説明

車体後部構造

【課題】車体後部に対する側面衝突時に、車体後部のロッカ等の上方にオフセットして入力された側方荷重を車体骨格部材に効率的に伝達して、車体変形を抑制することを目的とする。
【解決手段】荷重伝達手段として、ロッカ12の上方において車体側部を補強する車体側部補強部材16と、該車体側部補強部材16とリヤサイドメンバとの間に配設された荷重伝達部材18と、リヤホイールハウス46を補強する補強部材20と、該補強部材20の車幅方向内側に設けられた第2荷重伝達部材22とを有する。側面衝突時に車体側部に対して入力された側方荷重Fを、車体側部補強部材16から荷重伝達部材18を介してリヤサイドメンバに伝達できると共に、補強部材20を介して第2荷重伝達部材22へ伝達することができる。側方荷重Fをリヤサイドメンバ等の車体骨格部材に分散させることで、車両用リヤシート部56の車体変形を抑制することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突を考慮した車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体後部構造としては、車体後部のロッカの車幅方向内側にリヤサイドメンバを配置し、左右のロッカ間にクロスメンバを配置した構成が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−323866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、車体後部の例えばリヤホイールハウス付近に対する側面衝突時に、ロッカの上方にオフセットした位置に入力された側方荷重をクロスメンバ等の車体骨格部材へ伝達することが難しかった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車体後部に対する側面衝突時に、車体後部のロッカ等の上方にオフセットして入力された側方荷重を車体骨格部材に効率的に伝達して、車体変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体の車幅方向両側に車体前後方向に延設されたロッカと、前記車体の後部において前記ロッカとの間で荷重伝達可能に設けられ、車体前後方向に延設されたリヤサイドメンバと、前記ロッカ及び前記リヤサイドメンバの少なくとも一方の上方にオフセットして入力された側方荷重を前記ロッカ及び前記リヤサイドメンバを含む車体骨格部材に伝達可能な荷重伝達手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車体後部構造では、ロッカ及びリヤサイドメンバの少なくとも一方の上方にオフセットして入力された側方荷重を、荷重伝達手段を介してロッカ及びリヤサイドメンバを含む車体骨格部材に伝達するように構成されているので、車体後部に対する側面衝突時に、車体後部のロッカ等の上方にオフセットして入力された側方荷重を、荷重伝達手段から車体骨格部材への荷重伝達経路を通じて直接的に、即ち効率的に伝達することができ、これによって側方荷重を車体骨格部材に分散させて車体変形を抑制することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車体後部構造において、車体側部において前記ロッカの上方に配設され、前記側方荷重に対して前記車体側部を補強する車体側部補強部材を有すると共に、前記荷重伝達手段として、前記車体側部補強部材と該車体側部補強部材よりも車幅方向内側の前記リヤサイドメンバとの間に配設され、前記車体側部補強部材に入力された前記側方荷重を前記リヤサイドメンバに伝達可能な荷重伝達部材を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車体後部構造では、車体側部におけるロッカの上方に車体側部補強部材を設けると共に、該車体側部補強部材とリヤサイドメンバとの間に荷重伝達部材を設けているので、側面衝突時に車体側部に対して入力された側方荷重を、車体側部補強部材から荷重伝達部材を介してリヤサイドメンバに伝達することができる。