説明

透明光酸化層薄膜形成方法

【課題】シリコーンオイルの光酸化による膜形成において、電気絶縁に富み、全波長域で透明で、かつ耐熱性や耐水性に優れた大面積薄膜を短時間に作成する方法を提供する。
【解決手段】シリコーンオイル内部に酸化剤を過不足なく貯蔵または補給するために、光励起中の光酸化反応を常時モニターして、酸化剤の飽和蒸気圧を制御する方法と光酸化反応を効果的に行うための真空紫外光源を提供することで解決する。試料や反応雰囲気を冷却し、シリコーンオイル内部の酸化剤を飽和蒸気圧以下に抑え、さらに真空紫外光源の発熱や反射鏡あるいは電極の酸化を共に防止する目的で、反射鏡と電極を一体化してその内部を冷却すると同時に、当該反射鏡とランプ放電管外壁をシリコーンオイルで光接着し、かつ試料の背面に真空紫外線波長域に感知する蛍光剤層を置くことにより、その発光強度に応じて光酸化反応の進行過程を監視して酸化剤の投入制御や励起光の制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンオイルを光酸化反応により接着やコーティングを短時間に行うために、光照射中は、塗布されたシリコーンオイル層の固化を促進させるために、シリコーンオイル内部に過不足無く酸化剤を保持させる目的で、酸化剤の蒸発を飽和蒸気圧を超えない範囲内及び溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内に制御するための光反応雰囲気及び照射光源の冷却と、その光酸化反応の進行過程を蛍光剤の発光量から光酸化反応の密度分布として監視することができるシリコーンオイルの透明光酸化層薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料表面へのガラスコーティング法としては真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD法などがある。しかし、これらのコーティング膜は薄く、かつ膜質はポーラスであり、耐水性に劣る。他方、透明接着剤としてはアクリルシアノール系の紫外線硬化樹脂があるが、250nmより短い波長の紫外線域で使えるような接着剤はシリコーンオイル光酸化接着方法による薄膜形成以外に方法は無い。
【0003】
ガラス膜形成法としては水ガラスを用いる方法があるが、ガラスの硬化反応に水分が必要なため、反応熱による発泡が透明度や接着強度や形成された膜強度に問題が残る。これに対し、シリコーンオイルを酸素雰囲気で紫外線を照射することで高密度で紫外線を透過し、更に、耐高温性、高強度、高硬度、耐水性を有するコーティング法や接着法は本発明者によって既に報告している[特許文献4、特開平2005-070243]および[特許文献5、特開平2005-070245]。一般的に、接着剤内部には水分が多いために真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどの手法で硬質膜を形成するには、基板温度を上げる必要がある。しかしこの処理によって、基板の性質が変わったり、膜に熱歪が生じたりする。このため、基板温度は270〜300℃に抑えているのが現状であり、膜が薄く、しかも、硬質である膜は実用化に至っていない。
【0004】
更に、光学材料の膜厚コーティングに関しては、特許文献1『光学素子の製造方法』には、ガラスレンズにテトライソシアネート化合物あるいはクロロシラン化合物を滴下した後、これを高速回転し、該溶液を均一に拡散させ、均一拡散された該溶液の上方から赤外ヒーター加熱を行い、加水分解による3次元架橋構造のSiO2膜を形成させた後、常温まで徐冷する方法がある。しかし、この膜も250nmより短い波長では使えない。
【0005】
又、NF3とO2の混合ガスおよびSiウエハの存在下でArFレーザーあるいはXeエキシマランプ光を照射して、室温で透明なSiO2 を積層させる方法は、本願発明者らによって[特許文献2、特開平05-102130]、[特許文献3、特開平08-088222]、に開示されている。しかしこの方法でも250nmより短い波長でも使えるような硬質薄膜はできない。
【0006】
硬質薄膜の形成に関しては、本発明者らによる非特許文献1に『ジメチルシロキサンシリコーンモノマー(SiO(CH3)2)n (ジメチルシロキサンシリコーンオイル)を塗布したガラス基板上に、酸素雰囲気でArFエキシマレーザー光を照射してシロキサン結合からメチル基を光解離させ、かつ、酸素の光励起によって生成した基底状態の酸素原子 O(3P)がSiのダングリンボンドと結合して厚さ2μmの透明SiO2硬質膜を形成させたと』と開示されているが、均一な膜厚を形成させるまでには至っていない。このシリコーンオイルは非特許文献2に開示しているように、酸素雰囲気で紫外線を照射すると光酸化によって有機シリコーンオイルを無機材料であるSiO2に変えることができる。さらに[特許文献4、特開平2005-070243]では、光学材料表面をガラスコーティングするために、被処理試料表面を予めプラズマ処理もしくは紫外線照射を施した後、酸化剤雰囲気で紫外線と赤外線の夫々を間欠的にあるいは連続的に照射しながら、シリコーンオイルを滴下し、スピン回転を開始し、均一膜厚に至ったところで回転を止め、その後も界面に紫外線と赤外線の夫々を照射してガラス薄膜を形成する方法が開示されている。さらに酸化剤として、空気、酸素、オゾン、過酸化水素、水、水蒸気が有効であることが開示されている。
【0007】
又、シリコーンオイルによる接着については、[特許文献5、特開2005-070245]に、両被接合材料表面にプラズマ処理を施した面にシリコーンオイルと酸化剤を介在させ、これらを過熱またはそのままの状態で、両方の被接合材料を重ねあわせ、それらの界面に紫外線を照射することが開示されている。さらに[特許文献6、特開2006-104046]では、異種同士のガラス材料を接着する場合の最適な条件として、シリコーンオイルの分子量が200から12万であり、室温あるいは200℃以下の温度雰囲気で被接合材料面同士を重ねあわせ、機械加圧またはガスによる雰囲気加圧により、0から30 kg/cm2の範囲で加圧または被接合部を低圧に吸引して接合面を大気圧または不活性ガスによる外圧により両者の差圧を制御しながら加圧を行い、それら接合界面に紫外線を照射することを開示している。さらに酸化剤ガスとして炭酸ガスも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願平2-410824 (特開平04-219349)
【特許文献2】特願平3-260651 (特開平05-102130)
【特許文献3】特願平6-222049 (特開平08-088222)
【特許文献4】特願2003-298124(特開2005-070243)
【特許文献5】特願2003-298158(特開2005-070245)
【特許文献6】特願2005-251257(特開2006-104046)
【特許文献7】特願2007-192117(特開2009-009075)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】村原正隆 著 塑性と加工(日本塑性加工学会誌)第27巻第30号、934〜942 (1986)
【非特許文献2】村原正隆 著 エキシマランプを用いた石英ガラスの室温接着とコーティング、セラミックス,41(6)440〜443 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、シリコーンオイルによる酸化剤雰囲気で真空紫外光照射して接着やコーティングを行う方法において、シリコーンオイル内部に混入している酸化剤を過不足なく補給することについての報告は無かった。一般に石英ガラスは二酸化珪素だけから成るガラスで、軟化点は1500℃以上、膨張係数は5〜6×10-7で急熱急冷に耐え、耐食性大、紫外線透過200nm、弾性性能も良いが、融解に1,800℃の高温を要す。一方シリコーンオイルはジメチルジクロルシランの重合体が一般に無色透明の液体で、動粘性率は0.65〜100万cSの範囲で市販されている。これらシリコーンオイルは、温度による粘性変化が小さく、凝固点が低く、化学的に不活性であり、しかも、表面張力が小さく、撥水性、消泡性、離型性、電気絶縁性などに優れている。幸いなことに、化学構造式を見ると、共に骨格にシロキサン結合(-Si-O-)結合を有し、そのSi原子にメチル基(-CH3)やエチル基(-C2H5)などが付いたものがシリコーンオイル、酸素(=O)が付いたものが石英ガラスである。本願発明者は石英ガラスが有する化学的安定性と、多くの耐性を有しながら、融解に1,800℃の高温を要すると言う加工の欠点を克服するために、骨格に同じシロキサン結合を有し、かつ、液体のシリコーンオイルに酸素雰囲気で真空紫外線照射して、Siの側鎖のメチル基を光切断し、そこに酸素原子を置換することにより石英ガラスに変質させることを研究してきた。すなわち酸化剤雰囲気で液体に紫外線を照射して固体にすることであった。1986年
