説明

農作業機のボンネット

【課題】 ボンネット内の熱風を効果的に排出する放熱効果が高い農作業機のボンネットを提供することを課題としている。
【解決手段】 走行機体1の前部に設けられた前低後高状に傾斜したボンネット6の後方側部23に上向きに開口する放熱孔28を設けた。そして放熱孔28を周囲の立上部29により囲繞した。またボンネット6の側方から後方に至り設けられるエンジン4の収納用に前方が開口した凹部16を備えた外装パネル13側に、凹部16へのボンネット6の挿入時に、ボンネット6の前部内面に設けた突起部33が挿入される挿入孔31を設け、ボンネット6を、上記凹部16に前方から挿入し、突起部33を挿入孔31に挿入するとともに、後方上部を操作パネル13側に上方から固定して取り付けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植機等の農作業機のボンネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来乗用田植機等の農作業機のボンネットに、エンジンルーム内の熱気をボンネットから逃がすための放熱孔が設けられているものが公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−18号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記放熱孔はボンネットの側面に設けられた水平方向のスリット状をなす。通常エンジンの作動中はエンジンルーム内の熱気は側方に向かって吹き、作動していたエンジンが停止するとエンジンルーム内の熱気が対流によって上昇する。このため上記放熱孔は対流等によって上昇する熱気の排出への対応が不十分となり、エンジンルーム内の温度上昇を効率よく抑えることができないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の農作業機のボンネットは、走行機体1の前部にボンネット6を設け、該ボンネット6が前低後高状に傾斜した形状をなす農作業機において、上記ボンネット6の後方側部23に上向きに開口する放熱孔28を設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
また、放熱孔28の周囲に立上部29を設け、放熱孔28を立上部29により囲繞したことを第2の特徴としている。
【0006】
そして、ボンネット6の側方から後方に至り、エンジン4の収納用に前方が開口した凹部16を備えた農作業機の外装パネル13を設け、走行機体1の機体フレーム1aから上方に突出し、上部に操作部8を有する操作パネル7をボンネット6の後方に配置し、ボンネット6を、上記外装パネル13の凹部16に前方から挿入可能とし、ボンネット6の前方部分に後方に向かって突出する突起部33を設け、外装パネル13側に、凹部16へのボンネット6の挿入時に、ボンネット6の突起部33が挿入される挿入孔31を設け、ボンネット6を、上記凹部16に前方から挿入し、突起部33を挿入孔31に挿入するとともに、後方上部を操作パネル13側に上方から固定して取り付けるように構成したことを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
エンジンの作動中はエンジンルーム内の熱気は側方に向かって吹き、作動していたエンジンが停止するとエンジンルーム内の熱気が対流によって上昇する。つまりエンジンルーム内の熱気は側方又は上方に向かって流れ、このためこれらの熱気はボンネットの後方側部に上向きに設けられているボンネットの放熱孔から円滑に抜け、エンジンルーム内の温度上昇が効率よく抑えられるという効果がある。
【0008】
また放熱孔の周囲に立上部を設け、放熱孔を立上部により囲繞することによって、放熱孔の上方に燃料の給油孔が位置し、給油孔からの燃料給油時に燃料が給油孔から垂れても、垂れた燃料は立上部によって放熱孔内に入り込むことはなく、垂れた燃料が放熱孔からエンジンルーム内に入り込むという不都合を防止することができる。
【0009】
そしてボンネットを、農作業機の外装パネルの凹部に前方から挿入し、ボンネットの突起部を外装パネルの挿入孔に挿入するとともに、ボンネットの後方上部を操作パネル側に上方から固定して取り付けるように構成することにより、ボンネットの突起部を外装パネルの挿入孔に挿入することによってボンネットが取り付け位置に概ね位置合わせされる。
【0010】
これによりボンネットの取り付け時の大まかな位置合わせを簡単に行うことができ、加えてボンネットの取り付け位置が概ね合っていることによって、ボンネットの後方側の取り付け位置合わせを微調節の範囲で簡単に行うことができ、さらに両者の取り付け作業を上方から容易に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本ボンネットを採用した農作業機である乗用田植機の側面図である。走行機体1が左右の前輪2及び後輪3に支持されている。走行機体1のフレーム(機体フレーム)1aの前方側にエンジン4が搭載されている。エンジン4は樹脂製のボンネット6によって前方,上方,左右両側方が覆われている。
【0012】
ボンネット6の後方には上面に操作部8が設けられた操作パネル7が機体フレーム1a側から立設されている。操作部8には各種スイッチや警報等が配されている。操作部8からはステアリングハンドル9が突出している。操作パネル7の上方側はステアリングポストに固定されている。
【0013】
