説明

車載通信端末装置及びICカード読取装置

【課題】カードの挿抜作業時にカード収納部が雨滴等で濡れてたりしても基板側を確実に保護可能で、接触端子部分に付着した雨滴や埃等を容易に除去可能な車載通信端末装置及びICカード読取装置を提供する。
【解決手段】接点部2aを有するICカード2が載置される載置面3を有するケース4と、ICカード2が載置面3に載置されたときICカード2の接点部2aに接触する接触端子36aを有するカードコネクタ36と、ケース4に収納されるとともにカードコネクタ36を介してICカード2に対するアクセスが可能な制御回路を実装した基板13と、を備え、ケース4の載置面3が部分的に開口するとともに、カードコネクタ36が開口12を塞ぐ防水型コネクタとして構成され、カードコネクタ36の接触端子36aが載置面3上に露出するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信端末装置及びICカード読取装置に関し、特に、高速道路の出入口に設置される据置型通信端末装置との間で情報通信を行う車載ETC装置等に好適な車載通信端末装置及びICカード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、高速道路の出入口を車両が通過したときに、料金を支払うシステムとしてETCシステムが普及している。このETCシステムにあっては、従来のチケットに代えて車両通過情報を車両に搭載した車載通信端末装置と料金所に設置される据置型通信端末装置との間で授受して料金の自動支払いを行い、料金所で停止することなしに車両を通過させることができるので、料金の支払いのための煩わしい処理を不要にして交通の円滑化を図ることができる。
【0003】
従来のこの種のETCシステムにあっては、据置型通信端末装置との間で車両の通過情報についての情報通信を行う車載通信端末装置を車両に搭載する必要があり、この車載通信端末装置にETCカードを取付けることにより、ETCカードに料金に関する情報を書き込む必要がある。
【0004】
また、従来の車載通信端末装置には、車両の走行中の振動等によってETCカードに情報伝送している最中にETCカードがコネクタから脱落したり、また、情報の伝送中のETCカードが動いてしまって記録されたデータを誤って壊してしまうような不具合が発生しないようにするために、ETCカードをカードコネクタに取付ける必要がある。
【0005】
従来のこの種のカードコネクタとしては、情報が記録されたETCカードの両端部をETCカードと略同等の厚さを有するガイド溝によりガイドしながら挿抜自在に保持し、このカードと情報伝達を行うコネクタ本体と、コネクタ本体をETCカードの挿抜方向にスライド移動自在に支持するケースと、コネクタ本体を常時ETCカードの抜き出し方向に付勢する弾性部材と、ETCカードの挿入方向にスライド移動したコネクタ本体を所定の位置において保持するロック手段と、ロック手段による保持を解除するロック解除手段とを有したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、屋外で使用されるICカードの読取装置として、カード収納部を開放可能にするとともに、そのカード収納部の周囲に開閉蓋と当接するシールリングを設けて、カード収納部への雨滴等の浸入を防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−8778号公報
【特許文献2】特開平8−77312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の車載通信装置及びICカード読取装置にあっては、例えば自動二輪車やオープンカーに搭載される車載ETC装置に用いた場合に、ETCカードの車載ETC装置への装填作業が屋外でなされることが多く、そのカードが雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴がカード収納部に入ってしまい、カードの入出力接点部に接触する複数の接触端子間が雨滴で短絡してしまうといった場合が生じる。その場合、カードコネクタがケース内奥部にある従来の車載通信装置にあっては、接続不良に対してユーザーが即座に水滴を拭き取るなどの処置がとれなかったり、防水シールよりも内側の接触端子から回路基板側に雨滴が浸入してしまい基板が破損したりするおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、カードの挿抜作業時にカード収納部が雨滴等で濡れてたりしても基板側を確実に保護するとともに、接触端子の部分に付着した雨滴や埃等を容易に除去可能な車載通信端末装置及びICカード読取装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車載通信端末装置は、車両に搭載され、据置型通信端