説明

車載用電子制御装置の放熱装置

【課題】電子制御装置における回路基板上に散在して配置されている発熱を伴う電子部品を、効率的に冷却することができる車載用電子制御装置の放熱装置を提供する。
【解決手段】放熱を必要する少なくとも1つ以上の電子部品2を有する電子回路と、この電子回路を実装する回路基板1と、この回路基板1を装着し、前記電子部品の熱を、外気へ放熱するための筐体3とを備えた車載用電子制御装置の放熱装置において、空気流れ方向Aに沿って幅が平行で、前記電子部品2がその下流側に対応するような第1の流路を形成する第1の放熱部材4と、この第1の放熱部材4の上流側に連結し空気流れ方向に沿って幅が漸次狭くなる第2の流路とを形成する第2の放熱部材5とを、前記筐体3の反回路基板側がわ面に一体に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置の放熱装置に係り、更に詳しくは、車載用の電子制御装置の放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、特に半導体チップを冷却する冷却装置として、導入流路の断面積を徐々に狭くして、その下流側を冷却流路部に接続し、この冷却流路部の上流側に、発熱部品を対応して配置したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−125366号公報(段落0027−0029.図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用の電子制御装置は、多機能化と性能向上のために、発熱を伴う電子部品がその回路基板上に散在して配置されている。
【0005】
一方、車載用の電子制御装置は、特に、近年はエンジンルーム内への実装が求められている背景から、気密性が必要であり、電子部品に直接外気を導くための開口部を設けることは困難である。また、小型軽量化、低コスト化の要求を満たすためには、強制空冷のためのファンを設置することも困難である。
【0006】
したがって、電子制御装置内の発熱を伴う電子部品の熱を、筐体へ一度伝えた後に、筐体から外気へ放熱するという手段をとる必要があり、筐体から外気への熱伝達率の向上が必要であるが、前述した回路基板上に散在して配置されている発熱を伴う電子部品を、効率的に冷却する方策が要求されている。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、電子制御装置における回路基板上に散在して配置されている発熱を伴う電子部品を、効率的に冷却することができる車載用電子制御装置の放熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、放熱を必要する少なくとも1つ以上の電子部品を有する電子回路と、この電子回路を実装する回路基板と、この回路基板を装着し、前記電子部品の熱を、外気へ放熱するための筐体とを備えた車載用電子制御装置の放熱装置において、空気流れ方向に沿って幅が平行で、前記電子部品がその下流側に対応するような第1の流路を形成する第1の放熱部材と、この第1の放熱部材の上流側に連結し空気流れ方向に沿って幅が漸次狭くなる第2の流路とを形成する第2の放熱部材とを、前記筐体の反回路基板側がわ面に一体に形成したことを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第2の流路の上流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って平行な第3の流路を形成する第3の放熱部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
さらに、第3の発明は、第2の発明において、前記第1の流路の下流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って幅が漸次広くなる第4の流路を形成する第4の放熱部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記放熱部材は、板状体であることを特徴とする。
【0012】
さらに、第5の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記放熱部材は、断面が半円筒体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車載用の電子制御装置の放熱効率を向上させることができるので、電子制御装置をより高い環境温度下、および/または、より大きな発熱条件下まで使用することができる。その結果、車載用の電子制御装置の作動条件が拡大し、その性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の実施の形態を図面を用いて説明する。 図1及び図2は、本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第1の実施の形態を示すもので、図1は平面図、図2はその正面図である。これらの図において、1は回路基板、2は、回路基板1上に実装された電子回路に接続する電子部品で、この電子部品は発熱体であり、放熱の対象部品となる。この電子部品2は電気回路の構成上、回路基板1上に散在して実装されている。この例では、図1の左右方向の両側に位置する電子部品2は、空気の流れ方向Aに対して回路基板1上の下流側に、また、図1の左右方向の中間に位置する電子部品2は、空気の流れ方向Aに対して回路基板1上の上流側に、配置されている。
【0015】
3は筐体で、この筐体の裏面側には、回路基板1がシート又は接着材等の熱伝導体16を介してねじにより固定されている。筐体3上には、放熱を必要とする電子部品のための放熱部材が一体に形成されている。この成形は、例えばアルミダイキャストあるいはアルミダイキャストを機械加工することで製作できる。
【0016】