【非特許文献1】に開示した如く、空気中でシリコーンオイル層に193nmのArFレーザーを照射して石英ガラス膜を作ったことを皮切りに、特許文献2〜7および非特許文献2に開示したように、シリコーンオイルに様々な酸化剤雰囲気で真空紫外線を照射して、シリコーンオイル層を光酸化してそれらの層をアモルファス石英ガラス化する過程で、コーティングによる成膜方法や接着方法を開示してきた。しかしそれらは全てにおいて反応に1時間以上の時間がかかり、しかも、照射時間を増加すると、光硬化が完全に完了するものと、不完全な場合など様々であった。その都度、真空紫外ランプの照射エネルギー密度やシリコーンオイル層と光源間の距離や雰囲気ガスなどを変化させた試行錯誤が続けられたが、再現性が悪く、光酸化の決定的な条件を見出すには至らなかった。この再現性の無さを示唆する決定的な現象が現れたのが以下の実験であった。中央部が中空の金属製試料台上にシリコーンオイルを塗布したガラス基板を載せ、光照射を試みた時、試料台がガラス基板と接触している部分は硬化したが中央の中空の部分は固まらず、試料台の形状に相応するように、境界付近から液体状シリコーンオイル層が波打つような模様を呈していた。この部分を観察すると、シリコーンオイル層の大気に接した部分に極薄膜が形成され、その下部から基板にかけてのシリコーンオイル層は全く光硬化していなかった。この現象を、初めは、試料台とガラス基板との真空紫外光の反射が影響し、試料と試料台が密着している箇所では光量が多いためだと考えた。しかし、試料台とガラス基板の境界を鏡面にして紫外線の反射効率を向上させたが、如実な変化は無かった。更に当該境界面を黒く塗り熱吸収を良くすると、光硬化が阻害されることが判明した。すなわち前述した中央部が中空の金属製試料台は熱の拡散盤の役割をし、当該ガラス基板と接触した部分は熱が拡散するため温度上昇が抑えられたが、中央の中空部は熱貯まりになり、シリコーンオイルを局所的に過熱する結果となり、シリコーンオイル層内部の酸化剤を離散させているという結論に至った。そしてその原因が酸素現不足であることが判明した。これらの考察の結果、酸化反応雰囲気の温度を下げ、温度上昇を抑えることを見出した。さらにこれを発展させて、光酸化反応系の雰囲気温度を下げることが出来ない場合には、反応雰囲気を加圧して、酸化剤を反応系から離散させない方法を見出した。すなわち、酸化剤が液体の場合には雰囲気気圧を上げ飽和蒸気圧を持続させ、あるいは気体の場合にも雰囲気気圧を上げ飽和溶解度を維持させることにより、飽和蒸気圧および飽和溶解度制御を行い、シリコーンオイル内から酸化剤を離散させない本発明の着想に到達した。さらに当該光酸化反応における酸化剤の過不足と光硬化を実時間で監視して反応制御にフィードバックする必要が生じた。しかし、これらシリコーンオイルの光酸化反応過程をモニターして、酸化剤の補給や光照射を終了させるタイミングを計測させる手法の報告も無い。また真空紫外光源の冷却と照射光量増を共に満たした照射装置の報告も無い。さらに最近スペースシャトルのハップル望遠鏡のミラーや太陽電池パネルが黒化して天体からの光受光効率が落ちていると言われている。この原因について本願発明者は、宇宙などの真空紫外線が照射されている真空中で、人工衛星搭載太陽電池パネルを支持するためのシリコーンゴム接着剤やコーティング膜から揮発した低分子シロキサンが太陽電池受光面や天体望遠鏡ミラーなどの光学面に吸着し、受光面の表面が黒化または曇る現象が現れるものと考え、真空容器の中にRTVシリコーンゴムKE106(信越化学工業株式会社製)で成膜したフィルムを放置し、100時間172nmのXe2エキシマランプ光を照射した結果、表面が黒化し、炭素が遊離したことを確認した。しかしこれらの現象を光酸化手法を用いて回避する報告は無い。従って、本願発明では、前述した課題点を解決する手段として、光励起中は、低分子シロキサン及びシリコーンオイル内部に過不足無い適量の酸化剤を保持させる方法と、この光酸化反応を常時モニターして酸化反応を制御する方法、及び光酸化反応を効果的に行うための真空紫外光源を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は前述した課題点を解決する手段として、接着やコーティングのために被接着試料面に塗布されたシリコーンオイル内部に過不足無く、空気、酸素、二酸化炭素、オゾンあるいは水分などの酸化剤を光励起中間のみ維持させることが必要である。そのために、光酸化反応雰囲気が大気中にある場合には、これら酸化剤ガスや水分が反応系外に離散することを避けるため、すなわち酸化剤の蒸発を抑える目的で、酸化反応雰囲気を有機溶媒若しくは液体酸化剤の圧力が飽和蒸気圧を超えない範囲内及び気体酸化剤の溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内で光酸化雰囲気での反応を持続させることが必要である。一般に飽和蒸気圧は最大蒸気圧と言い、その値は物質により異なり、温度の上昇と共に増す。一般に、シリコーンオイルには約250ppmの水分が含有しているが、本願発明者はこの水分が光酸化反応の酸化剤として有効なことを突き止めている。例えば、水蒸気の飽和蒸気圧は100℃で760mmHg、50℃では92.5mmHg、10℃では9.2mmHgである。さらにシリコーンオイルの希釈溶剤としてよく用いるへキサンは80.26℃で760mmHg、31.61℃で200mmHg、5.36℃で60mmHgである。また、シリコーンオイルは空気や二酸化炭素を非常に良く吸収する。これらの気体についても、本願発明者は光酸化反応の酸化剤として有効なことを突き止めている。例えば、飽和溶解度は、酸素ガスは100℃で20容量%、10℃で30容量%、二酸化炭素では10℃で100容量%と有効な光酸化剤である。この飽和溶解度は飽和溶液中における溶質の濃度で、温度によって変化する。尚、気体の液体に対する溶解度は“溶解度係数”又は“ブンゼンの吸収係数”ともいう。このようにシリコーンオイルの光酸化反応には、温度、気圧の制御が欠かせない。[特許文献6]特開2006-104046の[請求項1]には光反応温度として室温あるいは200℃以下の温度雰囲気で被接合面同士を重ね合わせることが開示されている。しかし、この記述の温度範囲では酸化剤が系外への飛散してしまう。これでは光励起時間を幾ら長く持続させても酸化反応は起こらない。すなわち酸化剤不足の雰囲気では、光の強度や照射時間を長くしても、それ以降の光酸化反応は進行しない。この酸化剤の飛散を防止するために本発明では、シリコーンオイル層と被処理試料あるいは前記光酸化反応の雰囲気などを冷却して、この酸化反応で使用する酸化剤の飽和蒸気圧を超えない範囲内及び溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内に保持するための制御方法を提供するものである。この光酸化反応において最も雰囲気温度を上昇させるのが真空紫外ランプからの熱放射である。さらに光酸化反応で使用する酸化剤が真空紫外ランプの電極や反射鏡を酸化して、励起光の反射率を低下させ、これが電極の劣化につながる。この真空紫外光源の発熱や反射鏡あるいは電極の酸化を共に防止する目的で、反射鏡と電極を一体物にしてその内部を冷却する手法も提供するものである。更に、このシリコーンオイル層の光酸化反応が進行して、シリコーンオイル中のメチル基(-CH3)が減少し、そのメチル基と酸素が置き換わると、シリコーンオイル層は徐々にガラス化して光酸化層を形成し、真空紫外線を透過するようになる。この性質を利用して、光酸化の過程を監視するために、光酸化層の背面に真空紫外線に感知させる蛍光剤層を置けば、その発光強度に応じてシリコーンオイルとガラス化の比率が監視でき、酸化剤の投入制御や励起光の制御が可能になる。この監視は蛍光層の裏面に備え付けたフォトセンサーでもできるが、励起光側から蛍光体の発光スペクトルのみをバンドパスフィルターを介してTVカメラで観察すれば、シリコーンオイルの光酸化反応の進展につれて発光強度が増加し、光酸化反応の密度分布を蛍光層の発光量の分布画像として監視できるため、高効率の光酸化反応装置を提供することができる。
【0012】
本発明では、シリコーンオイルを光酸化するために、過不足無い酸化剤供給が必要である。そこで酸化剤や溶剤の飽和蒸気圧や飽和溶解度を抑制するには、光酸化反応の雰囲気温度が高い時は、雰囲気圧力を高くする必要性があり、温度が低い時は圧力を低くしても差し支えないが高くしてはならない。一方、光酸化反応の雰囲気圧力が低い時は温度を下げねばならないが、圧力が高い時は温度を上げても良い。このためシリコーンオイル自体に光酸化反応を行わせるために+50℃から−50℃の範囲に雰囲気温度を保つことが望ましいが、内部あるいは境界に在る酸化剤ガスが液化温度まで下がると、酸素過多になると同時に真空紫外線も透過しなくなるため、経済的には光酸化反応は冷却水の温度として保てる10℃から50℃の範囲が望ましい。他方、宇宙など光酸化反応の雰囲気が真空の場合には、低分子シロキサンの吸着面に酸化剤ガスを吸着させた状態で真空紫外光が照射され、前記低分子シロキサン吸着層が光酸化反応を行い低分子シロキサンに含まれるメチル基が酸化剤の存在化で光分解するため、透明なSiO2層が形成され、遊離炭素の生成による受光面の表面の黒化の障害から免れる。
【0013】
接着やコーティング試料が潮解性であったり、シリコーンオイル内部の溶剤が揮発性であったり、光酸化反応雰囲気が高温だったりする場合には、それら酸化反応雰囲気を大気と遮断された反応容器内で処理する必要がある。この理由は、シリコーンオイル層内部に溶存またはシリコーンオイル層の界面に吸着する空気、酸素、二酸化炭素、オゾンあるいは水分などの酸化剤、または前記シリコーンオイル層内部に溶存するベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンエチルエーテルなどの炭化水素系あるいは四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどの塩化炭素系溶媒などの蒸発を抑制するために、その酸化反応に使用している酸化剤ガス又は不活性ガスで加圧することにより、シリコーンオイル中の酸化剤や溶剤の離脱を防止できる。一般に接着する場合は、[特許文献6]特開2006-104046に開示してあるように、シリコーンオイルの粘性(粘度)が高い方が効果的だが、コーティングの場合には粘度が低い方が、スピンナーによる薄膜化が容易である。そのため、溶剤で希釈して、試料に塗布した後、スピンナーの回転を速くして余分のシリコーンオイルを飛散させるのだが、粘性のあるシリコーンオイルよりも先に溶剤の方が飛散してしまい、薄膜化は無理である。そこで本発明では、反応容器内を不活性ガス又は酸化剤ガスで加圧した状態で、溶媒で希釈したシリコーンオイルを被処理試料面に塗布した後、スピンナーで薄膜化した後、徐々に減圧して、溶媒を気化させた後、反応容器内に酸化剤のガスを導入して、真空紫外ランプの光を照射して光酸化層を1層形成する。この一連の操作を繰り返すことにより多層膜やモールドが形成され、一定の膜厚や所望する任意の膜厚を形成させることや吻合を行なう方法及びその装置を提供することができる。
