説明

車体後部構造

【課題】車体後部にバッテリを収納した場合に、後突時におけるバッテリと車体との電気的な遮断を簡単な構成でもって実現できるようにする。
【解決手段】フロアパネル1のうち左右一対のリヤサイドフレーム10の間において収納凹部6が形成され、収納凹部6の底面部6aにバッテリ70が固定される。バッテリ70の電極70bに接続される接続端子84が、電極70bに固定された固定端子84Aと、ハーネス86が接続されると共に前後方向への大きな引張力を受けたときに固定端子84Aから離脱される離脱用端子84Bとから構成される。前端部が収納凹部6の前壁部6c側において車体に固定されたブラケット95(105)が、バッテリ70に向けて後方へ伸びるように配設される。離脱用端子84Bまたはハーネス86のうち離脱用端子84Bの近傍部分が、ブラケット95(105)によって前方へ移動しないように係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロアパネルの下面、特に後端部付近での下面には、車体の強度確保のために、前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームが接合されると共に、左右一対のリヤサイドフレーム同士を連結するクロスメンバが接合されるのが一般的である。
【0003】
また、フロアパネルの上面には、シートを前後方向にスライド案内するために、前後方向に伸びるシートスライドレールが固定されるのが一般的である。1ボックスカーや1.5ボックスカーさらにはワゴン車等で多く見られるように、運転席の後方に配設される後席シートとして、最後方シートと最後方シートの直前方に配設される前方シートとを有して、全体として前後方向にシートを3列に配設したものが多くなっている。特許文献1には、フロアパネルの上面に配設した左右一対のシートスライドレールを、車室後端部付近にまで後方へ十分長く延長して、この長い左右一対のシートスライドレールを、上記最後方シートと前方シートとの両方のシートに対するガイド用として兼用したものが開示されている。
【0004】
一方、フロアパネルの後端部には、左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方へ突出すると共に上方に開口された収納凹部が形成されることが多く、この収納凹部には、例えばスペアタイヤ等が収納されるが、バッテリを収納することも考えられている。
【0005】
衝突時において、バッテリからの電流が車体に流れることは好ましくなく、このため、衝突時には、バッテリの電極と電極に接続されたハーネスとの接続関係を遮断して、車体とバッテリとを電気的に確実に遮断することが行われている(車体を介してバッテリのプラス側電極とマイナス側電極とが短絡することの防止)。特許文献2には、バッテリを車体前部に搭載することを前提として、ラジエタから後方に伸びるクサビ体を、バッテリの電極に接続された接続端子に臨ませて配置することにより、前方衝突時に、ラジエタが後方へ大きく変位することに伴うクサビ体の後方への変位によって、接続端子をバッテリの電極から離脱させることが提案されている。また、特許文献3には、衝突時に発生されるガス圧を利用して、バッテリの電極から接続端子を離脱させることが提案されている。
【特許文献1】特開平6−336131号公報
【特許文献2】特開2000−164202号公報
【特許文献1】特開2000−76975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体後部にバッテリを搭載する場合は、後突(後方衝突)時において、バッテリと車体とを電気的に確実に遮断することが重要となる。前述した特許文献2に記載のものでは、バッテリが車体前部に搭載された前方衝突対応のため、車体後部にバッテリを搭載する場合には適用できないものである。また、特許文献3に記載のものでは、衝突時にガス圧を発生させることから、構造が極めて複雑となりしかも高価になってしまう。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、車体後部にバッテリを収納した場合に、後突時におけるバッテリと車体との電気的な遮断を簡単な構成でもって実現できるようにした車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、基本的に、フロアパネルに、左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方へ突出すると共に上方に開口された収納凹部を形成して、この収納凹部の底面部にバッテリを固定するようにしてある。そして、後突時において、収納凹部の底面部においては前方への変位量が大きくなる一方、収納凹部の前壁部側の車体においては前方への変位量が小さいことに着目して、この収納凹部の底面部と側壁部側の車体との前方への機械的な変位量の差を有効に利用して、バッテリに対する接続端子を前後方向に分離させるようにしてある。具体的には、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
