説明

車体後部構造

【課題】スピーカの十分な支持剛性が確保できると共に、後面衝突等に伴う衝撃荷重が効率的に吸収できる車体後部構造を提供する。
【解決手段】ホイールハウス7の後部の前側ブラケット取付部10と、リヤピラー5の後側ブラケット取付部4cとの間に架設されてウーファースピーカ31を取付支持するスピーカ取付ブラケット20とを備え、スピーカ取付ブラケット20に上下方向に延在する第1〜第4折曲部22、24、26、28を形成する。スピーカ取付ブラケット20が第1〜第4折曲部22、24、26、28の形成によって剛性が増大して、ウーファースピーカ31の良好な音響再生が可能になる。車体後方から衝撃荷重Pが入力された際に、段階的に第1〜第4折曲部22、24、26、28が折れ曲がり、スピーカ取付ブラケット20が効率的に潰れ、スピーカ取付ブラケット20に影響されることなく車体フレームの圧潰変形による衝撃荷重の吸収が確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関し、特にワゴンタイプの車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には室内環境、特に音響性能の向上を目的とする種々のカーオーディオを備える。
【0003】
最近、カーオーディオは、幅広く多様な領域の音質を楽しもうとするユーザの欲求に相応して展開され、通常のメインスピーカの他に、高音を出力するツィータースピーカや重低音を出力するウーファースピーカを装備したものがある。
【0004】
特に重低音を再生するには大きなウーファースピーカが必要になり、大きなウーファースピーカの設置には搭載スペースを要することから、車室の後部、例えばセダンタイプの車両にあってはリヤシェルフに取り付けられる。このウーファースピーカを取り付けるリヤシェルフは、ウーファースピーカから重低音を再生するときに発生する比較的大きな振動により加振され、リヤシェルフの振動による騒音の発生が懸念される。また、ウーファースピーカの能力を発揮されるためにはウーファースピーカを支持するリヤシェルフの剛性が必要となる。
【0005】
この種のウーファースピーカを取り付けるリヤシェルフの補強構造として例えば特許文献1がある。特許文献1のリヤシェルフの補強構造は、リヤシェルフのウーファースピーカマウント部が形成されるセンタパネルに車幅方向に延在する補強用のフロントメンバ及びリヤメンバを設けると共に、前後方向に延在する第1補強部及び第2補強部を設けてリヤシェルフの剛性を確保している。
【0006】
一方、ワゴンタイプの車両にあっては、セダンタイプの車両と異なり、リヤシェルフを備えないことから、リヤクォータパネルの内側に沿って形成される空間にウーファースピーカを設置するためにホイールハウスとリヤピラーとの間にスピーカ取付ブラケットを架設し、このスピーカ取付ブラケットにウーファースピーカを取り付ける。
【0007】
【特許文献1】特開2007−99132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ワゴンタイプの車両にあっては、車体後部におけるリヤピラーとホイールハウスとの間の空間は、後面衝突等によって後方から衝撃荷重が入力されたときの衝撃荷重吸収ゾーン、即ち車体フレーム等のクラッシュゾーンとして機能する。
【0009】
一方、大迫力の重低音を再生するウーファースピーカは、比較的大径で剛性が大きく、かつ大重量であると共に、ウーファースピーカを支持するスピーカ取付ブラケットに大きな支持剛性が要求される。この剛性の大きなスピーカ取付ブラケットをホイールハウスとリヤピラーとの間に架設するとリヤピラーからホイールハウスに亘る広範囲の剛性が必要以上に強化される。
【0010】
この結果、ホイールハウスとリヤピラー間がスピーカ取付ブラケットによる剛性の増大に伴って、後面衝突等によって後方から衝撃荷重が入力されたときには車体後部の有効的な潰れ変形による衝撃荷重の吸収が制限される。特に圧潰変形により多くの衝撃荷重を吸収する車体フレームのクラッシュストロークが制限されると効率的な衝撃荷重の吸収が困難になることが懸念される。
【0011】
