説明

透明導電性フィルム

【課題】可視光領域において高透過率を有し、透明導電層をパターニングしても、導電面と絶縁面で視認性の差を抑制することが出来る透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】透明導電性フィルム1は、透明基材2、第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4及び第1の透明導電層5を順次積層して形成する。なお、第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4及び第1の透明導電層5は、透明基材2の両面に形成されてもよい。第1の透明導電層5をパターニングすることにより形成されている第1の透明導電層5の上面の導電面6と絶縁色差調整層4の上面の絶縁面7とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等の表示入出力装置に使用される透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ画面を指で触れたり、ペンで押圧するだけで入力できる透明タッチパネルが普及している。このタッチパネルの電極として使用される透明導電性基材は基本的にガラスもしくは高分子フィルムに導電膜を積層した構成を有している。
特に近年では可撓性、加工性に優れ、軽量である等の点からポリエチレンテレフタレートをはじめとする高分子フィルムを使用した透明導電性フィルムが使用されている。
【0003】
タッチパネルには、静電容量結合式や光学式等の多様な方式のものが存在する。その中で、透明導電フィルムが使用されるのは、上下の電極が接触することでタッチ位置を特定する抵抗膜式や、静電容量の変化を感知する静電容量結合方式のものである。タッチパネルは、携帯用端末装置及び携帯ゲーム機等のディスプレイ前面に使用されており、そのため、ディスプレイの表示を損なわない透過・反射特性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−173238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチパネルに関しては可視光領域での高い透過率が要求される為、透明導電層と基材の間に適当な金属酸化物を挿入する技術が知られている。しかし、静電容量結合方式のタッチパネルに使用される透明導電性フィルムにおいては、導電層をパターニングする必要があるため、導電面と絶縁面との間の光学特性が異なることによる視認性の差が生じるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は可視光領域において高透過率を有し、透明導電層をパターニングしても、導電面と絶縁面で視認性の差を抑制することが出来る透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る透明導電性フィルムは、透明基材と、前記透明基材の少なくとも一方の面に形成された第1の透明導電層と、第2の透明導電層と、絶縁性を有する絶縁色差調整層を有し、前記第2の透明導電層と前記絶縁色差調整層は、前記透明基材上にそれらの順に形成され、前記第1の透明導電層は、前記絶縁色差調整層の前記第2の透明導電層と逆側の上面にパターニングすることにより形成され、前記第1の透明導電層の前記絶縁色差調整層と逆側の上面をなす導電面と、前記絶縁色差調整層の上面をなす絶縁面とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る透明導電性フィルムは、請求項1記載の透明導電性フィルムにおいて、L表色系における、前記導電面と前記絶縁面との反射色差ΔEabが0〜10の範囲内、透過色差ΔEabが0〜5の範囲内であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る透明導電性フィルムは、請求項1及び2記載の透明導電性フィルムにおいて、前記導電面の全光線透過率が90%以上であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る透明導電性フィルムは、請求項1から3記載の透明導電性フィルムにおいて、前記第2の透明導電層の膜厚が10nm以上25nm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る透明導電性フィルムは、請求項1から4記載の透明導電性フィルムにおいて、前記第1の透明導電層の膜厚が10nm以上50nm以下であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る透明導電性フィルムは、請求項1から5記載の透明導電性フィルムにおいて、前記第1の透明導電層の膜厚が前記第2の透明導電層の膜厚と等しいか、それより大きいことを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る透明導電性フィルムは、請求項1から6記載の透明導電性フィルムにおいて、 前記導電面と前記絶縁面の上に粘着層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高透過率を有し、透明導電層をパターニングしたときの導電面と絶縁色差調整層の絶縁面との視認性の差を抑制することができる。特に、第2の透明導電層を設けることにより、高い透過率と視認性の差を抑制することができ、さらに、貼り合せる液晶パネルの駆動信号起因のノイズを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムの基本的な層構成を表す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムにパターニング処理を行った層構成を表す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムに粘着層を配した構成を表す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例と比較例の評価結果を説明する為の表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態)