フロアパネルの下面に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームが接合され、
フロアパネルのうち前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記収納凹部の底面部にバッテリが固定され、
前記バッテリの電極に接続される接続端子が、該電極に固定された固定端子と、ハーネスが接続されると共に前後方向への大きな引張力を受けたときに該固定端子から離脱される離脱用端子とから構成され、
前端部が前記収納凹部の前壁部側において車体に固定されたブラケットが、前記バッテリに向けて後方へ伸びるように配設され、
前記離脱用端子または前記ハーネスのうち該離脱用端子の近傍部分が、前記ブラケットによって前方へ移動しないように係止されている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、後突時には、収納凹部のうちバッテリが固定された底面部は前壁部側の車体に比して相対的に大きく前方へ変位されることになる。このため、離脱用端子に対して固定端子が相対的に大きく前方へ変位されることとなって、離脱用端子と固定端子との接続関係が解除されて、バッテリと車体とが電気的に確実に遮断されることになる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
前記フロアパネルに、前記収納凹部の前方位置において、車幅方向に伸びるクロスメンバが接合され、
前記ブラケットの前端部が前記クロスメンバに固定されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、前後方向に変位しにくいクロスメンバにブラケットの前端部を連結することにより、後突時に、ブラケットそのものの前方への変位量をより一層小さくして、固定端子と離脱用端子との接続解除をより確実に行う上で好ましいものとなる。
【0011】
前記フロアパネルの上面に、前後方向に伸びる左右一対のシートスライドレールが固定され、
前記クロスメンバが、前記フロアパネルの上面に接合されると共に、前記左右一対のシートスライドレール同士を連結している、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、クロスメンバは、フロアパネルに接合されるだけでなく、前後方向に突っ張るシートスライドレールに対しても連結されているので、後突時に、ブラケットそのものの前方への変位量をさらにより一層小さくして、固定端子と離脱用端子との解除解除をより一層確実に行う上で好ましいものとなる。
【0012】
前記フロアパネルの上面に、前記収納凹部の前方において前後方向に伸びるシートスライドレールが固定され、
前記ブラケットの前端部が、前記シートスライドレールに連結されている、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、前後方向に突っ張るシートスライドレールを有効に利用して、後突時に、ブラケットそのものの前方への変位量をさらにより一層小さくして、固定端子と離脱用端子との接続解除をより一層確実に行う上で好ましいものとなる。
【0013】
フロアパネルの上面に、前記収納凹部の左右に位置するように前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールが固定されると共に、該左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端位置よりも前方に設定され、
フロアパネルの上面に、前記収納凹部の前端部付近において、車幅方向に伸びて前記左右一対の外側シートスライドレール同士を連結する連結部材が固定され、
