに連結され、前端部11a,15aおよび前端部12a,16aに衝撃吸収構造20が備えられている。
【0026】
衝撃吸収構造20は、前端部11a,15aに左取付プレート21を介して左衝撃吸収ユニット25が設けられ、前端部12a,16aに右取付プレート22を介して右衝撃吸収ユニット26が設けられ、左右の衝撃吸収ユニット25,26に亘ってバンパービーム27が架け渡され、バンパービーム27にエネルギー吸収部材28が設けられている。
すなわち、バンパービーム27は、左端部27aが左衝撃吸収ユニット25に取り付けられ、右端部27bが右衝撃吸収ユニット26に取り付けられている。
【0027】
ここで、左右のフロントサイドフレーム11,12、左右のアッパメンバー15,16は左右対称の部材であり、右フロントサイドフレーム12、右アッパメンバー16の説明を省略する。
また、左右の衝撃吸収ユニット25,26は左右対称の部材であり、右衝撃吸収ユニット26の構成部材に左衝撃吸収ユニット25と同じ符号を付して説明を省略する。
【0028】
図3は図2の3部拡大図、図4(a)は図3の4a−4a線断面図、図4(b)は図4(a)の分解図である。
左フロントサイドフレーム11は、車体前後方向に延びるとともに開口部32が車体外側に向けて配置された断面略コ字形のサイドフレーム部材31と、サイドフレーム部材31の開口部32に嵌合した断面略コ字形のサイド外側壁(外壁部)33とを備える。
【0029】
サイドフレーム部材31は、水平に配置された上面部34と、上面部34の内側辺から下方に延びた内壁部35と、内壁部35の下辺から車体幅方向外側に向けて延びた下面部36とを備える。
サイド外側壁33は、上下の折曲片33a,33bがサイドフレーム部材31の開口部32に沿って設けられている。
【0030】
左アッパメンバー15は、車体前後方向に延びるとともに開口部42が車体内側に向けて配置された断面略コ字形のアッパメンバー部材41と、アッパメンバー部材41の中央開口部42aに嵌合した断面略コ字形のアッパ内側壁43とを備える。
アッパメンバー部材41は、車幅方向に水平に延びた上面部44と、上面部44の外側辺から下方に延びた外壁部45と、外壁部45の下辺から車体幅方向内側に向けて延びた下面部46とを備える。
【0031】
アッパ内側壁43は、上下の折曲片43a,43bがアッパメンバー部材41の中央開口部42aに沿って設けられている。
上面部44は、前端部に車体幅方向中心48(図2参照)に向けて張り出す上張出部51が設けられている。上張出部51は先端部51aがサイドフレーム部材31の上面部34に溶接で接合されている。
【0032】
下面部46は、上面部44と同様に、前端部に車体幅方向中心48に向けて張り出す下張出部52が設けられている。
下張出部52は先端部52aがサイドフレーム部材31の下面部36に溶接で接合されている。
【0033】
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aは、車体幅方向に向けて配置されて互いに連結されている。
左フロントサイドフレーム11の前端部11aには、取付片37が張り出されている。また、左アッパメンバー15の前端部15aには、取付片47が張り出されている。
【0034】
図5は第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
左フロントサイドフレーム11の上面部34は、左フロントサイドフレーム11の略中央部11bから前端部11aに向けて外側辺34aが徐々に車体外側(左アッパメンバー15側)に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に形成されている。
【0035】
よって、上面部34は、略中央部11bから前端部11aに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
図4に示す下面部36も、上面部34と同様に、略中央部から前端部に向けて外側辺が徐々に車体外側に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に形成されている。
【0036】
サイド外側壁33は、略中央部11bから前端部11aに向けて外側辺34aに沿って徐々に車体外側(左アッパメンバー15側)に移動するように傾斜角θ1で傾斜状に設けられている。
以下、左フロントサイドフレーム11のうち、略中央部11bから前端部11aまでの部位をサイド前半部54として説明する。
【0037】
左アッパメンバー15は、略中央部15bから前端部15aまで車体前方に向けて車体幅方向中心側に徐々に移動するように傾斜角θ2で傾斜状に形成されている。
以下、左アッパメンバー15のうち、略中央部15bから前端部15aまでの部位をアッパ前半部55として説明する。
【0038】
左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33を、サイド前半部54において傾斜角θ1で傾斜状に設けるとともに、左アッパメンバー15のアッパ前半部55を、傾斜角θ2で傾斜状に設けた。
これにより、サイドフレーム前端部11aおよびアッパメンバー前端部15aが近接された状態に配置される。
【0039】
ここで、前述したように、左アッパメンバー15は、前端部15aのうち、上面部44に上張出部51が設けられるとともに、下面部46に下張出部52(図4参照)が設けられている。
【0040】
上張出部51は先端部51aがサイドフレーム部材31の上面部34に溶接で接合されている。また、下張出部52は先端部52aがサイドフレーム部材31の下面部36に溶接で接合されている。
これにより、左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aが強固に連結されている。
【0041】
左フロントサイドフレーム11の前端部11aおよび左アッパメンバー15の前端部15aに、左取付プレート21を介して左衝撃吸収ユニット25が設けられている。
