説明

車載通信装置

【課題】車輌に搭載されたハードウェア資源を有効活用して、車輌間の情報の送受信を容易に行うことができる車載通信装置を提供する。
【解決手段】後続車輌1bは管理センター100からに認識コードを取得し、障害物検知部3から放射されるミリ波に情報の送信要求をID及び認識コードと共に重畳して先行車輌1aへ送信する。情報の送信要求をミリ波受信部4にて受信した先行車輌1aは、管理センター100との間で受信したID及び認識コードの認証処理と新たな認識コードの取得とを行って、要求された情報をID及び認識コードと共にASK変調によりストップランプ5の光を利用して後続車輌1bへ送信する。後続車輌1bはストップランプ5の光を受光部6にて受光することにより、情報を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に搭載された既存ハードウェア資源を有効活用して、車輌間の情報の送受信を容易に行うことができる車載通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌の走行の安全性向上及び車輌の快適な走行等を達成するために、渋滞情報及び事故情報等の種々の情報を道路などに設置された通信装置から車輌に搭載された通信装置へ送信するシステムが実用化されている。しかし、このシステムにおいては、通信装置の通信範囲には限界が存在することから、道路上に所定間隔で通信装置を設置する必要があるが、設置コストの問題から全ての道路を通信範囲がカバーするように通信装置を多数設置することは難しい。そこで、近年では、車輌に搭載された通信装置間で情報の送受信を行って情報を共有することにより、道路上に通信装置が設置されていない又は道路上に設置された通信装置の通信範囲外であっても、他車輌の通信装置を介して種々の情報を取得するシステムが研究及び開発されている。
【0003】
特許文献1においては、通信を行うためのインフラ系設備が未設置の道路上を走行する複数の車輌間において情報を相互に通信することができる車車間通信システムが提案されている。この車車間通信システムでは、車輌の周囲を撮影する運転支援用カメラと、撮影された画像から車輌の周囲の交通状況及び異常事象等を検出するコントローラと、検出された情報を他車輌に無線送信する通信部とを車輌に搭載する。これにより、インフラ系設備が設置されていない道路上の交通状況及び異常事象の発生等を、複数の車輌にて事前に認知することが可能となる。
【0004】
特許文献2においては、車輌のリア部に走行状態インジケータを設け、自車の走行状態に応じた発光パターンで発光させることにより、自車の走行状態を確実に後続車に送信することができる車輌間通信装置が提案されている。この車輌間通信装置では、走行状態インジケータを2次元LED(Light Emitting Diode)アレイとして構成し、例えば自車が1台目である場合には2次元LEDアレイを全て発光させて長方形の発光パターンとし、自車が2台目である場合には2次元LEDアレイの中央部を発光させずに中抜きの発光パターンとする。また、自車が自動運転中である場合には略T字型の発光パターンとし、手動運転中である場合には略逆T字型の発光パターンとする。後続車は、先行車の発光パターンを認識し、認識結果に応じて自車の走行を制御する。
【特許文献1】特開2001−283381号公報
【特許文献2】特開平11−53689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車車間通信システムにおいては、車輌間で通信を行うために、各車輌がミリ波帯の電波による無線通信を行うための通信装置を備える必要がある。ミリ波帯の電波により車輌周辺の広範囲に亘って無線通信を行うことができる通信装置は従来の車輌には搭載されていないものであるため、各車がこの通信装置を新たに搭載する必要があるという問題があり、高コストであった。従来の車輌には、前方車輌との車間を測定するためにミリ波の電波を放出するミリ波レーダーが搭載されているものがあるが、ミリ波レーダーが放出する電波は指向性が高いものであり、車両周辺の広範囲に亘って放出されるものではないため、特許文献1に記載の車車間通信システムに利用することは難しい。
【0006】
また、特許文献2に記載の車輌間通信装置は、2次元LEDアレイの発光パターンにより後続車へ情報を送信する構成であり、発光パターンには限りがあり、任意の情報を送信することができないという問題がある。よって、渋滞情報及び事故情報等の種々の情報を送信することはできない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車輌の前方へ電波による信号を送信し、車輌の後方へ光による信号を送信すると共に、後方からの電波による信号を受信し、前方からの光による信号を受信する構成とすることにより、自車輌の前後に存在する他車輌との間で電波及び光を利用した情報の送受信を行うことができる車載通信装置を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、電波を利用して前方の障害物を検知する手段が車輌に搭載されている場合に、この電波に信号を重畳して送信する構成とすることにより、従来の車輌に搭載されたミリ波レーダーなどを利用して前方の車輌へ情報を送信することができる車載通信装置を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的とするところは、車輌に搭載されたストップランプが発する光を利用して信号を送信する構成とすることにより、車輌には必ず搭載されているストップランプを利用して後方の車輌へ情報を送信することができる車載通信装置を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的とするところは、ストップランプを利用して光を振幅変調することにより信号の送信を行う構成とすることにより、ストップランプを利用して渋滞情報及び事故情報等の種々の情報を送信することができる車載通信装置を提供することにある。