以下、本発明の透明導電性フィルムを実施するための最良の形態を、図面に沿って説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムの基本的な層構成を表す概略断面図である。図2は本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムにパターニング処理を行った層構成を表す概略断面図である。図3は本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルムに粘着層を配した構成を表す概略断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1は、透明基材2、第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4及び第1の透明導電層5を順次積層している。なお、第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4及び第1の透明導電層5は、透明基材2の両面に形成されてもよい。
【0018】
図2に示すように本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1は、第1の透明導電層5をパターニングすることにより形成されている第1の透明導電層5の上面の導電面6と絶縁色差調整層4の上面の絶縁面7とを具備している。
【0019】
図3に示すように本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1は、第1の透明導電層5をパターニングすることにより形成されている第1の透明導電層5の上面の導電面6と絶縁色差調整層4の上面の絶縁面7の上に粘着層8を具備している。
【0020】
透明基材2は透明なプラスチックフィルムからなっている。透明なプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムがある。その他ホモポリマーとして、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリアクリレート、ポリサルフォン等、およびこれら樹脂のモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマー等から成るプラスチックフィルムなどがある。
【0021】
これらの透明なプラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械的強度や寸法安定性などが優れたものが好ましい。特に、耐熱性や寸法安定性などの面から、二軸方向に延伸したポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。タッチパネル用途を考慮した場合、10〜250μm程度が好ましい。
【0022】
透明基材2は、一方又は両方の面にハードコート層などのプライマー層が積層されているものが好ましい。ハードコート層は、透明性と適度な硬度と機械的強度があれば、特に限定されるものではない。ハードコート層としては、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型のアクリルや有機珪素系の樹脂や、熱硬化型のポリシロキサン樹脂が好適である。これらの樹脂は、透明基材と屈折率が同等もしくは近似していることがより好ましい。ハードコート層の膜厚は、3μm以上あれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いから3〜7μmの範囲が好ましい。
透明基材2は、易接着処理、プラズマ処理及びコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0023】
第2の透明導電層3の材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化物あるいはその混合酸化物等をあげることができる。特に酸化インジウムと酸化錫の混合酸化物(ITO)が好適に用いられる。膜厚は透過率を考慮して、10nm以上25nm以下であることが望ましい。第2の透明導電層3の膜厚が10nm未満になると膜の均一性が得にくくなり、25nmを超えると膜の光の吸収により透過率の低下が起こる。
【0024】
絶縁色差調整層4の材料としては、低屈折率材料が好ましく、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化チタン、弗化マグネシウム、弗化バリウム、弗化カルシウム、弗化ハフニウム、弗化ランタン、弗化ナトリウム、弗化アルミニウム、弗化炭素、弗化鉛、弗化ストロンチウム、弗化イッテルビウム、弗化ネオジウム、弗化リチウム、弗化サマリウム等の化合物、または、これら化合物の混合物等が挙げられる。これら化合物の化学組成は、化学量論的な組成と一致しなくてもよい。
【0025】
第1の透明導電層5の材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛等の酸化物あるいはその混合酸化物等をあげることができる。特に酸化インジウムと酸化錫の混合酸化物(ITO)が好適に用いられる。
酸化インジウムを使用する場合、比抵抗や可視光線透過率を考慮すると、錫の含有率は2〜50重量%が好ましい。その厚みは、表面抵抗および光線透過率に影響するので、要求される表面抵抗と光線透過率によって厚みを適宜決定すれば良い。通常は、10〜50nm程度が好ましい。
第1の透明導電層5の膜厚は、表面抵抗と光線透過率とのバランスを考えて第2の透明導電層3の膜厚以上の大きさであることが好ましい。
【0026】
粘着層8の材料としては、粘着剤と可塑剤との混合物からなる所定の厚み(例えば10〜150μm)の層であり、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることが出来る。
【0027】
本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1において、L表色系における、導電面6と絶縁面7との反射色差ΔEabは0〜10であることが望ましい。反射色差ΔEabがこの範囲を外れると、パターニングの面が見え易くなる。また、本発明の実施の形態に係る透明導電性フィルム1において、L表色系における、導電面6と絶縁面7との透過色差ΔEabが0〜5の範囲であることが好ましい。この範囲を外れると、パターニングの面が見え易くなる。
