車載用レーダ装置
【課題】先行車との車間距離を目標車間距離に維持すべく自車の制駆動力を制御する機能を備えるACCシステムにおいて、S字カーブ等においても、先行車を適確に捕捉しえるようにする。
【解決手段】ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段23、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段25、前方車との距離および角度を検出する手段21、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段(図8のS8)、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段26、を備える。
【解決手段】ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段23、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段25、前方車との距離および角度を検出する手段21、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段(図8のS8)、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段26、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ACC(Adaptive Cruise Control)システムに好適な車載用レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ACCシステムにおいては、先行車に対して所定の車間距離を保つように自車の駆動力や制動力を制御する機能(追従制御)が設定され、先行車の捕捉および車間距離の計測などに車載用レーダ装置が用いられる。特許文献1においては、車載レーダ装置を用いて自車から先行車までの車間距離などを検出する装置が開示される。
【特許文献1】特許第3089864号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ACCシステムに好適な車載用レーダ装置については、先行車の捕捉性を高めるため、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車の位置を検出する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えるものがある(特願2006−79066号)。
【0004】
このような車載レーダ装置においては、自車のヨーレートと車速とから自車進行路(進行方向の中心線)が推定され、この中心線に水平方向の車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状が設定される。車線幅が一律に与えられると、旋回走行時においては、自車の進行方向の中心線が曲率に沿って湾曲するため、その接線と垂直に交わる方向の車線幅が進行方向の中心線に与える水平方向の車線幅より小さくなる。つまり、旋回走行時の車線形状については、実際の車線幅よりも小さくなってしまう。そのため、S字カーブ等において、自車が追走するべき先行車を誤認しやすく、追従制御により、不必要な加減速を繰り返しかねない、という不具合が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を解決するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車載用レーダ装置において、自車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車の車速を検出する手段、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車との距離および角度を検出する手段、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明においては、自車の進行方向の中心線に水平方向の車線幅を与えることにより自車進行路の車線形状が設定される。車線形状は、自車進行路の曲率と前方車との距離に応じた変更が水平方向の車線幅に加えられるため、旋回走行時においても、実際の走行路の車線幅との整合が取れる。そのため、自車が追従するべき先行車を適確に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1において、10はトラックに搭載されるACCシステムの電子制御ユニット(ACC-ECU)であり、先行車との実車間距離を目標車間距離に維持するように車両の制駆動力を制御する車間距離制御系11(追従走行制御系)を備える。12はACCシステム10の操作系であり、メインスイッチのほか、各種機能スイッチが配置される。13はACCシステムの表示系であり、各種のACC情報を表示する。14は車間警報ブザーである。
【0009】
15はエンジンの電子制御ユニット(エンジン-ECU)であり、16はリターダの電子制御ユニット(リターダ-ECU)であり、17はトランスミッションの電子制御ユニット(T/M-ECU)であり、18は前方車との実車間距離を検出する車間距離レーダ装置であり、19は車両の重心点回りの角速度(ヨーレート)を検出するヨーレートセンサであり、これらはACC-ECUの車間距離制御系11にCANバスを介して接続される。
