説明

車載受信装置

【課題】消費電力を低く抑えつつ、高品質映像と低品質映像とを切り替える際に映像が途切れることを防止することができる車載受信装置20を提供する。
【解決手段】本発明の車載受信装置20は、高品質映像デコーダ24および低品質映像デコーダ25を有し、一方のデコーダからの映像データを外部の再生装置13へ出力している間に、映像データの出力元を他方のデコーダに切り替える場合、当該他方のデコーダを起動して映像データのデコードを開始させた後、所定期間経過後に、映像データの出力元を当該一方のデコーダから当該他方のデコーダに切り替えると共に、当該一方のデコーダを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、ディジタル放送電波を受信して、当該ディジタル放送電波によって送信される映像および音声を出力する車載受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近開始された地上波ディジタル放送では、各放送局に割り当てられた伝送帯域を多数のセグメントに分割し、1つ以上のセグメントで構成された階層を複数同時に伝送する階層伝送が行われる。階層伝送では、階層を構成するセグメント数が多いほど、高品質の映像を伝送できるが、移動中の受信に弱いという欠点がある。そこで、例えば、日本のディジタル放送において準拠しているISDB−T方式では、1チャネルのディジタル放送用帯域を13個のセグメントに分割し、その中の12個のセグメントを使って固定受信装置向けに高品質の映像を提供し、残りの1個のセグメントを使って伝送誤りに対する耐性の高い伝送方式による低品質の映像を提供する。
【0003】
これにより、家庭等に設置される固定受信装置によって、高品質のディジタル放送を受信できると共に、携帯電話やPDA等の移動受信装置によって、低品質ではあるが、移動中でも安定したディジタル放送の受信が可能となる。
【0004】
しかし、移動体に搭載され、携帯電話やPDA等よりも比較的大きな画面を有するナビゲーション装置においてディジタル放送を受信して表示する場合には、移動中であっても可能な限り、12個のセグメントを用いた高品質の映像を表示したいという要望がある。これを実現するために、例えば、特許文献1では、ビットエラー等の受信状況に基づいて、12個のセグメントを用いて放送される高品質映像をデコードして表示するか、1個のセグメントを用いて送信される低品質映像をデコードして表示するかを決定している。
【0005】
【特許文献1】特開2004−166173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高品質映像用のデコーダと低品質映像用のデコーダとは、別個のIC(Integrated Circuit)で実現される場合や、1つのIC内でも異なるブロックとして構成される場合が多い。そのため、一方のデコーダからの出力を表示している場合、他方のデコーダの出力は表示されないことから、低消費電力化の観点から、当該他方のデコーダを停止することが好ましい。しかし、上記特許文献1に開示された技術は、低品質映像をデコードする場合に高品質映像用のデコーダを停止する旨、および、高品質映像をデコードする場合に低品質映像用のデコーダを停止する旨の記載はない。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された技術において、一方のデコーダからの出力を表示している間、他方のデコーダを停止し、切替時に、稼動中のデコーダを停止して、停止中のデコーダを起動するとすれば、消費電力の低減は図られるものの、デコーダの切り替えに起因する映像の途切れが発生する場合がある。
【0008】
例えば、稼動している一方のデコーダを停止し、停止中の他方のデコーダを起動して受信信号のデコードを開始した場合、前回稼動していたデコーダからの出力がバッファ内に存在する間に、他方のデコーダによってデコードされた映像データの出力が開始されれば、映像の途切れが発生しない場合がある。しかし、車両に搭載される受信装置は、小型、軽量、および低価格が求められるため、大容量のメモリを搭載できない場合が多く、他方のデコーダによってデコードされた映像データの出力が開始される前に、前回稼動していたデコーダからの出力がバッファ内から無くなってしまい、映像の途切れが発生してしまう場合がある。
【0009】
特に、高品質の映像を受信して表示している状態から、低品質の映像に切り換える場合、高品質の映像はデータサイズが大きいため、容量の少ないバッファでは、長時間の映像を保持することができない。さらに、低品質映像用のデコーダは、高品質映像用のデコーダよりも扱うデータサイズが小さいものの、高度な誤り訂正や高い圧縮率を実現するため、高品質映像用のデコーダに比べて処理時間がそれほど短くならない。そのため、低品質映像用のデコーダによってデコードされた映像データの出力が開始される前に、高品質映像用のデコーダからの出力がバッファ内から無くなってしまい、映像の途切れが発生してしまう場合ある。
【0010】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、消費電力を低く抑えつつ、高品質映像と低品質映像とを切り替える際に映像が途切れることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の車載受信装置は、映像データを出力する2つのデコーダにおいて、一方のデコーダからの映像データを外部へ出力している間に、映像データの出力元を他方のデコーダに切り替える場合、当該他方のデコーダを起動して映像データのデコードを開始させた後、所定期間経過後に、映像データの外部への出力元を当該一方のデコーダから当該他方のデコーダに切り替えると共に、当該一方のデコーダを停止する。
【0012】
例えば、本発明は、車両に搭載され、ディジタル放送を受信する車載受信装置であって、ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして高品質の映像データを出力する高品質映像デコーダと、ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして低品質の映像データを出力する低品質映像デコーダと、ディジタル放送用電波の受信品質に応じて、高品質映像デコーダまたは低品質映像デコーダのいずれに、ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードする映像デコード処理を実行させるかを判定して、判定結果を出力する判定手段と、高品質映像デコーダまたは低品質映像デコーダから出力された映像データを、映像を表示する表示装置へ出力する出力手段と、判定手段からの判定結果に応じて、高品質映像デコーダまたは低品質映像デコーダに映像デコード処理を実行させると共に、高品質映像デコーダまたは低品質映像デコーダのいずれからの映像データを表示装置へ出力するかを出力手段に指示するデコーダ切替手段とを備え、デコーダ切替手段は、高品質映像デコーダおよび低品質映像デコーダにおいて、一方のデコーダに映像デコード処理を実行させている間に、判定手段が、他方のデコーダに映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力した場合に、他方のデコーダを起動して映像デコード処理を開始させ、予め定められた第1の期間経過後に、表示装置へ出力する映像データの出力元を一方のデコーダから他方のデコーダに切り替える旨を出力手段に指示すると共に、一方のデコーダを停止させることを特徴とする車載受信装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載受信装置によれば、消費電力を低く抑えつつ、高品質映像と低品質映像とを切り替える際に映像が途切れることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る車載受信システム10の構成を例示するシステム構成図である。車載受信システム10は、アンテナ11、表示装置12、再生装置13、および車載受信装置20を備える。車載受信装置20は、復調部21、判定部22、DEMUX23、高品質映像デコーダ24、低品質映像デコーダ25、高品質音声デコーダ26、低品質音声デコーダ27、出力部28、およびデコーダ切替部29を有する。
