説明

車輌運転手のための視程の長さ決定方法

【課題】霧、他の車輌、他の自動車等、運転手の視程を妨害する要因の存在下で、車輌の運転手のために、視程の長さを決定する。
【解決手段】運転手の視程を妨害する要因の存在下で、車輌の運転手のために視程の距離を決定するための方法に関し、運転手の視野内で撮像された画像領域の画素の光度を決定して、視感度曲線(LUX)を得る工程と、光度(LUX)の曲線への第1の接線(AA’)を決定する工程と、光度(LUX)の曲線への第2の接線(CC’)を決定する工程と、第1の接線(AA’)及び第2の接線(CC’)により、視程の距離を代表するスイープライン(FBL)を決定する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転手の視程を妨害する要因の存在下で、車輌の運転手のために、視程の長さを決定する方法に関する。妨害要因は、例えば、霧、他の車輌、他の自動車等である。
【背景技術】
【0002】
先行技術文献である特許文献1には、車輌正面に位置する空間視界の画素の配列により画定される少なくとも1つのイメージを撮影する工程と、前記イメージを、所定の点を貫通するラインにより、2つ部分に分離する工程と、前記ラインの画素の光度を決定することにより、光度曲線を得る工程と、前記曲線の導関数を計算して、視感度曲線の変曲点を決定する工程と、前記イメージ上で変曲点の位置によって、前記車輌の運転手の視程の距離を決定する工程とを備える視程の長さ決定方法が記載されている。
【0003】
この解決案には、次のような不利益がある。第1に、導関数を計算することは、特に、車輌が進行する道路に障害物、例えば別の車輌や橋梁等があるか否かについて、解釈の問題、重大な不正確性や誤差につながる。実際、障害物は、導関数を計算する際に複数の変曲点を発生し、そのため、多様な変曲点は、近接していれば識別が困難であり、また、視程の長さに対応する変曲点を選ぶことが困難である。第2に、導関数を計算することは、視感度曲線に発生するノイズを増幅し、視感度曲線それ自体に、不確実性を引き起こす。第3に、導関数の計算は、計算上の負担を重くする。
【特許文献1】欧州特許公開EP 1 422 663 A1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術のこれらの不利益に対する改善策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の目的に従い、本発明は、運転手の視程を妨害する要因の存在下で、車輌の運転手のために、視程の長さを決定する方法に関するものであり、車輌正面に位置する空間の視界の、画素及びスイープライン)の配列によって画定される少なくとも1つのイメージを撮影する工程と、所定の点を貫通する第1のラインによって、前記イメージを2つの部分に分離する工程と、前記第1のラインの画素の光度を決定して、光度の曲線を与える工程とを備え、更に、光度の曲線に対して、前記曲線の妨害要因に実質的に属しない光度の領域を表す位置で接する、第1の接線を決定する工程と、光度の曲線に対して、前記曲線の光度が安定化する位置で接する、第2の接線を決定する工程と、視程の距離を表わすスイープラインを、第1の接線及び第2の接線に従って決定する工程とを備えている。
【0006】
下記に詳細に説明するが、視程の長さの決定には、簡易な線形結合を利用するだけであり、従って、先行技術に比べて、より高速の決定が可能となる。更に、導関数の計算がないため、先行技術に比べて、この導関数の計算により発生されるノイズに関連する不確実性を取り除くことができる。そして、この方法では、道路上に障害物が存在する状況下で、妨害される視程の長さを決定せずに用いることができる。
【0007】
非限定的な具体例によれば、視程の長さ決定方法は、次の付加的な特徴を有する。すなわち第1のラインは、縦直線である。従って、縦直線の決定は迅速である。前記妨害要因は、霧である。従って、本発明方法は、霧の場合に有用である。
【0008】
本方法は更に、均一性の属性に応じて、画像の各区域をサーチする工程と、前記区域のそれぞれの重心を決定する工程と、前記各区域の重心の全体の重心を、前記所定の点であると決定する工程とを備えている。
【0009】
従って、全体の重心Gは、道路上及び空中での2つの均一な区域に対する重心の結果である。これらの区域をサーチすることにより、障害物(道路端、中央分離帯、木その他)によって妨害される測定上の危険は低減される。
これは、湾曲部において有用である。
【0010】
