説明

車体後部構造

【課題】 ジャッキの出し入れの作業性を確保しつつ、車輌の後突時に車体後部に搭載されたジャッキが客室内へ飛散することを防止すること。
【解決手段】 ジャッキをその長手方向が車体前後方向を向くように車体後部のフロアパネル上に支持するジャッキ支持部を備えた車体後部構造において、前記ジャッキ支持部に支持された前記ジャッキよりも車体前方において前記フロアパネル上に配設され、車幅方向に延在するクロスメンバを備え、前記クロスメンバは、後突時に前記ジャッキが車体前方へ移動することを規制する高さを有すると共に前記ジャッキの前端と対面する対面部分を有する縦壁部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌の車体後部構造に関し、特に、車輌の後突時に、車体後部に収納されるジャッキが客室に飛散することを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車輌にはタイヤを交換する際等に用いられるジャッキが搭載されている。通常、ジャッキは車体後部のフロアパネル上に搭載エリアが設けられ、ここに搭載されることになる。一方、車体後部のフロアパネル上はスペアタイヤの収納空間として用いられることが多く、ジャッキの搭載箇所はスペアタイヤの収納を考慮して設定する必要がある。車体後部のフロアパネル上におけるジャッキの搭載箇所としてはスペアタイヤの前方、後方、側方、或いは、リアホイールハウス後方のスペースが挙げられる。ここで、車体後部のフロアパネル上は一般に前後長よりも幅が大きくとられる。従って、スペアタイヤの前方、後方にジャッキを搭載する場合、搭載箇所のスペースが確保しづらいという問題がある。ジャッキをスペアタイヤの前方に搭載した場合には更にジャッキの取り出しに手間がかかるという問題もあり、ほとんど採用されていない。
【0003】
また、リアホイールハウス後方のスペースは上下方向には余裕があるものの前後左右のスペースは小さい。従って、ジャッキを倒立状態にて搭載することが必要となる。しかし、フロアパネル上方にトランクルーム等を形成する場合、トランクルームの車幅方向の端部をジャッキの上端部の収納スペースとする必要があり、ゴルフバック等の長物を収納するスペースが十分に確保することができなくなる。そこで、レイアウトを考慮した場合、特許文献1に記載されるように、ジャッキの長手方向を車体の前後方向として、スペアタイヤの側方に搭載する方式が望ましい。
【0004】
【特許文献1】特開2001−253303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車輌の後突時には車体後部が変形し、後突の衝撃で車体後部に搭載された搭載物が客室内へ飛散する場合がある。車体後部にジャッキを搭載した場合にはジャッキが客室内へ飛散する場合がある。特に、ジャッキをスペアタイヤの側方に搭載する方式を採用した場合、スペアタイヤの後方やリアホイールハウス後方のスペースに搭載する場合に比べて、車体前方へのジャッキの飛散の妨げとなるものが少なく、ジャッキが客室内へ飛散し易い傾向にある。これを解決するためにジャッキを強固に固定しておく方法が考えられるが、この場合、ジャッキの取り外しに手間がかかり、ジャッキの出し入れの作業性が劣る。
【0006】
従って、本発明の目的は、ジャッキの出し入れの作業性を確保しつつ、車輌の後突時に車体後部に搭載されたジャッキが客室内へ飛散することを防止できる車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ジャッキをその長手方向が車体前後方向を向くように車体後部のフロアパネル上に支持するジャッキ支持部を備えた車体後部構造において、前記ジャッキ支持部に支持された前記ジャッキよりも車体前方において前記フロアパネル上に配設され、車幅方向に延在するクロスメンバを備え、前記クロスメンバは、後突時に前記ジャッキが車体前方へ移動することを規制する高さを有すると共に前記ジャッキの前端と対面する対面部分を有する縦壁部を備えたことを特徴とする車体後部構造が提供される。
【0008】