【0016】
復調部21は、ディジタル放送中継局から送信されるディジタル放送用電波を、アンテナ11を介して受信し、受信した電波を復調し、デインタリーブ、デスクランブル、および誤り検出・訂正等の処理を行って、高品質映像データを含むTS(Transport Stream)パケット、低品質映像データを含むTSパケット、高品質音声データを含むTSパケット、および低品質音声データを含むTSパケットを抽出してDEMUX23へ出力する。
【0017】
本実施形態において、高品質映像データおよび高品質音声データとは、それぞれ、ディジタル放送用電波の12個のセグメントを用いて放送される映像データおよび音声データを示しており、低品質映像データおよび低品質音声データとは、それぞれ、ディジタル放送用電波の1個のセグメントを用いて放送される映像データおよび音声データを示している。
【0018】
また、復調部21は、アンテナ11を介して受信したディジタル放送用電波の受信品質を示すデータを生成して判定部22へ出力する。受信品質を示すデータとは、例えば、受信すべきディジタル放送電波の受信電界強度、受信すべきディジタル放送電波における搬送波の受信レベルに対するノイズレベルであるCN比(Carrier to Noise Ratio)、または復調されたデータのビットエラーレート等を示すデータである。復調部21は、ディジタル放送用電波の受信品質を示すデータを、例えば数百ミリ秒間隔で生成して判定部22へ出力する。
【0019】
DEMUX23は、復調部21から出力されたTSパケットに含まれるPID(Packet IDentifier)を参照して、高品質映像データを含むTSパケットを高品質映像デコーダ24へ、低品質映像データを含むTSパケットを低品質映像デコーダ25へ、高品質音声データを含むTSパケットを高品質音声デコーダ26へ、低品質音声データを含むTSパケットを低品質音声デコーダ27へ、それぞれ分配する。
【0020】
高品質映像デコーダ24および低品質映像デコーダ25は、受信したTSパケットのペイロードを用いてビデオPES(Packetized Elementary Stream)パケットを構築し、構築したビデオPESパケットから映像データを生成して出力バッファ内に保持する。高品質音声デコーダ26および低品質音声デコーダ27は、受信したTSパケットのペイロードを用いてオーディオPESパケットを構築し、構築したオーディオPESパケットから音声データを生成して出力バッファ内に保持する。
【0021】
また、高品質映像デコーダ24、低品質映像デコーダ25、高品質音声デコーダ26、および低品質音声デコーダ27のそれぞれは、構築したPESパケットからPTS(Presentation Time Stamp)を抽出し、抽出したPTSをデコーダ切替部29へ出力する。
【0022】
判定部22は、復調部21から出力されたディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、第1の期間(例えば2秒)経過後の受信品質を予測し、予測した受信品質が、予め定められた閾値であって、映像デコーダを切り替えるための閾値Tha以上である場合に、高品質映像デコーダ24にTSパケットのデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。一方、予測した受信品質が閾値Tha未満である場合に、低品質映像デコーダ25にTSパケットのデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。
【0023】
また、判定部22は、復調部21から出力されたディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、第2の期間(例えば1秒)経過後の受信品質を予測し、予測した受信品質が、予め定められた閾値であって、音声デコーダを切り替えるための閾値Thb以上である場合に、高品質音声デコーダ26にTSパケットのデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。一方、予測した受信品質が閾値Thb未満である場合に、低品質音声デコーダ27にTSパケットのデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。
【0024】
本実施形態において、映像デコーダを切り替えるための閾値Thaは、音声デコーダを切り替えるための閾値Thbよりも、受信品質において低い値に設定されている。これにより、判定部22は、映像においては、より低い受信品質でも高品質映像デコーダ24を選択し、音声においてはより高い受信品質においても低品質音声デコーダ27を選択する。なお、他の例として、閾値Thaは、受信品質において閾値Thbと同一の値に設定されてもよい。
【0025】
ここで、判定部22によって行われる、復調部21から出力されたディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、第1の期間または第2の期間経過後の受信品質を予測する処理について、以下に詳しく説明する。
【0026】
判定部22は、例えば図2に示すように、m個の参照データ224を有する判定テーブル220を予め格納している。それぞれの参照データ224は、ディジタル放送用電波の受信品質の時間的な変動を示すn個の受信品質データ221と、当該受信品質データ221に対応付けられており、当該受信品質データ221に含まれる最後のデータから第1の期間経過後に予想される受信品質を示す第1の予測品質222と、当該受信品質データ221に含まれる最後のデータから第2の期間経過後に予想される受信品質を示す第2の予測品質223とから構成される。
【0027】
本実施形態において、判定テーブル220内のそれぞれの参照データ224は、異なる条件で予め測定されたデータである。例えば、受信品質データ221は、数ミリ秒毎にn回実測されたディジタル放送用電波の受信品質であり、第1の予測品質222は、受信品質データ221のn番目のデータが測定されてから第1の期間が経過したときに実測されたディジタル放送用電波の受信品質であり、第2の予測品質223は、受信品質データ221のn番目のデータが測定されてから第2の期間が経過したときに実測されたディジタル放送用電波の受信品質である。また、他の例として、判定テーブル220内のそれぞれの参照データ224は、シミュレーション等により、異なる条件で算出されたデータを有していてもよい。
