説明

軽質ガスから液体生成物を製造するシステム及び方法

液体材料中に軽質ガスの分散体を形成することによって、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、及びメタノールの一つ又は複数を含む軽質ガスから、C2+の炭化水素、含酸素物及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を製造する方法であって、分散体は高せん断力によって少なくとも一部が形成されており、液体材料及び軽質ガスの少なくとも一つが水素源である。当該方法を実施するシステムも開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助を受けた研究又は開発に関する記述
適用なし
【0002】
本発明は、二酸化炭素及び/又はメタンなどの軽質ガスを炭化水素及び/又は液体含酸素物(oxygenate)へと変換することに関連する。より詳細には、本発明は反応物を高せん断接触させることによって二酸化炭素及び/又はメタンなどの軽質ガスから液体の含酸素物及び/又は炭化水素を生成する装置及び方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
地球温暖化に対する二酸化炭素排出の増加の影響は、環境に対するその影響のために科学者及び政府の大きな懸案事項である。電力源及び熱源としての化石燃料の使用の増加が二酸化炭素排出が増加した主な原因である。化石燃料の燃焼は発熱反応であり、放出されるエネルギーは一般に加熱及び/又は力学的エネルギーなどの他の形態のエネルギーへの変換に用いられる。また、炭化水素の酸化はエチレンの酸化、フィッシャー・トロプシュ反応、及び他の反応などの化学反応において一般的に行われている。炭化水素の燃焼が原因で生じる排出物は、炭化水素の性質によって決まるが、主に二酸化炭素及び水である。大量の二酸化炭素を大気中に放出することは、環境に対する悪影響の原因となると考えられ、これらの悪影響を減少させるために二酸化炭素の排出を低減させようとする取り組みが進められている。
【0004】
二酸化炭素排出の有害な環境影響に対する実行可能な解決策は、二酸化炭素排出の純減に帰結する。二酸化炭素を隔離する技術は大量のエネルギーを消費し、多くの場合においてエネルギーは化石燃料に由来するため、二酸化炭素の純減はほとんど無い若しくは全く無く、又は更に悪いことには二酸化炭素の産生が増加する。
【0005】
燃料又は化学原料などの価値のある生成物を産生するために二酸化炭素を再利用することを可能にする方法は、地球温暖化に対する二酸化炭素の噂される影響を低下させる点において非常に有益であろう。製油又は石油化学処理用の原料として輸送及び/又は使用できる液体燃料へと二酸化炭素を変換するための方法を開発することは、更に有益であろう。
【0006】
メタンは、重要な燃料源であるとともに、産業で用いられる有機反応における重要な構成要素である。天然ガスのメタン成分は約40体積%から約95体積%の範囲内で変化する。天然ガスの他の成分には、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン(及び重質炭化水素)、硫化水素、二酸化炭素、ヘリウム及び窒素が含まれる。液状の天然ガスは、0.415の密度及び−162℃の沸点を有する。したがって、容積に対して小さな表面積の比率を有する非常に大きなタンクを用いた海上輸送を除いて、液体として輸送することには容易に適合できない。多くの場合、天然ガスの大規模な使用は高性能で広範囲に及ぶパイプラインシステムが必要となる。周知の天然ガスの貯蔵槽の大半は、アクセスするのが困難な離れた場所に関連している。多くのこれらの離れた場所にとって、ガスを潜在的な使用者へと運ぶためのパイプラインの敷設は経済的に不可能である。気体を液体に変換することによって離れた場所からメタンを安価に輸送することは、産業界において長い間求められてきた。
【0007】
メタノールの触媒合成が後に続く第一段階として、合成ガスを産生するために水蒸気改質によってメタンをメタノールへと間接的に変換することは周知の方法である。この二段階の間接合成の技術的な複雑性及び高い費用に加えて、メタノール生成物は限られた市場を有し、そのためにこの方法は離れた場所から天然ガスを利用する実用的な方法を提供できないと思われている。
【0008】
メタノールをガソリンに接触変換する有効な手段を提供する方法が、米国特許第3,894,107号(バター(Butter)他)に記載されている。ガソリンの市場はメタノールの市場に対して大きく、この方法は現在ニュージーランドで用いられているものの、この方法は複雑であり、その実行可能性はガソリンの代替源を供給する費用が高い状況に限定されると思われる。
【0009】
気相中で(メタノール又はエタノールなどの)液体化合物へのメタンの部分酸化を行う試みは、関連するフリーラジカルの過程を制御することが困難であるために限定的な成功に留まっている。メタノールはメタンよりも反応性が高いため、二次燃焼によるCO及びCOの不要な形成が避けられない。大半は金属酸化物である様々な触媒がメタンのメタノールへの部分酸化に関して報告されているが、反応は高温を必要とし、メタンを基にするメタノールの報告された収率はほぼ10%未満であった。
【0010】
メタンのメタノールへの変換に関する間接的な手法は、ビエルム(Bjerrum)の米国特許第6,380,444号、ペリアナ(Periana)の米国特許第5,233,133号、及びチャン(Chang)の米国特許第4,543,434号によって報告されている。これらの手法に用いられている一般的な反応システムは、メチルラジカル及び少量の酸を産生するために、メタンから水素原子を解離させる少量のラジカル開始剤(酸)を利用する。いくつかの特許は、(プラチナ又はパラジウムなどの)第VIII族貴金属触媒及び硫酸などの無機強酸を用いて一段階でメタンを重硫酸メチルに変換可能であることを開示している。他の特許(例えば欧州特許第1,558,353号)はメタノールへのメタンの変換において触媒を利用しない方法を開示している。また、酸を含むクロリン及び他のハロゲンもメタンをメタノール及び他の液体に変換するために同様に利用可能である。これらの方法は、上昇した温度における腐食の問題に直面し、比較的低い収率のメタノールを産生し、不要な副産物を生じる傾向にある。
【0011】
リチャード(Richards)に与えられた米国特許出願第7,282,603号は、メタンスルホン酸、メタノール及び他の化合物へのメタンの無水処理を開示しており、メタンをメタノールへと変換する過去の手法のいくつかの概説を提供している。リチャードの手法は水の使用又は産生を回避しており、メチルラジカルを生成するためにハロゲンガス又はマーシャル酸(Marshall’s acid)などのラジカル開始剤を利用する。
【0012】
メタンから液体を産生する既存の方法及び製造施設は、質量流量及び生産収率の限界並びにプラントサイズ及びエネルギー消費の要件などの様々な制約を一般に課せられている。
【0013】
したがって、当該技術の点から見ると、二酸化炭素及び/又は低分子量のアルカン、特にメタンを価値の高い生成物へと変換することによって環境への二酸化炭素の排出が低減可能な効率的で経済的な方法及びシステム、及び/又は二酸化炭素及び/又はメタンを含む軽質ガスストリームを液体生成物へと変換可能なシステム及び方法が求められている。温室効果ガスの問題は、高せん断反応装置の使用によって二酸化炭素を炭化水素及び/又は含酸素物へと変換する本明細書において開示されているシステム及び方法によって解決される。そのようなシステム及び方法は、稼働温度、圧力及び/又は反応時間の経済的に実施可能な条件を許容する一方で、液体含酸素物の選択性及び収率並びにメタン及び/又は二酸化炭素の変換の増加を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第3,894,107号明細書
【特許文献2】米国特許第4,543,434号明細書
【特許文献3】米国特許第5,233,133号明細書
【特許文献4】米国特許第6,380,444号明細書
【特許文献5】米国特許第7,282,603号明細書
【特許文献6】欧州特許第1,558,353号明細書
【発明の概要】
【0015】
炭化水素及び/又は有機含酸素物への軽質ガスの変換を改善する高せん断システム及び方法が開示されている。システム及び方法は、従来の燃焼機関を稼働するのに適した炭化水素若しくは炭化水素混合物、又は更なる産業処理若しくは他の商業的使用に適した炭化水素を生成するために使用可能である。また、メタノール又はジメチルエーテルなどの中間産物も本明細書に開示される方法によって産生可能である。ある実施形態における全工程は、2より大きな炭素数である炭化水素、好ましくはC−C10の炭化水素及び/又はメタノールなどの含酸素物への二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びそれらの組み合わせから選択される気体の変換を含む。別の実施例において、液体炭化水素、主に有機性の含酸素物及び他の液体への(利用可能な天然ガスの主成分である)メタンの直接変換のために、方法は高せん断技術の使用を含む。有機含酸素生成物は主にアルコールを含む。ある実施形態において、有機含酸素生成物はメタノールを含む。ある実施形態において、メタノール及び二酸化炭素はエタノールを含む有機含酸素生成物へと変換される。
【0016】
本開示は、反応物の完全な接触をもたらし且つ複相の反応物間における化学反応を促進することによって反応原料をフリーラジカルへと解裂させるために、少なくとも一つの高せん断反応装置を用いて二酸化炭素及び/又は少なくとも一つのC1−C5のアルカンを含む軽質ガスから炭化水素及び/又は含酸素物を産生するためのシステム及び方法を提供する。得られる水素及び/又は酸素のラジカルは、二酸化炭素及び/又はアルカンと反応することによって、炭化水素及び/又は含酸素物を含む生成物を産出することができる。高せん断装置は、従来の反応装置及び稼働条件を用いた場合(すなわち、全体的な条件に基づくΔGが正である場合)に好ましくないであろう反応を好ましくする。
【0017】
ある実施形態において、方法は水及び二酸化炭素ガスを高せん断反応装置へと供給することを含む。高せん断反応システム内において、水及び二酸化炭素は構成要素へと解離する。次に、構成要素は大きな炭素数(すなわちC2+、好ましくはC−C10)の炭化水素及び/又は含酸素物を含む生成物を形成するために再結合する。方法は少なくとも一つの外部高せん断装置の使用を含むことによって、大容量の反応装置を必要とせずに含酸素物及び/又は炭化水素の生成をもたらす。ある実施形態において、水の添加は容器10内に存在する有機物の水蒸気蒸留(steam stripping)を補助する役割を担う。
【0018】
本開示の別の側面は、二酸化炭素及び/又はメタン並びに単純な炭化水素などの水素源又は他の炭化水素源から炭化水素及び/又は含酸素物を生成する方法である。また、水は任意に又は追加的に遊離水素ラジカル及びヒドロキシルラジカルの供給源として存在しても良い。方法のある実施形態において、水素源は水、低分子量アルカン、及びそれらの組み合わせから選択される。反応は、脱水素化触媒として作用することが知られている触媒化合物によって触媒される。ある実施形態において、水素源は例えば水素ガス又は単純な気体アルカンからHSD40内で解離した水素であり、ライン21の液体はポリエチレングリコールなどの担体である。
【0019】
ある実施形態によると、C2+の炭化水素、含酸素物及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン及びメタノールの一つ又は複数である軽質ガスから産生するための方法が示されており、方法は液体原料中に軽質ガスの分散体を形成することを含み、分散体は少なくとも一部が高せん断力を用いて形成されており、液体原料及び軽質ガスの少なくとも一つは水素源である。分散体の形成は、約0.1から約1.5μmの範囲の平均直径を有する軽質ガスの気泡を生じることを含む。ある実施形態においては、気泡は約0.4μm未満の平均直径を有する。
【0020】
