説明

車載速度低下装置

【課題】ユーザが特殊操作を行うことができない状態であっても、動力系の異常時に自動で車速を低下させることができる車載速度低下装置を提供する。
【解決手段】動力系の異常を自動判定し(ステップS10)、動力系が異常であると判定した場合には、エンジンを自動的に停止させる制御を行う(ステップS20〜S40)。よって、ユーザの特殊操作なしでエンジンが停止するので、ユーザが特殊操作を行うことができない状況であっても、エンジンを停止させることができ、その結果、車速を低下させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、その車両の速度を自動的に低下させる車載速度低下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中に車両異常が生じたとき、エンジンを強制的に停止させる技術が提案されている(たとえば、特許文献1)。特許文献1では、エンジンの始動または停止を要求する始動・停止スイッチを備え、この始動・停止スイッチをユーザが所定時間以上操作保持した場合には、エンジンを強制停止させるための特殊操作であると判断してエンジンを強制的に停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−263020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンを停止させる必要がある車両異常とは、具体的には、エンジンそのものの異常や、エンジンを制御するエンジンECU(electronic control unit)の異常が考えられる。ところで、エンジンやエンジンECUを含んだ動力系が異常である状態では、ユーザがパニック状態となっていることも考えられる。そのため、特許文献1のように、ユーザの特殊操作によりエンジンを強制的に停止させる技術では、ユーザがパニック状態になっていて特殊操作を行えず、エンジンを停止させることができず、その結果、車速が低下していかない可能性がある。また、ユーザの体力低下により特殊操作を行えない場合にも、エンジンを停止させることができず、その結果、車速が低下していかない可能性がある。
【0005】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、ユーザが特殊操作を行うことができない状態であっても、動力系の異常時に自動で車速を低下させることができる車載速度低下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その目的を達成するための本発明は、ブレーキ踏力が強踏力判定値以上であるにもかかわらず、車速が走行状態判定車速以上であって、車両の駆動力源が基準値以上で運転している状態が、予め設定された判定時間以上継続していること、または、ブレーキ踏力が強踏力判定値以上であるにもかかわらず、車速が走行状態判定車速以上であって、駆動力源を制御する駆動力源制御装置(40)が正常でない状態が、予め設定された判定時間以上継続していることに基づいて、駆動力源および駆動力源制御装置を含む動力系が異常であると判定する動力系異常判定手段(12(S10)、112(S100))と、動力系異常判定手段において動力系が異常であると判定された場合に、前記駆動力源により車両が駆動させられていない非駆動状態とする制御を行う非駆動化制御手段(12(S20〜S40)、112(S110〜S130))と含むことを特徴とする車載速度低下装置(10、100)である。
【0007】
このように、本発明では、動力系異常判定手段により、動力系の異常を自動判定しており、動力系が異常であると判定した場合には、駆動力源により車両が駆動させられていない非駆動状態とする制御を行なう。よって、ユーザの特殊操作なしで非駆動状態とすることができるため、ユーザが特殊操作を行うことができない状況であっても、非駆動状態となり、その結果、車速を低下させることができる。
【0008】
上記非駆動化制御手段として、たとえば、前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、前記駆動力源を停止させる制御を行う駆動力源停止制御手段(12、S20〜S40)を備えることができる。
【0009】
この場合には、動力系異常判定手段が、動力系が異常であると判定した場合には、駆動力源停止制御手段が駆動力源を停止させる制御を行なう。よって、ユーザの特殊操作なしで駆動力源を停止させることができる。したがって、ユーザが特殊操作を行なうことができない状況であっても、駆動力源を停止させることができ、その結果、車速を低下させることができる。
【0010】
上記駆動力源停止制御手段は、駆動力源制御装置へ駆動力源停止を指示してもよい。しかし、この場合には、駆動力源制御装置が異常となっていると、駆動力源が停止しなかったり、あるいは、駆動力源停止がスムーズに行われないおそれもある。そこで、好ましくは、駆動力源停止制御手段(12、S40)は、イグニッションリレーをオフすることにより、駆動力源を停止させる。これにより、イグニッションリレーをオフするようにすれば、駆動力源制御装置が異常であったとしても、駆動力源を停止させることができる。
【0011】