本発明の車体後部構造によれば、車輌の後突時にその衝撃により前記ジャッキが前記ジャッキ支持部から外れて車体前方へ移動しようとすると、前記縦壁部が抑止壁となってジャッキの移動が規制される。前記縦壁部は車幅方向に延びる車体構造部材である前記クロスメンバの一部であり、当該クロスメンバは前記フロアパネル上に比較的強固に配設される。このようなクロスメンバを抑止壁として用いることで部品点数の増加や別途の補強構造がなくともジャッキの車体前方への移動を規制することができ、前記ジャッキを強固に固定する必要はない。従って、ジャッキの出し入れの作業性を確保しつつ、ジャッキが客室内へ飛散することを防止することができる。
【0009】
本発明において、前記ジャッキ支持部は、車幅方向の中央よりも車体の側壁側に配設されていることが望ましい。この構成によれば、車体後部はその車幅方向中央部分よりも車体の側壁側の方が前後方向の剛性が高く、後突時の変形も少ないところ、この構成によれば、前記ジャッキが車体の側壁側寄りに搭載されるので、後突時に前記ジャッキに入力する衝撃が低減され、ジャッキの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記クロスメンバは、後突時に前記ジャッキの前端部が前記対面部分に衝突した際に、前記ジャッキが前記縦壁部を乗り越えて車体前方へ移動しないように前記ジャッキを前記縦壁部に係止させる係止部を有することが望ましい。この構成によれば、前記ジャッキが前記縦壁部を乗り越えるような勢いで移動したとしても、前記ジャッキが前記縦壁部に係止されるので、ジャッキの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0011】
この場合、前記係止部は、前記対面部分に設けられた開口部とすることができる。この構成によれば、前記ジャッキの前端部が前記開口部に突入してジャッキが前記縦壁部に係止され、ジャッキの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0012】
また、前記係止部は、前記対面部分に形成され、車体前方方向へ向かって下降するように傾斜した傾斜部とすることができる。この構成によれば、前記ジャッキの前端部が前記傾斜部に案内されてジャッキが前記縦壁部の下へ潜り込むように移動して前記縦壁部に係止され、ジャッキの客室内への飛散をより効果的に防止できる。また、前記開口部を設ける場合よりも前記クロスメンバの剛性を高めることができる。
【0013】
また、本発明においては、更に、スペアタイヤを前記フロアパネル上で支持するタイヤ支持部を備え、前記ジャッキ支持部は、前記タイヤ支持部に支持された前記スペアタイヤと、車体の側壁との間において前記ジャッキを支持するように配設され、かつ、前記ジャッキの後端が前記タイヤ支持部に支持された前記スペアタイヤのホイールの後端縁よりも車体前方に位置するように配設されてもよい。この構成によれば、車輌に後突した障害物が前記ジャッキよりも前記スペアタイヤのホイールに先当りするので衝撃が分散される。従って、後突時に前記ジャッキに入力する衝撃が低減され、ジャッキの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べた通り、本発明によれば、ジャッキの出し入れの作業性を確保しつつ、車輌の後突時に車体後部に搭載されたジャッキが客室内へ飛散することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る車体後部構造を採用した自動車Aの車体後部の荷室空間周辺の構造を示す図である。荷室空間は車体後部のフロアパネル10上に形成され、破線で示すボード1により、上部の荷室空間と下部の荷室空間とに仕切られる。下部の荷室空間にはスペアタイヤTとジャッキJとがそれぞれ収納されている。スペアタイヤTはフロアパネル10上に設けられたタイヤ支持部11によりフロアパネル10上で支持されている。また、ジャッキJはフロアパネル10上に設けられたジャッキ支持部12により支持されている。ジャッキJよりも車体前方には、車幅方向に延在するクロスメンバ13がフロアパネル10上に配設されている。クロスメンバ13はその両端部が自動車Aの側壁2にそれぞれ結合されている。ジャッキ支持部12よりも車体前方には規制部材14がフロアパネル10上に配設されている。
【0016】
図2及び図3を参照して、自動車Aの車体後部構造を更に説明する。図2及び図3はフロアパネル10の周辺構造を示す平面視図であり、図2はスペアタイヤT及びジャッキJを外した状態、図3はスペアタイヤT及びジャッキJを取り付けた状態を示す。