ある実施形態において、高せん断力は少なくとも一つの高せん断装置により生じる。少なくとも一つの高せん断装置は、固定子及び相補的なロータを有する少なくとも一つの生成機を有する。ロータ及び固定子は、約0.02mmから約3mmの範囲の最小の隙間によって分離されている。ある実施形態において、分散体の形成は5.0m/s(1000フィート/分)を超えるロータの先端速度を有する。ある実施形態において、分散体の形成は20m/s(4000フィート/分)を超えるロータの先端速度を有する。ある実施形態において、少なくとも一つの高せん断装置は少なくとも二つの生成機を備える。分散体の生成は、軽質ガス及び液体原料の混合物に約20,000s−1を超えるせん断速度を課すことを含む。高せん断装置は、分散体の形成中にロータの先端において少なくとも約1034.2MPa(150,000psi)の局所圧を生じる。高せん断装置のエネルギー消費は、分散体の形成中に1000W/mを超える。
【0021】
2+の炭化水素、含酸素物及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を軽質ガスから生成する方法の実施形態において、分散体は更に触媒を含む。触媒はルテニウムを含んでもよい。触媒は三塩化ルテニウム七水和物を含んでもよい。方法は、触媒層を有する固定層反応装置へと分散体を導入することを含む。触媒の固定層はルテニウムカルボニルを含んでもよい。
【0022】
本明細書に同様に開示されているものは、液体の含酸素物、C2+の炭化水素及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を産生する方法であり、当該方法は二酸化炭素、メタン、又はその両者を含む軽質ガス及び液体媒体を含有する流体混合物に20,000s−1より大きなせん断速度を課すことによって液体の連続相内に軽質ガスの分散体を生成すること、並びに液体の含酸素物、C2+の炭化水素、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物が除去された反応装置へと分散体を導入することを含み、分散体は少なくとも一つの高せん断装置を用いて少なくとも一部が形成されており、少なくとも一つの高せん断装置は液体媒体中に軽質ガスの気泡の分散体を産生するように構成されている。方法は、反応装置による生成物を気体ストリームと液体生成物を含む液体生成物ストリームとに分離すること、及び気体ストリームの少なくとも一部を外部高せん断装置へと再循環することを更に含んでもよい。ある実施形態において、分散体は約0.1から約1.5μmの範囲の気泡の平均直径を有する。ある実施形態において、分散体は1μm未満の気泡の平均直径を有する。分散体は大気圧において少なくとも約15分間にわたって安定である。ある実施形態において、高せん断装置は少なくとも二つの生成機を備える。分散体は少なくとも一つの触媒を更に含んでもよい。
【0023】
本明細書に同様に開示されているものは、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン又はそれらの組み合わせを含む気体を液体の含酸素物、C2+の炭化水素、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物へと変換するためのシステムであり、当該システムは、せん断間隙で分離されたロータ及び固定子を含む少なくとも一つの生成機を備える少なくとも一つの高せん断混合装置と、軽質ガス及び液体媒体を含む混合物を高せん断混合装置へと輸送するよう構成されたポンプとを有し、せん断間隙はロータと固定子との間の最小の隙間であり、高せん断混合装置は22.9m/s(4,500フィート/分)を超えるロータの先端速度を生じることが可能である。システムは、少なくとも一つの高せん断装置とポンプとの間に配置された反応装置を更に有することが可能であり、前記反応装置は生成物排出口と少なくとも一つの高せん断装置の分散体排出口から分散体を受容するよう構成された導入口とを有する。少なくとも一つの高せん断装置は少なくとも二つの生成機を有することができる。一つの生成機によってもたらされるせん断速度は、別の生成機によってもたらされるせん断速度より大きくても良い。少なくとも一つの高せん断混合装置は、液体媒体を含む液相中に軽質ガスの気泡の分散体を産生するよう構成されており、分散体は400nm未満の気泡の平均直径を有する。少なくとも一つの高せん断混合装置は少なくとも40.1m/s(7,900フィート/分)のロータの先端速度を生じることができる。システムは少なくとも二つの高せん断混合装置を有することができる。
【0024】
システムのある実施形態は、大容量の反応装置を必要とせずに、外部加圧高せん断反応装置を用いることによって二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、メタノール又はそれらの組み合わせを含む気体からの有機液体生成物の産生を実現できる可能性がある。
【0025】
上述の方法又はシステムのある実施形態は、別の方法で可能な条件よりも好適な時間、温度、及び圧力の条件を提供することができ、それは複相反応の速度を向上することができる。上述の方法又はシステムのある実施形態は、より低い温度及び/又は圧力で稼働し、消費される触媒の単位量あたりの生産物を増加させ、反応時間を短縮し、及び/又は資本費用及び/又は運転費用を減少させることによって、全体的な費用の減少をもたらすことができる。これら及び他の実施形態及び潜在的な利点は、以下の詳細な説明及び図面によって明らかにされる。
【0026】
本発明の好適な実施形態のより詳細な説明のために、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】外部高せん断分散を含む本開示の実施形態による複相反応システムの図である。
【図2】システムの一実施形態において用いられる複数ステージ式の高せん断装置の長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において用いられる場合、用語「分散体(dispersion)」は、相互に容易に混合及び溶解しない少なくとも二つの区別可能な物質(又は「相」)を含む液体混合物を指す。本明細書で用いられる場合、「分散体」は、別の相又は物質の不連続な液滴、気泡、及び/又は粒子をその中に保持する「連続」相(又は「マトリックス」)を含む。したがって、用語「分散体」は液体連続相中に拡散された気泡を有する泡、第一の液体に対して非混和性である第二の液体を含む連続相全体に第一の液体の液滴が分散されているエマルジョン、及び全体に固形粒子が分散されている連続液相を含む。本明細書で用いられる場合、用語「分散体」は全体に気泡が分散している連続液相、全体に固形粒子(例えば固形触媒)が分散している連続液相、連続相にほぼ溶解しない第二の液体の液滴が全体に分散している第一の液体の連続相、並びに固形粒子、非混和性の液滴及び気泡の一つ又は組み合わせが全体に分散している液相を含む。したがって、分散体は組み合わせに選択された物質の性質に応じて、ある場合には(例えば液体/液相である)均質な混合物として、又は(例えば、気体/液体、固体/液体、又は気体/固体/液体である)不均質な混合物として存在する。
【0029】
用語「含酸素物(oxygenate)」は、酸素を導入された物質を指すために本明細書で用いられる。例えば前記用語は、燃料の燃焼中に生じる一酸化炭素を減少させるためにガソリン添加物として多くの場合に用いられる含酸素燃料と同様に、高オクタンガソリン又はディーゼルなどの燃焼機関を駆動させるのに適した炭化水素を含有するあらゆる酸素を指す。用語「含酸素物」は、限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、フルフリルアルコール、ベンジルアルコール、イソブチルアルコール、及びガソリングレードのt−ブタノール(GTBA)を含むアルコールベースの含酸素物と同様に、ホルムアルデヒド、ギ酸メチル、及びギ酸などのアルデヒドを含む。
【0030】
用語「単純なアルカン」及び「低分子量アルカン」は、室温及び大気圧で気体であるメタン、プロパン、及びブタンを含む低炭素数のアルカンを指すために本明細書で用いられる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「軽質ガス」は、二酸化炭素、1から5個の炭素原子を有する単純なアルカン、又はそれらの組み合わせを含む気体を指す。
【0032】
概説
液体、気体及び固体を含む化学反応の速度は接触時間、温度及び圧力によって決まる。(例えば、固体及び液体;液体及び気体;固体、液体及び気体である)異なる相である二つ以上の物質を反応させることが望まれる場合、反応速度を制御する限定要因の一つには反応物の接触時間が含まれる。不均質に触媒される反応の場合、触媒が別の反応物に触媒作用を及ぼせるように触媒の表面から反応生成物を除去するという更なる律速因子が存在する。多くの場合、反応物及び/又は触媒の接触時間は、化学反応に関与する二つ以上の反応物の接触をもたらす混合によって制御される。
【0033】
本明細書において説明される外部高せん断装置又は混合装置を有する反応装置アセンブリは物質移動の制限を低下させることができ、それによって反応を動力学的限界により近づけることができる。反応速度が上昇すると、滞留時間は低下し、それによって得られる生産量が増加する。高せん断システム及び方法によって、生産物の収量は増加するであろう。あるいは、既存の方法による生成物の収量が満足できるものである場合、適切な高せん断の導入によって必要な滞留時間を短縮できることは、従来の方法よりも低い温度及び/又は圧力の使用を可能にするであろう。
【0034】
本発明は、二酸化炭素及び/又は単純なアルカンなどの軽質ガスから炭化水素及び/又は液体含酸素物を含む有機生成物を産出するための革新的な技術を利用する。軽質ガスは液体媒体と完全に混合される。軽質ガス及び液体媒体の少なくとも一つが水素源として機能する。水素源は、例えば水及び/又は炭化水素である。高せん断反応装置及び任意に触媒は反応物をフリーラジカルに解裂し、それらを炭化水素及び含酸素物を含む生成物へと再構成することができる。
【0035】
システムは、液体炭化水素、有機含酸素物又はそれらの組み合わせを含む生成物へと(主な温室効果ガスである)二酸化炭素及び/又は単純なアルカンを変換するために高せん断技術を使用することを含む。脱水素触媒を伴う二酸化炭素及び/又は軽質ガスの複相変換による炭化水素及び/又は液体含酸素物の産生のための本明細書において開示される方法及びシステムは、外部高せん断機械式装置を用いることによって、高せん断装置内の制御された環境において化学成分の迅速な接触及び混合をもたらすことができる。以下において更に説明されるように、少なくとも一つの高せん断装置の使用は反応に対する物質移動の制限を低減し、結果的に物質移動の速度を上昇させて反応を動力学的限界により近づけることができ、また、別の方法によってはギブズの自由エネルギー予測に基づいて起こらないと予測される反応を起こすことができる局所的な非理想的条件を生じることができる。
【0036】
軽質ガスから液体を産生するためのシステム
軽質ガスから炭化水素及び/又は液体含酸素物を生成するための高せん断システムは、軽質ガスの変換によって有機含酸素物/炭化水素を生成するための代表的な高せん断システム100の工程図である図1に関して説明される。代表的なシステムの基本構成要素には、外部高せん断混合装置(HSD)40、容器10及びポンプ5が含まれる。図1に示されるように、高せん断装置40は容器/反応装置10の外部に配置される。これらの構成要素のそれぞれは以下においてより詳細に説明される。ライン21は液体媒体を導入するためにポンプ5に接続されている。ライン13はポンプ5をHSD40へと接続しており、ライン18はHSD40を容器10へと接続している。反応物ガス(例えば、二酸化炭素及び/又はメタンガス)を導入するために、一つ又は複数のラインがライン13へと接続されている。例えば図1の実施形態において、ライン22及び23はライン13に接続されている。あるいは、ライン22及び/又は23はHSD40の入口に接続されていても良い。ライン17は、未反応の反応物ガス及び/又は反応生成物ガスを除去するために容器10に接続されていても良い。生成物排出ライン16は容器10から液体を除去するために容器10に接続される。ある実施形態において、必要に応じてマルチパス(multi-pass)稼働を行うために、生成物ライン16はライン21又はライン13に接続されていても良い。
【0037】
