説明

透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置

【課題】透明な基板のエッジ位置を該基板に特別な加工を施すことなく非接触で検出することができるとともに、低コスト化を図ることができる透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置を提供する。
【解決手段】透明基板Wのエッジ位置検出装置10は、透明な基板Wを保持可能であるとともに、基板Wのエッジに対して交差する方向に延びるマーク12が設けられた基板保持部11と、マーク12と基板Wとを光の屈折を利用して撮像する撮像手段13と、撮像手段13による基板Wを通したマーク12の撮像画像と基板Wのエッジ外でのマーク12の撮像画像との境部の位置情報を基に基板Wのエッジ位置を検出する位置検出手段14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置に関し、例えば、近接露光において、液晶表示装置用の透明な基板をプリアライメントする際の該基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近接露光は、表面に感光剤を塗布した透明なガラス基板を近接露光装置の基板ステージ上に保持すると共に、該基板をマスクステージのマスク保持枠に保持されたマスクに接近させて両者のすき間を例えば数10μm〜数100μmにし、次いで、マスクの基板から離間する側から照射装置によって露光用の光をマスクに向けて照射することにより該基板上に該マスクに描かれたパターンを露光転写するようにしたものである。
【0003】
ところで、基板は露光装置に搬送されてそれぞれ基板ステージに保持されるが、搬送前において予め基板ステージに対する基板の位置決めを行うプリアライメントがなされる。即ち、基板ステージに対する基板の高精度の位置決めは、露光装置に搬入後に行われるのであるが、露光装置への基板の搬入位置のずれ量が大きすぎると、この高精度な位置決めが困難になるか、或いは長時間を要することとなる。このようなことを避けるために、プリアライメントが行われる。
【0004】
このプリアライメントに際しては、プリアライメント装置の基板保持台に保持された基板の複数のエッジの位置を検出して、該検出結果から基板のずれ量を求め、このずれ量に応じて基板保持台を駆動手段により移動させて、露光装置の基板ステージに対する基板の相対的な位置決めを行なう。そして、プリアライメント装置でプリアライメントされた基板はローダで露光装置に搬送されて、基板ステージ上に吸着保持される。
【0005】
また、液晶カラーフィルタ用の基板のエッジ位置を検出する際には、基板の割れ防止や発塵防止のため、基板に非接触でエッジの位置を検出する必要である。
基板のエッジ位置を非接触で検出する方法としては、例えば、基板のエッジに向けて上方から発光センサにより光を照射して、該照射光を基板のエッジ近傍の下方に配置された受光センサにより受光して、該受光結果に基づいて基板のエッジ位置を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、基板保持台に保持された基板のエッジをカメラ等により撮像して、該撮像画像に基づいて基板のエッジ位置を検出する方法が知られている。
【特許文献1】特開平5−326361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1では、基板の上下に発光センサと受光センサをそれぞれ配置する必要があるため、センサ数が多くなってコスト高になる。また、光を透過させるために、基板保持台は基板より小さく設計されており、エッジ部分の保持が不安定となる可能性がある。
【0008】
さらに、基板のエッジをカメラ等により撮像する場合は、透明の基板ではエッジが光学的に見えないため、該エッジに面取り加工を施すことで、エッジを光学的に見えるようにする必要があり、上記同様に、コスト高になる。
【0009】
本発明は、このような不都合を解消するためになされたものであり、その目的は、透明な基板のエッジ位置を該基板に特別な加工を施すことなく非接触で検出することができるとともに、低コスト化を図ることができる透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 基板保持部に保持される透明な基板のエッジ位置を検出する方法であって、
前記基板保持部に設けられたマークと交差する方向にエッジが延びるように、前記基板を前記基板保持部に保持する工程と、