前記内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、クロスメンバが、フロアパネルに接合されるだけでなく、前後方向に突っ張る外側シートスライドレールと内側シートスライドレールとに連結されているので、後突時に、クロスメンバつまりブラケットの前方への変位量を極めて小さいものに抑制して、固定端子と離脱用端子との接続解除をさらにより一層確実に行う上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車体後部にバッテリを収納した場合に、簡単な構成でもって、後突時にバッテリと車体とを電気的に確実に遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
車両Vは、そのフロアパネル1上に、前後方向に隔置された3列のシート2,3,4を有する。第1列目のシート2は、運転席シート2Aと助手席シート2Bとの左右の分割構成とされている。2列目のシート3は、左右の分割構成とされて、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとから構成されている。ただし、右側分割シート3Bの車幅方向幅が、左側分割シート3Aの車幅方向幅よりも若干大きくされて、互いに前後方向位置を同じに設定したときに、左右位置の他に中央部にも着座可能な3人掛けとして利用できるようになっている。3列目のシート4は、少なくともそのシートクッションが車幅方向において一体の構造とされて、3人掛け用として設定されている。
【0016】
フロアパネル1のうち、2列目および3列目のシート3,4が位置されるその後部部分の構造の詳細について、図3以下を参照しつつ説明する。まず、フロアパネル1の下面には、前後方向に伸びる強度部材としての左右一対のリヤサイドフレーム10が接合されている(図3、図4参照)。このリヤサイドフレーム10は、断面略ハット状とされて、フロアパネル1と共働して閉断面を構成している(図5参照)。リヤサイドフレーム10は、フロアパネル1の車幅方向外端部付近に位置されて、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置され、その前端は、サイドシル5に連結されている。なお、リヤサイドフレーム10とサイドシル5との接合部位は大きな閉断面を有するように設定されて、サイドシル5とリヤサイドフレーム10との間で前後方向の大きな衝撃が効果的に伝達されるように設定されている。
【0017】
フロアパネル1には、リヤサイドフレーム10の間において、下方へ突出されて、上方に向けて開口された大きな収納凹部6が形成されている(図3,図4,図9参照)。この収納凹部6は、スペアタイヤや工具等が収納されるもので、その前端部の形状は、略円弧状とされて、その半径は、スペアタイヤの半径よりも若干大きくなるように設定されている。この収納凹部6は、フロアパネルの後端に向けても開口されている。
【0018】
図3に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム10同士は、車幅方向に伸びる第1〜第3の複数のクロスメンバ11,12,13によって連結されている。もっとも前方に位置される第1クロスメンバ11は、リヤサイドフレーム10の前端部同士を連結している。もっとも後方に位置される第3クロスメンバ13は、収納凹部6の前端の直前方を通るように配設されている。ただし、第3クロスメンバ13は、リヤサイドフレーム10に対する連結部位は、収納凹部6の前端よりも若干後方位置とされて、その車幅方向中間部が、収納凹部6の略円弧状とされた前端部形状に沿うように湾曲形成されている。第1クロスメンバ11と第3クロスメンバ13との間に位置される前後方向中間位置に配設された第2クロスメンバ12は、第1クロスメンバ11よりも第3クロスメンバ13に近い位置に配設されている。そして、第1クロスメンバ11と第2クロスメンバ12は、直線的に伸びている。なお、第1クロスメンバ11の前方には、左右一対のサイドシル5同士を連結するクロスメンバが別途設けられているものである。
【0019】
各クロスメンバ11〜13は、その車幅方向端部に形成されたフランジ部11a、12aあるいは13aを、リヤサイドフレーム10の内側面や下面に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3参照)。また、各クロスメンバ11〜13は、フロアパネル1に対しては、そのフランジ部11b、12bあるいは13bを、フロアパネル1に重ねた状態でもって溶接等により接合されている(図3参照)。このように、フロアパネル1の下面には、左右一対のリヤサイドフレーム10を、前後方向に離間された複数のクロスメンバ11〜13で連結することにより、強度向上が図られている。また、収納凹部6の形成によって、フロアパネル1の後端部は、平板状あるいはほぼ平板状の状態である場合に比して、強度向上が図られることになる。
