説明

転倒防止靴、及び歩行型ロボット

【課題】 ソールの滑りの発生を検知し、滑りの状態に応じてソールの形状を変化させることにより、転倒を防止することができる転倒防止靴、及び歩行型ロボットを提供する。
【解決手段】 複数の突起物を一面に備えた移動板13と、移動板13を上下動させるアクチュエータ15と、地面とソール11の底面との間に滑りが生じたか否かを判断するために必要な情報を検出する滑りセンサ16と、地面とソール11の底面との間に滑りが生じたか否かを判断し、アクチュエータ15の動作を制御する制御装置17とをソール11の底面側に設けてある溝部20に備え、制御装置17は、滑りセンサ16で検出した情報に基づいて滑りが生じたと判断した場合、アクチュエータ15へ移動板13を下方へ移動させる指示信号を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソールの滑りの発生を検知し、滑りの状態に応じてソールの形状を変化させることにより、転倒を防止することができる転倒防止靴、及び歩行型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
人間が通常の歩行をしている場合、ソールが滑って突然意図しない方向に移動したときには、人間のほとんどは転倒する。ソールが滑る事由は、地面の凍結、石鹸のような滑りやすい物体の存在等である。ソールが滑ることによる転倒は、特に老人にとっては非常に危険であり、生命を失うおそれもあることから、これを回避する方法の開発が強く要請されている。
【0003】
ソールを滑りにくくするためには、ソールの形状、材質等を工夫することが効果的である。ソールの形状、材質等の相違により、地面とソールの底面との摩擦係数が大きく変動するからである。例えば特許文献1では、低温でも柔軟性を保持可能な軟質スポンジに大きな凸凹をつけたソールとしている。これにより、柔軟なソールが激しく変形することでソールに付着した氷雪水が剥離し、地面に結着し、瞬時に形成されたソールの凍結地面形状に軟質スポンジのソールが密着する状態となる。したがって、ソールは凍結地面を確実に把持することができ、滑りが生じることを防止することが可能となる。
【0004】
また、スポーツ等の激しい運動を行う場合に使用する靴では、荷重が加わった場合にすべりが生ずるのを防止する必要が有る。例えば、野球、ゴルフ等に用いる靴では、荷重が加わった場合に滑らないよう、滑り止めとして金属性のスパイク金具をソールに装着している。これにより、濡れた芝生のように滑りやすい地面であっても、滑ることなく安定した姿勢を保つことができる(特許文献2参照)。
【0005】
また、人間ではなく、例えば二足歩行型のロボットのような駆動源により移動することが可能なロボットでは、足部の底面の滑りによる転倒により、駆動系、伝達系、制御系等が損傷し、正常な歩行ができなくなるおそれがある。したがって、歩行中の転倒を防止することは重要な課題の1つとなっている。
【特許文献1】特開2000−342302号公報
【特許文献2】特開2005−027818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているソールでは、ソールが凍結地面に密着することにより地面を把持することはできるが、地面との圧力により融解した氷雪により、却って滑りやすい状態となりやすいという問題点があった。したがって、歩行中の店頭を防止するには不十分である。
【0007】
また、ソールを滑りにくくするために、特許文献2のように複数の突起物をソールに設けた場合、滑りやすい状態の地面を歩行する場合には問題が発生しないが、通常の地面を歩行する場合には、複数の突起物が地面に引っかかり、滑らかに移動することが却って困難になるという問題点があった。また、野球、ゴルフ等に用いる靴のように金属性のスパイク金具をソールに装着している場合、アスファルト等の一般的な道路を歩行するときに、地面そのものをスパイク金具により傷つける、又は損傷するおそれがあるという問題点もあった。これを回避すべく、特許文献2のようにスパイク金具を着脱可能とした場合は、地面の状態に応じてスパイク金具を着脱する必要が有り、一般の歩道で突然起こりうる滑りによる転倒を確実に防止することが困難であるという問題点があった。
【0008】
さらに、例えば二足歩行型のロボットのような駆動源により移動することが可能なロボットでは、歩行方法が一定であることから、スパイク金具をソールに装着している場合、スパイク金具が地面に引っかかり、円滑な歩行運動の妨げになるという問題点もあった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ソールの滑りの発生を検知し、滑りの状態に応じてソールの形状を変化させることにより、転倒を防止することができる転倒防止靴、及び歩行型ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1発明に係る転倒防止靴は、歩行時の転倒を防止する転倒防止靴であって、複数の突起物を一面に備えた移動板と、該移動板を上下動させるアクチュエータと、地面とソールの底面との間に滑りが生じたか否かを判断するために必要な情報を検出する情報検出手段と、地面とソールの底面との間に滑りが生じたか否かを判断し、前記アクチュエータの動作を制御する制御手段とをソールの底面側に設けてある溝部に備え、前記制御手段は、前記情報検出手段で検出した情報に基づいて滑りが生じたと判断した場合、前記アクチュエータへ前記移動板を下方へ移動させる指示信号を送出するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