また、次のようにすることが好ましい。すなわち、駆動力源停止制御手段(12、S20〜S30)は、動力系異常判定手段において動力系が異常であると判定された場合に、駆動力源を停止させる制御を実行することをユーザに通知した後、ユーザが取り消し入力を行った場合には、駆動力源を停止させる制御を行わない一方、ユーザが取り消し入力を行わないと判断した場合に、駆動力源を停止させる制御を実行する。
【0012】
このようにすれば、動力系が異常であるとの判定結果が誤っていた場合に、ユーザは取り消し入力をすることにより、誤った判定結果によって駆動力源が停止してしまうことを防止できる。また、駆動力源停止制御手段は、ユーザが取り消し入力を行わないと判断した場合には、駆動力源を停止させる制御を実行するので、ユーザ操作なしで駆動力源を停止させることができる。
【0013】
また、前記非駆動化制御手段として、前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、前記車両のシフトポジションを、ニュートラルポジションとすることで前記駆動力源の駆動力を無効化する駆動力無効化手段(112(S110〜S130))を備えてもよい。
【0014】
さらに、前記駆動力無効化手段により前記駆動力源の駆動力を無効化した後、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作状態に基づいて、ユーザに車両再走行の意思があると判断した場合には、前記シフトポジションを、前進走行時のポジションとする駆動力復帰手段(112(S200〜S240))を備えていることが好ましい。
【0015】
また、駆動力源制御装置が正常でないことは、たとえば、次のようにして判定する。すなわち、駆動力源制御装置は、車載速度低下装置へ周期的にパルス信号を送信するようになっており、動力系異常判定手段は、パルス信号の送信周期に基づいて、駆動力源制御装置が正常でないと判定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の車載速度低下装置としての機能を備えた電源制御搭載ユニット10およびこの電源制御搭載ユニット10と関連する機器を示すブロック図である。
【図2】マイコン12が実行する自動エンジン停止制御の内容を示すフローチャートである。
【図3】図2のステップS10における判定条件を示す図である。
【図4】第2実施形態である電源制御ECU100、およびこの電源制御ECU100と関連する機器を示すブロック図である。
【図5】図4のマイコン112が行なう車両駆動力無効化制御を示すフローチャートである。
【図6】図5のステップS100における判定条件を示す図である。
【図7】図4のマイコン112が行なう駆動力復帰制御を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップS200における判定条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。第1実施形態は、駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えた車両に本発明が適用されている。図1は、第1実施形態において、本発明の車載速度低下装置としての機能を備えた電源制御搭載ユニット10およびこの電源制御搭載ユニット10と関連する機器を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、電源制御搭載ユニット(以下、電源制御ECU)10は、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)12と、バッテリ20に接続されてマイコン12に適した電圧の電源を生成してマイコン12に供給する内部電源生成部14を備えている。
【0019】
車両電源装置30は、バッテリ20から各種車載装置へ電力を供給する電力供給経路に設けられており、イグニッションリレー、アクセサリリレー(いずれも図示せず)を含んだ構成である。これらのリレーがオンオフ制御されることにより、車両の電源状態が、アクセサリオン、イグニッションオン、イグニッションオフに切り替えられる。
【0020】
マイコン12は、車両の電源状態を制御する電源制御部として機能しており、車両電源装置30のイグニッションリレー、アクセサリリレーを制御することにより、車両の電源状態を、アクセサリオン、イグニッションオン、イグニッションオフに切り替える。
【0021】
上記マイコン12は、エンジンECU40、電源切替スイッチ50、アクセルスイッチ60、ブレーキECU70、車速センサ80と接続されており、マイコン12はこれらの機器から各種の信号を取得する。具体的には、エンジンECU40はエンジン回転速度を示す信号、および、パルス信号(以下、エンジンパルス信号)を周期的にマイコン12に出力する。なお、このエンジンECU40は、エンジン(図示せず)を制御するものであり、特許請求の範囲の駆動力源制御装置に相当する。
【0022】
電源切替スイッチ50は、単一の押釦スイッチであり、押下される毎に、そのことを示す押下信号をマイコン12に出力する。マイコン12は、この電源切替スイッチ50が押される毎に、車両電源装置30のリレーを制御することにより、車両の電源状態を、アクセサリオン→イグニッションオン→イグニッションオフの順に車両の電源状態を変化させる。また、自動エンジン停止制御においては、この電源切替スイッチ50が押下された場合には自動エンジン停止制御を中止する。
