説明

車輌用防汚膜、車輌用防汚塗料、車輌用防汚部材及び車輌用防汚部材の製造方法、及びホイール及びホイールの製造方法

【課題】車輌用部材へのブレーキダストの付着量を減少させ、また、車輌用部材に付着したブレーキダストの洗浄性を向上させることができる車輌用防汚膜、車輌用防汚塗料、車輌用防汚部材、及びホイールを提供する。
【解決手段】防汚性を有する車輌用防汚膜であって、前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用防汚膜、車輌用防汚塗料、車輌用防汚部材及び車輌用防汚部材の製造方法、及びホイール及びホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機等の車輌用部材は、排気ガス中の燃焼生成物、タイヤの磨耗粉、ブレーキダスト等(以下これらを総称してダストと呼ぶ)により汚染される。また、汚染された車輌用部材の洗浄は重労働である。特に、車輌用部材のうちホイールは、ダストの付着量が他の車輌用部材より多い。そこで、車輌用部材(特にホイール)へのダストの付着を防止し(付着量の減少)、また、車輌用部材に付着したダストの洗浄を容易にする(洗浄性の向上)ための開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホイールの表面に光触媒粒子を含む防汚膜を形成することによって、ダストの付着量を減少させるホイールが提案されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2〜4には、ホイールの表面に光触媒粒子と撥水性物質(シリコーン又はフッ素樹脂)を含む表面層を形成することによって、ダストの付着量を減少させ、洗浄性を向上させたホイールが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−306648号公報
【特許文献2】特開平10−193901号公報
【特許文献3】特開平10−46054号公報
【特許文献4】特開平10−129201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜4のホイールでは、ホイールに付着するダストの付着量を減少させることはできず、また、ダストの洗浄性も十分でない。これはホイールへのダストの付着及び洗浄性に起因する物理的因子が明確にされていないためである。また、ホイールに付着するダストの多くがブレーキダストであることは考慮されていない。
【0007】
本発明は、車輌用部材へのダスト、特にブレーキダストの付着量を減少させ、また、車輌用部材に付着したダスト、特にブレーキダストの洗浄性を向上させることができる車輌用防汚膜、車輌用防汚塗料、車輌用防汚部材及びホイールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、防汚性を有する車輌用防汚膜であって、前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たす。
【0009】
また、本発明は、車輌用部材表面に防汚性を付与する車輌用防汚塗料であって、前記車輌用防汚塗料はバインダを含み、前記バインダ100重量部に対して2.5〜15重量部の帯電防止剤及び体積平均粒子径が4μm〜70μmの範囲であって前記バインダ100重量部に対して30〜100重量部のフッ素粒子のうち少なくとも1つをさらに含む。
【0010】
また、前記車輌用防汚塗料において、前記車輌用防汚塗料を前記車輌用部材に塗布することによって得られる車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことが好ましい。
【0011】
また、本発明は、防汚性を有する車輌用防汚膜を含む車輌用部材であって、前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たす。
【0012】
また、本発明の車輌用防汚部材の製造方法は、前記車輌用防汚塗料を前記車輌用防汚部材表面に塗布する。
【0013】
また、本発明は、防汚性を有する車輌用防汚膜を含むホイールであって、前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たす。
【0014】