【0017】
フロアパネル10は左右一対のリヤサイドフレーム3の上面に結合されており、左右一対のリヤサイドフレーム3間でリヤサイドフレーム3上に支持されている。フロアパネル10は一対のリヤサイドフレーム3の間のスペースにおいて、スペアタイヤTが収納可能な円形の凹部10aを有する。なお、フロアパネル10の車体前後方向後端部には不図示のリヤエンドパネル等が結合されることになる。
【0018】
凹部10aの中心部にはタイヤ支持部11が設けられている。図4(b)はタイヤ支持部11の構成を示す斜視図である。タイヤ支持部11は取付板111と取付板111上に立設され、上端部112aに雄ネジが刻設された軸112と、軸112の上端部112aのネジに螺合する雌ネジが刻設された穴113aを有するハンドル113と、を備え、取付板111によりフロアパネル10の凹部10a上に固定されている。軸112にスペアタイヤTの中心の穴を差込み、ハンドル113の穴113aを軸112の上端部112aに螺合させることで、スペアタイヤTがタイヤ支持部11に固定・支持されることになる。
【0019】
ジャッキ支持部12はジャッキJをその長手方向が車体前後方向を向くようにフロアパネル10上に支持している。図4(a)はジャッキ支持部12の構成を示す斜視図である。ジャッキ支持部12は取付板121を備え、取付板121によりフロアパネル10上に固定されている。取付板121はジャッキJが係止される爪部121aを備える。爪部121aは逆L字型をしており、取付板121の平坦部分との間でコの字形の空隙を形成している。この空隙にジャッキJの脚部Ja(図2参照)が差し込まれることになり、車体前後方向及び上下方向のジャッキJの移動が規制される。取付板121の平坦部分には上端部に雄ネジが刻設された軸体121bが立設されている。この軸体121bは、車体のサイドシルなどを支持する、ジャッキJの支持部に設けられた取付穴Jb(図2参照)に挿入される。
【0020】
ジャッキ支持部12は、更に、軸体121bの上端部の雄ネジに螺合する雌ねじが刻設された穴を有する筒体122と、筒体122の半径方向に貫通した穴122aに差し込まれるハンドル123と、を備える。しかして、ジャッキJの脚部Jaを爪部121aに係止し、ジャッキJの取付穴Jbに軸体121bを挿入した後、筒体122を軸体121bの上端部に螺合する。その際、ハンドル123を筒体122の穴122aに挿入して筒体122を回転させることで簡易に螺合できる。螺合が完了することにより、ジャッキJは爪部121aと軸体121bとで係止され、ジャッキ支持部12に固定・支持されることになる。なお、後突時にはこのジャッキJがジャッキ支持部12から外れて客室内へ飛散する畏れがあるが、後述するように本実施形態ではこの飛散を防止する構造を有するので、ジャッキ支持部12はジャッキJを強固に固定するものである必要はなく、図4(a)に例示したように簡易なもので足りる。従って、ジャッキJの出し入れの作業性は従来のものと差がなく、作業性を確保できる。
【0021】
ここで、図2に示すようにジャッキ支持部12は車幅方向の中央よりも車体の側壁2(図2にて不図示)側に配設されている。車体後部はその車幅方向中央部分よりも車体の側壁2側の方が側壁2が存在する分だけ前後方向の剛性が高く、後突時の変形も少ないところ、この構成によれば、ジャッキJが車体の側壁2側寄りに搭載されるので、車幅方向の中央に搭載した場合よりも、後突時にジャッキJに入力する衝撃が低減される。従って、ジャッキJの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0022】
また、図2に示すように本実施形態ではジャッキ支持部12がリヤサイドフレーム3上に配設されている。リヤサイドフレーム3は車体の前後方向の剛性を高める部材であり、その周辺の剛性は高く、後突時の変形も少ない。このため、ジャッキ支持部12がリヤサイドフレーム3上に配設することにより、後突時にジャッキJに入力する衝撃が低減され、ジャッキJの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0023】