【0028】
判定部22は、所定のタイミング毎(例えば数秒毎)に、復調部21から出力された受信品質を示すデータを、出力された順番にn個収集する。そして、収集したn個の受信品質の時間的な変動と最も近い変動を示す受信品質データ221を有する参照データ224を特定する。
【0029】
例えば、判定部22は、下記の数式1を用いて算出した比較値Lが1に最も近い受信品質データ221を有する参照データ224を、収集したn個の受信品質の時間的な変動と最も近い変動を示す受信品質データ221を有する参照データ224として特定する。
【0030】
【数1】

ここで、Lはm番目の比較値を示し、xは復調部21から収集したi番目の受信品質を示し、amiはm番目の参照データ224内のi番目の受信品質データ221を示す。
【0031】
そして、判定部22は、特定した参照データ224に含まれる第1の予測品質222を、第1の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質の予測値として抽出し、抽出した予測値と閾値Thaとを比較して、いずれのデコーダに映像をデコードさせるかを判定し、判定結果をデコーダ切替部29へ出力する。
【0032】
また、判定部22は、特定した参照データ224に含まれる第2の予測品質223を、第2の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質の予測値として抽出し、抽出した予測値と閾値Thbとを比較して、いずれのデコーダに音声をデコードさせるかを判定し、判定結果をデコーダ切替部29へ出力する。
【0033】
デコーダ切替部29は、判定部22からの判定結果に応じて、高品質映像デコーダ24、低品質映像デコーダ25、高品質音声デコーダ26、および低品質音声デコーダ27の起動または停止を制御すると共に、表示装置12へ出力する映像データの出力元のデコーダ、および、再生装置13へ出力する音声データの出力元のデコーダを出力部28に指示する。
【0034】
より詳細には、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24および低品質映像デコーダ25において、一方のデコーダに映像のデコード処理を実行させている間に、判定部22から、他方のデコーダに映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を受信した場合、当該他方のデコーダを起動して映像デコード処理を開始させ、予め定められた第1の期間経過後に、表示装置12へ出力する映像データの出力元を、当該一方のデコーダから当該他方のデコーダに切り替える旨を出力部28に指示して、当該一方のデコーダを停止させる。
【0035】
また、デコーダ切替部29は、映像のデコードを実行するデコーダを切り替える場合、稼動中のデコーダから出力されたPTSの値から、第1の期間経過後のPTSの値を算出し、第1の期間経過後に、算出したPTSの値に対応する映像データから、表示装置12へ出力する映像データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28に指示する。
【0036】
音声データに関しては、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26および低品質音声デコーダ27において、一方のデコーダに音声のデコード処理を実行させている間に、判定部22から、他方のデコーダに音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を受信した場合、当該他方のデコーダを起動して音声デコード処理を開始させ、予め定められた第2の期間経過後に、再生装置13へ出力する音声データの出力元を、当該一方のデコーダから当該他方のデコーダに切り替える旨を出力部28に指示して、当該一方のデコーダを停止させる。
【0037】
また、デコーダ切替部29は、音声のデコードを実行するデコーダを切り替える場合、稼動中のデコーダから出力されたPTSの値から、第2の期間経過後のPTSの値を算出し、第2の期間経過後に、算出したPTSの値に対応する音声データから、再生装置13へ出力する音声データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28に指示する。
【0038】
出力部28は、デコーダ切替部29からの指示に応じて、高品質映像デコーダ24または低品質映像デコーダ25のいずれかの出力バッファ内の映像データを表示装置12へ出力する。デコーダを切り替える旨と共にPTSの値をデコーダ切替部29から指示された場合、出力部28は、切り替え先のデコーダの出力バッファ内の映像データを参照して、指示されたPTSの値に対応する映像データから表示装置12へ出力することにより、映像データの出力元のデコーダを切り替える。
【0039】
音声データについても同様に、出力部28は、デコーダ切替部29からの指示に応じて、高品質音声デコーダ26または低品質音声デコーダ27のいずれかの出力バッファ内の音声データを再生装置13へ出力する。切り替え先のデコーダに関する情報と共にPTSの値をデコーダ切替部29から指示された場合、出力部28は、切り替え先のデコーダの出力バッファ内の音声データを参照して、指示されたPTSの値に対応する音声データから再生装置13へ出力することにより、音声データの出力元のデコーダを切り替える。
【0040】
図3は、高品質映像から低品質映像に切り替える場合の各映像デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。本タイミングチャートは、高品質映像デコーダ24が稼動中であり、低品質映像デコーダ25が停止中であり、高品質映像デコーダ24からの映像データが表示装置12に表示されている状態から開始する。
【0041】
判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、時点30以降、映像データをデコードさせるデコーダを低品質映像デコーダ25と判定する。判定部22からの判定結果に応じて、デコーダ切替部29は、停止中の低品質映像デコーダ25を起動させる。そして、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24から受信したPTSの値に基づいて、第1の期間経過後のPTSの値を算出して、第1の期間が経過するまで待つ。
【0042】
そして、低品質映像デコーダ25を起動後、第1の期間が経過した時点31において、デコーダ切替部29は、算出したPTSと共に、映像データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28へ出力し、高品質映像デコーダ24を停止させる。出力部28は、低品質映像デコーダ25の出力バッファ内の映像データを参照して、指示されたPTSの値に対応する映像データから、出力元のデコーダを切り替える。
【0043】
図4は、低品質映像から高品質映像に切り替える場合の各映像デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。本タイミングチャートは、低品質映像デコーダ25が稼動中であり、高品質映像デコーダ24が停止中であり、低品質映像デコーダ25からの映像データが表示装置12に表示されている状態から開始する。
【0044】