側方荷重をリヤサイドメンバに伝達して分散させることで、車両用リヤシート部の車体変形を抑制することが可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車体後部構造において、前記リヤサイドメンバは、車体前側の低位部と、該低位部より車体後側の高位部と、前記低位部と前記高位部との間を連結する立ち上がり部とを有し、前記荷重伝達部材は、前記立ち上がり部に車幅方向に対向して設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車体後部構造では、リヤサイドメンバに立ち上がり部が設けられているので、車体側部補強部材及びリヤサイドメンバの車体上下方向位置を互いに近接させることができ、かつ荷重伝達部材がリヤサイドメンバの立ち上がり部に車幅方向に対向して設けられているので、車体側部補強部材から荷重伝達部材へ側方荷重が伝達される高さ位置と、該荷重伝達部材からリヤサイドメンバへ側方荷重を伝達する高さ位置のオフセット量を少なくすることができ、該オフセット量が大きい場合と比較して、車体の補強を少なくすることができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の車体後部構造において、前記側方荷重の伝達時における前記荷重伝達部材及び前記リヤサイドメンバの相対的上下動を抑制する上下ずれ抑制手段を有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車体後部構造では、側方荷重の伝達時に、上下ずれ抑制手段により荷重伝達部材及びリヤサイドメンバの相対的上下動が抑制されるので、車体側部補強部材からリヤサイドメンバへの荷重伝達経路が上下にオフセットしている場合でも、荷重伝達部材とリヤサイドメンバとの対向部において滑りが生じ難い。このため、側面衝突時に入力される側方荷重を、車体側部補強部材から荷重伝達部材を介してリヤサイドメンバへ至る荷重伝達経路を通じて該リヤサイドメンバへ直接的に、即ち効率的に伝達することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車体後部構造において、リヤホイールハウスにおける前記リヤサイドメンバよりも上方に設けられ、前記側方荷重に対して該リヤホイールハウスを補強する補強部材を有すると共に、前記荷重伝達手段として、前記補強部材の車幅方向内側に設けられ該補強部材を通じて入力された前記側方荷重を車幅方向に伝達可能な第2荷重伝達部材を有することを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車体後部構造では、リヤホイールハウスにおけるリヤサイドメンバよりも上方に設けられてリヤホイールハウスを補強する補強部材と、該補強部材の車幅方向内側に第2荷重伝達部材とを有しているので、側面衝突時にリヤホイールハウス付近に入力された側方荷重を、補強部材を通じて第2荷重伝達部材に車幅方向に伝達することができる。このため、側方荷重を一方のリヤホイールハウスの補強部材から他方のリヤホイールハウスの補強部材に伝達することができ、リヤサイドメンバよりも上方における車体変形を、該車体の高さ方向に広い範囲において抑制することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車体後部構造において、前記第2荷重伝達部材は、車両用リヤシート部に設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の車体後部構造では、第2荷重伝達部材が車両用リヤシート部に設けられているので、該車両用リヤシートに着座する乗員に近い部位において車体変形を抑制することができ、乗員から遠い部位に第2荷重伝達部材を設けた場合と比較して、車体の補強を少なくすることができる。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5又は請求項6に記載の車体後部構造において、前記補強部材よりも車体後側において車体上下方向に延設され、前記リヤホイールハウスを補強する第2補強部材を有し、前記補強部材は、前記第2補強部材の近傍まで延設され又は該第2補強部材と結合されていることを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載の車体後部構造では、補強部材よりも車体後側において車体上下方向に延設され、リヤホイールハウスを補強する第2補強部材を有し、補強部材が該第2補強部材の近傍まで延設され又は該第2補強部材と結合されているので、リヤホイールハウス付近への側方荷重の入力時に、第2荷重伝達部材の上下におけるリヤホイールハウスの倒れ込みが抑制される。