説明

近傍通信用アンテナ装置及び物品収納器

【課題】近傍に配置された多数の無線タグ等の通信対象との無線通信を効率良く行う。
【解決手段】書棚の各棚を形成する棚板の表面に長手方向に沿って第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路5を、互いに終端を揃えて平行に配置し、第1の漏洩伝送路4は終端部分を開放し、第2の漏洩伝送路5は終端部分を短絡部材11によって短絡する。第1、第2の漏洩伝送路4,5はケーブルを介して切替器8に接続する。切替器は無線タグ読取装置10に接続する。無線タグ読取装置は書棚にある多数の書籍に貼られた無線タグから記録データを読取るときには、第1、第2の漏洩伝送路4,5をアンテナとして交互に切替えて使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物品に付される無線タグと無線通信する無線通信装置に使用される近傍通信用アンテナ装置及び物品収納器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書籍、CD等の物品を棚に整列して管理するシステムがあり、例えば、書籍の裏表紙に無線タグを貼り付けて書棚に収納し、書棚にある複数の書籍に貼り付けてある無線タグの記録データをハンディスキャナにより1つ1つ読取ってパーソナルコンピュータに送信し管理するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、図書館や書店等において本棚や売り場に収納または展示された書籍の位置等を管理するための書籍管理システムがあり、書籍を書棚へ収納する行為を行うと書籍に貼付されたICタグが書棚に設置されたICタグ読取装置と接近し、ICタグの情報をICタグ読取装置から取得可能となり、書籍が書棚に収められていると認識するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−102947号公報
【特許文献2】特開2005−182352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来は、書棚にある複数の書籍に貼り付けてある無線タグとの通信をハンディスキャナに設けたアンテナを使用して1つ1つ読取る構成になっているので、作業効率が悪いという問題があった。
また、書棚にある複数の書籍に貼り付けてある無線タグを書棚に設置された無線タグ読取装置を使用して読み取る場合は、無線タグ読取装置から発信される電波の電界強度には低い部分があるためデータを読み込めない無線タグが生じることがあり、読取効率が悪いという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、近傍に配置された多数の無線タグ等の通信対象との無線通信を効率良く行うことができる近傍通信用アンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、互いに終端を揃えて平行に配置した、終端部分を開放した第1の漏洩伝送路及び終端部分を短絡した第2の漏洩伝送路と、通信時に各漏洩伝送路を無線通信装置に切替えに接続する切替器とを備えた近傍通信用アンテナ装置にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、近傍に配置された多数の無線タグ等の通信対象との無線通信を効率良く行うことができる近傍通信用アンテナ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1及び図2に示すように、物品収納器である書棚1に物品として多数の書籍2を並べて収納している。前記各書籍2の背には無線タグ3を貼り付けている。
【0008】
前記書棚1の物品収納部である各棚を形成する棚板の表面に長手方向に沿って第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路5を平行に配置している。前記各漏洩伝送路4,5として、例えば、フィーダ線と呼ばれる平衡二線を使用している。なお、その他、漏洩同軸ケーブルやマイクロストリップ線路等も使用できる。平衡二線は近距離においては漏れ電波によりアンテナとして使用することができる。
【0009】
前記第1、第2の漏洩伝送路4,5は一端を同軸ケーブル等のケーブル6,7を介して前記書棚1の一側面に取付けた切替手段である切替器8に接続している。そして、前記切替器8を、同軸ケーブル等のケーブル9を介して同じく前記書棚1の一側面に取付けた無線通信装置である無線タグ読取装置10に接続している。
【0010】
前記第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路5は、図3に示すように、全長がaで互いに終端を揃えて平行に配置し、第1の漏洩伝送路4は終端部分を開放しているのに対し、第2の漏洩伝送路5は終端部分を短絡部材11によって短絡している。なお、短絡としては短絡部材11による短絡のみでなく、漏洩伝送路の特性インピーダンスによる終端や抵抗による終端であってもよい。
【0011】
このような構成において、無線タグ読取装置10から送信された信号は波長λgの進行波として第1、第2の漏洩伝送路4,5内を伝送される。漏洩伝送路内を伝送された信号は第1、第2の漏洩伝送路4,5の終端で反射され、波長λgの後進波として漏洩伝送路4,5内を伝送される。漏洩伝送路4,5内には、進行波と後進波が合成されて周期λg/2の定在波が発生する。第1、第2の漏洩伝送路4,5から漏洩する電波による近傍の電界強度は実線e1及び点線e2で示すようにそれぞれ定在波と同じ周期λg/2で変動する。しかも、第1の漏洩伝送路4の終端部分を開放し、第2の漏洩伝送路5の終端部分を短絡しているので、互いの電波による電界の分布位置がλg/4だけずれる。すなわち、第1の漏洩伝送路4の電波による電界強度e1と第2の漏洩伝送路5の電波による電界強度e2はお互いの電界強度の低い部分を補完するように変動する。