また、本発明のホイールの製造方法は、前記車輌用防汚塗料を前記ホイール表面に塗布する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車輌用防汚膜では、前記車輌用防汚膜の物性値として、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことにより、車輌用部材に付着するダストの付着量の減少及び車輌用部材に付着したダストの洗浄性を向上させることができる。特にブレーキダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る車輌用防汚塗料では、バインダを含み、バインダ100重量部に対して2.5〜15重量部の帯電防止剤及び体積平均粒子径が4μm〜70μmの範囲であってバインダ100重量部に対して30〜100重量部のフッ素粒子のうち少なくとも1つをさらに含むものであり、その車輌用防汚塗料を車輌用部材表面に塗布することによって、車輌用部材に付着するダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。特にブレーキダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る車輌用防汚部材及びホイールでは、防汚性を有する車輌用防汚膜を含み、前記車輌用防汚膜の物性値として、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことにより、車輌用部材及びホイールに付着するダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。特にブレーキダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0019】
まず、本発明に係る車輌用防汚膜について以下説明する。
【0020】
本実施形態に係る車輌用防汚膜は、防汚性を有するものであって、車輌用防汚膜の物性値として、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすものである。
【0021】
防汚性とは、後述する車輌用部材に付着するダストの付着量を減少させ、又は付着したダストの洗浄性を向上させるものである。なお、ここでいう付着量の減少又は洗浄性の向上とは、車輌用防汚膜を含んでいない車輌用部材を対象としている。また、付着量とは、車輌用部材の単位面積当たりのダスト量であり、洗浄性とは、一定時間、一定の流量の流水により車輌用部材を洗浄した後、目視又は色差計等で確認して、車輌用部材に付着していたダストがどれだけ取り除けたかを示すものである。
【0022】
帯電半減期とは、車輌用防汚膜に強制的に高電圧を印加した際に帯電する電圧を飽和帯電圧(最大帯電位)とし、その最大帯電位が1/2となる時間である。車輌用防汚膜の帯電半減期は、0.01秒〜100秒の範囲、好ましくは10秒より大きく30秒以下の範囲である。100秒より大きいとダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができない。帯電半減期の測定は、帯電電荷減衰度測定器(シシド静電気社製H−0110)により行うことが可能であり、測定条件はJIS L 1097に従うものである。
【0023】
また、上記強制的に高電圧を印加して帯電する車輌用防汚膜の飽和帯電圧は、例えば、10kVであることが好ましい。但し必ずしもこれに制限されるものではない。
【0024】
表面自由エネルギとは、物質の表面状態を数値化したもので、固体表面の分子同士が引っ張り合う力である。この力は分子間力(ファンデルワールス力)と呼ばれ、電子が移動するイオン結合や共有結合等の化学結合ではなく、分子同士が引っ張り合う力である。固体(液体)表面の分子は表面にある隣の分子と物質内部にある分子から引っ張られるが、外側からは引っ張られることがないため、物質の内部に引っ張られ、内部にもぐり込もうとする。この現象は表面全体で起こり、結果として物質の表面ができるだけ小さくなるように働く。この力は表面張力と呼ばれているが、熱力学の立場からは表面自由エネルギと呼ばれ両者は同価のものである。車輌用防汚膜の表面自由エネルギは、35mN/m〜75mN/mの範囲、好ましくは40mN/m〜45mN/mの範囲である。車輌用防汚膜の表面自由エネルギが35mN/mより小さいと、ダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができず、また、付着したダスト特にブレーキダストの洗浄性を向上させることができなくなり、75mN/mより大きいと、ダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができない。表面自由エネルギは、Owensの式により求めることができる。具体的には、水接触角及び流動パラフィン接触角のθ及び液体の表面自由エネルギγから、下式(1)により、固体の分散項成分γ及び固体の極性項成分γを求め、求めたγ及びγから下式(2)により表面自由エネルギを求める。なお、水の表面自由エネルギは72.8mN/m(分散項成分γ=21.8mN/m、極性項成分γ=51mN/m)、流動パラフィンの表面自由エネルギは32.8mN/m(分散項成分γ=32.8mN/m)である。
γ(1+cosθ)=2(γγ1/2+2(γγ1/2 (1)
γ=γ+γ (2)
γ:固体(車輌用防汚膜)の表面自由エネルギ
γ:固体の分散項成分
γ:固体の極性項成分
γ:液体の分散項成分
γ:液体の極性項成分
θ :接触角
γ:液体の表面自由エネルギ
【0025】