判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、時点32以降、映像データをデコードさせるデコーダを高品質映像デコーダ24と判定する。判定部22からの判定結果に応じて、デコーダ切替部29は、停止中の高品質映像デコーダ24を起動させる。そして、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25から受信したPTSの値に基づいて、第1の期間経過後のPTSの値を算出して、第1の期間が経過するまで待つ。
【0045】
そして、高品質映像デコーダ24を起動後、第1の期間が経過した時点33において、デコーダ切替部29は、算出したPTSと共に、映像データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28へ出力し、低品質映像デコーダ25を停止させる。出力部28は、高品質映像デコーダ24の出力バッファ内の映像データを参照して、指示されたPTSの値に対応する映像データから、出力元のデコーダを切り替える。
【0046】
図5は、高品質音声から低品質音声に切り替える場合の各音声デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。本タイミングチャートは、高品質音声デコーダ26が稼動中であり、低品質音声デコーダ27が停止中であり、高品質音声デコーダ26からの音声データが再生装置13で再生されている状態から開始する。
【0047】
判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、時点34以降、音声データをデコードさせるデコーダを低品質音声デコーダ27と判定する。判定部22からの判定結果に応じて、デコーダ切替部29は、停止中の低品質音声デコーダ27を起動させる。そして、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26から受信したPTSの値に基づいて、第2の期間経過後のPTSの値を算出して、第2の期間が経過するまで待つ。
【0048】
そして、低品質音声デコーダ27を起動後、第2の期間が経過した時点35において、デコーダ切替部29は、算出したPTSと共に、音声データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28へ出力し、高品質音声デコーダ26を停止させる。出力部28は、低品質音声デコーダ27の出力バッファ内の音声データを参照して、指示されたPTSの値に対応する音声データから、出力元のデコーダを切り替える。
【0049】
図6は、低品質音声から高品質音声に切り替える場合の各音声デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。本タイミングチャートは、低品質音声デコーダ27が稼動中であり、高品質音声デコーダ26が停止中であり、低品質音声デコーダ27からの音声データが再生装置13で再生されている状態から開始する。
【0050】
判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、時点36以降、音声データをデコードさせるデコーダを高品質音声デコーダ26と判定する。判定部22からの判定結果に応じて、デコーダ切替部29は、停止中の高品質音声デコーダ26を起動させる。そして、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27から受信したPTSの値に基づいて、第2の期間経過後のPTSの値を算出して、第2の期間が経過するまで待つ。
【0051】
そして、高品質音声デコーダ26を起動後、第2の期間が経過した時点37において、デコーダ切替部29は、算出したPTSと共に、音声データの出力元のデコーダを切り替える旨を出力部28へ出力し、低品質音声デコーダ27を停止させる。出力部28は、高品質音声デコーダ26の出力バッファ内の音声データを参照して、指示されたPTSの値に対応する音声データから、出力元のデコーダを切り替える。
【0052】
図7は、車載受信装置20によって実行される映像切替処理を例示するフローチャートである。例えば電源が投入される等の所定のタイミングで、車載受信装置20は、本フローチャートに示す映像切替処理を開始する。
【0053】
まず、判定部22は、復調部21から出力されたディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、第1の期間経過後の受信品質を予測し、予測した受信品質が予め定められた閾値Tha以上であるか否かを判定する(S100)。予測した受信品質が閾値Tha以上である場合(S100:Yes)、判定部22は、高品質映像デコーダ24にデコードさせる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24を起動させてデコードを開始させる(S101)。高品質映像デコーダ24は、高品質映像のデコードを実行し、映像データを出力バッファ内に保持すると共に、デコードしたPTSをデコーダ切替部29へ出力する。
【0054】
次に、判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質が閾値Tha未満となったか否かを判定する(S102)。受信品質が閾値Tha以上である場合(S102:No)、判定部22は、受信品質が閾値Tha未満となるまでステップS102を繰り返す。受信品質が閾値Tha未満となった場合(S102:Yes)、判定部22は、低品質映像デコーダ25にデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25を起動させてデコードを開始させる(S103)。
【0055】
次に、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24から出力されたPTSの値より、第1の期間経過後のPTSの値を算出する(S104)。そして、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25を起動してから第1の期間が経過したか否かを判定する(S105)。低品質映像デコーダ25を起動してから第1の期間が経過していない場合(S105:No)、デコーダ切替部29は、第1の期間が経過するまでステップS105を繰り返す。
【0056】
低品質映像デコーダ25を起動してから第1の期間が経過した場合(S105:Yes)、デコーダ切替部29は、映像データの出力元を低品質映像デコーダ25に切り替える旨と共に、算出したPTSの値を出力部28へ送る。出力部28は、低品質映像デコーダ25の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在するか否かを判定する(S106)。
【0057】
低品質映像デコーダ25の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在する場合(S106:Yes)、出力部28は、当該映像データより、低品質映像デコーダ25からの映像データを表示装置12へ出力する(S107)。そして、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24を停止させ(S109)、判定部22は、ステップS112に示す処理を実行する。