【0020】
図4に示すように、フロアパネル1の上面には、夫々前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレール20と、左右一対の内側シートスライドレール30とが配設されている。左右一対の外側シートスライドレール20は、最後方シートとなる3列目シート4の他に、2列目シート3をも前後方向にガイドするようになっており、このため前後方向に極めて長くなるように設定されている。より具体的には、外側シートスライドレール20は、その前端位置がリヤサイドフレーム10とサイドシル5との連結部位付近に位置され(2列目シート3の前端位置に対応した位置)、その後端はフロアパネル1の後端付近に位置されている(3列目シート4の最後方位置に対応)。この外側シートスライドレール20の後端部は、収納凹部6を左右から挟むように配設されて、平面視において、リヤサイドフレーム10と重なるように設定されている(図4参照)。
【0021】
内側シートスライドレール30は、左右一対の外側シートスライドレール20の車幅方向内側に配設されて、外側シートスライドレール20よりも短くされている。より具体的には、内側シートスライドレール30の前端位置は、外側シートスライドレール20の前端位置と同じに設定されているが、その後端位置が、収納凹部6の直前方位置に設定されている。この左右一対の内側シートスライドレール30は、2列目シート3を前後方向にガイドするための専用とされている。
【0022】
左右一対の外側シートスライドレール20には、それぞれ、前アジャスタ41と後アジャスタ42との2つのアジャスタが摺動自在に係合されている。左右一対の内側シートスライドレール30には、それぞれ1つのアジャスタ43が摺動自在に係合されている。外側シートスライドレール20に設けた左右一対の後アジャスタ42は、3列目シート4専用で、3列目シート4(のシートクッション)が取付けられる。左側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と左側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち左側分割シート3A専用で、左側部分割シート3A(のシートクッション)が取付けられる。右側のシートスライドレール20に設けた前アジャスタ41と右側の内側シートスライドレール30に設けたアジャスタ43が、2列目シート3のうち右側分割シート3B専用で、右側部分割シート3B(のシートクッション)が取付けられる。このように、最後方シートとなる3列目シート4は、その前後方向位置が、常に一体として調整される。また、2列目シート3は、左側分割シート3Aと右側分割シート3Bとで別個独立して前後方向位置が調整可能である。
【0023】
左右一対の外側シートスライドレール20同士は、車幅方向に伸びる連結部材50によって連結されている(図4参照)この連結部材50は、クロスメンバ11〜13と同様に、フロアパネル1と共働して閉断面を構成していて、例えば、そのフランジ部を利用してシートスライドレール20の内側面や上面に対して溶接等により接合されると共に、そのフランジ部を利用してフロアパネル1にも溶接等により接合されている。このような連結部材50の前後方向位置は、収納凹部6の前端付近に設定されて、平面視において第3クロスメンバ13の車幅方向中間部と重なるようにされている。なお、この連結部材50は、クロスメンバとしても機能するものである。
【0024】
内側シートスライドレール30の後端部は、図示を略すブラケットを介して、上記連結部材50に対して連結されている。すなわち、内側シートスライドレール30の後端を連結部材50の前面に当接させた状態でもって、互いに固定されている。なお、溶接等によって内側シートスライドレール30と連結部材50とを固定することもできる。
【0025】