【0010】
エンジン-ECU15は、ACC-ECU11からの車速指令に基づいて車速制御系が燃料噴射制御系の燃料噴射量およびエキゾーストブレーキのON-OFFを制御する。T/M-ECU17は、ACC-ECU11から車速指令に基づいて車両の変速(クラッチの断続およびトランスミッションのギヤシフト)を制御する。リターダ-ECU16は、ACC-ECU11からの車速指令に基づいてリターダのON-OFFを制御する。
【0011】
図2は、レーダ装置18の構成に説明する概要図であり、レーダ(ミリ波の送信部および受信部を備える)の受信情報から前方車の位置(距離,角度)情報を検出する手段21、自車の車速とヨーレートとから自車進行路(進行方向の中心線の曲率)を推定する手段23、自車進行路の中心線に与える水平方向の車線幅(設定値)を格納する手段24、自車進行路の中心線と車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段25、前方車の位置情報に基づいて自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を先行車(追従制御対象)と確定しつつその先行車の位置情報をACCユニット11へ出力する手段26、を備える。27は自車の車速を検出する車速センサである。
【0012】
図3は、車線形状の説明図であり、自車のヨーレートと車速とから自車進行路(進行方向の中心線)が推定され、この中心線(図4、参照)に水平方向の車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状(網掛領域)が設定される。左は直進走行時の車線形状であり、右は旋回走行時の車線形状である。車線幅(設定値)は、直進路の場合、進行方向に一律の設定となる。図示の旋回走行時においては、進行方向の中心線が湾曲するため、その接線と垂直に交わる方向の車線幅(図示せず)が水平方向の車線幅より小さくなるので、実際の走行路の車線幅との整合を取る上から、車線幅の変更手段(図のS9、参照)が備えられる。
【0013】
車線幅の変更手段においては、図5の表のような車線幅変更マップが設定され、曲率半径(推定曲率の逆数)および前方車位置情報の距離に基づいて、自車進行路の中心線に与える水平方向の車線幅を変更するようになっている。図5において、各車線幅の中間値は、補間処理により求められる。直進路の車線幅として例示される数値が格納手段24の設定値に該当する。
【0014】
図4は、先行車確定方法の説明図であり、先行車は車線形状と前方車位置情報とから確定される、図4においては、3台の前方車がレーダにより捕捉され、○の2台の前方車については、車線形状上になく、先行車候補とならない。●の1台の前方車については、車線形状上にあるため、先行車候補となり、●の先行車候補は、1台のみのため、これが自車の追従走行すべき対象の先行車と確定されるのである。この先行車の位置情報はACCシステム11へ出力され、車間距離制御系において、先行車との実車間距離を目標車間距離に保つように車両の制駆動力が制御される。
【0015】
車線幅の変更手段(図のS9、参照)により、自車進行路の曲率半径および前方車位置情報の距離に応じて車線幅が変更されるので、旋回走行時においても、実際の走行路の車線幅との整合が取れ、自車が追従するべき先行車を適確に捕捉できるのである。
【0016】
前方車位置情報は、自車のヨーイングや前方車のヨーイングにより、前方車の車体側面がミリ波の反射範囲に入ると、前方車の反射幅の中心が変位することになり、実際の前方車の位置と誤差を生じるため、その誤差を補正する手段30(図2、参照)が備えられる、
補正手段30においては、図6の表のような前方車位置情報補正マップが設定され、レーダの前方車位置情報(角度と距離)に対応するゲイン(補正係数)により、レーダの前方車角度情報を補正するようになっている。補正後の前方車角度情報=レーダの前方車角度情報×ゲイン、となる。図6において、各ゲインの中間値は、補間処理により求められる。
【0017】
図2において、32はヨーレートに乗るノイズ(高周波成分)を除去(平滑化)する第1フィルタであり、33は同じく第2フィルタであり、34は第2フィルタ処理後のヨーレートの変動を演算する手段である。第1フィルタ32は、演算手段35からの入力(ヨーレートの変動の演算値)に基づいて、車両の操舵に伴うヨーレートの変動(低周波成分)の発生を判定すると、時定数を直進時よりも相対的に小さく補正する手段(図示せず)を備える。第2フィルタ33の時定数は、所定の固定値に設定される。
【0018】
第1フィルタにおいては、第2フィルタ処理後のヨーレートから車両の操舵に伴う変動(低周波成分)が判定されると、第1フィルタ32の時定数が小さく補正される。このため、第1フィルタ32の応答遅れが小さくなり、S字カーブ等においても、先行車を適確に捕捉することができる。第1フィルタ32の直進時の時定数は、ヨーレートに乗るノイズの除去率を高めるため、大きく設定することが可能となるのである。
【0019】