追加の構成要素は、本明細書の以下の部分で説明される有機生成物の産生のための高せん断処理の説明を読むことによって明らかになるように、方法のいくつかの利用において容器10、外部高せん断装置40、及びポンプ5の間に導入可能である。例えば、高せん断システム100は凝縮装置30、コンプレッサ50、供給ポンプ4、高圧ポンプ6、又はそれらの組み合わせを更に有することができる。図1に示されるように、高せん断システム100は、必要に応じて供給ポンプ4、増圧ポンプ6、又は他のポンプなどの一つ又は複数の追加ポンプを更に有することができる。熱交換器はシステム100の至るところに配置可能である。ある実施形態において、温度制御装置は容器10の内部にあるか、又はシステム100内のライン上に配置される。例えば図1の実施形態において、熱交換器H1は容器10に連結されており、熱交換器H2はライン21に配置されており、熱交換器H3はライン13に配置される。熱交換器は容器10のライン16に配置可能であり、容器10から出る反応生成物の温度を調節するよう機能することができる。
【0038】
高せん断混合装置
多くの場合において高せん断装置又は高せん断混合装置とも呼ばれる外部高せん断混合装置(HSD)40は、液体媒体及び分散性の軽質ガスを含む導入ストリームをライン13を介して受容するよう構成されている。あるいは、HSD40は別々の導入ライン(図示しない)を介して液体及び気体の反応物ストリームを受容するよう構成されていても良い。一つの高せん断装置のみが図1に示されているものの、システムのある実施形態は直列又は並列に配置された二つ以上の高せん断混合装置を有することが可能であることが理解されなければならない。HSD40はロータ/固定子の組み合わせを備える一つ又は複数の生成機を利用する機械装置であり、それぞれの組み合わせは固定子とロータとの間に隙間を有する。それぞれの生成機のセットにおけるロータと固定子との間の隙間は固定されていても調節可能であっても良い。HSD40は、高せん断装置を通過する反応混合物中にサブミクロン及びミクロンサイズの気泡を形成可能なように構成されている。高せん断装置はエンクロージャ又はハウジングを有しているため、反応混合物の圧力及び温度は制御可能である。
【0039】
高せん断混合装置は、それらの流体を混合する能力に基づいて、一般に三つの大まかなクラスに分類される。混合は流体内の粒子又は不均質な種のサイズを減少させる処理である。混合の程度又は完全性に対する一つの測定基準は、混合装置が流体粒子を破砕するために生じる単位体積あたりのエネルギー密度である。クラスは伝達されるエネルギー密度に基づいて区別される。サブミクロンから50μmの範囲の粒子サイズである混合物又はエマルジョンを一貫して生成することができる十分なエネルギー密度を有する産業用混合装置の三つのクラスには、均質化バルブシステム、コロイドミル及び高速混合装置が含まれる。均質化バルブシステムと呼ばれる高エネルギー装置の一番目のクラスにおいて、処理される流体は非常に高い圧力下において狭い隙間のバルブを通って低圧環境へと送り出される。バルブを介した圧力勾配と結果的に得られる乱流及びキャビテーションは流体中の粒子を細分化するよう作用する。バルブシステムはミルクの均質化において最も一般的に用いられており、サブミクロンから約1μmの範囲の平均粒子サイズを得ることができる。
【0040】
エネルギー密度スペクトルの反対側に位置するのは、低エネルギー装置と呼ばれる三番目のクラスの装置である。これらのシステムは処理される流体の貯蔵槽内において高速で回転するパドル又は流体ロータを通常は有しており、多くの一般的な利用において処理される流体は食品である。これらの低エネルギーシステムは、処理された流体中において20μmを超える平均粒子サイズが条件を満たす場合に習慣的に使用される。
【0041】
流体に伝達される混合エネルギー密度の観点において、低エネルギー装置と均質化バルブシステムとの間に位置するものは、中間エネルギー装置に分類されるコロイドミル及び他の高速ロータ−固定子装置である。一般的なコロイドミルの構成は、一般に0.0254mmから10.16mm(0.001−0.40インチ)である厳密に制御されたロータ−固定子の隙間によって相補的な液冷固定子から離間されている円錐型又は円盤型のロータを含む。通常、ロータは直接駆動又はベルト機構を介して電気モータによって駆動される。ロータが高速で回転すると、それはロータの外面と固定子の内面との間に流体を送り込み、隙間で生じるせん断力が流体を処理する。適切な調節機構を備える多くのコロイドミルは処理された流体中に0.1−25μmの平均粒子サイズを実現する。これらの機能は、化粧品、マヨネーズ、又はシリコン/銀のアマルガム形成などに必要なコロイド及び油/水ベースのエマルジョン処理から屋根用タールの混合を含む様々な利用に対してコロイドミルを適合させる。
【0042】
先端速度は、単位時間当たりのロータの先端が移動する周方向の距離である。したがって、先端速度はロータの直径と回転数との関数である。(例えば、1分あたりのメートルである)先端速度は、ロータの先端によって辿られる周方向の距離2πRに(例えば、1分あたりの回転数、rpmである)回転数をかけることによって算出可能であり、ここでRはロータの半径である。例えば、コロイドミルは22.9m/s(4500フィート/分)を超える先端速度を有することが可能であり、40m/s(7900フィート/分)を超えても良い。本開示において用語「高せん断」は、5.1m/s(1000フィート/分)を超える先端速度を生じることが可能であり且つ反応される生成物のストリームへとエネルギーを伝達するための機械駆動式の外部電源装置を必要とする機械式のロータ固定子装置(例えば、コロイドミル又はロータ−固定子分散装置)を指す。例えばHSD40において、22.9m/s(4500フィート/分)を超える先端速度が実現可能であり、40m/s(7900フィート/分)を超えても良い。ある実施形態において、HSD40は少なくとも22.9m/s(4500フィート/分)の先端速度で少なくとも300L/hを輸送することができる。電力消費は約1.5kWである。HSD40は高い先端速度を非常に小さなせん断間隙と組み合わせることによって、処理される材料に対する激しいせん断を生じることができる。せん断量は流体の粘度によって変わるであろう。したがって、圧力及び温度が上昇した局所領域が高せん断装置の稼動中にロータの先端において生じる。ある場合には、局所的に上昇した圧力は約1034.2MPa(150,000psi)である。ある場合には、局所的に上昇した温度は約500℃である。ある場合には、これらの局所的な圧力及び温度の上昇は、ナノ又はピコ秒の間持続するであろう。
【0043】
流体に加わるエネルギー(kW/L/分)の概算値はモータのエネルギー(kW)及び流体の産出量(L/分)を測定することによって見積もることができる。上述したように、先端速度は反応物に加わる機械力を生じる一つ又は複数の回転要素の先端に関する速度(フィート/分又はm/s)である。ある実施形態において、HSD40の消費エネルギーは1000W/mを超える。ある実施形態において、HSD40の消費エネルギーは約3000W/mから約7500W/mの範囲である。
【0044】
せん断速度は、先端速度をせん断間隙幅(ロータと固定子との間の最小の隙間)によって割ったものである。HSD40内で生じるせん断速度は20,000s−1を超えてもよい。ある実施形態において、せん断速度は少なくとも40,000s−1である。ある実施形態において、せん断速度は少なくとも100,000s−1である。ある実施形態において、せん断速度は少なくとも500,000s−1である。ある実施形態において、せん断速度は少なくとも1,000,000s−1である。ある実施形態において、せん断速度は少なくとも1,600,000s−1である。ある実施形態において、HSD40によって生じるせん断速度は20,000s−1から100,000s−1の範囲である。例えばある利用形態において、ロータの先端速度は約40m/s(7900フィート/分)であり、せん断間隙幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、1,600,000s−1のせん断速度を生じる。別の利用形態において、ロータの先端速度は約22.9m/s(4500フィート/分)であり、せん断間隙幅は0.0254mm(0.001インチ)であり、約901,600s−1のせん断速度を生じる。
【0045】
HSD40は、気体の少なくとも一部がC2+の炭化水素、含酸素物、又はそれらの組み合わせを含む有機生成物へと変換されるような条件において、軽質ガスが通常は非混和性である主要液相(連続相)へと軽質ガスを分散又は輸送することができる。液体媒体は少なくとも一つの水素源(例えば、単純な液体炭化水素又は水)を含む。ある実施形態において、液体媒体は触媒を更に含む。ある実施形態において、HSD40はコロイドミルを有する。好適なコロイドミルは、例えばノースカロライナ州ウィルミントン(Wilmington,NC)のIKA(登録商標) ワークス インコーポレーテッド(IKA(R) Works,Inc.)及びマサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington,MA)のAPV ノース アメリカ インコーポレーテッド(APV North America,Inc.)によって製造されている。ある実施例において、HSD40はIKA(登録商標) ワークス インコーポレーテッドのディスパックス リアクタ(登録商標)(Dispax Reactor(R))を有する。
【0046】
高せん断装置は、反応物に加わる機械力を生じる少なくとも一つの回転要素を備える。高せん断装置は、隙間によって離間された少なくとも一つの固定子と少なくとも一つのロータとを有する。例えば、ロータは円錐型又は円盤型であり、相補的形状の固定子から離間されている。ある実施形態において、ロータ及び固定子は複数の周方向に離間した歯を備える。ある実施形態において、固定子は各生成機(ロータ/固定子のセット)のロータと固定子との間に所望のせん断間隙を得るために調節可能である。ロータ及び/又は固定子の歯の間の溝は、乱流を増強させるために交互に並ぶステージにおいて方向を互い違いにすることができる。それぞれの生成機は、必要な回転をもたらすように構成された任意の適切な駆動システムによって駆動可能である。
【0047】
ある実施形態において、固定子とロータとの間の最小の隙間(せん断間隙幅)は約0.0254mm(0.001インチ)から約3.175mm(0.125インチ)の範囲である。ある実施形態において、固定子とロータとの間の最小の隙間(せん断間隙幅)は約1.52mm(0.060インチ)である。ある実施形態において、ロータと固定子との間の最小の隙間(せん断間隙)は少なくとも1.78mm(0.07インチ)である。高せん断装置によって生じるせん断速度は流路に沿った長手方向の位置によって変化しても良い。ある実施形態において、ロータはロータの直径と所望の先端速度とに対応した速度で回転するよう設定される。ある実施形態において、高せん断装置は固定子とロータとの間に固定された隙間(せん断間隙幅)を有する。あるいは、高せん断装置は調節可能な隙間(せん断間隙幅)を有する。
【0048】
ある実施形態において、HSD40は単一ステージ式の分散チャンバ(すなわち、単一のロータ/固定子の組み合わせ、単一の生成機)を有する。ある実施形態において、高せん断装置40は複数ステージ式の直列型分散装置であり、複数の生成機を有する。ある実施形態において、HSD40は少なくとも二つの生成機を有する。別の実施形態において、高せん断装置40は少なくとも三つの高せん断生成機を有する。ある実施形態において、高せん断装置40は複数ステージ式の混合装置であり、そのため本明細書の以下の部分において更に説明されるように、(上述したように、先端速度に比例し、ロータ/固定子の間隙幅に反比例して変化する)せん断速度は流路に沿った長手方向の位置によって変化する。
【0049】
ある実施形態において、外部高せん断装置の各ステージは交換可能な混合機を有することによって、柔軟性をもたらす。例えば、ノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標) ワークス インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ インコーポレーテッドのDR2000/4 ディスパックス リアクタ(登録商標)は3ステージ型の分散モジュールを有する。このモジュールは、各ステージにおいて細かい、中間、粗い、及び非常に細かいの選択ができる最大で三つのロータ/固定子の組み合わせ(生成機)を有することができる。このことは、気泡(例えば、軽質ガスの泡)の所望するサイズの狭い分布を有する分散体の形成を可能にする。ある実施形態において、各ステージは非常に細かい生成機を用いて稼働される。ある実施形態において、少なくとも一つの生成機のセットは約5.0mm(0.20インチ)より大きなロータ/固定子の最小の隙間(せん断間隙幅)を有する。別の実施形態において、少なくとも一つの生成機のセットは約1.78mm(0.07インチ)より大きなロータ/固定子の最小の隙間を有する。