また、第2発明に係る転倒防止靴は、第1発明において、前記アクチュエータへ指示信号を送出していない場合、前記移動板をソールの底面と対向する方向に引き上げる弾性部材を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第3発明に係る転倒防止靴は、第1又は第2発明において、前記情報検出手段は、ソールの底面に加わる荷重を検出する荷重センサ及び動きセンサであり、前記制御手段は、該荷重センサで検出した荷重が所定値より大きいか否かを判断し、所定値より大きいと判断した場合、歩行状態へと移行していると判断し、前記動きセンサの検出値に基づいて滑りが生じたか否かを判断するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、第4発明に係る転倒防止靴は、第3発明において、前記動きセンサは、光を送受光する送受光部と、光が通過することができるソールに形成してある複数の孔とを備え、前記制御手段は、前記送受光部で検出した地面の画像変化に基づいて、ソールの底面の地面に対する移動速度を算出し、算出した移動速度の単位時間当たりの変動量が所定値より大きいか否かを判断し、所定値より大きいと判断した場合、滑りが生じたと判断するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、第5発明に係る歩行型ロボットは、第1乃至第4発明のいずれか1つの転倒防止靴を備えたことを特徴とする歩行型ロボット。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、情報検出手段で検出した情報に基づいて滑りが生じたと判断した場合、複数の突起物を一面に備えた移動板を下方へ移動させる支持信号をアクチュエータへ送出する。これにより、情報検出手段で検出した情報により地面とソールの底面との間で滑りが生じたと判断した場合、移動板が下降することにより複数の突起物がソールの底面から突出する。したがって、地面とソールの底面との摩擦係数が増大し、ソールが地面を確実に把持することができることから、意図しないソールの急速な移動が生じることがなく、靴を履いている人間の転倒を未然に防止することが可能となる。
【0016】
また、第2発明に係る転倒防止靴は、アクチュエータへ指示信号を送出していない場合、移動板をソールの底面と対向する方向に引き上げる弾性部材を備える。これにより、アクチュエータが動作しない場合、弾性部材により移動板がソールの内部へと引き上げられ、移動板に備えてある複数の突起物がソールの底面から突出しない。したがって、滑りが生じていないと判断する場合、突起物がソールの底面から突出せず、通常の歩行を行うことが可能となる。
【0017】
また、第3発明に係る転倒防止靴は、ソールの底面に加わる荷重を検出する荷重センサ及び光センサを備えており、該荷重センサで検出した荷重が所定値より大きいと判断した場合に歩行状態へと移行していると判断し、光センサの検出値に基づいて滑りが生じたか否かを判断する。これにより、ソールの底面に加わる荷重を検出することにより、荷重が所定値より大きい場合、ソールが接地している状態で歩行状態へと移行しているものと判断し、光センサの検出値から地面とソールの底面との間で滑りが生じたと判断した場合、複数の突起物がソールの底面から突出する。したがって、歩行状態に移行した場合に滑りが生じたときに移動板に備えてある複数の突起物がソールの底面から突出することにより、意図しないソールの底面の急速な移動が生じることがなく、靴を履いている人間の転倒を未然に防止することが可能となる。
【0018】
また、第4発明に係る転倒防止靴は、動きセンサが、送受光する送受光部と、光が通過することができるソールに形成してある複数の孔とを備えており、送受光部で検出した地面の画像変化に基づいて、ソールの底面の地面に対する移動速度を算出し、算出した移動速度の単位時間当たりの変動量が所定値より大きい場合に、滑りが生じたものと判断する。これにより、地面とソールの底面との相対的な移動速度の変化が一定以上の割合で変化した場合に滑りが生じたものと判断し、滑りが生じたと判断した場合、複数の突起物がソールの底面から突出することで、地面とソールの底面との摩擦係数が増大し、ソールが地面を確実に把持することができることから、意図しないソールの底面の急速な移動が生じることがなく、靴を履いている人間の転倒を未然に防止することが可能となる。
【0019】