【0012】
従って、無線タグ読取装置10が書棚1に並べてある書籍2に貼られている無線タグ3から記録データを読取るときには、切替器8を制御して、例えば、第1の漏洩伝送路4をアンテナとして接続する。この状態で、無線タグ読取装置10は各書籍2の無線タグ3から記録データを順次読取る。
【0013】
しかしながら、第1の漏洩伝送路4の電界強度e1には低い部分があるため記録データを読み込めない無線タグ3が生じる。そこで、無線タグ読取装置10は切替器8を制御し今度は第2の漏洩伝送路5をアンテナとして接続する。この状態で、無線タグ読取装置10は各書籍2の無線タグ3から記録データを順次読取る。これにより、第1の漏洩伝送路4では読み込めなかった無線タグ3から記録データが読み込めるようになる。
【0014】
こうして、第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路5をアンテナとして交互に切替えて使用することで書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになる。このように、第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路5を交互に切替えて使用することで、書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができ、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
【0015】
このように無線タグ読取装置10は切替器8を切替え制御して書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることになるが、切替器8の切替え頻度は各書籍2の存在確認を常に行うような場合には頻繁に行われ、また、特定の時間帯にのみ各書籍2の存在確認を行うような場合にはその時間帯にのみ行われる。すなわち、切替器8の切替え頻度は書籍2の管理の仕方によって決定される。
【0016】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、第2の漏洩伝送路の変形例について述べる。その他の構成は第1の実施の形態と同一である。
図4に示すように、第2の漏洩伝送路として平衡二線の終端部分を短絡した構成に代えて平衡二線の終端部分を開放し、かつ長さを第1の漏洩伝送路4よりも短くした第2の漏洩伝送路51を使用している。
【0017】
すなわち、前記第1、第2の漏洩伝送路4,51の始端を揃えて平行に配置し、第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路51の終端を距離Δだけ短くしている。
つまり第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路51の終端は距離Δの差を設けて配置されている。
この距離Δは、Δ=(2n−1)×λg/4(但し、nは自然数、λgは漏洩伝送路内波長)で設定される。すなわち、これは距離Δがλg/4の奇数倍であればよいことを示している。
【0018】
このように第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路51の終端の距離Δを(2n−1)×λg/4だけ短くすることで、第1、第2の漏洩伝送路4,51から漏洩する電波による近傍の電界強度はそれぞれ周期λg/2で変動し、しかも、互いの電波による電界の分布位置がλg/4だけずれる。すなわち、第1の漏洩伝送路4の電界強度と第2の漏洩伝送路51の電界強度はお互いの電界強度の低い部分を補完するように変動する。
【0019】
従って、この実施の形態においても第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路51をアンテナとして切替器8で交互に切替えて使用することで、無線タグ読取装置10は書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになり、全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができる。すなわち、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
なお、ここでは第1、第2の漏洩伝送路4,51の終端部分を開放したものについて述べたが、第1、第2の漏洩伝送路4,51の終端部分を短絡したものであってもよい。
【0020】
(第3の実施の形態)
前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5に示すように、書棚1の各棚を形成する棚板の表面に長手方向に沿って平衡二線からなる第3の漏洩伝送路12を配置している。
【0021】
前記第3の漏洩伝送路12は、一端を書棚1の一側面に取付けた無線タグ読取装置10に同軸ケーブル等のケーブル13を介して接続し、他端を前記書棚1の他側面に取付けた切替器8に同軸ケーブル等のケーブル14を介して接続している。そして、前記切替器8に平衡二線からなる第1の漏洩伝送路42と同じく平衡二線からなる第2の漏洩伝送路52を接続している。