左衝撃吸収ユニット25にバンパービーム27の左端部27aが取り付けられている。
【0042】
左衝撃吸収ユニット25は、左取付プレート21を介して左フロントサイドフレーム11の前端部11aに一体に取り付けられた内側衝撃吸収部62と、左取付プレート21を介して左アッパメンバー15の前端部15aに一体に取り付けられた外側衝撃吸収部63とを備える。
【0043】
左取付プレート21は、前端部11aに取り付けられた内側取付部21aと、前端部15aに取り付けられた外側取付部21bとを有する。
内側取付部21aは、車幅方向に沿って平行に取り付けられたプレートである。
外側取付部21bは、内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させたプレートである。
【0044】
内側衝撃吸収部62は、略矩形状の内筒体65を備え、後端部に内後フランジ66を備え、前端部に内前取付片67を備える。
内筒体65は、平面視で先細状に形成されている。
この内側衝撃吸収部62は、内後フランジ66が、左取付プレート21の内側取付部21aを介して左フロントサイドフレーム11の取付片37にボルト68…、ナット69…で取り付けられている。
よって、内側衝撃吸収部62は、左フロントサイドフレーム11の前方に設けられている。
【0045】
外側衝撃吸収部63は、略矩形状の外筒体75を備え、後端部に外後フランジ76を備え、前端部に外前取付片77を備える。
この外側衝撃吸収部63は、内側衝撃吸収部62に対して外側に所定間隔離間させて配置され、外後フランジ76が、左取付プレート21の外側取付部21bを介して左アッパメンバー15の取付片47にボルト68…、ナット69…で取り付けられている。
よって、外側衝撃吸収部63は、左アッパメンバー15の前方に設けられている。
【0046】
ここで、バンパービーム27は、車両の意匠性などを考慮して、左端部27aが後方に向けて湾曲状に形成されている。このため、左端部27aは、左取付プレート21に近づくことになる。
そこで、前述したように、左取付プレート21の外側取付部21bを内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させることにした。
【0047】
よって、左端部27aと外側取付部21bとの間隔を略一定に確保することが可能になる。
これにより、外側衝撃吸収部63の内外側の側壁78,79を略同じ長さに確保することが可能になり、外側衝撃吸収部63の潰し代を良好に確保することができる。
【0048】
外側衝撃吸収部63の外筒体75は、内側壁78が前端部75aから後端部75bに向けて傾斜角θ4で傾斜状に形成されている。
ここで、傾斜角θ4は、左フロントサイドフレーム11の外側辺34aの傾斜角θ1と略同じ傾斜角に設定されている。すなわち、傾斜角θ4および傾斜角θ1の関係は、θ4≒θ1の関係が成立する。
【0049】
加えて、外筒体75の内側壁78は、左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33に対して車体幅方向中心48(図2参照)側に配置されている。
これにより、外筒体75の後端部75bおよび左フロントサイドフレーム11の前端部11aで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
【0050】
具体的には、外筒体75の後端部75bのうち内側壁78寄りの部位が、左フロントサイドフレーム11の前端部11aのうちサイド外側壁33寄りの部位に左取付プレート21を介在させた状態で重ね合わされている。
内側壁78寄りの部位とサイド外側壁33寄りの部位との重複幅はWである。
【0051】
重複部81の幅Wは、例えば、相手車両が左側にずれてオフセット衝突した場合に、外筒体75の内側壁78に沿って後方に伝わった衝撃荷重がサイド外側壁33に効率よく伝達可能に決められている。
【0052】
内側衝撃吸収部62の内前取付片67および外側衝撃吸収部63の外前取付片77に、バンパービーム27の左端部27aが溶接されている。
バンパービーム27の前面27cにエネルギー吸収部材28が設けられている。
【0053】
つぎに、車体前部構造10に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)する例を図6に基づいて説明する。
図6(a),(b)は第1実施の形態に係る衝撃吸収構造でオフセット低速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット軽衝突)する。
【0054】
軽衝突(低速衝突)により生じた衝撃荷重F1は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て左衝撃吸収ユニット25に伝わる。
具体的には、内側衝撃吸収部62に矢印Aの如く衝撃荷重が伝わり、外側衝撃吸収部63に矢印Bの如く衝撃荷重が伝わる。
【0055】
(b)において、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを潰すことで衝撃荷重F1の一部を吸収する。
残りの衝撃荷重を左衝撃吸収ユニット25(内側衝撃吸収部62および外側衝撃吸収部63)を潰すことで吸収する。
【0056】
このように軽衝突の場合、左フロントサイドフレーム11や左アッパメンバー15に変形を生じさせることなく、衝撃荷重F1(すなわち、衝撃エネルギー)を吸収することができる。
よって、オフセット軽衝突後に、エネルギー吸収部材28、バンパービーム27および左衝撃吸収ユニット25をボルト68…を外して交換するという簡単な修理で対応することができる。
【0057】