【0023】
アクセルスイッチ60は、アクセル(図示せず)が開/閉いずれであるかを示す信号をマイコン12に出力する。ブレーキECU70は、ブレーキペダルが踏まれているか否かを示す信号をマイコン12に出力するとともに、ブレーキ油圧からブレーキ踏力を検出し、検出したブレーキ踏力を示す信号もマイコン12に出力する。車速センサ80は、車速を示す信号をマイコン12に出力する。
【0024】
マイコン12は、上記エンジンECU40等から供給される各種の信号に基づいて、エンジン(図示せず)およびエンジンECU40を含む動力系の異常を逐次判定する。そして、動力系が異常であると判定した場合には、エンジンを自動的に停止させるための自動エンジン停止制御を実行する。この自動エンジン停止制御の詳細は後述する。
【0025】
また、マイコン12は表示装置90とも接続されている。表示装置90は、インスツルメントパネルに配置されており、メータ類を表示するとともに、マイコン12によって制御されることにより、エンジンを自動停止させることをユーザに通知するメッセージを表示する。
【0026】
次に、マイコン12が実行する自動エンジン停止制御を説明する。図2は、その自動エンジン停止制御の内容を示すフローチャートである。マイコン12は、この自動エンジン停止制御を周期的に実行する。
【0027】
まず、ステップS10では、動力系が異常であってエンジンを停止させる必要があるか否かを判定する。この判定は具体的には、図3に示す判定条件を満たすか否かにより行う。図3に示す判定条件は、(1)〜(4)の条件からなっている。(1)の条件は、ブレーキオン、より詳しくは、ブレーキ踏力が、予め記憶している最大ブレーキ踏力の90%以上であることである。この「90%」は、運転者がブレーキを強く踏み込んでいることを判定するための値であり、特許請求の範囲の強踏力判定値の一例である。
【0028】
(2)の条件は車速が50km/hより高いという条件である。この(2)の条件は、車両が走行中かどうかを判定するものであり、(1)の条件と組み合わせられることにより、ブレーキが踏み込まれているにもかかわらず、車両が走行していることを判定するための条件である。なお、「50km /h」は、特許請求の範囲の走行状態判定車速の一例であり、必ずしも50km /hである必要はなく、車両が走行していることを判定できれば、それよりも高くても、また、低くてもよい。
【0029】
(3)の条件は、(3−1)と(3−2)のいずれかが成立したときに(3)の条件が成立したと判定する。(3−1)の条件は、エンジン回転速度が2000rpm以上という条件である。(3−2)の条件は、エンジンECU40が正常でないという条件である。エンジンECU40が正常であるか否かは、エンジンECU40が出力するパルス信号の周期により判断し、このパルス信号の周期が予め設定された正常周期範囲内であればエンジンECU40は正常であると判定する。
【0030】
(4)の条件は、上記(1)〜(3)が全て成立している状態が一定時間(ここでは10秒)継続しているという条件である。なお、(3−2)の条件はエンジンECU40の異常を判定する条件であったが、一方の(3−1)の条件は、(1)、(4)の条件と組み合わされて動力系の異常を判定するものである。ブレーキ踏力が90%以上であるにもかかわらず、エンジン回転速度が2000rpm以上である状態が継続している場合には動力系が異常であると推定できるからである。
【0031】
上記(1)〜(4)の条件がすべて成立した場合にはステップS10を肯定判断してステップS20へ進み、(1)〜(4)の条件がいずれか1つでも不成立であればステップS10を否定判断して図2の処理を終了する。
【0032】
ステップS20では、エンジンを自動停止させる制御を実行することを意味するメッセージを表示装置90に表示するとともに、この制御を取り消すために行う取り消し入力の方法も表示装置90に表示する。上記取り消し入力は、本実施形態では、電源切替スイッチ50の押下、および、音声入力(たとえば「取り消し」など)であり、いずれか一方の入力が行われた場合には取り消し入力があったと判断する。なお、前者の表示および後者の表示のいずれか一方、または両方に代えて、音声により通知してもよい。
【0033】
続くステップS30では、ユーザはキャンセル意思がないと判断できたか否かを判断する。具体的には、ステップS20においてユーザに通知してから所定時間以内に、ステップS20で通知した取り消し入力が行われなかった場合に、キャンセル意思なしと判断する。すなわち、ステップS20においてユーザに通知してから所定時間以内に、電源切替スイッチ50の押下、および、音声入力がいずれも行われなかった場合に、ユーザはキャンセル意思がないと判断する。この場合には、ステップS30を肯定判断してステップS40へ進む。一方、取り消し入力が所定時間以内に行われた場合には、ステップS30を否定判断し、図2の処理を終了する。
【0034】
ステップS40では、車両電源装置30のイグニッションリレーのオフにする。イグニッションリレーは、バッテリ20から、エンジンECU40等の動力系へ電力を供給する電力供給経路に設けられたリレーであり、このイグニッションリレーがオフになると、エンジンは停止する。