左右一対の外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30は、それぞれ、前後方向複数箇所(実施形態では3箇所)においてフロアパネル1に固定されている。すなわち、外側シートスライドレール20は、固定用ブラケット22を利用して、前端部と後端部と前後方向中間部との3箇所で、例えばボルト、ナット等の固定具によってフロアパネル1に固定される。外側シートスライドレール20のフロアパネル1に対する固定位置は、第1クロスメンバ11(のフランジ部11b)とフロアパネル1との接合部位、第2クロスメンバ12(のフランジ部12b)とフロアパネル1との接合部位、および外側シートスライドレール20の後端部位置である(後端部位置ではクロスメンバが存在しないので、フロアパネル1に対してのみ固定される)。内側シートスライドレール30は、固定用ブラケット32を利用して、前端部と後端部と前後方向中間部との3箇所で、例えばボルト、ナット等の固定具によってフロアパネル1に固定される。この内側シートスライドレール30の固定部位は、各クロスメンバ11〜13のフランジ部11b〜13bの位置とされている。
【0026】
図5に示すように、収納凹部6には、バッテリ70が収納されている。具体的には、収納凹部6の底面部6aのうち前端部には、バッテリ収納皿72がボルト等の固定具によって固定され、このバッテリ収納皿72にバッテリ70が載置されている。バッテリ収納皿72には、上方に伸びる前後一対の固定ステー74が一体化され、この固定ステー74の上端部にはねじ部が形成されている。また、バッテリ70の上方には、前後方向に伸びる押圧ステー76が配設されている。この押圧ステー76の前後各端部(に形成された貫通孔)を、固ステー74が貫通して、固定ステー74の上端部に螺合したナット78によって、押圧ステー76がバッテリ70を下方へ押圧することにより、バッテリ70がバッテリ収納皿72から動かないように固定されている。なお、バッテリ70の収納凹部6の底面部6aに対する固定の手法は、上記以外に適宜の手法を採択し得るものである。
【0027】
バッテリ70は、プラスとマイナスの一対の電極70a、70bを有する。一方の電極70aには、既知の構造の接続端子80を介して、ハーネス82が接続されている。また、他方の電極70bに対して、前後方向に分離可能な離脱式の接続端子84を介して、ハーネス86が接続されている。
【0028】
上記離脱式の接続端子84は、後突時に、前後方向において分離されて、他方の電極70bとハーネス86との電気的な接続関係が遮断されるように設定されている。すなわち、図6に示すように、接続端子84は、ボルト90およびナット91を利用して電極70bに常時固定される固定端子84Aと、固定端子84Aの後方に位置されて、固定端子84Aに対して前後方向において離脱可能な離脱用端子84Bとを有し、離脱用端子84Bに対してハーネス86が常時接続されている。
【0029】
離脱用端子84Bは、その前端部において、周方向にスリ割り部を有して前方に向けて開口されたするソケット部84cを有する。このソケット部84c内に固定端子84Aの後端部が嵌合されることにより、互いに電気的な接続関係が確保され、この嵌合を解除することにより、両端子84Aと84Bとの電気的な接続関係が解除される。なお、固定端子84Aと離脱用端子84Bとの接続は、乗員の手指や走行中の振動等の小さな外力では接続解除できないようにしっかりと行われるが、後突時に接続解除方向の大きな外力を受けたときは容易に接続解除されるものとなっている。
【0030】
上記離脱用端子84Bは、ブラケット95に固定されており、このブラケット95は、その前端部が、収納凹部6の前壁部6cの前方に位置するクロスメンバとしての連結部材50に固定されている。すなわち、ブラケット95は、その前端面を連結部材50の後面に着座された状態で、ブラケット,ボルト等を利用して連結部材50に固定されている。このブラケット95は、バッテリ70の上面よりも若干高い位置にあって、連結部材50から後方に向けて伸びて、その後端部がバッテリ70の上方に位置すると共に、離脱式の接続端子84が接続される電極70bの近傍にまで伸びている。なお、ブラケット95は、連結部材50に対して溶接によって固定する等、固定の手法は適宜採択できるものであり、また収納凹部6の直前方位置においてフロアパネル1に対しても固定するようにしてもよい。
【0031】
上記ブラケット95は、車幅方向内方側に向けて伸びる保持部95aを有する。この保持部95aは、ほぼ水平に伸びて、その先端部は、電極70bの後方に位置されている。このようなブラケット95は、全体的に鉄製あるいはアルミニウム合金等の金属によって、十分な剛性(特に曲げ剛性)を有するように形成されている。そして、ブラケット95の保持部95aに対して、前述した離脱用端子84Bが、絶縁部材100を介して、ボルト101,ナット102によって固定されている。
【0032】