つぎに、車体前部構造10に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で高速衝突する例を図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a),(b)は第1実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット高速衝突)する。
【0058】
(b)において、相手車両85がオフセット衝突(高速衝突)することで、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aが変形する。
バンパービーム27の左端部27aが変形することで、左端部27aに車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Cの如く衝撃荷重が作用する。
この衝撃荷重が内側衝撃吸収部62を介して左フロントサイドフレーム11に作用し、左フロントサイドフレーム11を矢印Dの如く曲げ変形させようとする。
【0059】
一方、高速衝突により生じた衝撃荷重F2は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て内側衝撃吸収部62に矢印Eの如く伝わるとともに、外側衝撃吸収部63に矢印Fの如く伝わる。
【0060】
ここで、外側衝撃吸収部63の内側壁78と左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁33に矢印Gの如く効率よく伝えることができる。
この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム11を矢印Hの如く(すなわち、矢印Dと反対方向に)曲げ変形させようとする。
【0061】
これにより、左フロントサイドフレーム11を車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Dの如く曲げようとする衝撃荷重を、左フロントサイドフレーム11のサイド外側壁33に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
よって、左フロントサイドフレーム11が矢印Dの曲げ変形することを防ぐことができる。
【0062】
したがって、左フロントサイドフレーム11にスチフナなどの補強部材を設けることなく、左フロントサイドフレーム11の曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0063】
図8は第1実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
左フロントサイドフレーム11が矢印D(図7(b)参照)の曲げ変形することを防ぐことで、左フロントサイドフレーム11を良好に潰すように変形させることができる。
具体的には、左フロントサイドフレーム11の略中央部11bを略く字状に変形させて衝撃荷重を効率よく吸収することができる。
【0064】
このように、左フロントサイドフレーム11を略く字状に変形させることで、エンジンルーム86を有効に潰すクラッシャブルゾーンとすることが可能になる。
これにより、左フロントサイドフレーム11の変形量を十分に確保して、エンジンルーム86の後方の車室内が変形することを抑えることができる。
【0065】
つぎに、第2実施の形態の車体前部構造90を図9〜図11に基づいて説明する。なお、第2実施の形態において第1実施の形態の車体前部構造10と同一類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【0066】
図9は本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の要部を示す平面図、図10(a)は図9の10a−10a線断面図、図10(b)は図9の10b−10b線断面図、図11は第2実施の形態に係る左フロントサイドフレームを示す分解平面図である。
車体前部構造90は、第1実施の形態の左右のフロントサイドフレーム11,12に代えて、左右のフロントサイドフレーム(右フロントサイドフレームは図示せず)91を設けたもので、その他の構成は第1実施の形態と同じである。
【0067】
左右のフロントサイドフレーム91の前端部91aおよび左右のアッパメンバー15,16の前端部15a,16a(16aは図1参照)に衝撃吸収構造20が備えられている。
なお、フロントサイドフレームとしての左右のフロントサイドフレーム91は左右対称の部材であり、左フロントサイドフレーム91で右フロントサイドフレームの説明を兼ねる。
【0068】
左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部95と、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48(図2参照)に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部96とが備えられている。
【0069】
圧縮荷重支えフレーム部95は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて直線状に延出され、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える部材である。
この圧縮荷重支えフレーム部95は、車体前後方向に延びるとともに開口部102(図10参照)が車体外側に向けて配置された断面略コ字形のサイドフレーム部材101と、サイドフレーム部材101の開口部102に設けられたサイド外側壁(外壁部)103とを備える。
圧縮荷重支えフレーム部95は、サイドフレーム部材101の開口部102をサイド外側壁103で塞ぐことで閉断面(図10参照)に形成されている。
【0070】
サイドフレーム部材101は、水平に配置された上面部105と、上面部105の内側辺から下方に延びた内壁部106と、内壁部106の下辺から車体幅方向外側に向けて延びた下面部107とを備える。
【0071】