第2フィルタ33の時定数を小さく設定することにより、ヨーレートの変動を感度よく判定可能となり、第1フィルタ32の時定数の補正(調整)が早まるため、S字カーブ等においても、第1フィルタ処理後のヨーレートと車速の検出信号とから自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。第1フィルタ32のみの場合、直進時の時定数の設定が難しい。つまり、第2フィルタ33を加えることにより、第1フィルタ32において、ヨーレートの変動を感度よく判定しつつ、応答遅れも最小限に抑えることができる。また、第1フィルタ32の時定数は、第2フィルタ33の時定数が固定値のため、これを基準に設定しやすくなる。
【0020】
31はヨーレートセンサ19の検出誤差(物理的な動作遅れを含む)を補正する手段である。ヨーレートセンサ19の検出誤差は、ヨーレートの変動と比例的な関係があり、この例においては、図7の表のようなヨーレート補正マップが設定され、曲率半径(推定曲率の逆数)に対応するゲイン(補正係数)により、ヨーレートセンサ19の検出誤差を第2フィルタ33の応答遅れと共に補正するようになっている。補正後のヨーレート=ヨーレートセンサの出力値×ゲイン、となる。図7において、各ゲインの中間値は、補間処理により求められる。
【0021】
ヨーレートセンサ19の検出誤差は、物理的な動作遅れ(応答遅れ)を含むので、直進走行中は、ノイズ(エンジン振動などによる高周波成分)に紛れる程度の検出誤差も、自車が旋回走行へ移行すると、これに伴って大きくなる。補正手段31において、その誤差分が第2フィルタ33の応答遅れと共に取り除かれるため、自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。
【0022】
図8は、レータ装置の制御内容を説明するフローチャートであり、所定の周期毎に実行される。S1においては、車速の検出信号を読み込む。S2においては、ヨーレートセンサ19の検出信号を読み込む。S3においては、レーダの前方車位置情報を読み込む。
【0023】
S4においては、車速センサ27の検出情報と第2フィルタ処理後のヨーレートとから自車進行路の中心線の曲率を推定する。S5においては、図7のヨーレート補正マップに基づいて、曲率半径(S4の推定曲率の逆数)に対応するゲインにより、ヨーレートセンサの検出誤差を第2フィルタの応答遅れと共に補正する。S6においては、ヨーレート変動の演算値に基づいて、第1フィルタの時定数を調整(補正)するのである。
【0024】
S7においては、車速の検出信号と第1フィルタ処理後のヨーレートとから自車進行方向の中心線の曲率を推定する。S8においては、図6の前方車位置情報補正マップに基づいて、前方車位置情報(角度,距離)に対応するゲインにより、前方車角度情報を補正する。
【0025】
S9においては、自車進行方向の中心線に車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状を設定する。S10においては、図5の車線幅変更マップに基づいて、車線幅を自車進行路の曲率半径および前方車位置情報の距離に応じた変更を車線形状の車線幅に加える。S11においては、車線形状および前方車位置情報(前方車距離情報,補正後の前方車角度情報)に基づいて、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定するのである。
【0026】
このような制御により、S字カーブ等においても、自車が追走するべき先行車を適確に捕捉することができる。そのため、ACCシステムにおいて、信頼性の高い追従制御を実現することができる。
【0027】
第2フィルタ33により、第1フィルタ32において、ヨーレートの変動を感度よく判定しつつ、応答遅れも最小限に抑えられる。第2フィルタ33の応答遅れについては、ヨーレートセンサ19の検出誤差と共に補正されるため、S字カーブ等においても、自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。
【0028】
前方車位置情報は、自車のヨーイングや前方車のヨーイングに原因する誤差が過不足なく補正されるため、S字カーブ等においても、車線幅の変更手段(図のS9)との相乗効果により、先行車を精度よく確定することができる。
【0029】
尚、以上の説明では、実施形態をACCシステムを用いて説明したが、本発明はこれに限らず、先行車を認識する装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ACCシステムの構成を説明する概要図である
【図2】レーダ装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】車線形状の説明図である。
【図4】先行車の確定方法の説明図である。
【図5】車線幅変更マップを例示する表である。
【図6】前方車位置情報補正マップを例示する表である。
【図7】ヨーレート補正マップを例示する表である。
【図8】レーダ装置の制御内容を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10 ACCシステム
11 車間距離制御系
15 エンジン-ECU
17 T/M-ECU
18 レータ装置
19 ヨーレートセンサ
21 前方車情報検出手段
23 自車進行路推定手段
24 車線幅設定手段
25 車線形状設定手段
26 先行車判定手段
27 車速センサ
31 ヨーレート補正手段
32 第1フィルタ
33 第2フィルタ
34 ヨーレート変動演算手段
