説明

送信光源及びその製造方法

【課題】波長可変機能を有する外部共振器と光変調器の間の光学結合損失を低減すると共に、外部共振器の導波路ミラー反射率を容易に設定可能な送信光源を提供する。
【解決手段】送信光源1は、(i)透過光波長を変更可能な波長可変フィルター131、(ii)波長可変フィルター131の一端に光学的に接続される閉ループ状の光導波路を含むループミラー132、(iii)ループミラー132に光学的に結合され、ループミラー132を伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる2×2光カプラ112、(iv)光カプラ112の2つのポートの各々に接続され、導波光の位相を変調することができる第1及び第2の位相変調器として動作する導波路106及び110、及び(v)導波路106及び110の出力を合波する3dB光合波器109を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信及び光情報処理に用いられる光源に関し、特に波長可変機能を有する光源と光変調器を含む送信光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットのトラフィックは急速に増加しており、これに対応すべく通信容量拡大の技術も進展している。波長分割多重通信(WDM:Wavelength Division Multiplexing)は、光ファイバに多重化される波長数を増やすことにより大容量化を行うものである。WDMに関しては、ROADM(reconfigurable optical add/ drop multiplexing)、波長ルーティングによる光クロスコネクト等の進展とあいまって、より柔軟性に優れた通信容量の拡大が活発に検討されている。これは、波長資源を単に容量拡大のみに使用するのではなく、ネットワーク機能の向上にも積極的に利用していくものである。通信容量の拡大と通信方式の高機能化は相互に関連して、低コストで安全性の高い通信システムの提供を可能にするものであり、波長可変機能を有する光送信機は、このような通信システムを構築する上で重要な機器の一つである。
【0003】
従来のWDMシステムは、一定の波長間隔を有する複数の固定波長光源を並べて用いている。固定波長光源を用いる場合、保守管理用バックアップ光源の数は使用する波長数に従って増大する。このため、バックアップ光源のコストは、システムの低コスト化を阻害する大きな要因となっていた。波長可変光源の適用により、1つのバックアップ光源で複数の波長に対応できるので、システムコストの低減が大きく進展することになる。また、切り替え速度の速い波長可変光源は、波長ルーティングにおいても新しいネットワーク機能の実現に必要不可欠な要素となっている。
【0004】
C(Conventional)帯域またはL(Long)帯域をカバーできる波長可変光源は、例えば以下の文献に開示されている。Jill D. Berger等により、可動MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを用いた波長可変光源が非特許文献1に発表されている。非特許文献1の波長可変光源は、比較的良好な光出力特性を示しているものの、製作コストや耐衝撃性の点でその実用性が懸念されている。また、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザのモード安定性を高めて、更に変調器と集積化した波長可変光源が、B. Mason等により非特許文献2に報告されているが、低コスト化や信頼性の点で課題がある。一方、平面光回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)を外部共振器として用いた波長可変光源は、製作が比較的容易であることに加え、MEMSのように可動部を持たないことから、製作歩留まり及び信頼性(特に耐振動性)の点で優れており、量産性に適していると考えられる。PLCを外部共振器として用いた波長可変光源に関して、幾つかの構成が提案されている。例えば、リング型共振器および半導体光増幅器を用いて構成された波長可変光源が、H. Yamazaki等により非特許文献3にて報告されている。非特許文献3の報告によれば、波長可変範囲、光出力等の面で良好な特性が得られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jill D.Berger et al.、Optical Communication, 2001. ECOC '01. 27th European Conference on、Vol. 2, 30、p.198-199
