説明

逆止弁

【課題】入口側流路を開口させた弁座が設けられる弁ハウジングと、弁座に着座可能な弁体と、弁体を弁座に着座する側に付勢するコイルばねとを備える逆止弁において、組立を容易とするとともに構造の簡素化を図りつつ弁体の振動を効果的に抑制可能とする。
【解決手段】コイルばね28が、弁体27の作動方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材28aを巻回して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入口側流路を開口させた弁座が設けられるとともに前記弁座を臨ませた弁室が内部に形成される弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢するようにして前記弁室に収容されるコイルばねとを備える逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図8において、入口側流路61を中央部に開口させる弁座62が弁ハウジング63に設けられ、前記弁座62に着座可能な弁体64が弁座62に着座する側にばね65で付勢されて成る逆止弁では、弁体64が、その軸線を入口側流路61の軸線に対して傾けた姿勢で弁座62に着座することがあり、その場合、弁体64の周囲に不均等な圧力分布が生じることによって、図9で示すように、弁体64の重心Gを中心として入口側流路61の軸線に対して角度φで横方向に往復作動する横振動(振り子振動)と、入口側流路61の軸線に沿って移動量xで往復する縦振動とを含む振動が持続的に発生し、しかも横振動および縦振動は連成するものであり、それぞれ独立では発生し難いものである。
【0003】
このような自励振動を抑えるために、特許文献1で開示されたものでは、弁ハウジングに固定されたガイド部材でガイドされるようにして弁体に一体に設けられる軸部に、ガイド部材に関して前記弁座とは反対側に位置する流動抵抗部材が、流体からの流動抵抗を前記弁体に付与するようにして取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1で開示されるものでは、弁体とは別部材である流動抵抗部材が弁体の軸部に取付けられており、部品点数が増加するとともに逆止弁の大型化を招くだけでなく、軸部をガイド部材に嵌合せしめた後に流動抵抗部材を軸部に取付ける作業が必要であるので組立作業が煩雑となり、構造が複雑化する可能性がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、組立を容易とするとともに構造の簡素化を図りつつ弁体の振動を効果的に抑制し得るようにした逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、入口側流路を開口させた弁座が設けられるとともに前記弁座を臨ませた弁室が内部に形成される弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢するようにして前記弁室に収容されるコイルばねとを備る逆止弁において、前記コイルばねが、前記弁体の作動方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材を巻回して構成されることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、入口側流路を開口させた弁座が設けられるとともに前記弁座を臨ませた弁室が内部に形成される弁ハウジングと、前記弁座に着座可能な弁体と、該弁体を前記弁座に着座する側に付勢するようにして前記弁室に収容されるコイルばねとを備える逆止弁において、前記コイルばねが、前記弁体の作動方向と直交する方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材を巻回して構成されることを第2の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記コイルばねが、該コイルばねを受けるようにして前記弁体に形成される受け面側に向かうにつれて小径となるようにしてテーパ状に形成されることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記弁ハウジングには、前記弁座との間に前記弁室を形成するガイド部材が取付けられ、該ガイド部材には、前記弁体に一体に設けられる軸部を同軸に囲繞して前記弁ハウジングに挿入されるとともに周方向複数箇所に出口側流路に通じる連通孔が設けられる円筒部と、前記軸部を摺動可能に嵌合するガイド孔を形成して前記円筒部の前記弁座側の端部に一体にかつ同軸に連なる支持筒部とを有し、前記支持筒部の外面が前記連通孔に向かうにつれて大径となるテーパ状に形成され、前記ガイド部材および前記弁体間に設けられる前記コイルばねの一端を受ける環状のばね受け部が、前記支持筒部の外面に設けられることを第4の特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記コイルばねの収縮時に前記ばね素材の一部が前記弁体の作動方向と直交する方向で重なるように前記コイルばねが形成されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の特徴によれば、弁体を弁座に着座する側に付勢するコイルばねが、弁体の作動方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材を巻回して構成されるので、弁体の作動方向に対して直角な方向の振動に対する抵抗をばね素材から弁体に付与するようにして、弁体の作動方向に対して直角な方向の振動すなわち横振動(振り子振動)を減衰することができ、この振動に連成して生じる振動すなわち縦振動も抑えることができる。しかも弁体の弁座からの離座時にはコイルばねの収縮によってばね素材相互間の間隔が狭まるので、コイルばねによる流動抵抗を効率良く弁体に付与することができる。したがってコイルばね自体を流動抵抗部材として機能させることができ、専用の流動抵抗部材を別途設けることを不要とし、組立性の容易化および構造の簡素化を図りながら、弁体の振動を効果的に抑制することができる。
【0013】
また本発明の第2の特徴によれば、弁体を弁座に着座する側に付勢するコイルばねが、弁体の作動方向と直交する方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材を巻回して構成されるので、弁体の作動方向の振動に対する抵抗をばね素材から弁体に付与するようにして、弁体の作動方向の振動すなわち縦振動を減衰することができ、この振動に連成して生じる振動すなわち横振動(振り子振動)も抑えることができる。しかも弁体が振動する弁体の弁座からの離座時にはコイルばねの収縮によってばね素材相互間の間隔が狭まるので、コイルばねによる流動抵抗を効率良く弁体に付与することができる。したがってコイルばね自体を流動抵抗部材として機能させることができ、専用の流動抵抗部材を別途設けることを不要とし、組立性の容易化および構造の簡素化を図りながら、弁体の振動を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明の第3の特徴によれば、コイルばねが弁体の受け面側に向かうにつれて小径となるようにしたテーパ状であるので、弁体のセンタリング効果を得ることができ、振動防止効果を高めることができ、しかもばね素材が帯板状であってもコイルばねの伸縮が容易となる。
【0015】
本発明の第4の特徴によれば、弁ハウジングに取付けられるガイド部材には、弁体の軸部を同軸に囲繞して弁ハウジングに挿入されるとともに複数の連通孔が設けられる円筒部と、軸部を摺動可能に嵌合するガイド孔を形成して円筒部の弁座側の端部に一体にかつ同軸に連なる支持筒部とを有しており、支持筒部の外面が連通孔に向かうにつれて大径となるテーパ状に形成され、コイルばねの一端を受ける環状のばね受け部が支持筒部の外面に設けられるので、ガイド部材の近傍に達した流体が支持筒部の外面でガイドされて連通孔側に流通し、流体の円滑な流通が可能となる。
【0016】
さらに本発明の第5の特徴によれば、コイルばねの収縮時には、ばね素材の一部が前記弁体の作動方向と直交する方向で重なるので、弁体の弁座からの離座時にはコイルばねの収縮によってばね素材相互間の間隔がより一層狭まることになり、コイルばねによる流動抵抗をより効果的に弁体に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態の逆止弁が設けられた燃料ポンプの一部切欠き側面図である。
【図2】図1の逆止弁の閉弁状態での拡大図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】開弁状態にある逆止弁の図2に対応した縦断面図である。
【図5】流動抵抗の有無による横振動の比較を示すグラフである。
【図6】流動抵抗の有無による縦振動の比較を示すグラフである。
【図7】第2の実施の形態の逆止弁の図2に対応した縦断面図である。
【図8】自励振動が生じる状態を説明するための従来の逆止弁の縦断面図である。
【図9】従来の逆止弁で生じる横振動および縦振動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明の第1の実施の形態について図1〜図6を参照しながら説明すると、先ず図1において、この燃料ポンプPは、たとえば車両に搭載される燃料タンク内に収納されるものであり、この燃料ポンプPのハウジング11は、該ハウジング11の下部を嵌合せしめる有底円筒状のポンプホルダ12と、前記燃料タンクの天井壁に取付けられる取付けベース部材13とで協働して保持されるものであり、前記燃料ポンプPの下部には前記燃料タンク内の燃料を濾過するフィルタ14が接続される。
【0020】