また、ホイールハウス内に燃料タンクに燃料を注油するための燃料供給パイプが配設された車両にあっては、車体後部の変形に伴って剛性が大きく大重量のウーファースピーカを支持するスピーカ取付ブラケットを介してホイールハウスに衝撃荷重が直接的に入力される可能性が大きく、ホイールハウスが変形すると、そのホイールハウスの変形に伴い燃料供給パイプの損傷等による燃料漏れを引き起こす要因となる。
【0012】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、スピーカの十分な支持剛性が確保できると共に、後面衝突等に伴う衝撃荷重が効率的に吸収できる車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する請求項1に記載の車体後部構造の発明は、リヤクォータパネルの内側に沿ってホイールハウスとリヤピラーとの間にスピーカ取付ブラケットを架設し、該スピーカ取付ブラケットにスピーカを取付支持する車体後部構造において、上記ホイールハウスの後部に形成されて上下方向に延在する前側ブラケット取付部と、リヤピラーに形成された後側ブラケット取付部と、該前側ブラケット取付部と後側ブラケット取付部との間に架設されてスピーカを取付支持するスピーカ取付ブラケットとを備え、該スピーカ取付ブラケットは、上記前側ブラケット取付部に結合される上下方向に延在する前部取付部と、該前部取付部の後端に連続形成されて車体前後方向に沿って延在する側面部と、該側面部の後端に上下方向に延在する折曲部を介して前端が連続すると共に平面視状態において車体前後方向に対して傾斜するスピーカマウンティング部が形成されたスピーカ取付面部と、該スピーカ取付面の後端に上下方向に延在する折曲部を介して一体連続形成されて上記後側ブラケット取付部に結合する後部取付部を備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明によると、ホイールハウスの後部に形成された前側ブラケット取付部とリヤピラーに形成され後側ブラケット取付部との間に架設されたスピーカ取付ブラケットが、スピーカ取付面部の両側に形成され上下方向に延在する折曲部によって剛性が増大すると共にスピーカ取付面部の面剛性が向上してスピーカが強固に取付支持され、スピーカから発生する振動によりスピーカ取付ブラケットが加振されることなくスピーカによる良好な音響再生が可能になる。
【0015】
一方、各折曲部が車体前後方向に対する屈曲部となり、車体後方から過剰の衝撃荷重がスピーカ取付ブラケットに入力された際に、各折曲部において座屈変形してスピーカ取付ブラケットが効率的に潰れて車体後部が圧潰するクラッシュストロークが確保され、スピーカ取付ブラケットに影響されることなく車体フレーム等の圧潰変形による衝撃荷重の吸収が確保できる。また、スピーカ取付ブラケットが圧潰するクラッシュストロークが確保され、スピーカがホイールハウスに衝撃的に当接することが回避でき、ホイールハウスの変形が防止できる。
【0016】
上記目的を達成する請求項2に記載の車体後部構造の発明は、リヤクォータパネルの内側に沿ってホイールハウスとリヤピラーとの間にスピーカ取付ブラケットを架設し、該スピーカ取付ブラケットにスピーカを取付支持する車体後部構造において、上記ホイールハウスの後部に形成されて上下方向に延在する前側ブラケット取付部と、リヤピラーに形成された後側ブラケット取付部と、該前側ブラケット取付部と後側ブラケット取付部との間に架設されてスピーカを取付支持するスピーカ取付ブラケットとを備え、該スピーカ取付ブラケットは、上記前側ブラケット取付部に結合される上下方向に延在する前部取付部と、該前部取付部の後端に上下方向に延在する第1折曲部を介して前端が連続すると共に車体後方に移行するに従って漸次リヤクォータパネル側に偏倚するように平面視状態において車体前後方向に対して傾斜する傾斜面部と、該傾斜面部の後端に上下方向に延在する第2屈曲部を介して前端が連続すると共に車体前後方向に沿って延在する側面部と、該側面部の後端に上下方向に延在する第3折曲部を介して前端が連続すると共に車体後方に移行するに従って漸次車室内側に偏倚するように平面視状態において車体前後方向に対して傾斜するスピーカマウンティング部が形成されたスピーカ取付面部と、該スピーカ取付面の後端に上下方向に延在する第4屈曲部を介して上下方向に延在し、上記後部ブラケット取付部に結合する後部取付部とが、一体連続形成されたことを特徴とする。