35 自車進行路曲率推定手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、ACC(Adaptive Cruise Control)システムに好適な車載用レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ACCシステムにおいては、先行車に対して所定の車間距離を保つように自車の駆動力や制動力を制御する機能(追従制御)が設定され、先行車の捕捉および車間距離の計測などに車載用レーダ装置が用いられる。特許文献1においては、車載レーダ装置を用いて自車から先行車までの車間距離などを検出する装置が開示される。
【特許文献1】特許第3089864号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ACCシステムに好適な車載用レーダ装置については、先行車の捕捉性を高めるため、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車の位置を検出する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えるものがある(特願2006−79066号)。
【0004】
このような車載レーダ装置においては、自車のヨーレートと車速とから自車進行路(進行方向の中心線)が推定され、この中心線に水平方向の車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状が設定される。車線幅が一律に与えられると、旋回走行時においては、自車の進行方向の中心線が曲率に沿って湾曲するため、その接線と垂直に交わる方向の車線幅が進行方向の中心線に与える水平方向の車線幅より小さくなる。つまり、旋回走行時の車線形状については、実際の車線幅よりも小さくなってしまう。そのため、S字カーブ等において、自車が追走するべき先行車を誤認しやすく、追従制御により、不必要な加減速を繰り返しかねない、という不具合が考えられる。
【0005】
この発明は、このような不具合を解決するための有効な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、車載用レーダ装置において、自車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車の車速を検出する手段、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車との距離および角度を検出する手段、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1の発明においては、自車の進行方向の中心線に水平方向の車線幅を与えることにより自車進行路の車線形状が設定される。車線形状は、自車進行路の曲率と前方車との距離に応じた変更が水平方向の車線幅に加えられるため、旋回走行時においても、実際の走行路の車線幅との整合が取れる。そのため、自車が追従するべき先行車を適確に捕捉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1において、10はトラックに搭載されるACCシステムの電子制御ユニット(ACC-ECU)であり、先行車との実車間距離を目標車間距離に維持するように車両の制駆動力を制御する車間距離制御系11(追従走行制御系)を備える。12はACCシステム10の操作系であり、メインスイッチのほか、各種機能スイッチが配置される。13はACCシステムの表示系であり、各種のACC情報を表示する。14は車間警報ブザーである。
【0009】
15はエンジンの電子制御ユニット(エンジン-ECU)であり、16はリターダの電子制御ユニット(リターダ-ECU)であり、17はトランスミッションの電子制御ユニット(T/M-ECU)であり、18は前方車との実車間距離を検出する車間距離レーダ装置であり、19は車両の重心点回りの角速度(ヨーレート)を検出するヨーレートセンサであり、これらはACC-ECUの車間距離制御系11にCANバスを介して接続される。
【0010】
エンジン-ECU15は、ACC-ECU11からの車速指令に基づいて車速制御系が燃料噴射制御系の燃料噴射量およびエキゾーストブレーキのON-OFFを制御する。T/M-ECU17は、ACC-ECU11から車速指令に基づいて車両の変速(クラッチの断続およびトランスミッションのギヤシフト)を制御する。リターダ-ECU16は、ACC-ECU11からの車速指令に基づいてリターダのON-OFFを制御する。
【0011】
図2は、レーダ装置18の構成に説明する概要図であり、レーダ(ミリ波の送信部および受信部を備える)の受信情報から前方車の位置(距離,角度)情報を検出する手段21、自車の車速とヨーレートとから自車進行路(進行方向の中心線の曲率)を推定する手段23、自車進行路の中心線に与える水平方向の車線幅(設定値)を格納する手段24、自車進行路の中心線と車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段25、前方車の位置情報に基づいて自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を先行車(追従制御対象)と確定しつつその先行車の位置情報をACCユニット11へ出力する手段26、を備える。27は自車の車速を検出する車速センサである。
【0012】