【0058】
低品質映像デコーダ25の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在しない場合(S106:No)、出力部28は、デコーダ切替部29から送られたPTSから最も近いタイミングで表示される映像データより、低品質映像デコーダ25からの映像データを表示装置12へ出力し(S108)、デコーダ切替部29は、ステップS109に示した処理を実行する。
【0059】
ステップS100において、予測した受信品質が閾値Tha未満である場合(S100:No)、判定部22は、低品質映像デコーダ25にデコードさせる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25を起動させてデコードを開始させる(S111)。低品質映像デコーダ25は、高品質映像のデコードを実行し、映像データを出力バッファ内に保持すると共に、デコードしたPTSをデコーダ切替部29へ出力する。
【0060】
次に、判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質が閾値Tha以上となったか否かを判定する(S112)。受信品質が閾値Tha未満である場合(S112:No)、判定部22は、受信品質が閾値Tha以上となるまでステップS112を繰り返す。受信品質が閾値Tha以上となった場合(S112:Yes)、判定部22は、高品質映像デコーダ24にデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24を起動させてデコードを開始させる(S113)。
【0061】
次に、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25から出力されたPTSの値より、第1の期間経過後のPTSの値を算出する(S114)。そして、デコーダ切替部29は、高品質映像デコーダ24を起動してから第1の期間が経過したか否かを判定する(S115)。高品質映像デコーダ24を起動してから第1の期間が経過していない場合(S115:No)、デコーダ切替部29は、第1の期間が経過するまでステップS115を繰り返す。
【0062】
高品質映像デコーダ24を起動してから第1の期間が経過した場合(S115:Yes)、デコーダ切替部29は、映像データの出力元を高品質映像デコーダ24に切り替える旨と共に、算出したPTSの値を出力部28へ送る。出力部28は、高品質映像デコーダ24の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在するか否かを判定する(S116)。
【0063】
高品質映像デコーダ24の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在する場合(S116:Yes)、出力部28は、当該映像データより、高品質映像デコーダ24からの映像データを表示装置12へ出力する(S117)。そして、デコーダ切替部29は、低品質映像デコーダ25を停止させ(S119)、判定部22は、ステップS102に示した処理を実行する。
【0064】
高品質映像デコーダ24の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する映像データが存在しない場合(S116:No)、出力部28は、デコーダ切替部29から送られたPTSから最も近いタイミングで表示される映像データより、高品質映像デコーダ24からの映像データを表示装置12へ出力し(S118)、デコーダ切替部29は、ステップS119に示した処理を実行する。
【0065】
図8は、車載受信装置20によって実行される音声切替処理を例示するフローチャートである。例えば電源が投入される等の所定のタイミングで、車載受信装置20は、本フローチャートに示す音声切替処理を開始する。
【0066】
まず、判定部22は、復調部21から出力されたディジタル放送用電波の受信品質に基づいて、第2の期間経過後の受信品質を予測し、予測した受信品質が予め定められた閾値Thb以上であるか否かを判定する(S200)。予測した受信品質が閾値Thb以上である場合(S200:Yes)、判定部22は、高品質音声デコーダ26にデコードさせる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26を起動させてデコードを開始させる(S201)。高品質音声デコーダ26は、高品質音声のデコードを実行し、音声データを出力バッファ内に保持すると共に、デコードしたPTSをデコーダ切替部29へ出力する。
【0067】
次に、判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質が閾値Thb未満となったか否かを判定する(S202)。受信品質が閾値Thb以上である場合(S202:No)、判定部22は、受信品質が閾値Thb未満となるまでステップS202を繰り返す。受信品質が閾値Thb未満となった場合(S202:Yes)、判定部22は、低品質音声デコーダ27にデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27を起動させてデコードを開始させる(S203)。
【0068】
次に、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26から出力されたPTSの値より、第2の期間経過後のPTSの値を算出する(S204)。そして、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27を起動してから第2の期間が経過したか否かを判定する(S205)。低品質音声デコーダ27を起動してから第2の期間が経過していない場合(S205:No)、デコーダ切替部29は、第2の期間が経過するまでステップS205を繰り返す。
【0069】
低品質音声デコーダ27を起動してから第2の期間が経過した場合(S205:Yes)、デコーダ切替部29は、音声データの出力元を低品質音声デコーダ27に切り替える旨と共に、算出したPTSの値を出力部28へ送る。出力部28は、低品質音声デコーダ27の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在するか否かを判定する(S206)。
【0070】
低品質音声デコーダ27の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在する場合(S206:Yes)、出力部28は、当該音声データより、低品質音声デコーダ27からの音声データを再生装置13へ出力する(S207)。そして、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26を停止させ(S209)、判定部22は、ステップS212に示す処理を実行する。
【0071】
低品質音声デコーダ27の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在しない場合(S206:No)、出力部28は、デコーダ切替部29から送られたPTSから最も近いタイミングで再生される音声データより、低品質音声デコーダ27からの音声データを再生装置13へ出力し(S208)、デコーダ切替部29は、ステップS209に示した処理を実行する。
【0072】