前記ハウジング11は、円筒状のハウジング主体15と、該ハウジング主体15の下部に固定される下部ブラケット(図示せず)と、前記ハウジング主体15の上部にかしめ結合される上部ブラケット17とで構成される。前記取付けベース部材13には、前記上部ブラケット17の一部を液密に嵌合せしめる連結筒18と、外側方に突出する燃料吐出管19とが一体に設けられており、連結筒18および燃料吐出管19内には出口側流路20が形成される。また前記取付けベース部材13には、前記出口側流路20から分岐した調圧通路21が形成されており、この調圧通路21は、前記出口側流路20を流通する流体としての燃料を圧力を所定圧力に調整するようにして前記取付けベース部材13に保持されるレギュレータ弁22に接続される。
【0021】
前記上部ブラケット17には、前記燃料ポンプPから吐出される燃料の燃料ポンプP側への逆流を阻止する逆止弁24Aが設けられるものであり、この逆止弁24Aの弁ハウジング25は、前記上部ブラケット17の一部を構成して前記取付けベース部材13の連結筒18内に液密に嵌合される。
【0022】
図2において、前記逆止弁24Aは、前記燃料ポンプPから吐出される燃料を導く入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる前記弁ハウジング25と、出口側流路20に常時通じる弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に固設されるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27と、該弁体27を前記弁座30に着座する側に付勢するコイルばね28とを備える。
【0023】
前記弁ハウジング25には、一端を前記燃料ポンプPのハウジング11内に通じさせる前記入口側流路29と、該入口側流路29の他端開口部を囲んで環状に形成される前記弁座30と、該弁座30側を小径端としたテーパ孔32と、該テーパ孔32の大径端に同軸に連なる挿入孔33と、該挿入孔33の他端に同軸に連なって該挿入孔33よりも大径に形成される嵌合孔34とが設けられており、前記挿入孔33および前記嵌合孔34間には環状の段部35が形成される。しかも前記弁ハウジング25の突出端には、前記嵌合孔34の一部を形成する薄肉円筒部25aが一体に設けられる。
【0024】
前記ガイド部材26は、前記嵌合孔34に嵌合されるリング板部26aと、前記挿入孔33に挿入されるようにして前記リング板部26aの内周部に連なる円筒部26bと、該円筒部26bと同軸のガイド孔36を有して前記円筒部26bの前記弁座30側の端部に同軸に連なる支持筒部26cとを一体に有し、前記嵌合孔34に嵌合された前記リング板部26aを、前記弁ハウジング25における前記挿入孔33および前記嵌合孔34間の段部35と、前記リング板部26aの外周部に係合するようにかしめられる前記薄肉円筒部25aとの間に挟持することで、前記ガイド部材26が前記弁ハウジング25に取付けられる。
【0025】
前記円筒部26bの周方向複数箇所には、前記弁室31を前記出口側流路20に通じさせる連通孔37,37…が設けられ、前記支持筒部26cの外面のうち前記円筒部26b寄りの部分は、前記連通孔37,37…に燃料を円滑に導くべく前記連通孔37,37…側に向かうにつれて大径となるテーパ面38として形成される。
【0026】
前記弁体27は、前記弁座30に着座可能な弁部40と、前記ガイド部材26における支持筒部26cのガイド孔36に摺動自在に嵌合することで該ガイド部材26で摺動自在に支持されるようにして前記弁部40に同軸に連なる軸部41を一体に有してゴムから成る。
【0027】
前記コイルばね28は、前記弁部40およびガイド部材26間に設けられるものであり、ガイド部材26における支持筒部26cの外周に前記コイルばね28の一端を受ける環状のばね受け部42が設けられ、前記弁部40の前記弁座30とは反対側の端部外周部には前記コイルばね28の他端を受ける環状の受け面43が形成される。
【0028】
前記コイルばね28は、前記弁体27の作動方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材28aを巻回して構成されるものであり、この実施の形態では、弁体27の作動方向に長い長方形の横断面形状を有する帯板状のばね素材28aを巻回して前記コイルばね28が構成され、弁体27の前記受け面43側に向かうにつれて小径となるようにしてテーパ状に形成される。
【0029】
また前記ばね素材28aは、図3で示すように、相互に平行な一対の短辺SS,SSと、相互に平行な一対の長辺LS,LSとから成る長方形の横断面形状を有するように形成され、前記長辺LS…は、前記短辺SS…のたとえば1.3倍の長さを有るように設定される。
【0030】
