説明

輻射線硬化性インキコーテイング組成物

【課題】インキ組成物中に実質的な量のシリコン剥離剤の使用を必要としない、適当な分離挙動を有するリボン組立部品を提供する。
【解決手段】被覆光ガラスファイバーに色分けを設けるように適応させた輻射線硬化性インキコーテイング組成物であって、(a)少なくとも1種の輻射線硬化性基を有するオリゴマー、(b)反応性希釈剤、(c)ラジカル重合用の少なくとも約1重量%のホモリチック光開始剤、(d)顔料、と(e)添加剤、から成り、且つ組成物は2重量%以上のベンゾフェノン型化合物を含み、そして前記重量%は前記輻射線硬化性インキ組成物の総重量に基づいていることを特徴とする前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輻射線硬化型インキ組成物に関するものであって、更に被覆されそして着色された光学ガラス繊維の製造法、被覆されそして着色された光学ガラス繊維、及びこのように被覆されそして着色された光学ガラス繊維から成るリボン状−組立部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラス繊維は、一般に二層の重層された輻射線−硬化型の被覆層で被覆されており、これは共に一次被覆層を形成している。ガラスと直接接触している被覆層は内部一次被覆層と呼ばれ、上に重ねた被覆層は外部一次被覆層と呼ばれている。内部一次層はまた一次被覆層とも呼ばれ、その時には外部一次層は二次被覆層と呼ばれる。この両者の定義は、時々置き換えられて使用される。
【0003】
内部一次被覆層は通常比較的柔らかい被覆層で、ガラス繊維に環境に対する保護性能を与え、そしてなかんずく良く知られているミクロベンディング(microbending)の現象に対し抵抗性を与えるものである。被覆された繊維中のミクロベンディングは、被覆された繊維の信号伝達特性の減衰を導き、それ故こ望ましくない現象である。外側の一次被覆層は、被覆された繊維の曝露される側の表面上にあり、概して比較的固い被覆層であり、例えば繊維が海底電線敷設の際に遭遇するような、物理的な取り扱いの際の力に対し、望ましい抵抗性を与えるようデザインされている。
【0004】
光学繊維の遠距離通信の応用においては、多数の被覆された繊維の個々の撚られた糸を、リボンやケーブルのような更に大きな構造にパッケージ化して、その効率を最大限にしなければならない。しかしながら、繊維がケーブル化され、或いはリボン化された後には、繊維の個々のより糸はそれぞれが容易に区別でき、例えば、架設や修繕の間には正確に確認できなければならない。複合ケーブル中の個々の繊維を区別しそして確認するために、ケーブルの幾何構造及び/又はカラーコード化が用いらる。ガラス繊維のカラーコード化には幾つかの方法を用いることができるけれども、カラーコード化は好都合に、リボン化及びケーブル化する前に、被覆された繊維の上に設けた薄いインキ層(<10ミクロン)、又は着色された外部一次被覆層のいずれかを用いることよって為されている。
【0005】
テープ状の光学繊維のリボンは、複数(例えば、4〜12)の個々のカラーコード化された繊維を、支持するマトリックス(matrix)材料中に埋め込むことによって製造され、マトリックス材料としてはまた、内部及び外部の一次被覆層のように、輻射線硬化型の材料を使用して製造速度を最高にしている。マトリックス材料は、カラーコード化された光学ガラス繊維を包み込むか、或いはマトリックス材料は端面でガラス繊維を一緒に接着することができるものである。マトリックス材料の硬化は、繊維がインキでカラーコード化された後に、リボン化の工程の間に行われる。それ故に、インキ層は、リボンデザインの中でリボンのマトリックス材料と繊維の外側一次被覆層の間に介在しているのである。このことは、インキ層の界面特性(例えば表面エネルギー、接着性)が注意深くコントロールされ、マトリックス材料とリボン構造中の外側の一次被覆層の両者の間で、適切にその機能を果たさなければならないことを意味している。特に、適当にインキ層を剥離(分離)する、硬化したマトリックス材料の能力が、技術的に考慮すべき重要な事柄である。溶剤を使用してマトリックスを化学的に軟化することはまた知られているけれども、リボンの分離は一般に機械的な力によってのみ成し遂げられるのである。
【0006】
光学繊維について、そのカラーコード化は12色又はそれ以上の色調に基準を置いている。光学繊維のインキは、元来溶剤ベースの、又は熱硬化型のインキであったけれども、更に最近においては、輻射線−硬化型のインキが用いられインキ化の工程の速度を上げている。これらのインキ組成中においては、顔料が輻射線−硬化型のキャリヤー、又は基礎となる組成物中に分散されている。
【0007】
被覆された光学ガラス繊維の需要が増加すると、製造業者は更に多くの繊維延伸製造ラインを追加することによって、そしてまた現存する繊維延伸製造ラインの線状ライン速度を増加させようと試みることによって、対応しなければならない。後者の場合、ライン速度の上限を決める一つの要因は、与えられた輻射線源及びその強度に対して、輻射線硬化インキ組成物が硬化する速度特性に依存して決定される。
【0008】
もしも輻射線−硬化性のインキ組成物が必要とする十分な硬化速度の時間を与えることができない範囲までライン速度が増加したら、輻射線硬化インキ組成物の完全な硬化、又は架橋を生ずるに十分な量の輻射線を輻射線硬化インキ組成物は受けることができない。製造の線状ライン速度は、一般に光学ガラス繊維を叩く輻射線の量とは反比例の関係にある。即ち、製造ライン速度が増加すると、製造工程の間に輻射線硬化性のインキ組成物が曝露される輻射線の量は、与えられた輻射線源にとって必然的に減少するのである。輻射線−硬化インキ組成物の不完全な硬化は望ましくなく、そして避けられなければならず、何故ならその場合には不完全に硬化したインキ被覆層は望みの性質を達成することができず、そして/又は不完全に硬化したインキ被覆層は接着性(その後の取り扱いに問題を与える)が残っており、或いは悪臭のある臭いがあり、そしてまた多分硬化したインキ被覆層中には抽出可能な(望ましくない)物質が増加するからである。
【0009】
一般に、輻射線−硬化性のインキ被覆組成物は、外側の輻射線−硬化型の一次被覆層組成物よりも著しく遅い速度で硬化する。インキ組成物中に存在する顔料が、インキ被覆層の硬化速度を遅くしている一因と信じられる。かくして、インキ被覆層の硬化速度を改良する必要があるのである。
【0010】
インキ組成物は非常に早い硬化速度を有し、高速の延伸設備中でインキ被覆層の完全な硬化を確保しなければならないが、一方で、硬化速度の増加はインキ被覆層の他の重要な、例えば適当な分離挙動のような性質を犠牲にしてまで得るべきものではない。この分離の性能は、硬化したインキ被覆層がマトリックス材料から剥がされる能力であり、インキ被覆層が外部一次被覆層から剥がされることなく、リボン−組立部品内に含まれる個々の被覆された光学ガラス繊維にミッドスパンアクセス(mid−span access)を与える性能である。ミッド−スパンアクセスとは、リボン組立部品の末端同士間の、リボン組立部品部分における被覆された光学ガラス繊維へのアクセスである。従って、輻射線−硬化型のインキ組成物が、外側の一次被覆層とインキ被覆層との間に接着性を与える適応性のある接着特性を示し、この接着特性がインキ被覆層とマトリックス材料の間の接着性より大きくて、ミッド−スパンアクセスを与えるのである。
【0011】
加えるに、インキ組成物は光学ガラス繊維の表面に移動し、そして腐食を起こすような成分を含んでいてはならない。インキの組成物はまた、保護被覆層、又はマトリックス材料中に不安定性を与えるような成分を含むべきではない。光学ガラス繊維のインキ被覆層は、10年間は堅固に着色しているべきであり、信号伝送の減衰を生じさせることなく、ケーブル敷設ゲルや薬品を通すことなく、そして繊維の芯の直線性のために十分な光貫通性能を可能とするのである。
【0012】
類似の要求が、着色した外側の一次被覆層に対しても存在する。特に、これらの被覆層は、顔料の存在にも拘わらず高い硬化速度、良好な分離特性、内部一次被覆層との良好な接着性を必要とし、そしてこの被覆層は、リボンが湿気、熱、等に長い間曝されても、ガラス繊維を通過する光が減少してしまうような成分を含んでいてはならない。
【0013】
上記の点から、光学ガラス繊維の技術においては、輻射線−硬化型の着色組成物に関して印刷インキのような従来からの技術では更に有していない、多くの特有の要求が提出されていることは明らかである。
【0014】
米国特許第4,629,285号は、被覆された光学ガラス繊維上にインキ被覆物を作る方法を開示しており、UV硬化型のインキが被覆された光学ガラス繊維に適用されている。インキの被覆層は、光学ガラス繊維に同心円を保つ方法で適用される。好ましいインキは着色された半透明なUV硬化型高分子インキである。しかしながら、この特許に開示されたインキ組成物は、最近の高速の光学ガラス繊維延伸被覆タワーに用いるには、十分に早い十分な硬化速度を有していない。
【0015】