このサイドフレーム部材101は、上面部105、内壁部106、下面部107で断面略コ字形に形成されている。
サイドフレーム部材101を断面略コ字形に形成することで、上面部105および内壁部106の交差部に凸角状の上稜線部108が形成され、下面部107および内壁部106の交差部に凸角状の下稜線部109が形成されている。
【0072】
サイドフレーム部材101の内壁部106は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて略直線状に延出されている。
サイドフレーム部材101の上面部105は、前上面部111が平坦に形成され(図10(a)参照)、後上面部112が断面略L字形に形成されている(図10(b)参照)。
【0073】
前上面部111の外側辺111aは、前直線部111b、中央段差111c、後直線部111dを有する。中央段差111cは、前方から後方に向けて車体幅方向中央に近づくように傾斜されている。
よって、前上面部111の外側辺111aは、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
【0074】
後上面部112は、折曲片112aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
すなわち、サイドフレーム部材101の上面部105は、前上面部111の外側辺111aおよび後上面部112の折曲片112aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
よって、サイドフレーム部材101の上面部105は、サイドフレーム部材101の後端部101aから前端部101bに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
【0075】
図11に示す下面部107も、上面部105と同様に、外側辺107aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って形成されている。
よって、下面部107は、上面部105と同様に、サイドフレーム部材101の後端部101aから前端部101bに向けて横幅が徐々に広がるように形成されている。
【0076】
サイド外側壁103は、前部121が断面略コ字形に形成され、後部122が断面略L字形に形成されている。
サイド外側壁103の前部121は、図10(a)に示すように、上下の折曲片121a,121bがサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられている。
【0077】
サイド外側壁103の後部122は、図10(b)に示すように、上片122aおよび下折曲片122bがサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられている。
すなわち、サイド外側壁103がサイドフレーム部材101の開口部102に沿って設けられ、サイド外側壁103で開口部102が塞がれている。
【0078】
ここで、サイド外側壁103は、上面部105(外側辺111a、折曲片112a)および下面部107(外側辺107a)に設けられている。
よって、サイド外側壁103は、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って設けられている。
このサイド外側壁103は、詳細には、略中央部103aから後方に向けて後端部103bまで僅かに湾曲状に曲げ形成されている。
【0079】
曲げ荷重支えフレーム部96は、圧縮荷重支えフレーム部95の略中央部95aから車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に膨出され、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48に作用する衝撃荷重を支える部材である。
【0080】
曲げ荷重支えフレーム部96は、図10(b)に示すように、サイドフレーム部材101の上面部105に設けられた上面部125と、サイドフレーム部材101の下面部107に設けられた下面部126と、上面部125の内側辺125aおよび下面部126の内側辺126aに設けられた内壁部127とを備える。
【0081】
曲げ荷重支えフレーム部96は、上面部125、内壁部127、下面部126で断面略コ字形に形成されている。
曲げ荷重支えフレーム部96を断面略コ字形に形成することで、上面部125および内壁部127の交差部に凸角状の上稜線部128が形成され、下面部126および内壁部127の交差部に凸角状の下稜線部129が形成されている。
【0082】
この曲げ荷重支えフレーム部96をサイドフレーム部材101に設けることで、図10(b)に示すように、曲げ荷重支えフレーム部96およびサイドフレーム部材101の内壁部106で閉断面が形成されている。
このように、曲げ荷重支えフレーム部96に上下の稜線部128,129を備え、かつ、曲げ荷重支えフレーム部96を閉断面に形成することで、曲げ荷重支えフレーム部96の剛性を高めることができる。
【0083】
曲げ荷重支えフレーム部96の上面部125は、外側辺125bが後方に向けて略直線状に形成され、内側辺125aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部96の上面部125は、曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aから前端部96bに向けて横幅が徐々に狭まるように形成されている。
【0084】
図11に示す下面部126も、上面部125と同様に、外側辺126bが後方に向けて略直線状に形成され、内側辺126aが傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