【0017】
この発明によると、ホイールハウスの後部に形成された前側ブラケット取付部とリヤピラーに形成された後側ブラケット取付部との間に架設されたスピーカ取付ブラケットが上下方向に延在する第1〜第4折曲部の形成によって剛性が増大すると共に、スピーカを支持するスピーカマウンティング部が形成されるスピーカ取付面部の両側に第3折曲部及び第4折曲部が形成されてスピーカ取付面の面剛性が向上する。このスピーカ取付ブラケットの剛性の増大に伴ってスピーカが強固に取付支持され、スピーカが発生する振動によりスピーカ取付ブラケット等が加振されることなく、スピーカによる良好な音響再生が可能になる。
【0018】
一方、第1〜第4折曲部が車体前後方向に対する屈曲部となり、車体後方から過剰の衝撃荷重が入力された際に、前部取付部がホイールハウスの後部に形成された前側ブラケット取付部に強固に結合支持されたスピーカ取付ブラケットは、その後部端面部が前方に押しやられて段階的に第4折曲部及び第3折曲部に沿って折れ曲がり、更に、側面部が前方に押しやられて第1折曲部及び第2折曲部が折れ曲がり、スピーカ取付ブラケットが効率的に潰れて車体後部が圧潰するクラッシュストロークが確保され、スピーカ取付ブラケットに影響されることなく車体フレーム等の圧潰変形による衝撃荷重の吸収が確保できる。また、スピーカ取付ブラケットが順次前方に圧潰してクラッシュストロークが確保され、スピーカがホイールハウスに衝撃的に当接することが回避でき、ホイールハウスの変形が防止できる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の車体後部構造において、上記前側ブラケット取付部及び前部取付部にそれぞれ対応して複数のボルト孔が穿設され、前側ブラケット取付部にリヤクォータパネル側から重合可能な上下方向に延在する基部及び該基部に固設されて上記ボルト孔に挿入可能な複数のボルトを有する取付ブラケットを備え、該取付ブラケットのボルトを上記前側ブラケット取付部及び前部取付部に穿設されたボルト孔に貫入すると共に基部を前側ブラケット取付部に当接し、該ボルトに螺合するナットによって前側ブラケット取付部と前部取付部を締結することを特徴とする。
【0020】
この発明によると、積層された取付ブラケットの基部、前側ブラケット取付部及びスピーカ取付ブラケットが各ボルトとナットによって互いに共締めされてホイールハウスに形成された前側ブラケット取付部の剛性が増大すると共に、前側ブラケット取付部及び前部取付部の結合剛性が増大して前側ブラケット取付部にスピーカ取付ブラケットの前部取付部が強固に結合される。
【0021】
また、スピーカ取付ブラケットの前部取付部を前側ブラケット取付部を取り付ける際、前側ブラケット取付部とリヤクォータパネルとの間隙に取付用ブラケットを挿入し、各ボルトを前側ブラケット取付部のボルト穴に挿入すると共に基部を前側ブラケット取付部に当接させて取付用ブラケットをセットし、前側ブラケット取付部の各ボルト孔から突出する各ボルトに、前部取付部に穿設されたボルト孔を嵌合することで、容易に側ブラケット取付部に対するスピーカ取付ブラケットの位置決めが可能になり、スピーカ取付ブラケットの取付作業の効率化が得られる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造において、上記ホイールハウス内に燃料タンクに連通する燃料供給パイプが配設されたことを特徴とする。
【0023】
この発明によると、車体後方から過剰の衝撃荷重がスピーカ取付ブラケットに入力された際に、スピーカがホイールハウスに衝撃的に当接することが回避でき、ホイールハウスの変形が抑制されるのと相俟って、ホイールハウス内に配設された燃料供給パイプの破損が防止できる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体後部構造において、上記スピーカが、ウーファースピーカであることを特徴とする。
【0025】