第2の接線は、第1の接線と平行である。これは、簡易で高速の計算を実現する可能性を提供する。スイープラインが、視感度曲線と、第1の接線と平行で、第1の接線及び第2の接線からの所与の距離の線との間の交点に従って計算される。この所与の距離は、第1の接線と第2の接線との間の距離を、2で除した長さである。視程の長さは、求めたスイープラインに基づき、対応表または三角法の計算によって決定される。対応表を読みとることによって、視程の長さの決定は、非常に高速で行われる。
【0011】
前記三角法の計算では、視程の長さは、スイープラインの視角の最大値に、全体角度視界をスイープラインの最大数で除したものを加え、これに、スイープライン最大値から算出交点に対応するスイープラインを減じたものを乗じたものの正接をもって、画像を撮像する装置の地面に対する高さを除したものと等しい。
【0012】
本発明は、第2の目的に従い、運転手の視程を妨害する要因の存在下で、車輌の運転手のための距離決定装置に関するものであり、車輌正面に位置する空間の視界に基づいて撮影され、画素及びスイープラインの配列によって画定される少なくとも1つの画像を受信する手段と、所定の点を貫通する第1のラインによって、前記画像を2つの部分に分離する手段と、前記第1のラインの画素の光度を決定して光度の曲線を与える手段とを備え、この装置は更に、光度の曲線に対して、前記曲線の妨害要因に実質的に属しない光度の領域を表す位置で接する、第1の接線を決定する手段と、光度の曲線に対して、前記曲線の光度が安定化する位置で接する、第2の接線を決定する手段と、視程の距離を表わすスイープラインを、第1の接線及び第2の接線に従い決定する手段とを備えている。
【0013】
非限定的な具体例によれば、この装置は、次の付加的な特徴を備えている。すなわちこの装置は、車輌搭載カメラと一体化されている。スイープラインは、第1の接線と平行で、第1の接線及び第2の接線からの所与の距離の線と、光度の曲線との交点によって計算される。この所与の距離とは、第1の接線と第2の接線との間の距離を2で除したものである。視程の長さは、求めたスイープラインに基づき、対応表により、または三角法の計算により決定される。
【0014】
本発明は、第3の目的に従い、コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがプロセッサによって実行される場合に、前に記載したいずれかの方法を実行する命令の一つ以上のシーケンスを備えるコンピュータプログラム製品にも関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、説明及び図面を参照することより、より良く理解されると思う。
【0016】
図1は、カメラ2が搭載され、運転手3によって運転される車輌1の概略で示し、運転手3は、車輌1が停止中の時や移動中の時に、車輌の正面に位置する空間4の視界内の状況を見ることができる。
【0017】
カメラ2は、道路6の表面から高さhのところに位置しており、例えば、車輌の前面又は側部に位置している。これは例えば、フロントガラスの後側に固定され、車輌の進行方向Fの状況の正面を示している。従ってカメラ2は、車輌1の正面に位置する空間の視界と比較が可能な全画角Aを備え、この全画角Aは、図1に例示される最小視角α0によって画定される。運転手のための視程の距離Dは、カメラ2の車輌1上の位置に関連する。
【0018】
前記の視程を妨害・悪化させる要因BRがある場合、特にこの妨害要因が霧である場合に、運転手3用の視程Dの長さを決定する目的で、車輌1のフォグランプ5の切替を予測するための以下の工程を、図2に例示するように遂行する。
【0019】
第1工程1)では、カメラ2は、車輌1正面に位置する空間4の視界内の画像I1を撮像する。空間4の視界は、所与の非限定的な例では、道路6上に障害物は存在しない。 図3は、カメラ2に撮像される白黒画像I1を例示している。この画像I1は、霧BRの存在下での道路を例示している。画像I1は、スイープラインBLの配列により、また光度が黒から白へ変化する画像のそれぞれの点を表す画素PIXの配列により与えられ、ここで光度とは、それぞれの画素が受容した光量である。非限定的な例における各画素は、256通りのグレーレベルを1バイトでコード化する。画像I1は、X軸では、0〜500で変化するコラム数CLにより、Y軸では、0〜250で変化する画像のスイープラインBLにより与えられる。
【0020】
第2の工程2)では、画像I1の区域のサーチが、均一性の属性にそれぞれ対応して遂行される。このサーチは、例えば、非限定的な具体例で、当業者によって既知の「四分木表現」方法のような分割/融合による区分化の方法を用いることにより実行可能である。この四分木表現は、複数のノードを有し、それぞれ正確には、終点を除いて4つのノードを有している。各ノードは、ブロック、即ち形状が正方形の画像区域に対応する。ノードに関連した各ブロックは、それが4つのサブブロックに分割すべきか否かを決めるために帰納的に解析される。この帰納的解析は、各サブブロックが、同時発生的なマトリックスの光度均一性の属性に適合した時に停止する。