【0035】
以上、説明した本実施形態の電源制御ECU10は、動力系の異常を自動判定しており
(ステップS10)、動力系が異常であると判定した場合には、エンジンを自動的に停止させる制御を行う(ステップS20〜S40)。よって、ユーザの特殊操作なしでエンジンを停止させることができる。したがって、ユーザが特殊操作を行うことができない状況であっても、エンジンを停止させることができ、その結果、車速を低下させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、イグニッションリレーをオフすることによりエンジンを停止させるので(ステップS40)、エンジンECU40が異常であったとしても、エンジンを確実に停止させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、動力系が異常であると判定した場合でも、エンジンを停止させる制御を実行することをユーザに通知した後(ステップS20)、ユーザが取り消し入力を行った場合には(ステップS30がNO)、エンジンを停止させる制御を行わない。よって、動力系が異常であるとの判断結果が誤っていた場合でも、ユーザは取り消し入力をすることにより、誤った判断結果によってエンジンが停止してしまうことを防止できる。また、ユーザが取り消し入力を行わなければ(ステップS30がYES)、エンジンを停止させる制御を実行するので、ユーザ操作なしでエンジンが停止する。
【0038】
(第2実施形態)
次に第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一の要素である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用することができる。
【0039】
図4に示すように、図2実施形態の電源制御ECU100は、機械的構成は第1実施形態の電源制御ECU10と同じであり、マイコン112が実施する制御が第1実施形態と相違する。また、マイコン112はシフト制御装置110と相互に通信可能になっている。
【0040】
第2実施形態の車両は、電気的にシフトポジションを制御可能なシフト切替機構(図示せず)を備えている。シフト制御装置110は、そのシフト切替機構に切替信号を出力することで、シフトポジションを、DポジションからNポジションへ、またはその逆に、NポジションからDポジションなど、設定中のシフトポジションを、他のシフトポジションへ切り替える。
【0041】
マイコン112は、シフト制御装置110から、現在のシフトポジションを示す信号を取得するとともに、シフトポジションの切り替えを要求する信号をシフト制御装置110へ出力する。マイコン112は、これらの処理を、車両駆動力無効化制御の一部として行なう。
【0042】
図5に上記車両駆動力無効化制御を示している。この制御は、第1実施形態の自動エンジン停止制御に代えて実行する。
【0043】
ステップS100では、動力系が異常であるか否かを判定する。この判定は具体的には、図6に示す判定条件を満たすか否かにより行う。図6に示す判定条件は、一部の具体的な数値を除き、図2のステップS10における判定で用いた図3と同じであり、(1)〜(4)の条件からなっている。
【0044】
(1)の条件は、図3と同じであり、特許請求の範囲の強踏力判定値の一例である。(2)の条件は車速が20km/hより高いという条件である。この(2)の条件は、車両が走行中かどうかを判定するもの、つまり、走行状態判定車速の一例である。図3では50km/hとなっていたが、図6では20km/hとしている。
【0045】
その理由は、前述の第1実施形態ではエンジンを停止させてしまうため、その後、再走行するためにはイグニッションONにするためのユーザ操作が必要である。これに対し、第2実施形態では、シフトポジションをNポジションとするだけであり、復帰も自動で行なう(図7)ため、動力系異常と判定しやすくしたとしても、再走行の際に煩わしさがないためである。ただし、必ずしも20km/hである必要はなく、50km/hやその他の値でもよい。
【0046】
(3)の条件は図3と同じである。なお、(3−1)の条件は、第1実施形態で説明したように、(1)、(4)の条件と組み合わされて動力系の異常を判定する条件である。ただし、エンジンが動いているかを判断するための条件でもある。エンジンが動いていない場合には、そもそも、シフトポジションをNポジションとしてエンジンからの動力伝達を遮断する必要がないため、この(3−1)の判断をしていると考えることもできる。
【0047】
(4)の条件は、具体的数値は図3と異なるが、図3と同様、上記(1)〜(3)が全て成立している状態が一定時間継続しているという条件である。
【0048】
ステップS100で動力系が異常でないと判断した場合には(S100:NO)、図5の処理を終了する。一方、動力系が異常であると判断した場合には(S100:YES)、ステップS110で動力系異常FLAGをONにし、続いて、ステップS120でシフトポジションをNポジションへ切り替えること要求する信号をシフト制御装置110へ送信する。
【0049】