この発明は、スピーカが具体的なウーファースピーカであって、比較的大きな剛性を有すると共に、重低音を再生するときに比較的大きな振動が発生するウーファースピーカである場合に特に請求項1〜4の効果が顕著である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、ホイールハウスの後部に形成された前側ブラケット取付部とリヤピラーに形成され後側ブラケット取付部との間に架設されたスピーカ取付ブラケットが、スピーカ取付ブラケットに形成された上下方向に延在する折曲部によって剛性が増大し、スピーカの支持剛性が向上すると共に、スピーカから発生する振動によりスピーカ取付ブラケットが加振されることなくスピーカによる良好な音響再生が可能になる。
【0027】
一方、車体後方から過剰の衝撃荷重がスピーカ取付ブラケットに入力された際に、各折曲部において座屈変形してスピーカ取付ブラケットが効率的に潰れて車体後部が圧潰するクラッシュストロークが確保され、スピーカ取付ブラケットに影響されることなく車体フレーム等の圧潰変形による衝撃荷重の吸収が確保できる。また、スピーカが直接的にホイールハウスに衝撃的に当接することが回避されてホイールハウスの変形が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図1乃至図6を参照して説明する。なお、各図において矢印Fは車体前方方向を示し、矢印OUTは車体幅方向外方向を示し、矢印UPは車体上方向を示す。
【0029】
図1はワゴンタイプの自動車1の側面図であり、図2は図1のI−I線断面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図2のB矢視図、図5は要部分解斜視図である。なお、図4において構成を明確にするためにリヤクォータパネル2を一点鎖線、ホイールエプロン9を二点鎖線、リヤクォータインナパネル11を三点鎖線で示す。
【0030】
自動車1の後部は、車体外側面を形成するリヤクォータパネル2を有し、リヤクォータパネル2の下部には後輪Wを収容するホイールアーチ2aが円弧状に切り欠き形成され、上部にリヤクォータガラス用の開口部2bが形成される。リヤクォータパネル2の後端は図2及び図3に示すように車体内方に屈曲して上下方向に延在する後面部3を有し、この後面部3と、前面部4a及び側面部4bを備えた断面L字状のリヤピラーインナパネル4とにより上下方向に延在する中空状のリヤピラー5を形成する。また、リヤピラーインナパネル4の側面部4bに後側ブラケット取付部4cが形成され、後側ブラケット取付部4cにはウェルディングナット4dが配設される
【0031】
このリヤピラー5はリヤゲート用の後部開口部6の側縁を形成し、リヤピラー5の下端が後部開口部6の下縁に沿って車幅方向に延在する図示しないリヤスカートの端部に連結し、上端が後部開口部6の上縁に沿って車幅方向に延在するリヤレールの端部に連結する。
【0032】
リヤクォータパネル2の車室R内側にはホイールアーチ2aに沿って後輪Wを収納するホイールハウス7が形成される。ホイールハウス7はリヤクォータパネル2のホイールアーチ2aに沿って配設されるリヤアーチインナ8と、このリヤアーチインナ8に結合されたホイールエプロン9によって形成される。ホイールエプロン9は車室R内に膨出する略半割状のドーム形であって、後部にリヤアーチインナ8とホイールエプロン9が重合してリヤクォータパネル2と対向する平板状で上下方向に延在するフランジ状の前側ブラケット取付部10が形成される。この前側ブラケット取付部10に複数のボルト孔10aが穿設される。このホイールエプロン9の上部がリヤクォータパネル2と対向して前後方向に延在するリヤクォータパネルインナ11の下縁に結合される。
【0033】
これら左右のホイールエプロン9及びリヤクォータパネル2の下端に図示しないフロアパネルが架設され、フロアパネルの後端縁がリヤスカートに結合される。また、フロアパネルの下面左右に車体前後方向に沿って延在して後端がリヤスカートに結合される車体骨格部材となる車体フレームが設けられる。
【0034】
リヤアーチインナ8とホイールエプロン9によって形成されたホイールハウス7内にはリヤクォータパネル2に設けられた燃料吸入口とフロアパネルの下面に配設された燃料タンクとを連結する燃料供給パイプ12がホイールエプロン9に沿って配設される。
【0035】
ホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10とリヤピラー5との間は、後面衝突等の衝撃荷重が車体後部入力された際に、車体フレーム等の圧潰変形による効率的な衝撃荷重吸収を確実にするためのクラッシュゾーンを確保する開口部が形成されている。
【0036】
一方、ホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10とリヤピラー5のリヤピラーインナパネル4との間に剛性が大きく比較的大重量のウーファースピーカ31を取り付ける板状のスピーカ取付ブラケット20がリヤクォータパネル2の内側に沿って架設される。
【0037】
スピーカ取付ブラケット20は、ホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10に車室R内方から重合可能な上下方向に延在する平板状の前部取付部21を有する。この前部取付部21の後端に上下方向に延在してリヤクォータパネル2側に屈曲する第1折曲部22を介して前端が連続すると共に平面視状態において後方に移行するに従って漸次リヤクォータパネル2に接近するように車体前後方向に対して傾斜する平板状の傾斜面部23と、この傾斜面部23の後端に上下方向に延在して車体後方に屈曲する第2折曲部24を介して前端が連続すると共にリヤクォータパネル2に沿って車体前後方向に延在する平板状の側面部25と、側面部25の後端に上下方向に延在して車室R内方に屈曲する第3折曲部26を介して前端が連続すると共に車体後方に移行するに従って漸次車室内側に偏倚するように車体前後方向に対して傾斜する平板状のスピーカ取付面部27と、スピーカ取付面部27の後端に上下方向に延在して車体後方に屈曲する第4折曲部28を介して前端が連続すると共に車体前後方向に沿って延在する後端面部29とが一体に連続形成され、後端面部20の後端にリヤピラー5に形成された後側ブラケット取付部4cに重合する後部取付部30が形成される。
【0038】
前部取付部21には、ホイールハウス7の前側ブラケット取付部10に穿設されたボルト孔10aと対応してボルト孔21aが穿設され、かつ前端縁に沿って補強用フランジ21bが折曲形成される。スピーカ取付面部27の中央部に開口部を有するスピーカマウンティング部27aが形成され、スピーカマウンティング部27aに開口部を塞蓋するようにウーファースピーカ31が装着される。また、後部取付部30にはリヤピラー5のブラケット取付部4cに配設されたウェルディングナット4dに対応してボルト孔30aが穿設される。
【0039】
更に、スピーカ取付ブラケット20の前部取付部21を前側ブラケット取付部10に取り付ける取付用ブラケット40を備える。取付用ブラケット40は、図5に示すように前側ブラケット取付部10にリヤクォータパネル2側から重合可能な上下方向に延在する平板状の基部41を有し、基部41に前側ブラケット取付部10に穿設された各ボルト孔10aに対応して固設された複数のボルト、本実施の形態ではウェルディングボルト42が設けられる。
【0040】
このように形成されたスピーカ取付ブラケット20の取り付けにあたり、予めホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10とリヤクォータパネル2との間隙に取付用ブラケット40を挿入し、その各ウェルディングボルト42を前側ブラケット取付部10に穿設されたボルト穴10aにリヤクォータパネル2側から挿入すると共に基部41を前側ブラケット取付部10に当接させて取付用ブラケット40をセットする。
【0041】
この前側ブラケット取付部10に取付ブラケット40をセットした状態で、前側ブラケット取付部10の各ボルト孔10aから車室R側に突出する各ウェルディングボルト42に、スピーカ取付ブラケット20の前部取付部21に穿設されたボルト孔10aを嵌合して前側ブラケット取付部10に対するスピーカブラケット20の位置決めする。更にスピーカ取付ブラケット20の各ボルト孔10aから突出する各ウェルディングボルト42にナット45を螺合して取付ブラケット部40と共にスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21を前側ブラケット取付部10に締結する。
【0042】
このスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21を前側ブラケット取付部10を取り付ける際、前側ブラケット取付部10の各ボルト孔10aから突出する各ウェルディングボルト42を位置決めガイドとすることで、作業スペースが制限された車室Rの後部において比較的大きいスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21が容易に位置決めができ、かつ位置決め固定された各ウェルディングボルト42にナット45を螺合する簡単な作業によりスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21を前側ブラケット取付部10に締結する取付作業の効率化が得られる。
【0043】
また、積層された取付ブラケット40の基部41、ホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10及びスピーカ取付ブラケット20が各ウェルディングボルト42及びナット45によって互いに共締めされてホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10の剛性が増大する。また、前側ブラケット取付部10及びスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21の結合剛性が増大して前側ブラケット取付部10にスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21が強固に結合される。
【0044】
一方、スピーカ取付ブラケット20の後端に形成された後部取付部30をリヤピラー5に形成されたブラケット取付部4cに重合し、後部取付部30に穿設されたボルト孔30aにボルト46を挿入してブラケット取付部4cのウェルディングナット4dに螺合して後端取り付け部30をリヤピラー5に締結する。これによりホイールハウス7とリヤピラー5との間にリヤクォータパネル2に沿って架設されたスピーカ取付ブラケット20によって車室R内に突出することなくウーファースピーカ31が搭載される。
【0045】
このようにしてホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10とリヤピラー5との間に架設されたスピーカ取付ブラケット20は、剛性が確保されたホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10に前端取付部21が強固に締結されると共に、上下方向に延在する第1〜第4折曲部22、24、26、28の形成によってスピーカ取付ブラケット20自体の剛性が増大する。また、ウーファースピーカ31を支持するスピーカマウンティング部27aが形成されるスピーカ取付面27の両側に近接して一対の第3折曲部26及び第4折曲部28が形成されて、ウーファースピーカ31の大きな剛性と相俟ってスピーカ取付面27の面剛性が向上する。
【0046】
これらスピーカ取付ブラケット20の支持剛性及びスピーカ取付ブラケット20それ自体の剛性の増大に伴ってウーファースピーカ31が強固に取付支持され、ウーファースピーカ31から重低音を再生するときに発生する振動によりスピーカ取付ブラケット20等が加振されることなく、スピーカ取付ブラケット20等の振動による騒音の発生が抑制でき、ウーファースピーカ31による良好な音響再生が可能になる。
【0047】
一方、スピーカ取付ブラケット20は、その第1折曲部22が車体前後方向に対する前部取付部21と傾斜面部23の間の屈曲部となり、同様に第2折曲部24、第3折曲部26、第4折曲部28がそれぞれ傾斜面部23と側面部25、側面部25とスピーカ取付面部27、スピーカ取付面部27と後端面29の各車体前後方向に対する屈曲部となり、各第1〜第4の各折曲部22、24、26、28において前後方向の荷重に対する剛性が急変する不連続となり、車体後方から過剰の衝撃荷重Pがスピーカ取付ブラケット20の後端に入力された際に、各第1〜第4の各折曲部22、24、26、28において座屈変形する。
【0048】
次に、後方から追突等の後面衝突において後方から車体に衝撃荷重が作用したときにおける車体後部における衝撃吸収作用について、図6に模擬的に示す作用説明図を参照して説明する。