【非特許文献2】Mason et al.、IEEE Photonics Letters、Vol. 11、NO. 6、1999、p.638-640
【非特許文献3】Yamazaki et al.、30th European Conference on Optical Communication 2004,th 4.2.3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献3に開示されているようなPLCを外部共振器として用いた波長可変光源は、リング型共振器および半導体光増幅器により素子全体の共振器が形成されている。このため、リング型共振器および半導体光増幅器と同一の基板上に光変調器をさらに集積するには、外部共振器の構成を保ったまま、外部共振器と光変調器部の間を低損失で光学結合する必要がある。即ち、適当な反射率を有するミラー部を実現するとともに、外部共振器と光変調器部との間の光学結合を行うことが可能な新たな構造が必要とされる。
【0007】
波長可変機能を有する光源と光変調器を内蔵する光送信機の小型化には、光源と光変調器を同一基板上に集積する事が有効である。外部共振器及び半導体光増幅器を有する波長可変光源と光変調器を集積する一般的な方法は、外部共振器の導波路端面(ミラー面)と光変調器の導波路端面を近接させて配置し、外部共振器のミラー面から放出される光波を光変調器の導波路端面に光学結合させることである。この場合、外部共振器端面と光変調器端面を完全に接触させてしまうと、導波路端面ミラーの光学反射率を最適な値に設定することが困難となる。よって、外部共振器の導波路端面と光変調器の導波路端面の間には、適当な空隙が必要となる。しかしながら、導波路間に空隙が存在すると光波伝搬時に回折損失が生じるために、導波路間の光学結合を十分に低減することができなくなる。即ち、光学的結合損失の低減と導波路ミラー反射率の最適設定を両立させることは、必ずしも容易ではない。
【0008】
本発明は、波長可変機能を有する外部共振器と光変調器の間の光学結合損失を低減すると共に外部共振器の導波路ミラー反射率を容易に設定できる送信光源の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる送信光源は、(i)透過光波長を変更可能な波長可変フィルター、(ii)閉ループ状の光導波路を含むループミラー、(iii)前記波長可変フィルターの一端と前記ループミラーを光学的に接続する合分波器、(iV)前記波長可変フィルターの他端に光学的に接続される光増幅器、(v)前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子、(vi)前記2つのポートに各々接続され、導波光の位相を変調することができる第1及び第2の位相変調器、および(Vii)前記第1及び第2の位相変調器の出力を合波する合波器を有する。
【0010】
本発明の第2の態様にかかる送信光源は、(i)透過光波長を変更可能な波長可変フィルター、(ii)前記波長可変フィルターの一端に光学的に接続される閉ループ状の光導波路を含むループミラー、(iii)前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子、(iv)前記2つのポートから取り出された導波光を位相変調した後に合波することで強度変調を行う光変調器を有する。
【0011】
本発明の第3の態様にかかる送信光源の製造方法は、以下の2つのステップ(a)および(b)を含む。
(a):(i)透過光波長を変更可能な波長可変フィルター、(ii)閉ループ状の光導波路を含むループミラー、(iii)前記波長可変フィルターの一端と前記ループミラーを光学的に接続する合分波器、(iv)前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子、(v)前記2つのポートから取り出された導波光を位相変調した後に合波することで強度変調を行う光変調器、を同一の基板上にモノリシック集積すること、および
(b):前記波長可変フィルターの他端に光増幅器を光学的に接続すること。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、波長可変機能を有する外部共振器と光変調器の間の光学結合損失を低減すると共に外部共振器の導波路ミラー反射率を容易に設定可能な送信光源を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態にかかる送信光源の構成を模式的に示す平面図。