ステップS200において、予測した受信品質が閾値Thb未満である場合(S200:No)、判定部22は、低品質音声デコーダ27にデコードさせる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27を起動させてデコードを開始させる(S211)。低品質音声デコーダ27は、高品質音声のデコードを実行し、音声データを出力バッファ内に保持すると共に、デコードしたPTSをデコーダ切替部29へ出力する。
【0073】
次に、判定部22は、ディジタル放送用電波の受信品質が閾値Thb以上となったか否かを判定する(S212)。受信品質が閾値Thb未満である場合(S212:No)、判定部22は、受信品質が閾値Thb以上となるまでステップS212を繰り返す。受信品質が閾値Thb以上となった場合(S212:Yes)、判定部22は、高品質音声デコーダ26にデコードを実行させる旨の判定結果をデコーダ切替部29に出力する。そして、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26を起動させてデコードを開始させる(S213)。
【0074】
次に、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27から出力されたPTSの値より、第2の期間経過後のPTSの値を算出する(S214)。そして、デコーダ切替部29は、高品質音声デコーダ26を起動してから第2の期間が経過したか否かを判定する(S215)。高品質音声デコーダ26を起動してから第2の期間が経過していない場合(S215:No)、デコーダ切替部29は、第2の期間が経過するまでステップS215を繰り返す。
【0075】
高品質音声デコーダ26を起動してから第2の期間が経過した場合(S215:Yes)、デコーダ切替部29は、音声データの出力元を高品質音声デコーダ26に切り替える旨と共に、算出したPTSの値を出力部28へ送る。出力部28は、高品質音声デコーダ26の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在するか否かを判定する(S216)。
【0076】
高品質音声デコーダ26の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在する場合(S216:Yes)、出力部28は、当該音声データより、高品質音声デコーダ26からの音声データを再生装置13へ出力する(S217)。そして、デコーダ切替部29は、低品質音声デコーダ27を停止させ(S219)、判定部22は、ステップS202に示した処理を実行する。
【0077】
高品質音声デコーダ26の出力バッファ内に、デコーダ切替部29から送られたPTSに対応する音声データが存在しない場合(S216:No)、出力部28は、デコーダ切替部29から送られたPTSから最も近いタイミングで再生される音声データより、高品質音声デコーダ26からの音声データを再生装置13へ出力し(S218)、デコーダ切替部29は、ステップS219に示した処理を実行する。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明した。
【0079】
上記説明から明らかなように、本発明の車載受信装置20によれば、消費電力を低く抑えつつ、高品質映像と低品質映像とを切り替える際に映像が途切れることを防止することができる。
【0080】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0081】
例えば、上記した実施形態では、映像データの切り替えと音声データの切り替えについて説明したが、データ放送を受信して表示する場合にも本発明を適用することができる。例えば、車載受信装置20は、ディジタル放送用電波の受信品質に応じて、12個のセグメントを用いて送信されるデータ放送の受信と、1個のセグメントを用いて送信されるデータ放送の受信とを切り替える機能を有し、一方のデータ放送を表示中に他方のデータ放送に切り替える場合、他方のデータ放送のデコードが終了して表示可能となるまで、切り替え前のデータ放送を表示する。
【0082】
これにより、例えば、図9に示すように、映像表示領域41と、いわゆるL字表示のデータ放送表示領域42とを有する画面表示40において、映像表示領域41に12個のセグメントを用いた高品質映像が表示され、データ放送表示領域42に12個のセグメントを用いたデータ放送が表示されている状態で、ディジタル放送用電波の受信品質が低下した場合に、映像表示領域41に表示される映像は、第1の期間経過後に1個のセグメントを用いた低品質映像に切り替わるが、データ放送表示領域42に表示されるデータ放送は、カルーセル伝送により1個のセグメントを用いたデータ放送が送信されるまでは12個のセグメントを用いたデータ放送がそのまま表示される。
【0083】
また、受信品質がさらに悪化し、1個のセグメントを用いた低品質映像も正常に表示できなくなった場合には、例えば図10に示すように、画面表示40の全面をデータ放送表示領域46とするようにしてもよい。これにより、映像のちらつき等により閲覧者に不快な思いをさせることを防止することができる。
【0084】
また、上記した実施形態において、車載受信装置20は、ディジタル放送用電波の受信品質に応じて、映像データおよび音声データを、高品質なものと低品質なものとで随時切り替えたが、他の形態として、音声データについては、音声データをデコードさせるデコーダとして、低品質音声デコーダ27が一旦選択された場合には、デコーダ切替部29は、車両のエンジンが停止するまで、ディジタル放送用電波の受信品質によらず、音声データをデコードさせるデコーダを、低品質音声デコーダ27に固定するようにしてもよい。
【0085】
運転者は、重要な情報であっても運転中は画面を見ることが難しいため、音声で情報を取得する場合が多いが、音声の品質が頻繁に変わると、音声が聞き取り難くなる場合がある。これに対して、ディジタル放送用電波の受信品質によらず、音声データの出力元を低品質音声デコーダ27に固定することにより、運転者にとってより聞き取りやすい音声情報を提供することができる。
【0086】
また、上記した実施形態において、判定部22は、所定期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質を予測し、予測した受信品質に応じて映像デコーダまたは音声デコーダを切り替えるか否かを判定したが、他の形態として、所定の時間間隔毎に、そのときのディジタル放送用電波の受信品質と閾値とを比較することにより、映像デコーダまたは音声デコーダを切り替えるか否かを判定するようにしてもよい。
【0087】
また、上記した実施形態において、デコーダ切替部29は、停止中のデコーダを起動してから所定期間経過後に、切り替えるデータのPTSと共に、デコーダを切り替える旨を出力部28に指示し、出力部28は、デコーダ切替部29からの指示を受け付けてから、切り替え先のデコーダのバッファ内に指示されたPTSに対応するデータが存在するか否かを判定したが、本発明はこれに限られない。他の例として、デコーダ切替部29は、停止中のデコーダを起動した後に、所定期間の経過を待つことなく、デコーダを切り替える旨を出力部28に指示し、出力部28は、切り替え先のデコーダのバッファ内に稼動中のデコーダからのデータに対応するデータが格納された時点で、デコーダを切り替えるようにしてもよい。この場合、出力部28は、デコーダの切り替えを実施した旨をデコーダ切替部29に通知し、デコーダ切替部29は、その通知を受けて、切り替え元のデコーダを停止させる。