しかも前記コイルばね28は、図4で示すように、前記弁体27が前記コイルばね28を収縮させつつ弁部40を弁座30から離座させる開弁状態となったときには、前記ばね素材28aの一部が前記弁体27の作動方向と直交する方向で重なるように形成される。なお弁体27の閉弁状態、すなわち弁部40が弁座30に着座している状態で、前記ばね素材28aの一部が前記弁体27の作動方向と直交する方向で予め重なるようにしてもよい。
【0031】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、弁体27を弁座30に着座する側に付勢するコイルばね28が、弁体27の作動方向に長い長方形の横断面形状を有する帯板状のばね素材28aを巻回して構成されるので、弁体27の作動方向に対して直角な方向の振動に対する抵抗をばね素材28aから弁体27に付与するようにして、弁体27の作動方向に対して直角な方向の振動すなわち横振動(振り子振動)を減衰することができ、この振動に連成して生じる振動すなわち縦振動も抑えることができる。しかも弁体27の弁座30からの離座時にはコイルばね28の収縮によってばね素材28a相互間の間隔が狭まるので、コイルばね28による流動抵抗を効率良く弁体に付与することができる。したがってコイルばね28自体を流動抵抗部材として機能させることができ、専用の流動抵抗部材を別途設けることを不要とし、組立性の容易化および構造の簡素化を図りながら、弁体27の振動を効果的に抑制することができる。
【0032】
またコイルばね28が弁体27の受け面43側に向かうにつれて小径となるようにしたテーパ状であるので、弁体27のセンタリング効果を得ることができ、振動防止効果を高めることができ、しかもばね素材28aが帯板状であってもコイルばね28の伸縮が容易となる。
【0033】
また弁ハウジング25に取付けられるガイド部材26には、弁体27の軸部41を同軸に囲繞して弁ハウジング26に挿入されるとともに複数の連通孔37,37…が設けられる円筒部26bと、軸部41を摺動可能に嵌合するガイド孔36を形成して円筒部26bの弁座30側の端部に一体にかつ同軸に連なる支持筒部26cとを有しており、支持筒部26cの外面が連通孔に向かうにつれて大径となるテーパ面38として形成され、コイルばね28の一端を受ける環状のばね受け部42が支持筒部26cの外面に設けられるので、ガイド部材26の近傍に達した燃料が支持筒部26cの外面でガイドされて連通孔37,37…側に流通し、燃料の円滑な流通が可能となる。
【0034】
しかもコイルばね28の収縮時には、ばね素材28aの一部が前記弁体27の作動方向と直交する方向で重なるので、弁体27の弁座30からの離座時にはコイルばね28の収縮によってばね素材28a相互間の間隔がより一層狭まることになり、コイルばね28による流動抵抗をより効果的に弁体27に付与することができる。
【0035】
ここで流動抵抗が付与されていない弁体と、流動抵抗が付与されている弁体27とで、横方向の振動を実験によって確認すると図5で示すようになり、縦方向の振動を実験によって確認すると図6で示すようになる。
【0036】
図5において実線で示すのが流動抵抗が付与されている弁体27で生じる横方向の振動であり、二点鎖線で示すのが流動抵抗が付与されていない弁体で生じる横方向の振動であり、流動抵抗が付与されることで横方向の振動を抑制し得ることが確認できる。
【0037】
また図6において実線で示すのが流動抵抗が付与されている弁体27で生じる縦方向の振動であり、二点鎖線で示すのが流動抵抗が付与されていない弁体で生じる縦方向の振動であり、流動抵抗部28aが設けられることで縦方向の振動を抑制し得ることが確認できる。
【0038】
本発明の第2の実施の形態について図7を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみで詳細な説明は省略する。
【0039】
逆止弁24Bは、入口側流路29ならびに該入口側流路29を中央部に開口させた弁座30が設けられる弁ハウジング25と、弁室31を前記弁座30との間に形成して前記弁ハウジング25に固設されるガイド部材26と、前記弁座30に着座することを可能とするとともに前記ガイド部材26でガイドされる弁体27と、該弁体27を前記弁座30に着座する側に付勢するコイルばね44とを備える。
【0040】
前記コイルばね44は、前記弁体27の作動方向と直交する方向に長い長方形の横断面形状を有する帯板状のばね素材44aを巻回して構成されるものであり、弁体27に形成される受け面43側に向かうにつれて小径となるようにしてテーパ状に形成される。
【0041】
しかもばね素材44aは、上記第1の実施の形態と同様にして、相互に平行な一対の短辺と、該短辺の少なくとも2倍の長さを有して相互に平行な一対の長辺LS,LSとから成る長方形の横断面形状を有するように形成される。
【0042】