この信号を受信したシフト制御装置110が、シフトポジションをNポジションへ切り替える制御を実行することで、エンジンが駆動していても、エンジンの駆動力が駆動輪に伝達されなくなるので、車速が低下していく。ステップS130では、シフトポジションをNポジションに切り替えたことをユーザに通知するためのメッセージを表示装置90に表示させる。
【0050】
第2実施形態では、図7に示す駆動力復帰制御も周期的に実行する。ステップS200では、動力系異常FLAGがONであるかどうかを判断する。この判断がNOであれば図7の処理を終了する。
【0051】
一方、動力系異常FLAGがONであればステップS210へ進む。動力系異常FLAGがONである場合には、シフトポジションがNポジションとされているので、車両は停車するか、停車(車速0)へ向けて速度が低下している状態にある。
【0052】
そこで、ステップS210では、車両の再走行が可能であり、且つ、車両を再走行させる意思がユーザにあるか否かを判定する。この判定は具体的には、図8に示す判定条件を満たすか否かにより行う。図8に示す判定条件は、(1)〜(5)の条件からなっている。
【0053】
(1)の条件はアクセルオンである。アクセルがオンか否かは、アクセルスイッチ60からの信号を用いて判断する。なお、アクセル開度センサ(図示せず)からアクセル開度を示す信号を取得し、アクセル開度が所定値以上(たとえば50%以上)であることを(1)の条件としてもよい。
【0054】
(2)の条件はブレーキがオフであることである。これはブレーキECU70からの信号を用いて判断する。(3)の条件はシフトポジションがNポジションであることである。(4)の条件はエンジンECUが正常であることである。(4)の判断は、図3,6における(3−2)の判断「エンジンECUが正常でない」と同様、エンジンECU40が出力するパルス信号の周期により判断する。このパルス信号の周期が予め設定された正常周期範囲内であればエンジンECU40は正常であると判定する。
【0055】
(5)の条件は、上記(1)〜(4)が全て成立している状態が一定時間(ここでは3秒)継続しているという条件である。上記(1)〜(5)の条件がすべて成立した場合にはステップS210を肯定判断してステップS220へ進み、(1)〜(5)の条件がいずれか1つでも不成立であればステップS210を否定判断して図7の処理を終了する。
【0056】
ステップS220では、シフトポジションをDポジションへ切り替えること要求する信号をシフト制御装置110へ送信する。この信号を受信したシフト制御装置110が、シフトポジションをDポジションへ切り替える制御を実行することで、再び、エンジンの駆動力が駆動輪に伝達される状態となる。ステップS230では、シフトポジションをDポジションに切り替えたことをユーザに通知するためのメッセージを表示装置90に表示させる。そして、ステップS240において動力系異常FLAGをOFFにして、図7の処理を終了する。
【0057】
以上、説明した第2実施形態の電源制御ECU100も、動力系の異常を自動判定している(ステップS100)。動力系が異常であると判定した場合には、シフトポジションを自動的にNポジションにする制御を行う(ステップS120)。これにより、エンジンの駆動力を無効化させるので、車速が低下する。よって、ユーザの特殊操作なしで車速を低下させることができる。
【0058】
また、第2実施形態では、シフトポジションをNポジションとした後、車両再走行の意思があると判定した場合には(ステップS210:YES)、自動でシフトポジションをDポジションに戻す(ステS220)。そのため、ユーザが煩わしい操作をしなくても、車両を再び駆動力により走行させることができる。
【0059】
また、シフトポジションを自動で切り替えた場合には(ステップS120、S220)、その旨をユーザに通知するので(ステップS130、S230)、ユーザが認識しているシフトポジションと実際のシフトポジションが異なってしまうことにより、ユーザに違和感を与えてしまうことを抑制できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
(変形例1)
たとえば、前述の実施形態では、駆動力源としてエンジンを例示したが、エンジンに加えてモータを駆動力源として備えていてもよい。また、エンジンは備えずに、モータのみを駆動力源として備えていてもよい。
【0062】
なお、モータを駆動力源として備える場合、図3、図6の条件(3−1)を、ハイブリッド(以下、HV)システム(あるいはEVシステム)が走行可能状態であることとし、条件(3−2)を、HVシステム(あるいはEVシステム)が正常でないこととする。条件(3−1)「HVシステム(あるいはEVシステム)が走行可能状態であること」は、HV車両あるいは電気自動車において、走行可能状態かどうかを通常のチェックの結果から判断する。また、条件(3−2)「HVシステム(あるいはEVシステム)が正常でないこと」は、前述の実施形態におけるエンジンECUの正常/異常の判断と同様、それらのシステムのECUからパルス信号を取得して、そのパルスの周期が正常であるか否かにより判断する。
【0063】
(変形例2)