また、図3に示すように本実施形態ではジャッキ支持部12はタイヤ支持部11に支持されたスペアタイヤTと、車体の側壁2(図3において不図示)との間においてジャッキJを支持するように配設され、かつ、ジャッキJの後端がタイヤ支持部11に支持されたスペアタイヤTのホイールWの後端縁(線L)よりも車体前方に位置するように配設されている。この構成によれば、車輌に後突した障害物がジャッキJよりもスペアタイヤTのホイールWに先当りするので衝撃が分散される。従って、後突時にジャッキJに入力する衝撃が低減され、ジャッキJの客室内への飛散をより効果的に防止できる。
【0024】
次に、クロスメンバ13及び規制部材14の構成について説明する。まず、クロスメンバ13から説明する。クロスメンバ13は自動車Aの車体後部の車幅方向の剛性を補強する補強部材であり、本実施形態ではこれをフロアパネル10上に設けることでジャッキJの客室内への飛散防止を図っている。図5(a)はクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、図5(b)は図5(a)の線I−Iに沿う断面図である。
【0025】
クロスメンバ13は、その断面が略コの字形をなしており、フロアパネル10と相俟って閉断面を構成している。クロスメンバ13は後突時にジャッキJが車体前方へ移動することを規制する高さを有する、車体後方側の縦壁部13aを有する。また、縦壁部13aはジャッキJの車体前後方向の前端と対面する対面部分13a’を有する。ジャッキJは図5(b)において破線で示すように、ジャッキJの車体前後方向の前端が対面部分13a’に対面した状態でジャッキ支持部12に支持される。
【0026】
そして、自動車Aに後突が発生すると、その衝撃が強度のものであった場合、ジャッキJはジャッキ支持部12から外れて車体前方へ飛び出すことになる。しかし、飛び出したジャッキJは対面部分13a’に衝突する。このため、縦壁部13aが抑止壁となってジャッキJの移動が規制される。従って、ジャッキJが客室内へ飛散することを防止することができる。縦壁部13aは車幅方向に延びる車体構造部材であるクロスメンバ13の一部であり、クロスメンバ13はフロアパネル10上に比較的強固に配設される。このようなクロスメンバ13を抑止壁として用いることで部品点数の増加や別途の補強構造がなくともジャッキJの車体前方への移動を規制することができる。なお、本実施形態では、クロスメンバ13が平面視で、その中央部分が車体前方側に張り出し、相対的に両端部が車体後方側に位置するように湾曲している。このため、ジャッキJが車体後方寄りで支持されることになり、ジャッキJを車体後方から取り出し易くなる。それでいながらジャッキJの前端が縦壁部13aと近くなるため、ジャッキJの車体前方への移動の規制タイミングが早まり、客室内への飛散防止が図れる。
【0027】
次に、規制部材14について説明する。規制部材14はジャッキ支持部12よりも車体前方に配設され、後突時にジャッキJが車体前方上側へ移動することを規制する。本実施形態の場合、規制部材14は上板部14aと、左右の側板部14bと、から断面がコの字状に形成されている。規制部材14の前方端部はクロスメンバ13に固定され、後方端部はジャッキJに向けて開口しており、クロスメンバ13から車体後方へ向けて配設されている。
【0028】
車輌の後突時にその衝撃によりジャッキJがジャッキ支持部12から外れて車体前方へ移動しようとすると、規制部材14の上板部14aの存在により車体前方上側へ移動することが規制される。従って、ジャッキJが客室内へ飛散することを防止することができる。また、本実施形態の規制部材14は側板部14bが設けられているため、後突時にジャッキJが斜め前方へ飛び出すような場合でも確実に客室内へ飛散することを防止することができる。更に、本実施形態の規制部材14の前方端部はクロスメンバ13に固定されている。従って、本実施形態の構成では、規制部材14はジャッキJが車体前方上側へ移動することを規制するのみならず、ジャッキJを縦壁部13aに案内する役割も果たす。従って、より効果的にジャッキJの客室内への飛散が防止される。加えて、後突時にジャッキJから受ける、規制部材14に対する車体前方への荷重をクロスメンバ13に負担させることができ、ジャッキJの衝突に対して規制部材14の車体前後方向の強度を向上することができる。従って、後突時におけるジャッキJの車体前方上側への移動を規制部材14によってより確実に規制でき、ジャッキJが客室内へ飛散することをより効果的に防止することができる。