この第2の実施の形態によれば、弁体27を弁座30に着座する側に付勢するコイルばね44が、弁体27の作動方向と直交する方向に長い長方形の横断面形状を有する帯板状のばね素材44aを巻回して構成されるので、弁体27の作動方向の振動に対する抵抗をばね素材44aから弁体27に付与するようにして、弁体27の作動方向の振動すなわち縦振動を減衰することができ、この振動に連成して生じる振動すなわち横振動(振り子振動)も抑えることができる。しかも弁体27の弁座30からの離座時にはコイルばね44の収縮によってばね素材44a相互間の間隔が狭まるので、コイルばね44による流動抵抗を効率良く弁体に付与することができる。したがってコイルばね44自体を流動抵抗部材として機能させることができ、専用の流動抵抗部材を別途設けることを不要とし、組立性の容易化および構造の簡素化を図りながら、弁体27の振動を効果的に抑制することができる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0044】
たとえば上記各実施の形態では、ばね素材28a,44aが長方形の横断面形状を有するものであったが、長円形もしくは楕円形の横断面形状を有するばね素材を巻回してコイルばねが構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
20・・・出口側流路
24A,24B・・・逆止弁
25・・・弁ハウジング
26・・・ガイド部材
26b・・・円筒部
26c・・・支持筒部
27・・・弁体
28,44・・・コイルばね
28a,44a・・・ばね素材
29・・・入口側流路
30・・・弁座
31・・・弁室
36・・・ガイド孔
37・・・連通孔
38・・・テーパ面
41・・・軸部
42・・・ばね受け部
43・・・受け面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側流路(29)を開口させた弁座(30)が設けられるとともに前記弁座(30)を臨ませた弁室(31)が内部に形成される弁ハウジング(25)と、前記弁座(30)に着座可能な弁体(27)と、該弁体(27)を前記弁座(30)に着座する側に付勢するようにして前記弁室(31)に収容されるコイルばね(28)とを備える逆止弁において、前記コイルばね(28)が、前記弁体(27)の作動方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材(28a)を巻回して構成されることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
入口側流路(29)を開口させた弁座(30)が設けられるとともに前記弁座(30)を臨ませた弁室(31)が内部に形成される弁ハウジング(25)と、前記弁座(30)に着座可能な弁体(27)と、該弁体(27)を前記弁座(30)に着座する側に付勢するようにして前記弁室(31)に収容されるコイルばね(44)とを備える逆止弁において、前記コイルばね(44)が、前記弁体(27)の作動方向と直交する方向に長い横断面形状を有する帯板状のばね素材(44a)を巻回して構成されることを特徴とする逆止弁。
【請求項3】
前記コイルばね(28,44)が、該コイルばね(28,44)を受けるようにして前記弁体(27)に形成される受け面(43)側に向かうにつれて小径となるようにしてテーパ状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁ハウジング(25)には、前記弁座(30)との間に前記弁室(31)を形成するガイド部材(26)が取付けられ、該ガイド部材(26)には、前記弁体(27)に一体に設けられる軸部(41)を同軸に囲繞して前記弁ハウジング(25)に挿入されるとともに周方向複数箇所に出口側流路(20)に通じる連通孔(37)が設けられる円筒部(26b)と、前記軸部(41)を摺動可能に嵌合するガイド孔(36)を形成して前記円筒部(26b)の前記弁座(30)側の端部に一体にかつ同軸に連なる支持筒部(26c)とを有し、前記支持筒部(26c)の外面が前記連通孔(37)に向かうにつれて大径となるテーパ面(38)として形成され、前記ガイド部材(26)および前記弁体(27)間に設けられる前記コイルばね(28,44)の一端を受ける環状のばね受け部(42)が、前記支持筒部(26c)の外面に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の逆止弁。
【請求項5】
前記コイルばね(28)の収縮時に前記ばね素材(28a)の一部が前記弁体(27)の作動方向と直交する方向で重なるように前記コイルばね(28)が形成されることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96496(P2013−96496A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239637(P2011−239637)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】