【0011】
また本発明の他の目的とするところは、車輌の前方を撮像手段により撮像し、撮像した画像から前方の車輌に搭載されたストップランプの位置を検出し、検出した位置に応じてストップランプの光を受光する受光部の位置を調整する構成とすることにより、前方の車輌がストップランプの光により送信する信号を確実に受信することができる車載通信装置を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的とするところは、地上に設置された通信装置との間で通信を行って認証処理を行う構成とすることにより、他車輌との間で送受信する情報の信頼性を高めることができる車載通信装置を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的とするところは、後続車輌は先行車輌へ送信要求及び認識情報を電波により送信し、先行車輌は受信した認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行い、認証の成功後に先行車輌は情報及び認識情報を光により後続車輌へ送信し、後続車輌は受信した認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行う構成とすることにより、先行車輌及び後続車輌は通信相手が正当であるか否かを地上の通信装置を介してそれぞれ確認することができる車載通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1発明に係る車載通信装置は、車輌に搭載され、他の車輌との間で信号の送受信を行う車載通信装置において、車輌の前方へ電波による信号を送信する無線送信手段と、前記車輌の後方へ光による信号を送信する光送信手段と、後方から送信された電波による信号を受信する無線受信手段と、前方から送信された光による信号を受信する光受信手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、車輌の前方へ電波により信号を送信する手段を車輌に設けると共に、車輌の後方へ光による信号を送信する手段を車輌に設ける。また、他の車輌から送信されたこれらの信号を受信するために、後方からの電波による信号を受信する手段を車輌に設けると共に、前方からの光による信号を受信する手段を車輌に設ける。よって、後続車輌から先行車輌へは電波による情報の送信を行うことができ、先行車輌から後続車輌へは光による情報の送信を行うことができる。また、後続車輌から先行車輌への信号送信と、先行車輌から後続車輌への信号送信とを異なる方法で行うことによって、通信の干渉及び衝突等を回避することができる。
【0016】
また、第2発明に係る車載通信装置は、電波を放出して前記車輌の前方の障害物を検知する障害物検知手段を備え、前記無線送信手段は、前記障害物検知手段の電波に信号を重畳して送信するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、電波を利用して前方の障害物を検知する手段(例えば、ミリ波レーダーなど)が車輌に搭載されている場合に、この電波に信号を重畳することにより車輌の前方への情報送信を実現する。障害物検知用の電波送信の手段を利用することによって、信号送信用の電波送信の手段を新たに車輌に搭載する必要がない。
【0018】
また、第3発明に係る車載通信装置は、前記光送信手段が、前記車輌の後部に搭載されたストップランプが発する光により信号を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、車輌の後方への光による信号の送信は、車輌の後部に搭載されたストップランプ(ブレーキランプ)が発する光を利用して実現する。例えば車輌が交差点にて赤信号により停車した場合にはストップランプが点灯されるため、直後に停車する車輌はストップランプが発する光を受光して信号を受信することができる。ストップランプは車輌に必ず搭載されるものであるため、光による信号送信を行うための光源を新たに車輌に搭載する必要はない。また、ストップランプは昼夜に関わらず停車時に点灯されるため、確実に信号の送受信を行うことができる。
【0020】
また、第4発明に係る車載通信装置は、前記光送信手段が、前記光を振幅変調することによって信号を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、振幅変調によりストップランプの光を制御することによって、光を利用した信号の送信を行う。例えばLEDを用いたストップランプの場合には、振幅変調により1Mbps程度の信号送信が可能である。また、1Mbps程度の速度でストップランプを制御した場合、後続車輌の運転者によるストップランプの目視に悪影響を与えることはない。
【0022】
また、第5発明に係る車載通信装置は、前記光受信手段が、光を受光する受光部を有し、前記車輌の前方を撮像して画像を取得する撮像手段と、該撮像手段が撮像して取得した画像から、前方の他の車輌に搭載されたストップランプの位置を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果に応じて、前記受光部の位置を調整する調整手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明においては、車輌の前方を撮像して取得した画像から、先行車輌のストップランプの位置を検出する。光による信号を受信する受信手段にはストップランプの光を受光する受光部を設け、検出したストップランプの位置に応じて受光部の位置を調整する。交差点などで停車した車輌に対して後続車が停車する位置は必ずしも一定ではなく、先行車輌のストップランプの位置に対して後続車輌の受光部の位置にズレが生じる虞がある。また、車輌の種類によってストップランプの搭載位置も様々である。これらの場合には光による信号の送受信が精度よく行えないという問題があるが、受光部の位置を調整することによってこの問題を解決することができる。