このため、側方荷重が入力された側から車幅方向に対向するリヤホイールハウス側への荷重伝達を、補強部材から第2荷重伝達部材への荷重伝達経路を通じて直接的に、即ち効率的に行うことができると共に、車両用リヤシート部における車体上下方向の広い範囲にわたって車体変形抑制の確実性を更に増加させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体後部構造によれば、車体後部のロッカ等の上方にオフセットして入力された側方荷重を、荷重伝達手段から車体骨格部材への荷重伝達経路を通じて車体骨格部材に直接的に、即ち効率的に伝達して、車体変形を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項2に記載の車体後部構造によれば、側面衝突時に車体側部に対して入力された側方荷重を、車体側部補強部材から荷重伝達部材を介してリヤサイドメンバに伝達することができ、該側方荷重をリヤサイドメンバに伝達して分散させることで、車両用リヤシート部の車体変形を抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項3に記載の車体後部構造によれば、車体側部補強部材から荷重伝達部材へ側方荷重が伝達される高さ位置と、該荷重伝達部材からリヤサイドメンバへ側方荷重を伝達する高さ位置のオフセット量を少なくすることができ、該オフセット量が大きい場合と比較して、車体の補強を少なくすることができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項4に記載の車体後部構造によれば、側面衝突時に入力される側方荷重を、車体側部補強部材から荷重伝達部材を介してリヤサイドメンバへ至る荷重伝達経路を通じて該リヤサイドメンバへ直接的に、即ち効率的に伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0023】
請求項5に記載の車体後部構造によれば、側方荷重を一方のリヤホイールハウスの補強部材から他方のリヤホイールハウスの補強部材に伝達することができ、リヤサイドメンバよりも上方における車体変形を、該車体の高さ方向に広い範囲において抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0024】
請求項6に記載の車体後部構造によれば、車両用リヤシートに着座する乗員に近い部位において車体変形を抑制することができ、乗員から遠い部位に第2荷重伝達部材を設けた場合と比較して、車体の補強を少なくすることができる、という優れた効果が得られる。
【0025】
請求項7に記載の車体後部構造によれば、側方荷重が入力された側から車幅方向に対向するリヤホイールハウス側への荷重伝達を、補強部材から第2荷重伝達部材への荷重伝達経路を通じて直接的に、即ち効率的に行うことができると共に、車両用リヤシート部における車体上下方向の広い範囲にわたって車体変形抑制の確実性を更に増加させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1,図2において、本実施の形態に係る車体後部構造S1は、車体10の後部に対する側面衝突を考慮した構造となっており、ロッカ12と、リヤサイドメンバ14と、荷重伝達手段の一例たる車体側部補強部材16,荷重伝達部材18,補強部材20,第2荷重伝達部材22とを有している。
【0028】
ロッカ12は、車体10の車幅方向両側に車体前後方向に延設された車体骨格部材の一種であって、図2に示されるように、後端部12Aは例えばリヤホイールハウス46の前縁まで延びている。図3において、ロッカ12は、車幅方向内側のロッカインナ24と、車幅方向外側のロッカアウタ26とが車幅方向に接合され、内部にロッカアウタリインフォースメント28及び荷重伝達部材18が取り付けられるリインフォースメント30が配設されている。
【0029】
リインフォースメント30のうち車幅方向外側に張り出している張出し部30Cは、例えば車体側部補強部材16の後端部16Aの車幅方向内側に位置し、ロッカアウタ26に近接している。リインフォースメント30の下縁30Bは、ロッカ12の車幅方向における略中央に位置し、該下縁30Bにおいてロッカアウタリインフォースメント28の上縁28Aと接合されている。リインフォースメント30の上縁30Aは、ロッカアウタ26の上縁26A及びインナパネル32に接合されている。
【0030】
図2,図3において、ロッカインナ24の車幅方向内側には、リヤサイドメンバ14がロッカ12との間で少なくとも車幅方向に荷重伝達可能に設けられ、ロッカインナ24及びリヤサイドメンバ14の上側には、フロアパネル34が接合されている。図3に示される断面位置において、リヤサイドメンバ14は、フロアパネル34及びロッカインナ24の一部を共用することで閉断面に構成されている。また、フロアパネル34の車幅方向外側端部34Aは例えばインナパネル32に接合されており、図3に示される断面位置において、ロッカ12は、フロアパネル34及びインナパネル32の一部を共用することで閉断面に構成されている。