公開された日本特許出願、第H1−152405号は有機ポリシロキサン化合物を含む輻射線−硬化型インキ組成物を開示している。ポリシロキサン化合物は、インキ組成物にリボン組立部品中でマトリックス材料から更に容易に分離する性能を与えている。
【0016】
公開された日本特許出願第64−22976号は特定の輻射線硬化型オリゴマーを含有する輻射線硬化性インキ組成物を開示している。インキ組成物は外側の一次被覆層に接着性を有するインキ被覆層を与え、この被覆層はリボン組立部品中のマトリックス材料から分離できるものである。
【0017】
特許出願EP−A−614099号はシリコン油、又はフッ素樹脂のような、束にまとめる層と着色層との間に用いる剥離剤の使用法を記載している。特に、実質的な量のシリコン樹脂を用いるとき、液相中に不相溶性を生じ、そして硬化したマトリックス組成物中にその結果として生ずる欠陥を生じてしまい、これが光の減衰をもたらすのである。
【0018】
通常、インキ組成物は不活性雰囲気中で、即ち酸素がない状態で硬化されなければならない。光学ガラス繊維延伸タワーに不活性雰囲気を与えることは費用がかかる。かくて、ある程度の酸素の存在下で、例えば空気の雰囲気中で、高い硬化速度を示す輻射線−硬化型インキ組成物が、不活性雰囲気中で硬化されねばならないインキ組成物に較べ著しい長所を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、インキ組成物中に実質的な量のシリコン剥離剤の使用を必要としない、適当な分離挙動を有するリボン組立部品を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的とするところは、輻射線−硬化型インキ組成物を提供することにあり、この組成物は外側の一次被覆層にマトリックス材料よりもより大きい接着性を有する硬化したインキ被覆層を与え、個々の被覆された光学ガラス繊維が分離能力を有するリボン組立部品を提供するよう適合されているものである。
【0021】
本発明の更なる目的は、高速で硬化可能な輻射線−硬化型インキ組成物を提供するもので、空気の存在下でも高められた硬化速度を与える。
【0022】
本発明の更なる他の目的は、インキ組成物を提供することにあり、適切に硬化されたとき、外側の一次被覆層に強い接着性を示すものである。
【0023】
本発明の他の目的は、インキ組成物で被覆された光学ガラス繊維を、そして少なくとも一種の被覆された光学ガラス繊維を含むリボンの組立部品を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記の目的、及び他の目的は、本発明に従う新規なリボンの組立部品によって得ることができる。新規なリボンの組立部品が提供され、このリボン組立部品はこれにより色によってコード化された光学ガラス繊維が分離される便利な特性を有している。リボンの組立部品は、複数の被覆された光学ガラス繊維からなり、ガラス繊維はインキ又は着色された二次被覆層を少なくとも一種の被覆されたガラス繊維上に有しており、そして複数の被覆された光学繊維を一緒に束にしているマトリックス材料を有しているものである。着色された被覆層は輻射線硬化型の被覆組成物から形成され、被覆組成物は輻射線硬化型のキャリアーシステムからなり、輻射線硬化型のモノマー及びオリゴマー、そして少なくとも一種の光開始剤、及び輻射線硬化型キャリアーシステム中に分散した顔料の混合物を含んでいる。モノマー、オリゴマー、及び光開始剤は、平均のパーセンテージの反応したアクリレート不飽和を与えるように選択され、これはマトリックス材料と着色した被覆層の間の接着性のレベルを与えているもので、着色被覆層と被覆された光学ガラス繊維との間の接着のレベルより小さく、着色された被覆層組成物が適当な紫外線放射線量の曝露によって硬化するときには、リボン組立部品から着色被覆された光学ガラス繊維が分離される。好ましい態様において、適当な放射線量は約0.125ジュール/cm2の線量である。本発明は特にインキ被覆層に対し有用であり、これは被覆された光学ガラス繊維上に適用され、そして外側の一次被覆層に隣接しているものである。
【0025】
同様に、新規な組立部品が提供され、これは個々の被覆された光学ガラス繊維の分離を与える実用的な性能を有しているものである。リボンの組立部品は複数の被覆された光学ガラス繊維、及び複数の被覆された光学ガラス繊維を一緒に束ねるマトリックス材料から成っている。少なくとも一種の被覆された光学ガラス繊維は、光学ガラス繊維、光学ガラス繊維の表面に隣接する内部一次被覆層、外部の一次被覆層の表面に隣接する外部の一次被覆層から成るものである。インキ被覆層は輻射線−硬化型のインキ被覆層組成物から形成され、いくらか外側の一次被覆層に吸収しうるよう選ばれたモノマーを含み、適当に硬化されたときインキ被覆層と外側の一次被覆層との間の接着力にあるレベルを与え、これはインキ被覆層とマトリックス材料の間の接着力のレベルより大きいものである。
【0026】
また新規な輻射線−硬化型のインキ被覆層の組成物が提供され、その分離特性が望ましい場合には、この組成物はリボン組立部品の使用に適するインキ被覆層を与えることが可能である。
【0027】
また、本発明は、輻射線−硬化型のインキ被覆層組成物が提供され、
a) オリゴマー
b) 反応性希釈剤
c) ホモリティック(homolytic)光開始剤
d) 顔料、及び
e) 添加剤を含有し、組成物は約1重量%以上のホモリティック光開始剤を、ベンゾフェノン−タイプの化合物と組み合わせて含有している。
【0028】
この組成物はまた、もし適切に調合されているなら、構成成分a)〜e)を使用して、着色した外側の一次被覆層として用いることができる。
【0029】
意外なことに、ベンゾフェノン−タイブの化合物のこの使用は、もし適切に硬化されるなら、外側の一次被覆層に申し分のない接着性を有し、そしてマトリックス材料からの良好な分離を有するシステムを結果として生ずる。
【0030】
DE−A−4007519号において、UV硬化性インキ組成物の硬化の際に、光学繊維に光開始剤を使用することが記載されている。しかしながら、この引用例は実質的な量のホモリティックなタイプの光開始剤を実質的な量のベンゾフェノンと組み合わせて用いることを教えてはいない。
【0031】
輻射線−硬化型インキ組成物は、色彩を加える機能を果たす顔料システムと、そして輻射線−硬化後に接着性と、高−品質のフィルム中に顔料システムを許す機能を果たしている、輻射線−硬化型キャリアーシステムの二種の機能の成分を含有する。一般的に、キャリアーシステムは顔料システムと混合され、輻射線−硬化型インキを形成する。
【0032】
インキ被覆層は、通常約3〜約10ミクロンの厚さであり、そして信号伝達の減衰を防ぐため同心円である。インキ被覆層はまた、一般に、少なくとも約30℃のTgを、更に好ましくは少なくとも約50℃のTgを有している。
【0033】
着色した外側の一次被覆層は、一般に10〜30μmの厚さを有し、そして例えばEP−B−473643号に記載されている。
【0034】
輻射線−硬化型キャリアーシステムは、本インキ組成物を形成することに適しており、一種又はそれ以上の輻射線−硬化性の、光活性化輻射線に曝露されたとき重合しうる少なくとも一種の官能基を有する、オリゴマー及びモノマーを含んでいる。適当な輻射線−硬化性のオリゴマー又はモノマーは、現在良く知られており、当業者の技術領域内のものである。
【0035】
それぞれ被覆された光学ガラス繊維は、個々の繊維を確認するためインキ被覆層を有している。インキ被覆層とマトリックス材料の間の接着力のレベルは、光学ガラス繊維上のインキ被覆層と二次被覆層との間の接着力のレベルより小さくなるように調節されており、このことは個々の被覆された光学ガラス繊維の分離性を与え機能的な特性を与えている。インキ被覆層と二次被覆層との間の接着力のレベル、及びインキ被覆層とマトリックス材料との間の接着性のレベルは、次の通り、本発明の種々の態様に従って適当なレベルに調節することができる。
(1) リボン組立部品のインキ被覆層とマトリックス材料との間の接着性は、約0.125J/cm2のUV輻射線に曝露するとき反応アクリレート不飽和性のパーセント(“%RAU”)を増加させる、インキ被覆層組成物中のモノマー、オリゴマー、及び光開始剤を利用することで減少させることができ、そして/又は
(2) リボン組立部品のインキ被覆層と外側の一次被覆層の間の接着性は、より大きな割合で外側の一次被覆層中に吸着可能な、インキ被覆層組成物中のモノマーを含ませることによって、増加させることができる。
【0036】
従来からのインキ組成物は、本発明に従って、約0.125J/cm2のUV輻射線に曝すとき、インキ被覆層とマトリックス材料の間の接着性のレベルが、インキ被覆層と外側の一次被覆層との間の接着性のレベルより小さくなるように、%RAU”を与えるモノマー、オリゴマー、及び”光開始剤を選ぶことによって改良されたインキ組成物にすることができる。空気のような、ガス状の大気を含む酸素の存在下で硬化する場合、好ましくは、平均の%RAUは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも約75%であり、最も好ましくは少なくとも約80%である。不活性の(例えば窒素)雰囲気中で硬化するとき、好ましくは、平均の%RAUは少なくとも、75%、更に好ましくは少なくとも約80%、そして最も好ましくは少なくとも85%である。平均の%RAUは、それぞれが同一の輻射線−硬化型キャリアーシステムを有する少なくとも4種の異なる色のインキ被覆層組成物の%RAUを基準とすべきである。好ましくは、%RAUは少なくとも6種に、更に好ましくは少なくとも12種の異なる色の被覆層組成物を基準としている。