上記によって求めることができる車輌用防汚膜の水接触角は、例えば、130°〜170°の範囲であるものが好ましい。水接触角が130°より小さいとダストの付着量を減少させることができない場合がある。但し、これに制限されるものではない。
【0026】
また、上記によって求めることができる車輌用防汚膜の流動パラフィン接触角は、例えば、10°〜20°の範囲であるものが好ましい。流動パラフィン接触角が上記範囲外であるとダストの付着量を減少させることができない場合がある。但し、これに制限されるものではない。
【0027】
表面粗度とは、単位面積当たりの10点平均粗さ(Rz)を示すものである。車輌用防汚膜の表面粗度(Rz)は、4μm〜70μmの範囲、好ましくは20μm〜50μmの範囲である。表面粗度が4μm〜70μmの範囲外であるとダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができない。表面粗度(Rz)の測定は、広視野走査型コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製HD100)等により測定することができる。
【0028】
また、車輌用防汚膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、5μm〜75μmの範囲であることが好ましい。
【0029】
本実施形態に係る車輌用防汚膜は、以下説明する本実施形態に係る車輌用防汚塗料を車輌用部材に塗布することにより形成され、使用されるものである。
【0030】
以下、本実施形態に係る車輌用防汚塗料について説明する。
【0031】
本実施形態に係る車輌用防汚塗料は、バインダを含み、バインダ100重量部に対して2.5〜15重量部の帯電防止剤及び体積平均粒子径が4μm〜70μmの範囲であってバインダ100重量部に対して30〜100重量部のフッ素粒子のうち少なくとも1つをさらに含むものである。
【0032】
バインダは、車輌用防汚塗料を膜(車輌用防汚膜)として形成させ、後述する車輌用部材表面に付着させることができるものであれば特に制限されるものではない。例えば、接着性の点から熱硬化性の樹脂を含む塗料であることが好ましい。熱硬化性樹脂を含む塗料とは、下記例示する熱硬化性樹脂と水、エタノール等の溶剤とを混合したものである。熱硬化性の樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等から選ばれた少なくとも1種の樹脂、又は上記少なくとも1種の樹脂と架橋剤を混合したもの、例えばアクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂等が挙げられる。
【0033】
上記バインダの具体例としては、アクリル塗料等を使用することができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0034】
帯電防止剤の含有量は、バインダ100重量部に対して2.5重量部〜15重量部の範囲であり、より好ましくは5重量部〜10重量部の範囲である。含有量が2.5重量部より少ないと上記車輌用防汚膜を形成した際に、ダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができず、15重量部より多いと変色する場合がある。
【0035】
帯電防止剤は、4級アンモニウムイオン又は窒素原子を含む化合物であるものが好ましい。
【0036】
フッ素粒子の含有量は、バインダ100重量部に対して30重量部〜100重量部の範囲であり、より好ましくは50重量部〜80重量部の範囲である。フッ素粒子の含有量が30重量部〜100重量部の範囲外であるとダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができない場合がある。フッ素粒子の体積平均粒子径は、4μm〜70μmの範囲であり、より好ましくは10μm〜40μmの範囲である。4μmより小さいと粒子の凝集効果が高くなりダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができず、70μmより大きいとダスト特にブレーキダストの付着量を減少させることができない場合がある。
【0037】
フッ素粒子としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー等の粒子が挙げられる。
【0038】
上記のバインダと、帯電防止剤及びフッ素粒子(帯電防止剤及びフッ素粒子は少なくともどちらか1つ)とを混合し、攪拌することによって車輌用防汚塗料を得ることができる。攪拌時間、攪拌温度等は特に制限されるものではない。また、その他界面活性剤等をさらに混合するものであっても良い。
【0039】
上記得られた車輌用防汚塗料を車輌用部材表面に塗布することにより本実施形態に係る車輌用防汚部材を得ることができる。また、塗布する際に、車輌用防汚膜を車輌用部材表面に好適に定着させるため、車輌用防汚部材を加熱(又は乾燥)させることが望ましい。