【0014】
本発明による光酸化膜形成は、基板や製品に塗装と同じ方法でシリコーンオイルを塗布し、塗布後酸化剤雰囲気で真空紫外線照射を行うと、透明、硬質、電気絶縁性に優れた膜が形成できるため、ガラス板を使わない大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイなどの絶縁下地膜や保護膜として利用できる。このためには被処理試料としてのフィルム材あるいは平面や曲面などの形状を有する金属、プラスチック、ガラスあるいはセラミックなどを下地材とするパネル、壁建材パネル、屋根材パネル、航空機翼上面、航空機胴体、車体面あるいは船舶デッキ面などに太陽光発電素子を形成するための電気絶縁基板としての光酸化層、あるいは太陽光発電素子の透明性、耐湿、耐水あるいは耐塩などの保護膜として、または液晶ディスプレイパネルのマザーガラスとパネル全面の透明性、耐水性、耐湿性を有する保護膜として、または光学窓表面、眼鏡レンズ、光学レンズ、光学ミラー、光学プリズム、非線形光学素子、光ファイバー端面、レーザー媒質の側面や光学面などの保護膜として利用できる。あるいは極地での風車翼の氷結防止膜、洋上風車翼の耐塩膜として利用できる。また温度差発電に供するペルチェ素子やゼーベック素子などの半導体熱電素子モジュールは耐水性、耐湿性、耐塩性あるいは耐熱性などを有する保護膜として有用である。これらの光酸化層を形成するには、シリコーンオイルをスピンコーティング、ディップコーティング、どぶ漬け、ローラー、刷毛、スプレー、あるいは被コーティング試料表面をシリコーンオイル液面に瞬間的に触れさせ、直ぐ上昇させるタッチアンドゴーコーティング方法(Touch and go coating)などによる塗布手段により均一なシリコーンオイル層形成を行う。この手法すなわち、保護膜として、シリコーンオイルの光酸化を利用して薄膜形成する手法については、[特許文献4]特開2005-070243、[特許文献5]特開2005-070245、[特許文献6]特開2006-104046及び[特許文献7]特開2009-009075に開示されている。しかし本発明では、光酸化反応における酸化剤の供給を制御して膜形成時間の短縮と形成された光酸化膜の中の未反応シリコーンオイルの存在率を低くするために、酸化剤の蒸気圧が飽和蒸気圧を超えない範囲内及び溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内にして、光励起中は過不足無く酸化剤を維持させながら光酸化層を形成する方法と装置も提供することができる。
【0015】
[請求項1]記載の発明は、光酸化層薄膜形成させるに単数若しくは複数個からなる基板を用意し、基板の前処理ステップにおいて、該基板表面を予め酸素ガス雰囲気で173nmのXe2エキシマランプなどの真空紫外光や微量酸素雰囲気あるいはアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスに混合させた酸素ガス雰囲気中で放電プラズマを照射する前処理を行なうことにより、表面を洗浄及び酸素ガスや酸素分子を吸着させ。さらにシリコーンオイルの塗布ステップにおいて、接着の場合は、それらの前処理された対の基板の間に酸化剤を混入させた粘度が500〜50,000cs(分子量:1万から10万)の高粘度のシリコーンオイルを塗布し、1kg/cm2〜10kg/cm2の圧力で加圧し、コーティングの場合は、粘度が0.65〜50csでシリコーンオイルを塗布する。それ以上の粘度では、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンエチルエーテルなどの炭化水素系あるいは四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどの塩化炭素系溶媒などの有機溶媒で希釈後、粘度が低くなったシリコーンオイルを、それぞれ該前処理された基板上にスピンコーティング、ディップコーティング、どぶ漬け、ローラー、刷毛、スプレー、あるいは被コーティング試料表面をシリコーンオイル液面に瞬間的に触れさせ、直ぐ上昇させるタッチアンドゴーコーティング方法(Touch and go coating)などによる塗布手段により均一なシリコーンオイル層形成を行なう。塗布物には、酸化剤とシリコーンオイル層を光反応させるステップにおいて、予めシリコーンオイル内部に混入する酸化剤は勿論のこと、光酸化反応中においても、シリコーンオイル層表面や内部に過不足無く、空気、酸素、二酸化炭素、オゾンあるいは水分などの酸化剤を供給光励起中間のみ維持させることが必要である。とくに、光酸化反応雰囲気が大気中にある場合には、これら酸化剤ガスや水分が光酸化反応に関与せず、反応系外に離散することを避けるため、酸化剤や有機溶媒の蒸発を抑える目的で、酸化反応雰囲気を冷却し、かつ、酸素ガス、空気、二酸化炭素などをガスフローさせることも必要である。とくに空気や酸素は真空紫外光を吸収し、シリコーンオイル層を光励起するための紫外光の透過が減衰されるため窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスで希釈した混合ガスをフローさせれば良い。他方、光酸化反応雰囲気が大気と遮断された反応容器内に在る場合には、たとえ基板温度が上昇しても、シリコーンオイル層内部の有機溶媒や酸化剤が飛散する前に、酸化剤ガスや窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスにより1気圧以上で加圧し、シリコーンオイル層に予め混入する酸化剤や有機溶媒を飛散させず、かつ、光反応中もそれらのガスで加圧することにより光酸化雰囲気での酸化反応を持続させることができる。さらに該光反応雰囲気が飽和蒸気圧を超えないようにあるいは飽和溶解度を超えないように光酸化反応の進行過程を監視するためにシリコーンオイル層を通過してきた真空紫外線を蛍光剤層で発光させることにより、シリコーンオイルの時点では吸収される光が、光酸化反応によって石英化した割合に応じて当該光の透過量が増加するため、その発光強度の変化を検知することにより光酸化反応の進行度合いを検知して酸化剤の供給や真空紫外光の照射強度および照射時間にフィードバックして高効率の透明光酸化層薄膜形成方法を行うことができるようにした発明である。
尚、[請求項1]記載の発明に関する模式的全工程図を[図12]に示す。
【0016】
[請求項2]記載の発明によると、光酸化層透明薄膜形成に用いる接着剤及び/又はコーティング剤として、低分子のシロキサン結合を有するガス状低分子シロキサン吸着層及び/又はシリコーンオイル層を用いるが、とくにシリコーンオイルの表面張力は、水や一般の合成油に比較して小さい値を示す。本発明者による測定によると、石英ガラス基板と水の接触角が28度に対し、石英ガラス基板とシリコーンオイル(KF-96:信越化学工業株式会社製)との接触角は6度と小さい。この接触角が小さい性質は基板表面での広がり易さを示し、接着層やコーティング層の基板との密着性の良さの尺度である。さらに該石英ガラス基板に前処理として希釈酸素雰囲気で2分のプラズマ照射を行なうと該石英ガラスと該シリコーンオイルの接触角は0度に成り、基板とシリコーンオイル層の密着性は強固になることを見出している。シリコーンオイルの粘度は0.65〜100万cs があり、高粘度品は6,000〜100万cs 、中粘度品は10〜5,000cs 、小粘度品は0.65〜9cs に分類される。本願発明者による測定では接着剤として用いる場合は粘度が500〜50,000cs(分子量:2万から10万)の高粘度シリコーンオイルが適し、望ましくは10,000cs(分子量6万)である。コーティングの場合は、粘度が0.65〜50csのシリコーンオイルが良い。本願発明者の測定ではシリコーンオイルの粘度が10csで100nm、50csで700nm、100csで4,000nmの膜厚が得られている。ただし100cs以上の粘度では、スピンナーによる場合は4,000nm以上の一様な膜厚塗布は難しく、しかも塗布むらが発生する。従って、高分子量シリコーンオイル、すなわち高粘度シリコーンオイルを用いてコーティングを行う場合にはベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンエチルエーテルなどの炭化水素系あるいは四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼンなどの塩化炭素系溶媒などの有機溶媒で希釈後、粘度が低くなったシリコーンオイルを塗布すると良い。ただし基板上での当該シリコーンオイルの塗布ステップにおけるスピンナー塗布では、当該有機溶媒の蒸発を抑制するために、その酸化反応に使用している酸化剤ガス又は不活性ガスで加圧することが必要であり、該高分子シリコーンオイル層を薄く成型した後、雰囲気圧力を大気圧に戻し、その後、酸化剤雰囲気で真空紫外照射を行うことにより均一な膜が形成できる。