【0037】
いかなる理論にも束縛されることなく、インキ被覆層中に存在する未反応のアクリレートの量が少なければ少ないほど、マトリックス材料とインキ被覆層との間の架橋サイトの数が減少すると信じられる。架橋サイトの数が減少すればするほど、インキ被覆層とマトリックス材料との間の接着のレベルが低くなる。
%RAUが増加するとき、未反応のアクリレートは減少する。このように、%RAUが高いほど、インキ被覆層とマトリックス材料間の接着性は低下する。
【0038】
%RAUは、インキ硬化速度を高める光開始剤を用いることによって適当なレベルに調節する事ができる。インキの硬化速度を高める光開始剤は、好ましくはフリーラジカルを発生する光開始剤を含有し、次の式(1)で表される。
【0039】
【化1】

【0040】
Arは、少なくとも一種の芳香族官能基を有する炭素含有化合物を表し、“P”はAr3に存在する芳香族官能基と直接に結合し、C1はAr1中に存在する芳香族官能基に直接結合しており、C2はAr2中に存在する芳香族官能基に直接結合している。少なくとも一種の炭素含有化合物“Ar”は、少なくとも一種の以下のフリーラジカルを形成することに適する分子量、及び分子構造を有するものである。
【0041】
【化2】


好ましくは、全ての3種の炭素含有化合物“Ar”は、上記のフリーラジカルを形成するのに適した分子量、及び分子構造を持っている。例えば、炭素含有化合物は、約5〜約15の炭素原子を持つことができる。適する炭素含有化合物の例としては、フラン環、又はベンゼン環を含む。
【0042】
芳香族環上に存在する一種以上の水素は、例えば、アルキル、及び/又はアルコキシ基で置換することができる。適当なアルキル置換基の例としては、メチレン、エチレン、ブチレン、及びプロピレン基を含む。適当なアルコキシ置換基の例としては、メトキシレート、エトキシレート、ブトキシレート、及びプロボキシレート基を含む。
【0043】
好ましい硬化速度を増加させる光開始剤としては、次式(2)によって表される開始剤を含む。
【0044】
【化3】

【0045】
Arはフェニル基で、所望により1〜4の炭素原子を有する1〜3種のアルキル基で置換される。
【0046】
輻射線−硬化型インキ組成物はまた、インキの硬化速度を増強する光開始剤と組み合わせて、他のフリーラジカルを発生する光開始剤を含ませることができる。適当なフリーラジカル−タイブの光開始剤(またNorrishタイブI光開始剤と呼ばれる)の例としては、以下のものが含まれるが、これに限定されるものではない。
2,4,6トリメチルベンゾイル ジフェニルフォスフィン−オキサイド;
1−ヒドロキシ シクロヘキシルフェニルケトン;
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン;
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン;
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン;
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル プロパン−1−オン;
4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−ヒドロキシ−2−プロピル ケトン ジメトキシフェニルアセトフェノン:1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;
1−(4−ドデシル−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;
4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(2ヒドロキシ−2−プロピル)−ケトン;
ジエトキシフェニルアセトフェノン;
(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの混合物;
ベンゾフェノン;
1−ブロパノン、2−メチル−1−1−(4−(メチルチオ)フェニル)2−(4−モルフォリニル);及びこれらの混合物。
【0047】
好ましくは、輻射線硬化型のインキ組成物は、ベンゾフェノンと2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンの混合物を含む。
【0048】
好ましくは、インキの硬化速度を増強する光開始剤は、望みの%RAUを与える量で存在する。一般に、インキの硬化速度を増強する光開始剤の量が多いほど、%RAUは高くなる。インキの硬化速度を増強する光開始剤の適当な量は、インキ組成物の合計重量を基準にして、約1〜約25重量%であり、好ましくは約1.5〜約20重量%、そして最も好ましくは約4〜約15重量%である。一般に、もし他の光開始剤が、インキ組成物中にインキの硬化速度を増強する光開始剤と組み合わされて存在するなら、インキの硬化速度を増強する光開始剤はより少ない量を用いて望みの硬化速度を与えることができる。
【0049】
輻射線−硬化型のインキ組成物を曝露する輻射線量が増加するとき、硬化したインキ被覆層の特定の物理的又は挙動特性の量(特定のインキ組成物に対し、完全に到達しうる値のパーセンテージとして測定される)は、それ相応に増加する。この増加は、測定される物理的又は挙動特性の値が最大の到達値に達するまで継続する。最大の到達しうる物理的又は挙動特性の値は、さらに輻射線を曝露してももはや越えることはない。物理的な又は挙動特性の例としては、MEKを用いて測定した架橋密度、モジュラス、ガラス転移温度、硬度、表面接着、及び残存抽出可能成分がある。MEKを用いて測定される架橋密度を、一つの例としてここでは用いる。
【0050】
測定した架橋密度が最大到達値に達してしまえば、、輻射線を更に曝露しても架橋密度の増加はその結果として生ずることはない。異なる輻射線−硬化型インキ組成物の硬化速度を比較する目的に対し、"硬化速度"の用語を用いて輻射線の投与量を表現しており、これはMEK値が20ミクロン厚さで予め決められている所定の数の擦過回数であるように、この硬化速度は架橋−密度を与えている。予め定められた、所定の数の擦過回数のMEK値に到達するために要する輻射線投与量が、低ければ低いほど硬化速度は速い。MEK値が好ましいけれども、もし望むなら、他の物理的特性を、異なる輻射線−硬化型の組成物の硬化速度を比較するために、用いることができる。
【0051】
硬化速度を増強する光開始剤はある量で存在し、少なくとも一種の顔料を含む輻射線−硬化型インキ組成物を提供し、この組成物は空気雰囲気下、20ミクロンの厚さで、約0.125J/cm2又はこれ以下の輻射線を使用して、少なくとも25回擦過のMEK値が達成されるような硬化速度で可視波長域における光を吸収するものである。好ましくは、硬化速度を増大する光開始剤は、少なくとも一種の顔料を含む、輻射線−硬化型のインキ組成物を与えるような量で存在し、この組成物は空気雰囲気中で、20ミクロン厚で、約0.125J/cm2の或いはそれ以下の輻射線を用いて、少なくとも約100回擦過の、更に好ましくは少なくとも約200回擦過のMEK値が達成されるような硬化速度で可視波長域における光を吸収するものである。
【0052】
インキ被覆層は通常約3〜約10ミクロンの厚さで、そして信号伝達の減衰を防止するため同心円であるべきである。インキ被覆層はまた、一般に少なくとも約30℃のTg、更に好ましくは少なくとも約50℃のTgを有している。輻射線−硬化型インキ組成物を調合する当業者らは、輻射線−硬化型組成物をどのように調製すれば、望みの性質の硬化した被覆層が与えられるか良く知っている。かように、外側の一次被覆層組成物を形成するため通常用いられる輻射線−硬化性の組成物が再調合され、そして本発明に従うインキ組成物中の輻射線−硬化型キャリアーシステムとして用いられる。
【0053】
本発明の着色された二次被覆層は、適当量の顔料(一般に1〜10重量%)
をキャリアー組成物に混合することによって調合することができる。これらの着色した二次被覆層は、好ましくは上記定義した如く%RAUの値、及び倍の値のMEKの擦過値を達成するよう調合される。
【0054】
再調合された適当な輻射線−硬化型組成物の例は、各種の材料を含んでおり、これらは米国特許第4,624,994号、同第4,682,851号、同第4,782,129号、同第4,794,133号、同第4,806,574号、同第4,849,462号、同第5,219,896号、及び同第5,336,563号等に開示されており、これら全てをここに参考として引用する。
【0055】