【0024】
また、第6発明に係る車載通信装置は、地上に設置された通信装置との間で通信を行う地上通信手段と、該地上通信手段を介して前記通信装置との間で認証処理を行う認証手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、地上に設置された通信装置との間で通信を行う手段を車輌に設ける。これは、例えば携帯電話網を利用した通信により実現することができる。また、地上の通信装置にて識別情報などを管理することにより、車輌に搭載された車載通信装置と地上の通信装置との間で認証処理を行う。これにより、車輌間の通信の信頼性を高めることができる。
【0026】
また、第7発明に係る車載通信装置は、前記無線送信手段が、情報の送信要求及び車輌の認識情報を電波により送信するようにしてあり、前記無線受信手段が情報の送信要求及び車輌の認識情報を受信した場合に、前記認証手段が前記認識情報に基づく認証処理を行うようにしてあり、前記認証処理が成功した場合に、前記送信要求に応じた情報及び車輌の認識情報を前記光送信手段が光により送信するようにしてあり、前記光受信手段が前記送信要求に応じた情報及び車輌の認識情報を受信した場合に、前記認証手段が前記認識情報に基づく認証処理を行うようにしてあることを特徴とする。
【0027】
本発明においては、後続車輌は先行車輌が有する情報の送信要求及び後続車輌の認識情報を電波の信号により先行車輌へ送信する。これを受信した先行車輌は、受信した後続車輌の認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行って、受信した送信要求が正当なものであるか否かを調べる。認証に成功した場合、先行車輌は、後続車輌からの送信要求に応じた情報及び先行車輌の認識情報を光の信号により後続車輌へ送信する。これを受光した後続車輌は、受信した先行車輌の認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行って、受信した情報が正当なものであるか否かを調べる。よって、先行車輌及び後続車輌は、通信相手が正当なものであるか否かをそれぞれ確認して情報の送受信を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
第1発明による場合は、車輌の前方へ無線の電波を送信し、車輌の後方へ光による情報の送信すると共に、後方からの無線電波を受信し、前方からの光による情報を受信する構成とすることにより、前後に並んだ2つの車輌間で情報の送受信を行うことができるため、渋滞情報及び事故情報等の種々の情報を複数の車輌で共有することができる。よって、車輌の走行の安全性向上及び車輌の快適な走行等を達成することができる。また、後続車輌から先行車輌への情報送信と、先行車輌から後続車輌への情報送信とを異なる方法で行うことによって、通信の干渉及び衝突等を回避することができるため、高品質な通信を車輌間で行うことができる。
【0029】
また、第2発明による場合は、障害物検知用の電波に信号を重畳して車輌の前方へ送信する構成とすることにより、ミリ波レーダーなどの障害物の検知手段を備えた車輌の場合には、信号送信用の電波送信の手段を新たに搭載することなく、車輌の前方への信号送信を行うことができるため、車輌間の通信を低コストで実現することができる。
【0030】
また、第3発明による場合は、車輌の後部に搭載されたストップランプが発する光を利用して信号を送信する構成とすることにより、ストップランプは車輌に必ず搭載されるものであるため、光による信号送信を行うための光源を新たに車輌に搭載することなく、車輌の後方への信号送信を行うことができる。よって、車輌間の通信を低コストで実現することができる。
【0031】
また、第4発明による場合は、振幅変調によりストップランプの光を制御することによって、光を利用した信号の送信を行う構成とすることにより、後続車輌の運転者によるストップランプの目視に悪影響を与えることなく、渋滞情報及び事故情報等の多種多様な大量の情報を光の信号として送信することができる。
【0032】
また、第5発明による場合は、車輌の前方を撮像した画像から前方の車輌に搭載されたストップランプの位置を検出し、検出した位置に応じて受光部の位置を調整する構成とすることにより、先行車輌の車種又は車輌の停車位置等に影響されることなく、ストップランプの光により送信される信号を確実に受信することができるため、車輌間の通信の信頼性を高めることができる。
【0033】
また、第6発明による場合は、地上に設置された通信装置との間で通信を行って認証処理を行う構成とすることにより、車輌間で送受信される信号が正当なものであるか否かを確認することができるため、悪意の通信を排除することができ、安全性及び秘匿性の高い通信を実現することができる。
【0034】
また、第7発明による場合は、後続車輌は先行車輌へ送信要求及び認識情報を電波の信号により送信し、先行車輌は受信した認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行い、認証の成功後に先行車輌は情報及び認識情報を光の信号により後続車輌へ送信し、後続車輌は受信した認識情報を基に地上の通信装置との間で認証処理を行う構成とすることにより、先行車輌及び後続車輌は、通信相手が正当なものであるか否かをそれぞれ確認して情報の送受信を行うことができる。よって、先行車輌及び後続車輌が共に悪意の通信を排除することができるため、車輌間の通信の安全性及び秘匿性をより確実に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る車載通信装置の構成を示す模式図である。図において1は車輌であり、車輌1の前部中央には前方の障害物(歩行者及び他車輌等)を検知する障害物検知部3が搭載してある。障害物検知部3は、ミリ波の放出及び反射波の検知によって前方の障害物を検知する所謂ミリ波レーダーであり、更に本発明に係る車載通信装置においては、種々の情報に係る信号をミリ波に重畳して送信する機能が備えてある。車輌1の後部中央には、他の車輌(後続車輌)の障害物検知部3からのミリ波を受信して、ミリ波に重畳された信号から情報を取得するミリ波受信部4が搭載してある。