【0088】
また、上記した実施形態において、判定部22は、判定テーブル220を用いて所定期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質を予測したが、本発明はこれに限られない。例えば、判定部22は、ニューラルネットワークに、ディジタル放送用電波の受信品質の実測値を学習させることにより、ある時点から所定期間先の受信品質を予測するようにしてもよい。また、判定部22は、受信中のディジタル放送用電波の品質を用いて、予測遺伝的アルゴリズム、タブーサーチ法、最小二乗法、線形計画法、回帰分析、または統計的手法等によって、ある時点から所定期間先の受信品質を予測するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係る車載受信システム10の構成を例示するシステム構成図である。
【図2】判定部22が有する判定テーブル220のデータ構造を例示する図である。
【図3】高品質映像から低品質映像に切り替える場合の各映像デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】低品質映像から高品質映像に切り替える場合の各映像デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】高品質音声から低品質音声に切り替える場合の各音声デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】低品質音声から高品質音声に切り替える場合の各音声デコーダの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】車載受信装置20によって実行される映像切替処理を例示するフローチャートである。
【図8】車載受信装置20によって実行される音声切替処理を例示するフローチャートである。
【図9】データ放送が表示される画面40を例示する概念図である。
【図10】データ放送が表示される画面40の他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0090】
10・・・車載受信システム、11・・・アンテナ、12・・・表示装置、13・・・再生装置、20・・・車載受信装置、21・・・復調部、22・・・判定部、220・・・判定テーブル、221・・・受信品質データ、222・・・第1の予測品質、223・・・第2の予測品質、224・・・参照データ、23・・・DEMUX、24・・・高品質映像デコーダ、25・・・低品質映像デコーダ、26・・・高品質音声デコーダ、27・・・低品質音声デコーダ、28・・・出力部、29・・・デコーダ切替部、30・・・時点、31・・・時点、32・・・時点、33・・・時点、34・・・時点、35・・・時点、36・・・時点、37・・・時点、40・・・画面表示、41・・・映像表示領域、42・・・データ放送表示領域、45・・・画面表示、46・・・データ放送表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ディジタル放送を受信する車載受信装置であって、
ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして高品質の映像データを出力する高品質映像デコーダと、
ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして低品質の映像データを出力する低品質映像デコーダと、
ディジタル放送用電波の受信品質に応じて、前記高品質映像デコーダまたは前記低品質映像デコーダのいずれに、ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードする映像デコード処理を実行させるかを判定して、判定結果を出力する判定手段と、
前記高品質映像デコーダまたは前記低品質映像デコーダから出力された映像データを、映像を表示する表示装置へ出力する出力手段と、
前記判定手段からの判定結果に応じて、前記高品質映像デコーダまたは前記低品質映像デコーダに前記映像デコード処理を実行させると共に、前記高品質映像デコーダまたは前記低品質映像デコーダのいずれからの映像データを前記表示装置へ出力するかを前記出力手段に指示するデコーダ切替手段と
を備え、
前記デコーダ切替手段は、
前記高品質映像デコーダおよび前記低品質映像デコーダにおいて、一方のデコーダに前記映像デコード処理を実行させている間に、前記判定手段が、他方のデコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力した場合に、前記他方のデコーダを起動して前記映像デコード処理を開始させ、予め定められた第1の期間経過後に、前記表示装置へ出力する映像データの出力元を前記一方のデコーダから前記他方のデコーダに切り替える旨を前記出力手段に指示すると共に、前記一方のデコーダを停止させること
を特徴とする車載受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載受信装置であって、
前記高品質映像デコーダおよび前記低品質映像デコーダは、
前記映像デコード処理においてデコードしたPTS(Presentation Time Stamp)を前記デコーダ切替手段および前記出力手段へ出力し、
前記デコーダ切替手段は、
前記高品質映像デコーダおよび前記低品質映像デコーダにおいて、一方のデコーダに前記映像デコード処理を実行させている間に、前記判定手段が、他方のデコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力した場合に、前記一方のデコーダから出力されたPTSの値から、前記第1の期間経過後のPTSの値を算出し、前記第1の期間経過後に、算出したPTSの値に対応する映像データから、前記他方のデコーダからの映像データを前記表示装置へ出力する旨を前記出力手段に指示し、
前記出力手段は、
前記デコーダ切替手段から指示されたPTSの値に対応する映像データから、前記表示装置へ出力する映像データの出力元を切り替えることを特徴とする車載受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
ディジタル放送用電波の受信品質が、予め定められた第1の閾値以上である場合に、前記高品質映像デコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力し、
ディジタル放送用電波の受信品質が、前記第1の閾値未満である場合に、前記低品質映像デコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力すること特徴とする車載受信装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
受信中のディジタル放送用電波の品質に応じて、前記第1の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質を予測し、予測した受信品質が、予め定められた第1の閾値以上である場合に、前記高品質映像デコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力し、