シリコーン製品の主成分であるジメチルシロキサン中には、その生成過程に残存する低分子シロキサンを含んでおり、これが揮発し、モーターやリレーあるいはスイッチなどの電子部品の接点に付着し、その分解性生物のSiO2が電気絶縁物として作用し、接点不良を起こすことが報告されている。ところが最近宇宙空間に於ける人工衛星搭載太陽電池パネル及び望遠鏡ミラー等の光受光面が黒かすると報告されだした。一般に低分子シロキサンとは環状ポリシロキサンのことで、C8H24O4Si4、C10H30O5Si5、C12H36O6Si6、C14H42O7Si7、C16H48O8Si8、C18H54O9Si9、C20H60O10Si10のMASナンバー294, 370, 444, 518, 592, 666, 740 の質量数の低分子量のガスをさす。本発明では、宇宙などの真空雰囲気では当該低分子シロキサンがシリコーンゴムやシリコーン接着剤などから揮発して、周囲にある固体物に付着すると考える。とくに、光を受ける太陽電池やミラーなどは受光効率に影響を与えるため大問題となる。本発明者はこの受光面に吸着した低分子シロキサンの吸着層が太陽光の真空紫外線に照射されて光分解し、成分中の炭素が遊離して黒化するものと考える。そこで本発明では、低分子シロキサンの吸着面に酸化剤ガスを吸着させた状態で真空紫外光が照射されば、低分子シロキサン吸着層が光酸化反応を行い低分子シロキサンに含まれるメチル基が酸化剤の存在化で光分解するため、透明なSiO2層が形成され、遊離炭素の生成による受光面の表面の黒化の障害から免れると考える。
【0017】
[請求項3]記載の発明によると、接着やコーティングのために被接着試料面に塗布されたシリコーンオイル内部に、真空紫外線照射時に過不足無く、空気、酸素、二酸化炭素、オゾンあるいは水分などの酸化剤を持続的に供給させ、かつ、これら酸化剤ガスや水分が反応系外に離散することを避けることが必要である。一般に、大気中に放置したシリコーンオイルには約250ppmの水分が含有し、かつ、空気が16〜19容量%含有している。雰囲気を二酸化炭素があると非常に良く吸収する。従って、シリコーンオイル内部に水分、酸素、過酸化水素、オゾン、二酸化炭素などの酸化剤ガスを混入させておくと都合が良い。しかし、水分、酸素、過酸化酸素、オゾンは当該光酸化反応に必要とする真空紫外線に吸収が強く、混入量が多すぎると、シリコーンオイル層内での真空紫外線(172nmのXe2エキシマランプ光)はシリコーンオイル層の光入射表面で吸収され、表面の極薄層のみを硬化させるだけで内部には透過されない。このため内部の光酸化は進行しない。とくに水分は雰囲気温度が低くなると密度が増え、真空紫外光の透過を阻害する。凍結するとなおさらである。とくに接着の場合は、2枚の基板の間隙に酸化剤の混入したシリコーンオイルを挟むため、光照射中の酸化剤ガス投入は、コーティングに比して難しい。さらに、シリコーンオイルの光酸化反応が進むにつれ、透明アモルファスガラス(SiO2)が形成されるが、この反応の副産物として光分解したメチル基(-CH3)が内部の酸化剤と反応して水と二酸化炭素を生成する。酸化剤が過多のときは生成した水や二酸化炭素をシリコーンオイル層が硬化した内部に水や二酸化炭素が残留し内部歪や曇りの原因になる。他方、酸化剤が不足すると光分解したメチル基(-CH3)から炭素(C)が遊離して黒化の原因になる。幸いなことに副産物として生成した二酸化炭素や水は再度の真空紫外照射で光分解して酸素の供給源に成る。またメチル基は基板との接着剤としての役割を担うため、適量の酸化剤の混入が欠かせない。酸化剤としての二酸化炭素は前述した他の酸化剤に比べて172nmの真空紫外光を透過する。したがって酸化剤として適している。一方、コーティングの場合は、シリコーンオイル層の光入射面は酸化剤ガスに接しているため、酸化剤を含まないシリコーンオイルを基板に塗布した後、酸化剤ガス雰囲気に置けば良い。勿論、酸化剤が予め混入したシリコーンオイルでも良い。シリコーンオイル層は光入射面側から酸化反応が進む。すなわち、シリコーンオイルは未反応では真空紫外光の吸収が強く表面層で吸収され、内部にまで透過しない。ところが光酸化反応が進んだ酸化層は真空紫外光が透過できるようになるため、順次内部まで酸化反応が進み、最終的に裏面層を酸化させ基板まで到達し基板と密着する。従って、経験的に、シリコーンオイル層への酸化剤ガスの投入はシリコーンオイル層の表面に極薄い酸化膜ができるまでのプロセスが重要である。このように、シリコーンオイル層の光反応に於ける酸化剤投入は基板にシリコーンオイル塗布前から光照射前およびシリコーンオイル層の表面に光酸化層が形成されるまでとすることが望ましい。そしてシリコーンオイル層内部に混入した酸化剤をシリコーンオイル層から飛散させないために、液体酸化剤の圧力が飽和蒸気圧を超えない範囲内及び/又は気体酸化剤の溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内で維持させるため、反応容器が大気と接している場合は、酸化剤がガスの場合、光酸化反応温度は-50℃〜+50℃の範囲が望ましい。しかし、シリコーンオイル中には水分が混入していることが多いので、水分の凍結を避けるため、経済的には光酸化反応は冷却水の温度として保てる10℃から50℃の範囲とする。また該光酸化雰囲気が冷却できない場合には該反応容器を大気と遮断させ、該反応容器内にアルゴンガスやヘリウムガスで希釈した酸素ガスを1気圧以上に加圧した雰囲気にすることにより、シリコーンオイル内部に酸化剤ガスの飽和溶解度を上げることにより酸化反応を持続させることができる。
【0018】
[請求項4]記載の発明によると、光酸化層薄膜の形成過程を監視するために、シリコーンオイルによる形成光酸化層の背面に真空紫外線に感度を有し、450nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウムなどの蛍光剤層を置くため、その発光強度に応じて未反応シリコーンオイルとガラス化された光酸化層の比率を蛍光層の裏面に備え付けたフォトセルでもできるが、励起光側から蛍光体の発光スペクトルのみをバンドパスフィルターを介してTVカメラで観察すれば、シリコーンオイルの光酸化反応の進展につれて発光強度が増加し、光酸化反応の密度分布を蛍光層の発光量の分布画像として監視できるため、高効率の光酸化反応装置を提供することができる。
【0019】
[請求項5]記載の発明は、光酸化反応において最も雰囲気温度を上昇させるのが真空紫外ランプからの熱放射である。さらに光酸化反応で使用する酸化剤が真空紫外ランプの電極や反射鏡を酸化して、励起光の反射率を低下させ、これが電極の劣化につながる。この真空紫外光源の発熱や反射鏡あるいは電極の酸化を共に防止する目的で、アルミニウム製電極内部に水または絶縁油などを循環させる冷媒循環ジャケットを備え、かつ、鏡面研磨した電極の放電面側と石英ガラス製放電管とをシリコーンオイル層で挟み、Xeガスが封入された当該石英ガラス性放電管を仮の電極を用いて放電させて、そこから放射される真空紫外線により光接着させることにより、電極面の酸化による劣化が無く、かつ、高反射率を長期間維持し、かつ、熱放射の無い真空紫外ランプを提供するものである。
【0020】
[請求項6]記載の発明によると、宇宙空間にある人工衛星の太陽電池パネルを筺体に接着固定するためにシリコーンゴム接着剤や保護膜としてのRTVシリコーンゴムが用いられる。しかし、そのシリコーンゴム中に残留するD4〜D10までの低分子シロキサンであるC8H24O4Si4、C10H30O5Si5、C12H36O6Si6、C14H42O7Si7、C16H48O8Si8、C18H54O9Si9、C20H60O10Si10などが揮発して、周囲にある固体物に付着すると考える。とくに、光を受ける太陽電池やミラーなどは受光効率に影響を与えるため大問題となる。本発明者はこの受光面に吸着した低分子シロキサンの吸着層が太陽光の真空紫外線に照射されて光分解し、成分中の炭素が遊離して黒化するものと考える。そこで本発明では、人工衛星搭載太陽電池パネルや望遠鏡ミラー等の受光面に吸着した該低分子シロキサン吸着面に酸素ガス、過酸化水素、水分等の酸化剤ガスを噴射させるためのガス供給ノズルで常にあるいは間欠的に光学面に酸化剤を吸着させた状態で、あるいは太陽電池パネルや望遠鏡ミラー等の周囲にちりばめて配置した酸化銅などの金属酸化物を酸素供給源として、該受光面に太陽光の200nm以下の紫外光が照射されば、低分子シロキサン吸着層が光酸化反応を行い透明なSiO2層が形成され、遊離炭素の生成による受光面の表面の黒化障害を防止することができる。
【0021】
更に、本発明は、前記[請求項1]、[請求項2]、[請求項3]、[請求項4]、[請求項5]及び[請求項6]記載による透明光酸化層薄膜を形成させる方法を、太陽電池パネルを構成する絶縁基板を形成するために、金属、プラスチック板上に該シリコーンオイル層により該光酸化層薄膜を形成させ、更に[請求項3]に記載のように透明光酸化層薄膜形成を反復させて膜を順次積層することにより成型した厚膜絶縁基板を作ることができる。また、液晶ディスプレイパネルを構成するマザーガラスを形成するために、予め、金属、プラスチック等に該シリコーンオイル層により該光酸化層薄膜を形成させ、更に[請求項3]に記載のように透明光酸化層薄膜形成を反復させて膜を順次積層することにより成型した厚膜絶縁基板を酸又は有機溶剤でエッチング除去して得られた薄板ガラスを該マザーガラスとして供することもできる。このマザーガラス製造方法のように、弾力性があり、かつ、薄く表面が鏡面を成す金属やプラスチックの上にシリコーンオイルを光酸化させて形成した厚膜をエッチング処理で形成した薄板ガラスは多くの分野で利用可能である。又、金属やプラスチック表面に凹凸や模様あるいは位相上方を形成した鋳型の上にシリコーンオイルを光酸化させて形成して多層化したモールド厚膜を作り、エッチング処理して得られたレプリカは光学ホログラム、位相変換板、模様板又は蠅の目レンズなどとして利用できる。更に太陽電池パネル、液晶ディスプレイパネルまたは熱電子変換モジュールなどの被コーティング物の前面あるいは全面に電気絶縁性透明保護膜を形成するために、該シリコーンオイル層による該透明光酸化層薄膜を形成させることもできる。