【0022】
前記第1、第2の漏洩伝送路42、52は、図6に示すように、終端部分を開放し、かつ、始端を揃えて平行に配置するとともに第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路52の終端を距離Δだけ短くしている。
つまり第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路52の終端は距離Δの差を設けて配置されている。
このときの距離Δは、Δ=(2n−1)×λg/4(但し、nは自然数、λgは漏洩伝送路内波長)で設定される。
【0023】
このように第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路52の終端の距離Δを(2n−1)×λg/4だけ短くすることで、切替器8を切替え制御して第1の漏洩伝送路42を第3の漏洩伝送路12に接続したときと、第2の漏洩伝送路52を第3の漏洩伝送路12に接続したときとで、第3の漏洩伝送路12から漏洩する電波による近傍の電界強度はそれぞれ周期λg/2で変動し、しかも、互いの電波による電界の分布位置がλg/4だけずれる。すなわち、お互いの電界強度の低い部分を補完するように変動する。
【0024】
従って、第1の漏洩伝送路42と第2の漏洩伝送路52を切替器8で交互に第3の漏洩伝送路12に接続することで無線タグ読取装置10は第3の漏洩伝送路12をアンテナとして使用し、書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになり、全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができる。すなわち、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
【0025】
しかも、書棚1の各棚板の表面に配置される漏洩伝送路は第3の漏洩伝送路12のみであり、2本の漏洩伝送路を配置するものに比べて、漏洩伝送路間における長手方向の位置決め調整や平行度の調整が不要となる。すなわち、第1の漏洩伝送路42を第3の漏洩伝送路12に接続したときと、第2の漏洩伝送路52を第3の漏洩伝送路12に接続したときとで、第3の漏洩伝送路12から漏洩する電波による近傍の電界の分布位置を確実にλg/4だけずらすことができる。これにより、電界強度の低い部分の補完をより確実にできる。
なお、ここでは第1、第2の漏洩伝送路42,52の終端部分を開放したものについて述べたが、第1、第2の漏洩伝送路42,52の終端部分を短絡したものであってもよい。
【0026】
(第4の実施の形態)
この実施の形態は、前述した第1の実施の形態における第2の漏洩伝送路の変形例について述べる。その他の構成は第1の実施の形態と同一である。
図7に示すように、第2の漏洩伝送路として平衡二線の終端部分を短絡部材11で短絡し、かつ長さを第1の漏洩伝送路4よりも短くした第2の漏洩伝送路53を使用している。
【0027】
すなわち、前記第1、第2の漏洩伝送路4,53の始端を揃えて平行に配置し、第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路53の終端を距離Δだけ短くしている。
つまり第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路53の終端は距離Δの差を設けて配置されている。
このときの距離Δは、Δ=n×λg/2(但し、nは自然数、λgは漏洩伝送路内波長)に設定されている。すなわち、これは距離Δがλg/2の整数倍であればよいことを示している。
【0028】
このように第1の漏洩伝送路4の終端に対し、終端部分を短絡した第2の漏洩伝送路53の終端の距離Δをn×λg/2だけ短くしている。λg/2は、第1、第2の漏洩伝送路4,53の近傍の電界強度の変動周期である。従って、第1の漏洩伝送路4の終端に対し、第2の漏洩伝送路53の終端をn×λg/2だけ短くしても第2の漏洩伝送路53における電界強度の変動周期の位置は変化しない。
【0029】
従って、第1、第2の漏洩伝送路4,53から漏洩する電波による近傍の電界の分布位置のずれは、第1、第2の漏洩伝送路4,53の終端を揃えたときと同じくλg/4となる。すなわち、第1の漏洩伝送路4の電界強度と第2の漏洩伝送路53の電界強度はお互いの電界強度の低い部分を補完するように変動する。
【0030】
従って、この実施の形態においても第1の漏洩伝送路4と第2の漏洩伝送路53をアンテナとして切替器8で交互に切替えて使用することで、無線タグ読取装置10は書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになり、全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができる。すなわち、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
【0031】
(第5の実施の形態)
この実施の形態は前述した第3の実施の形態における第2の漏洩伝送路の変形例について述べる。その他の構成は第3の実施の形態と同一である。
図8に示すように、第2の漏洩伝送路として平衡二線の終端部分を短絡部材11で短絡し、かつ長さを第1の漏洩伝送路42よりも距離Δだけ短くした第2の漏洩伝送路54を使用している。
【0032】