【0031】
ロッカインナ24のうち、荷重伝達部材18及びリヤサイドメンバ14と車幅方向に重なる位置には、側方荷重Fの伝達時における荷重伝達部材18及びリヤサイドメンバ14の相対的上下動を抑制する上下ずれ抑制手段の一例として、車幅方向に内側に凹んだ凹部24Aが設けられている。側方荷重Fの伝達時に、荷重伝達部材18の車幅方向内側端部18Cが凹部24Aに入り込むことで、荷重伝達部材18がロッカインナ24に対して上下にずれることを抑制できるようになっている。
【0032】
図2,図3において、リヤサイドメンバ14は、車体10の後部においてロッカ12との間で少なくとも車幅方向に荷重伝達可能に設けられ、車体前後方向に延設された車体骨格部材の一種であって、車体前側の低位部14Lと、該低位部14Lより車体後側の高位部14Hと、低位部14Lと高位部14Hとの間を連結する立ち上がり部14Aとを有している。荷重伝達部材18は、立ち上がり部14Aに車幅方向に対向して配置されており、また、荷重伝達部材18と対向する立ち上がり部14A内には、側方荷重Fに対して該立ち上がり部14Aを補強するバルクヘッド36が部分的に設けられている。なお、リヤサイドメンバ14は、ロッカ12に対して直接的に結合されるものに限られず、該ロッカ12からリヤサイドメンバ14へ少なくとも車幅方向に荷重伝達可能であれば、間に別の部材が介在していてもよい。
【0033】
バルクヘッド36は、例えば立ち上がり部14A内において車幅方向に平行に配置した金属板を車体前後方向に複数枚並べて固着したリブ状のものでもよいし、また断面ハット形等に形成された金属板を立ち上がり部14A内において車幅方向に設けてもよい。更に、バルクヘッド36はブロック状の剛性部材であってもよい。即ち、バルクヘッド36は、主に車幅方向の荷重を車幅方向に伝達可能な部材であればよい。
【0034】
図3において、車体側部補強部材16は、ロッカ12及びリヤサイドメンバ14の少なくとも一方の上方の、例えばドア38にオフセットして入力された側方荷重Fを、ロッカ12及びリヤサイドメンバ14を含む車体骨格部材に伝達可能な例えばインパクトビームであって、側方荷重Fに対して車体側部を補強できるようになっている。
【0035】
具体的には、車体側部補強部材16は、ドア38のドアアウタパネル40とドアインナパネル42との間に配設され、取付けブラケット44を用いてドアインナパネル42に固定されている。また、図2に示されるように、車体側部補強部材16は、後端部16A側が下がるように傾斜状態で取り付けられており、該後端部16Aが車幅方向において対向する荷重伝達部材18を車体上下方向において小型化できるようになっている。
【0036】
図1,図3において、荷重伝達部材18は、車体側部補強部材16に入力された側方荷重Fをリヤサイドメンバ14に伝達可能な剛性部材であり、車体側部補強部材16と該車体側部補強部材16よりも車幅方向内側のリヤサイドメンバ14との間に配設されている。
【0037】
また荷重伝達部材18は、上縁18Aがロッカ12内におけるリインフォースメント30の張出し部30Cに接合され、下縁18Bがリインフォースメント30の下縁30Bに接合されて閉断面化された部材であり、車幅方向内側端部18Cはロッカインナ24の凹部24Aに近接している。
【0038】
図3に示されるように、荷重伝達部材18の上縁18A及び下縁18Bの位置は車幅方向に異なり、下側脚部18Fが上側脚部18Eよりも車幅方向に短く形成されている。リヤサイドメンバ14は、車体側部補強部材16の後端部16Aよりも車体上下方向において低い位置に設けられているので、荷重伝達部材18の上縁18Aは車体側部補強部材16の後端部16Aと車幅方向に対向しており、荷重伝達部材18の上側脚部18Eは車幅方向内側に向かって下方に傾斜し、車幅方向内側端部18Cがリヤサイドメンバ14と車幅方向に対向するようになっている。上側脚部18Eは、例えば荷重伝達方向(矢印A方向)と略平行に形成されている。
【0039】