【0021】
kミーンズアルゴリズム等の他の方法を用いてもよい。
【0022】
均一性の区域のサーチを用いることにより、図3に例示するように、画像I1に対して、それぞれ重心G1及びG2を有する2つの領域を画定することができる。
【0023】
次いで、全体の重心Gを、第1のライン7が貫通することができるよう、2つの重心G1及びG2に対して計算する。この第1のライン7は、雰囲気の透過性を表している。全体の重心Gは、第1のライン7が通過する所定の点PDを表す。
この所定の点PDは、非限定的な別の例では、画像I1の中心であってもよい。
【0024】
従って、全体の重心Gは、道路上及び空中での2つの均一な区域に対する重心の結果である。これらの均一な2つの区域を調査することによって、障害物(道路端、中央分離帯、木その他)によって妨害される測定の危険は低減される。
これは、画像の中央に中心を持つ第1のライン7が、例えば2つの道路端の一方のみを視認できるような湾曲部において有用である。
【0025】
第1のライン7の各点は、スイープラインBL及びグレーレベルGLに対応する光度によって特徴が与えられる。
【0026】
非限定的な具体例では、この第1のライン7は、垂直の直線である。例えば曲線や対角線等の別種のラインではなく、垂直の直線を用いることにより、計算時間の長時間化を回避することができる。この垂直の直線7は、雰囲気の透過性を表し、従って、前記垂直の直線7上の環境の各点の光度が記録される。
【0027】
第3の工程3)では、視感度曲線LUX(また、霧の濃度曲線ともいう)は、得られた垂直のライン7に基づいて決定される。縦のライン7の画素PIXの光度は、前記垂直のライン7の上の画素の高さによって決定される。この視感度曲線LUXは、図4に例示されている。
【0028】
この非限定的な例では、逆S字型形状である。それは、従ってS字曲線に匹敵する。
【0029】
曲線LUXのy軸の値は、垂直の直線である第1のライン7の点PLXのグレーレベルGLの値を表し、x軸の値は、これら同じ点のスイープラインBLの数を表す。従って、点P1は、スイープライン0に対応し、約220のグレーレベルGLを有する。同様に、点P2は、スイープライン250に対応し、約40のグレーレベルGLを有する。
【0030】
この曲線LUXの勾配は、道路6の特性(例えばコンクリート、タール、ダートその他)によって変化することに留意する必要がある。道路が明るければ(例えばコンクリート)、勾配は急になる。これに反して、暗ければ(例えばタール)、勾配は緩やかになる。この視感度曲線LUXは、特にその振幅が道路の不均質(微細な砂利、舗装ブロック、タール、表面のマーク、ブレーキ滑り跡その他)に対応するノイズを、連続した画素の間で有しており、また、スプリアス電磁信号(電気のノイズ)及び熱の問題も有していることを、注記しておく。このノイズは、高周波ノイズである。
【0031】
第4の工程4)では、視感度曲線LUXのノイズは、フィルター処理FILTによってフィルタリングされ、非限定的な例では、フィルター処理FILTのこの手段は、数個の画素の光窓上での平均をスライドさせる。このようにしてフィルタリングされた視感度曲線を、図5に例示する。
【0032】
後の工程では、光度のS字形曲線に接線を適用する方法を、視程の距離Dを表すスイープラインFBLを求めるために用いる。第5の工程5)では、視感度曲線LUXへの第1の接線AA’を決定する。
【0033】
この接線AA’は、霧BRと実質的に無関係の光度の領域を与える前記曲線の位置で接する。この接線を、図6に例示する。
【0034】
図からわかるように、接線AA’は、曲線の下方の部分に接している。
曲線のこの部分は、地面の車輌の近くの領域の光度が漸進的に変化する状態を与え、従って、霧の密度に実質的に無関係である(この領域は、車輌正面約10メートルに相当する)。従ってラインAA’は、霧がない場合の道路の可視の部分の視感度曲線に対応することになる。
【0035】
第6の工程6)では、視感度曲線LUXへの第2の接線CC’を決定する。
【0036】
この接線CC’は、前記曲線で光度が安定化する位置での接線である。これについても、図6に例示してある。
【0037】
非限定的な具体例では、この第2の接線CC’は、第1の接線AA’と平行である。すなわち、この第2の接線を迅速に決定することができる。
【0038】
第2の接線CC’は、画像の上部の部分で、光度の安定化の開始点に対応する点C1で曲線LUXに接し、カメラ2から見る空間の見かけの均一性に結び付けられる。
【0039】
第7の工程7)では、スイープラインFBLは、第1の接線AA’及び第2の接線CC’によって決定され、前記スイープラインFBLは、視程Dの長さを定める。このスイープラインFBLは、次のようにして決定される。