【0050】
ここで図2を参照すると、好適な高せん断装置200の長手方向の断面図が示されている。図2の高せん断装置200は三つのステージ又はロータ−固定子の組み合わせを備える分散装置である。高せん断装置200は、三つのステージ又はロータ−固定子の組み合わせ220、230、及び240を備える分散装置である。ロータ−固定子の組み合わせは、限定することなく生成機220、230、240又はステージとして知られている。これらのロータ/固定子のセット又は生成機220、230及び240は駆動シャフト250に沿って直列に配置されている。
【0051】
第一の生成機220はロータ222及び固定子227を有する。第二の生成機230はロータ223及び固定子228を有する。第三の生成機240はロータ224及び固定子229を有する。それぞれの生成機において、ロータは動力250によって回転駆動され、矢印265によって示されるように軸260を中心に回転する。回転方向は、矢印265で示される方向の反対(例えば回転軸260を中心に時計回りの方向又は反時計回りの方向)であってもよい。固定子227、228及び229は高せん断装置200の壁部255に固定するよう連結されている。
【0052】
本明細書において上述したように、それぞれの生成機はロータと固定子との間の最小の距離であるせん断間隙幅を有する。図2の実施形態において、第一の生成機220は第一のせん断間隙225を有し、第二の生成機230は第二のせん断間隙235を有し、第三の生成機240は第三のせん断間隙245を有する。ある実施形態において、せん断間隙225、235、245は約0.025mmから約10.0mmの範囲の幅を有する。あるいは、方法は高せん断装置200の利用を含み、間隙225、235、245は約0.5mmから約2.5mmの範囲の幅を有する。ある実施例において、せん断間隙幅は約1.5mmに維持される。あるいは、せん断間隙225、235、245の幅は生成機220、230、240によって異なる。ある実施例において、第一の生成機220のせん断間隙225の幅は第二の生成機230のせん断間隙235の幅よりも大きく、せん断間隙235の幅は第三の生成機240のせん断間隙245の幅よりも大きい。上述したように、各ステージの生成機は交換可能であるため、柔軟性をもたらす。高せん断装置200は、せん断速度が流れ260の方向に沿った長手方向において段階的に増加するよう構成されている。
【0053】
生成機220、230、240は粗い、中間、細かい、及び非常に細かい性質を有することができる。ロータ222、223、224及び固定子227、228及び229は歯付き構造にすることも可能である。それぞれの生成機は二つ以上のロータ−固定子の歯のセットを有することができる。ある実施形態において、ロータ222、223、及び224はそれぞれのロータの外周近くにおいて周方向に離間した10個より多くのロータの歯を有する。ある実施形態において、固定子227、228及び229はそれぞれの固定子の外周近くにおいて周方向に離間した10個より多くの固定子の歯を有する。ある実施形態において、ロータの内径は約12cmである。ある実施形態において、ロータの直径は約6cmである。ある実施形態において、固定子の外径は約15cmである。ある実施形態において、固定子の直径は約6.4cmである。ある実施形態において、直径がロータは60mmであり、固定子は64mmであるため、約4mmの隙間をもたらす。ある実施形態において、三つのステージのそれぞれは、約0.025mmから約4mmのせん断間隙を有する非常に細かい生成機を用いて稼働される。固形粒子が高せん断装置40を介して輸送される利用形態においては、適切なせん断間隙幅(ロータと固定子との間の最小の隙間)は適切な粒子サイズの減少及び粒子の表面積の増加のために選択される。ある実施形態において、このことは、粒子をせん断して分散することによって固形触媒の表面積を増加させるために有益である。
【0054】
高せん断装置200は導入口205においてライン13から反応混合物を受容するよう構成されている。反応混合物は、分散相としての気体と連続相としての液体媒体とを含む。供給ストリームは粒子状の固形触媒成分を更に含んでもよい。導入口205に入る供給ストリームは、分散体が形成されるように、生成機220、230、そして240を連続的に通って送られる。分散体は排出口210(及び図1のライン18)を介して高せん断装置200から出る。各生成機のロータ222、223、224は固定された固定子227、228、229に対して高速で回転することによって、高いせん断速度をもたらす。ロータの回転は、導入口205に入る供給ストリームなどの流体をせん断間隙(及び、存在する場合はロータの歯の間の空間並びに固定子の歯の間の空間)を通って外に押し出すことによって、局所的な高せん断状態を作り出す。流体が通過するせん断間隙225、235及び245(及び、存在する場合は、ロータの歯と固定子の歯との間の隙間)において流体に加わる高せん断力は流体を処理し、分散体を形成する。生成物分散体は高せん断排出口210(及び図1のライン18)を介して高せん断装置200から出る。
【0055】
生成される分散体は約5μm未満の平均気泡サイズを有する。ある実施形態において、HSD40は約1.5μm未満の平均気泡サイズを有する分散体を生成する。ある実施形態において、HSD40は1μm未満の平均気泡サイズを有する分散体を生成し、気泡は直径がサブミクロンであることが好ましい。ある実施例において、平均気泡サイズは約0.1μmから約1.0μmである。ある実施形態において、HSD40は400nm未満の平均気泡サイズを有する分散体を生成する。ある実施形態において、HSD40は100nm未満の平均気泡サイズを有する分散体を生成する。高せん断装置200は、少なくとも約15分間にわたって大気圧で分散状態を維持できる分散された気泡を有する分散体を生成する。
【0056】
理論によって限定されることはないが、液体に分散されたサブミクロンの粒子又は気泡は主にブラウン運動効果によって移動することが乳化化学において知られている。高せん断装置200によって形成された生成物分散体中の気泡は(存在する場合には)固形触媒粒子の境界層を通る大きな移動性を有することによって、不均質な反応混合物における反応物の移動の向上により変換反応を更に促進及び加速することができる。
【0057】
ある実施例において、高せん断装置200はノースカロライナ州ウィルミントンのIKA(登録商標) ワークス インコーポレーテッド及びマサチューセッツ州ウィルミントンのAPV ノース アメリカ インコーポレーテッドのディスパックス リアクタ(登録商標)を有する。様々な導入口/排出口の接続、馬力、先端速度、出力rpm、及び流速を有する様々なモデルが使用可能である。高せん断装置の選択は、処理量の必要要件と、高せん断装置200の排出口210から出るライン18(図1)の分散体における粒子又は気泡の所望サイズとによって決まる。例えばIKA(登録商標)モデルDR2000/4は、ベルト駆動、4M生成機、PTFE密閉リング、25.4mm(1インチ)の導入口フランジ用清浄クランプ、19mm(3/4インチ)の排出口フランジ用清浄クランプ、2馬力の出力、7900rpmの出力速度、(生成機に応じた)約300−700L/hの(水の)流動能、9.4−41m/s(1850フィート/分から8070フィート/分)の先端速度を有する。
【0058】
容器
分散されると、分散体は高せん断装置の排出口分散体ライン18を介して高せん断装置40から出て、容器10へと導入される。容器10は、複相反応が伝播することによって変換反応を行うことができる任意の種類の反応装置を有する。例えば、連続又は半連続性の攪拌タンク反応装置又は一つ若しくは複数の回分式反応装置は直列又は並列に使用可能である。ある実施形態において、容器10は塔型反応装置である。ある利用形態において、容器10は管状反応装置であり、別の実施形態においては管状反応装置又は複管反応装置である。
【0059】
図1において一つ(ライン3)が示されているが、任意の数の反応装置導入口ラインが想定される。導入口ラインは、不均質な触媒を用いたシステムの稼働の間に触媒溶液又はスラリーを受容するために容器10に接続されても良い。ある実施形態において、水が容器10に注入されることによって、容器10の中に存在する有機物の水蒸気蒸留を補助することができる。このように、有機生成物の一部は蒸気を用いて分離され、ライン16よりもライン17において容器10から出る。容器10は、掃気ガス用の排出ライン17と生成物ストリーム用の生成物排出ライン16とを有する。ある実施形態において、容器10は複数の反応装置生成物ライン16を有する。
【0060】
二酸化炭素及び/又は単純な炭化水素の有機含酸素物/炭化水素への変換は、適切な時間、温度及び圧力の条件が存在すればいつでも起こり得る。このため、温度及び圧力の条件が適切である場合には、水素化は図1の工程図のあらゆる場所で起こることができる。高せん断システム100によって行われる反応は、触媒が反応混合物の他の成分と同一相に存在する均質触媒反応、又は固形触媒を含む不均質触媒反応を含む。循環される触媒が利用される場合、反応は図1に示される容器10の外側の場所でより起こりやすくなる。それにもかかわらず、分離した反応装置/容器10は多くの場合において、揮発性反応生成物の分離及び回収並びに未反応の気体の再循環と同様に、滞留時間、攪拌、及び加熱及び/又は冷却を向上させるために望まれる。したがって、ある実施形態においては、高せん断システム100は少なくとも一つの高せん断装置の下流に容器10を更に有し、容器の導入口は高せん断装置の分散体排出口と流体連結されている。固定層反応装置10が使用される場合、反応装置/容器10は反応が起こるための主要場所となる。
【0061】
容器10の排出口ライン16は、液体生成物を含むライン16の内容物の一部をHSD40へと再循環するために、例えばライン20を介してライン21へと流体連結されていても良い。あるいはある実施形態において、別の排出ラインは容器10をライン21に連結している。図1において、高せん断システム100はライン16の一部を再循環するよう構成されている。この構成は、例えばマルチ−パス稼働に役立つものである。
【0062】
容器10は一つ又は複数の以下の構成要素を有する:反応容器設計の分野において周知である攪拌システム、温度制御機能、圧力測定器、温度測定器、一つ又は複数の注入箇所、及び水位制御装置(図示しない)。図1の実施形態に示されるように、容器10は攪拌システム31、加熱及び/又は冷却機能H1、圧力測定器、温度測定器、又はそれらの組み合わせを更に有することができる。例えば、攪拌システム31はモータ駆動式混合装置を有する。温度制御装置H1は、例えば加熱マントル又は冷却コイルを有する。あるいは、ある実施形態において変換反応の大部分がHSD40内で起こる場合、ある場合には容器10は貯蔵容器として主に機能する。一般に望まれないものの、以下において更に説明されるように特に複数の高せん断装置/反応装置が直列に使用される場合、ある利用態様において容器10は省略可能である。
【0063】
伝熱装置
上述の容器10の加熱/冷却機能に加えて、処理ストリームを加熱又は冷却するための別の外部又は内部伝熱装置も図1に図示される実施形態の変形形態において想定される。例えば、温度制御は当業者に周知の内部伝熱装置によって容器10にもたらされる。また、外部加熱及び/又は冷却伝熱装置の使用も想定される。そのような一つ又は複数の伝熱装置に適した場所は、ポンプ5及びHSD40の間、HSD40及び容器10の間、並びにシステム10がマルチ−パスモードで稼働される場合には容器10及びポンプ5の間である。そのような伝熱装置の非限定的な例は、当業者に周知であるように、シェル、管、板、及びコイル状の熱交換器である。
【0064】