放熱部材はこの例では、隣り合う2つを一組として、外気が通流できる流路を形成する平坦な板状の放熱フィンで構成されている。具体的には、図1に示す回路基板1の左右方向及び空気流れ方向Aの中間部に位置する電子部品2に対しては、空気流れ方向Aに沿って幅が平行で、電子部品2がその下流側に対応するような第1の流路を形成する第1の放熱フィン4,4と、この第1の放熱部材4,4の上流側に連結し空気流れ方向Aに沿って幅が漸次狭くなる第2の流路とを形成する第2の放熱フィン5,5と、この第2の放熱フィン5,5の上流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って平行な第3の流路を形成する第3の放熱フィン6,6と、第1の放熱フィン4,4の下流側部に、その幅が空気流れ方向Aに沿って幅が漸次広くなる第4の流路を形成する第4の放熱フィン7,7と、この第4の放熱フィン7,7の下流側部に、その幅が空気流れ方向Aに沿って平行な第5の流路を形成する第5の放熱フィン8,8とを、筐体3の反回路基板側がわ面に一体に形成している。
【0017】
また、図1に示す回路基板1の左右方向の両側及び空気流れ方向Aの下流部に位置する電子部品2に対しては、空気流れ方向Aに沿って幅が平行で、電子部品2がその下流側に対応するような第1の流路を形成する第1の放熱フィン9,9と、この第1の放熱フィン9,9の上流側に連結し空気流れ方向Aに沿って幅が漸次狭くなる第2の流路とを形成する第2の放熱フィン10,10と、この第2の放熱フィン10,10の上流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って平行な第3の流路を形成する第3の放熱フィン11,11とを、筐体3の反回路基板側がわ面に一体に形成している。
【0018】
上述した第3の放熱フィン6,6及び第3の放熱フィン11,11は、それぞれ第2の放熱フィン5,5及び第2の放熱フィン10,10によって形成される第2の流路への空気の導入を良好にさせる機能を有している。また、第4の放熱フィン7,7及び第5の放熱フィン8,8によって、流路幅を下流に向かうに従って再び広く形成しているのは、流路幅の狭い部位が続くことによって、逆に空気の流通抵抗となり、流速が低下することを防止するためのものである。つまり、発熱部品2の熱を受熱した空気を速やかに下流側に移動させる機能を発揮させるためのものである。
【0019】
上述した筐体1は、自動車に搭載されるが、その際、放熱フィンの方向が、自動車に搭載時に期待できる空気等の流体の流れ方向Aと略同方向となるように配置される。
【0020】
次に、上述した本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第1の実施の形態を、図1及び図2を用いて説明する。
搭載した自動車の走行により、空気等の流体の流れが、図1に示すようにA方向(図1の下から上方向)に発生する。この空気流は、第3の放熱フィン6,6及び11,11間の第3の流路にそれぞれ導入された後、第2の放熱フィン5,5及び10,10間の空気流れ方向Aに沿って幅が漸次狭くなる第2の流路で、その速度が増加されて、第1の放熱フィン4,4及び9,9間の空気流れ方向Aに沿って幅が平行で、電子部品2が対応して位置する第1の流路を通過し、筐体3の上壁面に伝達されている電子部品からの熱を、吸収し下流側に流出する。これにより、電子部品の熱を最も受ける筐体3の部位を効率的にかつ積極的に冷却し、放熱効率を向上する。
【0021】
上述したように、放熱フィンの形状は、一組の放熱フィンのペアが形成する流路の中心を通り、流路を形成するフィンと並行な仮想的な面に対して対称となっている。このように、フィン形状を流路の中心を通る面に対して対称とすることで、流路形状が非対称な場合よりも流路幅変更前後の幅の差をより大きくできるため、より大きな流速を得られる。また、流路を形成する2つの放熱フィン周りの流速が最大となる位置を一致させることができるため、非対称な流路による冷却効果の向上よりも大きな冷却効果を得られる。その結果、電子制御装置をより高い環境温度下、および/または、より大きな発熱条件下まで使用することができ、車載用の電子制御装置の作動条件が拡大し、その性能を向上させることができる。
【0022】
なお、上述の実施の形態においては、第1の放熱フィン4,4及び9,9によって形成される第1の流路毎の最大流速位置と発熱を生じる電子部品2の位置とが一致するように、電子部品の位置または流路形状を決定し、流路毎の電子部品2を1個とすることで、その熱源を分散できると同時に、電子部品2を最大流速位置と一致させることで各電子部品2の熱を効率よく放熱できるように構成したが、2つ以上の電子部品2を1つの流路内の最大流速位置に対応配置するように構成することも可能である。
【0023】
図3は、本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第2の実施の形態を示す平面図である。この図において、図1及び図2の符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態は、図1及び図2に示す実施の形態における第2の放熱フィン5,5と第3の放熱フィン6,6、及び第2の放熱フィン10,10と第3の放熱フィン11,11とを、それぞれ内側に湾曲する放熱フィン12,12に構成したものである。
【0024】
この実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様に、空気の取込性がさらに良好になり、電子部品の熱を最も受ける筐体3の部位を効率的にかつ積極的に冷却し、放熱効率を向上させることができる。その結果、電子制御装置をより高い環境温度下、および/または、より大きな発熱条件下まで使用することができ、車載用の電子制御装置の作動条件が拡大し、その性能を向上させることができる。
【0025】
なお、上述の実施の形態においては、第1の放熱フィン4,4及び9,9の空気導入側の放熱フィンを、内側に湾曲する放熱フィン形状にしたが、第1の放熱フィン4,4及び9,9の空気流出側の放熱フィンを、内側に湾曲する放熱フィン形状にすることも可能である。
【0026】
図4及び図5は、本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第3の実施の形態を示すもので、図4は平面図、図5はその正面図である。これらの図において、図1及び図2の符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態は、電子制御装置の筐体3上に、電子部品2に対応するように半円筒状の放熱部材13,14をそれぞれ設けたものである。図4における左側の放熱部材13は、その内側に、空気導入側から流出側に向かって、径の大きい第1の半円筒状の流路13aと、径が空気流れ方向に漸次狭くなる第2の半円筒状の流路13bと、径の小さい第3の半円筒状の流路13cとで構成されている。