【0040】
車輌用防汚部材は、車輌用防汚塗料を車輌用部材表面に塗布することにより得られる車輌用防汚膜を含むものである。車輌用防汚膜は上記説明したものと同様である。
【0041】
車輌用部材は、自動車、バイク、航空機等に使用される基材であれば特に制限されるものではない。例えば、ポリプロピレン、ウレタン等のプラスチック基材、アルミニウム等の金属基材等が使用されているホイール、ボディー、ルーフ等が挙げられる。
【0042】
塗布方法は、特に制限されるものではないが、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法により行うことができる。
【0043】
加熱(又は乾燥)条件は、特に制限されるものではないが、例えば、80℃〜120℃で、10〜20分行われるものが良い。
【0044】
以上、本実施形態に係る車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことにより、ダスト特にブレーキダストの付着量を減少させ、またブレーキダストの洗浄性を向上させることができる。また、本実施形態に係る車輌用防汚膜は、バインダ100重量部に対して2.5〜15重量部の帯電防止剤及び体積平均粒子径が4μm〜70μmの範囲であってバインダ100重量部に対して30〜100重量部のフッ素粒子のうち少なくとも1つを含むものであり、その車輌用防汚膜を車輌用部材表面に塗布することによって、車輌用部材に付着するダストの付着量の減少及び洗浄性を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
アクリル塗料100重量部と、アクリル塗料100重量部に対して体積平均粒子径1μm以下のフッ素粒子75重量部とを混合、攪拌し車輌用防汚塗料を調整した。これを実施例1とした。また、上記同様のアクリル塗料100重量部と、上記同様のフッ素粒子50重量部とを混合、攪拌し車輌用防汚塗料を調整した。これを実施例2とした。また、同様にアクリル塗料100重量部と、フッ素粒子100重量部と、帯電防止剤5重量部とを混合、攪拌し車輌用防汚塗料を調整した。これを実施例3とした。さらに、アクリル塗料100重量部と、帯電防止剤10重量部及び2.5重量部それぞれとを混合し、攪拌し車輌用防汚塗料を調整した。これらを実施例4、5とした。
【0047】
アクリル塗料100重量部を比較例1とし、浸水機能を有するアクリル塗料100重量部を比較例2とした。
【0048】
<物性値の測定>
実施例1の車輌用防汚塗料をスプレーコーティング法にて、5cm角のアルミ板上に塗布厚が30μmとなるように塗布した後、120℃、20分乾燥し車輌用防汚膜を得た。実施例1の塗料から得られた車輌用防汚膜の帯電半減期の測定は、JIS L 1097に従い、帯電電荷減衰度測定器(シシド静電気社製H−0110)により行った。また、表面自由エネルギは、上式(1),(2)により求めた。さらに、表面粗度(Rz)の測定は、広視野走査型コンフォーカル顕微鏡(レーザーテック社製HD100)により行い、Rzを算出した。また、実施例2〜5の車輌用防汚塗料から上記同様に得られた車輌用防汚膜の帯電半減期、表面自由エネルギ、表面粗度を上記同様に測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0049】
比較例1,2の塗料から上記同様に得られた塗膜の、帯電半減期、表面自由エネルギ、表面粗度を上記同様に測定した。それらの結果を下記表1に示す。
【0050】
<付着量の測定>
実施例1の車輌用防汚塗料をスプレーコーティング法にて、アルミホイール上に塗布厚が30μmとなるように塗布した後、120℃、20分乾燥した。ブレーキダイナモ試験機によりアルミホイール上に形成された塗膜表面にブレーキダストを付着させ、付着量を求めた。その結果を下記表1に示す。なお、ブレーキダイナモ試験機の試験は、アルミホイール(サイズ:16×6.5インチ)にタイヤ(サイズ:205/50/16インチ)、ブレーキパッド、キャリパ(15インチ)、及びロータ(直径275mm×25V)を取り付けて行った。また、付着量は、ブレーキダイナモ試験機による試験後のアルミホイールの重量と粘着テープによりアルミホイールに付着したブレーキダストを取り除いたアルミホイールの重量の差から求めた。(または、ブレーキダイナモ試験機による試験前後のアルミホイールの重量の差から求めたものでもよい)。
【0051】
<洗浄性の評価>
図1にアルミホイールの洗浄性評価の概略図を示す。上記ブレーキダイナモ試験機によって、ブレーキダストを付着させたアルミホイール1の点線部(飾り窓部)に対して水量約20リットル/分、10秒間流水により洗浄を行った。洗浄後、アルミホイール上に付着したブレーキダストをどれだけ洗い流せているか目視により確認し、以下の基準で評価した。その結果を下記表1に示す。
◎:新品同等