前記予測した受信品質が、前記第1の閾値未満である場合に、前記低品質映像デコーダに前記映像デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力すること特徴とする車載受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
ディジタル放送用電波の受信品質の時間的な変動を示すデータである第1のデータと、当該第1のデータに対応付けられており、当該第1のデータに含まれる最後のデータから前記第1の期間経過後に予想される受信品質を示すデータである第2のデータとから構成される映像用参照データを複数格納する映像用判定テーブルを予め有しており、
受信中のディジタル放送用電波の品質の時間的な変動を測定し、前記映像用判定テーブルを参照して、測定した受信品質の時間的な変動との相関が最も高い第1のデータを有する映像用参照データを特定し、特定した映像用参照データに含まれる第2のデータを、前記第1の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質として予測すること
を特徴とする車載受信装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の車載受信装置であって、
ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして高品質の音声データを出力する高品質音声デコーダと、
ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードして低品質の音声データを出力する低品質音声デコーダと
をさらに備え、
前記判定手段は、さらに、
ディジタル放送用電波の受信品質に応じて、前記高品質音声デコーダまたは前記低品質音声デコーダのいずれに、ディジタル放送用電波に含まれる信号をデコードする音声デコード処理を実行させるかを判定して、判定結果を出力し、
前記出力手段は、さらに、
前記高品質音声デコーダまたは前記低品質音声デコーダから出力された音声データを、音声を再生する再生装置へ出力し、
前記デコーダ切替手段は、さらに、
前記高品質音声デコーダおよび前記低品質音声デコーダにおいて、一方のデコーダに前記音声デコード処理を実行させている間に、前記判定手段が、他方のデコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力した場合に、前記他方のデコーダを起動して前記音声デコード処理を開始させ、予め定められた第2の期間経過後に、前記再生装置へ出力する音声データの出力元を前記一方のデコーダから前記他方のデコーダに切り替える旨を前記切替手段に指示すると共に、前記一方のデコーダを停止させること
を特徴とする車載受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車載受信装置であって、
前記高品質音声デコーダおよび前記低品質音声デコーダは、
前記音声デコード処理においてデコードしたPTSを前記デコーダ切替手段および前記出力手段へ出力し、
前記デコーダ切替手段は、
前記高品質音声デコーダおよび前記低品質音声デコーダにおいて、一方のデコーダに前記音声デコード処理を実行させている間に、前記判定手段が、他方のデコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力した場合に、前記一方のデコーダから出力されたPTSの値から、前記第2の期間経過後のPTSの値を算出し、前記第2の期間経過後に、算出したPTSの値に対応する音声データから、前記他方のデコーダからの音声データを前記再生装置へ出力する旨を前記出力手段に指示し、
前記出力手段は、
前記デコーダ切替手段から指示されたPTSの値に対応する音声データから、前記再生装置へ出力する音声データの出力元を切り替えることを特徴とする車載受信装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
ディジタル放送用電波の受信品質が、予め定められた第2の閾値以上である場合に、前記高品質音声デコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力し、
ディジタル放送用電波の受信品質が、前記第2の閾値未満である場合に、前記低品質音声デコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力すること特徴とする車載受信装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
受信中のディジタル放送用電波の品質に応じて、前記第2の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質を予測し、予測した受信品質が、予め定められた第2の閾値以上である場合に、前記高品質音声デコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力し、
前記予測した受信品質が、前記予め定められた第2の閾値未満である場合に、前記低品質音声デコーダに前記音声デコード処理を実行させる旨の判定結果を出力すること特徴とする車載受信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車載受信装置であって、
前記判定手段は、
ディジタル放送用電波の受信品質の時間的な変動を示すデータである第3のデータと、当該第3のデータに対応付けられており、当該第3のデータに含まれる最後のデータから前記第2の期間経過後に予想される受信品質を示すデータである第4のデータとから構成される音声用参照データを複数格納する音声用判定テーブルを予め有しており、
受信中のディジタル放送用電波の品質の時間的な変動を測定し、前記音声用判定テーブルを参照して、測定した受信品質の時間的な変動との相関が最も高い第3のデータを有する音声用参照データを特定し、特定した音声用参照データに含まれる第4のデータを、前記第2の期間経過後のディジタル放送用電波の受信品質として予測すること
を特徴とする車載受信装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の車載受信装置であって、
前記第1の閾値に対応する受信品質は、前記第2の閾値に対応する受信品質よりも、受信品質が低いことを特徴とする車載受信装置。
【請求項12】
請求項6から11のいずれか一項に記載の車載受信装置であって、
前記デコーダ切替手段は、
音声データをデコードさせるデコーダを前記高品質音声デコーダから前記低品質音声デコーダに切り替えた場合、前記車両のエンジンが停止するまで、音声データをデコードさせるデコーダを前記高品質音声デコーダに切り替えないことを特徴とする車載受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−113139(P2008−113139A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293998(P2006−293998)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【出願人】(501348139)株式会社 エイチ・シー・エックス (86)
【Fターム(参考)】