【0040】
第1の部分工程7a)では、第1の接線AA’と第2の接線CCとの間の距離に等しい距離d1を求め、この距離d1を2で除す。距離d1は、最も暗い区域と最大利用できる光度の区域との間の場面の変化を与え、この変化とは、最弱光度と最強光度との間の差に相当する。
【0041】
第2の部分工程7b)では、非限定的な態様で、この第1の接線AA’から距離d1を2で除した距離に位置する第1の接線AA’に平行な線BB’を求める。
この中央接線も、図6に例示してある。
【0042】
第3の部分工程7c)では、この平行直線BB’と視感度曲線LUXとの間の、変曲点とも称される交点Fを求める。スイープラインFBLは、この交点Fにより計算され、何故なら、AA’は、この交点Fのy軸の値に対応するからである。
【0043】
第8の工程8)では、視程の距離Dは、このように得られるスイープラインFBLによって決定される。
【0044】
従って、第1の非限定的な具体例では、次の三角法の計算を実行する。
【0045】
【数1】

h:カメラ2の地面6からの高さ
A:全視界
α0:スイープライン256に対応した最小の視角値。
【0046】
スイープラインn°128が、水平線に対応すると仮定することに注意すべきである。非限定的な例では、全角度の視界A(カメラ2の対物レンズの視界とも称される)は、15°〜30°である。
【0047】
また、この第1の具体例に関し、車輌1の完全な組み立てラインにおけるカメラ2の位置決め角度の測定(最小視角α0を含む)の実行は、やや困難であり、きわめて正確とはいえないものである。
【0048】
また、第2の非限定的な具体例では、上述のような視程の距離Dの三角法の計算は遂行されないが、視程の距離Dは、求められたスイープライン数FBLと視程の距離Dとを結び付ける対応表TABによって決定される。この表TABは、距離決定装置PROのメモリ、すなわち、例えばカメラ2内に配置したコンピュータにダウンロードすることができる。従って、対応表を読みとる手法は、三角法の計算より興味深く、必要な時間が少ないプロセスである。より詳しくは、非限定的な方法として、光散乱や、光子を電子に変換し、次いでビデオ画像に変換するカメラの光センサを考慮して、対応表TABはプログラミングされる。
【0049】
また、このプログラミングに対して必要に応じ、カメラに生じ得る振動の許容値、カメラ2や車輌1本体の調整の自由度を実現できるよう(圧縮、組立、生産、材料の性質に関しての許容範囲を考慮して)、カメラ2の支持も考慮する。従って、このようにして得られる視程Dの長さの値により意思決定を行い、フォグランプその他のスイッチを動作させる。非限定的な例では、この視程Dの長さが、閾値の100mよりも小さい場合は、霧が存在すると判断される。そして、ここでの選択は、フォグランプのスイッチを入れることであり、これは、運転手に警告して手動で入れさせるか、あるいは自動的に入れるかのいずれかである。従って、非限定的な具体例では、視程Dの前記距離がある閾値、ここでは100m、よりも小さくなった時に、検出信号SIGが発信され、車輌1の運転手3に、フォグランプのスイッチを入れるよう警告する。
【0050】
そして、この値が、25〜50mの間であった場合は、霧は非常に濃いということであり、例えばフォグランプを自動に切り換えることを選択する。視程の長さが再び通常に戻れば、フォグランプのスイッチを切ってもよい。
【0051】
また、視程Dの長さに対するこの手法は、視程に対する霧BRの影響(高濃度も低濃度も)によって、フォグランプの強さに影響する可能性がある。
従って、トラフィックインジケーターライトまたは前照灯によって発さられる光のビームの測光、特に光強度の測定を、光源への電源を調整することにより、調節もしくは調整する。この調節は、例えば、自動調整システムにより、視程の距離Dを考慮に入れて制御される。
【0052】
また更に、検出信号SIGを、制御信号として用いることが可能である。この制御信号は、例えば、LSC(光システム制御)タイプのカードに接続されたCAN(コントローラ地域網)バスへ伝送されることにより、車輌の速度に直接に作用し、従って、霧BRの関数として制御可能である。
【0053】
図3に関して上述した非限定的な例は、障害物が空間4の視界に無い例である。
【0054】
上述の視程Dの長さを決定するための方法は、堅実である。何故なら、図7〜図9に例示するように、一つ以上の障害物が道路上に存在する空間4の視界で作動するからである。
【0055】