【発明の効果】
【0022】
[請求項1]、[請求項2]、[請求項3]及び[請求項4]記載の発明によると、光酸化による薄膜形成は、基板や製品に塗装と同じ方法でシリコーンオイルを塗布し、塗布後、温度あるいは雰囲気圧力を制御した、酸化剤雰囲気で真空紫外線照射を行うと、透明、硬質、電気絶縁性に優れた薄膜が形成できるため、ガラス板を使わない大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイなどの絶縁下地膜や保護膜としても利用できる。
シリコーンオイルの光酸化による膜形成において、オイル内部に酸化剤を過不足なく貯蔵または補給するために、本発明では、光励起中の光酸化反応を常時モニターして、酸化剤の飽和蒸気圧を制御する方法と光酸化反応を効果的に行うための真空紫外光源を提供することで解決し、電気絶縁に富み、全波長域で透明で、かつ耐熱性や耐水性に優れた大面積薄膜を短時間に作成することが出来る。
【0023】
更に、外気と遮断された反応容器内に置かれたスピンナー上の試料に、溶剤で希釈したシリコーンオイルを塗布し、その雰囲気を溶剤の飽和水蒸気以上の圧力に成るように不活性ガスあるいは酸化剤ガスで加圧した状態で、スピンナーで薄膜化した後、脱気により溶剤を気化させた後、大気圧の酸化剤ガスを封入した状態で真空紫外照射を行なうことにより塗布時のシリコーンオイルの粘度に応じて10〜4,000nmの膜を形成できる。
又、本発明によれば、光酸化反応雰囲気を冷却することにより、シリコーンオイル内の酸化剤の蒸気圧を飽和蒸気圧以下に抑制し、シリコーンオイル内に過不足無く酸化剤を維持できるため、従来の60分以上の光反応時間を30分以下に短縮することができ、かつ二酸化炭素を酸化剤として用いれば反応時間を15分以下に短縮することができ、かつ、酸化剤の過不足が無いため再現性の高い成膜が得られる。
【0024】

シリコーンオイルによる形成光酸化層の背面に真空紫外線に感度を有し、450nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウムなどの蛍光剤層を置くため、その発光強度に応じて未反応シリコーンオイルとガラス化された光酸化層の比率を蛍光層の発光量として監視することができ、これをモニターすることにより効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。
【0025】
[請求項5]記載の発明によると、
反射鏡と電極とを一体物にして、その内部を冷却すると同時に真空紫外光源と反射鏡兼電極をシリコーンオイルの接着で一体化してしまうため、電極や反射鏡の酸化による劣化を抑制でき、ランプの長寿命化を達成できる。
【0026】
[請求項6]記載の発明によると、
宇宙空間にある人工衛星の太陽電池パネルを筺体に接着固定するためにシリコーンゴム接着剤が用いられるが、そのシリコーンゴム中に残留するD4〜D10までの低分子シロキサンが揮発し、周囲の物質面、とくに太陽電池受光面や望遠鏡ミラーなどに吸着し、光学面が曇ったり黒化したりして、入射光量減の原因になっている。この原因は、吸着した低分子シロキサンが酸素の無い真空中で、太陽光の200nm以下の紫外線で光分解されて生成した遊離炭素が、光学面に残留した結果である。そこで、酸素ガス、過酸化水素、水や酸化銅などの金属酸化物などの酸化剤を太陽光照射時あるいは間欠的に光学面に吸着させた状態で、照射太陽光の真空紫外線が当たれば、遊離炭素を生成させることはない。
【0027】
更に、本発明を大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイあるいは熱電子変換モジュールなどに適用させた場合、本発明による光酸化薄膜形成や透明光酸化層薄膜形成を反復させて膜を順次積層することにより成型した厚膜形成は、基板や製品に塗装と同じ方法でシリコーンオイルを塗布し、塗布後、温度あるいは雰囲気圧力を制御した、酸化剤雰囲気で真空紫外線照射を行うと、透明、硬質、電気絶縁性に優れた膜が形成できるため、ガラス板を使わない大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイ、あるいは熱電子変換モジュールなどの絶縁下地膜や保護膜としても利用できる。さらに弾力性があり、かつ、薄く表面が鏡面を成す金属フィルムあるは弾力性および展性に優れたステンレスや燐青銅板などの金属箔やアクリル樹脂、ポリイミド、ポリサルファンなどのプラスチックフィルムの上に形成させた光酸化透明を酸又は有機溶剤でエッチング除去して得られた薄板ガラスを該マザーガラスや保護ガラス、あるいは半導体基板として供することができる。さらに、金属やプラスチック表面に凹凸や模様を形成した鋳型の上にシリコーンオイルを光酸化させて形成して多層化した厚膜をエッチング処理してモザイク上又は蠅の目レンズとして利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の効果的な実施の形態を[図1から図12]に基づいて詳細に説明する。
【0029】
[図1]は、本発明のシリコーンオイルの低温光酸化層形成方法及び装置を示す概略図である。この図に示すように、本願発明の特徴は、反応容器1の中で、真空紫外線に透明な基板2表面にシリコーンオイルを塗布して、真空紫外ランプ3により光励起すると、接着層やコーティング層などのシリコーンオイル光酸化層4を形成し、真空紫外線に透明な基板2の背面に真空紫外線に感度を有し、420nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5を置くことにより、その発光強度に応じて未反応のシリコーンオイルとガラス化された光酸化層との比率を蛍光層の発光量として、レンズ6、バンドパスフィルター7を通過した画像をCCDカメラ8から構成する光酸化反応実時間観察モニター9により、励起光入射側から光酸化反応の密度分布として監視することができ、効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。とくに、ここで特記すべきことは、シリコーンオイルによる光酸化反応において、最も悪影響を与える光反応雰囲気温度の上昇と励起光の安定性を共に解決するための真空紫外発光用ランプを提供することである。とくに真空紫外線を効率良く反射する反射面はアルミニウム鏡面である。しかしこの材料は空気中に置くだけで直ぐに酸化し、極端に反射率を低下させる。したがって真空紫外ランプ(放電管)3の外周に密着させる形で、鏡面研磨したアルミニウム反射鏡10をシリコーンオイルの光酸化反応を利用して接着すれば、恒久的に鏡面の酸化による劣化を防止できる。例えば、放電管の電極が空気や他のガス体に触れていれば、スパークを発生し、電極自身を劣化させるし、電極が熱の放熱源にも成る。これら全てを解決するために、鏡面研磨したアルミニウム反射鏡10と電極とを一体物化したアルミニウム金属電極11を備え、網電極12との間で放電を行なう。さらに、一体物化したアルミニウム金属電極11の内部を冷却ジャケット13で冷却する構造にし、かつ、これらの接着には本体である真空紫外ランプを用いれば一連のランプ製造工程で解決でき、電極や反射鏡の酸化による劣化を抑制し、ランプの長寿命化を達成することである。さらに重要なことは、光反応雰囲気温度を下げるために、シリコーンオイル光酸化層4を冷却ジャケット14を備えた試料台15で冷却すると効果的である。
【0030】
[図2]は、基板が真空紫外線に透明である場合で光酸化反応実時間観察を蛍光剤層の裏面側から監視する方式図である。蛍光剤として真空紫外線に感度を有し、420nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウムを透明基板2の裏面に塗布した蛍光剤層5の裏面側に、光ファイバー16を介して420nmを中心波長とするバンドパスフィルター付きフォトセル(HAMAMATSU S2684-254)17で検知することにより効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。また光ファイバー16に分光器(Ocean Optics Inc. USB4000)を付け発光スペクトルと強度を検知することができる。
【0031】
[図3]は、基板が真空紫外線に不透明である場合の光酸化反応実時間観察を励起光側から監視する方式図である。[図1]の方式では被コーティング試料として真空紫外線に透明な基板2しか使えない。したがって、基板が真空紫外光に不透明な材質が金属、プラスチック、一般ガラス、セラミックスなどの場合には、励起光入射側からしか蛍光剤の発光を観察することはできない。そこで不透明基板18の表面にシリコーンオイル光酸化層4を形成し、真空紫外ランプ3からの励起光がシリコーンオイル光酸化層4を通過し、基板との境界で反射して戻る光を励起光側の光酸化反応実時間観察モニター9の中に備した、真空紫外線に感度を有し420nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5で検知し、ここでの発光強度の相対変化を光ファイバー16を介して420nmを中心波長とするバンドパスフィルター付きフォトセル(HAMAMATSU S2684-254)17で検知する。光酸化反応実時間観察モニター9にはシリコーンオイル光酸化層4の表面で反射する光と、基板海面で反射する光が重畳して検出されるため、420nmに中心波長を有するバンドパスフィルターを通過後の光を電子冷却型Siフォトセル(HAMAMATSU S2592-03)で増幅し、シリコーンオイル光酸化層4を往復した光を検知する。この場合基板表面の検知部分にのみアルミニウム蒸着膜19を施しておけば、さらに効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。
