説明

転がり軸受

【課題】 軸受に予圧発生機構を内蔵し、かつ、外輪を不分離として一体として取り扱えること。
【解決手段】 一対の外輪3,3の外径側には、外輪間座20が外嵌してある。外輪3,3の両端部には、凹段部3b,3bが形成してある。外輪間座20は、一対の外輪3,3の間に位置する中央凸部21と、外輪3,3の両側の凹段部3b,3bに係止するカギ形状の一対の係止部22,22と、を備えている。外輪間座20の係止部22には、貫通孔24が形成してあり、この貫通孔24は、周方向に複数個設けてある。貫通孔24には、コイルバネ30が挿入してあり、止めネジ31により封止してあり、このコイルバネ30の付勢力により、一対の外輪3,3に適切な予圧荷重を与えるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼設備、圧延機等に使用されるロールネック軸受に関し、熱間圧延機、冷間圧延機のバックアップロール(稀にワークロールや中間ロール)に好適に使用される主にスラスト荷重受け複列円錐ころ軸受である転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転動体が複列に配設された複列転がり軸受の一例である複列円錐ころ軸受は、ラジアル荷重とアキシアル荷重を負荷することができるので、鉄鋼設備の圧延機のロールを支持する転がり軸受として用いられることが多い。
【0003】
また、二つ割れ間座を用いて、複列の軸受を不分離にする構造は、特許文献1に開示してある。
【0004】
図5は、従来例に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。2列円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の転動体4とから構成されている。内輪2の外周面には、2列の内輪軌道面2aが形成されている。2列円錐ころ軸受1は、2個の外輪3を備え、夫々の外輪3の内周面に外輪軌道面3aが形成されている。内輪軌道面2aと外輪軌道面3aの間には、複数の転動体4が円周方向に2列に整列され、転動自在に配設されている。複数の転動体4は、例えば鋼板の打抜き保持器5によって回転自在に保持されている。
【0005】
さらに、従来の軸受は、軸受には、予圧機構を持っておらず、軸受回りに予圧機能構造が必要であり、軸受に予圧を加える為、間座に組み込まれたバネの付勢力による予圧発生機構が設けられている。
【0006】
すなわち、図5の従来例では、一対の外輪3,3の外径側に、一対の外嵌部材6a,6bが外嵌してあり、その両側の係止部7a,7bにより、一対の外輪3,3の両端部が係止してある。さらに、一方の外嵌部材6aには、コイルバネ8が装着してあり、このコイルバネ8の付勢力により、一対の外輪3,3に適切な予圧荷重を与えるようになっている。
【0007】
次に、図6は、他の従来例に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。図7は、2列円錐ころ軸受で、内輪、転動体や保持器と、外輪とを分離した状態の縦断面図である。図8は、2列円錐ころ軸受を組み込む状態を示す縦断面図である。
【0008】
図6に於いて、2列円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の転動体4とから構成されている。内輪2の外周面には、2列の内輪軌道面2aが形成されている。2列円錐ころ軸受1は、2個の外輪3を備え、夫々の外輪3の内周面に外輪軌道面3aが形成されている。内輪軌道面2aと外輪軌道面3aの間には、複数の転動体4が円周方向に2列に整列され、転動自在に配設されている。複数の転動体4は、保持器5によって回転自在に保持されている。
【0009】
また、一対の外輪3,3の両側には、一対の端部リング部材9,9が装着してある。一対の外輪3,3と、一対の端部リング部材には、コイルバネ10が装着してあり、このコイルバネ10の付勢力により、一対の外輪3,3に適切な予圧荷重を与えるようになっている。
【0010】
図7に示すように、組立前には、内輪2と、複数の転動体4と、保持器5とは、一体的に組み立ててあり、一対の外輪3,3と、一対の端部リング部材9,9と分離してある。
【0011】
図8に示すように、組込み時には、一方の外輪3と端部リング部材9とを軸箱11に予め装着し、その後、内輪2と、複数の転動体4と、保持器5と、他方の外輪3と端部リング部材9とを一体的に組込んでいる。
【特許文献1】特願2003−374409号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図5に示した2列円錐ころ軸受では、部品点数が増え、さらに形状が複雑で大型化するという問題点があった。