図3は、車線形状の説明図であり、自車のヨーレートと車速とから自車進行路(進行方向の中心線)が推定され、この中心線(図4、参照)に水平方向の車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状(網掛領域)が設定される。左は直進走行時の車線形状であり、右は旋回走行時の車線形状である。車線幅(設定値)は、直進路の場合、進行方向に一律の設定となる。図示の旋回走行時においては、進行方向の中心線が湾曲するため、その接線と垂直に交わる方向の車線幅(図示せず)が水平方向の車線幅より小さくなるので、実際の走行路の車線幅との整合を取る上から、車線幅の変更手段(図のS9、参照)が備えられる。
【0013】
車線幅の変更手段においては、図5の表のような車線幅変更マップが設定され、曲率半径(推定曲率の逆数)および前方車位置情報の距離に基づいて、自車進行路の中心線に与える水平方向の車線幅を変更するようになっている。図5において、各車線幅の中間値は、補間処理により求められる。直進路の車線幅として例示される数値が格納手段24の設定値に該当する。
【0014】
図4は、先行車確定方法の説明図であり、先行車は車線形状と前方車位置情報とから確定される、図4においては、3台の前方車がレーダにより捕捉され、○の2台の前方車については、車線形状上になく、先行車候補とならない。●の1台の前方車については、車線形状上にあるため、先行車候補となり、●の先行車候補は、1台のみのため、これが自車の追従走行すべき対象の先行車と確定されるのである。この先行車の位置情報はACCシステム11へ出力され、車間距離制御系において、先行車との実車間距離を目標車間距離に保つように車両の制駆動力が制御される。
【0015】
車線幅の変更手段(図のS9、参照)により、自車進行路の曲率半径および前方車位置情報の距離に応じて車線幅が変更されるので、旋回走行時においても、実際の走行路の車線幅との整合が取れ、自車が追従するべき先行車を適確に捕捉できるのである。
【0016】
前方車位置情報は、自車のヨーイングや前方車のヨーイングにより、前方車の車体側面がミリ波の反射範囲に入ると、前方車の反射幅の中心が変位することになり、実際の前方車の位置と誤差を生じるため、その誤差を補正する手段30(図2、参照)が備えられる、
補正手段30においては、図6の表のような前方車位置情報補正マップが設定され、レーダの前方車位置情報(角度と距離)に対応するゲイン(補正係数)により、レーダの前方車角度情報を補正するようになっている。補正後の前方車角度情報=レーダの前方車角度情報×ゲイン、となる。図6において、各ゲインの中間値は、補間処理により求められる。
【0017】
図2において、32はヨーレートに乗るノイズ(高周波成分)を除去(平滑化)する第1フィルタであり、33は同じく第2フィルタであり、34は第2フィルタ処理後のヨーレートの変動を演算する手段である。第1フィルタ32は、演算手段35からの入力(ヨーレートの変動の演算値)に基づいて、車両の操舵に伴うヨーレートの変動(低周波成分)の発生を判定すると、時定数を直進時よりも相対的に小さく補正する手段(図示せず)を備える。第2フィルタ33の時定数は、所定の固定値に設定される。
【0018】
第1フィルタにおいては、第2フィルタ処理後のヨーレートから車両の操舵に伴う変動(低周波成分)が判定されると、第1フィルタ32の時定数が小さく補正される。このため、第1フィルタ32の応答遅れが小さくなり、S字カーブ等においても、先行車を適確に捕捉することができる。第1フィルタ32の直進時の時定数は、ヨーレートに乗るノイズの除去率を高めるため、大きく設定することが可能となるのである。
【0019】
第2フィルタ33の時定数を小さく設定することにより、ヨーレートの変動を感度よく判定可能となり、第1フィルタ32の時定数の補正(調整)が早まるため、S字カーブ等においても、第1フィルタ処理後のヨーレートと車速の検出信号とから自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。第1フィルタ32のみの場合、直進時の時定数の設定が難しい。つまり、第2フィルタ33を加えることにより、第1フィルタ32において、ヨーレートの変動を感度よく判定しつつ、応答遅れも最小限に抑えることができる。また、第1フィルタ32の時定数は、第2フィルタ33の時定数が固定値のため、これを基準に設定しやすくなる。
【0020】
31はヨーレートセンサ19の検出誤差(物理的な動作遅れを含む)を補正する手段である。ヨーレートセンサ19の検出誤差は、ヨーレートの変動と比例的な関係があり、この例においては、図7の表のようなヨーレート補正マップが設定され、曲率半径(推定曲率の逆数)に対応するゲイン(補正係数)により、ヨーレートセンサ19の検出誤差を第2フィルタ33の応答遅れと共に補正するようになっている。補正後のヨーレート=ヨーレートセンサの出力値×ゲイン、となる。図7において、各ゲインの中間値は、補間処理により求められる。
【0021】
ヨーレートセンサ19の検出誤差は、物理的な動作遅れ(応答遅れ)を含むので、直進走行中は、ノイズ(エンジン振動などによる高周波成分)に紛れる程度の検出誤差も、自車が旋回走行へ移行すると、これに伴って大きくなる。補正手段31において、その誤差分が第2フィルタ33の応答遅れと共に取り除かれるため、自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。
【0022】