また、第2実施形態において、走行中の道路の傾斜が、車両に備えられた傾斜センサ等により取得できる場合には、図6に示す判定条件の具体的数値を、その傾斜に応じて変更してもよい。たとえば、傾斜が所定値以上の下り坂である場合には、(1)の条件が成立する車速を20km/hから30km/hに変更したり、(4)の5秒をより長い時間に変更したりしてもよい。このようにすることで、実際には動力系が異常でないのに、動力系が異常であると判定してしまうことを抑制できる。なお、上記具体的数値を段階的に変更するのではなく、傾斜に応じて連続的に上記具体的数値を変更してもよい。
【0064】
(変形例3)
図7のステップS220では、シフトポジションをDとしていたが、Dポジションとすることに代えて、Sポジションなど、Dポジション以外の前進ポジションとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 電源制御搭載ユニット(車載速度低下装置)、 12 マイクロコンピュータ、 14 内部電源生成部、 20 バッテリ、 30 車両電源装置、 40 エンジンECU、 50 電源切替スイッチ、 60 アクセルスイッチ、 70 ブレーキECU、 80 車速センサ、 90 表示装置、 100 電源制御搭載ユニット(車載速度低下装置)、 112 マイクロコンピュータ、 110 シフト制御装置、 S10 動力系異常判定手段、 S20〜S40 駆動力源停止制御手段、 S100 動力系異常判定手段、 S110〜S130 駆動力無効化手段、 S200〜S240 駆動力復帰手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ踏力が強踏力判定値以上であるにもかかわらず、車速が走行状態判定車速以上であって、車両の駆動力源が基準値以上で運転している状態が、予め設定された判定時間以上継続していること、または、ブレーキ踏力が強踏力判定値以上であるにもかかわらず、車速が走行状態判定車速以上であって、前記駆動力源を制御する駆動力源制御装置(40)が正常でない状態が、予め設定された判定時間以上継続していることに基づいて、前記駆動力源および駆動力源制御装置を含む動力系が異常であると判定する動力系異常判定手段(12(S10)、112(S100))と、
前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、前記駆動力源により車両が駆動させられていない非駆動状態とする制御を行う非駆動化制御手段(12(S20〜S40)、112(S110〜S130))とを含むことを特徴とする車載速度低下装置(10、100)。
【請求項2】
請求項1において、
前記非駆動化制御手段として、前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、前記駆動力源を停止させる制御を行う駆動力源停止制御手段(12、S20〜S40)を備えていることを特徴とする車載速度低下装置(10)。
【請求項3】
請求項2において、
前記駆動力源停止制御手段(12、S40)は、イグニッションリレーをオフすることにより、前記駆動力源を停止させることを特徴とする車載速度低下装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記駆動力源停止制御手段(12、S20〜S30)は、前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、駆動力源を停止させる制御を実行することをユーザに通知した後、ユーザが取り消し入力を行った場合には、駆動力源を停止させる制御を行わない一方、ユーザが取り消し入力を行わないと判断した場合に、駆動力源を停止させる制御を実行することを特徴とする車載速度低下装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記非駆動化制御手段として、前記動力系異常判定手段において前記動力系が異常であると判定された場合に、前記車両のシフトポジションを、ニュートラルポジションとすることで前記駆動力源の駆動力を無効化する駆動力無効化手段(112(S110〜S130))を備えていることを特徴とする車載速度低下装置(100)。
【請求項6】
請求項5において、
前記駆動力無効化手段により前記駆動力源の駆動力を無効化した後、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作状態に基づいて、ユーザに車両再走行の意思があると判断した場合には、前記シフトポジションを、前進走行時のポジションとする駆動力復帰手段(112(S200〜S240))を備えていることを特徴とする車載速度低下装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
前記駆動力源制御装置は、車載速度低下装置へ周期的にパルス信号を送信するようになっており、
前記動力系異常判定手段は、前記パルス信号の送信周期に基づいて、駆動力源制御装置が正常でないと判定することを特徴とする車載速度低下装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−68216(P2013−68216A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175181(P2012−175181)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】