【0013】
また、図6乃至図8に示した2列円錐ころ軸受のような構造では、正味の軸受幅が減少して、負荷容量の大幅な低下が起きていた。
【0014】
さらに、外輪は、内輪、転動体、保持器と分離してあり、軸受を一体として取り扱うことができない為(内輪、転動体、保持器は、非分離で一体物として取り扱えるが、外輪は分離する。)、軸受を軸受箱に設置する場合、一方の外輪を軸箱に設置した後、内輪、保持器、保持器を組み込まねばならず、組み込み作業に手間と時間が必要であった。
【0015】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、軸受に予圧発生機構を内蔵し、かつ、外輪を不分離として一体として取り扱えることができる、転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明に係る転がり軸受は、外周面に複数の内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された複数の外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に円周方向に複数列に整列され転動自在に配設された複数の転動体と、からなる転がり軸受に於いて、
係止部を複数の前記外輪に係合させて連結し、前記外輪の前記転がり軸受からの離脱を阻止するように前記外輪の間に配置された外輪間座を備え、
当該外輪間座に組み込まれたバネの付勢力によって、予圧発生機構を内蔵したことを特徴とする。
【0017】
好適には、外輪間座は、一対の外輪の間に位置する中央凸部と、外輪の両側の凹段部に係止するカギ形状の一対の係止部と、を備えている。
【0018】
また、好適には、外輪間座の端部では、カギ形状の係止部の幅寸法は、外輪の外径部の凹段部の幅寸法より、小さく設定してある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、軸受の負荷容量を減少することなく、予圧機構を自分自身で加えることが可能であり、この予圧機構は、スラスト荷重を適切に受けることができる。
【0020】
また、外輪間座によって、外輪を不分離にすることにより、外輪、内輪、転動体、保持器を一体として取り扱うことを可能にして、軸受の取り付け、取り外しの作業性を向上することができ、メンテナンス作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る転がり軸受を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。図2は、図1のII部の詳細を示す断面図である。図3(a)は、外輪間座の軸方向の断面図であり、(b)は、それに直交する方向の断面図である。図4(a)は、図1のII部の詳細を示す断面図であり、(b)は、その分解断面図である。
【0023】
図1に示すように、2列円錐ころ軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の転動体4とから構成されている。内輪2の外周面には、2列の内輪軌道面2aが形成されている。2列円錐ころ軸受1は、2個の外輪3を備え、夫々の外輪3の内周面に外輪軌道面3aが形成されている。内輪軌道面2aと外輪軌道面3aの間には、複数の転動体4が円周方向に2列に整列され、転動自在に配設されている。複数の転動体4は、例えば鋼板の打抜き保持器5によって回転自在に保持されている。
【0024】
次に、本実施の形態では、外輪間座20に組み込まれたコイルバネ30の付勢力による予圧発生機構が設けられている。
【0025】
一対の外輪3,3の外径側には、外輪間座20が外嵌してある。なお、外輪3,3の両端部には、凹段部3b,3bが形成してある。
【0026】
外輪間座20は、一対の外輪3,3の間に位置する中央凸部21と、外輪3,3の両側の凹段部3b,3bに係止するカギ形状の一対の係止部22,22と、を備えている。
【0027】
外輪間座20の両端部では、このカギ形状の係止部22,22により、外輪3の外径端部の凹段部3bが係止されて、外輪3,3は、不分離になる。
【0028】
また、外輪間座20は、図3に示すように、2分割構造に構成してあり、ボルト23により締結されて一体的に組立てられ、外輪3,3に組み付けられるようになっている。このように、2分割された外輪間座20によって、外輪3,3が不分離になっている。
【0029】
さらに、図2に示すように、外輪間座20の端部では、カギ形状の係止部22の幅寸法Aは、外輪3の外径部の凹段部3bの幅寸法Bより、小さく設定してあり、両者の間には、若干のガタが設けてある。