図1の高せん断システム100の実施形態において、三つの熱交換器がシステム全体の温度を制御するために用いられている。伝熱装置H1は容器10内の生成物の温度を制御するために用いられる。伝熱装置H2はライン21の温度を制御するためにライン21に配置されている。伝熱装置H3はライン13の温度を制御する役割を担っており、結果的にHSD40への導入口供給ストリームの温度を制御する。加熱/冷却装置の使用及び構成は、所望の反応を行うことを目的としているため、当業者に周知であるように変更可能である。
【0065】
ポンプ/冷却トラップ
ポンプ5は連続又は半連続稼動用に構成されており、HSD40及びシステム100を通る制御された流れを実現するために、202.65kPa(2気圧)より大きい圧力、或いは303.975kPa(3気圧)より大きい圧力をもたらすことができる任意のポンプ装置にすることができる。例えば、ローパー ポンプ カンパニー(Roper Pump Company)(ジョージア州コマース(Commerce Georgia))のローパー1型ギアポンプ(Roper Type 1 gear pump)及びデイトン エレクトリック カンパニー(Dayton Electric Co)(イリノイ州ナイルズ(Niles,IL))のデイトン増圧ポンプ(Dayton Pressure Booster Pump)モデル2P372Eは一つの好適なポンプである。ポンプの全ての接触部分はステンレス鋼、例えば316ステンレス鋼を含んでもよい。システムのある実施形態において、ポンプ5は約2026.5kPa(20気圧)より大きな圧力を加えることができる。ある実施形態において、ポンプ5は約0.5から約1ガロン(1.89から3.79リットル)/分の液体媒体12の流速を生じる。ある実施形態において、ポンプ5は約1ガロン/分の液体媒体12の流速を生じる。
【0066】
ポンプ5に加えて、一つ又は複数の高圧ポンプ(図示しない)が図1に図示されるシステムに含まれてもよい。例えば、ポンプ5に似た増圧ポンプが容器10への圧力を増圧するためにHSD40と容器10との間に含まれる。図1の実施形態において、高せん断システム100は容器10への圧力を増圧するために高圧ポンプ6を更に有する。ポンプ6が増圧ポンプとして組み込まれる場合、ポンプ5は高せん断ユニットへの圧力を低下させることによってその磨耗を低減させるためにスロットルポンプ/バルブとして使用されてもよい。さらに別の実施例として、コンプレッサ型のポンプが、容器10からの気体を高せん断装置の導入口へと再循環するためにライン17及びHSD40の間に配置されても良い。
【0067】
別の実施例として、ポンプ5に似た追加供給ポンプが追加の反応物又は触媒を容器10へと導入するために含まれてもよい。図1の実施形態においては、例えば追加供給ポンプ4が追加の原料を注入ライン3を介して容器10へと導入するために用いられる。触媒及び補給流体は、必要に応じて定期的又は連続的に供給ポンプ4及び注入箇所3を介して高せん断システム100へと加えられる。
【0068】
図1に示されるように、高せん断システム100は、例えば再循環ライン17に配置された凝縮装置30内に冷却トラップを更に有する。冷却トラップは、再循環ガス17を冷却容器へと運ぶ役割を担っており、ライン25のガスはライン15を介して高せん断装置40へと注入されるために前記冷却容器からコンプレッサ50へとパイプで運ばれる。凝縮装置28は凝縮された生成物(例えば含酸素物及び/又は炭化水素)用の排出ライン24と、再循環気体ストリーム用の排出ライン25とを有する。ある実施形態において、凝縮装置30の冷却トラップは、再循環ポンプ又はコンプレッサ50の上流の再循環ライン17から第一級アルコールを除去する役割を担う。再循環ライン15は、図1に示されるように軽質ガスのHSD40への再導入のためにライン13に流体連結されている。
【0069】
軽質ガスの変換による有機生成物の産生
高せん断システム100の稼動が図1を参照して説明される。図1の高せん断システム100の実施形態に示されるように、ある実施形態においては、システム100は二つ以上の分散性気体ストリームを有する。例えばある実施形態において、高せん断システム100は分散性ガスライン22及び分散性ガスライン23を有する。軽質ガスを有機生成物へ変換するための運転において、分散性軽質ガスストリームはライン22及び/又はライン23を介してシステム100へと導入され、ライン13において液体ストリームと混合される。ライン22及び/又はライン23の分散性ガス、ライン15の圧縮再循環流体、及びライン21の液体媒体は、別々に又は混合ストリームとして外部高せん断装置40へと導入される。図1に示されるように、ある実施形態において、ライン22及び/又はライン23の分散性気体ストリームは(水素源又は水素源及び触媒を含む)液体媒体に導入され、混合された気体/液体(又は気体/液体/固体)ストリームはHSD40へと導入される。
【0070】
HSD40に導入される分散性ガスは軽質ガスを含む。HSD40内で分散される軽質ガスは、メタン、二酸化炭素又はそれらの組み合わせを含む。多くの場合、天然ガス源は追加の気体成分を含み、ライン22及び/又はライン23を介してライン13へと導入される軽質ガスは最大で約10%の追加気体成分を含む。例えば、追加気体成分はエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、メタノール又はそれらの組み合わせである。ある実施形態において、軽質ガスはエタン、プロパン、ブタン、又はそれらの組み合わせを含み、ライン23の軽質ガスは二酸化炭素を含む。特定の実施形態において、軽質ガスはメタンを含む。ある実施形態において、分散性軽質ガスは二酸化炭素を含む。ある実施形態において、軽質ガスは二酸化炭素及びメタンを含む。ある実施形態において、軽質ガスはメタンと二酸化炭素とを2:1の比率で含む。ある実施形態において、軽質ガスは二酸化炭素、水素、及び一酸化炭素を含む。ある実施形態において、軽質ガスはライン13へと連続的に供給される。ある実施形態において、分散性軽質ガスの供給速度は約50cc/分より速い。あるいは、分散性軽質ガスの供給速度は約80cc/分より速い。あるいは、分散性軽質ガスの供給速度は約2300cc/分より速い。
【0071】
液体媒体は様々な種類であってもよい。ライン21の液体媒体は少なくとも一つの水素源を含む。少なくとも一つの水素源は、水、炭化水素、及びそれらの組み合わせから選択される。ある実施形態において、液体媒体は水、低分子量の液体アルカン、パラフィン系オイル、及びそれらの組み合わせから選択される。パラフィン系オイルは、シェブロン プロダクツ カンパニー(Chevron Products Company)から販売されているパララックスオイル(Paralux oils)などの水素化処理された石油由来のオイル、又は合成パラフィンオイルである。例えば好適な合成パラフィン系オイルには、水素化分解/水素異性化(API)グループIIIベースオイルと同様にポリアルファオレフィン(API)グループIVベースオイルが含まれる。グループ(IV)のベースオイルには、ポリ−エチレン−プロピレンの低重量成分などのオイルが含まれる。石油化学系の企業は、水素の存在する加圧条件において原料を高品質のグループIII鉱油系潤滑油へと触媒変換することを含む方法を開発してきた。更に、GTL(気体から液体(Gas-To-Liquid))合成グループIIIベース原料が利用可能である。液体媒体は臭化リチウムをさらに含むことができる。液体媒体は、その成分が高せん断装置40内の条件において大部分が引火せずに、その中で液体の状態を維持するように選択されることが望まれる。ある実施形態において、液体媒体はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0072】
ある実施形態において、液体媒体及び触媒は容器10へ導入される前に混合される。例えば、パラフィン系オイル及び(使用される場合は)触媒はユニットを密閉する前に容器10へと最初に入れられる。ある実施形態において、触媒は攪拌ビーカーにおいて液体媒体へと加えられる。別の実施形態において、液体媒体及び触媒は別々に導入されて反応装置の攪拌装置31によって容器10内で混合される。特定の利用形態のために望まれる場合は、追加の反応物は、例えば供給ポンプ4及び容器10の導入口ライン3を介して容器10へと添加可能である。任意の数の容器10の導入口ラインが想定される。その後に、高せん断システム100は密閉されて容器10は排気される。ある実施形態において、容器10は酸素でパージされる。例えば、真空が反応装置ガスライン17を介してもたらされる。
【0073】
排気の後に、容器10内の圧力が所望の範囲に到達するまで分散性軽質ガスが高せん断システム100へと導入される。ある実施形態において、容器10内において206.8kPa(30psi)の圧力が得られるまで、分散性軽質ガスが高せん断装置40に導入される。次に、高せん断装置40は稼働状態に移行し、例えば攪拌システム31による反応装置の攪拌が継続し、高せん断システム100全体における反応装置の流体の高せん断ポンプ輸送が開始される。この時点において、システムは掃気を伴わない密閉ループであってもよい。
【0074】
ある実施形態において、分散性軽質ガスは、ライン13において液体媒体と混合される代わりに、HSD40へと直接供給される。ポンプ5はライン21を介して液体媒体を送り出し、圧力を高めてHSD40へと供給するよう稼働することによって、高せん断装置(HSD)40及び高せん断システム100全体に制御された流れを供給する。ある実施形態において、ポンプ5はHSD導入口ストリームの圧力を202.65kPa(2気圧)を超えるまで、あるいは約303.975kPa(3気圧)を超えるまで上昇させる。このように、高せん断システム100は高せん断を圧力と組み合わせることによって、反応物の完全な混合を促進する。
【0075】
送り出した後に、軽質ガス及び液体媒体は、液体媒体中に軽質ガスの細かい分散体を形成する役割を担うHSD40内で混合される。HSD40内において、軽質ガス及び液体媒体は、溶液への優れた溶解及び反応物混合の促進のために、軽質ガスのナノバブル、サブミクロンサイズの気泡、及び/又はマイクロバブルが形成されるように高度に分散される。例えば、直列に配置されており固定子と組み合わされた三つのロータを備えて構成された三ステージ型の高せん断分散装置である分散装置IKA(登録商標)モデルDR2000/4は、液体媒体中に分散性軽質ガスの分散体を形成するために用いられる。例えば、ロータ/固定子のセットは図2に図示されているように構成される。混合された反応物はライン13を介して高せん断装置へと入り、第一ステージのロータ/固定子の組み合わせに入る。第一ステージのロータ及び固定子は、周方向に離間した第一ステージのロータの歯及び固定子の歯をそれぞれ有しても良い。第一ステージから出た粗い分散体は第二のロータ/固定子のステージに入る。同様に、第二ステージのロータ及び固定子は周方向に離間したロータの歯及び固定子の歯をそれぞれ有しても良い。第二ステージから出た気泡サイズの低下した分散体は、ロータの歯及び固定子の歯をそれぞれ備えるロータ及び固定子を有する第三ステージのロータ/固定子の組み合わせに入る。分散体はライン18を介して高せん断装置から出る。ある実施形態において、せん断速度は流れ260の方向に沿った長手方向において段階的に増加する。
【0076】
例えばある実施形態において、第一のロータ/固定子のステージにおけるせん断速度は、後のステージにおけるせん断速度よりも大きい。別の実施形態において、せん断速度は流れの方向に沿ってほぼ一定であり、各ステージにおけるせん断速度はほぼ同一である。
【0077】
HSD40のロータは、ロータの直径及び所望の先端速度に対応する速度で回転するよう設定される。上述したように、高せん断装置(例えば、コロイドミル又は歯付きリム分散装置)は固定子とロータとの間に固定された隙間を有するか、又は調節可能な隙間を有する。方法のある実施形態において、反応物の輸送抵抗は、反応速度が約5%より大きく上昇するように高せん断装置の稼働によって低減される。方法のある実施形態において、反応物の輸送抵抗は、反応速度が約5倍より大きく上昇するよう高せん断装置の稼働によって低減される。ある実施形態において、反応速度は少なくとも10倍上昇する。ある実施形態において、速度は約10から約100倍の範囲で上昇する。
【0078】
