説明

軸付発泡ゴムローラの製造方法

【課題】 発泡ポリウレタンからなるゴムローラの表面に発生するボイドの数を減少させ、ゴムローラ性能を向上させることができる、軸付発泡ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の軸付発泡ゴムローラの製造方法は、円柱状のキャビティー26を有する金型20と、容器状に形成されると共にその内部空間が接続口31を介して前記キャビティー内に連通するように構成された受け部材30と用いて軸付発泡ゴムローラを製造するものである。本製造方法は、キャビティー26内に芯金25を配置する工程と、水平面に対して傾斜した状態となっている受け部材30の受け面35に対してポリウレタン原料液を落下投入する工程と、投入されたポリウレタン原料液を加熱発泡させて該ポリウレタン原料液をキャビティー26内に充填する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の発泡樹脂原料を加熱発泡させることで芯金の周りにゴムローラを一体的に成形する軸付発泡ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機やプリンター等の画像形成装置として、電子写真感光体等の像担持体上に形成した静電潜像を現像する現像装置を有するものが知られている。このような現像装置は、ホッパー内に収容されたトナーを像担持体側に供給するためのトナー供給ローラを有している。
【0003】
図4は、特許文献1に開示されたトナー供給ローラの構成を示す図であり、トナー供給ローラが軸付発泡ゴムローラ126として示されている。
【0004】
軸付発泡ゴムローラ126は、回転軸となる芯金132と、その周りに形成された円筒状のゴムローラ134とを有している。ゴムローラ134は、例えば所定の柔軟性を備えたポリウレタンスポンジからなるものであり、その表面(外周面)には複数の開口部140が形成されている。このように構成された軸付発泡ゴムローラ126は、ゴムローラ134の外周面がホッパー(不図示)内に対向するように組立てられる。ホッパー内のトナーは、開口部140を介してローラ表面近傍の空間内に入り込むようになっており、これは、ゴムローラ134がその表面でトナーを保持できることを意味する。また、トナーを良好に保持するためには、開口部140の開口面積は例えば直径100μm〜800μm程度であることが好ましい。
【0005】
また同文献には、この軸付発泡ゴムローラ126の製法の一例として、金型キャビティー内に芯金132を配置した状態で、ポリウレタン原料をそのキャビティー内で発泡成形させることでゴムローラ134を一体的に形成することが記載されている。なお、このように、金型内でゴムローラと芯金とを一体的に成形する製造方法については、特許文献2、3にも開示されている。
【特許文献1】特開平9−274373号公報
【特許文献2】特開平5−188774号公報
【特許文献3】特開2002−307454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような発泡成形工程に関し、ポリウレタン原料液を発泡させる工程の前工程として、ポリウレタンの原料液を所定容器内に供給(投入)する工程が必要である。従来、この工程は、ポリウレタン原料液を水平な受け面(不図示)に対して落下させるようにして行われることが多かった。この場合、ポリウレタン原料液は重力により鉛直下方に落下することから、ポリウレタン原料液は、受け面に対して垂直方向から投入されるものであった。
【0007】
しかしながら、このような方法で投入した原料液を発泡成形させて形成したゴムローラを表面を観察してみると、ローラの表面または内部に直径が2mm以上のボイドが多数存在していることが発見された。これは、原料液を投入する際に、原料液内に巻き込まれたエア(気泡)に起因するものと考えられる。前述の通りローラ表面にはトナーを保持するための開口部(直径100μm〜800μm程度)が形成されているものの、上記のような比較的大径のボイドの存在は、トナー供給ローラとしての性能を低下させるものであり、したがってゴムローラの性能を維持するためにはこうしたボイドは少ない方が好ましい。また、上述した問題は、ポリウレタン原料液に限らず、液状の発泡樹脂原料を用いる際にも同様に生じうる問題である。