【図2】図1に示した送信光源のA−A線での断面図。
【図3】第2の実施形態にかかる送信光源の構成を模式的に示す平面図。
【図4】図3に示した送信光源のB−B線での断面図。
【図5】第3の実施形態にかかる送信光源の構成を模式的に示す平面図。
【図6】第4の実施形態にかかる送信光源の構成を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本実施の形態にかかる送信光源1の概略構成を示す平面模式図である。送信光源1は、波長可変レーザおよび光変調器を有する。より具体的に述べると、SOI基板101には、シリコン層をコア層とし、その上部のシリコン酸化膜をクラッドとする光導波路によって、波長可変機能を有する外部共振器130および光変調器133が平面光回路としてモノリシック集積されている。外部共振器130は、透過光波長を変更可能な波長可変フィルター131及びループミラー132を含む。さらに、SOI基板101上には、化合物半導体の光増幅素子(半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)116)がハイブリット実装されている。以下に送信光源1の詳細を述べる。
【0016】
SOI基板101には、第一のリング型光導波路113と第二のリング型光導波路120が直線導波路115を介して光学的に結合するように配置されている。また、第一のリング型光導波路113に光学的に結合するように直線光導波路114が近接して配置されている。更に、リング型光導波路113及び120の上部にはヒータ121及び122がそれぞれ配置されている。ヒータ121及び122は、加熱によって生じる熱光学効果で導波路113及び120の屈折率を変化させることで、導波光に対する共振条件を変更できる。
【0017】
SOA116は、その一端が直線光導波路114の一端に光学的に結合するように配置されている。また、SOA116の他端には、高反射膜117が積層されている。
【0018】
直線型光導波路102は、第二のリング型光導波路120に光学的に結合するように、導波路120に近接配置されている。導波路102の一端には、3dB光分波器103とループ型導波路104からなるループミラー132が接続されている。
【0019】
光導波路123はループ型導波路104に光学的に近接するように配置されている。これにより、方向性結合器112が構成されている。光導波路123の両端は、それぞれ位相変調機能を有する光導波路110及び106に接続されている。光導波路110及び106は、3dB光合波器109を介して出力導波路107に接続されている。出力導波路107の導波路端面には、反射防止膜108が配置されている。
【0020】
光導波路110並びに106、3dB光合波器109及び出力導波路107は、マッハツェンダー干渉計になっている。さらに位相変調用の電極105、111及び118が配置されることによって光変調器133が構成されている。光変調器133は、電流注入によるキャリアプラズマ効果を利用して導波路106及び110の屈折率を変調することによって、導波光の位相変調を行う。
【0021】
図2は、光変調器133部分に相当するA−A線での断面構造を示している。シリコン基板207とその上部に積層されたSiO層208からなるSOI基板101の上部に、光導波路106及び110に対応するノンドープシリコンのリッジ型光導波路202及び205が形成されている。その上部には、SiO膜によるクラッド層203が形成されている。また、リッジ型光導波路202及び205の両側には、n型ドーピングされたシリコン層206及び209とp型ドーピングされたシリコン層210が形成されている。nドープ型シリコン層206並びに209及びpドープ型シリコン層210は、光導波路202及び205と共に、基板に水平方向にpinダイオード構造を構成している。ドーピング層209、210及び206の上部には、電圧印加のための電極105、118及び111が積層されている。電極105と118の間あるいは電極111と118の間に電圧を印加することにより、リッジ型光導波路202及び205に電子や正孔などのキャリアを生じさせることができ、キャリアプラズマ効果による屈折率変調を施すことができる。
【0022】
以下に、図1及び図2に示した送信光源1の動作機構について詳細に述べる。上述したように、外部共振器130は、直線光導波路114、115及び102と2つのリング型光導波路120及び113を含む波長可変フィルター131及びループミラー132からなる。このような外部共振器130では、共振する特定波長の光波のみが半導体増幅器116の内部を往復進行することができるので、その共振する特定波長でレーザ発振が生じる。外部共振器130における共振波長は、2つのリング型光導波路113及び120の共振波長がそれぞれ一致したところで生じることになる。外部共振器130の共振条件をヒータ121及び122による加熱によって変更することで、レーザ発振の波長可変を行うことができる。