○:若干汚れが残っている
△:若干洗い流せたが汚い
×:全く洗い流せていない
【0052】
【表1】

【0053】
また、図2〜4に実施例1〜5及び比較例1,2の帯電半減期、表面自由エネルギ、表面粗度に対する付着量の関係を示し、図5に、帯電防止剤の含有量に対する付着量の関係を示し、図6にフッ素粒子の含有量に対する付着量の関係を示す。
【0054】
上記表1及び図2〜6に示した結果からわかるように、上記重量部のフッ素粒子及び帯電防止剤を少なくとも1つ含む実施例1〜5の車輌用防汚塗料をアルミホイールに塗布することによって、それらを含まない比較例1,2の塗料を塗布するより、アルミホイール上のブレーキダストの付着量を20%以上減少させることができた。これは、実施例1〜5の車輌用防汚塗料を塗布することによって形成される車輌用防汚膜の帯電半減期、表面自由エネルギ、表面粗度の値をブレーキダスト等のダストの付着し難い物性値にすることができたためである。具体的な物性値としては、表1の結果からわかるように、帯電半減期が100秒以下であり、表面自由エネルギが35mN/m以上であり、表面粗度(Rz)が4〜70μmの範囲のうち2以上を満足するものであった。さらに、付着量を好適に減少させることができる車輌用防汚膜として、表面自由エネルギ及び表面粗度が上記範囲を満たす実施例1の塗料が最適であるとわかった。
【0055】
また、上記表1の洗浄性の評価結果からわかるように、実施例1〜5の車輌用防汚塗料を塗布したアルミホイールは、洗浄後、点線部のアルミホイールに付着していたブレーキダストを好適に洗い流していた。一方、比較例1,2の塗料を塗装したアルミホイールは、洗浄後でも、点線部のアルミホイールに付着していたブレーキダストをほとんど洗い流すことができなかった。洗浄性のよい車輌用防汚膜として、表面自由エネルギと表面粗度が上記範囲を満たす実施例1の塗料が最適であるとわかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】アルミホイールの洗浄性評価の概略図である。
【図2】実施例及び比較例の帯電半減期に対する付着量の関係を示す図である。
【図3】実施例及び比較例の表面自由エネルギに対する付着量の関係を示す図である。
【図4】実施例及び比較例の表面粗度に対する付着量の関係を示す図である。
【図5】実施例及び比較例の帯電防止剤の含有量に対する付着量の関係を示す図である。
【図6】実施例及び比較例のフッ素粒子の含有量に対する付着量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 アルミホイール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防汚性を有する車輌用防汚膜であって、
前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことを特徴とする車輌用防汚膜。
【請求項2】
車輌用部材表面に防汚性を付与する車輌用防汚塗料であって、
前記車輌用防汚塗料はバインダを含み、前記バインダ100重量部に対して2.5〜15重量部の帯電防止剤及び体積平均粒子径が4μm〜70μmの範囲であって前記バインダ100重量部に対して30〜100重量部のフッ素粒子のうち少なくとも1つをさらに含むことを特徴とする車輌用防汚塗料。
【請求項3】
請求項2記載の車輌用防汚塗料であって、前記車輌用防汚塗料を前記車輌用部材に塗布することによって得られる車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことを特徴とする車輌用防汚塗料。
【請求項4】
防汚性を有する車輌用防汚膜を含む車輌用防汚部材であって、
前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことを特徴とする車輌用防汚部材。
【請求項5】
請求項2又は3記載の車輌用防汚塗料を前記車輌用部材表面に塗布することを特徴とする車輌用防汚部材の製造方法。
【請求項6】
防汚性を有する車輌用防汚膜を含むホイールであって、
前記車輌用防汚膜は、帯電半減期が0.01秒〜100秒の範囲、表面自由エネルギが35mN/m〜75mN/mの範囲、塗膜表面粗度が4〜70μmの範囲のうち少なくとも2つ以上を満たすことを特徴とするホイール。
【請求項7】
請求項2又は3記載の車輌用防汚塗料を前記ホイール表面に塗布することを特徴とするホイールの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−13591(P2008−13591A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183109(P2006−183109)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(391006430)中央精機株式会社 (128)
【Fターム(参考)】