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液状の発泡樹脂原料を発泡成形することで形成したゴムローラの表面に発生するボイドの数を減少させ、ゴムローラ性能を向上させることができる、軸付発泡ゴムローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明による軸付発泡ゴムローラの製造方法は、円柱状のキャビティーを有する金型と、容器状に形成されると共にその内部空間が接続口を介して前記キャビティー内に連通するように構成された受け部材とを用いて軸付発泡ゴムローラを製造する方法であって、棒状部材からなる芯金を、前記キャビティーと同軸であって、かつ前記キャビティーを該キャビティーの長手方向に貫通するように配置する工程と、前記受け部材内に液状の発泡樹脂原料を投入する工程と、前記受け部材内に投入された前記発泡樹脂原料を加熱発泡させると共に、発泡した前記発泡樹脂原料を前記接続口を介して前記キャビティー内に充填させる工程とを有し、前記発泡樹脂原料を投入する工程は、前記発泡樹脂原料を、水平面に対して傾斜した状態となっている、前記受け部材の受け面に対して落下させることを含むものである。
【0010】
なお、「受け面」とは、投入時に落下してきた液状の発泡樹脂材料を受ける面を意味し、したがって、受け面は受け部材の側面または底面のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述したような本発明の軸付発泡ゴムローラの製造方法では、発泡樹脂原料を投入する工程において発泡樹脂原料内にエアが混入しにくいものであるため、成形された発泡樹脂からなるゴムローラの表面に発生するボイドの数が減少し、したがってゴムローラ性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の製造方法により製造される軸付発泡ゴムローラ構成を示す図である。なお、以下の説明では、液状の発泡樹脂原料としてポリウレタン原料液を用いる方法を例に挙げて説明する。
【0013】
軸付発泡ゴムローラ10は、回転軸となる芯金12と、その周りに形成された円筒状のゴムローラ14とを有している。芯金12は、断面円形の棒状部材からなり、図1に示すように、その両端がゴムローラ14の両端から延出している。
【0014】
ゴムローラ14は、発泡ポリウレタンであり、芯金12の周りに所定の厚さに形成されている。詳細には図示しないが、ゴムローラ14は、図4に示した従来のローラと同様、ローラ表面に開口部が形成されており、また、ゴムローラ14自体も所定の柔軟性を備えている。ゴムローラ14は、例えば、プリンターなどの画像形成装置における現像装置(不図示)に組込まれて使用されるものであり、その表面でトナーを保持する機能を有している。こうした現像装置においてはローラ表面に付着したトナーのうち不要なものを掻き取る動作も行われる。したがって、ゴムローラ14に所定の柔軟性を持たせることによって、この掻き取り動作が効率的に行われるようになっている。
【0015】
次いで、図2、図3を参照して上記軸付発泡ゴムローラ10の製造方法について説明する。図2は、図1の軸付発泡ゴムローラを製造するための金型装置の構成を示す側面図である。図3は、図2の金型装置の受け部材の動作時の状態を示す側面図である。
【0016】
図2に示すように、金型装置1は、上駒21、下駒22、および金型本体25からなる金型20と、金型20の下方に配置された受け部材30とを有している。
【0017】
金型20は、ゴムローラ14を成形するために円柱状に形成されたキャビティー26を有しており、このキャビティー26は、上駒21、下駒22、および金型本体25のそれぞれの内側面によって構成されている。すなわち、上駒21および下駒22がキャビティー26の上面および下面を構成し、金型本体25の内側面がキャビティー26の側周面を構成している。なお、キャビティー26は、その長手軸が鉛直方向となるように配置されている。
【0018】
金型本体25は、パイプ型であり、その内側面にはブラスト加工が施されている。このようにブラスト加工を施す主たる理由は、ゴムローラ14の表面に所定の開口部(不図示)を形成するためであり、ブラスト加工後の表面粗さ(Rz)は例えば5〜20μm程度である。
【0019】
上駒21および下駒22は、いずれもその中央部に凹状部が形成されており、この凹状部によって芯金12の両端を保持できるように構成されている。なお、芯金12は、キャビティー26と同軸に配置されるようになっている。下駒22には、下駒22をその厚さ方向に貫通する貫通孔22aが形成されており、貫通孔22aは、キャビティー26内と受け部材30内とを連通している。この貫通孔22aは、後述するように、受け部材30内で発泡したウレタン原料液をキャビティー26内に移送するための通路である。
【0020】