【0023】
レーザ発振光波の一部は、ループミラー132内部に形成された方向性結合器112により、それぞれ位相変調器として動作する光導波路110及び106に導かれる。光導波路110及び106では、電流注入によって生じるプラズマ効果によって導波光に対して位相変調が付加される。位相変調光は、3dB合波器109により合波されて、強度変調に変換される。
【0024】
本実施形態にかかる送信光源1は、出力するレーザ光の発振波長を電気的な駆動制御により変更できる。更に、送信光源1は、電気信号を光信号に変換する機能を有する光変調器133を備えており、例えば光通信用送信デバイスとして利用できる。
【0025】
上述したように、波長可変レーザと光変調器を集積するためには、レーザ素子部のミラー形成と、波長可変レーザ及び光変調器の間の低損失な光学結合を両立させる必要がある。送信光源1は、レーザ素子部のミラーとしてループミラー132を用いるとともに、方向性結合器112により一部の光を取り出し、取り出した光を光変調器133へ供給する構成としている。この構成は、波長可変レーザのミラー損失と光変調器133への光学結合利得が一致しており、原理的な光学損失損が生じない構成であり、低閾値で高効率なレーザ発振性能を得ることができる。なお、方向性結合器112での過剰損失が外部共振器130及び光変調器133の間の光学結合損失となるが、この損失は、方向性結合器112の適切な設計により十分に小さくすることが可能である。つまり、本実施の形態によれば、レーザ発振ためのミラー形成と、外部共振器130及び光変調器133の光学結合を両立させた送信光源を得ることができる。
【0026】
<第2の実施形態>
本実施形態では、外部共振器及び光変調器だけでなくさらに光増幅器も同一基板上にモノリシック集積した送信光源の例を示す。図3は、本実施の形態にかかる送信光源2の概略構成を示す平面模式図である。光増幅器304と外部共振器303及び光変調器308は、InP基板301上にモノリシック集積されている。光増幅器304側の素子端面には、高反射膜305が配置されている。一方、出力導波路107側の端面には反射防止膜302が配置されている。
【0027】
外部共振器303は、透過光波長を変更可能な波長可変フィルター309及びループミラー310を含む。波長可変フィルター309及びループミラー310の構造は、上述した波長可変フィルター131及びループミラー132と同様である。
【0028】
光増幅器304を構成する導波路コア層のバンドギャップ波長は、その他の受動光回路部である外部共振器303及び光変調器308の導波路コア層のハンドギャップ波長よりも短波側に設定するとよい。これにより、発振したレーザ光波が受動光回路部で大きく吸収されることを抑制できる。
【0029】
図4は、光変調器308部分に相当するB−B線での光導波路の断面構造を示している。n型ドーピングされたInP基板406の上部に、光コア層405及び408が形成されている。光コア層405及び408は、組成及び厚さの異なるノンドーピングのInGaAsP層が複数周期積層されてなる多重量子井戸構造で構成されている。更に光コア層405及び408の上部には、p型ドーピングされたInPクラッド層404及び409が積層されている。InPクラッド層404及び409の上部には、p型に高濃度ドーピングされたInGaAsコンタクト層410及び411が積層されている。更にInGaAsコンタクト層410及び411の上部には、コア層405及び408に電流注入を行うための電極306及び307が形成されている。また、電極306及び307の対抗電極としてInP基板406裏面には、電極407が配置されている。
【0030】
本実施形態にかかる送信光源2の動作原理は、上述した送信光源1とほぼ同様であるが、電流を注入するためのpin構造が基板に対して垂直方向に形成されている点が異なっている。送信光源2は、光変調器部(光変調器308)のpin導波路に逆バイアス電圧を印加することにより生じる量子閉じ込めシュタルク効果を利用することにより、高速の光変調が可能になる点が送信光源1よりも優れている。
【0031】
<第3の実施形態>
本実施形態では、外部共振器と光変調器との光学結合を動的に調整及び遮断できる光通信用光源の例を示す。本実施形態では、発振波長を変更する時に、光増幅器に注入する電流を遮断する必要がないので、制御系に掛かる負荷を低減することが可能となる。