【0032】
[図4]は、真空紫外線に不透明な基板表面に予め蛍光剤を塗布した後、光酸化層を形成する方式図である。蛍光剤層の裏面側から監視する方式図である。不透明基板18の表面に部分的あるいは全面に、真空紫外線に感度を有し420nm付近に発光ピークを有するサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5を塗布し、その上にシリコーンオイル光酸化層4を形成し、その発光強度に応じて未反応のシリコーンオイルとガラス化された光酸化層との比率を蛍光層の発光量をレンズ6、バンドパスフィルター7を通過した画像をCCDカメラ8からなる光酸化反応実時間観察モニター9により励起光入射側から光酸化反応の密度分布として監視することができる。この方式では蛍光剤層を部分的に基板表面に形成しておけば、その部分での発光強度から全体の光酸化度を推測することができる。
【0033】
[図5]は、光酸化反応励起用冷却水循環型真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は網電極(正極)、(b)棒電極(正極)である。Xe2エキシマランプ放電管21に密着させた電極兼凹型2次曲面反射鏡11の反射率低下を防止して真空紫外光量の経年変化を抑制するために、Xe2エキシマランプを構成する円筒形状Xe2エキシマランプ放電管21に密着した電極兼凹型2次曲面反射鏡11に冷却水を循環する冷却ジャケット13を備える。ここで電極兼凹型2次曲面反射鏡11の凹面に沿ってシリコーンオイルを塗布し、その塗布面に沿ってXe2エキシマランプ放電管21を密着させ、かつこの電極兼凹型2次曲面反射鏡に対向して置かれた網電極12を加圧密着させた状態で、電極兼凹型2次曲面反射鏡11を冷却しながら、Xe2エキシマランプ放電管21から真空紫外光を発光させ電極兼凹型2次曲面反射鏡11とXe2エキシマランプ放電管21とを光接着させる方式が(a)であり、2個の棒電極20を加圧密着させた状態で、電極兼凹型2次曲面反射鏡11を冷却しながら、Xe2エキシマランプ放電管21から真空紫外光を発光させ電極兼凹型2次曲面反射鏡11とXe2エキシマランプ放電管21とを光接着させる方式が(b)である。電極兼凹型2次曲面反射鏡の反射鏡面と大気との接触を遮断した低温度真空紫外光源である。この真空紫外光源の温度は10〜50℃が望ましい。
【0034】
[図6]は、光酸化反応励起用冷却水循環ジャケット兼電極を交互に配列した真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は冷却ジャケットが角パイプ型、(b) は冷却ジャケットが丸パイプ型である。Xe2エキシマランプ放電管21に密着させた電極兼凹型2次曲面反射鏡11と冷却水循環型(-)電極兼凹型2次曲面反射鏡22とを交互に配列し、夫々の電極兼反射鏡の反射率低下を防止して真空紫外光量の経年変化を抑制するために、Xe2エキシマランプを構成する円筒形状Xe2エキシマランプ放電管21に密着した電極兼凹型2次曲面反射鏡11および冷却水循環型(-)電極兼凹型2次曲面反射鏡22に冷却水を循環する冷却ジャケット13を備える。ここで各電極兼凹型2次曲面反射鏡の凹面に沿ってシリコーンオイルを塗布し、その塗布面に沿ってXe2エキシマランプ放電管21を密着させ、かつこの電極兼凹型2次曲面反射鏡11に対向して置かれた冷却水循環型(-)電極兼凹型2次曲面反射鏡22同士を加圧密着させた状態で、夫々の電極兼凹型2次曲面反射鏡を冷却しながら、Xe2エキシマランプ放電管21から真空紫外光を発光させ電極兼凹型2次曲面反射鏡11および冷却水循環型(-)電極兼凹型2次曲面反射鏡22とXe2エキシマランプ放電管21とを光接着させる。ここで(a)は冷却ジャケットが角パイプ型、(b) は冷却ジャケットが丸パイプ型である。電極兼凹型2次曲面反射鏡の反射鏡面と大気との接触を遮断した前記低温度真空紫外光源である。
【0035】
[図7]は、光酸化反応励起用冷却水循環型多段真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は網電極型、(b)棒電極型である。冷却水循環パイプを中心軸として、その周囲に同軸状に複数のXe2エキシマランプ放電管21を配列し、夫々のXe2エキシマランプ放電管21は電極兼凹型2次曲面反射鏡11と密着し、夫々の電極兼反射鏡の反射率低下を防止して真空紫外光量の経年変化を抑制するために冷却水を循環する冷却ジャケット13を備える。ここで各電極兼凹型2次曲面反射鏡11の凹面に沿ってシリコーンオイルを塗布し、その塗布面に沿ってXe2エキシマランプ放電管21を密着させ、かつこの電極兼凹型2次曲面反射鏡11に対向して置かれた網状電極12あるいは棒状電極20同士を加圧密着させた状態で、電極兼凹型2次曲面反射鏡を冷却しながら、Xe2エキシマランプ放電管21から真空紫外光を発光させ電極兼凹型2次曲面反射鏡11とXe2エキシマランプ放電管21とを光接着させる。ここで(a)は網電極型、(b)棒電極型である。電極兼凹型2次曲面反射鏡の反射鏡面と大気との接触を遮断した前記低温度真空紫外光源である。
【0036】
[図8]は、タッチ・アンド・ゴー型(touch and go)シリコーンオイル塗布装置概略図である。この試料台15は光学結晶や光学窓のコーティングに供される。ここで被コーティング試料23は吸引クランプ24で吸引されて試料台15に固定され、その試料はペルチェ冷却素子25と冷却ジャケット13により冷却する構造になっている。先ず試料は下方のシリコーンオイル26の入った桶を向いて固定した後、瞬間的に下方に移動して、シリコーンオイル面26に触れた後、スプリング27により直ぐに上昇する。この操作がタッチ・アンド・ゴー方式である。ここでシリコーンオイルが付着した試料はベアリング28によりスムースに180度回転して上方を向いた後、光照射が行なわれる。とくにシリコーンオイルが塗布された試料がゆっくりと180度回転して試料台が上方に向く間にシリコーンオイルは垂れて均一面になる。
【0037】
[図9]は、光接着用加圧冶具付き反応容器概略図である。反応容器は、光反応容器加圧室29と光反応室30から成り、夫々の室には互いの室を平行に加圧するように右ネジ山31と左ネジ山32が付けられ、その対のネジ山を光反応室加圧ネジ33により一方向に回転すると両室が接近する構造になっている。そして光反応容器加圧室29にはピエゾ加圧素子34が備えられ、両室の中間には冷却ジャケット14を有する試料台15が置かれ、その上に真空紫外光に透明な被接着試料37と38をシリコーンオイル26で挟んで置き、光酸化反応の過程を監視する目的で、被接着試料38の裏面にはサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5を介して光ファイバー16でバンドパスフィルター付きフォトセル17を設備する。
真空紫外光に透明な被接着試料37の上には合成石英窓36を載せ、Oリング35により試料台15と合成石英窓36の間を光反応室30として外気を遮断し、反応ガス入気・排気口39から酸化剤ガスをいれ、ピエゾ加圧素子34に電圧を印加して、室温以下の温度雰囲気で真空紫外光40で光励起して、高効率の光接着を行うことができる。
【0038】
[図10]は、スピンナー光薄膜装置概略図である。光反応室30はO リング35を介して合成石英板6と光反応室蓋41で外気と遮断され、反応ガス入気・排気口39により反応ガスや容器内の圧力調整が行なうことができる。光反応室30(反応容器)の中のスピンナー試料台42を備え、光反応室の外部のモーター43で伝達された回転力で真空紫外繊維透明な基板2の上に塗布されたシリコーンオイル(シリコーンオイル光酸化層4)を高速回転により薄層にする。粘度の比較的強いシリコーンオイルをスピンナーでの薄膜化は至難の業である。そこでベンゼン、キシレンあるいはシクロヘキサンエチルエーテルなどの炭化水素系または四塩化炭素やクロロベンゼンなどの塩化炭素系溶媒でシリコーンオイルを希釈して極端に粘度を低くし、かつそれらが飽和蒸気圧を超えないようにするために、真空紫外線を透過する窒素ガスなどの不活性ガスで加圧する。この加圧状態で、モーター43でスピンナー試料台42に置かれた基板2の上に塗布された粘度が低いシリコーンオイルをスピンナーで薄膜化した後、徐々に減圧して、溶媒を気化させた後、スピンナーの回転を止め、反応ガス入気・排気口39により二酸化炭素などの酸化剤ガスを封入する。次にXe2エキシマランプ(真空紫外ランプ3)の光を照射して光酸化層を1層形成する。この一連の操作を繰り返すことにより厚膜を形成することができる。を特徴とする請求項1及び2記載のシリコーンオイルの低温光酸化層形成方法と装置。この装置ではスピンナーが停止してから反応雰囲気温度を下げるための水冷ジャケット付きペルチェ冷却素子25が備えられている。また基板裏面にはサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5が置かれ、光ファイバー16を介して、バンドパスフィルター付きフォトセル17で検知することにより効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。この反応装置では粘度の比較的高いシリコーンオイルでも水冷ジャケット付きペルチェ冷却素子25で加熱した状態でスピンコートを行い、薄膜化した後、回転を止め、ペルチェ冷却素子25の逆電圧を加え、冷却した状態で、反応ガス入気・排気口39から二酸化炭素などの酸化ガスを封入した後、Xe2エキシマランプ(真空紫外ランプ3)の光を照射して光酸化層を形成する。