図8は、レータ装置の制御内容を説明するフローチャートであり、所定の周期毎に実行される。S1においては、車速の検出信号を読み込む。S2においては、ヨーレートセンサ19の検出信号を読み込む。S3においては、レーダの前方車位置情報を読み込む。
【0023】
S4においては、車速センサ27の検出情報と第2フィルタ処理後のヨーレートとから自車進行路の中心線の曲率を推定する。S5においては、図7のヨーレート補正マップに基づいて、曲率半径(S4の推定曲率の逆数)に対応するゲインにより、ヨーレートセンサの検出誤差を第2フィルタの応答遅れと共に補正する。S6においては、ヨーレート変動の演算値に基づいて、第1フィルタの時定数を調整(補正)するのである。
【0024】
S7においては、車速の検出信号と第1フィルタ処理後のヨーレートとから自車進行方向の中心線の曲率を推定する。S8においては、図6の前方車位置情報補正マップに基づいて、前方車位置情報(角度,距離)に対応するゲインにより、前方車角度情報を補正する。
【0025】
S9においては、自車進行方向の中心線に車線幅を与えることにより、自車進行路の車線形状を設定する。S10においては、図5の車線幅変更マップに基づいて、車線幅を自車進行路の曲率半径および前方車位置情報の距離に応じた変更を車線形状の車線幅に加える。S11においては、車線形状および前方車位置情報(前方車距離情報,補正後の前方車角度情報)に基づいて、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定するのである。
【0026】
このような制御により、S字カーブ等においても、自車が追走するべき先行車を適確に捕捉することができる。そのため、ACCシステムにおいて、信頼性の高い追従制御を実現することができる。
【0027】
第2フィルタ33により、第1フィルタ32において、ヨーレートの変動を感度よく判定しつつ、応答遅れも最小限に抑えられる。第2フィルタ33の応答遅れについては、ヨーレートセンサ19の検出誤差と共に補正されるため、S字カーブ等においても、自車進行路の曲率を精度よく推定することができる。
【0028】
前方車位置情報は、自車のヨーイングや前方車のヨーイングに原因する誤差が過不足なく補正されるため、S字カーブ等においても、車線幅の変更手段(図のS9)との相乗効果により、先行車を精度よく確定することができる。
【0029】
尚、以上の説明では、実施形態をACCシステムを用いて説明したが、本発明はこれに限らず、先行車を認識する装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ACCシステムの構成を説明する概要図である
【図2】レーダ装置の構成を説明するブロック図である。
【図3】車線形状の説明図である。
【図4】先行車の確定方法の説明図である。
【図5】車線幅変更マップを例示する表である。
【図6】前方車位置情報補正マップを例示する表である。
【図7】ヨーレート補正マップを例示する表である。
【図8】レーダ装置の制御内容を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
10 ACCシステム
11 車間距離制御系
15 エンジン-ECU
17 T/M-ECU
18 レータ装置
19 ヨーレートセンサ
21 前方車情報検出手段
23 自車進行路推定手段
24 車線幅設定手段
25 車線形状設定手段
26 先行車判定手段
27 車速センサ
31 ヨーレート補正手段
32 第1フィルタ
33 第2フィルタ
34 ヨーレート変動演算手段
35 自車進行路曲率推定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車の車速を検出する手段、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車との距離および角度を検出する手段、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えることを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項1】
自車のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、自車の車速を検出する手段、ヨーレートの検出信号と車速の検出信号とから自車の進行方向に沿う中心線の曲率を推定する手段、自車の進行方向に沿う曲率とその中心線に与える水平方向の車線幅とから自車進行路の車線形状を設定する手段、前方車との距離および角度を検出する手段、自車の進行方向に沿う曲率と前方車との距離に応じて車線形状の水平方向の車線幅を変更する手段、自車進行路の車線形状上の最も近い前方車を所定の車間距離を保つべき対象の先行車と確定する手段、を備えることを特徴とする車載用レーダ装置。
【図8】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2008−232948(P2008−232948A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75423(P2007−75423)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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