よって、下面部126は、上面部125と同様に、曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aから前端部96bに向けて横幅が徐々に狭まるように形成されている。
【0085】
上面部125の内側辺125aおよび下面部126の内側辺126aに、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127が設けられている。
よって、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127は、傾斜角θ1の傾斜線115に沿って傾斜状に形成されている。
【0086】
この曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127は、詳細には、曲げ荷重支えフレーム部96の前端部96bから後方に向けて曲げ荷重支えフレーム部96の後端部96aまで僅かに湾曲状に曲げ形成されている。
【0087】
左フロントサイドフレーム91は、サイドフレーム部材101の内壁部106が内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて略直線状に延出されている。
よって、図9に示す左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体後方に向けて矢印Iの如く作用する衝撃荷重を圧縮荷重支えフレーム部95(特に、内壁部106や上下の稜線部108,109(図10参照))で効率よく支えることが可能である。
【0088】
また、左フロントサイドフレーム91は、サイド外側壁103が圧縮荷重支えフレーム部95の略中央部95aから後方に向けて僅かに湾曲状に形成されている。
さらに、左フロントサイドフレーム91は、曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127が曲げ荷重支えフレーム部96の前端部96bから後方に向けて僅かに湾曲状に形成されている。
【0089】
よって、左フロントサイドフレーム91は、サイド外側壁103が略中央部から曲げ荷重支えフレーム部96の内壁部127に沿って車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に形成されている。
すなわち、左フロントサイドフレーム91は、曲げ荷重支えフレーム部96を備えた後半部が略湾曲状に形成されている。
【0090】
ここで、曲げ荷重支えフレーム部96は、上下の稜線部128,129を備え、かつ、閉断面に形成され、剛性が高めされている。
よって、図9に示す左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48(図2参照)に向けて矢印Gの如く作用する衝撃荷重を曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることが可能である。
【0091】
また、左フロントサイドフレーム91は、第1実施の形態と同様に、外側衝撃吸収部63の内側壁78とサイド外側壁103とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
さらに、サイド外側壁103は傾斜角θ1の傾斜線115に沿って設けられている。
【0092】
そして、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部が、傾斜角θ1の傾斜線115に対して略平行に作用する。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁103に矢印Kの如く効率よく伝えることができる。
【0093】
ここで、圧縮荷重支えフレーム部95のサイド外側壁103は、曲げ荷重支えフレーム部96に沿わせて略湾曲状に形成されている。
このように、圧縮荷重支えフレーム部95のサイド外側壁103を略湾曲状に形成することで、左フロントサイドフレーム91を略湾曲状に形成することができる。
【0094】
よって、重複部81を経てサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重は、サイド外側壁103や曲げ荷重支えフレーム部96に沿うように作用する。
これにより、重複部81を経てサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重をサイド外側壁103や曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることができる。
【0095】
加えて、左フロントサイドフレーム91を略湾曲状に形成することで、左フロントサイドフレーム91の幅寸法を大きくする必要がない。
これにより、左フロントサイドフレーム91の重量増を抑えて軽量化を図ることができる。
【0096】
つぎに、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で衝突する例を説明する。
まず、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)する例について説明する。
衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で低速衝突(軽衝突)した場合、第1実施の形態の図6で説明したように、衝撃荷重を左衝撃吸収ユニット25(内側衝撃吸収部62および外側衝撃吸収部63)を潰すことで吸収することができる。
【0097】
すなわち、左フロントサイドフレーム91や左アッパメンバー15に変形を生じさせることなく、衝撃荷重(すなわち、衝撃エネルギー)を吸収することができる。
よって、オフセット軽衝突後に、エネルギー吸収部材28、バンパービーム27および左衝撃吸収ユニット25をボルト68…を外して交換するという簡単な修理で対応することができる。
【0098】
つぎに、車体前部構造90に備えた衝撃吸収構造20に相手車両がオフセット状態で高速衝突する例を図12〜図13に基づいて説明する。