末装置との間で情報通信を行う車載通信端末装置であって、接点部を有するICカードが載置される載置面を有するケースと、前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記ICカードの接点部に接触する接触端子を有するカードコネクタと、前記ケースに収納されるとともに前記カードコネクタを介して前記ICカードに対するアクセスが可能な制御回路を実装した基板と、を備え、前記ケースの載置面が部分的に開口するとともに、前記カードコネクタが前記開口を塞ぐ防水型コネクタとして構成され、前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、ICカードが雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴がカード収納部に入ってしまったりしても、カード載置面の開口が防水型コネクタで塞がれ、その接触端子のみが載置面上に露出するので、接触端子側から回路基板側に雨滴が浸入するのが確実に防止されて基板が確実に保護されるとともに、接触端子の露出部分に付着した雨滴や埃等が容易に除去可能となる。
【0011】
本発明の車載通信端末装置においては、前記カードコネクタが、前記接触端子を構成する複数の導体部材と、該導体部材を所定間隔で保持するとともに前記開口を塞ぐ絶縁保持部材とで構成され、前記絶縁保持部材と前記ケースとの間にはシール部材が設けられているのがよい。この構成により、複数の接触端子を絶縁保持部材で保持し一体化したモジュールを載置面の開口の閉塞に使用するとともに防水に有効活用でき、簡素で確実な防水構造が実現できる。
【0012】
また、本発明の車載通信端末装置は、好ましくは、前記ケースが、前記載置面を形成した第1のケース部材と、該第1のケース部材に前記載置面を開放及び閉塞可能に支持された開閉蓋機能を有する第2のケース部材とからなり、該第1のケース部材及び第2のケース部材のうち少なくとも一方に、前記第2のケース部材の閉蓋時に前記載置面の周囲で前記第1のケース部材及び第2のケース部材の間をシールする外側シール部材が設けられているものである。この構成により、カード収納時における雨滴の浸入をも確実に防止することが可能となる。
【0013】
本発明の車載通信端末装置は、前記ケースに、前記ICカードの接点部側の面の一部に接触して前記ICカードを前記所定の載置高さに案内する載置面側のガイド突部を設けたものとすることができる。この構成により、カードの装着時にケース収納部の表面が広範に濡れたり汚れたりしていても、ICカードの接点部が濡れたり汚れたりし難くなる。
【0014】
また、本発明の車載通信端末装置は、前記ケースには前記ICカードの接点部とは反対側の面に係合し、前記ICカードが前記載置面から離隔する側に移動するのを規制する規制部材が設けられ、前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記カードコネクタの接触端子が前記ICカードに前記ICカードの接点部側の面から所定の接触圧で圧接するようにするのが好ましい。この構成により、接続不良を低減できる。
【0015】
本発明の車載通信端末装置は、前記載置面側のガイド突部を、前記載置面の両端側に離間する平行なサイドガイド部に隣接して設けるとともに、前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出する部位に近接するよう前記載置面の中央側にも設けたものとするのがより好ましい。この構成により、防水コネクタの接触端子近傍におけるICカードの変形や振れを規制し、その接点部表面高さを所定の載置高さに維持して、接続不良を低減することができる。
【0016】
さらに、本発明の車載通信端末装置においては、前記基板には前記カードコネクタの接触端子と前記ICカードの接点部との接続不良状態を検出する接続不良検出回路が搭載されているのがよい。この構成により、接続不良時にユーザにその状態を報知することが可能となり、接触端子部の水滴や埃等拭き取る等のなどの措置が可能となる。
【0017】
一方、本発明のICカード読取装置は、接点部を有するICカードが載置される載置面を有するケースと、前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記ICカードの接点部に接触する接触端子を有するカードコネクタと、前記ケースに収納されるとともに前記カードコネクタを介して前記ICカードに対するアクセスが可能な制御回路を実装した基板と、を備えたICカード読取装置であって、前記ケースの載置面が部分的に開口するとともに、前記カードコネクタが前記開口を塞ぐ防水型コネクタとして構成され、前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出するようにしたものである。