本インキ組成物を形成するために適する輻射線−硬化型キャリアーシステムは、化学線照射に曝されたとき重合可能な少なくとも1種の官能基を有する、一種以上の輻射線−硬化性のオリゴマー、又はモノマーを含んでいる。適当な輻射線−硬化型のオリゴマー又はモノマーは現在良く知られており、そして当業界の技術領域内にある。
【0056】
一般に、用いられる輻射線−硬化型の官能性は、エチレン性の不飽和であり、これはラジカル重合、又はカチオン重合によって重合される。適当なエチレン性不飽和の具体的な例としては、アクリレート、メタクリレート、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、N−置換されたアクリルアミド、N−ビニルアミド、マレエートエステル、及びフマレートエステルを含む群がある。好ましくは、エチレン性の不飽和は、アクリレート、メタクリレート、又はスチレン官能性を含む群によって与えられる。
【0057】
好ましくは、少なくとも約80モル%、更に好ましくは、少なくとも約90モル%、そして最も好ましくは実質的に全ての、オリゴマー中に存在する輻射線−硬化性の官能基は、アクリレート、又はメタクリレートである。
【0058】
適当な輻射線−硬化性のインキ組成物は、本質的に約1〜約80重量%の少なくとも一種の輻射線−硬化性のオリゴマー(a)から成っている。好ましい輻射線−硬化性のオリゴマーの量は、インキ組成物の総重量を基準にして、約20〜約70重量%の範囲を含む。
【0059】
モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、及び更に高く官能基化されたオリゴマーを用いて、均整のとれた望みの特性を達成することができ、ここで官能基化はオリゴマー中に存在する輻射線−硬化性の官能基の数を指している。
【0060】
オリゴマーは通常、炭素−含有の骨格構造をから成っており、これに輻射線−硬化性の官能基が結合している。適当な炭素−含有骨格の例としては、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びポリカーボネートが含まれる。炭素−含有骨格のサイズは、望みの分子量を与えるように選ばれる。
オリゴマーの平均分子量数は、通常約500〜約10,000の間、好ましくは約500〜約7,000の間、そして最も好ましくは約1,000〜約5,000の間である。
【0061】
例えば、炭素−含有骨格のオリゴマーは、芳香族基、及び開環したエポキシ基、又はアルコキシ基を含有することができる。オリゴマーは、例えば
R−Ar−R; 又は
R−L−Ar−L−R
で表現することができ、Rは輻射線−硬化性の官能基、Arは部分(moiety)を含む芳香族基、そしてLは連結基である。適当な連結基の例としては、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びこれらの繰り返し単位のような、アルコキシ、又は開環したエポキシを含む。Lはまたウレタン或いはウレアの連結基であることができる。
【0062】
芳香族の基は、例えば、ビスフェノール単位、例えばビスフェノールAから誘導することができる。好ましいオリゴマーは、アクリレート官能基が結合しているビスフェノールAのジグリシジルエーテル誘導体である。工業的に入手可能なこのようなオリゴマーの例としては、Ebecryl 3700(UCB)又はCN−120(Sartomer)があり、後者は約1300の分子量を有し、そして硬化したとき約65℃のTgを有している。
【0063】
好ましいオリゴマーの他の例は、約500〜約5000の分子量を持つ、三官能ポリエーテル又はポリエステルである。三官能オリゴマーの好ましい例は、工業的に入手可能なポリウレタントリアクリレートEbecryl 264であり、約2000の分子量を有し、そして硬化したとき約42℃のTgを有している。
【0064】
輻射線−硬化型のキャリアーシステムはまた、反応性の希釈剤(b)を含むことができ、これは粘度を調節するため用いられる。反応性の希釈剤は低い粘度のモノマーを含んでおり、これは化学線の放射線に曝されたとき重合することができる少なくとも一種の官能基を持っている。この官能基は輻射線−硬化性のモノマ一又はオリゴマーに用いたものと同一の性質を有している。好ましくは、反応性の希釈剤中に存在する官能基は、輻射線−硬化型のモノマー又はオリゴマー上に存在する輻射線−硬化型の官能基と、共重合することが可能である。
【0065】
適当な輻射線−硬化型のインキ組成物は、本質的に約1〜約80重量%の少なくとも一種の輻射線−硬化性の希釈剤から成っている。好ましい輻射線−硬化型の希釈剤は、インキ組成物の総重量を基準にして、約5〜約60重量%、更に好ましくは約10〜約50重量%の量を含む。
【0066】
好ましくは化合物(b)は、反応性の希釈剤又はこれらの混合物である。一般にそれぞれの反応性の希釈剤は約550以下の分子量を、そして約500mPa.s以下の粘度を持っている。
【0067】
例えば、反応性の希釈剤はアクリレート又はビニルエーテル官能性、及びC4〜C20アルキル、又はボリエーテル部分を有する、モノマー又はモノマーの混合物である。
【0068】
このような反応性希釈剤の特別の例として:ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エトキシエトキシ−エチルアクリレート、ラウリルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、等を含む。
【0069】
用いることができる、反応性希釈剤の他のタイプは、芳香族基を有する化合物である。芳香族基を有する特別の反応性希釈剤の例としては、エチレングリコールフェニルエーテル−アクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテル−アクリレート、ポリブロピレングリコールフェニルエーテル−アクリレート、及びボリエチレングリコールノニルフェニルエーテルアクリレートのような、上記モノマーのアルキル置換フェニル誘導体を含む。
【0070】
反応性の希釈剤はまた、重合しうる二種以上の官能基を有する希釈剤を含有する。このようなモノマーの具体的な例として、
C2〜C18化水素−ジオールジアクリレート、
C4〜C18炭化水素ジビニルエーテル、
3〜C18炭化水素トリアクリレート、及びこれらのポリエーテル類似体、
及び
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、
トリメチロールプロパントリ−アクリレート、
ヘキサンジオールジビニルエーテル、
トリエチレン−グリコールジアクリレート、
ペンタエリスリトール−トリアクリレート、
エトキシル化ビスフェノール−A ジアクリレート、及び
トリプロピレングリコールジアクリレート、のような類似物を含む。
【0071】
好ましくは、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロボキシル化グリセリルトリアクリレート、又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートのような、アルコキシル化脂肪族ポリアクリレートが用いられる。
【0072】
少なくとも一種の、本発明のインキ被覆層組成物中に用いられる光開始剤c)は、ホモリティックフラグメンテーション光開始剤(homolytic fragmentation photoinitiator)(またノリッシ(Non−ish)タイプI光開始剤と呼ばれる)であり、これは分子間結合の分割によって作用するものである。
【0073】
適当な輻射線−硬化型インキ組成物は、本質的に約1〜約20重量%のホモリティック光開始剤から成る。好ましいホモリティック光開始剤の量は、3以上〜約15重量%であり、更に好ましくは約4〜約12重量%である。
【0074】
フリ−ラジカル−タイブの光開始剤の例としては、これに限定されないが、上記の光開始剤が含まれる。
【0075】
顔料が本発明に従う組成物中に存在する場合(また着色した二次被覆層組成物に対しても)、光開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド光開始剤を使用することが、更に特にベンゾイルジアリールフォスフィンオキサイド光開始剤を用いることが好ましい。適当なベンゾイルジアリールフォスフィンオキサイド光開始剤の例として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFによるLucirin TPO)、及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチル−フォスフィンオキサイド(Ciba GeigyによるIrgacure 1700)が含まれる。
【0076】
顔料の存在下、最適の硬化速度に対してはアシルフォスフィンオキサイド光開始剤と一種以上の他の光開始剤、例えばヒドロキシ−シクロヘキシルフェニル−ケトンと組み合わせることが有利である。
【0077】