前記マークと前記基板とを光の屈折を利用して撮像し、前記基板を通した前記マークの撮像画像と該基板のエッジ外での前記マークの撮像画像との境部の位置情報を基に前記基板のエッジ位置を検出する工程と、
を備えることを特徴とする透明基板のエッジ位置検出方法。
(2) 前記基板保持部には、矩形上の前記基板の一辺のエッジが交差可能な少なくとも2つの前記マークと、該一辺と直交する他辺のエッジが交差可能な少なくとも1つの前記マークが設けられており、
前記エッジ位置検出工程において、前記少なくとも3つのマークを前記基板と共にそれぞれ撮像して、前記基板のエッジ位置を検出することで、前記基板の位置が測定されることを特徴とする請求項1に記載の透明基板のエッジ位置検出方法。
(3) 透明な基板を保持可能であるとともに、前記保持された基板のエッジに対して交差するように延びるマークを有する基板保持部と、
前記マークと前記基板とを光の屈折を利用して撮像する撮像手段と、
該撮像手段による前記基板を通した前記マークの撮像画像と該基板のエッジ外での前記マークの撮像画像との境部の位置情報を基に前記基板のエッジ位置を検出する位置検出手段と、
を備えることを特徴とする透明基板のエッジ位置検出装置。
(4) 前記基板保持部には、矩形上の前記基板の一辺のエッジが交差可能な少なくとも2つの前記マークと、該一辺と直交する他辺のエッジが交差可能な少なくとも1つの前記マークが設けられており、
前記撮像手段は、前記基板保持部の基板保持面と直交する方向に対して傾斜して配置され、前記少なくとも3つのマークと前記基板とを光の屈折を利用してそれぞれ撮像する少なくとも3つの撮像手段を有し、
前記位置検出手段は、前記少なくとも3つの撮像手段によって得られた前記位置情報を基に、前記基板の位置を測定することを特徴とする(3)に記載の透明基板のエッジ位置検出装置。
(5)前記透明基板は、液晶表示装置用の基板であり、
前記基板保持部、前記撮像手段、前記位置検出手段は、前記基板のプリアライメントを行うプリアライメント装置に設けられることを特徴とする(3)又は(4)に記載の透明基板のエッジ位置検出装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置によれば、マークと基板とを光の屈折を利用して撮像し、基板を通したマークの撮像画像と基板のエッジ外でのマークの撮像画像との境部の位置情報を基に基板のエッジ位置を検出するので、透明な基板のエッジ位置を該基板に特別な加工を施すことなく非接触で検出することができるとともに、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の透明基板のエッジ位置検出方法及びエッジ位置検出装置に係る一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の透明基板のエッジ位置検出装置が適用されるプリアライメント装置と近接露光装置とローダとの配置を示す概略平面図、図2は近接露光装置の一例を示す側面図、図3及び図4は、プリアライメント装置を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の透明基板のエッジ位置検出装置10を備えるプリアライメント装置20は、近接露光装置PEの外側に配置され、不図示のストッカからローダ40により搬入された透明な基板Wを保持して該基板Wのプリアライメントを行うものであり、プリアライメントされた基板Wはローダ40で近接露光装置PEに搬送されて後述する基板ステージ3上に吸着保持される。
【0014】
まず、説明の便宜上、近接露光装置PEから説明すると、この近接露光装置PEは、図2に示すように、被露光材としての基板Wより小さいマスクMを用い、該マスクMをマスクステージ1のマスク保持枠2で保持すると共に、基板Wを基板ステージ3で保持する。そして、この状態で基板ステージ3をマスクMに対してX軸方向とY軸方向の二軸方向にステップ移動させて各ステップ毎にマスクMと基板Wとを近接して対向配置し、照射手段4からパターン露光用の光をマスクMに向けて照射することにより、マスクMの複数のパターンを基板W上に露光転写する。
【0015】
図2において符号5は装置ベースであり、この装置ベース5上には基板ステージ3をX軸方向にステップ移動させるためのX軸ステージ送り機構6が設置され、X軸ステージ送り機構6上には基板ステージ3をY軸方向にステップ移動させるためのY軸ステージ送り機構7が設置され、Y軸ステージ送り機構7上に基板ステージ3が設置されている。
【0016】