【0018】
この構成により、ICカードが雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴がカード収納部に入ってしまったりしても、カード載置面の開口が防水型コネクタで塞がれ、その接触端子のみが載置面上に露出するので、接触端子側から回路基板側に雨滴が浸入するのが確実に防止されて基板が確実に保護されるとともに、接触端子の露出部分に付着した雨滴や埃等が容易に除去可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ICカードが雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴がカード収納部に入ってしまったりしても、カード載置面の開口が防水型コネクタで塞がれその接触端子のみが載置面上に露出するので、接触端子側から回路基板側に雨滴等が浸入するのを確実に防止して基板を確実に保護することができるとともに、接触端子の露出部分に付着した雨滴や埃等を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1〜図8は本発明に係る車載通信端末装置の一実施の形態を示す図であり、ICカードとしてETCカードを用いる車載ETC装置に適用した例を示している。
【0022】
まず、構成を説明する。
【0023】
図1、図2において、車載通信端末装置1は、ETCレーンの料金所の図示しない据置型通信端末装置に設けられたETCアンテナとの間で電波により無線通信を行い、車両情報、ETCカード情報、課金情報等の情報のやり取りを行うものであり、四輪車両や二輪車両等に任意の姿勢で装着されるものである。
【0024】
この車載通信端末装置1は、ETCカード2(図2参照)が載置される載置面3を有する第1のケース部材としての下ケース4と、下ケース4にヒンジ5を介して連結され、下ケース4に対して開閉自在に設けられた第2のケース部材としての上ケース6とを備えている。なお、本実施形態では、下ケース4を下側にして車両に取付けているものとして、下ケース4と上ケース6という表現を用いているが、方向性を限定するものではなく、例えばヒンジ5の回動中心を鉛直方向にして使用する場合には、右ケース、左ケースということになる。
【0025】
図3に示すように、ETCカード2は、接触型ICカードで構成され、その片面の所定位置にICチップの金属接点部2a(以下、単にICチップ部2aという)を有している。このETCカード2は、内部に図示しないCPU、メモリおよび入出力インターフェースを備え、車両情報、ETCカード情報、課金情報等の読出し・書込みが可能となっている。
【0026】
ETCカード2を載置する載置面3は、ETCカード2が図4に示すように装填されたとき、そのICチップ部2a側の面を支持する面であるとともに、ETCカード2を図2に示すように同図の右側から左側に挿入するときには、ETCカード2を所定の載置高さに案内するようになっている。
【0027】
この載置面3は、ETCカード2の長手方向である挿入及び抜き取り方向(以下、挿抜方向という)と直交する短手方向の両側に離間しつつその挿抜方向に延在する一対の平行なガイドリブ3a,3b(短手方向両側のガイド突部)と、両ガイドリブ3a,3bの略中間に位置する中央のガイドリブ3c(中央のガイド突部)とによって形成されている。
【0028】
これらガイドリブ3a,3b,3cは、ETCカード2のICチップ部2a(接点部)側の面の一部にのみ接触し、ETCカード2を所定の載置高さに案内する載置面側のガイド突部となっている。また、ガイドリブ3a,3b,3cは下ケース4の中央側の上面4cから所定高さに突出しており、ETCカード2を載置面3に載置する際に下ケース4の広い上面4cに直接接触させないようになっている。なお、下ケース4の広い上面4cは下ケース4の外周側の表面4dよりも高くなっている。
【0029】
下ケース4および上ケース6は、耐衝撃性や耐候性に優れた所定の樹脂材料から成形されている。また、図2に示すように、下ケース4と上ケース6とのうち少なくとも一方には、上ケース6の閉蓋時に載置面3の周囲で両ケース4,6の間をシールする外側シール部材が装着されており、本実施形態では例えば上ケース6に外側シール部材としての防水シールリング61が装着されている。したがって、上ケース6の閉蓋状態では下ケース4および上ケース6の間のカード収納空間は液体密にシールされる。
【0030】
また、下ケース4にはバックル7の基端部7aが回動自在に取付けられており、このバックル7の上端部7bは基端部7aを支点として揺動自在になっている。
【0031】
バックル7の上端部7bは、上ケース6の端部に形成された係合凹部6b(図8参照)に係合する係合位置に揺動したとき、上ケース6を閉蓋状態にロックすることができるようになっている。また、バックル7の上端部7bは、例えば上ケース6との間で一定の隙間24(2〜4mm程度)が形成されるように、上ケース6の端部から中心部に向かって上方に傾斜した内端面形状に形成されている。