エンジン4の上方にはボンネット6から突出して燃料タンク11が設けられている。燃料タンク11はステアリングポストに固定されて取り付けられている。燃料タンク11の上面には給油キャップ12が取り付けられた燃料供給用の給油孔が設けられている。給油キャップ12を外して燃料を燃料タンク11に補給することができる。
【0014】
図2,図3に示されるように、ボンネット6の側方に突出して後方に至る樹脂製の前外装パネル13が機体フレーム1aに固定されて取り付けられている。前外装パネル13の上面には、ボンネット6の側方に位置してステップ14が一体的に設けられている。図4に示されるように、前外装パネル13は、左右方向の略中心位置に前方が開口した凹部16が設けられ、平面視で略U字状をなす。
【0015】
図4,図5に示されるように、上記凹部16内から凹部16の上方にわたってエンジン4が位置している。エンジン4の右側方には送風ファン17が設けられている。左側のステップ14の下方(前外装パネル13の裏側)にマフラ18が設けられている。ボンネット6は上記凹部16に、凹部16を覆うように挿入されて取り付けられ、エンジン4をカバーしている。ボンネット6は取り付け状態で前外装パネル13と一体的となる。
【0016】
ボンネット6は取り付け状態で燃料タンク11を避けるように、上面6Uの後端部分に窪み部19が設けられている。ボンネット6が取り付けられると窪み部19が燃料タンク11の前方部分に嵌まる。これにより燃料タンク11はボンネット6の上面6Uより上方に突出する。なお上記窪み部19にはつば部21が形成されており、窪み部19が燃料タンク11の前方部分に嵌まる際、つば部21が燃料タンク11の下面に入り込み、ボンネット6の位置は安定する。
【0017】
ボンネット6は図1〜図3に示されるように、走行機体1の先端部分に位置し、前低後高状に傾斜した形状となっている。これにより走行機体1はボンネット6の部分においてスラント形状をなしている。ボンネット6の後端位置は、エンジン4の後端位置に概ね対応している。
【0018】
ボンネット6の先端には空気の取込み口22が開口している。走行機体1の走行時には、上記取込み口22を介してボンネット6内(エンジンルーム)に空気が導入される。これにより走行機体1の走行中はエンジンルーム内において空気は熱交換によって高温となり上昇するとともに、送風ファン17によって左側方に向かって流され、最終的に左側方に向かって上昇する空気の流れが形成される。
【0019】
これにより走行機体1の走行中は、エンジンルーム内に導入される空気はエンジン4を冷却し、送風ファン17により発生する上昇しながら左側方に向かう気流がマフラ18を冷却する。ただし作動していたエンジン4が停止すると送風ファン17も停止するため左側方に向かい上昇する空気の流れは停止し、エンジン作動中に高温となった空気により上昇する気流が形成される。
【0020】
ボンネット6の側面6Sは、3段階で下方側が外側方に向かって突出している。側面6Sの上端縁は側面視において後方に向かって高くなるように湾曲している。2段目の側面23及び3段目の側面24は側面視において、後方に向かって概ね直線状に高くなるように傾斜している。1段目の側面26は湾曲状の後高形状であるため、後方に行くに従って徐々になだらかに後方が上昇する。
【0021】
ボンネット6の1段目の側面26に対して2段目の側面23は概ね同じ割合で後高して、後方に行くに従って後方が上昇する。このためボンネット6の後方側においては2段目の側面23の方が1段目の側面26に比較して急傾斜となっている。また2段目の側面23は概ね上向きの面となっている。
【0022】
左右の2段目の側面23の後方側には、エンジン4の後方部分に相対する位置に、複数の孔27からなる放熱孔28が設けられている。左右の各放熱孔28を構成する孔27は、後方に行くに従って上方に位置する。また2段目の側面23は概ね上向きの面であるため各放熱孔28を構成する孔27は上向きに開口している。
【0023】
放熱孔28が、上記のようにボンネット6の側面後方側に、後方にいくに従って徐々に高くなるように上向きに開口しているため、走行機体1の走行中は、前述のように左側方に向かって上昇する気流は、ボンネット6の左側の側面6Sの上方側に向かい、左側の放熱孔28から円滑に排出される。これにより走行中のボンネット6内の温度上昇が効率よく抑えられる。
【0024】
また作動していたエンジン4が停止すると、エンジンルーム内の上昇する気流は、ボンネット6内の上面6Uに向かうが、2段目の側面23が概ね上向きの面となっているため、上記気流は、上面6Uより下方に位置する2段目の側面23に設けられる上向きに開口した放熱孔28から円滑に排出され、作動していたエンジン4が停止した際のボンネット6内の温度上昇も効率よく抑えられる。
【0025】
一方前述の燃料タンク11の上面は前方側が下降するように傾斜している。このため燃料の補給時に誤って燃料が垂れると、垂れた燃料は前方に向かい、ボンネット6をつたって流れる。これに対して上記放熱孔28を形成する各孔27の周囲には、上方に突出する立上部29が設けられており、放熱孔28は上記立上部29により囲繞されている。
【0026】
上記のように放熱孔28が立上部29により囲繞されているため、補給時等に誤って垂れた燃料がボンネット6をつたっても、垂れた燃料が立上部29によって放熱孔28内に入り込むことはなく、垂れた燃料が放熱孔28からエンジンルーム内に入り込むという不都合が防止される。
【0027】
次にボンネット6の取り付け構造について説明する。図5に示されるように、前側外装カバー13の前端部分にはボンネット6の位置決め用の挿入孔31が設けられている。操作パネル7の上面には、左右にノブ付ボルト32が設けられている。