図7により明らかなように、カメラ2は、道路6が、障害物、ここではブリッジOを備える画像I2を撮像した。視程Dの長さは、この図では水平線で示してある。この画像I2から推論される光度LUXの曲線を、図8に例示してある。それは、波形である。先に述べたように、第1の接線AA’、第2の接線CC’及び平行の直線のラインBB1がプロットされ、これを用いて、図9に示すように、3つの交点F1、F2及びF3が、光度LUXの曲線に得られる。視程の距離Dと対応する交点を決定するため、光度LUXの曲線の底面からの第1の交点が用いられる。それが、霧ではなくて、障害物によるならば、検出の原理は、同じままであり、障害物は、視程Dの長さを定める。サーチした交点は、ここでは点F3である。従って、たとえ障害物が存在するとしても、視程Dの長さに対応した交点を見つけることは容易である。
【0056】
サーチした交点F3と、事実上障害物Oに対応する他の交点(例えばF2)との間に(これらの2の点がお互いに非常に近いならば)不明確性が存在する場合は、サーチしようとする点と混同されないよう、障害物Oに対応している交点を検出することは可能であることに留意するべきである。
【0057】
従って非限定的な具体例では、時点t1と時点t2との間の短い設定期間に、光度LUXの曲線上でF2と対応する歪みが次に発生する。歪みは、障害物O(例えばブリッジ)によって、光度LUXの曲線の中央(時点t1ではブリッジは画像I2内に無限遠のフォーカスがされている)から、曲線の上面(時点t2ではブリッジは車輌の縦軸に近い)へと展開する。仮に、これが地面上の障害物又は路面の主要な変化(例えばアスファルト路面からコンクリート路面に変化した場合)に関わる場合は、歪みは、画像の中央から下方へ展開する。実験時間t1〜t2に対して、相対的又は全体的に安定であるサーチした交点F3に対して、障害物Oに関連した歪みが高速度で展開するため、2つの点を、区別して正しい変曲点F3を見出すことが可能である。
【0058】
非限定的な具体例では、視程Dの長さを決定する際に、車輌の姿勢を考慮することが可能である。車輌の姿勢は、例えば、車輌のサスペンションに取り付けられたセンサ(図示されない)によって計算される。
最後に、先に述べたように視程Dの長さを決定するために、車輌1は、図10に例示されている距離決定装置PROを有していることにより、上記のプロセスを実行することができる。この装置は、車輌正面に位置する空間の視界に基づいて撮像され、画素及びスイープラインの配列によって画定される、少なくとも1つのイメージI1,I2を受信する手段S1と、所定の点PDを貫通する第1のライン7によって、前記イメージを2つの部分に分離する手段S2と、前記第1のライン7の画素の光度を決定して、光度(LUX)の曲線を与える手段S3と、光度LUXの曲線に対して、前記曲線の妨害要因BRに実質的に属しない光度の領域を表す位置で接する、第1の接線AA’を決定する手段S4と、
光度LUXの曲線に対して、前記曲線の光度が安定化する位置で接する、第2の接線CC’を決定する手段S5と、視程Dの長さを表わすスイープラインFBLを、第1の接線及び第2の接線に従い、決定する手段S6とを備えている。
【0059】
これは更に、視程Dの長さを求めたスイープラインFBLに基づき、対応表TABにより、または上述の三角法の計算により決定する手段S7と、前記対応表TABを含むメモリと、必要に応じて、視程Dの長さが、ある閾値よりも小さくなった時に、検出信号SIGを送信する手段S8と、光度LUXの曲線をフィルタリングする手段FILTとを有している。
【0060】
これらの手段S1〜S8及びFILTを、手段の1セット又は数セットとして統合してもよい。
【0061】
図10に例示する、非限定的な例においては、この装置PROは、カメラ2内で一体化されている。この態様は、距離決定装置が、カメラから離れた位置で一体化された態様よりも、興味深いものである。何故なら、後者の態様では、ビデオ画像を例えば光ファイバにより伝達することが必要になり、カメラ2から距離決定装置へ、ビデオ画像を高速で伝送するための付加的なコスト及び付加的な手段が必要になるからである。装置PROの手段S1〜S8及びFILTは、ハードウエアであるか、又はソフトウェア、あるいはこれらの双方である。
【0062】
従って、本発明による決定方法は、ハードウエアだけ、ソフトウェアだけ、又は双方からなる距離決定装置によって実行することができる。
このハードウエアやソフトウェアは、多様な方法で実行可能であり、例えば、ハードウエアの場合は、物理的に組み込まれた電子回路により、ソフトウェアの場合は、適切な方法でプログラムされた集積回路(例えばプロセッサ)により実行可能である。集積回路は、可搬式の装置(例えばカメラ)に設けてもよい。この一体型の回路は、一つ以上の命令シーケンスを備えている。よって、この命令シーケンスは、例えば可搬式装置のメモリに含まれ、距離決定方法の多様なステップを実行するための一体型の回路の実現を可能にする。この命令シーケンスは、データ媒体を読みとることによって、メモリに保存することができ、データ媒体の非限定的な例では、例えばハードディスク、CDやDVDが挙げられる。また、サービスプロバイダが、例えばインターネット等の電気通信網を介して利用できる命令シーケンスを作製することも可能である。