【0036】
また、車輌1の後部には左右にストップランプ5がそれぞれ搭載してある。ストップランプ5は、車輌1の停車時に点灯するようにしてあると共に、本発明に係る車載通信装置においてはストップランプ5が発する光によって種々の情報に係る信号の送信を行うことができるようにしてある。車輌1の前部の左右には、他の車輌(先行車輌)のストップランプ5が発する光を受光する受光部6がそれぞれ搭載してある。
【0037】
また、車輌1には、携帯電話網を利用した通信により管理センター100(図3において図示する)との間で情報の送受信を行うセンター通信部7が搭載してある。このように、本発明に係る車載通信装置は、ミリ波を利用した車輌間の通信、光を利用した車輌間の通信、及び携帯電話網を利用した管理センター100との間の通信の3種の通信を行う機能を有している。これらの通信を行うための障害物検知部3、ミリ波受信部4、ストップランプ5、受光部6及びセンター通信部7は、車輌1の適所に搭載された制御部2に接続してあり、制御部2によって動作を制御されている。
【0038】
図2は、本発明に係る車載通信装置の構成を示すブロック図である。車載通信装置の障害物検知部3は、ミリ波送信部31、反射波検知部32及び重畳部33等を有している。障害物検知部3は、ミリ波送信部31にて波長が10mm〜1mm程度の電波(電磁波)であるミリ波を車輌1の前方へ放射し、障害物からのミリ波の反射波を反射波検知部32にて検知することによって、車輌の前方に存在する障害物を検知するようにしてある。障害物の検知結果は制御部2へ与えられ、制御部2から車輌1に搭載されたブレーキの制御装置又は警報装置等の他の装置(図示は省略する)へ車内ネットワークを介して与えられて、車輌1の走行の自動制御又は運転者への警報等の処理が行われる。障害物検知部3からのミリ波の放射は、例えば1秒間に数回程度の頻度で、定期的に繰り返し行われている。
【0039】
障害物検知部3の重畳部33は、制御部2から与えられた送信用の情報に係る信号をミリ波送信部31が放射するミリ波に重畳する処理を行うようにしてあり、これにより車載通信装置は車輌1の前方へ情報の送信を行うことができる。障害物検知部3からミリ波に重畳されて送信される情報は、他車輌(先行車輌)が保持する渋滞情報又は事故情報等の情報を自車輌へ送信する送信要求であり、送信要求には自車輌に付されたID(IDentifier)及び管理センター100から付与された認識コード(後述する)等が含まれている。
【0040】
ミリ波受信部4は、後方の他の車輌1に搭載された障害物検知部3から送信されるミリ波を受信するものである。ミリ波受信部4は、受信したミリ波に重畳された信号から情報(送信要求、ID及び認識コード)を抽出して制御部2へ与えるようにしてある。
【0041】
ストップランプ5は、車輌1のブレーキ(図示は省略する)を運転者が操作した際に点灯するようにしてあり、光源としてLED52を有している。LED52は駆動部51により駆動されており、駆動部51はLED52の点灯/消灯を行うと共に、LED52を点灯した際の発光量を調整することができるようにしてある。また、制御部2は、ブレーキ操作に伴ってストップランプ5を点灯する際に、後方の他の車輌1からミリ波により受信した送信要求に対する情報をストップランプ5へ与えるようにしてあり、ストップランプ5は与えられた情報に係る信号をASK(Amplitude Shift Keying)変調し、駆動部51にて変調結果に応じたLED52の駆動を行うことによって、LED52が発する光を利用した信号の送信を行うようにしてある。ストップランプ5から光の信号により送信される情報には、送信要求に対する渋滞情報又は事故情報等の情報であり、自車輌に付されたID及び管理センター100から付与された認識コード等が情報に付されて送信されるようにしてある。
【0042】
車輌1の前部に搭載された受光部6は、受光した光を電気信号に変換する受光素子62と、車輌1の前方からの光を受光素子62へ集光するレンズ61とを有している。受光部6は受光素子62が出力する電気信号を制御部2へ与えるようにしてあり、制御部2は与えられた電気信号からASK変調された信号に係る情報を取得するようにしてある。
【0043】
センター通信部7は、携帯電話網による通信を行うものであり、制御部2から与えられた情報を変調して無線電波として送信すると共に、受信した無線電波を復調して得られた情報を制御部2へ与えるようにしてある。また、制御部2は、センター通信部7により管理センター100との間で情報の送受信を行うようにしてある。これにより制御部2は、障害物検知部3又はストップランプ5による情報送信を行う場合に管理センター100から認識コードを取得し、取得した認識コード及び予め付されたIDを情報に付与して送信するようにしてある。また、制御部2は、ミリ波受信部4又は受光部6にて情報を受信した場合に、受信した情報に付与されたID及び認識コードをセンター通信部7にて管理センター100に送信し、受信した情報が正当な情報であるか否かを調べる認証処理を行うようにしてある。
【0044】
図3は、本発明に係る車載通信装置を利用した通信の一例を説明するための模式図であり、2つの車輌1(先行車輌1a及び後続車輌1b)及び管理センター100の間で行われる通信を順に(1)〜(10)に示してある。車輌1は障害物検知部3のミリ波により前方に障害物が存在するか否かの検知を常に行っており、図3には後続車輌1bが障害物検知部3からミリ波を放射する場合のみが図示してあるが、実際には先行車輌1aも同様に障害物検知部3からのミリ波の放射を行っている。
【0045】