また、第5発明に係る歩行型ロボットは、上述したような転倒防止靴を備えていることにより、地面とソールの底面との間で滑りが生じたと判断した場合、移動板が下降することで複数の突起物がソールの底面から突出する。したがって、地面とソールの底面との摩擦係数が増大し、ソールが地面を確実に把持することができることから、意図しないソールの急速な移動が生じることがなく、靴を履いている人間の転倒を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の構成例を示す前後方向の中心線近傍の側断面図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る転倒防止靴1は、ソール11の内部に溝部20を形成し、溝部20の中に複数のスパイク状の突起部(cleat)12、12、・・・を一面に配設してある移動板13、移動板13を支持する複数の弾性部材14、14、・・・、移動板13を上下動させる駆動源であるアクチュエータ15、滑りを検出する滑りセンサ(情報検出手段)16、及びアクチュエータ15の動作を制御する制御装置(制御手段)17を備えている。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴1の突起部12の形状を示す側断面図である。突起部12の形状は、例えば図2(a)のような楔形であり、ソール11の前半分の領域では、先端部が靴の前方に向かって傾斜しており、ソール11の後半分の領域では、先端部が転倒防止靴1の後方に向かって傾斜している。これにより、例えば凍結している、石鹸水がまかれている等の滑りやすい地面であっても、突起部12、12、・・・により確実に地面を把持することができ、前方へ滑った場合にはソール11の前半分の領域で突出する突起部12、12、・・・により地面を把持し、後方へ滑った場合にはソール11の後半分の領域で突出する突起部12、12、・・・により地面を把持することにより、転倒することを防止することができる。
【0023】
なお、突起部12、12、・・・の形状は、例えば図2(a)のような楔形に限定されるものではなく、図2(b)のような略円錐状の鋲であっても良いし、地面を確実に把持することができる形状であれば何でも良い。
【0024】
移動板13は、図2に示すような形状の複数の突起部12、12、・・・を一面に配設した薄板状の部材である。移動板13は、ソール11の溝部20内で円滑に上下動することができるように、バネ、スプリング等の複数の弾性部材14、14、・・・により支持されている。複数の弾性部材14、14、・・・と移動板13との間には、通電することにより厚みが増加する複数の圧電素子を積層した圧電部21をアクチュエータ15として備えている。
【0025】
滑りを検出する滑りセンサ16は、例えばソール11の底面に加わる荷重を検出する荷重センサ、ソール11の動きを検出する動きセンサ等である。荷重センサは、一定時間ごとの検出値であるソール11の底面に加わる荷重を、動きセンサは、一定時間ごとの検出値であるソール11の底面の地面に対する動きを、それぞれ制御装置17へ送出する。
【0026】
制御装置17は、マイクロプロセッサ、LSIチップ等である。図3は、本実施の形態1に係る制御装置17の構成を示すブロック図である。制御装置17は、少なくともLSI171、ROM172、RAM173、外部の通信手段と接続する通信インタフェース174で構成されている。
【0027】
LSI171は、内部バス175を介して制御装置17の上述したようなハードウェア各部と接続されており、上述したハードウェア各部を制御するとともに、ROM172に記憶されている処理プログラム、例えば滑りセンサ16の検出値に基づいて単位時間当たりの荷重変動量を算出する加重変動量算出プログラム、滑りが生じているか否かを判断する判断プログラム等に従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
【0028】
ROM172は、SRAM等で構成され、制御装置17として機能させるために必要な処理プログラムを記憶している。RAM173は、DRAM等で構成され、ソフトウェアの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。通信インタフェース174は内部バス175に接続されており、外部の滑りセンサ16、アクチュエータ15等と通信することができるよう接続してある。
【0029】
以下、制御装置17のLSI171の処理手順に沿って、本実施の形態1に係る転倒防止靴1の動作について説明する。図4は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴1の制御装置17のLSI171の歩行状態であるか否かを検出する処理手順を示すフローチャートである。
【0030】
ソール11の底面に滑りセンサ16として荷重センサを備えており、制御装置17のLSI171は、滑りセンサ16で一定時間間隔で検出した検出値、すなわち荷重センサで検出した地面とソール11の底面との間に加わる荷重を受付ける(ステップS401)。LSI171は、受付けた検出値である荷重が所定値より大きいか否かを判断する(ステップS402)。
【0031】
LSI171が、受付けた荷重が所定値以下であると判断した場合(ステップS402:NO)、LSI171は、歩行状態ではないものと判断し、ステップS401へ戻り、次の滑りセンサ16の検出値の受付けを待つ。LSI171が、受付けた荷重が所定値より大きいと判断した場合(ステップS402:YES)、LSI171は、歩行状態であるものと判断し、滑りが生じているか否かを判断する(ステップS403)。
【0032】