【0049】
図6(a)は車体後部の通常状態を示す。この通常状態において、例えば後方から走行する車両による追突等の後面衝突等によって後方から車体後部に過剰の衝撃荷重Pが入力されたときには、車体後部の圧潰変形及びフロアパネルの下面左右に車体前後方向に沿って延在する車体フレームの後端から圧潰変形して衝撃荷重を吸収する。
【0050】
この衝撃荷重Pの入力による車体後部の圧潰変形に伴ってリヤピラー5の下部が前方に押しやられ、スピーカ取付ブラケット20の後端に後方から衝撃荷重Pが入力される。この衝撃荷重Pの入力に伴って前部取付部21がホイールハウス7の後部に形成された前側ブラケット取付部10に強固に結合支持されたスピーカ取付ブラケット20は、その後部端面部30が前方に押しやられ、前後方向の剛性が不連続となる第4折曲部28及び第3折曲部26に沿って折れ曲がり、図6(b)に破線27cで示すように第3折曲部26を揺動中心としてスピーカ取付面部27が前方に揺動し、ウーファースピーカ31も破線31cで示すように移動する。
【0051】
更に、衝撃荷重Pによるリヤピラー5等の移動によりスピーカ取付ブラケット20のスピーカ取付面部27等が前方に押しやられると、図6(c)に破線27cで示すように第3折曲部28が更に折曲してスピーカ取付面部27が第3折曲部26を揺動中心として前方に揺動すると共に側面部25が前方に押しやられ、剛性が不連続となる第1折曲部22及び第2折曲部23が折れ曲がり、図6(c)に破線23cで示すように第1折曲部26を揺動中心に傾斜面部23が前方に揺動する。これにより側面部25及びスピーカ取付面部27及びウーファースピーカ31等が破線25c、27c、31cで示すように前方移動し、車体後部が圧潰するクラッシュストロークを確保する。
【0052】
このスピーカ取付ブラケット20の各第1〜第4の各折曲部22、24、26、28の座屈変形によってスピーカ取付ブラケット20が効率的に潰れてスピーカ取付ブラケット20に影響されることなく、車体フレーム等の圧潰変形による衝撃荷重の吸収が確保できる。
【0053】
また、後方からの衝撃荷重Pの入力により、スピーカブラケット20の第3折曲部26、第2折曲部24に沿って折曲してスピーカ取付面部27が第3折曲部26を揺動中心としてスピーカ取付面部27が前方に揺動し、順次段階的に第1折曲部22、第2折曲部24に沿って折曲してスピーカ取付ブラケット20が前方に圧潰するクラッシュストロークを確保することで、ウーファースピーカ31が直接的にホイールハウス7を構成するホイールエプロン9やアーチインナ8に衝撃的に当接することが回避でき、ホイールハウス7の変形が防止でき、ホイールハウス7の変形に伴う燃料供給パイプ12による燃料漏れ等の事態の発生が防止できる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0055】
例えば、取付ブラケット40を省略して前側ブラケット取付部10とスピーカ取付ブラケット20の前部取付部21をボルト結合することもできる。また、スピーカ取付ブラケット20の側面部25やスピーカ取付面部27に補強部材やビード等を付して側面部25やスピーカ取付面部27の剛性を向上させることもできる
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態における車体後部構造を説明する自動車の側面図である。
【図2】同、図1のI−I線断面図である。
【図3】同、図2のA部拡大図である。
【図4】同、図2のB矢視図である。
【図5】同、要部を示す分解斜視図である。
【図6】同、車体後方から衝撃荷重が作用したときの衝撃吸収作用を模擬的に示す作用説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 自動車
2 リヤクォータパネル
2a ホイールアーチ
4 リヤピラーインナパネル
4c 後側ブラケット取付部
4d ウェルディングナット
5 リヤピラー
7 ホイールハウス
8 リヤアーチインナ
9 ホイールエプロン
10 前側ブラケット取付部
10a ボルト孔
12 燃料供給パイプ
20 スピーカ取付ブラケット
21 前部取付部
21a ボルト孔
22 第1折曲部
23 傾斜面部
24 第2折曲部
25 側面部