後続車輌1bは、障害物検知部3からミリ波を放射する前に、センター通信部7にて管理センター100との間で通信を行い、ミリ波による情報送信を行うための認識コードの取得を管理センター100に要求する(図3(1)参照)。この際に後続車輌1bのセンター通信部7は、後続車輌1bに予め付されたIDを認識コードの取得要求と共に管理センター100に送信するようにしてある。
【0046】
管理センター100には各車輌1(又は各車載通信装置)に付されたIDが予め記憶してあり、後続車輌1bから認識コードの取得要求を受信した管理センター100は、取得要求と共に受信したIDが予め記憶された正当なIDであるか否かを調べるようにしてある。正当なIDによる取得要求と判断した場合、管理センター100はこの取得要求を送信した車輌1(後続車輌1b)へ認識コードを送信して付与するようにしてある(図3(2)参照)。なお、管理センター100が付与する認識コードは、取得要求の受信毎に生成され、毎回異なる値である。
【0047】
管理センター100からの認識コードをセンター通信部7にて受信した後続車輌1bは、他の車輌1が有する情報の送信要求、自車輌(後続車輌1b)のID及び管理センター100から付与された認識コード等を重畳部33にてミリ波に重畳し、ミリ波送信部31から送信するようにしてある(図3(3)参照)。車輌1(後続車輌1b)の前方(ミリ波の到達範囲内)に他の車輌1(先行車輌1a)が存在する場合には、先行車輌1aがミリ波を受信して後述の処理を行う。前方に先行車輌1aが存在しない場合には、後続車輌1bが情報を受信することができないため、上述の処理を繰り返し行うようにしてある。
【0048】
交差点などで2つの車輌1(先行車輌1a及び後続車輌1b)が前後に並んで停車した状態では、後続車輌1bからのミリ波を先行車輌1aのミリ波受信部4が受信することができ、ミリ波受信部4は受信したミリ波に重畳された送信要求、ID及び認識コード等の情報を抽出して制御部2へ与えるようにしてある。制御部2は、与えられたID及び認識コードをセンター通信部7から管理センター100へ送信して確認することによって、受信した送信要求が正当なものであるか否かを判断する認証処理を行うようにしてある(図3(4)参照)。
【0049】
管理センター100には、各車輌1に付与した認識コードを各IDに関連付けて例えばテーブルなどに記憶してある。先行車輌1aからのID及び認識コードを受信した管理センター100は、このIDに対して付与した認識コードであるか否かを調べて、ID及び認識コードが正当なものであるか否かを認証回答として返信する(図3(5)参照)。
【0050】
管理センター100からの認証回答をセンター通信部7にて受信した先行車輌1aは、後続車輌1bからのID及び認識コードが正当なものであるか否か、即ち認証に成功したか否かを制御部2にて調べる。認証に成功した場合、制御部2は後続車輌1bへ送信要求に応じた情報を送信するために、センター通信部7にて管理センター100との間で通信を行って認識コードの取得を要求する(図3(6)参照)。この際に先行車輌1aのセンター通信部7は、後続車輌1bのIDを認識コードの取得要求と共に管理センター100に送信するようにしてある。また、認証に失敗した場合、制御部2は後続車輌1bからの送信要求を破棄するようにしてある。
【0051】
先行車輌1aからの認識コードの所得要求を受信した管理センター100は、取得要求と共に受信したIDが予め記憶された正当なIDであるか否かを調べる。正当なIDによる取得要求と判断した場合、管理センター100はこの取得要求を送信した先行車輌1aへ認識コードを送信して付与するようにしてある(図3(7)参照)。
【0052】
管理センター100からの認識コードをセンター通信部7にて受信した先行車輌1aは、後続車輌1bからの送信要求に対応する情報を制御部2が取得し、取得した情報、先行車輌1aのID及び管理センター100から取得した認識コード等を含む情報をASK変調してストップランプ5のLED52の点灯を制御し、後続車輌1bへストップランプ5の光による情報送信を行う(図3(8)参照)。なお、先行車輌1aから後続車輌1bへ送信される情報は、例えば先行車輌1aのカーナビゲーション装置に設定されている目的地、走行開始地点からの走行距離及び走行時間等の情報であってもよく、先行車輌1aが他の車輌1から受信した情報などであってもよい。
【0053】
先行車輌1aのストップランプ5からの光を受光部6にて受光した後続車輌1bは、ASK変調された情報を復調することによって情報を受信する。後続車輌1bの制御部2は、受信した情報に含まれるID及び認証コードをセンター通信部7から管理センター100へ送信して確認することによって、受信した情報が正当なものであるか否かを判断する認証処理を行うようにしてある(図3(9)参照)。
【0054】
後続車輌1bからのID及び認識コードを受信した管理センター100は、このIDに対して付与した認識コードであるか否かを調べて、ID及び認識コードが正当なものであるか否かを認証回答として返信する(図3(10)参照)。管理センター100からの認証回答をセンター通信部7にて受信した後続車輌1bは、先行車輌1aからのID及び認識コードが正当なものであるか否か、即ち認証に成功したか否かを制御部2にて調べる。認証に成功した場合、制御部2は先行車輌1aから受信した情報を基に、例えば交通状況の予測又は目的地までの所要時間の算出等の種々の処理を行って、運転者に情報を通知する。また、認証に失敗した場合、制御部2は先行車輌1aから受信した情報を破棄するようにしてある。
【0055】
上記の(1)〜(10)の通信を行うことによって、先行車輌1aから後続車輌1bへ信頼性の高い種々の情報を送信することができる。この方法による通信を行うことによって、交差点などにおいて複数の車輌1が並んで停車している場合、最前の車輌1から順に後方の車輌へ情報が伝達されるため、多数の車輌1が情報を共有することができる。
【0056】