輻射線−硬化型のインキ組成物を作る際に適する、任意の無機及び有機の顔料(d)が、本発明に用いられる。しかしながら、白色顔料は通常インキ組成物を硬化するために使用されるかなりの量の輻射線を吸収しないので、白色インキ組成物は本発明に従うインキの硬化速度を増強する光開始剤を使用する必要はない。それ故に、好ましい顔料は可視波長の光を吸収する即ち、純粋な白色以外の任意の色調の顔料である。”顔料”の用語を使用する場合、無機及び有機の顔料の両者に関連する。
【0078】
好ましくは、本発明のインキ被覆層組成物に用いられる顔料は、有機顔料である。顔料はインキ組成物に着色性を与える量で存在し、倍率を上げることなく観察され、個々の着色した光学ガラス繊維の確認を容易にしている。
【0079】
12種以下の被覆された光学ガラス繊維を利用するリボン組立部品は、単に12色の色調を必要とするのみで、お互いに被覆された光学ガラス繊維をそれぞれ十分に識別することができる。しかしながら、大きなリボン状組立部品になると、お互いに被覆された光学ガラス繊維をそれぞれ十分に識別するために、12色以上の色が用いられる。普通リボン状組立部品を作るために用いられる12色の色調の例は、黒、白、黄、青、赤、緑、オレンジ、ブラウン、ピンク、水色、紫、及び灰色を含んでいる。
【0080】
好ましくは、顔料は約1μm以下の平均粒子サイズを有している。工業的に市販されている顔料の粒子サイズは、もし必要なら、磨砕することによって下げられる。
【0081】
適当な黒色顔料の具体的な例としては、カーボンブラックを含む。
【0082】
適当な白色顔料の具体的な例としては、二酸化チタンを含む。
【0083】
適当な黄色顔料の具体的な例としては、ジアリーライドイエロー(diaryhde yellow)、及びジアゾベースの顔料を含む。
【0084】
適当な青色顔料の具体的な例としては、フタロシアニンブルー、塩基性染料顔料、及びフタロシアニン類を含む。
【0085】
適当な赤顔料の具体的な例としては、アントラキノン(レッド)、ナフトールレッド、モノアゾベースの顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン、及びペリレーン類を含む。
【0086】
適当な緑色顔料の具体的な例としては、フタロシアニングリーン、及びニトロソベースの顔料を含む。
【0087】
適当なオレンジ顔料の具体的な例としては、モノアゾ及びジアゾベースの顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン及びペリレーンを含む。
【0088】
適当な紫色の顔料の具体的な例としては、キナクリドンバイオレット、塩基性染料顔料、及びカルバゾールジオキサジンベースの顔料を含む。
【0089】
適当な水色、ブラウン、グレー、及びピンクの色は、幾つかの顔料を混ぜ合わせることで容易に調合される。当業者らであれば、異なる顔料を混ぜ合わせることで望みの任意の色を形成することは可能である。
【0090】
インキ組成物中の顔料の使用量は、拡大しなくとも、個々の着色光ガラスファイバーを容易に認識できる程度に着色する量である。顔料の量は、インキ組成物の硬化速度を著しく低下させ、または他の望ましくない結果を生むほどの多い量であってはならない。顔料の適切な使用量の例として、これまで、約1〜25重量%より多いものがあった。通常、顔料の量は、インキ組成物の総重量を基準にして、25重量%より少なく、好適には約20重量%より少なく、より好適には10重量%より少ない。
【0091】
各顔料の好適量は、約0.5〜約10重量%、より好適には約0.5〜約5重量%である。着色二次コーテイングでは、通常少ない量の顔料を用いて、良好な着色を効果的に達成できる。
【0092】
輻射線硬化性キャリアーシステムに使用できる他の添加剤としては、潤滑剤、湿潤剤、酸化防止剤と安定剤が含まれるが、これらに限定するものではない。このような添加剤の選定と使用は、業界周知の技術である。
【0093】
被覆光ファイバーは、リボンアッセンブリーによく用いられる。本発明のインキ組成物は、汎用性があるために、リボンアッセンブリーの被覆光ガラスファイバー用に非常によく適合する。必要であれば、インキコーテイングに剥離剤を添加して、マトリクッス材とインキコーテイングを切り離し、個々のファイバーに容易に近づけることが可能であり、通常これを分離(break−out)と呼ぶ。
【0094】
しかし、好適には剥離剤は、ごく少量用いる。好適な剥離剤としては、シリコーン、シリコーンアクリレート、フルオロカーボンオイルまたは樹脂などがある。適切な剥離剤を使用する場合には、リボンアッセンブリー用の光ファイバーを被覆するインキコーテイング組成物は、インキ組成物の総重量を基準にして、約0.1〜約20重量%、より好適には約0.1〜約10重量%の剥離剤を含有する。
【0095】
マトリクッス材とインキコーテイングを切り離し個々のファイバーによりよく近づけるための、通常分離と呼んでいる、手段として、少抵の潤滑剤をインキ組成物に添加することが有効である。適切な潤滑剤として、シリコーン、フルオロカーボンオイルまたは樹脂などがある。シリコーンアクリレートのような反応性剥離剤は余り有効ではない。好適には、リボンアッセンブリー用の光ファイバーを被覆するインキコーテイング組成物は、インキ組成物の総重量を基準にして、約0.01〜約5重量%、より好適には約0.1〜約3重量%の適切な潤滑剤を含む。好ましくは、シリコーンオイルが用いられる。その他の潤滑剤を用いる場合には、より少ない量で用いる。
【0096】
本発明のインキコーテイング組成物の好適な実施態様では、有効量のベンゾフェノン型化合物を含み、マトリクッス材と被覆または着色光ファイバーの良好な分離を可能にしている。この実施態様で、適切な輻射線硬化性インキ組成物は、約2重量%以上のベンゾフェノン型化合物を含有する。
【0097】
ベンゾフェノン型化合物の好適な量は、インキ組成物の総重量を基準にして、約約3重量%以上、より好適には3.5重量%以上である。その量は、通常約10重量%以下であり、ベンゾフェノン型化合物の用量が約10重量%を超えても、特別な利点はなく、大量使用は経済的な観点から推奨できない。好適には、インキ組成物のベンゾフェノン型化合物の含有量は、8重量%以下である。
【0098】
適切なベンゾフェノン型化合物は、分子量が170〜500の有機化合物であり、本質的に置換ベンゾフェノンより成るものである。適切な置換基は、アルキル基、アクリル基、芳香族基、ハロゲンなどである。適切なベンゾフェノン型化合物としては、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、アクリル化ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノンなどがある。好適には、このベンゾフェノン型化合物は、環−結合ベンゾフェノンではない。チオキサントンまたはそれらの誘導体、例えば2,4−ジエチル−または9−イソブロピル−チオキサントンのような環−結合ベンゾフェノンは、分離特性の改良に効果が少ない。
【0099】
好ましくは、本発明のインキ組成物は、ベンゾフェノン型化合物に対して水素抽出開始助剤として作用するアミノ化合物を含まないか、含んでも少量である。
【0100】
本発明のインキ組成物には、通常、0.5重量%以下、好適には0.1重量%以下のアミン型水素抽出化合物が含まれてもよい。それでも、モルホリン型増感剤は、4重量%まで、好適には3重量%以下の量が用いられる。
【0101】
上記事項に基づいて、適切な輻射線硬化性インキ組成物は、インキ組成物の総重量を基準にして、可視光線を吸収する約1〜約20重量%の少なくとも1種の顔料;
約1〜約25重量%の少なくとも1種の光開始剤;と
少なくとも輻射線硬化性モノマーまたはオリゴマーを含有する、約55〜約98重量%の輻射線硬化性キャリアー系;
を含む組成物から調製される。
【0102】
好適なインキ組成物は、
インキ組成物の総重量を基準にして、可視光線を吸収する約1〜約20重量%の少なくとも1種の顔料;
約1〜約80重量%の少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマー;
約1〜約80重量%の少なくとも1種の輻射線硬化性希釈剤モノマー;と
約1〜約20重量%の少なくとも1種のインキ硬化速度増進光開始剤;
を含む組成物より調製される。
【0103】
インキ硬化速度増進光開始剤の好適量は、約1.5〜約20重量%、より好適には約4〜約15重量%である。
【0104】
輻射線硬化性オリゴマーの好適量は、インキ組成物の総重量を基準にして、約10〜約70重量%、より好適には約20〜約60重量%である。
【0105】
輻射線硬化性希釈剤モノマーの好適量は、インキ組成物の総重量を基準にして、約10〜約70重量%、より好適には約20〜約60重量%である。
【0106】
好適には、インキ組成物は、インキ組成物の総重量を基準にして、約1〜約20重量%、より好適には約1〜約10重量%の他種光開始剤含む。
【0107】