また、滑りを検出するためにソール11の動きを検出する動きセンサを滑りセンサ16として備えている。図5は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴1の動きセンサを備えた場合の前後方向の中心線近傍の部分側断面図である。図5に示すように、ソール11の底面の複数の位置に光を送受光することが可能な孔31、31、・・・を設け、孔31、31、・・・に対応する位置に受発光器32、32、・・・を備えている。動きセンサは、受発光器32、32、・・・を介して、光が照射された表面の画像を取得し、連続した2つの画像間の相違を比較することによりソールの動きを算出して制御装置17へ送出する。図6は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴1の動きセンサを用いた制御装置17のLSI171の滑り検出処理手順を示すフローチャートである。
【0033】
制御装置17のLSI171は、滑りセンサ16としての動きセンサで一定時間間隔で検出した動き量を受付ける(ステップS601)。LSI171は、受付けた動き量が所定値より大きいか否かを判断する(ステップS602)。
【0034】
LSI171が、受付けた動き量が所定値以下であると判断した場合(ステップS602:NO)、LSI171は、滑りが生じていないものと判断し、歩行状態であるか否かを判断する(ステップS604)。LSI171が、受付けた動き量が所定値より大きいと判断した場合(ステップS602:YES)、LSI171は、滑りが生じているものと判断し、通信インタフェース174を介してアクチュエータ15へ通電指示信号を送出する(ステップS603)。
【0035】
図7は、本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴1の突起部12、12、・・・がソール11の底面から突出した状態を示す前後方向の中心線近傍の側断面図である。図7に示すように、通電指示信号を受信したアクチュエータ15は、通電により積層されている圧電素子の厚みが増大し、移動板13をソール11の底面側へと押し下げる。これにより、移動板13の一面に備えてある複数の突起部12、12、・・・がソール11の底面から突出し、地面をより堅固に把持することができるようになる。
【0036】
その後、通電指示信号が途絶えた場合、すなわちLSI171が、受付けた荷重が所定値以下であると判断した場合(ステップS402:NO)、LSI171は、アクチュエータ15に対して通電指示信号を送出せず、アクチュエータ15の圧電素子の厚みが元に戻る。したがって、移動板13は、複数の弾性部材14、14、・・・の弾性力によりソール11の内部の溝部20へと引き上げられ、移動板13の一面に備えてある複数の突起部12、12、・・・がソール11の底面から突出しないようになる。これにより、滑りが生じていない場合には、通常の靴と同様に円滑に歩行することが可能となる。
【0037】
以上のように本実施の形態1によれば、滑りセンサ16で検出した情報により歩行状態であり、地面とソール11の底面との間で滑りが生じたと判断した場合、移動板13が下降することにより複数の突起物12、12、・・・がソール11の底面から突出する。したがって、ソール11が地面を確実に把持することができることから、意図しないソール11の急速な移動が生じることがなく、靴を履いている人間の転倒を未然に防止することが可能となる。
【0038】
また、アクチュエータ15が動作しない場合、弾性部材14、14、・・・により移動板13がソール11の内部へと引き上げられ、移動板13に備えてある複数の突起物12、12、・・・がソール11の底面から突出しない。したがって、歩行状態でない場合、例えばいすに座っている場合等には、突起物12、12、・・・がソール11の底面から突出しない。また、滑りが生じていないと判断する場合、突起物12、12、・・・がソール11の底面から突出せず、通常の歩行を行うことが可能となる。
【0039】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2に係る歩行型ロボットについて図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の実施の形態2に係る歩行型ロボットの下半身部分の構成を模式的に示す図である。本実施の形態2では、上述した実施の形態1に係る転倒防止用靴1を二本の足に装着した二足歩行型ロボットを例に挙げて説明する。もちろん、二足歩行型ロボットに限定されるものではなく、歩行時に滑りが生じることにより転倒するおそれのある歩行型ロボットであれば何でも良い。
【0040】
図8に示すように、二足歩行型ロボット(humanoid robot)では、人間の足の動きに近い動きを再現すべく、人間の間接に該当する部分に複数のアクチュエータ91、91、・・・を備えている。アクチュエータ91、91、・・・の種類は動作させる部位に応じて様々であり、これらアクチュエータ91、91、・・・の動作の制御は、相互に連携して動作させることが必要であることから、各アクチュエータ91を制御する制御装置92間で例えば無線通信を行い、相互に連係動作する。もちろん、すべての制御を一括して行う中央プロセッサ93を筐体に内蔵し、各アクチュエータ91を制御する制御装置92との間で例えば無線通信を行うことにより、動作を統制制御するものであっても良い。
【0041】
二足歩行型ロボット(humanoid robot)の足端には、実施の形態1に係る転倒防止靴1を装着している。転倒防止靴1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0042】