以上のような構成において、後突時には、車体後部の各部分が前方へ向けて変形される。この変形は、収納凹部6に着目してみると、その底面部6aは前方への変位量が大きくなる一方、その前壁部6cおよびその前方部分では前方への変位量が相対的に小さいものとなる。バッテリ70は、収納凹部6の底面部6aに固定されているので、バッテリ70(の各電極70a、70b)の前方への変位量は大きいものとなり、このバッテリ70の前方への変位量が図6において符合αで示される。一方、収納凹部6の前壁部6cの直前方に位置される連結部材50の前方への変位量、つまりこの連結部材50に固定されたブラケット95の前方への変位量は小さいものとなり、このブラケット95の前方への変位量が図6において符合βで示される。このように、後突時には、バッテリ70とブラケット95との前方への変位量に大きな偏差を有することから、後突時には、バッテリ70と一体の固定端子84Aが、離脱用端子84Bに対して相対的に大きく前方へ変位されることとなって、固定端子84Aと離脱用端子84Bとの嵌合が解除されることになる。これにより、バッテリ70と車体との電気的な接続関係が確実に遮断されることになる。
【0033】
外側シートスライドレール20は、平面視においてリヤサイドフレーム10と重なるように配置されていて、リヤサイドフレーム10を補強する部材として機能されると共に、前後方向の突っ張り作用によって連結部材50の前方への変位を規制する部材としても機能する。同様に、内側シートスライドレール30も前後方向の突っ張り作用により、連結部材50の前方への変位を規制する部材として機能する。したがって、後突時において、連結部材50の前方への変位量は、収納凹部6の底面部6aの前方への変位量に比して極めて小さいものとなる。これにより、後突時において、図6に示す変位差がより確実かつ十分に確保されて、固定端子84Aと離脱用端子84Bとがより確実に接続解除されることになる。
【0034】
図8、図9は、本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符合を付してその重複した説明は省略する(このことは、以下の第3実施形態についても同じ)。本実施形態では、収納凹部6の直前方位置および側方部分の車体強度を向上させたものである。すなわち、左右一対の外側シートスライドレール20の後端部同士が、第1連結部材60によって連結され、この第1連結部材60に対して、各内側シートスライドレール30の後端部が連結されている。すなわち、第1連結部材60は、左右一対の内側シートスライドレール30の後端部の間に位置されて車幅方向にほぼ直線状に伸びる中央部60aと、外側シートスライドレール20の後端部に連結される左右一対の後連結部60bと、各後連結部60bと中央部60aの各端部とを連結する左右一対の斜行部60cとを有する。斜行部60cは、斜行部材として機能されるもので、前方へ向けて凸となるように湾曲されて、収納凹部6の周縁部付近でかつ平面視において収納凹部6と重ならないように配設されている。このような第1連結部材60は、全体的に上記各部分60a、60b、60cを含む一体物として形成されている。
【0035】
上記第1連結部材60は、断面略ハット状とされて、フロアパネル1と共働して閉断面を構成している(図9参照)。また、図9に示すように、内側シートスライドレール30の後端部は、連結ブラケット35,ボルト36を利用して第1連結部材60に連結されているが、例えば溶接接合したり、別形状の連結ブラケットを用いる等、その連結手法は適宜のものを採択し得る。
【0036】
内側シートスライドレール30の後端部は、車幅方向に伸びる左右一対の第2連結部材61を介して、外側シートスライドレール20に連結されている。すなわち、右側において隣り合う外側シートスライドレール20と内側シートスライドレール30の後端部とが、車幅方向に伸びる短い右側第2連結部材61によって連結され、同様に、左側において隣り合う外側シートスライドレール20と内側シートスライドレール30の後端部とが、車幅方向に伸びる短い左側第2連結部材61によって連結されている。これにより、平面視において、外側シートスライドレール20と第1連結部材60の斜行部60cと第2連結部材61とによって囲まれた強度的に優れた略三角形状の強度部分62が、左右一対構成される。また、第2連結部材61は、第1連結部材60における中央部60aの延長線上に位置するように設定されて、左右一対の外側シートスライドレール20同士が、車幅方向に一直線上に配設された上記中央部60aと左右一対の第2連結部材61とによって連結されて、全体的に、外側シートスライドレール20や内側シートスライドレール30の剛性、特にねじり剛性が飛躍的に向上されている。なお、第2連結部材61は、図9に示すように、断面略ハット状とされて、フロアパネル1と共働して閉断面を構成している。また、前述したブラケット95は、連結部材60の中央部60aにその前端部が固定されている。