光ファイバーインキの輻射線硬化は、輻射線源に応じて変化する特有の発光出力を有する、輻射線源を用いて実施する。代表的な輻射線源は、例えばフュージョンUVシステム社または岩崎電気社から入手できる。例えば、所謂「D−ランプ」と「H−ランプ」が輻射線源として使用でき、D−ランブは、H−ランプに比較して、長波長紫外線発光の点で優れている。産業界で使用する代表的工業用紫外輻射線源は、260、300、313と366nmの範囲近くに、より一般的には約250〜270nm、約290〜320nmと約360〜380nmに、主要発光ラインを有する。加えて、約390〜410nmにもラインがある。本発明で用いる特有のバルブ出力は、慣用の方法で測定するか、または輻射線源の供給業者から提供される。好適には、本発明のインキ組成物は、HおよびDランプの両方を用いた照射により硬化する。
【0108】
好適には、本発明の着色コーテイング組成物は、未反応アクリレート不飽和が15%以下になるように、十分なエネルギーで硬化させる。適切な照射エネルギー値は、0.05〜2J/cm2、好適には0.1〜1.5J/cm2である。さらに、0.5J/cm2より低い値が特に好ましい場合がある。
【0109】
また、本発明は、適切に硬化したとき、外層一次コーテイングに対して高められた接着力をもつインキ組成物を提供する。驚くべきことに、外層一次コーテイングに対するインキコーテイングの接着力は、インキ組成物中のモノマーを外層一次コーテイングに如何にうまく吸着させるかにより達成されることが判明した。一般的に、外層一次コーテイング中へのモノマーの吸着が大きいほど、外層一次コーテイングに対する硬化インキコーテイングの接着力が大きくなる。
【0110】
個々の光ガラスファイバーに対するミッド−スパンアクセス(mid−spanaccess)中に、インキコーテイングが外層一次コーテイングから分離するならば、個々の光ガラスファイバーの確認は困難であり、場合により不可能にもなる。本発明を用いるならば、外層一次コーテイングに対するインキコーテイングの接着力は容易に調整可能であり、マトリックス材に対するよりも外層一次コーテイングに対して大きい接着力を有するインキコーテイングを提供し、得られたリボンアッセンブリーは、個々の光ガラスファイバーに対してミッドースパンアクセスを可能し、このアクセス中に外層一次コーテイングからインキコーテイングの望まない層状剥離を回避できる。
【0111】
好ましくは、インキ組成物中に存在するモノマーは、少なくとも約10、好適には少なくとも約7、最適には少なくとも約10の外層一次吸着指数を示す。
【0112】
モノマーの吸着指数は、インキ組成物を用いた外層一次コーテイングを75ミクロン厚に引き伸ばした層を作成して、適切な試験により測定できる。そして、引き伸ばし層に輻射線を照射して適切に硬化させ、2インチ×2インチのサンプル片に切断する。この試験片を、大気圧下、室温(25℃)で、30分間、所望のインキコーテイング中に含まれるモノマーに浸漬する。サンプルのもとの重量に対する百分率で表したサンプルの重量増加量を、以下に示すように外層一次吸着指数の決定に用いる。
【0113】
外層一次吸着指数:
1=0.1%重量増加
2=0.2%重量増加
3=0.3%重量増加
4=0.4%重量増加
5=0.5%重量増加
6=0.6%重量増加
7=0.7%重量増加
8=0.8%重量増加
9=0.9%重量増加
10= 1%重量増加
【0114】
このように、吸着指数が5のものでは、サンプルは、モノマーに30分間浸漬した後には、約0.5%重量増加した。
【0115】
モノマー量は、外層一次コーテイングとインキコーテイング間の所望する接着水準を与えるように選択できる。一般的に、少なくとも約5の吸着指数を有するモノマーの量が増えるほど、外層一次コーテイングとインキコーテイング間の接着力は大きくなる。このようなモノマーの適正量を例示すれば、インキ組成物の総重量を基準にして、約1〜約20重量%、そして好適には約1〜約10重量%である。
【0116】
被覆、着色光ファイバーを製造するとき、液体コーテイング組成物を基材に塗布し、引き続きこれを硬化させる。通常、光ガラスファイバーに、2種の重層した輻射線硬化性コーテイングを塗布し、一次コーテイングを形成させる。内層一次コーテイングはガラスと直接接触し、外層一次コーテイングは内層一次コーテイングの表面に隣接している。本発明のインキコーテイング組成物は、調合することにより、外層一次コーテイングに対し良好な接着量を示すインキコーテイングを提供する。
【0117】
また、特別なインキ層を使用する必要性を前提として、着色外層一次コーテイングを使用してもよい。外層一次コーテイングは内層一次コーテイングによく接着し、マトリックス材は着色二次コーテイングに対して良好な分離特性をもつものであり、この着色二次コーテイングは本発明のインキコーテイングを着色二次コーテイングとして用いることにより達成できる。
【0118】
上記の実施態様は、改良輻射線硬化性インキ組成物を与えるように組み合わせて用いることができ、前記組成物は下記特性を併せて有するものである:
(i)適切に硬化したとき、外層および内層一次コーテイングからインキコーテイングまたは着色コーテイングを薄片状に剥離することなく、分離する機能をもつリボンアッセンッブリーを提供する;
(ii)適切に硬化したとき、マトリックス材とインキコーテイング間に十分な接着力を提供して、薄片状に剥離に対する抵抗力を与える;
(iii)大気を含む酸素存在下で高められた硬化速度を示し、不活性雰囲気を提供する必要がなく、高速度で着色コーテイングを形成できる。
【0119】
インキコーテイング組成物を被覆光ガラスファイバーに塗布し、適切な方法を用いて硬化させてもよい。適切な方法の例は、米国特許第4,629,285号に開示されており、その全文を参考文献としてここに編入する。また、インキ組成物は、光ガラスファイバーの紡糸およびコーテイング塔における外層一次コーテイングの塗布と同様な手段で塗布してもよい。
【0120】
本発明のインキコーテイング組成物は、汎用性があるため、リボンアッセンブリーの被覆光ガラスファイバー用として適している。被覆ファイバーの多数の各ストランドをリボンやケーブルのような大きい構造体に包含して、効率を最大限に引き出す。当業者であれば、ここに開示した技術を利用することは容易であり、所望する用途に向けて、改良インキ被覆光ガラスファイバーの少なくとも1種を含む新規リボンアッセンブリーを製造できる。
【0121】
本発明に従って作成した新規リボンアッセンブリーは、遠隔通信システムに使用できる。このような遠隔通信システムは、通常、光ガラスファイバーを含むリボンアッセンブリー、発信機、受信機とスイッチを含んでいる。被覆光ガラスファイバーを含むリボンアッセンブリーは、遠隔通信システムの基礎的な接続ユニットである。リボンアッセンブリーは、例えば都市間のような長距離接続のために、地下または海中に埋設できる。また、リボンアッセンブリーは、居宅間の直接的接続のためにも利用できる。
【0122】
また、本発明に従って製造した新規リボンアッセンブリーは、ケーブルテレビシステムにも利用できる。
【0123】
本発明のインキ組成物は、約10ミクロン以上、約50ミクロンまでの厚みを有する、保護および/または装飾コーテイングを作成するための、輻射線硬化性着色コーテイング組成物を調合する用途に対して、驚異的な適性をもっている。
光ガラスファイバー用のインキコーテイングは、通常約3〜約10ミクロンの厚みを持つが、本発明のインキ組成物の硬化速度は、20ミクロンの厚みを用いて説明してきた。
【0124】
通常、光ガラスファイバー上にインキコーテイングを形成するために用いるインキ層の厚みが、例えば約3〜約10ミクロンというような薄いものでは、MEK摩擦値は、20ミクロンの厚みで測定したMEK摩擦値よりかなり大きくなるに違いない。一般的に、インキコーテイングの厚みが大きくなるほど、硬化速度は低下する。
【0125】
インキコーテイングに比較したとき、着色コーテイングの総重量を基準にして、低い濃度の顔料で、濃く着色したコーテイングを形成する傾向がある。着色コーテイングは、インキコーテイングより厚く塗布するので、低濃度の顔料で所望の色を得る必要がある。
【0126】
着色コーテイング組成物は、高められた硬化速度を有するので、電気製品用の如き高速製造ラインに適用可能である。また、着色コーテイング組成物は、航空機や自動車部品の塗装にも適している。
【0127】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、これに限定するものではない。
【0128】
実施例I
表1に示した成分を組み合わせて、輻射線硬化性ベース組成物を先ず作成した。
【0129】
【表1】

【0130】
96%のこのベース組成物を、4%のCGI819(チバガイギー社)と混合して、輻射線硬化性組成物を作成した。88重量%の輻射線硬化性組成物と9重量%の青色、3重量%の白色顔料を混合して、輻射線硬化性インキ組成物を作成した。
【0131】
マイラーフィルム上で、インキ組成物を20ミクロンの厚みに引き伸ばし、0.1」(ジュール)/cm2の紫外線を照射してサンプルフィルムを作成した。
【0132】
このサンプルフィルムを用いて下記の特性を試験した:
(1)MEK摩擦;
(2)未反応コーテイング;と
(3)アンダーカット。