【0027】
また、図4における右側の放熱部材14は、その内側に、空気導入側から流出側に向かって、径の大きい第1の半円筒状の流路14aと、径が空気流れ方向に漸次狭くなる第2の半円筒状の流路14bと、径の小さい第3の半円筒状の流路14cと、径が空気流れ方向に漸次広くなる第4の半円筒状の流路14dと、径の大きい第5の半円筒状の流路14eと構成されている。
【0028】
各半円筒状の流路内の形状は、半円筒流路を完全な円筒流路としたときの中心軸に対して対称であることが好ましい。発熱する各電子部品2の位置は、電子部品2の位置を筐体3に投影したときに、流速が最大となる位置と一致するように実装することが好ましい。 この実施の形態では、流路毎に電子部品2を1個配置したが、1つの流路に2つ以上の電子部品2を配置してもよい。
【0029】
この実施の形態によれば、流路形状を半円筒状の形状とすることで、流路上面に構造体ができ、3次元的に流路幅(断面)を変化させることができるため、より大きな流速変化を得ることができ、放熱効率をさらに向上させることができる。
【0030】
図6及び図7は、本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第4の実施の形態を示すもので、図6は平面図、図7はその正面図である。これらの図において、図1及び図2の符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態は、流路形状を、平面視上、非対称に構成したものであり、具体的には流路を形成する一対の放熱フィンの内の一方の放熱フィンを、平面視直線状の放熱フィン15とし、この放熱フィン15を、筐体3上に一体に設けたものである。
【0031】
この実施の形態によれば、流路形状は非対称であっても、流路幅の変化によって流速を大きくできるため、前述した実施の形態と同様に、電子部品の熱を最も受ける筐体3の部位を効率的にかつ積極的に冷却し、放熱効率を向上させることができる。その結果、電子制御装置をより高い環境温度下、および/または、より大きな発熱条件下まで使用することができ、車載用の電子制御装置の作動条件が拡大し、その性能を向上させることができる。
【0032】
また、この実施の形態によれば、複数の放熱フィン列の両端のように、外観上の制約から平坦な面とする必要があるような場合に、有効である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第1の実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第1の実施の形態の正面図である。
【図3】本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第2の実施の形態を示す平面図である。
【図4】本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第3の実施の形態を示す平面図である。
【図5】図4に示す本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第3の実施の形態の正面図である。
【図6】本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第4の実施の形態を示す平面図である。
【図7】図6に示す本発明の車載用電子制御装置の放熱装置の第4の実施の形態の正面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 回路基板
2 電子部品
3 筐体
4 第1の放熱フィン
5 第2の放熱フィン
6 第3の放熱フィン
7 第4の放熱フィン
8 第5の放熱フィン
9 第1の放熱フィン
10 第2の放熱フィン
11 第3の放熱フィン
12 放熱フィン
13 半円筒状の放熱部材
14 半円筒状の放熱部材
15 放熱フィン
16 熱伝導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱を必要する少なくとも1つ以上の電子部品を有する電子回路と、この電子回路を実装する回路基板と、この回路基板を装着し、前記電子部品の熱を、外気へ放熱するための筐体とを備えた車載用電子制御装置の放熱装置において、
空気流れ方向に沿って幅が平行で、前記電子部品がその下流側に対応するような第1の流路を形成する第1の放熱部材と、この第1の放熱部材の上流側に連結し空気流れ方向に沿って幅が漸次狭くなる第2の流路とを形成する第2の放熱部材とを、前記筐体の反回路基板側がわ面に一体に形成したことを特徴とする車載用電子制御装置の放熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用電子制御装置の放熱装置において、
前記第2の流路の上流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って平行な第3の流路を形成する第3の放熱部材を設けたことを特徴とする車載用電子制御装置の放熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載用電子制御装置の放熱装置において、
前記第1の流路の下流側部に、その幅が空気流れ方向に沿って幅が漸次広くなる第4の流路を形成する第4の放熱部材を設けたことを特徴とする車載用電子制御装置の放熱装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の車載用電子制御装置の放熱装置において、
前記放熱部材は、板状体であることを特徴とする車載用電子制御装置の放熱装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の車載用電子制御装置の放熱装置において、
前記放熱部材は、断面が半円筒体であることを特徴とする車載用電子制御装置の放熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−186956(P2008−186956A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18462(P2007−18462)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】