すなわち、前記第1、第2の漏洩伝送路42,54の始端を揃えて平行に配置し、第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路54の終端を、Δ=n×λg/2(但し、nは自然数、λgは漏洩伝送路内波長)だけ短くしている。
つまり第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路54の終端は距離Δの差を設けて配置されている。
すなわち、これは距離Δがλg/2の整数倍であればよいことを示している。
【0033】
このように第1の漏洩伝送路42の終端に対し、終端部分を短絡した第2の漏洩伝送路54の終端の距離Δをn×λg/2だけ短くしている。λg/2は、第1、第2の漏洩伝送路42,54による近傍の電界強度の変動周期に相当する。従って、第1の漏洩伝送路42の終端に対し、第2の漏洩伝送路54の終端をn×λg/2だけ短くしても、第1の漏洩伝送路42による電界の分布位置と第2の漏洩伝送路53による電界の分布位置とのずれは、第1の漏洩伝送路42の終端と第2の漏洩伝送路54の終端を揃えたときと同じでλg/4のままである。
【0034】
従って、切替器8を切替え制御して第1の漏洩伝送路42を第3の漏洩伝送路12に接続したときと、第2の漏洩伝送路54を第3の漏洩伝送路12に接続したときとで、第3の漏洩伝送路12から漏洩する電波による近傍の電界強度はそれぞれ周期λg/2で変動し、しかも、互いの電界の分布位置がλg/4だけずれる。すなわち、お互いの電界強度の低い部分を補完するように変動する。
【0035】
従って、第1の漏洩伝送路42と第2の漏洩伝送路54を切替器8で交互に第3の漏洩伝送路12に接続することで無線タグ読取装置10は第3の漏洩伝送路12をアンテナとして使用し、書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになり、全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができる。
すなわち、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
【0036】
しかも、書棚1の各棚板の表面に配置される漏洩伝送路は第3の漏洩伝送路12のみであり、前述した第3の実施の形態と同様に、漏洩伝送路間における長手方向の位置決め調整や平行度の調整が不要となり、第3の漏洩伝送路12から漏洩する電波による近傍の電界の分布位置を切替器8の切替え動作により確実にλg/4だけずらすことができ、電界強度の低い部分の補完をより確実にできる。
【0037】
(第6の実施の形態)
前述した実施の形態と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
図9に示すように、平行二線からなる第1の漏洩伝送路4のみを使用し、この第1の漏洩伝送路4の一端を同軸ケーブル等のケーブル15を介して無線タグ読取装置10に接続している。
【0038】
前記第1の漏洩伝送路4は、終端部分にこの終端を開放と短絡に切替える切替手段としてダイオード16を接続している。前記第1の漏洩伝送路4は書棚の各棚を形成する棚板の表面に長手方向に沿って1本だけ配置されることになる。
【0039】
このような構成においては、無線タグ読取装置10から第1の漏洩伝送路4を介してダイオード16に直流電流が流れないときには平行二線を構成する2導体が通電しないため、終端部分は開放状態になる。また、無線タグ読取装置10から第1の漏洩伝送路4及び浮遊容量等を介してダイオード16に直流電流が流れるときには平行二線を構成する2導体が通電するので、終端部分は短絡状態になる。
【0040】
従って、第1の漏洩伝送路4の終端部分が開放しているときにこの漏洩伝送路4から漏洩する電波による近傍の電界強度と第1の漏洩伝送路4の終端部分が短絡しているときにこの漏洩伝送路4から漏洩する電波による近傍の電界強度はそれぞれ周期λg/2で変動し、しかも、互いの電界の分布位置がλg/4だけずれる。すなわち、お互いの電界強度の低い部分を補完するようになる。
【0041】
このように、無線タグ読取装置10は第1の漏洩伝送路4の終端部分を開放し、また、短絡する制御を行うことで第1の漏洩伝送路4をアンテナとして使用し、書棚1に並べてある全ての書籍2の無線タグ3から記録データを読取ることができるようになり、全ての書籍2の無線タグ3との通信を効率良く行うことができる。すなわち、無線タグ読取装置10はオペレータにほとんど作業負担をかけることなく無線タグの記録データを読取ることができる。
【0042】
しかも、書棚の各棚板の表面に配置される漏洩伝送路は第1の漏洩伝送路4のみであり、前述した第3の実施の形態と同様に、漏洩伝送路間における長手方向の位置決め調整や平行度の調整が不要となり、第1の漏洩伝送路4から漏洩する電波による近傍の電界の分布位置を終端の開放、短絡により確実にλg/4だけずらすことができ、電界強度の低い部分の補完をより確実にできる。
【0043】
なお、この実施の形態では漏洩伝送路の終端を開放と短絡に切替える切替手段としてダイオードを使用したものについて述べたがこれに限定するものではなく、機械的スイッチや半導体スイッチ等のスイッチ素子を使用して切替えを行うものであってもよい。
なお、前述した各実施の形態は物品として書籍を使用し、物品収納器である書棚に収納された書籍に貼付された無線タグを無線通信の対象としたが必ずしもこれに限定するものではなく、物品としてCDや食品、飲料等の商品を使用し、商品陳列棚に陳列された商品を無線通信の対象としたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る全体構成を示す斜視図。