Y軸ステージ送り機構7と基板ステージ3の間には、基板ステージ3の単純な上下動作を行うことにより該基板ステージ3を予め設定した位置までマスクMと基板Wとのすき間の計測を行うことなく昇降させる上下粗動装置8と、基板ステージ3を上下に微動させてマスクMと基板Wとの対向面間のすき間を所定量に微調整する上下微動装置9とが設置されている。
【0017】
次に、図1、図3及び図4を参照して、エッジ位置検出装置10が搭載されたプリアライメント装置20について詳述する。プリアライメント装置20は、透明な基板Wを保持可能で、基台21に対してX,Y,θ(Z軸回りの揺動)方向に移動可能な基板保持部11を備える。基板保持台11の上面には、基板Wのエッジに対して交差する方向に延びる線状のマーク12が設けられている。
【0018】
図3に示すように、基板保持部11は、その下面に設けられた複数の連結部22を介して駆動テーブル23に連結されている。駆動テーブル23には、そのX方向一側面の中間部にX方向駆動機構24が、X方向両側面の端部側に一対のY方向駆動機構25,26がそれぞれ固定されている。そして、基板保持部11は、X方向駆動機構24、Y方向駆動機構25,26の各モータ24a,25a,26aをそれぞれ駆動することで、駆動テーブル23と共にX,Y,θ方向に移動する。
【0019】
また、基板保持部11と駆動テーブル23との間には、上面に図示しない複数のピンが固定されたピン保持テーブル27が設けられている。ピン保持テーブル27には、図4に示すピン駆動機構28が取り付けられており、ピン駆動機構28のモータ28aを駆動することで、くの字型に曲がったアーム29を介してピン保持テーブル27をZ方向に駆動し、ピンを基板保持部11の上面から進退させる。
【0020】
これにより、基板Wを載せたローダ40が、ピン上に基板Wを載置し、ピンの頭部に設けられた吸盤によって負圧で基板Wを吸着固定する。そして、ローダ40が退避した後、ピンを下降させて基板Wを基板保持部11に保持させている。
【0021】
また、マーク12は、基板Wが基板保持台11に正確に位置決めされた状態においては、基板WのY軸方向に沿うエッジに対して直交する方向に交差して延びてY軸方向に互いに離間して2箇所配置されるとともに、基板WのX軸方向に沿うエッジに対して直交する方向に交差して延びて1箇所配置されている。
【0022】
また、基板保持台11の上方には、基板保持台11上のマーク12を斜め上方から撮像するカメラ(撮像手段)13が設けられている。カメラ13は、マーク12の数に対応して3台設置されており、3台のカメラ13は、その撮像光軸が対応するマーク12の基板Wと交差する位置近傍を指向するように配置されて、該マーク12と基板Wとを撮像する。
【0023】
また、これら3台のカメラ13は、基板Wを通したマーク12の撮像画像と基板Wのエッジ外でのマーク12の撮像画像との境部の位置情報を基に基板Wのエッジ位置を検出する制御装置14(位置検出手段)に連結されている。
【0024】
図5は基板保持台11上のマーク12をカメラ13で撮像した際の画像を示す図であり、(a)は基板保持台11に基板Wが保持されていない状態でのマーク12の撮像画像を示す図、(b)は基板保持台11に基板Wが保持されている状態でのマーク12の撮像画像を示す図である。
【0025】
図5(b)から判るように、基板保持台11に基板Wが保持されている状態においては、カメラ13による基板Wを通したマーク12の撮像画像は、透明な基板Wによる光の屈折作用により、基板Wのエッジ外でのマーク12の撮像画像に対してずれて見える。したがって、カメラ13による基板Wを通したマーク12の撮像画像と基板Wのエッジ外でのマーク12の撮像画像との境部を基板Wのエッジ位置として検出することができる。
【0026】
この基板Wのエッジ位置の検出は、カメラ13により撮像された画像データを基に、制御装置14により実行される。また、制御装置14は、検出した基板Wのエッジ位置情報から予め設定された基板Wの基準位置に対するずれ量を算出するとともに、該ずれ量に応じて駆動機構24,25,26を駆動して基板保持台11をX,Y,θ(Z軸回りの揺動)方向に移動させ、基板Wの位置が基準位置となるように基板Wの位置補正を行なう。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、マーク12を透明な基板Wと共に撮像した際の基板Wを通したマーク12の撮像画像と基板Wのエッジ外でのマーク12の撮像画像との境部の位置情報を基に基板Wのエッジ位置を検出することができるので、透明な基板Wのエッジ位置を該基板Wのエッジに面取り等の特別な加工を施すことなく非接触で検出することができる。
【0028】
また、基板保持台11の上方に設置されたカメラ13による撮像データを基に透明な基板Wのエッジ位置を検出することができるので、従来のように、基板保持台11の下方に受光センサ等を配置しなくて済み、基板Wのエッジに面取り等の特別な加工を施す必要がないことと相まってコスト低減を図ることができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、プリアライメント装置20に本発明のエッジ位置検出装置を搭載した場合を例示したが、これに限定されず、近接露光装置や露光装置用のプリアライメント装置以外に本発明のエッジ位置検出装置を搭載するようにしてもよい。
また、本発明の基板は、透明な基板であればよく、液晶表示装置用としては、上述したカラーフィルタ基板だけでなく、アレイ基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の一例である透明基板のエッジ位置検出装置を備えるプリアライメント装置と近接露光装置とローダとの配置を示す概略平面図である。
【図2】近接露光装置の一例を説明するための図である。
【図3】プリアライメント装置の側面図である。
【図4】プリアライメント装置を基台側からみた下面図である。
【図5】基板保持台に設けられたマークをカメラで撮像した際の画像を示す図であり、(a)は基板保持台に基板が保持されていない状態でのマークの撮像画像を示す図、(b)は基板保持台に基板が保持されている状態でのマークの撮像画像を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
W 基板(透明基板)
10 エッジ位置検出装置
11 基板保持台(基板保持部)
12 マーク
13 カメラ(撮像手段)
14 制御装置(位置検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板保持部に保持される透明な基板のエッジ位置を検出する方法であって、
前記基板保持部に設けられたマークと交差する方向にエッジが延びるように、前記基板を前記基板保持部に保持する工程と、
前記マークと前記基板とを光の屈折を利用して撮像し、前記基板を通した前記マークの撮像画像と該基板のエッジ外での前記マークの撮像画像との境部の位置情報を基に前記基板のエッジ位置を検出する工程と、
を備えることを特徴とする透明基板のエッジ位置検出方法。
【請求項2】
前記基板保持部には、矩形上の前記基板の一辺のエッジが交差可能な少なくとも2つの前記マークと、該一辺と直交する他辺のエッジが交差可能な少なくとも1つの前記マークが設けられており、
前記エッジ位置検出工程において、前記少なくとも3つのマークを前記基板と共にそれぞれ撮像して、前記基板のエッジ位置を検出することで、前記基板の位置が測定されることを特徴とする請求項1に記載の透明基板のエッジ位置検出方法。
【請求項3】
透明な基板を保持可能であるとともに、前記保持された基板のエッジに対して交差するように延びるマークを有する基板保持部と、
前記マークと前記基板とを光の屈折を利用して撮像する撮像手段と、
該撮像手段による前記基板を通した前記マークの撮像画像と該基板のエッジ外での前記マークの撮像画像との境部の位置情報を基に前記基板のエッジ位置を検出する位置検出手段と、
を備えることを特徴とする透明基板のエッジ位置検出装置。
【請求項4】
前記基板保持部には、矩形上の前記基板の一辺のエッジが交差可能な少なくとも2つの前記マークと、該一辺と直交する他辺のエッジが交差可能な少なくとも1つの前記マークが設けられており、
前記撮像手段は、前記基板保持部の基板保持面と直交する方向に対して傾斜して配置され、前記少なくとも3つのマークと前記基板とを光の屈折を利用してそれぞれ撮像する少なくとも3つの撮像手段を有し、
前記位置検出手段は、前記少なくとも3つの撮像手段によって得られた前記位置情報を基に、前記基板の位置を測定することを特徴とする請求項3に記載の透明基板のエッジ位置検出装置。
【請求項5】
前記透明基板は、液晶表示装置用の基板であり、
前記基板保持部、前記撮像手段、前記位置検出手段は、前記基板のプリアライメントを行うプリアライメント装置に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の透明基板のエッジ位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−168507(P2009−168507A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4524(P2008−4524)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】