【0037】
図10は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態では、ブラケット95に相当するブラケット105を、左右一対の前後方向に伸びる側方アーム部105aと、側方アーム部105aの後端部同士を連結する後方アーム部105bとを有して、平面視において略コ字状となるように形成してある。そして、左右一対の側方アーム部105aの前端部を、連結部材50(図4、図5の連結部材50)に固定してある。後方アーム部105bの車幅方向長さは、一対の電極70aと70bとの間隔よりも若干大きくされている。そして、各電極70a、70bに対しては、それぞれ離脱式の接続端子84を用いて、各接続端子84の離脱用端子84Bを、ブラケット105の後方アーム部105aに固定するようにしてある。
【0038】
図10の実施形態では、ブラケット105の剛性が極めて高いものとなり、後突時においてブラケット105の前方への変位量をより小さいものとして、各電極70a、70bのそれぞれにおける接続端子84をより確実に接続解除する行う上で好ましいものとなる。さらに、斜め後方からの後突時において、少なくとも左右いずれか一方の接続端子84が接続解除される可能性を高めることができる。
【0039】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。シートは、全体として2列シートとしてもよく(特に全長の小さい車両の場合)、この場合は、外側シートスライドレール20は、最後方シートとしての2列目シート用とされ、外側シートスライドレール20および内側シートスライドレール30が、1列目シート(運転席用および助手席用)用として利用されることになる。
【0040】
離脱式の接続端子84が用いられる電極としては、プラス側電極であってもマイナス側電極のいずれであってもよいが、車体にアースされる電極(最近の車両ではマイナスアースが一般的)に対して離脱式の接続端子84を用いるのが好ましい。また、離脱式の接続端子84を、両方の電極70a、70bに装備する場合、図5〜図7に示すブラケット95の保持部95aをさらに延長させて、両方の電極70a、70bの後方に位置させるようにして、各電極70a、70bにそれぞれ設けた離脱用端子84Bを保持部95aに固定するようにしてもよい。固定端子84Aとりた 84Bとの接続・接続解除部位は、固定端子84Aの側方、上方さらには前方に設定してもよい。
【0041】
ブラケット95(105)に固定される部位は、離脱用端子84Bそのものではなく、離脱用端子84Bに接続されるハーネス86としてもよく、この場合は、ハーネス86のうち離脱用端子84B近傍部分を固定するようにすればよい。離脱用端子84Bを、収納凹部6の前壁部6c直近にまで延設して、離脱用端子84Bまたはその直近のハーネス96を、前壁部6cあるいはその直前方のフロアパネル1や連結部材等の車体に対して前方へ変位しないように係止させるようにしてもよい。図12の変形例として、一方の電極に対してのみ離脱式の接続端子84を用いるようにしてもよい。
【0042】
ブラケット95、105を、例えば繊維強化プラスチックによって構成することもでき、この場合は、絶縁部材100を別途用いる必要がなくなる。例えば、図5の実施形態において、ブラケット95の前方延長位置に、シートスライドレール30が位置するような配設態様とすることもできる(シートスライドレール30を利用したブラケット95の前方変位規制)。収納凹部6に搭載されるバッテリ70は、車両全体として1つのみ装備されるバッテリであってもよく(この場合は、主として、重量物であるバッテリ70を車体後部に搭載することによる車体前後の重量バランスの向上を意図したものとされる)、あるいは、別の場所に搭載されたバッテリの他にさらに別途設けられたバッテリであってもよい(この場合は、例えば、ハイブリッドカーや、アイドルストップを行う車両において、バッテリ全体としての容量拡大を意図したものとされる)。ブラケット95(105)が固定されるクロスメンバとしては、フロアパネル1の上面に接合された部材に限らず、図3,図4に示すように、収納凹部6の直前方位置においてフロアパネル1の下面に接合されたクロスメンバ13であってもよく、この場合は、ブラケット95,105を、例えばクロスメンバ13のフランジ部13bに対してフロアパネル1と共に共締めの形態でもって固定すればよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明が適用される車両の一例を示すもので、車両後部の状態を示す簡略側面図。