【0039】
[図11]は、沿面放電式エキシマランプによる大面積絶縁膜形成装置である。この装置の励起光源の放電方式は異なる気体から成る直列のガス層(Xeガスと大気)間を電極11と電極44により放電させ、電極44とエキシマランプ(真空紫外ランプ3)のガラス外壁45との間に、シリコーンオイル層4が塗布された長大面積尺被基板46を載せ、シリコーンオイル層4とエキシマランプガラス外壁との間で雰囲気ガスの沿面放電と、真空紫外ランプ3からの紫外光の両者で光酸化反応を高効率に行うもので、両金属電極11と44は水冷され、シリコーンオイル中に含まれる酸化剤が飽和蒸気圧以上に成り、系外に飛散することを防止する。さらに大面積長尺基板45の要所には サリチル酸ナトリウム蛍光剤層5が塗布されており、光ファイバー16を介して420nmを中心波長とするバンドパスフィルター付きフォトセル(HAMAMATSU S2684-254)17で検知することにより効果的な酸化剤投入の指標とすることができる。
【0040】
[図12]は、[請求項1]記載の発明に関する模式的全工程図である。
【実施例1】
【0041】
[図2]の低温光酸化装置を用い、反応容器を用い、石英ガラス基板2の裏面に板状サリチル酸ナトリウム蛍光剤層5を挿入し、石英ガラス基板2の表面にシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 KF96-500cs)を塗布し、反応容器1に取り付けられた、反応ガス入気・排気口39を開放し、空気や湿気が混入した大気雰囲気で30分経過後、シリコーンオイル光酸化層4と真空紫外ランプ放電管3(Xe2エキシマランプ、発振波長157nm)の網電極12の距離を15mm隔てた状態で光励起を開始した。ここでの光反応はサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5の裏面に取り付けた光ファイバー16を介してバンドパスフィルター付きフォトセル17で検知した。しかし、大気中ではシリコーンオイル光酸化層4と網電極12の間隔が15mm以上では膜の硬化は起こらず、間隔が8mm内外にすると光酸化膜が形成するのに120分要することがわかった。さらに間隔を狭め、1mmにするとフォトセル17の信号は照射開始の時点から徐々に増加して5分でピークに達し、それ以降は変化は皆無に等しかった。しかも、その時のコーティング膜は表面層のみの硬化で基板との界面はシリコーンオイルのままだった。そこで再度基板2上にシリコーンオイル4を塗布し、反応ガス入気・排気口39を開放し30分経過後、試料台15の冷却ジャケット14に25℃の冷却水を循環させたら、フォトセル17の信号15分まで増加したが、それ以上から鈍くなった。そこでサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5と試料台15の間に中心部に2Φの孔を有するペルチェ冷却素子を用い、基板を冷却した。ここでシリコーンオイルに混存している酸化剤の蒸気圧を飽和蒸気圧以下にするため基板温度を50℃〜10℃が望ましいが、10℃以下になるとシリコーンオイル光酸化層4上に霜が付着し、極端にフォトセル17の信号が弱まる。これは大気中の水蒸気が結露し、紫外線透過の妨げとなると同時に水である酸化剤が濃度過多に成るため酸化反応が進まなくなると結論付けた。そこで大気中での反応の場合には、酸化剤の蒸気圧が飽和蒸気圧を超えない温度を15から30℃の間と定め、試料台15の冷却は冷却水のみとし、それ以上の温度雰囲気に成らないようにするために、真空紫外ランプ3(Xe2エキシマランプ)を冷却ジャケット13で冷却水循環することにより、雰囲気温度の発熱源全てを水冷のみで抑制し、酸化剤の蒸気圧が飽和蒸気圧以上にならないようにした。これにより従来の、雰囲気温度制御皆無でシリコーンオイル内部や界面の酸化剤の蒸気圧を飽和蒸気圧以下に抑え、特許文献4の実施例4にあるようにXe2エキシマランプ(20mW)を60分間照射して形成した膜の193nmでの透過率が90.6%であったものが、半分の30分の照射で91%を達成した。さらに反応ガス入気・排気口39から入射するガスを空気から二酸化炭素に換えると、さらに反応時間は15分と短縮された。さらにシリコーンオイル光酸化層4と網電極12の間隔を20cmと広げても真空紫外ランプ3(Xe2エキシマランプ)の光は光路での紫外線吸収が少なくシリコーンオイル光酸化層4に到達し、かつ、二酸化炭素が光分解して活性酸素が形成するため酸化剤として働き光酸化を促進する事が明らかになった。したがって、この実験結果より、本願発明によれば、光酸化反応雰囲気を冷却することにより、シリコーンオイル内の酸化剤の蒸気圧を飽和蒸気圧を超えない範囲内に抑制し、シリコーンオイル内に過不足無く酸化剤を維持できるため、従来の60分以上の光反応時間を30分以下に短縮することができ、かつ二酸化炭素を酸化剤として用いればさらに反応時間を15分以下に短縮することができることがわかった。ここで予めシリコーンオイルの中に酸素、二酸化炭素あるいは水蒸気などを大気圧下で混入させたものを酸化剤入りシリコーンオイルとし、これを塗布すれば、2枚の試料でシリコーンオイルを挟み圧縮しながら真空紫外線照射を行なう接着では、酸化剤を過不足無く光酸化に供することができる。ここで注意しなくてはいけないことは、酸化剤が無くなった時点で、光照射も終了するようにシリコーンオイルを調合し、かつ、酸化剤の蒸気圧が飽和蒸気圧を超えない範囲内に制御する事である。
【実施例2】
【0042】
[図9]の光接着用加圧冶具付き反応容器を用い、合成石英ガラス基板37、38の間隙に分子量6万のシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 KF96-10000)を挿入し、その基板37の上に合成石英窓板36を被せ、反応ガス入気・排気口39から酸化剤ガスを封入後、下方からピエゾ加圧素子34で加圧した状態で、発光波長172nmのXe2エキシマランプ光40を10から60分間照射した。ここでの光反応はサリチル酸ナトリウム蛍光剤層5の裏面に取り付けた光ファイバー16を介してバンドパスフィルター付きフォトセル17で、二酸化炭素ガスの効果と接着圧の効果及び基板温度効果を測定し、10%の二酸化炭素ガスが混入した窒素ガスを1気圧、接着圧15kg/cm2、基板温度20℃なる条件で、172nmのXe2エキシマランプ光を15分照射して、引っ張りせん断強度180kg/cm2と接着強度が高いことがわかる。この値は特許文献6の光照射時間90分に比較して1/6の15分である。
【実施例3】
【0043】
[図10]のスピンナー光薄膜装置を用い、粘度の高いシリコーンオイルのコーティングを溶剤で希釈したシリコーンオイルと、基板温度を上げて粘度を低くした状態での膜形成を比較した。まず、外気と遮断され光反応室30の中で、真空紫外繊維透明な基板2の上に塗布されたキシレンおよびクロロベンゼンなどの溶媒でシリコーンオイルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 KF96-50cs)を希釈して極端に粘度を低くし、かつそれらが飽和蒸気圧を超えないようにするために、真空紫外線を透過する窒素ガスで加圧する。この加圧状態で、モーター43でスピンナー試料台42に置かれた基板2の上に塗布された粘度が低いシリコーンオイルをスピンナーで薄膜化した後、徐々に減圧して、溶媒を気化させた後、スピンナーの回転を止めた後、ペルチェ冷却素子25で反応室の温度を5から50℃に変化させ、かつ反応ガス入気・排気口39により二酸化炭素を封入した。このときの酸化反応の様子は、光ファイバー16を介して、バンドパスフィルター付きフォトセル17で検知しながら、Xe2エキシマランプ(真空紫外ランプ3)の光を20分照射して膜厚は100nmまで薄くすることができた。 つぎに溶剤で希釈しないシリコーンオイル4をペルチェ冷却素子25で80℃まで加熱した状態でスピンコートを行い、薄膜化した後、回転を止め、ペルチェ冷却素子25の逆電圧を加え、冷却した状態で、反応ガス入気・排気口39から二酸化炭素などの酸化ガスを封入した後、Xe2エキシマランプ(真空紫外ランプ3)の光を照射して光酸化層を形成したこれによっても700nmの膜厚が得られた。一般に半導体基板にレジストを塗布する場合、スピンナー用レジストの粘性は極く低い。ところがシリコーンオイルは粘性があり、高速でスピーンしても薄膜化には限界があり、回転を止めると、多量に残っているオイル自身の表面張力により元に戻り、厚さが均一な薄膜はできなかった。このため本願発明によれば、外気と遮断された反応容器内に置かれたスピンナー上の試料に、溶剤で希釈したシリコーンオイルを塗布し、その雰囲気を溶剤の飽和水蒸気以上の圧力に成るように不活性ガスあるいは酸化剤ガスで加圧した状態で、スピンナーを高速回転させ、薄膜化した後、脱気により溶剤を気化させながら1気圧以下の酸化剤ガスを封入した状態で真空紫外照射を行なうことにより100ナノメータ以下の薄膜を形成することができた。
【0044】