【0032】
上ケース6を開蓋状態とするためにバックル7のロック状態を解除する際には、利用者の指先をこの隙間24に入れ、バックル7の上端部7bを上ケース6の係合凹部6bから離脱させる。
【0033】
一方、図2及び図4に示すように、下ケース4の載置面3の短手方向両端側には互いに平行な一対のガイドレール8aが突出しており、これらのガイドレール8aはETCカード2の短手方向幅寸法に対応する離間距離を隔ててそれぞれ挿抜方向に延在し、ETCカード2の短手方向両端部を位置決めするようになっている。
【0034】
また、載置面3の端部には先端位置決め部材としての一対のストッパ片8bが設けられており、このストッパ片8bはETCカード2の長手方向一端部(挿入方向における先端部)に当接して、ETCカード2の長手方向一端部を載置面3上に位置決めするようになっている。
【0035】
また、上ケース6には後端位置決めリブ6aが設けられており、この位置決めリブ6aはガイドレール8aの延在方向と略直交する方向に延在し、上ケース6が閉じられたときに、載置面3の外方に位置してETCカード2の長手方向他端部(挿入方向における後端部)を載置面3上に位置決めするようになっている(図6(a)参照)。
【0036】
また、一対のガイドレール8aの延在方向一端部には互いに対向する一対の突片状の保持片9が設けられており、この保持片9はガイドリブ3a,3bの上面に対しETCカード2の厚さに対応する所定間隔を隔てて対面し、ETCカード2の短手方向両端部の一部分をガイドリブ3a,3bと共に挿抜可能に保持するようになっている。また、一対の保持片9は、ETCカード2のICチップ部2a(接点部)とは反対側の面に係合し、ETCカード2が載置面3から離隔する側に移動するのを規制する規制部材となっている。なお、保持片9は両サイドのガイドレール8aのうちの一方にのみ設けられていてもよく、いずれのガイドレール8aにも設けられていなくてもよい。
【0037】
上ケース6の内面には振動吸収用の弾性シート10a,10bが装着されている。
これら弾性シート10a,10bは、上ケース6が閉じたときにETCカード2を載置面3上、すなわち両サイド及び中央のガイドリブ3a,3b,3cの上面(ガイド高さ)に常時当接させるよう押圧し、ETCカード2の載置高さを規定する規制部材となっている。また、弾性シート10a,10bは、ETCカード2のICチップ部2a(接点部)側とは反対側の面に係合してETCカード2を載置面3上に付勢するとともに振動を吸収する手段ともなっている。
【0038】
図2に示すように、弾性シートを複数個設けるときは、この弾性シートの少なくとも1つがICチップ部2a上で、他はICチップ部2aからカード挿抜方向に離間してETCカード2に当接するように配置するのが好ましい。このように、弾性シート10aが配置されていると、ETCカード2のICチップ部2aの近傍に均等に押圧力を作用させるとともに、ETCカード2全体を下ケース4と弾性シート10aとにより確実に安定保持できる。
【0039】
また、弾性シート10a,10bは、ETCカード2の振動を吸収するものであればよく、例えば、弾性を有するポリウレタンやシリコーン樹脂、ニトリルゴムやネオプレンゴムなどのゴムおよび熱可塑性のエラストマーなどから形成されるものでもよい。また、市販のゲル状のシート、例えば、シリコーンゲルシートやウレタンゲルシートを用いてもよい。弾性シート10a,10bの形状は、四角形のほか、円形、楕円形、多角形などでもよい。
【0040】
上ケース6には一対の突起(第1突起)11が設けられており、これらの突起11は各一対の保持片9及びガイドレール8aに向かって突出している。なお、この突起11は1つでもよい。
【0041】
載置面3の外方に位置する下ケース4には図6(c)に示すように突起4aが設けられており、突起4aはガイドリブ3a,3b,3cのガイド高さ(所定の載置高さ)と略同じ高さに形成されている。この突起4aは、上ケース6が閉塞されたときに、位置決めリブ6aに近接する位置に設けられており、ETCカード2が載置面3から外方にずれた状態で上ケース6が閉じられた場合にETCカード2が図6(b)に示すように折れ曲がるのを防止するようになっている。
【0042】
一方、下ケース4内には車載通信端末装置1を制御する回路基板13が内蔵されており、下ケース4にはこの回路基板13上のカードコネクタ36の上端部を載置面3上に露出させる開口穴12が形成されている。
【0043】
この開口穴12は、載置面3にETCカード2が載置面3に載置されストッパ片8bに当接したときにICチップ部2aに対向するよう所定位置に形成されている。また、この開口穴12内にはカードコネクタ36が設けられており、ETCカード2が載置面3に載置されストッパ片8bに当接したとき、そのカードコネクタ36の複数の接触端子36aがICチップ部(接点部)2aに接触するようになっている。