【0029】
次に、本実施形態の場合、図5(b)に示すように、上板部14aは車体前方へ向かって下降するように傾斜しており、後突時に車体前方に移動するジャッキJの前端部を車体前方下側へ案内する傾斜部を構成している。この構成によれば、規制部材14によりジャッキJの移動が車体前方下側へ案内され、車体前方上側へ移動することが規制される。従って、ジャッキが客室内へ飛散することをより効果的に防止することができる。更に、上板部14aは車体前方へ向かって下降するように傾斜させることにより、規制部材14は後突時に車体前方に移動するジャッキJの前端部を対面部分13a’に案内する形状を構成している。このため、規制部材14の案内によりジャッキJが縦壁部13aに衝突し、縦壁部13aが抑止壁となってジャッキJの客室内への飛散がより効果的に防止される。また、クロスメンバ13によりジャッキJの車体前後方向の衝撃荷重が負担されるので、規制部材14の車体前後方向の剛性を低くすることができ、その小型・軽量化を図ることができる。
【0030】
なお、上板部14aをこのように傾斜させた場合、図5(b)に示すように上板部14aの後端の高さがクロスメンバ13よりも高くなる。クロスメンバ13上にはボード1(図1参照)が載置されるため、上板部14aの後端の高さはクロスメンバ13の高さと同じ程度にすることが望ましい。そこで、図5(c)に示すように、上板部14aの前端部分に段差を付け、傾斜の前端部分が低くなるようにすることが望ましい。こうすることで同図に示すように上板部14aの後端の高さはクロスメンバ13の高さと同じ程度にすることができる。
【0031】
次に、本実施形態の場合、図5(b)に示すように上板部14aはジャッキ支持部12に支持されたジャッキJの前端部を上から覆う部分を有している。このため、ジャッキJが車体前方上側へ移動することがより確実に規制されてジャッキJが客室内へ飛散することをより効果的に防止することができる。ここで、ジャッキJをジャッキ支持部12に取り付ける場合には、車体右後方からジャッキJの前端部を規制部材14内に挿入し、当該前端部を中心としてジャッキJを平面視で時計回りに回動させてジャッキJの脚部Jaを爪部121aに係止し、軸体121bを取付穴Jbに挿入する。その後、ハンドル123を用いて筒体122を軸体121bの上端部に螺合する。
【0032】
逆に、ジャッキJをジャッキ支持部12から取り外す場合には、この逆の操作となる。取り外す場合、筒体122を軸体121bから取り外した後、ジャッキJの後方を持ち上げて軸体121bから取付穴Jbを外しつつ、規制部材14内に挿入されている前端部を中心として平面視で反時計回りに回動させ、車体後方上側へ引き抜くことができる。このため、規制部材14がジャッキJの前端部を上から覆う部分を有していても、ジャッキJを車体後方上側へ引き抜くことによりジャッキ支持部12から取り外せるのでジャッキJの出し入れの作業性が確保される。
【0033】
次に、本実施形態では、上記構成により、ジャッキJの客室内への飛散を十分に防止できるが、後突時の衝撃が極めて強度のものであった場合、ジャッキJが縦壁部13aに衝突した後、転動して縦壁部13aを乗り越えて車体前方へ移動することも考えられる。そこで、縦壁部13aに衝突したジャッキJをそのまま縦壁部13aに係止させる係止部を設けることもできる。
【0034】
図6(a)は係止部として開口部131を設けたクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、図6(b)は図6(a)の線II−IIに沿う断面図である。開口部131は対面部分13a’に設けられている。後突時にジャッキJが車体前方へ移動すると、その前端部が開口部131に突入し、嵌合状態にて係止される。従って、ジャッキJが転動して縦壁部13aを乗り越えて車体前方へ移動することが防止される。
【0035】