受け部材30は、円筒容器状に形成され、その上部側に接続口31が開口している。受け部材30は、下駒22の下面によってその接続口31が覆われて1つの略密閉な内部空間を形成するようになっている。この内部空間は、後述するように発泡前のポリウレタン原料液が投入される空間である。したがって、受け部材10内にポリウレタン原料液を投入できるように、受け部材10は、図3に示す通り例えば図示右上の端部を回転中心として、所定の傾斜角に傾くことができるように構成されている。
【0021】
なお、金型装置1は上記構成要素の他にも、図示しないが、受け部材10内にウレタン原料液を投入するための投入ノズル、および受け部材10内に投入されたウレタン原料液を加熱発泡させるための加熱装置を有している。
【0022】
次に、このように構成された金型装置1を用いて図1に示した軸付発泡ゴムローラ10を製造する方法の一例について説明する。
【0023】
まず、予め用意した芯金12を、上駒21および下駒22に取付ける。これにより、芯金12は、キャビティー26と同軸であって、かつキャビティー26を鉛直方向に貫通した状態となる。
【0024】
次いで、図3に示すように、受け部材30を水平面に対して所定の傾斜角θに傾斜させた状態で、投入ノズル(不図示)から、ポリウレタン原料液を受け部材30内に投入する。具体的には、投入ノズルから放出されたポリウレタン原料液は、点線にて示すように鉛直下方に向かって落下して、所定の傾斜角θに傾斜した受け面35上に沿って受け部材30内に流れ込む。このように受け面35が傾斜していることによって、ポリウレタン原料液を投入した際のポリウレタン原料液内へのエアの巻き込みが抑えられる。
【0025】
このように、本発明の主たる特徴は、ポリウレタン原料液を投入する工程において、ポリウレタン原料液を傾斜させた受け面35に対して落下投入させるようにすることで、投入時にポリウレタン原料液内に混入するエアの量を従来方法と比較して少なくなるようにしたことにある。このことからすれば、上記所定の傾斜角θは、水平面に対して0°<傾斜角θ<90°となっていればよいが、より好ましくは20°≦傾斜角θ≦70°であればよい。傾斜角θが20°未満の場合、投入したポリウレタン原料液が溢れてしまう場合があり、逆に、傾斜角θが70°を越える場合、気泡混入の抑制効果が小さくなると考えられるためである。
【0026】
次いで、受け部材20を図2に示すような位置に戻すと共に、加熱装置(不図示)を駆動して、受け部材10内に投入されたポリウレタン原料液を加熱する。すると、ポリウレタン原料液が発泡し、発泡したポリウレタン原料液は接続口31および貫通孔22aを経由してキャビティー26内に充填される。これにより、芯金12の周りに発泡ポリウレタンからなるゴムローラ14が成形され、図1に示した軸付発泡ゴムローラ10が得られる。
【0027】
なお、製造された軸付発泡ゴムローラ10の型抜きは、例えば、金型本体25から上駒21を外し、その後、軸付発泡ゴムローラ10を鉛直上方に抜くことによって実施可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、ポリウレタン原料液を投入する工程において、ポリウレタン原料液を傾斜した受け面35に対して落下させているため、投入時にポリウレタン原料液内に混入するエアの量が従来方法と比較して少なくなる。したがって、最終的に形成されたゴムローラの表面に発生するボイドの数を減少させることができる。
【0029】
なお、本発明は上述したような具体的記述または以下の実施例によって限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、修正等を加えることができる。例えば、図2に示した形態では、キャビティー26が上駒21、下駒22、および金型本体25の3つの部材で構成されたものであったが、金型本体25と下駒22とを一部材として構成することもできる。また、図2の形態では、受け部材30が金型20の直下に位置する構成であったが、受け部材30は例えば金型本体25の側方に配置されていてもよい。この場合、例えば受け部材30内のポリウレタン原料液が、接続口31および所定の管状部材(不図示)を経由してキャビティー26内に供給されるように構成してもよい。また、受け部材30は円筒容器状のものに限らず、略六面体状の内部空間を有するものであってもよく、この場合、受け面35は平面となる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の一実施例を示し、本発明をさらに具体的に明らかにする。
【0031】
まず、パイプ型として用意した金型本体25の内側面にショットブラスト加工を施し、表面粗さ(Rz)を10μmとした。次いで、その内側面に、シリコーン樹脂離型剤をコーティングし、そのシリコーン樹脂離型剤に対してさらに熱処理を施すことでシリコーン樹脂離型剤を加熱硬化させた。これにより、金型本体25の内側面には厚さ5μmのシリコーン樹脂被膜が形成された。