【0044】
具体的には、複数の接触端子36aは、それぞれ可撓性を有する導電性部材から構成されており、上ケース6が閉じられて弾性シート10a,10bによってETCカード2が載置面3上の所定の載置高さに位置決めされたとき、弾性シート10aの押圧力に対抗する方向にICチップ部2aを押圧するようICチップ部2aに弾性的に接触するようになっている。
【0045】
また、カードコネクタ36は、下ケース4内に収納された回路基板13に実装されており、回路基板13は、カードコネクタ36を介してETCカード2に対するアクセスが可能な入出力制御回路(後述する)を実装している。
【0046】
ところで、下ケース4の開口穴12から載置面3上の空間に部分的に露出するカードコネクタ36は、開口穴12を塞ぐ防水型コネクタとして構成されている。
【0047】
具体的には、図5に示すように、カードコネクタ36の複数の接触端子36aはそれぞれ例えば銅合金からなる線材状の導体部材となっており、これらの接触端子36aは例えば絶縁材料で成形精度に優れた樹脂、例えばガラス繊維入りPPSからなる絶縁保持部材36bにより、ICチップ部2a側の接点部の間隔に対応する所定間隔で保持されている。また、複数の接触端子36aは絶縁保持部材36bにインサート成形等により一体化されることで、その接触端子36aの保持穴部分がシールされた固着状態で保持されている。なお、図5では、カードコネクタ36が直接に回路基板13上に装着された態様を図示しているが、図6及び図8に示すように、カードコネクタ36はソケット37を介して回路基板30に着脱可能に実装される端子モジュールとして構成されてもよい。
【0048】
さらに、絶縁保持部材36bは開口穴12の開口形状に対応するプラグ形状をなしており、そのプラグ部36b1側で開口穴12内を塞ぎ、その下端側拡径部36b2で開口穴12の下端側の開口周辺部に対面している。
【0049】
そして、絶縁保持部材36bと下ケース4の間、例えばカードコネクタ36の絶縁保持部材36bと開口穴12の内壁面部12aとなる下ケース4の一部との間、又は、カードコネクタ36の絶縁保持部材36bと開口穴12の周壁下部12bを形成する下ケース4の一部との間には、両者間の隙間を液体密にシールすることができる弾性シール部材31が設けられている。この弾性シール部材31は防水シール及び防塵シールとして使用できるとともに、防振特性にも優れたものであるのがよく、組み込み時の変形代が大きいものがよい。この弾性シール部材31は組込み前の非圧縮状態では所定の断面形状、例えば円形断面となっている。
【0050】
カードコネクタ36の複数の接触端子36aが載置面3上に露出するとき、複数の接触端子36aの頂部の高さは、ガイドリブ3a,3b,3cの上面(載置面)高さよりわずかに高くなり、ETCカード2が載置面3に載置されたとき、カードコネクタ36の接触端子36aがETCカード2に所定の接触圧で圧接するように、接触端子36aの接続時の撓み量が設定されている。これにより、ETCカード2が載置面3上に載置され所定載置高さに位置決めされたとき、接触端子36aとICチップ部2aが確実に接続される。
【0051】
なお、下ケース4の中央のガイドリブ3cは、カードコネクタ36の接触端子36aが載置面3上に露出する部位に近接するよう載置面3の中央側に設けられ、ETCカード2のICチップ部2aの載置領域に対応する範囲では、開口穴12を例えば三方から取り囲み、一方では開いたコの字形状に形成されている。また、弾性シート10a,10bは、車両側からの振動を考慮してETCカード実装時の共振を回避するように接触端子36aのばね定数と共に所定のゴム硬度の範囲に設定され、車両の振動等に対してETCカード2におけるICチップ部2aと接続端子36aとの確実な接続が確保される。
【0052】
図7は下ケース4に内蔵された回路基板13の制御回路のブロック図である。
【0053】
図7において、回路基板13は、電源回路14、入出力制御回路15、ICチップリードライト回路16、表示処理回路17および無線回路18を含んだ制御回路を搭載している。
【0054】
入出力制御回路15は、CPU(Central processing unit)、ROM(Read only memory)およびRAM(Random access memory)から構成されており、ROMに格納された所定の制御プログラムに従って他の各機能部を制御し、車載通信端末装置1全体の動作を制御するようになっている。
【0055】
電源回路14は配線19(図1参照)を介して車両に設けられたバッテリーから12Vの電源が供給されるようになっており、回路基板13に電源を供給する。
【0056】