【図2】図1に示すシートの配列状態を示す斜視図。
【図3】フロアパネルの下面の構造を示す平面図。
【図4】フロアパネルの上面の構造を示す平面図。
【図5】バッテリの収納部分の詳細を示す要部斜視図。
【図6】離脱式の接続端子部分を示す一部断面上面図。
【図7】図6を矢印A方向から見た図。
【図8】本発明の第2の実施形態を示すもので、図4に対応した簡略平面図。
【図9】図8に示す連結部材と内側シートスライドレールとの連結部位を示すもので、一部を断面して示す要部斜視図。
【図10】本発明の第3の実施形態を示す要部簡略平面図。
【符号の説明】
【0044】
V:車両
1:フロアパネル
2:1列目シート
3:2列目シート(前方シート)
4:3列目シート(最後方シート)
6:収納凹部
6a:底面部
6c:前壁部
10:リヤサイドフレーム
11〜13:クロスメンバ
20:外側シートスライドレール
30:内側シートスライドレール
50:連結部材(クロスメンバ)
60:連結部材(クロスメンバ)
70:バッテリ
70a:電極
70b:電極
84:接続端子(離脱式)
84A:固定端子
84B:離脱用端子
95:ブラケット
95a:保持部
100:絶縁部材
105:ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下面に前後方向に伸びる左右一対のリヤサイドフレームが接合され、
フロアパネルのうち前記左右一対のリヤサイドフレームの間において、下方に向けて突出されると共に上方に向けて開口された収納凹部が形成され、
前記収納凹部の底面部にバッテリが固定され、
前記バッテリの電極に接続される接続端子が、該電極に固定された固定端子と、ハーネスが接続されると共に前後方向への大きな引張力を受けたときに該固定端子から離脱される離脱用端子とから構成され、
前端部が前記収納凹部の前壁部側において車体に固定されたブラケットが、前記バッテリに向けて後方へ伸びるように配設され、
前記離脱用端子または前記ハーネスのうち該離脱用端子の近傍部分が、前記ブラケットによって前方へ移動しないように係止されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記フロアパネルに、前記収納凹部の前方位置において、車幅方向に伸びるクロスメンバが接合され、
前記ブラケットの前端部が前記クロスメンバに固定されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記フロアパネルの上面に、前後方向に伸びる左右一対のシートスライドレールが固定され、
前記クロスメンバが、前記フロアパネルの上面に接合されると共に、前記左右一対のシートスライドレール同士を連結している、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記フロアパネルの上面に、前記収納凹部の前方において前後方向に伸びるシートスライドレールが固定され、
前記ブラケットの前端部が、前記シートスライドレールに連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項5】
請求項1において、
フロアパネルの上面に、前記収納凹部の左右に位置するように前後方向に伸びる左右一対の外側シートスライドレールが固定されると共に、該左右一対の外側シートスライドレールの車幅方向内方側において前後方向に伸びる左右一対の内側シートスライドレールが固定され、
前記左右一対の内側シートスライドレールの後端位置が、前記外側シートスライドレールの後端位置よりも前方に設定され、
フロアパネルの上面に、前記収納凹部の前端部付近において、車幅方向に伸びて前記左右一対の外側シートスライドレール同士を連結する連結部材が固定され、
前記内側シートスライドレールの後端部が、前記連結部材に連結されている、
ことを特徴とする車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−74148(P2008−74148A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252738(P2006−252738)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】