荷重伝達部材18の車幅方向内側端部18Cには、リヤサイドメンバ14への側方荷重Fの伝達時に、凹部24A内に入り込んで車体上下方向に係合できるように、凹部24Aよりも小さい凸部18Dが形成されており、該凸部18Dと凹部24Aにより上下ずれ抑制手段が構成されている。なお、上下ずれ抑制手段の構成は、これに限られるものではなく、荷重伝達部材18及びリヤサイドメンバ14の相対的上下動を抑制できる構成であればよい。従って、例えば荷重伝達部材18側に凹部を設けて、リヤサイドメンバ14側に凸部を設けてもよい。また、予め互いに係合可能な形状を設けておかなくても、側方荷重Fの伝達時に一方が変形して係合し、これにより上下ずれが抑制される構成であってもよい。
【0040】
図1,図2,図4において、補強部材20は、リヤホイールハウス46におけるリヤサイドメンバ14よりも上方に設けられ、側方荷重Fに対して該リヤホイールハウス46を補強する剛性部材であって、例えばリヤホイールハウスインナ46Aの車体上下方向中央付近の車体前方側に、該リヤホイールハウスインナ46Aの外形に沿って設けられ、かつ閉断面に構成されている。また、図1において、補強部材20は略断面ハット形に形成され、補強部材20の前縁20Aは、閉止状態のドア38と対向するリヤホイールハウスインナ46A及びリヤホイールハウスアウタ46Bの縁部に共に溶接され、後縁20Bはリヤホイールハウスインナ46Aに溶接されている(図4も参照)。補強部材20の後縁20B側は、リヤホイールハウスインナ46Aの車幅方向内側への膨らみに沿うように、同じく車幅方向内側へ張り出しており、該張出し部20Cには、リヤシートブラケット48が車幅方向を軸として回動可能となるように、カラー50を介してボルト52及びナット54により枢着されている。
【0041】
図1,図4において、第2荷重伝達部材22は、荷重伝達手段として補強部材20の車幅方向内側に設けられ、該補強部材20を通じて入力された側方荷重Fを車幅方向に伝達可能な剛性部材であって、例えば車両用リヤシート部56に設けられている。具体的には、第2荷重伝達部材22は、例えば車両用リヤシート部56のシートバックの骨格であるシートバックプレート58及び該シートバックプレート58と補強部材20とを連結するリヤシートブラケット48であり、シートバックプレート58は、ボルト60及びナット62によりリヤシートブラケット48に固定されている。図1に示されるように、シートバックプレート58には、例えばシートバックフレーム64が設けられ、図示しないシートクッション側にもシートフレーム66が設けられている。なお、シートバックプレート58だけでなく、シートバックフレーム64もシートバックの骨格を構成している。
【0042】
図4に示されるように、補強部材20は、例えば内装材であるトリム68により覆われており、該トリム68と、リヤホイールハウスインナ46A及びリヤホイールハウスアウタ46Bの縁部との境界部には、例えばシールドゴム70が配設されている。
【0043】
なお、本実施形態では、第2荷重伝達部材22を、リヤシートブラケット48及びシートバックプレート58としたが、これに限られるものではなく、主に車幅方向の荷重を車幅方向に伝達可能な部材であればよい。従って、第2荷重伝達部材22は、例えば補強部材20間に車幅方向に延設されたパイプ等の剛性部材であってもよい。
【0044】
(作用)
図1,図3において、車体後部構造S1では、車体側部におけるロッカ12よりも上方の、例えばドア38に車体側部補強部材16を設けると共に、該車体側部補強部材16とリヤサイドメンバ14との間に荷重伝達部材18を設けているので、側面衝突時にドア38に対して側方荷重Fが入力された場合に、該側方荷重Fを車体側部補強部材16の後端部16Aから荷重伝達部材18を介してリヤサイドメンバ14に伝達することができる。
【0045】
具体的には、図3に示されるように、側面衝突によりドア38に側方荷重Fが入力され、ドアアウタパネル40が車幅方向内側に変形すると、該ドアアウタパネル40は車体側部補強部材16に当接する。車体側部補強部材16が車幅方向内側に押し込まれると、車体側部補強部材16からドアインナパネル42、ロッカアウタ26、リインフォースメント30を通じて荷重伝達部材18に側方荷重Fが伝達される。
【0046】
側方荷重Fによりロッカアウタ26が車幅方向内側に押し込まれると、荷重伝達部材18の車幅方向内側端部18Cがロッカインナ24に当接して、荷重伝達方向(矢印A方向)と略平行に形成された上側脚部18Eを通じて、バルクヘッド36により補強されたリヤサイドメンバ14へ側方荷重Fが矢印A方向に伝達され、更に図示しないクロスメンバ等、他の車体骨格部材に分散される。これにより側方荷重Fに対する車体10の反力を向上させることができ、図示しない衝突体を押し戻して車体10への侵入量を低減することができる。また、荷重伝達部材18の下側脚部18Fは、上側脚部18Eよりも車幅方向に短く形成されているので、側方荷重Fの入力位置、即ち車体側部補強部材16の後端部16Aがリヤサイドメンバ14と車体上下方向にオフセットしていても、荷重伝達時に荷重伝達部材18が車体上下方向下方に変形し難い。