ICチップリードライト回路16はカードコネクタ36の接触端子36aを介してICチップ部2aに記憶された車両情報、ETCカード情報、課金情報等の読取処理および車両情報、ETCカード情報、課金情報等の記憶処理を行うようになっている。
【0057】
表示処理回路17は配線20を介してLEDランプ22に接続されており、状態表示用のLEDランプ22の点灯の有無の制御及び点灯状態(点滅あるいは発光色)の制御を行うことができる。
【0058】
入出力制御回路15はICチップリードライト回路16によりICチップ部2aが検出されると、表示処理回路17に指令信号を出力してLEDランプ22を連続して点灯させることにより、正常な接続状態であることを表示する、といった動作確認を行う。また、入出力制御回路15は、ICチップリードライト回路16によりICチップ部2aが検出されたものの、接続状態が異常である場合(例えば隣接する2つの接触端子間が短絡している場合)、表示処理回路17に異常報知のための指令信号を出力してLEDランプ22を例えば点滅させ若しくは色の異なるLEDを点灯させることにより、異常検出した状態であることを表示するようになっている。すなわち、入出力制御回路15は、カードコネクタ36の接触端子36aとETCカード2の接点部との接続不良状態を検出する接続不良検出回路としても機能するようになっている。
【0059】
無線回路18は配線21を介してアンテナ23に接続されており、ETCアンテナとの間で所定周波数帯域の高周波、例えば、5.8GHz帯の高周波を使用して無線通信を行うようになっている。
【0060】
次に、動作について説明する。
【0061】
上述のような構成を有する車載通信端末装置1にETCカード2を装填する場合には、バックル7を解除位置に移動させて上ケース6を開放し(図2参照)、ガイドレール8aに沿ってETCカード2を載置面3上でスライドさせながら挿入すると、ETCカード2の長手方向一端部が保持片9と載置面3の間に挿入されてストッパ片8bに当接したとき、ETCカード2の全面が載置面3に載置され、接触端子36aにICチップ部2aが接触する。
【0062】
この状態において、ETCカード2は、カードコネクタ36の複数の接触端子36aと一対の保持片9とによって保持され、下ケース4から抜け出ることがない。特に、自動二輪車等に車載通信端末装置1を搭載したときに、ヒンジ5の回動中心を鉛直方向にした場合でも、ETCカード2が下ケース4から落下しなくできる。
【0063】
次いで、上ケース6を閉じてバックル7を係合位置に揺動させることにより、上ケース6を閉蓋状態でロックする。このとき、ETCカード2の長手方向両端部および短手方向両端部がガイドレール8a、ストッパ片8bおよび突出片6aによって載置面3上に位置決めされるとともに、弾性シート10a,10bがETCカード2を所定の載置高さに押圧付勢することによりICチップ部2aの複数の接点部が対応する複数の接触端子36aに確実に接続される。
【0064】
一方、車載通信端末装置1からETCカード2を取り出す場合には、バックル7を回動させて上ケース6のロックを解除し、上ケース6を開蓋状態として、ガイドレール8aに沿ってETCカード2を載置面3上でスライドさせながら載置面3上から取り外す。
【0065】
ところで、車載通信端末装置1が自動二輪車等に装備される場合、上述のようなETCカード2の車載通信端末装置1への着脱作業が風雨に晒されながら行われるような状態が発生し得るが、本実施形態では、ETCカード2が雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴が下ケース4上のカード収納部に入ってしまったりしても、カード載置面3の開口穴12が防水型のカードコネクタ36で塞がれ、その接触端子36aのみが載置面3上に露出しているので、接触端子36a側から回路基板13側に雨滴が浸入するようなことが確実に防止される。その結果、回路基板13が雨滴等から確実に保護されるとともに、接触端子36aの露出部分に付着した雨滴や埃等は上ケース6の開蓋状態において容易に拭き取って除去することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、カードコネクタ36が、その接触端子36aを構成する複数の導体部材と、これら接触端子36aを所定間隔で保持するとともに開口穴12を塞ぐ絶縁保持部材36bとで構成され、その絶縁保持部材36bと下ケース4との間にはシール部材31が設けられているので、複数の接触端子36aを絶縁保持部材36bで保持し一体化したモジュールを載置面3の開口穴12の閉塞に使用するとともに防水に有効活用でき、簡素で確実な防水構造が実現できる。
【0067】
また、本実施形態では、下ケース4及び上ケース6のうち少なくとも一方に、上ケース6の閉蓋時に載置面3の周囲で両ケース4,6の間をシールする防水シールリング61が設けられていることから、ETCカード2の収納状態においてもその収納部への雨滴の浸入をも確実に防止することができる。