【0032】
図5は、本実施の形態にかかる送信光源3の概略構成を示す平面模式図である。SOI基板509上には、外部共振器504、光変調器503、及び2×2の光スイッチ508を含む平面光回路が形成されている。2重リング波長可変フィルター501及びループミラー502を含む共振器504と光変調器503は、2×2の光スイッチ508を介して光学的に結合されている。この平面光回路の一端には、波長可変フィルター501に光学結合するようにSOA510が配置されている。更に、外部共振器504等を含む平面光回路の出力端には反射防止膜506が配置されており、SOA510の端面には高反射膜511が施されている。
【0033】
なお、外部共振器504等を含む平面光回路の断面構造は、第1の実施形態で図2を用いて説明したリッジ型光導波路構造と同様である。光変調器503部分の構造及び動作方式も第1の実施形態で述べた光変調器133と同様である。
【0034】
ヒータ512は、光スイッチ508の上部に設けられている。ヒータ512によって光スイッチ508に含まれる導波路を加熱することによって光スイッチ508が起動される。これにより、例えば、導波路513から光スイッチ508に入力される光を導波路514及び515の間で任意に分配して出力できる。つまり、ループミラー502と光変調器503の光学結合を0%から100%の範囲で変更することが可能となる。光スイッチ508は、レーザの光出力特性の微調整や、発振波長変更時に共振器504と光変調器503を光学的に分離するために用いればよい。
【0035】
<第4の実施形態>
本実施の形態では、送信光源を駆動するための制御系を具備した光送信用モジュールについて述べる。図6は、本実施の形態にかかる光送信用モジュール4を示す模式図である。光送信用モジュール4は、図1に示した送信光源1とその制御系を含む。なお、素子部分の構成は送信光源1に限られず、他の実施の形態で説明した構成(例えば送信光源2又は3)であってもよい。
【0036】
図6において、駆動回路602は、波長可変光源と光変調器が集積された送信光源601に含まれる光変調器部を駆動する。制御回路603は、送信光源601に含まれる波長可変フィルター(具体的にはヒータ121及び122)及びSOA116を制御する。インタフェース回路604は、制御信号と変調信号をそれぞれ制御回路603と駆動回路602に供給する。
【0037】
インタフェース回路604は、送信光源601と共にサブマウントキャリアに搭載することにより、モジュール内部に実装することが出来る。なお、インタフェース回路604は、送信光源1に含まれる平面光回路と同一のSOI基板上にCMOS回路としてモノリシック集積してもよい。CMOS回路と平面光回路との集積により、小型化及び実装コストの低減を図ることが可能となる。
【0038】
第1〜第3の実施形態で述べた送信光源1〜3および第4の実施形態にかかるモジュール4に含まれる送信光源601は、波長可変レーザ素子と光変調器とを光学損失を効率よく低減する方法で集積した機能素子である。このため、光通信で使用される複数の波長に対応する光信号を送信することが可能である。これらの送信光源1〜3又はモジュール4を用いることによって、波長可変レーザ素子に必要な外部共振器と光変調器を低い光学損失で集積することが可能である。この光学損失の低減によって、送信時の光出力を高くすることができる。また、レーザ素子に注入すべき電流値を低減することができるので、レーザ駆動の消費電力を低減することができる。
【0039】
また、送信光源1〜3又はモジュール4は、波長可変レーザ素子に必要な共振器ミラーと光変調器の光学結合を同時に形成することができる。このため、製造工程の簡易化、歩留まり向上を図ることができるので、製造コストの低減に寄与できる。
【0040】
また、共振器と光変調器の光学結合のために方向性結合器を使用する送信光源1又は2若しくはこれらを含む光送信用モジュールは、方向性結合器の結合長を調整することによって、波長可変レーザ素子に必要な共振器ミラーの反射率を簡易に変更することができる。つまり、素子性能の最適調整が容易であり、高性能素子を低コストで実現できる。
【0041】
また、共振器と光変調器の光学結合のために光スイッチを使用する送信光源3又はこれを含む光送信用モジュールは、波長可変レーザ素子に必要な共振器ミラーの反射率を光スイッチで動的に変更することができる。これにより、発振波長変更時やその他の必要に応じて、光変調器とレーザを光学的に分離することができる。また、光変調器とレーザの光学結合を任意に調整することができる。つまり、素子性能の動的調整や変調光の一時遮断等の操作が容易になり、制御の負荷低減及び信頼性の向上を図ることができる。