【0047】
このように、側方荷重Fをリヤサイドメンバ14に伝達して分散させることで、車体後部の車体変形を抑制することが可能である。また、荷重伝達部材18がロッカインナ24に当接する際に、該荷重伝達部材18の車幅方向内側端部18Cに設けられている凸部18Dがロッカインナ24の凹部24Aに入り込み、その車体上下方向の係合により荷重伝達部材18及びリヤサイドメンバ14の相対的上下動が抑制されるので、車体側部補強部材16からリヤサイドメンバ14への荷重伝達経路が上下にオフセットしている場合でも、荷重伝達部材18とリヤサイドメンバ14との対向部、即ち車幅方向内側端部18Cとロッカインナ24との接触部において滑りが生じ難い。このため、側方荷重Fが入力された際に、該側方荷重Fが荷重伝達部材18からリヤサイドメンバ14への荷重伝達経路から外れにくく、このように直接的な荷重伝達経路を設けることで側方荷重Fをリヤサイドメンバ14へ直接的に、即ち効率的に伝達することが可能である。
【0048】
更に、図2に示されるように、車体後部構造S1では、リヤサイドメンバ14に立ち上がり部14Aが設けられているので、車体側部補強部材16及びリヤサイドメンバ14の車体上下方向位置を互いに近接させることができ、かつ荷重伝達部材18がリヤサイドメンバ14の立ち上がり部14Aに車幅方向に対向して設けられているので、車体側部補強部材16から荷重伝達部材18へ側方荷重Fが伝達される高さ位置と、該荷重伝達部材18からリヤサイドメンバ14へ側方荷重Fを伝達する高さ位置のオフセット量を少なくすることができ、該オフセット量が大きい場合と比較して、車体の補強を少なくすることができる。
一方、図1,図4において、側面衝突により、例えばドア38(図4)を介してリヤホイールハウス46付近に入力された側方荷重Fについては、補強部材20を通じて第2荷重伝達部材22に車幅方向、即ち矢印B方向に伝達することができる。具体的には、図4に示されるように、ドア38を介してリヤホイールハウス46の縁部に側方荷重Fが入力されると、該側方荷重Fは補強部材20に伝達され、更に該補強部材20からリヤシートブラケット48を介してシートバックプレート58へ矢印B方向に伝達される。
【0049】
補強部材20が、リヤホイールハウス46の縁部に重なる前縁20Aから、車両用リヤシート部56のシートバックプレート58に近い位置まで、リヤホイールハウスインナ46Aに沿って設けられているので、側方荷重Fの入力位置が、車両用リヤシート部56よりも車体前方にオフセットしていても、該側方荷重Fを一方のリヤホイールハウス46の補強部材20から他方のリヤホイールハウス46の補強部材20に矢印B方向に伝達することができ、図2において、リヤサイドメンバ14よりも上方における車体変形を、該車体10の高さ方向に広い範囲において抑制することができる。
【0050】
また、車体後部構造S1では、第2荷重伝達部材22の一例たるリヤシートブラケット48及びシートバックプレート58が、車両用リヤシート部56に設けられているので、該車両用リヤシート(図示せず)に着座する乗員(図示せず)に近い部位において車体変形を抑制することができ、乗員から遠い部位に第2荷重伝達部材22を設けた場合と比較して、車体10の補強を少なくすることができる。
【0051】
更に、車体後部構造S1では、側方荷重Fを車体側部補強部材16から荷重伝達部材18を介してリヤサイドメンバ14へ伝達すると共に、補強部材20を介して第2荷重伝達部材22へ伝達して、側方荷重Fを各車体骨格部材に分散させることが可能である。
【0052】
なお、本実施形態では、側方荷重Fの荷重伝達経路として、車体側部補強部材16から荷重伝達部材18を介してリヤサイドメンバ14へ伝達する経路と、補強部材20から第2荷重伝達部材22へ伝達する経路とを兼ね備えた構成として説明したが、何れか一方の経路のみを有する構成であってもよい。
【0053】
[第2実施形態]
図5から図7において、本実施形態に係る車体後部構造S2は、補強部材20よりも車体後側において車体上下方向に延設され、リヤホイールハウス46の例えばリヤホイールハウスインナ46Aを補強する第2補強部材72を有しており、補強部材20は、第2補強部材72の近傍まで延設され(図7)又は該第2補強部材72と結合されている(図9)。
【0054】