図4及び図5は、本発明に係る車載通信装置が行う通信処理の手順を示すフローチャートであり、情報を取得する車輌1(後続車輌1b)の処理を示してある。車載通信装置は、運転者が通信に係る種々の操作を行うためのボタン又はスイッチ等が配された操作部(図示せず)を有しており、操作部を運転者が操作することによって車輌1間での通信を終了/開始させることができるようにしてある。車載通信装置の制御部2は、操作部の操作によって運転者から通信処理の終了指示が与えられたか否かを調べ(ステップS1)、終了指示が与えられた場合には(S1:YES)、通信処理を終了する。終了指示が与えられていない場合には(S1:NO)、終了指示が与えられるまで制御部2は以下の処理を繰り返し行う。
【0057】
まず、制御部2は、センター通信部7により管理センター100へ予め与えられた自車輌のIDを送信することによって、認識コードの取得を要求し(ステップS2)、この要求に対する管理センター100からの認識コードをセンター通信部7にて受信したか否かを調べる(ステップS3)。認識コードを受信していない場合には(S3:NO)、制御部2は認識コードを受信するまで待機する。認識コードを受信した場合(S3:YES)、他の車輌1が有する情報の送信要求を障害物検知部3が放射するミリ波に重畳することによって、制御部2は他の車輌1への情報の送信要求を行う(ステップS4)。このとき、制御部2は、情報の送信要求と共に、自車輌に付されたID及びステップS3にて受信した認識コードをミリ波に重畳して送信するようにしてある。
【0058】
その後、制御部2は他の車輌1からの光により送信される情報を受光部6にて受信したか否かを調べる(ステップS5)。他の車輌1から情報を受信していない場合(S5:NO)、制御部2は更に、ステップS4の送信要求の完了から所定時間が経過したか否かを調べる(ステップS6)。所定時間が経過していない場合には(S6:NO)、制御部2はステップS5へ戻って他の車輌1からの情報の受信を待機する。所定時間が経過した場合には(S6:YES)、制御部2はステップS1へ戻って、情報の送信要求を繰り返し行う。
【0059】
ステップS5にて他の車輌1からの情報を受光部6にて受信した場合(S5:YES)、制御部2は情報と共に受信したID及び認識コードをセンター通信部7から管理センター100へ送信することによって、ID及び認識コードの確認(認証処理)を行う(ステップS7)。その後、制御部2は管理センター100からの認証回答をセンター通信部7にて受信したか否かを調べ(ステップS8)、認証回答を受信していない場合には(S8:NO)、認証回答を受信するまで待機する。
【0060】
管理センター100から認証回答を受信した場合(S8:YES)、受信した認証回答から制御部2は認証に成功したか否かを調べる(ステップS9)。認証に成功した場合(S9:YES)、ステップS5にて他の車輌1から受信した情報に対する種々の処理を行って(ステップS10)、制御部2はステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返し行う。認証に成功しなかった場合(S9:NO)、制御部2は受信した情報に対する処理を行うことなくステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返し行う。
【0061】
以上の通信処理によって、車載通信装置は前方の車輌1から種々の情報を取得することができ、取得した情報に種々の情報処理を施して車輌1の運転者に情報提供を行うことができる。上述の処理は運転者からの通信終了の指示が与えられるまで繰り返し行われており、他の車輌1との間で通信を行うことができる場合には情報を最新のものに更新することができる。なお、図4及び図5に示す処理には、障害物検知部3による障害物の検知処理は含まれていないが、ステップS4にて情報の送信要求を行う際に車輌1の前方へ放射されたミリ波の反射波を障害物検知部3にて検知することによって、障害物の検知処理を行うことができる。
【0062】
図6は、本発明に係る車載通信装置が行う通信処理の手順を示すフローチャートであり、情報を送信する車輌1(先行車輌1a)の処理を示してある。車載通信装置の制御部2は、操作部の操作によって運転者から通信処理の終了指示が与えられたか否かを調べ(ステップS21)、終了指示が与えられた場合には(S21:YES)、通信処理を終了する。終了指示が与えられていない場合には(S21:NO)、終了指示が与えられるまで制御部2は以下の処理を繰り返し行う。
【0063】
まず、制御部2は、ミリ波受信部4にて後方の他の車輌1からミリ波に重畳された送信要求を受信したか否かを調べ(ステップS22)、送信要求を受信していない場合には(S22:NO)、ステップS21へ戻って送信要求を受信するまで待機する。他の車輌1から送信要求を受信した場合(S22:YES)、制御部2は送信要求と共に受信する他の車輌1のID及び認識コードをセンター通信部7から管理センター100へ送信することによって、ID及び認識コードの確認(認証処理)を行う(ステップS23)。その後、制御部2は管理センター100からの認証回答をセンター通信部7にて受信したか否かを調べ(ステップS24)、認証回答を受信していない場合には(S24:NO)、認証回答を受信するまで待機する。
【0064】
管理センター100から認証回答を受信した場合(S24:YES)、受信した認証回答から制御部2は認証に成功したか否かを調べる(ステップS25)。認証に失敗した場合(S25:NO)、制御部2はステップS21へ戻り、他の車輌1からの送信要求を受信するまで待機する。認証に成功した場合(S25:YES)、制御部2は、センター通信部7により管理センター100へ自車輌のIDを送信することによって、認識コードの取得を要求し(ステップS26)、この要求に対する管理センター100からの認識コードをセンター通信部7にて受信したか否かを調べる(ステップS27)。認識コードを受信していない場合には(S27:NO)、制御部2は認識コードを受信するまで待機する。認識コードを受信した場合(S27:YES)、ステップS22にて受信した他の車輌1からの送信要求に応じた情報を制御部2は読み出し、自車輌のID及び管理センター100から取得した認識コードと共にASK変調して、ストップランプ5の光により情報送信を行う(ステップS28)。情報送信を終了した後、制御部2はステップS21へ戻り、上述の処理を繰り返し行う。