26 第3折曲部
27 スピーカ取付面部
28 第4折曲部
29 後端面部
30 後部取付部
31 ウーファースピーカ
40 取付用ブラケット
41 基部
42 ウェルディングボルト(ボルト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤクォータパネルの内側に沿ってホイールハウスとリヤピラーとの間にスピーカ取付ブラケットを架設し、該スピーカ取付ブラケットにスピーカを取付支持する車体後部構造において、
上記ホイールハウスの後部に形成されて上下方向に延在する前側ブラケット取付部と、
リヤピラーに形成された後側ブラケット取付部と、
該前側ブラケット取付部と後側ブラケット取付部との間に架設されてスピーカを取付支持するスピーカ取付ブラケットとを備え、
該スピーカ取付ブラケットは、
上記前側ブラケット取付部に結合される上下方向に延在する前部取付部と、
該前部取付部の後端に連続形成されて車体前後方向に沿って延在する側面部と、
該側面部の後端に上下方向に延在する折曲部を介して前端が連続すると共に平面視状態において車体前後方向に対して傾斜するスピーカマウンティング部が形成されたスピーカ取付面部と、
該スピーカ取付面の後端に上下方向に延在する折曲部を介して一体連続形成されて上記後側ブラケット取付部に結合する後部取付部を備えたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
リヤクォータパネルの内側に沿ってホイールハウスとリヤピラーとの間にスピーカ取付ブラケットを架設し、該スピーカ取付ブラケットにスピーカを取付支持する車体後部構造において、
上記ホイールハウスの後部に形成されて上下方向に延在する前側ブラケット取付部と、
リヤピラーに形成された後側ブラケット取付部と、
該前側ブラケット取付部と後側ブラケット取付部との間に架設されてスピーカを取付支持するスピーカ取付ブラケットとを備え、
該スピーカ取付ブラケットは、
上記前側ブラケット取付部に結合される上下方向に延在する前部取付部と、
該前部取付部の後端に上下方向に延在する第1折曲部を介して前端が連続すると共に車体後方に移行するに従って漸次リヤクォータパネル側に偏倚するように平面視状態において車体前後方向に対して傾斜する傾斜面部と、
該傾斜面部の後端に上下方向に延在する第2屈曲部を介して前端が連続すると共に車体前後方向に沿って延在する側面部と、
該側面部の後端に上下方向に延在する第3折曲部を介して前端が連続すると共に車体後方に移行するに従って漸次車室内側に偏倚するように平面視状態において車体前後方向に対して傾斜するスピーカマウンティング部が形成されたスピーカ取付面部と、
該スピーカ取付面の後端に上下方向に延在する第4屈曲部を介して上下方向に延在し、上記後部ブラケット取付部に結合する後部取付部とが、一体連続形成されたことを特徴とする車体後部構造。
【請求項3】
上記前側ブラケット取付部及び前部取付部にそれぞれ対応して複数のボルト孔が穿設され、
前側ブラケット取付部にリヤクォータパネル側から重合可能な上下方向に延在する基部及び該基部に固設されて上記ボルト孔に挿入可能な複数のボルトを有する取付ブラケットを備え、
該取付ブラケットのボルトを上記前側ブラケット取付部及び前部取付部に穿設されたボルト孔に貫入すると共に基部を前側ブラケット取付部に当接し、該ボルトに螺合するナットによって前側ブラケット取付部と前部取付部を締結することを特徴とする請求項1または2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
上記ホイールハウス内に燃料タンクに連通する燃料供給パイプが配設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
上記スピーカが、ウーファースピーカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−125916(P2010−125916A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300651(P2008−300651)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】