【0133】
MEK摩擦試験は、サンプルに起きた架橋の程度を表す。一般的に、サンプルの崩壊に必要な摩擦値が大きいほど、架橋程度が大きく、かつインキ組成物は早く硬化する。
【0134】
未反応コーテイング試験は、サンプル上に残った未反応コーテイングの存在を視覚的に試験するものである。未硬化コーテイングの存在は、硬化速度を増して、選択した照射線量でインキ組成物を適切に硬化させるためには、より大量の照射線量を必要とするか、または硬化速度を高める光開始剤を大量に必要とすることを意味している。
【0135】
アンダーカット試験は、MEK摩擦試験の後にサンブルが崩壊したか否かを表す。
【0136】
試験サンブルは、200MEK(摩擦)、未反応組成物なし、アンダーカットなしを示した。
【0137】
実施例II、IIIおよび比較例A
表2と3に示した成分を混合して、2種の輻射線硬化性キャリアー系を先ず作成した。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
輻射線硬化性キャリアー系AAと表4に示す顔料を混合して、輻射線硬化性インキ組成物を作成した。輻射線硬化性キャリアー系BBと表5に示す顔料を混合して、輻射線硬化性インキ組成物を作成した。比較のために、表6に示す市販のインキコーテイング組成物を用いた(比較実験A)。
【0141】
マイラーフィルム上でインキ組成物を20ミクロンの厚さに引き伸ばし、これに0.1J/cm2の紫外線を照射してサンプルフィルムを作成した。フィルムの特性を試験して、その結果を表4〜6に示した。
【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
表4と5、と表6とを比較すると、酸素の存在下および不在下で硬化させたとき、適切な光開始剤の存在が平均%RAUの劇的な増加をもたらすことが容易に観察できる。また、適切な光開始剤の存在は、外層一次コーテイングに対する優れた接着性、と低照射線量で硬化させたときにも、マトリックス材に対する優れた剥離性を与えるインキコーテイングを提供することが観察できる。このように、本発明に従って形成したインキコーテイングは、個々の塗装光ガラスファイバーの分離が要求される場合でも、リボンアッセンブリー用として適している。
【0146】
実施例IV
下記の成分を混合してインキ組成物を作成した。
成分 全組成物中の重量%
エベクリル3700(エポキシアクリレート) 51.0
アルコキシル化脂肪族ジアクリレート 30.0
イルガキュアー8191 1.0
イルガキュアー907 3.0
ベンゾフェノン 4.0
青色顔料(ペンカラー) 1.5BYK3332 0.5
イルガキュアー8191は、チバガイギー社製である。
BYK3332は、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンである。
【0147】
実施例V
下記の成分を混合して別のインキ組成物を作成した。
成分 全組成物中の重量%
ポリウレタンアクリレート:PTMG/TDI/HEA1 60.0
エポキシ化ビスフェノール−A ジアクリレート 25.0
N−ビニル カプロラクタム 25.0
トリメチロールプロパン トリアクリレート 4.0
ルシリンTPO2 2.0
ベンゾフェノン 3.5
青色顔料(ペンカラー) 1.5
シリコーンオイル3 0.5
1 ポリテトラメチレングリコール、トルエンジイソシアネート、とヒドロキシエチル アクリレートの反応生成物
2 2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン オキシド(ルシリンTPONBASF社製)
3 シリコーンオイル=ダウ コーニング57/ダウ コーニング190の混合物、そして、
ダウ コ−ニング57:ポリエーテル変性ジメチル ポリシロキサン
ダウ コ−ニング190:シリコーングリコール コポリマー
【0148】
このインキ組成物を試験するために、ガラス板に75ミクロンの厚さで外層一次コーテイングを塗布し、D−ランブ(1J/cm2)を用いて硬化させた。次ぎに、実施例IVとVに示したように、塗布したガラス板に75ミクロンの厚さに引き延ばしたインキ組成物を塗布し、そして450nmまでの波長領域で1000mJ/cm2のエネルギーをもったD−ランプと200〜400nmの波長領域で500mJ/cm2のエネルギーをもったH−ランプの組み合わせで紫外線を照射した。
【0149】
これらの試験板を用いて、外層一次コーテイングに対するインキの接着力を測定した。
【0150】
マトリックス材とインキの接着(または分離)を試験するために、塗布およびインキ付与したガラス板を用い、そしてマトリックス材をそれらの上に塗布した。
【0151】
マトリックス材は、D−ランプを用い1J/cm2で硬化させた。D−およびH−ランプのエネルギー出力は、EIT紫外線硬化用光線バグ(bug)を用いて測定した。
【0152】
硬化したインキは、実施例IVとVに記載したように、外層一次コーテイングに対し良好な接着を示し、またマトリックスは、インキ層に対して良好な分離性を示した。
【0153】
試験方法
下記の方法を用いて、硬化したインキコーテイングの接着強度とマトリックス材の剥離性を測定した。
【0154】
(1)接着強度
インキ組成物を、外層一次コーテイングに塗布した後、ナイフでカットして、良好な接着が得られているか否かを評価した。良好な接着は(+)で表し、不良な接着は(−)、中間値は(+)と(−)の等級で表現した。
【0155】
(2)剥離性試験
インキ組成物とマトリックス材の剥離性を判定した。ナイフを用いて、硬化フィルムをカットして良好な分離が得られたか否かを評価した。インキ組成物とマトリックス材の剥離性は、肉眼によるサンプルの観察およびサンプルに触指して、インキ層上に存在するマトリックス残留物の有無を試験して評価した。マトリックス/リボン材を引っ張ったときに、インキコーテイング上に残留物が何ら残っていないことが観察されたならば、剥離性は良好(+)と評価する,もし、マトリックスの存在が確認されるか、またはインキ層がマトリックスに残るならば、剥離性は不良(−)と判定した。
【0156】
以下の試験例を検討して、試験結果を表7に収めた。
【0157】
比較例B
ベンゾフェノンを含まない実施IIの組成物。
【0158】
実施例V
上記に同じ。
【0159】
実施例VI
実施例Vの組成物に3%のエベクリル350、
但し、エベクリル350(UCB−ラドキュアー)はアクリル化シリコーン(2官能性)。
【0160】
実施例VII
以下の成分を混合して、着色二次コーテイングとして使用できる組成物を作成した。
成分 全組成物中の重量%
ポリエステルベースのウレタン アクリレート 22
ポリエーテルベースのウレタン アクリレート 20
イソボルニル アクリレート 14
エトキシル化TMPTA 17
エトキシル化ビスフェノールA ジアクリレート 16
イルガキュアー907 3
イルガキュアー819 1
青色顔料(ペンカラー) 1
二酸化チタン 2
1,6−ヘキサメチレン ジアクリレート 3
ベンゾフェノン 4
【0161】
【表7】

【0162】
ベンゾフェノンを使用したものだけが良好な分離性を示す結果になった。エベクリル350は、この特性を実質的に改良できず、しかもそれにも拘わらず、外層一次コーテイングに対するインキコーテイングの接着力を減少させる。換言すれば、剥離剤は外層一次コーテイングに対するインキコーテイングの接着力を減少するので、相当な量の剥離剤(エベクリル350のような)を使用しないことが好ましい。さらに、ベンゾフェノンが、種々のインキとマトリックス材の分離を実質的に改良していることをこれらの試験が示している。
【0163】
実施例VIII
マイラーシート上に市販の輻射線硬化性外層一次コーテイング組成物を75ミクロンの厚さに引き延ばし、1.0J/cm2の紫外線を照射して、外層一次フィルムを形成させた。硬化したフィルムを2インチ×2インチ片にカットしサンプルを作成した。このサンプルをデシケーター中に最低15分間入れた。各サンプルの初期重量を測定した。3サンプルを8種の異なるモノマーに浸漬し、1秒5秒、10秒と30秒(全経過時間)の間隔で秤量した。各モノマーに対する、各サンプルの重量変化百分率と3サンプルの平均重量変化を算出し、結果を表8に表した。
【0164】
【表8】

【0165】
【表9】

【0166】
【表10】

【0167】
表8の試験結果は、輻射線硬化性インキ組成物中に存在するモノマーが、種々の市販される外層一次コーテイングに異なる水準で吸着されることを説明している。一般的に、外層一次コーテイングに対する吸着が大きいほど、硬化したインキコーテイングと外層一次コーテイング間で得られる接着力が大きい。
【0168】
試験方法
[%RAU]
これは、予め定めた線量の紫外線を照射した後の、コーテイング表面から1〜3ミクロンの深さの硬化度を測定するためのFTIRである。ガラス板上にサンプル材を引き延ばしたものを先ず形成する。これに、予め定めた照射線量の紫外線を照射して、引き延ばしたインキを硬化させコーテイングを形成する。このコーテイングを約10mm×50mmの細片にカットする。