【0028】
ボンネット6には、図4に示されるように、前方側の内面から、上記挿入孔31に挿入される突起部(ピン)33が後方に向かって突出している。ボンネット6の上面後端には、上記ノブ付ボルト32に対応するボルト挿入部34が設けられている。なおボンネット6の上面の後方側は上記3段目の側面24から連続して形成されている。ボルト挿入部34は切欠き状となっており、ボンネット6の上面6Uの後端において開口している。
【0029】
ボンネット6を取り付ける場合は、図4に示されるように、ボンネット6を前外装パネル13の前方から凹部16に挿入し、ピン33を挿入孔31に挿入する。これによりボンネット6は取り付け位置に概ね位置合わせされる。そしてボンネット6をがたの範囲でずらすことによって、ボルト挿入部34が簡単に上記ノブ付ボルト32のボルト位置に対応する。
【0030】
ボルト挿入部34とノブ付ボルト32のボルト位置とが対応すると、ボルト挿入部34は後方が開口した切欠き状となっているため、ノブ付ボルト32のボルトに前方側から挿入される。この時点でノブ付ボルト32を締めることによって、ボンネット6の後方側が操作パネル7に固定される。
【0031】
なおボンネット6の前方部分はピン33が挿入孔31に挿入されることによって、上記前外装パネル13に係止されている。以上のようにボンネット6は、前方側が前外装パネル13に係止されて取り付けられ、後方側が操作パネル7に固定されることによって、機体フレーム1a側に取り付けられる。
【0032】
なお上記のようにボンネット6の取り付けに際して、ピン33を挿入孔31に挿入することにより、後端部分のボルト挿入部34がノブ付ボルト32のボルトの位置近傍に位置し、ボンネット6をがたの範囲でずらすことによって、ボルト挿入部34が簡単に上記ノブ付ボルト32のボルト位置に対応する。
【0033】
しかし前外装パネル13及びボンネット6は共に樹脂製であるため、誤差が存在し、ボルト挿入部34とノブ付ボルト32のボルトの位置とのずれが、ボンネット6をがたの範囲でずらす程度では吸収できない場合がある。ただしこの場合でもボルト挿入部34とノブ付ボルト32のボルトとの位置ずれは小さく、ボンネット6をわずかに変形(弾性変形)させることによって、ボンネット6と操作パネル7の固定は容易に行われる。
【0034】
特にボンネット6の前端部分がピン33と挿入孔31との係合によって位置決めされているため、ボンネット6の後端部分を取り付けのために変形させる場合も、前端部分が外れることがなく、ボンネット6の後端部分の固定作業を容易に行うことができる。以上のようにほとんどの場合ボンネット6の取り付け作業を上記のように簡単に行うことができる。
【0035】
そしてボンネット6の後端部分の固定作業は上方からノブ付ボルト32を締め込むことによって行なわれ、ノブ付ボルト32の締め込み作業や、上記ボルト挿入部34とノブ付ボルト32のボルトとの位置合わせを、作業者が立った状態で上方側から見ながら簡単に行うことができ、ボンネットの側方において位置合わせや固定作業を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】ボンネット部分の平面図である。
【図3】ボンネット部分の正面図である。
【図4】ボンネットを取り外した状態のエンジン部分の平面図である。
【図5】ボンネットを取り外した状態のエンジン部分の正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 走行機体
1a 機体フレーム
4 エンジン
6 ボンネット
7 操作パネル
8 操作部
13 前外装パネル(外装パネル)
16 凹部
23 2段目の側面(ボンネットの後方側部)
28 放熱孔
29 立上部
31 挿入孔
33 ピン(突起部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(1)の前部にボンネット(6)を設け、該ボンネット(6)が前低後高状に傾斜した形状をなす農作業機において、上記ボンネット(6)の後方側部(23)に上向きに開口する放熱孔(28)を設けた農作業機のボンネット。
【請求項2】
放熱孔(28)の周囲に立上部(29)を設け、放熱孔(28)を立上部(29)により囲繞した請求項1の農作業機のボンネット。
【請求項3】
ボンネット(6)の側方から後方に至り、エンジン(4)の収納用に前方が開口した凹部(16)を備えた農作業機の外装パネル(13)を設け、走行機体(1)の機体フレーム(1a)から上方に突出し、上部に操作部(8)を有する操作パネル(7)をボンネット(6)の後方に配置し、ボンネット(6)を、上記外装パネル(13)の凹部(16)に前方から挿入可能とし、ボンネット(6)の前方部分に後方に向かって突出する突起部(33)を設け、外装パネル(13)側に、凹部(16)へのボンネット(6)の挿入時に、ボンネット(6)の突起部(33)が挿入される挿入孔(31)を設け、ボンネット(6)を、上記凹部(16)に前方から挿入し、突起部(33)を挿入孔(31)に挿入するとともに、後方上部を操作パネル(13)側に上方から固定して取り付けるように構成した請求項1又は2の農作業機のボンネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−7839(P2006−7839A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184394(P2004−184394)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】