【図2】同実施の形態に係る全体構成を示す正面図。
【図3】同実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る全体構成を示す正面図。
【図6】同実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る近傍通信用アンテナ装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0045】
4 第1の漏洩伝送路
5 第2の漏洩伝送路
8 切替器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の漏洩伝送路と、
漏洩電波による電界の分布位置が前記第1の漏洩伝送路とはλg/4(但し、λgは伝送線路内波長)だけずれるように構成された第2の漏洩伝送路と、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を無線通信装置に切替え接続する切替手段とを備え、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて無線通信を行うことを特徴とする近傍通信用アンテナ装置。
【請求項2】
終端部分を開放された第1の漏洩伝送路と、
終端部分を短絡された第2の漏洩伝送路と、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を無線通信装置に切替え接続する切替器とを備え、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路は終端を揃えて平行に配置され、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて無線通信を行うことを特徴とする近傍通信用アンテナ装置。
【請求項3】
終端部分を開放された第1の漏洩伝送路と、
終端部分を開放された第2の漏洩伝送路と、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を無線通信装置に切替え接続する切替器とを備え、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路は平行に配置され、
前記第1の漏洩伝送路の終端に対し、前記第2の漏洩伝送路の終端は(2n−1)×λg/4(但し、nは自然数、λgは伝送線路内波長)で設定される差を設けて配置され、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて無線通信を行うことを特徴とする近傍通信用アンテナ装置。
【請求項4】
前記無線通信装置と前記切替器の間に、前記無線通信装置に一端が接続され前記切替器に他端が接続された第3の漏洩伝送路が配置され、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて前記第3の漏洩伝送路に接続して無線通信を行うことを特徴とする請求項3記載の近傍通信用アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路の終端は開放される代わりに短絡されたことを特徴とする請求項3又は4に記載の近傍通信用アンテナ装置。
【請求項6】
終端部分を開放された第1の漏洩伝送路と、
終端部分を短絡された第2の漏洩伝送路と、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を無線通信装置に切替え接続する切替器とを備え、
前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路は平行に配置され、
前記第1の漏洩伝送路の終端に対し、前記第2の漏洩伝送路の終端はn×λg/2(但し、nは自然数、λgは伝送線路内波長)で設定される差を設けて配置され、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて無線通信を行うことを特徴とする近傍通信用アンテナ装置。
【請求項7】
前記無線通信装置と前記切替器の間に、前記無線通信装置に一端が接続され前記切替器に他端が接続された第3の漏洩伝送路が配置され、
前記無線通信装置は前記第1の漏洩伝送路と前記第2の漏洩伝送路を切替えて前記第3の漏洩伝送路に接続して無線通信を行うことを特徴とする請求項6記載の近傍通信用アンテナ装置。
【請求項8】
無線通信装置に接続した漏洩伝送路と、
この漏洩伝送路の終端を開放と短絡に切り替える切替手段とを備え、
前記無線通信装置は前記漏洩伝送路の終端を開放と短絡に切替えて無線通信を行うことを特徴とする近傍通信用アンテナ装置。
【請求項9】
切替手段をダイオードで構成し、前記ダイオードに直流電流を通電して漏洩伝送路の終端を短絡することを特徴とする請求項8記載の近傍通信用アンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載された漏洩伝送路が物品収納部に配置され、
物品収納部に収納された物品の無線タグと無線通信を行う請求項1乃至9に記載された近傍通信用アンテナ装置を備えたことを特徴とする物品収納器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−78882(P2008−78882A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254303(P2006−254303)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】