足端に転倒防止靴1を装着することで、転倒防止靴1の制御装置17は、滑りが生じたか否かを容易に判断することができ、アクチュエータ15に通電指示信号を送出するとともに、中央プロセッサ93へ滑りが生じた旨を示す信号及びソール11の滑りによる移動方向、速度等を送信する。滑りが生じた旨を示す信号を受信した中央プロセッサ93は、受信した移動方向、速度等に基づいて、例えば膝関節を屈曲させることにより転倒を防止する、太腿関節を屈曲させることにより転倒を防止する等、ロボットの他の部分の動作を制御する制御装置92、92、・・・に対して、状況に応じた転倒防止信号を送信する。これにより、転倒防止靴1だけでは十分に転倒を防止できない状況であっても、二足歩行型ロボットの転倒を確実に防止することができ、内蔵する中央プロセッサ93、制御装置92、92、・・・等の破損を防止することが可能となる。
【0043】
以上のように本実施の形態2によれば、実施の形態1に係る転倒防止靴1を装着することにより、滑りが生じたことを確実に検知することができ、転倒防止靴1の制御装置17によるアクチュエータ二足歩行型ロボットの転倒を確実に防止することができ、内蔵する中央プロセッサ、制御装置等の破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の構成例を示す前後方向の中心線近傍の側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の突起部の形状を示す側断面図である。
【図3】本実施の形態1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の制御装置のLSIの歩行状態であるか否かを検出する処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の動きセンサを備えた場合の前後方向の中心線近傍の部分側断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の動きセンサを備えた制御装置のLSIの滑り検出処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態1に係る転倒防止靴の突起部がソールの底面から突出した状態を示す前後方向の中心線近傍の側断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る歩行型ロボットの下半身部分の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 転倒防止靴
11 ソール
12 突起部
13 移動板
14 弾性部材
15、91 アクチュエータ
16 滑りセンサ(荷重センサ、動きセンサ)
17、92 制御装置
20 溝部
31 孔
32 受発光器(送受光部)
93 中央プロセッサ
171 LSI
172 ROM
173 RAM
174 通信インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行時の転倒を防止する転倒防止靴であって、
複数の突起物を一面に備えた移動板と、
該移動板を上下動させるアクチュエータと、
地面とソールの底面との間に滑りが生じたか否かを判断するために必要な情報を検出する情報検出手段と、
地面とソールの底面との間に滑りが生じたか否かを判断し、前記アクチュエータの動作を制御する制御手段と
をソールの底面側に設けてある溝部に備え、
前記制御手段は、前記情報検出手段で検出した情報に基づいて滑りが生じたと判断した場合、前記アクチュエータへ前記移動板を下方へ移動させる指示信号を送出するようにしてあることを特徴とする転倒防止靴。
【請求項2】
前記アクチュエータへ指示信号を送出していない場合、前記移動板をソールの底面と対向する方向に引き上げる弾性部材を備えることを特徴とする請求項1記載の転倒防止靴。
【請求項3】
前記情報検出手段は、ソールの底面に加わる荷重を検出する荷重センサ及び動きセンサであり、
前記制御手段は、該荷重センサで検出した荷重が所定値より大きいか否かを判断し、所定値より大きいと判断した場合、歩行状態へと移行していると判断し、前記動きセンサの検出値に基づいて滑りが生じたか否かを判断するようにしてあることを特徴とする請求項1又は2記載の転倒防止靴。
【請求項4】
前記動きセンサは、
光を送受光する送受光部と、
光が通過することができるソールに形成してある複数の孔と
を備え、
前記制御手段は、前記送受光部で検出した地面の画像変化に基づいて、ソールの底面の地面に対する移動速度を算出し、算出した移動速度の単位時間当たりの変動量が所定値より大きいか否かを判断し、所定値より大きいと判断した場合、滑りが生じたと判断するようにしてあることを特徴とする請求項3に記載の転倒防止靴。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の転倒防止靴を備えたことを特徴とする歩行型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−288435(P2006−288435A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109178(P2005−109178)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】