ある実施形態において、HSD40は少なくとも4500フィート/分の先端速度で少なくとも300L/hを輸送し、先端速度は7900フィート/分(40m/s)を超えても良い。電力消費は約1.5kWである。HSD40内の回転せん断ユニット又は回転要素の先端における瞬間的な温度及び圧力の測定は困難であるものの、完全に混合された反応物に見られる局所的な温度は500℃を超えており、キャビテーション状態における圧力は500kg/cmを超えると推測される。高せん断混合はミクロン又はサブミクロンサイズの気泡である軽質ガスの分散体をもたらす。ある実施形態において、結果的に得られる分散体は約1.5μm未満の平均気泡サイズを有する。したがって、ライン18を介してHSD40から出た分散体はミクロン及び/又はサブミクロンサイズの気泡を有する。ある実施形態において、平均気泡サイズは約0.4μmから約1.5μmの範囲である。ある実施形態において、得られる分散体は1μm未満の平均気泡サイズを有する。ある実施形態において、平均気泡サイズは約400nm未満であり、ある場合には約100nmであってもよい。多くの実施形態において、分散体は少なくとも15分にわたって大気圧で分散状態を維持できる。
【0079】
分散されると、結果的に得られる気体/液体又は気体/液体/固体の分散体は、図1に示されるようにライン18を介してHSD40から出て、容器10へ入る。ライン18の分散体は、特定の利用態様において望まれる場合には、容器10に入る前に任意に追加の処理(加熱/冷却)を経ることができる。容器10に入る前の反応物の完全な混合の結果、化学反応の大部分がHSD40内で起こる。したがって、ある実施形態においては、反応装置/容器10は加熱と、未反応の軽質ガス及びあらゆる生成物ガスからの液体生成物の分離とのために主に使用される。あるいは又は更に、容器10は大半の有機生成物が産生される主要反応容器としての役割を担う。例えばある実施形態において、容器10は触媒の固定層を有する固定層反応装置である。
【0080】
触媒
触媒が変換反応を促進するために用いられる場合、触媒はスラリー又は触媒ストリームとして例えばライン3を介して容器10へと導入される。あるいは又は更に、触媒はシステム100の任意の場所において添加することができる。例えば、触媒スラリーはライン21へと投入可能である。ある実施形態において、システム100は閉じたスラリーループを有し、ライン21は液体媒体、液体生成物、及び/又はライン16から再循環された触媒を含む。
【0081】
したがって、方法は水素化触媒の使用を更に含んでもよい。触媒は表1に示されるMR触媒の一つであり、本明細書の以下の実施例3において更に説明される。
【0082】

【0083】
ある実施形態において、触媒MR−34−18又はMR−34−18VIIが使用される。触媒は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、ランタン、パラジウム、及びプラチナ、又はそれらの組み合わせの少なくともひとつを含む。特定の実施形態において、触媒はルテニウムを含む。触媒は、トリルテニウムドデカカルボニル[Ru(CO)12]として知られるルテニウムカルボニルを含んでもよい。ある実施形態において、一つの触媒が利用される。ある実施形態において一つより多くの触媒が利用される。例えば本明細書の以下における実施例2−4において説明されるように、トリルテニウムドデカカルボニル及びMR−34−18VIIの両者が本開示に基づいて使用される。ある実施形態において、触媒はパラジウムシリカを含む。
【0084】
ある実施形態において、触媒は水及び/又は単純なアルカンなどの炭化水素を脱水素化し、それによって(水の場合には)水素及び水酸基のフリーラジカルを形成する。その後、水素ラジカルは二酸化炭素を脱酸素することによって、ラジカルを含有する遊離水素又は他の炭素と自由に反応することができる一酸化炭素を形成する。
【0085】
本開示のシステム及び方法は、高せん断及び場合によってはキャビテーションを組み合わせることによって、遊離水素ラジカルの発生を導くのみでなく、遊離ヒドロキシルラジカルを生じると共に恐らく二酸化炭素を直接脱酸する可能性を有する状態を作り出す。
【0086】
開示される方法のある実施形態において、軽質ガス及び水は、水を解裂するための触媒及び/又は二酸化炭素及び/又はアルカンを解裂するための触媒に接触される。そのような触媒は水性ガスシフト反応において一般に用いられる。
【0087】
水性ガスシフト(WGS)反応は周知の触媒反応であり、特に以下の化学量論に基づく水蒸気(HO)とのCOの化学反応によって水素を生成するために使用される。
CO+HO→CO+H (1)
前記反応は一般に触媒を利用する。この反応に用いられる一般的な触媒は高温(約350℃)における酸化鉄のクロミウムとの組み合わせ、又は低温(約200℃)における銅及び亜鉛材料の混合物を基にしている。
【0088】
また、脱水素触媒は、プラチナ族の成分と、周知のスズ成分、ゲルマニウム成分、レニウム成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される変性金属成分とを含む多数の触媒組成を含む。例えば、関連する米国特許第3,632,503号、第3,755,481号、及び第3,878,131号は、多孔性の担体物質上にプラチナ族の成分、スズ成分、及びゲルマニウム成分を有する触媒を開示している。また、レニウムを含む化合物もその脱水素化特性のために周知である。
【0089】
反応条件及び触媒の選択性によって、メタノールなどの単純アルコールが本開示の方法及びシステムによって軽質ガス及び水から直接生成される。高せん断状態において放出された酸素は、単純アルコールを生成するために形成される他のラジカルと反応させるために利用可能である。メタノールからジメチルエーテルが生成可能である。そして、ジメチルエーテルは直接又は従来の燃料と混合して燃料として利用可能である。
【0090】
二酸化炭素を含有する軽質ガスに対する処理の化学反応全体及びエネルギー収支は式2から10に示されている。式2から9の反応熱は対応する生成熱から算出されている。(−−CH−−)単位において、生成熱はオクタンの生成熱の1/8として算出されている。

【0091】
理論によって限定されることは望まないが、式8はCOの脱酸素段階の後に起こると考えられる全ての反応、すなわち段階4−7の平衡方程式と、生じる炭化水素の合計量とを示す。式9は一連の過程において再利用可能な生成された水の凝縮熱を示す。段階2−6の化学平衡全体と一連の過程におけるエネルギー消費の算出される合計は式10に示される。
【0092】
容器/反応装置10は連続又は半連続フローモードで稼働することができ、それは回分モードでも稼働できる。容器10の内容物は加熱及び/又は冷却機能(例えばヒーターH1)及び温度測定器を用いて特定の反応温度に維持可能である。容器10内の圧力は適切な圧力測定器を用いて監視され、容器内の反応物の水位は水位制御装置(図示しない)を用いて制御可能であり、当業者にとって周知の技術を用いることができる。内容物は例えば攪拌システム31によって連続的又は半連続的に攪拌可能である。
【0093】
ある実施形態において、液体媒体、液体生成物、及び任意の触媒を含むライン16の反応混合物の少なくとも一部はマルチ−パス運転のためにHSD40へと再循環される。ライン16は、ライン16の少なくとも一部をHSD40に再循環するために、ライン20によってライン21に流体連結されている。図1に示されるように、伝熱装置H2はライン21の温度を制御する役割を担う。
【0094】
容器10内の他の気体を伴って未反応の軽質ガスは気体ライン17を介して容器10から出る。図1に示されるように、実施形態において、容器10の上部にできた空間から回収された気体は凝縮装置30を通される。容器10からの反応装置ガスの抽出は例えばコンプレッサ50によって補助される。凝縮装置30は冷却コイル及び冷却トラップを備えてもよい。凝縮装置30から出た未凝縮の気体はライン25を介してコンプレッサ50へと導入される。圧縮ガスは例えばライン15を介して再循環される。ライン15は、コンプレッサ50からHSD40又は独立してライン13、ライン22及び/又はライン23へと注入される圧縮物質を誘導する。凝縮装置30から出た凝縮された液体生成物24はシステムから抽出される。ライン24の凝縮された液体は、例えばその販売又は様々な他の化学生成物への変換のために、当業者に周知の手段によって利用される反応生成物を含む。
【0095】
温度
ある実施形態において、外部高せん断装置40による反応物の混合を含む開示される方法の使用は、含酸素物、炭化水素、又はそれらの組み合わせを含む有機生成物への軽質ガスの変換を可能にする。高せん断装置40内の温度は液体媒体の引火点より低いことが望まれる。ある実施形態において、反応温度は220℃未満である。ある実施形態において、稼働条件は約100℃から約230℃の範囲の温度を有する。ある実施形態において、温度は約30℃から約40℃である。ある実施形態において、温度は約160℃から180℃の範囲である。ある特定の実施形態において、反応温度は約155℃から約160℃の範囲である。ある実施形態において、生成物の性質は容器10内の温度によって変化し、反応装置の温度は所望される生成物の組成を得るために調整可能である。高温では大量の低分子量物質が生成され、一方で低温では大量の高分子量物質が生成される。
【0096】
圧力
ある実施形態において、容器10内の反応圧力は約202.65kPa(2気圧)から約5.6MPa−6.1MPa(55−60気圧)の範囲である。ある実施形態において、反応圧力は約810.6kPaから約1.5MPa(8気圧から約15気圧)の範囲である。ある実施形態において、容器10は大気圧で又は大気圧近くで稼動される。ある実施形態において、反応圧力は約6895kPa(1000psi)未満である。又は、ある実施形態において、稼働圧力は約3445kPa(500psi)未満である。ある実施形態において、稼働圧力は約3100kPa(450psi)未満である。ある実施形態において、稼働圧力は約1030kPa(150psi)未満である。
【0097】
ある実施例においては、軽質ガスの変換の程度を更に向上することが望まれる。反応圧力の上昇は反応速度を上昇させるが、補助装置と同様に反応装置、パイプ、及びプラントの機械部分を構成する物質の損耗も増加させる。外部高せん断混合によってもたらされる優れた溶解及び/又は分散は、生成物の生産を維持又は増加させつつ稼働圧力の低下を可能にする。
【0098】
マルチパス稼動
図1に示されるように、容器10の内容物又はその一部を二回目のパスの間にHSD40を通過させることが望まれる場合がある。この場合、ライン16は示されるようにライン21に連結されており、ライン16の内容物の少なくとも一部が容器10から再循環され、ライン13及びそこからHSD40へとポンプ5によって押し出される。追加の軽質ガスがライン13に注入されてもよく、又は高せん断装置(図示しない)へと直接添加することも可能である。別の実施形態において、ライン16の液体の一部が高せん断装置40へと再循環される前に、ライン16の生成物は更に処理される(例えば、そこから液体生成物が除去される)ことが可能である。ある実施形態において、液体媒体と二酸化炭素及び/又はアルカンを含む分散性ガスとを高せん断装置40を通過させ、その後にHSD40を通る二回目のパスの間にライン13へと任意の触媒を添加することが望まれても良い。
【0099】
複数の高せん断混合装置
ある実施形態において、HSD40のような又は異なるように構成された二つ以上の高せん断装置は直列に配置されており、反応を更に促進するために使用される。それらの稼働は回分又は連続モードで行われる。シングルパス又は「ワンススルー(once through)」処理が望まれる実施例においては、直列に配置された複数の高せん断装置の使用が有益である。例えばある実施形態において、ライン18の排出分散体は第二の高せん断装置に供給される。複数の高せん断装置40が直列に稼働される場合、追加の軽質ガスはそれぞれの装置の導入口供給ストリームに注入可能である。一般に望まれないものの、複数の高せん断装置40が直列に稼働する実施形態においては、容器10は省略可能である。ある実施形態において、複数の高せん断装置40は並列に稼働され、そこから出た排出分散体は一つ又は複数の容器10へと導入される。
【0100】
生成物/下流処理