【0042】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1、2、3 送信光源
4 光送信用モジュール
101 SOI(Silicon on insulator)基板
102 直線型光導波路
103 3dB光分波器
104 ループ型光導波路
105 電極
106 位相変調用光導波路
107 出力光導波路
108 反射防止膜
109 3dB光合波器
110 位相変調用光導波路
111 電極
112 方向性結合器
113 第一のリング型光導波路
114 直線型光導波路
115 直線型光導波路
116 半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)
117 高反射膜
118 電極
120 第二のリング型光導波路
121 ヒータ
122 ヒータ
130 外部共振器
131 波長可変フィルター
132 ループミラー
133 光変調器
202 リッジ型光導波路
203 SiOクラッド層
205 リッジ型光導波路
206 nドープ型シリコン層
207 シリコン基板
208 SiO
209 nドープ型シリコン層
210 pドープ型シリコン層
301 InP基板
302 反射防止膜
303 外部共振器
304 半導体増幅器
305 高反射膜
306 電極
307 電極
308 光変調器
309 波長可変フィルター
310 ループミラー
402 SiOクラッド層
404 pドープInPクラッド層
405 ノンドープ多重量子井戸層(光コア層)
406 nドープInP基板
407 裏面電極
408 ノンドープ多重量子井戸層(光コア層)
409 pドープInPクラッド層
410 InGaAsコンタクト層
411 InGaAsコンタクト層
501 波長可変フィルター
502 ループミラー
503 光変調器
504 外部共振器
506 反射防止膜
507 電極
508 光スイッチ
512 ヒータ
509 SOI基板
510 半導体光増幅器
511 高反射膜
601 送信光源素子
602 光変調器駆動回路
603 波長可変レーザ用制御回路
604 インタフェース回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過光波長を変更可能な波長可変フィルターと、
閉ループ状の光導波路を含むループミラーと、
前記波長可変フィルターの一端と前記ループミラーを光学的に接続する合分波器と、
前記波長可変フィルターの他端に光学的に接続される光増幅器と、
前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子と、
前記2つのポートに各々接続され、導波光の位相を変調することができる第1及び第2の位相変調器と、
前記第1及び第2の位相変調器の出力を合波する合波器と、
を備える送信光源。
【請求項2】
前記合波器は、前記第1及び第2の位相変調器による位相変調を強度変調に変換する、請求項1に記載の送信光源。
【請求項3】
前記光学素子は、前記閉ループ状の光導波路に近接配置された対向導波路を含み、
前記閉ループ状の光導波路の前記対向導波路に近接する部分と前記対向導波路によって2×2光カプラが形成されている、請求項1又は2に記載の送信光源。
【請求項4】
前記光学素子は、2つのポートが前記閉ループ状の光導波路に接続され、他の2つのポートが前記第1及び第2の位相変調器に接続された2×2光スイッチを含み、
さらに前記光スイッチは、前記ループミラーから取り出す光波パワーの割合を動的に変更可能である、請求項1又は2に記載の送信光源。
【請求項5】
前記光スイッチは、マッハツェンダー型である、請求項4に記載の送信光源。
【請求項6】
前記波長可変フィルターは、
縦列接続された複数のリング型光導波路と、
前記複数のリング型光導波路の少なくとも一部の屈折率を変化させることで、共振波長を変更する手段と、
を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の送信光源。
【請求項7】
前記波長可変フィルター、前記ループミラー、前記合分波器、前記光学素子、及び前記位相変調器が同一基板上にモノリシック集積されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の送信光源。
【請求項8】
前記光増幅器は、化合物半導体により構成された光増幅器を含み、