第2補強部材72は、例えば断面ハット形の部材を車体上下方向に延設したものであって、リヤホイールハウスインナ46Aの例えば車体前後方向中央部の車幅方向内側面に固着され、リヤホイールハウス46付近への側方荷重F(図8)の入力時に、リヤホイールハウス46の倒れ込みを抑制するようになっている。
【0055】
本実施形態における第2荷重伝達部材82は、車両用リヤシート部56の後側に隣接して車幅方向に延設された剛性部材であり、両方の端部82Aが補強部材20の張出し部20Cに沿う方向に車体前方に湾曲しており、該張出し部20Cと車幅方向に重なった状態となっている。即ち車体側面視で端部82Aが張出し部20Cとラップしている。第2荷重伝達部材82は、側方荷重Fの伝達時に弾性座屈を生じないようにするため、例えばコ字状の断面を有している。ここで弾性座屈とは、材料に塑性変形のない状態において、荷重と変位の関係が幾何学的に非線形となり、その後に座屈点に達する現象である。
【0056】
補強部材20の張出し部20Cには、例えばL字形に形成された取付けブラケット74の一辺74Aが溶接され、該一辺74Aの後端から車幅方向内側に延びる他の一辺74Bにおいて、ボルト76及びナット78により第2荷重伝達部材82に固定されている。図7に示されるように、第2荷重伝達部材82の端部82Aにおいては、該端部82A及び取付けブラケット74によって略三角形のトラス構造部が構成され、該トラス構造部により第2荷重伝達部材82の端部82Aが補強されている。
【0057】
なお、補強部材20は一体的に構成されるものに限られず、図9に示されるように、前後別体として、接合部80において取付けブラケット74の一辺74Aと共に溶接してもよい。また、補強部材20の後縁20Bを第2補強部材72に接合すると、更に補強部材20の剛性が高まるので好ましい。更に、図7における第2荷重伝達部材82の代わりに、図9に示されるように、車体側面視で補強部材20とラップする、例えばパイプ状の第2荷重伝達部材92を用いてもよい。図9においては、第2荷重伝達部材92を予め台座84に例えば溶接しておき、該台座84をボルト76及びナット78により取付けブラケット74の一辺74Bに固定している。
【0058】
他の部分は、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
(作用)
図8において、車体後部構造S2では、補強部材20よりも車体後側において車体上下方向に延設され、リヤホイールハウス46を補強する第2補強部材72を有し、補強部材20が該第2補強部材72の近傍まで延設され又は該第2補強部材と結合されているので、リヤホイールハウス46付近への側方荷重Fの入力時に、第2荷重伝達部材82の上下におけるリヤホイールハウス46の倒れ込みを抑制することができる。
【0060】
また、車両用リヤシート部56のシートバック56Aよりも車体前側にオフセットした位置に側方荷重Fが入力された場合、該側方荷重Fは矢印C方向に補強部材20に伝達された後、第2荷重伝達部材82の端部82A及び取付けブラケット74からなるトラス構造部を矢印D方向に伝わり、第2荷重伝達部材82に矢印B方向に伝達されて、車幅方向に対向するリヤホイールハウス46側へ分散される。
【0061】
このように、車体後部構造S2では、側方荷重Fが入力された側から車幅方向に対向するリヤホイールハウス46側への荷重伝達(矢印E方向)を、補強部材20から第2荷重伝達部材82への荷重伝達経路を通じて直接的に、即ち効率的に行うことができるだけでなく、リヤホイールハウス46の倒れ込みを抑制することで、車両用リヤシート部56における車体上下方向の広い範囲にわたって車体変形抑制の確実性を更に増加させることが可能である。
【0062】
また、車体後部構造S2では、第2荷重伝達部材82が車両用リヤシート部56と別体であるため、シートパッドを取り付ける前であれば、一般に行われているように、車室内前方から第2荷重伝達部材82の締付け作業を行うことができ、かつ車両用リヤシート部56に荷重伝達部材が不要となることから、シート設計の自由度が高い。
【0063】
更に、第2荷重伝達部材82は、直接的に車体10と結合されているので、車両用リヤシート部56に依存することなく、確実な荷重伝達が可能である。
【0064】
なお、上記実施形態では、荷重伝達手段として、車体側部補強部材16、荷重伝達部材18、及び第2荷重伝達部材22,82,92を挙げたが、荷重伝達手段はこれらに限られるものではなく、側方荷重Fを車体骨格部材に伝達して車体変形を抑制できるものであれば、他の手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1から図4は、第1実施形態に係り、図1は車室側から車体の右後部を見た車体後部構造の斜視図である。