気体は気体排出ライン17を介して容器10から除去される。ライン17の気体は、含酸素物及び/又は炭化水素生成物と同様に未反応の軽質ガス、Hを含む。反応装置の気体排出口17を介して除去された気体は更に処理可能であり、その成分は再循環される。例えば冷却トラップ30は、容器10から出る再循環気体ライン17中の含酸素物及び/又は炭化水素生成物を凝縮して気体ライン17から除去するために使用される。ライン24を介して凝縮装置30から出た凝縮物ストリームは第一級アルコールを含んでもよい。ある実施形態において、ライン24の液体生成物凝縮ストリームはメタノールを含む。ある実施形態において、ライン24の液体生成物凝縮ストリームは50%を超えるメタノールを含む。ある実施形態において、ライン24の液体生成物凝縮ストリームは65%を超えるメタノールを含む。ある実施形態において、ライン24の液体生成物凝縮ストリームは約68%のメタノールを含む。ある実施形態において、メタノール及び二酸化炭素はエタノールを含む有機含酸素生成物へと変換される。
【0101】
ある利用態様において、冷却トラップ30からライン25を介して除去された未変換の軽質ガスは、回収されて高せん断装置40へ(直接的に又は間接的に)注入される。
【0102】
ライン16の生成物の一部は容器10から除去可能である。ライン16の有機生成物は、液体媒体に加えて液状の含酸素物、炭化水素、又はそれらの組み合わせを含む。生成物ストリームは、液体媒体と共に反応中に生成された炭水化物を主に含む。例えばある実施形態において、ライン16の生成物はポリエチレングリコール中に炭化水素を含む。エタン、ブタン、プロパン、及びペンタンが軽質ガス中に存在する利用態様においては、ライン16の結果的に得られる生成物は、メタン及び二酸化炭素が用いられた場合よりも高い炭素数を有する生成物を含む。そのような実施例において、ライン16を介して除去される生成物は、大量の混合された含酸素物及びアルデヒドを含む。
【0103】
生成物ライン16及び/又は凝縮物ライン24から回収される含酸素物及び/又は炭化水素を含む液体生成物は、当業者に周知であるように、その後に燃料として使用されるか、又は別の化学的方法の原料として利用できる。例えば、本方法によって生成されるメタノールはホルムアルデヒドを形成する方法の原料となる。
【0104】
メタンから生成された液体を伴うオイル回収の促進
低API(粘性の)オイルは、多くの場合において低い流動性のために回収が困難である。今日においては、CO、水蒸気及び水の注入を含む様々な技術が低APIオイルの回収を補助するために用いられている。石油探鉱において多くの場合、井戸から出る天然ガスは井戸を再加圧することによってオイルの回収を促進するために用いられる。しかしながら、天然ガスの注入は井戸の空間内で移動させることが困難な低APIオイルの回収にはほとんど役に立たない。
【0105】
開示されるシステム及び方法は油井からの石油系の原油の回収に用いることができ、特に、油(例えば重油)の下げ孔の回収を促進するために有益である。メタンガスは開示されるシステム及び方法によって油井場所においてその場で液体に変換され、油の回収を促進するために使用可能である。
【0106】
本開示に基づくある実施形態において、坑口から又は別の態様で利用可能な(メタンを含む)天然ガスは、開示されるシステム及び方法によって液体に変換され、前記液体は井戸の中に沈殿する重油の回収を促進するために井戸の中へと注入される。
【0107】
ある実施形態において、メタンを含有する気体から生成されており且つライン16及び/又は24においてシステム100から出た有機含酸素物及び他の液体生成物は、油の回収を促進するために利用される。システム100は可動式滑材が取付けられたユニット上に組み立てられても良い。そのようなユニットは、離れた場所での気体の変換を可能にし、過剰な気体を燃焼可能である。大きなユニットは、大量の重質原油が回収される場合に用いられる。
【0108】
軽質ガスの変換
ある実施形態において、約80%を超える軽質ガスが開示される方法によって生成物へと変換され、残りの未変換の軽質ガスは反応装置の上部にできた空間に存在する及び/又は液体生成物中に溶解する。ある実施形態において、約90%を超える軽質ガスは有機生成物へと変換される。ある実施形態において、ほぼ全ての軽質ガスが生成物へと変換される。ある実施形態において、ほぼ全ての軽質ガスが、密閉されたループシステムのマルチパス稼働によって生成物へと変換される。
【0109】
ある実施形態において、軽質ガスは二酸化炭素を含み、二酸化炭素の変換は約60%を超える。ある実施形態において、軽質ガスは二酸化炭素を含み、二酸化炭素の変換は約80%を超える。ある実施形態において、軽質ガスは二酸化炭素を含み、二酸化炭素の変換は約90%を超える。ある実施形態において、密閉ループシステムが用いられ、ライン22及び/又は23を介して分散性ガス中に供給されたほぼ全ての二酸化炭素は生成物に変換される。
【0110】
ある実施形態において、軽質ガスはメタンを含んでおり、メタンの変換は約60%を超える。ある実施形態において、軽質ガスはメタンを含み、メタンの変換は約80%を超える。ある実施形態において、軽質ガスはメタンを含み、メタンの変換は約90%を超える。ある実施形態において、密閉ループシステムが用いられ、高せん断システム100に供給されたほぼ全てのメタンが生成物に変換される。ある実施形態において、有機含酸素物の生産量は炭化水素の生産量より多い。ある実施形態において、有機含酸素物の収率は約50%より高い。ある実施形態において、含酸素物の収率は約70%より高い。
【0111】
特徴
高せん断装置40内で生成されたライン18の分散体におけるマイクロメータサイズ及び/又はサブマイクロメータサイズの軽質ガスの気泡の表面積の増加は、軽質ガスのより早い及び/又はより完全な変換をもたらす。本明細書において上述されたように、更なる利点は、より低い温度及び圧力で容器10を稼働することができる特性であり、結果的に運転コスト及び投資コストの削減をもたらす。本発明の利点には、限定されないが、循環時間の短縮、生産量の増加、並びにより小さな反応装置を設計可能であること及び/又はより低い温度及び/又は圧力で反応装置を稼働可能であること及び触媒の減少の可能性による運転コストの減少及び/又は資本コストの減少が含まれる。
【0112】
HSD40による反応物の混合の促進の利用は、軽質ガス由来の有機生成物のかなりの量の生産を可能にすることができる。ある実施形態において、混合の促進は処理ストリームの生産量の増加を実現する。ある実施形態において、高せん断混合装置は既存の方法に組み込まれ、それによって生産量の増加(より多くの処理量)を実現できる。単純に反応装置の圧力を上昇させることによって変換の程度を向上しようとするいくつかの方法とは対照的に、外部高せん断混合によってもたらされる優れた分散及び接触は、多くの場合において、生成物の生産を維持又は増加させつつ、全体的な稼働圧の低下を可能にする。
【0113】
特定の理論に限定されることは望まないが、高せん断混合のレベル又は程度は物質移動の速度を上昇させるのに十分であり、別の方法ではギブズの自由エネルギー予測に基づいて起こらないと予測される反応を起こすことができる局所的な非理想状態を生じると考えられる。局所的な非理想状態は高せん断装置内で生じ、最も顕著な増加は局所圧であると考えられる温度及び圧力の増加をもたらすと考えられる。高せん断装置内における圧力及び温度の上昇は瞬間的及び局所的であり、高せん断装置を脱すると大半の又は平均のシステムの状態に急速に戻る。ある場合において、高せん断混合装置は、一つ又は複数の反応物をフリーラジカルへと解裂させるのに十分な強さのキャビテーションを誘導し、フリーラジカルは化学反応を増強させるか、又は別の方法において必要とされる条件よりも穏やかな条件で反応を起こすことができる。また、キャビテーションは局所的な乱流及び液体のマイクロ循環(音響流)を生じることによって輸送処理の速度を上昇することができる。化学/物理処理の適用におけるキャビテーション現象の利用の概要は、ゴゲート(Gogate)他の「キャビテーション:技術の展望(Cavitation: A technology on the horizon)」、カレントサイエンス(Current Science)、91(No.1):35−46(2006)によって提供される。そのような非理想的な状態において、二酸化炭素及び/又はアルカンは解裂可能であり、水及び/又は単純なアルカン分子はフリーラジカルへと変換される。そして、フリーラジカルは炭化水素及び含酸素物へと改質されることができる。HSD40において、可能な場合は反応性ラジカル化合物を形成するための少なくとも一つの好適な触媒の補助を伴ってアルカンは脱水素され、及び/又は二酸化炭素は分断される。開示されるシステム及び方法は、高せん断の使用によりもたらされる非理想的な状態における変換によって軽質ガスの有用な生成物へのほぼ排出物の無い変換をもたらすことができる。
【0114】
ある実施形態において、本明細書に記載されるシステム及び方法は、外部高せん断装置40を使用せずに従来可能であったものよりも、より小さな及び/又は少ない資本集約的方法の設計を可能にする。開示される方法のある実施形態の潜在的な利点は、既存の方法からの運転コストの低下及び生産量の増加である。
【0115】
開示されるシステム及び方法のある実施形態によって得られる代表的なデータが、本明細書の以下において実施例1−5として開示されている。
【0116】
実施例
実施例1:触媒調製法
上記の表1における触媒MR−34−18は、70−80℃の脱イオン水200mLに溶解された9グラムのタングステン酸アンモニウム(純度99.9%、ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ カンパニー(Sigma-Aldrich Co., St. Louis, MO)から購入)及び1gの硝酸ランタン(ニュージャージー州フェアローンのフィッシャー ケミカルズ カンパニー(Fisher Chemicals, Co., Fair Lawn, NJ))を用いて500mLビーカーで調製された。別のビーカーにおいて、硝酸コバルト(II)六水和物(純度99%、シグマ−アルドリッチから購入)は70℃で水に溶解された。その後に、二つの溶解した塩溶液は混合されて、アルカリのpHにするために10mLの水酸化アンモニウム(シグマ−アルドリッチ カンパニーのA.C.S.試薬グレード)と共に30gの酸化マンガン(IV)(99%以上の試薬純度、アルドリッチから購入)が添加された。混合物は80℃に加熱され、形成されたペーストはガラス板へと移されて120℃に維持されたオーブンで2−3時間加熱され、それによって酸化マグネシウム上に被覆又は薄い層が形成された。
【0117】
乾燥した触媒は焼成のためにるつぼ(crucible)に入れられた。焼成炉は焼成の間、大気でパージされ続けた。炉は、最初に30分の間300℃に設定され、その後に550℃まで上昇されて2時間維持された。そして、炉の温度は860℃まで上昇されて、24時間維持された。その後、炉は室温まで冷却され、炉から取り出された。触媒は乳鉢で砕かれ、スクリーン#10のふるい(約2μm及び0.0661インチ)を通り抜けるように7トンの圧力をかけられてサイズ調整された。そして、顆粒は1000℃の不活性状態で8時間焼きなましをされた。室温に冷却することで、触媒は反応装置における使用の準備が整った。
【0118】
触媒MR−34−18のXRDは以下の金属酸化物の存在を明らかにした。:Mn=MnO+MnO;NaWO=NaO+WO;MnWO=MnO+WO;及びCoMn=CoO+MnO
【0119】
また、MnWO及び場合によってはNaWOなどの他の相も特定された。他の原料が表1に示される組成(すなわち、原子の比率)を有する触媒を生成するために用いられた。これらは、モリブデン酸アンモニウム四水和物とも呼ばれる七モリブデン酸アンモニウム[(NH4)Mo24・4HO]を含む。
【0120】
実施例2−4:メタンの変換
開示されたシステム及び方法による含水素物及び液体炭化水素の生成を評価するために、36日にわたって実験が行われた。試験の実験記録は本明細書中に別表Aとして提供されている。実験中の容器10の温度は、開始した時の150℃から実験最終日の約80℃までの範囲であった。7500RPMにおける消費電力計は、容器10の温度が80〜100℃である場合に0.15KW/hであった。冷却トラップ30の始動の間における消費電力は0.17KW/hであった。温度が146℃に到達すると、消費電力は0.14KW/hに低下した。高せん断装置40における最大のせん断である104Hz(13500RPM)において、冷却PEGに対する消費電力は0.27KW/hであった。温度が約80℃から100℃の間である場合、消費電力は0.24〜0.25KW/hであった。実施例2−5の実験の間中、別の条件が記載されていない限り、気体混合物は345kPa(50psig)であり、2:1の体積比であるメタン:二酸化炭素を含む。軽質ガスの最も良好な変換は約85から90℃の容器10の温度で観察された。