図12(a),(b)は第2実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
(a)において、相手車両85が衝撃吸収構造20に対して左側にずれてエネルギー吸収部材28の左端部28aにオフセット衝突(オフセット高速衝突)する。
【0099】
(b)において、相手車両85がオフセット衝突(高速衝突)することで、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aが変形する。
バンパービーム27の左端部27aが変形することで、左端部27aに車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Lの如く衝撃荷重が作用する。
この衝撃荷重が内側衝撃吸収部62を介して左フロントサイドフレーム91に作用し、左フロントサイドフレーム91を矢印Mの如く曲げ変形させようとする。
【0100】
ここで、左フロントサイドフレーム91は、後半部に曲げ荷重支えフレーム部96を備えている。
曲げ荷重支えフレーム部96は、車体幅方向中心48(図2参照)に向けて湾曲状に形成されている。
よって、左フロントサイドフレーム91は、内側衝撃吸収部62から車体幅方向中心48に向けて矢印Lの如く作用する衝撃荷重を曲げ荷重支えフレーム部96で効率よく支えることが可能である。
【0101】
一方、高速衝突により生じた衝撃荷重F3は、エネルギー吸収部材28の左端部28aおよびバンパービーム27の左端部27aを経て内側衝撃吸収部62に矢印Nの如く伝わるとともに、外側衝撃吸収部63に矢印Oの如く伝わる。
【0102】
ここで、外側衝撃吸収部63の内側壁78と左フロントサイドフレーム91のサイド外側壁103とで一部重ね合わされた重複部81が形成されている。
よって、外側衝撃吸収部63に伝わった衝撃荷重の一部を、内側壁78に沿ってサイド外側壁103に矢印Pの如く効率よく伝えることができる。
この衝撃荷重が左フロントサイドフレーム91を矢印Qの如く(すなわち、矢印Mと反対方向に)曲げ変形させようとする。
【0103】
これにより、左フロントサイドフレーム91を車体幅方向中心48(図2参照)側に向けて矢印Mの如く曲げようとする衝撃荷重を、左フロントサイドフレーム91のサイド外側壁103に伝えられた衝撃荷重で相殺することができる。
【0104】
このように、左フロントサイドフレーム91を矢印Mの如く曲げようとする衝撃荷重(曲げ荷重)を、曲げ荷重支えフレーム部96で曲げ荷重を支えるとともに、サイド外側壁103に伝えられた矢印P方向の衝撃荷重で相殺することで、左フロントサイドフレーム91に作用する曲げ荷重を一層良好に支えることができる。
これにより、左フロントサイドフレーム91が矢印Mの曲げ変形することを一層確実に防ぐことができる。
【0105】
したがって、左フロントサイドフレーム91にスチフナなどの補強部材を設けることなく、左フロントサイドフレーム91の曲げに対する剛性を確保することができ、軽量化を図ることができる。
【0106】
図13は第2実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
左フロントサイドフレーム91が矢印M(図12(b)参照)の曲げ変形することを防ぐことで、左フロントサイドフレーム91を良好に潰すように変形させることができる。
具体的には、左フロントサイドフレーム91の略中央部91bを略く字状に変形させて衝撃荷重を効率よく吸収することができる。
【0107】
このように、左フロントサイドフレーム91を略く字状に変形させることで、エンジンルーム86を有効に潰すクラッシャブルゾーンとすることが可能になる。
これにより、左フロントサイドフレーム91の変形量を十分に確保して、エンジンルーム86の後方の車室内が変形することを抑えることができる。
【0108】
以上説明したように、第2実施の形態の車体前部構造90によれば、第1実施の形態の車体前部構造10と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、左取付プレート21の外側取付部21bを内側取付部21aに対して角度θ3だけ後方に向けて傾斜させた例について説明したが、これに限らないで、外側取付部21bを内側取付部21aに対して平行に配置することも可能である。
【0110】
また、前記第1、第2の実施の形態では、内側衝撃吸収部62を左フロントサイドフレーム11にボルトで取り付け、外側衝撃吸収部63を左アッパメンバー15にボルトで取り付けた例について説明したが、これに限らないで、内側衝撃吸収部62を左フロントサイドフレーム11に溶接で取り付け、外側衝撃吸収部63を左アッパメンバー15に溶接で取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームに衝撃吸収部を設け、この衝撃吸収部にバンパービームを設けた自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明に係る車体前部構造(第1実施の形態)を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す斜視図である。
【図3】図2の3部拡大図である。
【図4】(a)は図3の4a−4a線断面図、(b)は図4(a)の分解図である。
【図5】第1実施の形態に係る車体前部構造の要部を示す平面図である。
【図6】第1実施の形態に係る衝撃吸収構造でオフセット低速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図7】第1実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
【図8】第1実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図9】本発明に係る車体前部構造(第2実施の形態)の要部を示す平面図である。