【0063】
無論、本発明は、ここに記載された具体例に制限されるものではない。
【0064】
特に、均一性の区域をサーチする方法を、分割/融合による区分化の方法の場合について記載したが、例えば、当業者に既知の領域を分割することによる方法、又は領域を成長させることによる方法等、他の区分化の方法を用いることができる。
【0065】
更に、光度を画像の画素のグレーレベルに関して記載したが、展開した画像のコード化の関数等、光度は別の方法でも表現可能である。
【0066】
同様に、本発明による方法において、霧を検出する場合を記載したが、本方法はまた、運転手の視程を妨害又は変更する他の要因にも適用可能である。よって、ここに記載されている方法は、道路が橋梁や自動車のような障害物を、運転手の車輌正面や対向車線上に有している場合でも、また障害物を有していない場合でも、霧がある場合に有効であるが、ダストや煙、又は、微細な粒子から成り同じ光拡散特性を有する他の要因のように、運転手の視程を妨害・変更する他の要因も関しても有効である。
【0067】
更に、ここに記載される方法では、白のみを利用する簡易な線形結合(接線の計算)が、計算の負荷が特に軽く、よって、高速で処理可能である。
【0068】
更に、先行技術の方法において、変曲点のサーチにより障害となっていた導関数の計算によって発生するノイズに関連した不確実性は、本方法では除去される。
【0069】
最後に、ここに記載されている方法は、先行技術の方法を利用することができないような障害物が存在するときでも、視程の距離を設定する可能性を発揮するので、有利である。
【0070】
更に、本方法は、簡易で及び実行コストがかからない解決策である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による方法を実行するための装置を備えるカメラを具備する車輌の側面図である。
【図2】本発明による方法の各工程を示す線図である。
【図3】本発明による方法で撮影される第1の画像を例示する図である。
【図4】図3の画像に基づいて得られる視感度曲線を例示するグラフである。
【図5】フィルター処理後の図4の視感度曲線を例示するグラフである。
【図6】接線がプロットされる図5の視感度曲線を例示するグラフである。
【図7】本発明による方法で撮影される障害物を備えた第2の画像を例示する図である。
【図8】図7の上で画像に基づいてフィルター処理後に得られる視感度曲線を例示するグラフである。
【図9】接線がプロットされる図8の視感度曲線を例示するグラフである。
【図10】本発明による方法を実行する可能性を有する距離決定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 車輌
2 カメラ
3 運転手
4 空間
5 フォグランプ
6 道路
7 第1のライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手の視程の妨害要因(BR)の存在下で、車輌の運転手のために視程(D)の長さを決定する方法であって、
車輌正面に位置する空間(4)の視界の、画素(PIX)及びスイープライン(BL)の配列によって画定される少なくとも1つのイメージ(I1,I2)を撮影する工程と、
所定の点(PD)を貫通する第1のライン(7)によって前記イメージ(I1,I2)を2つの部分に分離する工程と、
前記第1のライン(7)の画素(PIX)の光度を決定して、光度(LUX)の曲線を与える工程
とを備え、更に、
光度(LUX)の曲線に対して、前記曲線の妨害要因(BR)に実質的に属しない光度の領域を表す位置で接する、第1の接線(AA’)を決定する工程と、
光度(LUX)の曲線に対して、前記曲線の光度が安定化する位置で接する、第2の接線(CC’)を決定する工程と、
視程(D)の距離を表わすスイープライン(FBL)を、第1の接線(AA’)及び第2の接線(CC’)に従い決定する工程
とを有することを特徴とする距離決定方法。
【請求項2】
前記妨害要因が、霧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1のライン(7)が、垂直の直線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
均一性の属性に応じて、前記画像の各区域をサーチする工程と、
前記区域のそれぞれの重心(G1,G2)を決定する工程と、
前記各区域の重心(G1,G2)の全体の重心(G)を、前記所定の点(PD)であると決定する工程