【0121】
実施例2:ルテニウムカルボニルを用いた2:1のメタン:二酸化炭素の高せん断反応
冷却トラップは図1に示されるようにシステム100内に配置された。5グラムのトリルテニウムカルボニルが125℃において1/2LのPEGに溶解された。このルテニウムカルボニル/PEGは1LのPEGに添加された。試験開始から三時間後に、ルテニウムカルボニル/PEGの溶液は一時間かけて容器10へと投入された。
【0122】
液体生成物MBM−33−B(液体)は冷却トラップの液体24から回収され、グリコールについて解析された。結果は表2に示されている。
【0123】



【0124】
実施例3:ルテニウムカルボニルを用いた2:1のメタン:二酸化炭素の高せん断反応
サンプルMBM34−2は冷却トラップの気体25から取り出され、サンプル34−1は容器10の生成物液体16から取り出され、サンプル34−PEGは単なる未使用のポリエチレングリコールであった。結果物は炭化水素及びグリコールについて解析され、結果が表3に示されている。
【0125】



【0126】
サンプルMBM−34D及びMBM−34Fは、本明細書に添付されている別表Aに記載されているように、冷却トラップの液体24から取り出された。その解析の結果は表4に示されている。
【0127】

【0128】
実施例4:パラフィン系オイル中における2:1のメタン:二酸化炭素及びメタンのみのパラジウムシリカ触媒を用いた高せん断反応
サンプルMBM−35B水及び35−タグA水は、本明細書の以下の別表Aに示されるように冷却トラップ24から取り出された。その解析の結果は表5に示されている。
【0129】



【0130】
サンプルMBM−35B油及びMBM−35タグA油は、本明細書に添付の別表Aに示されるように容器10の液体から取り出された。その解析の結果は表6に示されている。
【0131】



【0132】
実施例5:高せん断エタン変換
この実施例に対して、実施例2−4で使用されるのと同一の設備構成が利用された。
容器10における攪拌装置は1000RPMで稼働された。高せん断ユニット40は13,500RPMで稼働された。容器10は150℃及び345kPa(50psi)に維持された。
【0133】
850−950の平均分子量数Mnを有する6Lの融解したポリエチレングリコール(シグマ アルドリッチ)が、2kgのパラジウム触媒(SiOに対して0.5重量%のPd)及び5gのトリルテニウムドデカカルボニル(シグマ アルドリッチ)と共に容器10に入れられた。3つ全てのヒーター(H1、H2、H3)、ギアポンプ5、及びHSD40は電源が入れられた。
【0134】
システム100は密閉されてCOで三度パージされ、(容器10の上部からHSD40の導入口ライン22へと気体を抽出する)気体コンプレッサの電源が入れられた。およそ2:1の流量比でエタン及びCOを含む気体原料が容器10の上部に導入された。同様の稼働が1Lの水を容器10へと注入し又は注入しないで行われた。12時間後、実験は終了され、サンプルが冷却トラップ30から取り出されて解析された。結果は表7に示されており、MBM39−Aの結果は水の注入を伴っておらず、MBM39−AWは水の注入を伴っている。
【0135】

【0136】
実施例6:高せん断プロパン変換
実施例5に類似の条件及び設備を用いた稼動がエタンの代わりにプロパンガスを用いて行われた。同様の稼働が容器10への1Lの水の注入を伴って又は伴わずに行われた。12時間後、実験は終了し、サンプルが冷却トラップ30から取り出されて解析された。結果は表8に示されており、MBM39−Bの結果は水を伴っておらず、MBM39−BWは水の注入を伴っている。
【0137】

【0138】
実施例7:高せん断ブタン変換
実施例5と類似の条件及び設備を用いた稼働がエタンの代わりにブタンガスを用いて行われた。この稼働の間に、存在する有機化合物の水蒸気蒸留を補助するために1Lの水が容器10へと注入された。解析結果は表9に示されている。
【0139】



【0140】
発明の好適な実施形態が示されて説明されたが、その改良は発明の精神及び教示から逸脱することなく当業者によって行われるであろう。本明細書に記載される実施形態は単なる例示であり、限定することを意図していない。本明細書に開示される発明の多くの変形及び改良は可能であると共に発明の範囲内に位置する。数値の範囲又は限定が明確に記載されている場合、そのように明らかな範囲又は限定は明確に記載される範囲又は限定内に位置する同程度の反復する範囲又は限定を含む(例えば、約1から約10は2、3、4などを含み、0.10より大きいは0.11、0.12、0.13などを含む)ことが理解されなければならない。請求項の構成要素に関する用語「任意に(optionally)」の使用は、対象の構成要素が必要である又は必要でないことを意味することを意図している。いずれの選択肢も請求項の範囲内に入ることを意図されている。有する(comprise)、含む(include)、有する(having)などの広い用語の使用は、からなる(consisting of)、基本的に〜からなる(consisting essentially of)、ほぼ〜からなる(comprised substantially of)などの狭い用語の支持をもたらすことが理解されなければならない。
【0141】
したがって、保護の範囲は上述の説明によって限定されることは無く、以下の請求項によってのみ限定され、その範囲は請求項の対象の全ての均等物を含む。それぞれ及び全ての請求項は本発明の実施形態として明細書に援用される。したがって、請求項はさらなる説明であり、本発明の好適な実施形態の追加である。本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、それらが本明細書において記載される事項を補完する実施例、手順又は他の詳細を提供する範囲において、参照することによって本明細書に援用される。














【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、及びメタノールの一つ又は複数を含む軽質ガスから、C2+の炭化水素、含酸素物、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を製造する方法であって、
液体材料中に軽質ガスの分散体を形成する段階
を有し、分散体は少なくとも一部が高せん断力を用いて形成されており、液体材料及び軽質ガスの少なくとも一つが水素源である方法。
【請求項2】
分散体を形成する段階が、約0.1から約1.5μmの範囲の平均直径を有する軽質ガスの気泡を生じることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分散体を形成する段階が、軽質ガス及び液体材料の混合物に約20,000s−1より大きなせん断速度を課すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
高せん断力は、固定子及び相補的なロータを有する少なくとも一つの生成機を備えた少なくとも一つの高せん断装置によってもたらされる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分散体を形成する段階は、5.0m/s(1000フィート/分)より大きなロータの先端速度を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの高せん断装置は、分散体の形成中にロータの先端において少なくとも約1034.2MPa(150,000psi)の局所圧力を生じる請求項4に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの高せん断装置のエネルギー消費は、分散体の形成中に1000W/mを超える請求項4に記載の方法。
【請求項8】
分散体は更に触媒を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
触媒はルテニウムを含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
触媒層を備える固定層反応装置へと分散体を導入することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
液体含酸素物、C2+の炭化水素及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物を製造する方法であって、
二酸化炭素、メタン又はその両方を含む軽質ガスと液体媒体とを含む流体混合物に20,000s−1より大きなせん断速度を課すことによって液体の連続相中に軽質ガスの分散体を生成する段階と、
反応装置へと分散体を導入する段階と
を有し、分散体は少なくとも一つの高せん断装置を用いて少なくとも一部が形成されており、少なくとも一つの高せん断装置は液体媒体中に軽質ガスの気泡の分散体を生成するよう構成されており、液体含酸素物、C2+の炭化水素、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物が反応装置から除去される方法。
【請求項12】
気体ストリームと液体生成物を含む液体生成物ストリームとに反応装置生成物を分離する段階と、
気体ストリームの少なくとも一部を外部高せん断装置へと再循環する段階と
を更に有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分散体における軽質ガスの気泡の平均気泡直径が約0.1から約1.5μmの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
分散体は少なくとも一つの触媒をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン又はそれらの組み合わせを含む軽質ガスを、含酸素物、C2+の炭化水素及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含む生成物へと変換するシステムであって、
せん断間隙によって分離されたロータ及び固定子を備える少なくとも一つの生成機を有する少なくとも一つの高せん断混合装置と、
軽質ガス及び液体媒体を含む混合物を高せん断混合装置へと輸送するよう構成されたポンプと
を有し、せん断間隙はロータ及び固定子の間の最小の距離であり、高せん断混合装置は22.9m/s(4,500フィート/分)より大きなロータの先端速度を生じることができるシステム。
【請求項16】
少なくとも一つの高せん断混合装置とポンプとの間に配置された反応装置を更に有し、反応装置は生成物排出口と少なくとも一つの高せん断装置の分散体排出口から分散体を受容するよう構成された導入口とを有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの高せん断装置は少なくとも二つの生成機を有する請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
一つの生成機のせん断速度が別の生成機のせん断速度より大きい請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも一つの高せん断混合装置は、液体媒体を含む液相中に軽質ガスの気泡の分散体を形成するよう構成されており、分散体は400nm未満の平均気泡直径を有する請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも二つの高せん断混合装置を有する請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−531891(P2010−531891A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515073(P2010−515073)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068174
【国際公開番号】WO2009/003031
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509218652)エイチ アール ディー コーポレーション (17)
【Fターム(参考)】