【0065】
以上の構成の車載通信装置においては、車輌1の前部に搭載された障害物検知部3からミリ波に重畳して情報(送信要求、ID及び認識コード等)を前方の他の車輌1に送信すると共に、車輌1の後部に搭載されたミリ波受信部4にて後方の他の車輌1から送信されたミリ波を受信して重畳された情報を取得する構成とすることにより、障害物を検知するためのミリ波を利用して後方の車輌1から前方の車輌1へ情報の送信を行うことができる。障害物検知のためのミリ波を放射する装置を搭載した車輌であれば、ミリ波受信部4を搭載するのみでこの通信機能を実現することができる。
【0066】
また、車輌1のストップランプ5を利用してASK変調により情報を光で後方へ送信すると共に、車輌1の前部にストップランプ5の光を受光する受光部6を設けて受光した光を復調して情報を取得する構成とすることにより、ストップランプ5を利用して前方の車輌1から後方の車輌1へ情報の送信を行うことができる。ASK変調を利用することによって、多種多様な情報の送信を行うことができる。ストップランプ5は車輌1に必ず搭載されているため、受光部6を車輌に搭載するのみでこの通信機能を実現することができる。
【0067】
よって、複数の車輌1が交差点などで並んで停車した場合に、前方の車輌1から後方の車輌1へ順に情報を送信することができ、複数の車輌1が情報を共有することができる。また、前方への情報送信と、後方への情報送信とを異なる方法で行う構成であるため、通信の干渉及び衝突等が発生せず、高品質な通信を複数の車輌1の間で行うことができる。
【0068】
また、車輌1に携帯電話網を利用して通信を行うセンター通信部7を搭載し、地上の管理センター100との間で認証処理を行う構成とすることによって、複数の車輌1の間で送受信される情報及び送信要求の信頼性を高めることができ、悪意の通信を排除することができるため、安全性及び秘匿性の高い通信を実現することができる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、車輌1のストップランプ5を利用して光による情報の送信を行う構成としたが、これに限るものではなく、テールランプ又は方向指示ランプ等の他のランプを利用する構成であってもよい。また、後方の車輌1(後続車輌1b)から前方の車輌1(先行車輌1a)へ情報の送信要求をミリ波により送信し、前方の車輌1から後方の車輌1へ情報を光により送信する構成としたが、これに限るものではなく、前方の車輌1から後方の車輌1へ送信要求を光により送信し、後方の車輌1から前方の車輌1へ情報をミリ波により送信する構成としてもよい。また、管理センター100との通信を携帯電話網を利用した通信により行う構成としたが、これに限るものではなく、その他の通信方法を用いてもよい。また、車載通信装置は、情報の送信を行う際に管理センター100との通信を行って認識コードを取得すると共に、情報を受信した際に管理センター100との通信を行って認証処理を行う構成としたが、これに限るものではなく、車輌間での通信が十分に信頼性の確保されたものである場合には、管理センター100との通信を行わずに、車輌間でのみの通信を行う構成としてもよい。また、障害物検知部3にてミリ波に送信要求を常に重畳して車輌1の前方に送信する構成としたが、これに限るものではなく、車輌1の前方に障害物が検知された場合にのみ、ミリ波に送信要求を重畳して送信する構成としてもよい。また、本実施の形態においては特に言及していないが、車輌間の通信は暗号化して行ってもよい。車輌1及び管理センター100の間の通信についても同様である。
【0070】
(変形例)
図7は、本発明の変形例に係る車載通信装置の構成を示す模式図である。変形例に係る車載通信装置は、前方の車輌1から後方の車輌1へのストップランプ5を利用した通信の精度を高めたものである。変形例に係る車載通信装置は、図1に示した車載通信装置に、車輌1の前方を撮像するカメラ208と、受光部6の位置を調整する調整部209とを追加した構成である。
【0071】
カメラ208は、例えば車輌1のルームミラー近傍又はフロントバンパー近傍等に設けられて、車輌1の前方を1秒間に数十回程度の頻度で撮像し、撮像した画像を制御部2へ与えるようにしてある。制御部2は、カメラ208が撮像した画像を基に画像処理を行って、車輌1の前方に他の車輌1が存在するか否かを判定すると共に、他の車輌1が存在する場合には他の車輌1のストップランプ5の位置を検出する処理を行うようにしてある。制御部2は、検出したストップランプ5の位置を調整部209へ与えることによって、受光部6の位置調整を行うようにしてある。
【0072】
なお、ストップランプ5の位置は、カメラ208が撮像した画像を基に、例えば路面からの距離が略等しい位置に写された2つの赤色部分を抽出し、この2つの赤色部分の間の距離が所定距離範囲内(車輌1の2つのストップランプの間の距離として妥当と考えられる距離範囲内)に存在するか否かを調べ、所定距離範囲に存在する場合にこの2つの赤い部分をストップランプ5の位置として検出することができる。
【0073】
調整部209は、車輌1の前部の左右に設けられた2つの受光部6にそれぞれ設けられており、各受光部6の位置を各調整部209がそれぞれ調整するようにしてある。調整部209は、例えばアクチュエータ、モータ及び歯車機構等を用いて、制御部2から与えられる位置情報に応じて、受光部6の位置を調整する。このとき、調整部209は、前方の他の車輌1のストップランプ5の位置に合わせて、受光部6がストップランプ5を向くように、受光部6の位置及び角度等を調整して受光方向を調整するようにしてある。
【0074】