前記波長可変フィルター、前記ループミラー、前記合分波器、前記光学素子、及び前記位相変調器は、SOI(Silicon on Insulator)基板から作成されたシリコン導波路により形成されている、請求項7に記載の送信光源。
【請求項9】
前記光増幅器は、化合物半導体により構成された光増幅器を含み、
前記光スイッチ、前記波長可変フィルター、前記ループミラー、前記合分波器、前記光学素子、及び前記位相変調器は、SOI(Silicon on Insulator)基板から作成されたシリコン導波路を含み、
前記光スイッチは、前記導波路のヒータによる加熱による熱光学効果または前記導波路への電流注入により生じるキャリアプラズマ効果により位相変調を行う、請求項4に記載の送信光源。
【請求項10】
前記第1及び第2の位相変調器は、SOI(Silicon on Insulator)基板から作成されたシリコン導波路を含み、前記導波路のヒータによる加熱による熱光学効果または前記導波路への電流注入により生じるキャリアプラズマ効果により位相変調を行う、請求項8又は9に記載の送信光源。
【請求項11】
前記光増幅器、前記波長可変フィルター、前記ループミラー、前記合分波器、前記光学素子、及び前記位相変調器を構成する光導波路が同一の化合物半導体基板上にモノリシック集積されており、
前記波長可変フィルターの共振波長及び前記第1及び第2の位相変調器の位相は、導波路内部への電流注入または電圧印加で生じる電気光学効果で導波路の屈折率を変動させることによって変更される、請求項6に記載の送信光源。
【請求項12】
前記化合物半導体上に形成された光導波路のコア層のエネルギーバンドギャップ波長は、前記波長可変フィルター及び前記第1及び第2の位相変調器部のほうが前記光増幅器よりも短波側に設定されている、請求項11に記載の送信光源。
【請求項13】
前記波長可変フィルターの共振波長を制御するための制御回路及び前記第1及び第2の位相変調器を駆動するための駆動回路をさらに備える、請求項1〜12のいずれか1項に送信光源。
【請求項14】
前記波長可変フィルターの共振波長を制御するための制御回路、前記光スイッチを制御するための制御回路、及び前記第1及び第2の位相変調器部を駆動するための駆動回路をさらに備える、請求項4に記載の送信光源。
【請求項15】
透過光波長を変更可能な波長可変フィルターと、
前記波長可変フィルターの一端に光学的に接続される閉ループ状の光導波路を含むループミラーと、
前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子と、
前記2つのポートから取り出された導波光を位相変調した後に合波することで強度変調を行う光変調器と、
を備える送信光源。
【請求項16】
前記光学素子は、前記閉ループ状の光導波路に近接配置された対向導波路を含み、
前記閉ループ状の光導波路の前記対向導波路に近接する部分と前記対向導波路によって2×2光カプラが形成されている、請求項15に記載の送信光源。
【請求項17】
前記光学素子は、2つのポートが前記閉ループ状の光導波路に接続され、他の2つのポートが前記光変調器に接続された2×2光スイッチを含み、
さらに前記光スイッチは、前記ループミラーから取り出す光波パワーの割合を動的に変更可能である、請求項15に記載の送信光源。
【請求項18】
(i)透過光波長を変更可能な波長可変フィルター、(ii)閉ループ状の光導波路を含むループミラー、(iii)前記波長可変フィルターの一端と前記ループミラーを光学的に接続する合分波器、(iv)前記ループミラーに光学的に結合され、前記ループミラーを伝搬する光波の一部を2つのポートから取り出すことのできる光学素子、(v)前記2つのポートから取り出された導波光を位相変調した後に合波することで強度変調を行う光変調器、を同一の基板上にモノリシック集積すること、および
前記波長可変フィルターの他端に光増幅器を光学的に接続すること、
を含む送信光源の製造方法。
【請求項19】
さらに前記光増幅器も前記基板上にモノリシック集積する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−177539(P2010−177539A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20072(P2009−20072)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー技術開発プログラム/高度情報通信機器・デバイス基盤プログラム/次世代高効率ネットワークデバイス技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】