なお、反射色差ΔEab、透過色差ΔEabは、以下の式(1)により求められる。
また、導電面6の全光線透過率は、90%以上であることが好ましい。
導電面6の全光線透過率が90%に満たないと、対向するITOガラス等と貼り合わせたときに、実用レベルの透過率が得られないため好ましくないからである。
【0028】
【数1】

【0029】
第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4及び第1の透明導電層5の製造方法については、特に限定はないが、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法又はCVD法等の真空成膜法が用いられる。透明導電膜5のパターニング方法としては、エッチング法や印刷法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
透明基材2として厚さ125μmのニ軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、両面にハードコート層が塗布されている。透明基材2の一方の面に第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4、第1の透明導電層5の順にマグネトロンスパッタリング法により成膜を行い、全光線透過率が90%、表面抵抗値が400Ω/□となるように、第2の透明導電層3、絶縁色差調整層4、第1の透明導電層5の膜厚を調整した。この場合、絶縁色差調整層4には酸化珪素を用い、第1の透明導電層5にはITOを使用した。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同様の構成で透明導電性フィルム1を作製し、塩酸系溶剤により第1の透明導電層5を部分的に溶解してパターン形成を行った。その後、第1の透明導電層5の上面の導電面6及び第1の透明導電層5を溶解することにより現れた絶縁色差調整層4の上面の絶縁面7上に厚み25μm、アクリル系粘着剤の粘着層8を配した。
【比較例1】
【0032】
第2の透明導電層3の代わりにTiO層を積層したこと以外は実施例1と同様の材料を使用し、全光線透過率が90%、表面抵抗値が400Ω/□となるようにTiO層、絶縁色差調整層、第1の透明導電層の膜厚を調整した透明導電性フィルムを作製した。
【比較例2】
【0033】
比較例1と同様の層構成で、第1の透明導電層5を部分的に溶解してパターン形成した際に、導電面6と絶縁面7との反射色差ΔEabが10以下及び透過色差ΔEabが5以下となるようにTiO層と絶縁色差調整層の膜厚を調整し、透明導電性フィルムを作製した。
【0034】
実施例1及び比較例1、2について、塩酸系溶剤により第1の透明導電層を部分的に溶解してパターンを形成した。これらの透明導電膜性フィルムの導電面と絶縁面のそれぞれについて、光学特性の測定及び目視による検査を行った。その結果、実施例1、2は、目視によるパターンが比較例1に対し、見え難いことが確認された。また、比較例2に対し、高い透過率を得られることが確認された。光学特性と併せて、その評価結果が表1に示されている。光学特性は、色相はU−4000分光光度計(日立製作所製)でD65光源2度視野にて測定を行い、JISZ8701に準じて色彩計算が行なった。全光線透過率はNDH−2000(日本電色製)を用いて、JISK7105に準じて測定を行った。
【0035】
光学特性の評価にはL表色系が用いられた。それぞれの数値は、以下に示す式(1)により求められる。
【0036】
【数2】

【0037】
表1に示す評価結果から、本発明の実施例1、2の透明導電性フィルムは、比較例1、2より、高透過率が得られる、あるいは、導電面と絶縁面とで視認性の差を抑制することが出来ることが分かった。
【符号の説明】
【0038】
1…透明導電性フィルム
2…透明基材
3…第2の透明導電層
4…絶縁色差調整層
5…第1の透明導電膜層
6…導電面
7…絶縁面
8…粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の少なくとも一方の面に形成された第1の透明導電層と、第2の透明導電層と、絶縁性を有する絶縁色差調整層を有し、
前記第2の透明導電層と前記絶縁色差調整層は、前記透明基材上にそれらの順に形成され、
前記第1の透明導電層は、前記絶縁色差調整層の前記第2の透明導電層と逆側の上面にパターニングすることにより形成され、
前記第1の透明導電層の前記絶縁色差調整層と逆側の上面をなす導電面と、前記絶縁色差調整層の上面をなす絶縁面とを具備する、
ことを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
表色系における、前記導電面と前記絶縁面との反射色差ΔEabが0〜10の範囲内、透過色差ΔEabが0〜5の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記導電面の全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1及び請求項2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記第2の透明導電層の膜厚が10nm以上25nm以下であることを特徴とする請求項1から3記載の透明導電性フィルム。
【請求項5】
前記第1の透明導電層の膜厚が10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1から4記載の透明導電性フィルム。
【請求項6】
前記第1の透明導電層の膜厚が前記第2の透明導電層の膜厚と等しいか、それより大きいことを特徴とする請求項1から5記載の透明導電性フィルム。
【請求項7】
前記導電面と前記絶縁面の上に粘着層を備える請求項1から6記載の透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−76802(P2011−76802A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225453(P2009−225453)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】