【図2】車室側から車体の右側部を見た車体後部構造の側面図である。
【図3】車体後部構造を示す、図1における3−3矢視断面図である。
【図4】車体後部構造を示す、図1における4−4矢視断面図である。
【図5】図5から図9は、第2実施形態に係り、図5は車室側から車体の右後部を見た車体後部構造の斜視図である。
【図6】車室側から車体の右側部を見た車体後部構造の側面図である。
【図7】車体後部構造を示す、図6における7−7矢視断面図である。
【図8】車体後部構造における側方荷重の荷重伝達経路を示す断面図である。
【図9】車体後部構造の変形例を示す、図6における7−7矢視断面に相当する断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 車体
12 ロッカ
14 リヤサイドメンバ
14A 立ち上がり部
14H 高位部
14L 低位部
16 車体側部補強部材(荷重伝達手段)
18 荷重伝達部材(荷重伝達手段)
18D 凸部(上下ずれ抑制手段)
20 補強部材(荷重伝達手段)
22 第2荷重伝達部材(荷重伝達手段)
24A 凹部(上下ずれ抑制手段)
46 リヤホイールハウス
56 車両用リヤシート部
72 第2補強部材
82 第2荷重伝達部材(荷重伝達手段)
92 第2荷重伝達部材(荷重伝達手段)
F 側方荷重
S1 車体後部構造
S2 車体後部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両側に車体前後方向に延設されたロッカと、
前記車体の後部において前記ロッカとの間で荷重伝達可能に設けられ、車体前後方向に延設されたリヤサイドメンバと、
前記ロッカ及び前記リヤサイドメンバの少なくとも一方の上方にオフセットして入力された側方荷重を前記ロッカ及び前記リヤサイドメンバを含む車体骨格部材に伝達可能な荷重伝達手段と、
を有することを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
車体側部において前記ロッカの上方に配設され、前記側方荷重に対して前記車体側部を補強する車体側部補強部材を有すると共に、
前記荷重伝達手段として、前記車体側部補強部材と該車体側部補強部材よりも車幅方向内側の前記リヤサイドメンバとの間に配設され、前記車体側部補強部材に入力された前記側方荷重を前記リヤサイドメンバに伝達可能な荷重伝達部材を有することを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤサイドメンバは、車体前側の低位部と、該低位部より車体後側の高位部と、前記低位部と前記高位部との間を連結する立ち上がり部とを有し、
前記荷重伝達部材は、前記立ち上がり部に車幅方向に対向して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記側方荷重の伝達時における前記荷重伝達部材及び前記リヤサイドメンバの相対的上下動を抑制する上下ずれ抑制手段を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
リヤホイールハウスにおける前記リヤサイドメンバよりも上方に設けられ、前記側方荷重に対して前記リヤホイールハウスを補強する補強部材を有すると共に、
前記荷重伝達手段として、前記補強部材の車幅方向内側に設けられ該補強部材を通じて入力された前記側方荷重を車幅方向に伝達可能な第2荷重伝達部材を有することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記第2荷重伝達部材は、車両用リヤシート部に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記補強部材よりも車体後側において車体上下方向に延設され、前記リヤホイールハウスを補強する第2補強部材を有し、
前記補強部材は、前記第2補強部材の近傍まで延設され又は該第2補強部材と結合されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−145099(P2007−145099A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339397(P2005−339397)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】