【0068】
さらに、下ケース4には、ETCカード2のICチップ部2a側の面の一部に接触してETCカード2を所定の載置高さに案内するガイドリブ3a,3b,3cを設けているので、ETCカード2の装着時にケース収納部の表面が広範に濡れたり汚れたりしていても、ETCカード2のICチップ部2aが濡れたり汚れたりし難くなる。
【0069】
また、下ケース4にはETCカード2のICチップ部2a(接点部)とは反対側の面に係合し、ETCカード2が載置面3から離隔する側に移動するのを規制する弾性シート10a,10b(規制部材)が設けられ、ETCカード2が載置面3に載置されたとき、カードコネクタ36の接触端子36aがETCカード2に接点部側の面から所定の接触圧で圧接するようにしているので、確実な接続状態を確保し、接続不良を低減できる。
【0070】
加えて、ガイドリブ3a,3bを、載置面3の両端側に離間する一対のガイドレール8aに隣接して設けるとともに、カードコネクタ36の接触端子36aが載置面3上に露出する部位に近接するよう、載置面3の中央側にもガイドリブ3cを設けているので、防水コネクタ36の接触端子36a近傍におけるETCカード2の接点部表面の高さを所定の載置高さに維持して、接続不良を低減することができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、回路基板13にはカードコネクタ36の接触端子36aとETCカード2のICチップ部2aとの接続不良状態を検出する接続不良検出回路としての入出力制御回路15及びICチップリードライド回路16が搭載されているので、接続不良時にユーザにその状態を報知することができ、接触端子36aの水滴や埃等を拭き取る等の措置を容易に採ることができる。
【0072】
なお、上述の実施形態においては、本発明のICカード読取装置が、車載ETC装置のICカードリーダライタを構成するものとしていたが、書込みの不要なICカード読取装置のみに適用できることはいうまでもなく、例えばICカード内のID情報等を読み取って所定のユーザーや機器を特定し、そのユーザーや機器の使用に関する情報を外部と通信する装置等にも適用できるし、必ずしも車載通信端末装置である必要はなく、風雨や水滴に晒され易い環境で使用されるICカード読取装置であれば、通信端末装置でなくとも本発明のICカード読取装置を効果的に採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、ICカードが雨に濡れた状態で装填されたり、装填作業中に雨滴がカード収納部に入ってしまったりしても、接触端子側から回路基板側に雨滴等が浸入するのを確実に防止して基板を確実に保護することができるとともに、接触端子の露出部分に付着した雨滴や埃等を容易に除去することができるという効果を奏するものであり、防水性が要求されるICカード読取装置およびそれを備えた車載通信端末装置全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置の閉蓋状態を示すその外観斜視図
【図2】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置の開蓋状態を示すその外観斜視図
【図3】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置に装着されるETCカードの外観斜視図
【図4】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置のETCカード装着状態を示す斜視図
【図5】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置の要部断面図
【図6】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置における折れ防止用の突起の作用を比較例と共に説明する正面断面図
【図7】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置の回路基板のブロック図
【図8】本発明の一実施形態に係る車載通信端末装置にETCカードが取付けられた状態の車載通信端末装置の側面断面図
【符号の説明】
【0075】
1 車載通信端末装置(ICカード読取装置)
2 ETCカード(ICカード)
2a ICチップ部(ICチップの金属接点部、接点部)
3 載置面
3a,3b 両サイドのガイドリブ(載置面側のガイド突部)
3c 中央のガイドリブ(載置面側のガイド突部)
4 下ケース(ケース、第1のケース部材)
5 ヒンジ
6 上ケース(第2のケース部材)
7 バックル
8a ガイドレール(サイドガイド部)
8b ストッパ片
9 保持片(規制部材)
10a,10b 弾性シート(規制部材)