とを更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2の接線(CC’)は、第1の接線(AA’)と平行であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
スイープライン(FBL)は、第1の接線(AA’)と平行で、第1の接線(AA’)及び第2の接線(CC’)からの所与の距離(d1/2)の線(BB’)と、光度(LUX)の曲線との交点(F)によって計算されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
所与の距離(d1/2)は、第1の接線(AA’)と第2の接線(CC’)との間の距離を2で除したものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
視程(D)の長さは、求めたスイープライン(FBL)に基づき、対応表(TAB)により、又は三角法の計算により決定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記三角法の計算では、視程の長さは、スイープライン(BL256)の視角(αO)の最大値に、全体角度視界(A)をスイープライン(BL256)の最大数(256)で除したものを加え、これに、スイープライン最大値(256)から算出交点(F)に対応するスイープライン(FBL)を減じたものを乗じたものの、正接をもって、画像を撮像する装置(2)の地面(6)に対する高さ(h)を除したものに等しいことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
運転手の視程を妨害する要因(BR)の存在下で、車輌の運転手のための視程(D)の長さを決定するための装置(PRO)であって、
車輌正面に位置する空間(4)の視界に基づいて撮影され、画素(PIX)及びスイープライン(BL)の配列によって画定される少なくとも1つの画像(I1,I2)を受信する手段(S1)と、
所定の点(PD)を貫通する第1のライン(7)によって、前記画像(I1,I2)を2つの部分に分離する手段(S2)と、
記第1のライン(7)の画素の光度を決定して光度(LUX)の曲線を与える手段(S3)
とを備え、更に、
光度(LUX)の曲線に対して、前記曲線の妨害要因(BR)に実質的に属しない光度の領域を表す位置で接する、第1の接線(AA’)を決定する手段(4)と、
光度(LUX)の曲線に対して、前記曲線の光度が安定化する位置で接する、第2の接線(CC’)を決定する手段(S5)と、
視程(d)の長さを表わすスイープライン(FBL)を、第1の接線(AA’)及び第2の接線(CC’)に従い決定する手段(S6)
とを備えることを特徴とする距離決定装置(PRO)。
【請求項11】
車輌(1)に搭載されるカメラ(2)と一体化されていることを特徴とする請求項10に記載の距離決定装置(PRO)。
【請求項12】
スイープライン(FBL)は、第1の接線(AA’)と平行で第1の接線(AA’)及び第2の接線(CC’)からの所与の距離(d1)の線(BB’)と、光度(LUX)の曲線との交点(F)によって計算されることを特徴とする請求項10又は11に記載の距離決定装置(PRO)。
【請求項13】
所与の距離(d1)は、第1の接線(AA’)と第2の接線(CC’)との間の距離を2で除したものであることを特徴とする請求項12に記載の距離決定装置(PRO)。
【請求項14】
視程(D)の長さを求めたスイープライン(FBL)に基づき、対応表(TAB)により、又は三角法の計算により決定する手段(S7)を更に備えることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の距離決定装置(PRO)。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがプロセッサによって実行される場合に、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行する命令の一つ以上のシーケンスを備えるコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−39763(P2008−39763A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−158094(P2007−158094)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(391011607)ヴァレオ ビジョン (133)
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
【Fターム(参考)】