【0169】
未硬化、液体状のサンプルの赤外線スペクトル、と硬化サンプルの赤外線スペクトルを測定する。赤外線分析法は周知であり赤外線スペクトルを測定するためには、いかなる赤外線分析装置でも利用できる。
【0170】
未硬化液状サンプルに対するアクリレート不飽和吸収の正味ピーク面積を測定した。多くのアクリレートベースのコーテイングでは、約810cm−1における吸収が用いられた。しかし、コーテイングが810cm−1付近に強い吸収を有するシロキサンまたは他の成分を含有するときには、代替アクリレート吸収ピークを使用できる。約1410cm−1および約1635cm−1における吸収が、十分に使えることが判っている。周知の基線技術を用い、ピークのいずれもの側の吸収最下点の接線を描いて、正味ピーク面積を計測する。基線の上とピーク下の面積が正味ピーク面積である。
【0171】
それから、参照吸収を測定する。参照吸収は、液体状サンプルが硬化しても、強度変化しない。多くの配合物は、約780〜約750cm−1の範囲に吸収をもち、これが参照吸収として使える。参照吸収の正味ピーク面積を計測する。
【0172】
未硬化液体サンプルに対する、アクリレート吸収と参照吸収の比率を、下記の式:
L=AAL/ARL
[式中、AALはアクリレート吸収の正味ピーク面積であり、ARLは参照吸収の正味ピーク面積であり、そしてRLは液体サンプルに対する面積比率である]
を用いて測定する。
【0173】
硬化サンプルに対する、アクリレート吸収と参照吸収の比率を、下記の式:
C=AAC/ARC
[式中、AACはアクリレート吸収の正味ピーク面積であり、ARCは参照吸収の正味ピーク面積であり、そしてRCは硬化サンプルに対する面積比率である]
を用いて測定する。
【0174】
硬化度は、反応アクリレート不飽和百分率(%RAU)として、下記の式:
%RAU=[(RL−RC)×100%]/RL
を用いて決定する。
【0175】
[MEK摩擦試験]
下記の事項以外は、ASTM D4752に記載された試験方法を採用した。
試験サンプルに対して、材料上に軽い指圧を与えて摩擦した。
【0176】
特定の実施態様を参考にしながら、本発明を詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、本発明に対して種々の変更と変性をなし得ることは、当業者には自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色分けした光ガラスファイバーをリボンアッセンブリーから分離する機能を有するリボンアッセンブリーであって、
前記リボンアッセンブリーが:
少なくとも1本の被覆光ガラスファイバー上にインキまたは着色二次コーテイングを有する、多数の被覆光ガラスファイバー;と
前記多数の被覆光ガラスファイバーを結束するマトリックス材;
から成り、
前記着色コーテイングが輻射線硬化性コーティング組成物から形成され、該組成物が:
輻射線硬化性モノマーとオリゴマーの混合物および少なくとも1種の光開始剤を含有する輻射線硬化性キャリアー系;と
前記輻射線硬化性キャリアー系中に分散させた顔料;
から成り、
前記モノマー、オリゴマーと光開始剤を選択することにより、前記マトリックス材と前記着色コーテイング間にある接着力の水準を与える反応アクリレート不飽和平均百分率を設定し、前記マトリックス材と着色コーテイング間の該接着力の水準が、前記インキコーテイングと前記被覆光ガラスファイバー間の接着力の水準以下であって、前記インキコーテイング組成物に適切な照射線量の紫外線を照射して硬化させたときに、前記リボンアッセンブリーから前記色分けした光ガラスファイバーを分離できるようにした前記リボンアッセンブリー内に色分けを設けるように適応させた輻射線硬化性インキコーテイング組成物であって、
(a)少なくとも1種の輻射線硬化性基を有するオリゴマー、
(b)反応性希釈剤、
(c)ラジカル重合用の少なくとも約1重量%のホモリチック光開始剤、
(d)顔料、と
(e)添加剤、
から成り、且つ有効量のベンゾフェノン型化合物を含有することを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
被覆光ガラスファイバーに色分けを設けるように適応させた輻射線硬化性インキコーテイング組成物であって、
(a)少なくとも1種の輻射線硬化性基を有するオリゴマー、
(b)反応性希釈剤、
(c)ラジカル重合用の少なくとも約1重量%のホモリチック光開始剤、
(d)顔料、と
(e)添加剤、
から成り、且つ組成物は2重量%以上のベンゾフェノン型化合物を含み、
そして前記重量%は前記輻射線硬化性インキ組成物の総重量に基づいていることを特徴とする前記組成物。
【請求項3】
3重量%以上のベンゾフェノン型化合物が存在する、請求の範囲第2項に記載する組成物。
【請求項4】
ベンゾフェノン型化合物が、170〜500の分子量をもち、ベンゾフェノン基または置換ベンゾフェノン基より実質的になる有機化合物である、請求の範囲第2または3項に記載する組成物。
【請求項5】
ベンゾフェノン型化合物が環−結合ベンゾフェノンではない、請求の範囲第2〜4項のいずれか1項に記載する組成物。
【請求項6】
0.1重量%以下のアミンが存在する、請求の範囲第2〜5項のいずれか1項に記載する組成物。
【請求項7】
ホモリチック光開始剤が、式(1):
【化1】


[式中、Arは、少なくとも1種の芳香族官能基を有する炭素含有化合物を表し;
Pは、Ar3に存在する芳香族官能基に直接結合し;
1は、Ar1に存在する芳香族官能基に直接結合し;そして
2は、Ar2に存在する芳香族官能基に直接結合する]
で表される化合物であり、
そして炭素含有化合物Arの少なくとも1種は、紫外線を照射したときに
下式
【化2】


で表されるフリーラジカルの少なくとも1種を形成できる分子量と分子構造をもつ、請求の範囲第2〜6項のいずれか1項に記載する組成物。
【請求項8】
ホモリチック光開始剤が、式(2):
【化3】


[式中、Arはフェニル基であり、所望により1〜4個の炭素原子を有する1〜3個のアルキル基で置換されている]
で表される化合物である、請求の範囲第7項に記載する組成物。
【請求項9】
添加剤(e)が少なくとも潤滑剤を含む、請求の範囲第2〜8項のいずれか1項に記載する組成物。
【請求項10】
光ガラスファイバーを被覆用に改良し、且つ下記材料:
約20〜約70重量%の少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマー;
約5〜約80重量%の少なくとも1種の輻射線硬化性希釈剤;
約4〜約20重量%のホモリチック光開始剤;
約1〜約20重量%の顔料;と
約2重量%以上のベンゾフェノン型化合物;
より成る組成物から調合した、請求の範囲第2〜9項のいずれか1項に記載する輻射線硬化性インキ組成物。
【請求項11】
被覆光ファイバー上で、請求の範囲第1〜10項のいずれか1項に記載するインキ組成物を硬化する方法であって、DランプとHランプを組み合わせて用い、組成物を硬化することを特徴とする前記方法。
【請求項12】
光ガラスファイバー;
前記光ガラスファイバー表面に隣接する内層一次コーテイング;
前記内層一次コーテイング表面に隣接する外層一次コーテイング;と
前記外層一次コーテイング表面に隣接するインキコーテイング;
を含み、そしてインキコーテイングが、請求の範囲第1〜10項のいずれか1項に記載する硬化インキコーテイング組成物であることを特徴とする被覆、着色光ガラスファイバー。
【請求項13】
光ガラスファイバー;
前記光ガラスファイバー表面に隣接する内層一次コーテイング;
前記内層一次コーテイング表面に隣接する着色外層一次コーテイング;
を含み、そして外層一次コーテイングが、請求の範囲第1〜10項のいずれか1項に記載する硬化インキコーテイング組成物であることを特徴とする被覆、着色光ガラスファイバー。
【請求項14】
硬化インキコーテイング組成物が、少なくとも70%の反応アクリレート不飽和百分率を有する、請求の範囲第12〜13項のいずれか1項に記載するガラスファイバー。
【請求項15】
硬化インキコーテイング組成物が、少なくとも75%の反応アクリレート不飽和百分率を有する、請求の範囲第14項に記載するガラスファイバー。
【請求項16】
多数の被覆光ガラスファイバー;と
前記多数の被覆光ガラスファイバーを結束するマトリックス材;
を含み、そして少なくとも1本の被覆光ガラスファイバーが、請求の範囲第12〜15項のいずれか1項に記載する被覆、着色光ガラスファイバーより成ることを特徴とするリボンアッセンブリー。


【公開番号】特開2009−197233(P2009−197233A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97329(P2009−97329)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【分割の表示】特願平10−547939の分割
【原出願日】平成10年5月6日(1998.5.6)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】