【図10】(a)は図9の10a−10a線断面図、(b)は図9の10b−10b線断面図である。
【図11】第2実施の形態に係る左フロントサイドフレームを示す分解平面図である。
【図12】第2実施の形態に係る車体前部構造にオフセット高速衝突する例を説明する図である。
【図13】第2実施の形態に係る車体前部構造でオフセット高速衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【図14】従来の車体前部構造でオフセット衝突の衝突エネルギーを吸収する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0113】
10,90…車体前部構造、11,91…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、11a,12a,91a…左右のフロントサイドフレームの前端部、12…右フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左フロントピラー(フロントピラー)、14…右フロントピラー(フロントピラー)、15…左アッパメンバー(アッパメンバー)、15a,16a…左右のアッパメンバーの前端部、16…右アッパメンバー(アッパメンバー)、27…バンパービーム、33,103…サイド外側壁(フロントサイドフレームの外側壁)、48…車体幅方向中心、62…内側衝撃吸収部、63…外側衝撃吸収部、75b…内側壁の後端部(外側衝撃吸収部の後端部)、78…外側衝撃吸収部の内側壁、81…重複部、95…圧縮荷重支えフレーム部、95a…略中央部、96…曲げ荷重支えフレーム部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、前記フロントサイドフレームの上側後方にフロントピラーを設け、前記フロントピラーから前方に向けてアッパメンバーを延ばすとともに、前記アッパメンバーを前記フロントサイドフレームの外側に配置し、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を内側と外側とに設け、前記内外側の衝撃吸収部で衝撃荷重を吸収する車体前部構造において、
前記外側衝撃吸収部の内側壁を前記フロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、前記外側衝撃吸収部の後端部および前記フロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成し、
前記重複部で前記衝撃荷重の一部を前記外側壁に伝えるように構成したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントサイドフレームは、
前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出され、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部と、
前記圧縮荷重支えフレーム部の略中央部から車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出され、前記内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記圧縮荷重支えフレーム部の外側部が曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成されることで、前記フロントサイドフレームが略湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項1】
車体前後方向にフロントサイドフレームを延ばし、前記フロントサイドフレームの上側後方にフロントピラーを設け、前記フロントピラーから前方に向けてアッパメンバーを延ばすとともに、前記アッパメンバーを前記フロントサイドフレームの外側に配置し、それぞれの前端部に内外側の衝撃吸収部を内側と外側とに設け、前記内外側の衝撃吸収部で衝撃荷重を吸収する車体前部構造において、
前記外側衝撃吸収部の内側壁を前記フロントサイドフレームの外側壁に対して車体幅方向中心側に配置することで、前記外側衝撃吸収部の後端部および前記フロントサイドフレームの前端部が一部重ね合わされた重複部を形成し、
前記重複部で前記衝撃荷重の一部を前記外側壁に伝えるように構成したことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記フロントサイドフレームは、
前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて直線状に延出され、前記内側衝撃吸収部から車体後方に向けて作用する衝撃荷重を支える圧縮荷重支えフレーム部と、
前記圧縮荷重支えフレーム部の略中央部から車体後方に向けて延出されるとともに、車体幅方向中心に向けて湾曲状に膨出され、前記内側衝撃吸収部から車体幅方向中心に作用する衝撃荷重を支える曲げ荷重支えフレーム部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記圧縮荷重支えフレーム部の外側部が曲げ荷重支えフレーム部に沿わせて略湾曲状に形成されることで、前記フロントサイドフレームが略湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−154859(P2009−154859A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183166(P2008−183166)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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