以上の構成の変形例に係る車載通信装置においては、前方の車輌1の車種又は停車位置等に影響されることなく、前方の車輌1のストップランプ5が発する光を受光部6にて受光することができるため、ストップランプ5の光を利用した車輌間の通信の信頼性を高めることができる。なお、本変形例においては、カメラ208が撮像した画像のみから制御部2が前方の車輌1に設けられたストップランプ5の位置を検出する構成としたが、これに限るものではなく、例えば障害物検知部3にて前方の車輌1との間の距離を測定することができる場合には、障害物検知部3が測定した車間距離とカメラ208が撮像した画像とを基にストップランプ5の位置を検出する構成としてもよく、その他の方法でストップランプ5の位置を検出する構成としてもよい。
【0075】
また、調整部209は、受光部6の全体の位置及び角度等を調整するのではなく、受光部6の受光素子62についてのみ調整を行ってもよく、レンズ61についてのみ調整を行ってもよい。更には、例えばレンズ61及び受光素子62の間にプリズムなどの光を屈折させる光学部材を設け、この光学部材の位置及び角度等を調整する構成とすることもできる。また、カメラ208が十分に高速に撮像を行うことができ、制御部2が高速に画像処理を行うことができる場合には、受光部6を車輌1に搭載せず、カメラ208が撮像した画像を基に、ストップランプ5の光により送信された情報を取得する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る車載通信装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車載通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車載通信装置を利用した通信の一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る車載通信装置が行う通信処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る車載通信装置が行う通信処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る車載通信装置が行う通信処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の変形例に係る車載通信装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1 車輌
1a 先行車輌
1b 後続車輌
2 制御部(検出手段、認証手段)
3 障害物検知部(無線送信手段、障害物検知手段)
4 ミリ波受信部(無線受信手段)
5 ストップランプ(光送信手段)
6 受光部(光受信手段)
7 センター通信部(地上通信手段)
31 ミリ波送信部
32 反射波検知部
33 重畳部
51 駆動部
52 LED
61 レンズ
62 受光素子
100 管理センター(通信装置)
208 カメラ(撮像手段)
209 調整部(調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌に搭載され、他の車輌との間で信号の送受信を行う車載通信装置において、
車輌の前方へ電波による信号を送信する無線送信手段と、
前記車輌の後方へ光による信号を送信する光送信手段と、
後方から送信された電波による信号を受信する無線受信手段と、
前方から送信された光による信号を受信する光受信手段と
を備えることを特徴とする車載通信装置。
【請求項2】
電波を放出して前記車輌の前方の障害物を検知する障害物検知手段を備え、
前記無線送信手段は、前記障害物検知手段の電波に信号を重畳して送信するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項3】
前記光送信手段は、前記車輌の後部に搭載されたストップランプが発する光により信号を送信するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車載通信装置。
【請求項4】
前記光送信手段は、前記光を振幅変調することによって信号を送信するようにしてあること
を特徴とする請求項3に記載の車載通信装置。
【請求項5】
前記光受信手段は、光を受光する受光部を有し、
前記車輌の前方を撮像して画像を取得する撮像手段と、
該撮像手段が撮像して取得した画像から、前方の他の車輌に搭載されたストップランプの位置を検出する検出手段と、
該検出手段の検出結果に応じて、前記受光部の位置を調整する調整手段と
を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車載通信装置。
【請求項6】
地上に設置された通信装置との間で通信を行う地上通信手段と、
該地上通信手段を介して前記通信装置との間で認証処理を行う認証手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項7】
前記無線送信手段は、情報の送信要求及び車輌の認識情報を電波により送信するようにしてあり、
前記無線受信手段が情報の送信要求及び車輌の認識情報を受信した場合に、前記認証手段が前記認識情報に基づく認証処理を行うようにしてあり、
前記認証処理が成功した場合に、前記送信要求に応じた情報及び車輌の認識情報を前記光送信手段が光により送信するようにしてあり、
前記光受信手段が前記送信要求に応じた情報及び車輌の認識情報を受信した場合に、前記認証手段が前記認識情報に基づく認証処理を行うようにしてあること
を特徴とする請求項6に記載の車載通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−15452(P2009−15452A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174341(P2007−174341)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】