RTVシリコーンゴムがコーティングされた太陽電池及びアルミニウム基板に貼り付けた太陽電池および石英ガラス基板を真空容器の中に固定し、10-4Torrまで吸引した後、容器のコックを閉め、6時間/日 を1ヶ月間ヒータ加熱と同時に172nmのXe2エキシマランプ照射を行なった。 1ヵ月後に質量分析計(QMAS)により、C8H24O4Si4、C10H30O5Si5、C12H36O6Si6、C14H42O7Si7、C16H48O8Si8、C18H54O9Si9、C20H60O10Si10のMASナンバー294, 370, 444, 518, 592, 666, 740 の質量数に夫々のピークが検出され、また石英基板が僅かに黒くなった.そこで同じ条件で、微量の過酸化酸素を基板に吸着し続けた場合、基板の曇りや黒化は観測されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の第一の特徴は、従来の厚く重い板ガラスを用いない大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイを大量生産することである。光酸化膜形成は、基板や製品に塗装と同じ方法でシリコーンオイルを塗布し、真空紫外線照射しながら、当該光反応の経過を蛍光剤の発光を利用して監視し、シリコーンオイル中の酸化剤の蒸気圧を飽和蒸気圧以下に抑え、過不足の無い酸化剤をシリコーンオイルに供給することにより、透明、硬質、電気絶縁性に優れた膜が形成できるため、大面積太陽電池パネルや大面積液晶ディスプレイなどの絶縁下地膜や保護膜として利用できる。
本発明の第二の特徴は、耐候性に富む光酸化薄膜を形成させることが出来るために、薄膜表面に宇宙での浮遊塵付着の防止、防曇性を有するために宇宙空間における船外機の窓から地上の観測写真を撮影する際に適用できる。
更に、熱電子変換モジュールなどの絶縁下地膜や保護膜としても利用できる。また基板上に形成した該透明光酸化層薄膜を酸または有機溶媒でエッチングしてフィルム状薄ガラスを形成できる。この薄ガラスは液晶パネルのマザーガラスとしての他、半導体基板として、あるいは光学ガラスとして多くの分野で利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】シリコーンオイルの低温光酸化層形成方法及び装置を示す概略図である。
【図2】基板が真空紫外線に透明である場合で光酸化反応実時間観察を蛍光剤層の裏面側から監視する方式図である。
【図3】基板が真空紫外線に不透明である場合の光酸化反応実時間観察を励起光側から監視する方式図である。
【図4】真空紫外線に不透明な基板表面に予め蛍光剤を塗布した後、光酸化層を形成する方式図である。
【図5】光酸化反応励起用真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は正極を網電極、(b)は正極に複数の棒電極
【図6】光酸反応励起用冷却水循環ジャケット兼電極を交互に配列した真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は冷却ジャケットが角パイプ型、(b) は冷却ジャケットが丸パイプ型である。
【図7】光酸化反応励起用冷却水循環型多段真空紫外Xe2エキシマランプの構造図である。(a)は網電極型、(b)棒電極型である。
【図8】タッチ・アンド・ゴー型シリコーンオイル塗布装置概略図である。
【図9】光接着用加圧冶具付き反応容器概略図である。
【図10】スピンナー光薄膜装置概略図である。
【図11】沿面放電式エキシマランプによる大面積絶縁膜形成装置である。
【図12】[請求項1]記載の発明に関する模式的全工程図である。
【符号の説明】
【0047】
1 反応容器
2 真空紫外線に透明な基板
3 真空紫外ランプ(放電管)
4 シリコーンオイル光酸化層
5 サリチル酸ナトリウム蛍光剤層
6 レンズ
7 バンドパスフィルター
8 CCDカメラ
9 光酸化反応実時間観察モニター
10 鏡面研磨したアルミニウム反射鏡
11 アルミニウム金属電極(負極)
12 網電極(正極)
13 冷却ジャケット
14 冷却ジャケット(試料台用)
15 試料台
16 光ファイバー
17 バンドパスフィルター付きフォトセル
18 不透明基板
19 アルミニウム蒸着膜
20 棒電極(正極)
21 Xe2エキシマランプ放電管
22 冷却水循環型(-)電極兼凹型2次曲面反射鏡
23 被コーティング試料
24 吸引クランプ
25 ペルチェ冷却素子
26 シリコーンオイル
27 スプリング
28 ベアリング
29 光反応容器加圧室
30 光反応室
31 右ネジ山
32 左ネジ山
33 光反応室加圧ネジ
34 ピエゾ加圧素子
35 Oリング
36 合成石英窓板
37 被接着試料1(真空紫外に透明)
38 被接着試料2(真空紫外に透明)
39 反応ガス入気・排気口
40 真空紫外光(励起光)
41 光反応装置蓋
42 スピンナー試料台
43 モーター
44 パイプ状スライド電極
45 エキシマランプのガラス外壁
46 大面積長尺基板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長200nm以下の真空紫外光照射雰囲気下で酸化反応を持続させるために光反応雰囲気中で採用する有機溶媒若しくは液体酸化剤の圧力が飽和蒸気圧を超えない範囲内及び/又は気体酸化剤の溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内で単数若しくは複数個からなる基板上に光酸化反応により透明な光酸化層薄膜を形成させる透明光酸化層薄膜形成方法において、
該基板表面をクリーニングする前処理ステップと、該基板表面に透明薄膜を形成させるための接着剤及び/又はコーティング剤を塗布させるステップと、該光酸化反応を持続させるために酸化剤を供給し、かつ、シリコーンオイル層と光反応させるステップと、該光反応雰囲気の圧力が液体酸化剤を用いる場合は、飽和蒸気圧を超えないように若しくは気体酸化剤を用いる場合は、飽和溶解度を超えないように該真空紫外光の透過量を監視させながら該光酸化反応を持続させるためのステップとを含む透明光酸化層薄膜形成方法。
【請求項2】
前記透明光酸化層薄膜を形成させる接着剤及び/又はコーティング剤が低分子のシロキサン結合を有するガス状低分子シロキサン吸着層及び/又はシリコーンオイル層であることを特徴とする[請求項1]記載の透明光酸化層薄膜形成方法。
【請求項3】
前記基板表面に接着剤及び/又はコーティング剤としての液体のシリコーンオイルを塗布させることにより、一定な厚みを有する膜厚若しくは所望する任意の膜厚を形成させ、かつ、シリコーンオイル層内部に酸化剤を封じ込め、該シリコーンオイル層の固化を促進させる手段として、採用する有機溶媒媒若しくは液体酸化剤の圧力が飽和蒸気圧を超えない範囲内及び/又は気体酸化剤の溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内で光酸化雰囲気での酸化反応を持続させるに際して、反応容器が大気と接している場合は、雰囲気温度を冷却手段により10-50℃の範囲に保ち、光酸化反応を持続させ、該光酸化雰囲気が冷却できない場合には該反応容器を大気と遮断させ、該反応容器内を酸化剤ガス及び/又は不活性ガスで1気圧以上に加圧させ、酸化反応を持続して該光酸化雰囲気を該飽和蒸気圧を超えない状態を維持させることにより反応を持続させ、かつ、一定の膜厚若しくは所望する膜厚を得るための手段として、前記[請求項1]記載ステップを反復させる手段により目的を達成させることを特徴とする[請求項1]及び[請求項2]記載の透明光酸化層薄膜形成方法。
【請求項4】
前記光酸化層薄膜の形成過程を監視するために、前記シリコーンオイル層の背面側に蛍光剤層を具備させ、蛍光剤の発光強度又は強度分布をフォトセル又はカメラで検知及び監視する手段を有することを特徴とする[請求項1]、[請求項2]及び[請求項3]記載の透明光酸化層薄膜形成監視方法。
【請求項5】
[請求項1]及び[請求項3]記載の液体酸化剤が飽和蒸気圧を超えない範囲及び/又は気体酸化剤の溶解度が飽和溶解度を超えない範囲内で前記光酸化反応を持続させ、かつ、該酸化反応を促進させるための光源として用いる真空紫外光照射ランプの放射光量の経時減衰を抑制させるために、前記真空紫外光照射ランプを構成する少なくとも一つの電極内部に冷却循環ジャケット又は外部に冷却装置を具備し、かつ、該電極の放電面は鏡面加工が施され、該放電面と該真空紫外ランプの放電管とはシリコーンオイル層により、互いに光接着されることを特徴とする[請求項1]、[請求項2]、[請求項3]及び[請求項4]記載の透明光酸化層薄膜形成方法に用いる真空紫外光照射ランプ。
【請求項6】
宇宙空間に於ける人工衛星搭載太陽電池パネル及び望遠鏡ミラー等に採用されるシリコーン系材料から飛散する低分子シロキサンガスによる光受光面の曇り及び黒化を防止する手段として、該光受光面材料に酸素ガス、過酸化水素、水分等の酸化剤ガスを吸着させる手段及び/又は該光受光面材料に酸素供給可能な金属酸化物を具備させ、太陽光の真空紫外線により、該光受光面材料に該透明光酸化層薄膜を形成させ、遊離炭素の生成を阻害させることを特徴とする[請求項1]、[請求項2]、[請求項3]、[請求項4]及び[請求項5]記載の透明光酸化層薄膜形成方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−102200(P2011−102200A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256644(P2009−256644)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(308026724)株式会社エム光・エネルギー開発研究所 (10)
【Fターム(参考)】