12 開口穴(開口)
13 回路基板(制御回路)
15 入出力制御回路(接続不良検出回路)
16 ICチップリードライト回路(接続不良検出回路)
22 LEDランプ(発光素子)
31 弾性シール部材
36 カードコネクタ
36a 接触端子(複数の接触端子)
36b 絶縁保持部材
36b1 上端部
36b2 下端側拡径部
61 防水シールリング(外側シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、据置型通信端末装置との間で情報通信を行う車載通信端末装置であって、
接点部を有するICカードが載置される載置面を有するケースと、
前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記ICカードの接点部に接触する接触端子を有するカードコネクタと、
前記ケースに収納されるとともに前記カードコネクタを介して前記ICカードに対するアクセスが可能な制御回路を実装した基板と、を備え、
前記ケースの載置面が部分的に開口するとともに、
前記カードコネクタが前記開口を塞ぐ防水型コネクタとして構成され、
前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出するようにしたことを特徴とする車載通信端末装置。
【請求項2】
前記カードコネクタが、前記接触端子を構成する複数の導体部材と、該導体部材を所定間隔で保持するとともに前記開口を塞ぐ絶縁保持部材とで構成され、
前記絶縁保持部材と前記ケースとの間にはシール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車載通信端末装置。
【請求項3】
前記ケースが、前記載置面を形成した第1のケース部材と、該第1のケース部材に前記載置面を開放及び閉塞可能に支持された開閉蓋機能を有する第2のケース部材とからなり、該第1のケース部材及び第2のケース部材のうち少なくとも一方に、前記第2のケース部材の閉蓋時に前記載置面の周囲で前記第1のケース部材及び第2のケース部材の間をシールする外側シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載通信端末装置。
【請求項4】
前記ケースに、前記ICカードの接点部側の面の一部に接触して前記ICカードを前記所定の載置高さに案内する載置面側のガイド突部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3までのうちいずれか1項に記載の車載通信端末装置。
【請求項5】
前記ケースには前記ICカードの接点部とは反対側の面に係合し、前記ICカードが前記載置面から離隔する側に移動するのを規制する規制部材が設けられ、
前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記カードコネクタの接触端子が前記ICカードに前記ICカードの接点部側の面から所定の接触圧で圧接することを特徴とする請求項1から請求項4までのうちいずれか1項に記載の車載通信端末装置。
【請求項6】
前記載置面側のガイド突部を、前記載置面の両端側に離間する平行なサイドガイド部に隣接して設けるとともに、前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出する部位に近接するよう前記載置面の中央側にも設けたことを特徴とする請求項4に記載の車載通信端末装置。
【請求項7】
前記基板には前記カードコネクタの接触端子と前記ICカードの接点部との接続不良状態を検出する接続不良検出回路が搭載されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのうちいずれか1項に記載の車載通信端末装置。
【請求項8】
接点部を有するICカードが載置される載置面を有するケースと、
前記ICカードが前記載置面に載置されたとき、前記ICカードの接点部に接触する接触端子を有するカードコネクタと、
前記ケースに収納されるとともに前記カードコネクタを介して前記ICカードに対するアクセスが可能な制御回路を実装した基板と、を備えたICカード読取装置であって、
前記ケースの載置面が部分的に開口するとともに、
前記カードコネクタが前記開口を塞ぐ防水型コネクタとして構成され、
前記カードコネクタの接触端子が前記載置面上に露出するようにしたことを特徴とするICカード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−323300(P2007−323300A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151952(P2006−151952)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】