図6(c)は係止部として傾斜部132を設けたクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、図6(d)は図6(c)の線III−IIIに沿う断面図である。傾斜部132は対面部分13a’を曲折して形成され、車体前方方向へ向かって下降するように傾斜している。後突時にジャッキJが車体前方へ移動すると、その前端部が傾斜部132に案内されてジャッキJが縦壁部13aの下へ潜り込むように移動し、縦壁部13aの変形により縦壁部13aに係止される。従って、ジャッキJが転動して縦壁部13aを乗り越えて車体前方へ移動することが防止される。クロスメンバ13の閉断面を損なうことはないので、開口部131を設ける場合よりも剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る車体後部構造を採用した自動車Aの車体後部の荷室空間周辺の構造を示す図である。
【図2】フロアパネル10の周辺構造を示す平面視図である。
【図3】フロアパネル10の周辺構造を示す平面視図である。
【図4】(a)はジャッキ支持部12の構成を示す斜視図、(b)はタイヤ支持部11の構成を示す斜視図である。
【図5】(a)はクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、(b)は図5(a)の線I−Iに沿う断面図、(c)は規制部材14の他の例の断面図である。
【図6】(a)は係止部として開口部131を設けたクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、(b)は図6(a)の線II−IIに沿う断面図、(c)は係止部として傾斜部132を設けたクロスメンバ13及び規制部材14の周辺構造を示す斜視図、(d)は図6(c)の線III−IIIに沿う断面図である。
【符号の説明】
【0037】
A 自動車
T スペアタイヤ
J ジャッキ
1 ボード
2 側壁
10 フロアパネル
11 タイヤ支持部
12 ジャッキ支持部
13 クロスメンバ
13a 縦壁部
13a’ 対面部分
14 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキをその長手方向が車体前後方向を向くように車体後部のフロアパネル上に支持するジャッキ支持部を備えた車体後部構造において、
前記ジャッキ支持部に支持された前記ジャッキよりも車体前方において前記フロアパネル上に配設され、車幅方向に延在するクロスメンバを備え、
前記クロスメンバは、
後突時に前記ジャッキが車体前方へ移動することを規制する高さを有すると共に前記ジャッキの前端と対面する対面部分を有する縦壁部を備えたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記ジャッキ支持部は、車幅方向の中央よりも車体の側壁側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記クロスメンバは、
後突時に前記ジャッキの前端部が前記対面部分に衝突した際に、前記ジャッキが前記縦壁部を乗り越えて車体前方へ移動しないように前記ジャッキを前記縦壁部に係止させる係止部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記係止部は、
前記対面部分に設けられた開口部であることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記係止部は、
前記対面部分に形成され、車体前方方向へ向かって下降するように傾斜した傾斜部であることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項6】
更に、
スペアタイヤを前記フロアパネル上で支持するタイヤ支持部を備え、
前記ジャッキ支持部は、
前記タイヤ支持部に支持された前記スペアタイヤと、車体の側壁との間において前記ジャッキを支持するように配設され、かつ、前記ジャッキの後端が前記タイヤ支持部に支持された前記スペアタイヤのホイールの後端縁よりも車体前方に位置するように配設されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−188190(P2006−188190A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2977(P2005−2977)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】