【0030】
さらに、外輪間座20の端部内径寸法Dは、外輪3の凹段部3bの内径端部の寸法Cより、大きく設定してある。外輪間座20の内周径寸法Fは、これに対向する外輪3の外周径寸法Eより、大きく設定してある。これらより、外輪間座20は、外輪3を拘束はしない。
【0031】
次いで、図1,図2及び図4に示すように、外輪間座20の係止部22には、軸方向に延びる貫通孔24が形成してあり、この貫通孔24は、周方向に複数個設けてある。
【0032】
貫通孔24には、コイルバネ30が挿入してあり、止めネジ31により封止してある。これにより、コイルバネ30が外輪3の凹段部3bを弾性的に押圧し、このコイルバネ30の付勢力により、一対の外輪3,3に適切な予圧荷重を与えるようになっている。
【0033】
なお、貫通孔24及びコイルバネ30の個数は、適切な予圧荷重を発生させるのに適しており、コイルバネ30は、適切な仕様を持っている。また、止めネジ31は、コイルバネ30が脱落することを防止する働きもある。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、軸受1の負荷容量を減少することなく、予圧機構を自分自身で加えることが可能であり、この予圧機構は、スラスト荷重を適切に受けることができる。
【0035】
また、外輪間座20によって、外輪3を不分離にすることにより、外輪3、内輪2、転動体4、保持器5を一体として取り扱うことを可能にして、軸受1の取り付け、取り外しの作業性を向上することができ、メンテナンス作業時間を短縮することができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。実施の形態では、予庄を発生させるものとして、コイルバネを用いているが、適切な予圧荷重を発生し得る弾性部材であれば、これに限定されることなく、たとえば、板ばね、皿ばねなどでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。
【図2】図1のII部の詳細を示す断面図である。
【図3】(a)は、外輪間座の軸方向の断面図であり、(b)は、それに直交する方向の断面図である。
【図4】(a)は、図1のII部の詳細を示す断面図であり、(b)は、その分解断面図である。
【図5】従来例に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。
【図6】他の従来例に係る2列円錐ころ軸受の縦断面図である。
【図7】2列円錐ころ軸受で、内輪、転動体や保持器と、外輪とを分離した状態の縦断面図である。
【図8】2列円錐ころ軸受を組み込む状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 2列円錐ころ軸受
2 内輪
2a 内輪軌道面
3 外輪
3a 外輪軌道面
3b 凹段部
4 転動体
5 保持器
6a,6b 外嵌部材
7a,7b 係止部
8 コイルバネ
9 端部リング部材
10 コイルバネ
11 軸箱
20 外輪間座
21 中央凸部
22 カギ形状の係止部
23 ボルト
24 貫通孔
30 コイルバネ
31 止めネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の内輪軌道面が形成された内輪と、内周面に外輪軌道面が形成された複数の外輪と、前記内輪軌道面と前記外輪軌道面との間に円周方向に複数列に整列され転動自在に配設された複数の転動体と、からなる転がり軸受に於いて、
係止部を複数の前記外輪に係合させて連結し、前記外輪の前記転がり軸受からの離脱を阻止するように前記外輪の間に配置された外輪間座を備え、
当該外輪間座に組み込まれたバネの付勢力によって、予圧発生機構を内蔵したことを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
外輪間座は、一対の外輪の間に位置する中央凸部と、外輪の両側の凹段部に係止するカギ形状の一対の係止部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
外輪間座の端部では、カギ形状の係止部の幅寸法は、外輪の外径部の凹段部の幅寸法より、小さく設定してあることを特徴とする請求項2に記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−51669(P2007−51669A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236821(P2005−236821)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】