【0032】
なお、パイプ型の内部形状(すなわちキャビティー26の形状)は、直径13mm、長さ220mmとした。また、受け部材30の内部形状は、内径16mm、深さ60mmとした。
【0033】
ポリウレタン原料液には、
FA−908(三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール、OH価=24)90重量部、
POP−31−28(三井武田ケミカル株式会社製ポリマーポリオール、OH価=28)10重量部、
TOYOCAT−ET(東ソー株式会社製第3級アミン触媒)0.1重量部、
TOYOCAT−MR(東ソー株式会社製第3級アミン触媒)0.3重量部、
水(発泡剤)2重量部、および
L5366(日本ユニカー株式会社製シリコーン整泡剤)1重量部
を予め混合して混合ポリオールとし、その後、コロネート1025(日本ポリウレタン工業株式会社製イソシアネート、NCO=40%)22重量部とを混合攪拌した材料を用いた。
【0034】
上記のように作製した各構成要素およびポリウレタン原料液を用いて軸付発泡ゴムローラを作製し、受け部材30の傾斜角θと、ゴムローラ表面に発生するボイドの数との関係を調べるための試験を行った。すなわち、ポリウレタン原料液を投入する際の受け部材30の傾斜角θを、40°、45°、50°、および90°に変化させ、4つの軸付発泡ゴムローラをそれぞれ異なる条件で作製した。そして、作製した各軸付発泡ゴムローラのゴムローラ表面を観察し、直径2mm以上のボイドの数をカウントした。この結果を表1に示す。なお、傾斜角θ=90°とは、受け面(容器底面)が水平である事を意味し、したがって表1中では、傾斜角θ=90°で作製したものは「比較例」として示してある。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果から明らかなように、傾斜角θが40°〜50°の範囲内であるとき、ゴムローラ表面のボイドの数は大幅に減少していた。これは、上記本実施形態の製造方法の効果として、ポリウレタン原料液を投入する際にエアが巻き込まれにくくなり、その結果、ローラ表面のボイド発生が抑えられたことを裏付けている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態の製造方法により製造される軸付発泡ゴムローラ構成を示す図である。
【図2】図1の軸付発泡ゴムローラを製造するための金型装置の構成を示す側面図である。
【図3】図2の金型装置の受け部材の動作時の状態を示す側面図である。
【図4】従来のトナー供給ローラの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 金型装置
10 軸付発泡ゴムローラ
12 芯金
14 ゴムローラ
20 金型
21 上駒
22 下駒
25 金型本体
26 キャビティー
22a 貫通孔
30 受け部材
31 接続口
35 受け面
θ 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のキャビティーを有する金型と、容器状に形成されると共にその内部空間が接続口を介して前記キャビティー内に連通するように構成された受け部材とを用いて軸付発泡ゴムローラを製造する方法であって、
棒状部材からなる芯金を、前記キャビティーと同軸であって、かつ前記キャビティーを該キャビティーの長手方向に貫通するように配置する工程と、
前記受け部材内に液状の発泡樹脂原料を投入する工程と、
前記受け部材内に投入された前記発泡樹脂原料を加熱発泡させると共に、発泡した前記発泡樹脂原料を前記接続口を介して前記キャビティー内に充填させる工程とを有し、
前記発泡樹脂原料を投入する工程は、前記発泡樹脂原料を、水平面に対して傾斜した状態となっている、前記受け部材の受け面に対して落下させることを含む、軸付発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記水平面に対する前記受け面の傾斜角が40°〜50°の範囲内である、請求項1に記載の軸付発泡ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記液状の発泡樹脂原料がポリウレタン原料液である、請求項1または2に記載の軸付発泡ゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−215179(P2006−215179A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26449(P2005−26449)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】