説明

透明導電性基板、及び電気化学表示素子

【課題】高透過率と低抵抗を兼備した優れた特性を備え、高品位な画像を得ることができる透明導電性基板、及び電気化学表示素子を提供する。
【解決手段】透明基板と、透明基板の上に形成されたパターン化された金属電極膜と、金属電極膜を含む透明基板の上に形成された透明絶縁膜と、透明絶縁膜の上に形成された透明導電膜と、を備え、透明導電膜は、透明絶縁膜に設けられた開口部を通して金属電極膜に電気的に接続されている透明導電性基板であって、金属電極膜のパターン形状は、縦横にそれぞれ延在する縦パターンおよび横パターンからなる格子状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性基板、及び電気化学表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイや太陽電池といった、受光側に透明導電膜を有する透明導電性基板を要するデバイスにおいては、電気特性を向上させる為に、透明導電膜の電気抵抗を低減することが求められている。しかしながら、近年のITOに代表される透明導電膜においては、高い透過率を維持しながら電気抵抗を低減させることは材料固有の抵抗率の限界から難しく、大型化の一途をたどるディスプレイデバイスや太陽電池への対応が困難になりつつある。特に、ディスプレイデバイスにおいて、電気化学反応により表示を行う電気化学表示素子は、液晶ディスプレイに比べ、電気抵抗を一桁以上低減させることが必要とされ、とりわけ低抵抗の透明導電性基板が求められている。そして、このような課題に対応する為、種々の方法が検討されている。
【0003】
例えば、透明基板の上に形成された低抵抗で補助電極として機能する細線状の金属電極膜と、該金属電極膜を含む透明基板の上に形成された透明絶縁膜と、該透明絶縁膜の上に形成された透明導電膜と、を備え、透明導電膜は、透明絶縁膜に形成された開口部を通して金属電極膜に電気的に接続された構成の透明導電性基板を備えた光学変調素子が知られている(特許文献1参照)。すなわち、金属電極膜により透明導電性基板の低抵抗化を図るとともに、金属電極膜を形成することにより生じる透明基板との段差を、透明絶縁膜で埋めることにより、透明導電膜が該段差で損傷を受けることを防止するようにしたものです。
【特許文献1】特開平2−63019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の透明導電性基板において、金属電極膜のパターンは、ストライプ状に形成されている。この為、金属電極膜に接続される透明導電膜の表面電位が均一にならず、表示濃度にムラが発生し高品位な画像を得ることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、高透過率と低抵抗を兼備した優れた特性を備え、高品位な画像を得ることができる透明導電性基板、及び電気化学表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の1から8の何れか1項に記載の発明によって達成される。
【0007】
1.透明基板と、
前記透明基板の上に形成されたパターン化された金属電極膜と、
前記金属電極膜を含む前記透明基板の上に形成された透明絶縁膜と、
前記透明絶縁膜の上に形成された透明導電膜と、を備え、
前記透明導電膜は、前記透明絶縁膜に設けられた開口部を通して前記金属電極膜に電気的に接続されている透明導電性基板であって、
前記金属電極膜のパターン形状は、縦横にそれぞれ延在する縦パターンおよび横パターンからなる格子状に形成されていることを特徴とする透明導電性基板。
【0008】
2.前記金属電極膜の周縁には、前記縦パターンおよび前記横パターンを囲ってそれぞれと接続する周縁横パターンおよび周縁縦パターンからなる矩形状のパターンが形成され、
前記周縁横パターンの線幅は、前記横パターンの線幅以上、複数の前記横パターンの線幅の総和以下、
前記周縁縦パターンの線幅は、前記縦パターンの線幅以上、複数の前記縦パターンの線幅の総和以下、であることを特徴とする前記1に記載の透明導電性基板。
【0009】
3.前記開口部は、前記縦パターンおよび前記横パターンの上に形成され、
前記開口部の幅は、前記縦パターンおよび前記横パターンの線幅よりも狭いことを特徴とする前記1または2に記載の透明導電性基板。
【0010】
4.前記縦パターンおよび前記横パターンの線幅は、前記開口部に対応する領域で、広くなっていることを特徴とする前記3に記載の透明導電性基板。
【0011】
5.前記開口部は、前記縦パターンと前記横パターンとが交差する領域の上に形成されていることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【0012】
6.前記透明絶縁膜は、前記金属電極膜の表面の80%以上、99%以下の領域を覆っていることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【0013】
7.前記開口部の上に位置する前記透明導電膜の上には、樹脂膜が形成されていることを特徴とする前記1から6の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【0014】
8.前記1から7の何れか1項に記載の透明導電性基板と、
前記透明導電性基板に対向し電解質を挟んで配され、基板の表面に電極膜が形成された電極基板と、を有することを特徴とする電気化学表示素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透明導電性基板の高透過率と低抵抗を満たす為に、金属電極膜のアスペクト比(膜厚/線幅)を大きくした場合に生じる、金属電極膜と透明基板との段差を、透明絶縁膜で埋めることにより、透明導電膜が該段差で損傷を受けることを防止することができる。さらに金属電極膜のパターン形状を、縦横にそれぞれ延在する縦パターンおよび横パターンからなる格子状に形成することにより、金属電極膜に接続される透明導電膜の表面電位が略均一となり、表示濃度のムラを抑えることができる。これらにより、高透過率と低抵抗を兼備した優れた特性を備え、高品位な画像を表示することができる透明導電性基板を得ることができる。
【0016】
また、このような透明導電性基板と、該透明導電性基板に対向し電解液を挟んで、基板の表面に電極膜が形成された電極基板と、を備えた構成の電気化学表示素子とすることにより、表示エリア全面渡って表示濃度が均一で表示ムラが無く、画像欠陥の少ない画像を表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明に係る透明導電性基板、及び電気化学表示素子の実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。また、以下の説明において、「透明」とは、可視光域(波長400nm〜700nm)での透過率が70%以上を指す。
【0018】
最初に本発明の実施形態に係る透明導電性基板の概略構成を図1を用いて説明する。図1は、透明導電性基板2の概略構成を示す断面模式図である。
【0019】
透明導電性基板2は、図1に示すように、透明基板201、金属電極膜203、透明絶縁膜202、透明導電膜204、及び樹脂膜206等から構成される。
【0020】
金属電極膜203と透明導電膜204は、透明絶縁膜202を挟んで透明基板201の表面に積層されて形成されている。透明絶縁膜202には開口部202aが形成され、透明導電膜204は、該開口部202aを通して金属電極膜203に電気的に接続されている。以下、透明導電性基板2の詳細、及びその製造方法の概要を図2、図3を用いて説明する。図2(a)、図2(b1)、図2(c1)、図2(d)、図2(e)は、透明導電性基板2の製造工程を示す断面模式図、図2(b2)、図2(c2)は、それぞれ図2(b1)、図2(c1)の平面模式図。また、図3は、金属電極膜203のパターン形状の全容を示す平面模式図である。尚、図2(b1)以下の断面模式図は、図2(b2)におけるA−A′断面を示す。
【0021】
最初に、図2(a)に示すように、透明基板201の表面全面に、金属電極膜203を形成する。金属電極膜203の形成方法としては、真空スパッタリング法や各種ウェットコーティング法等を用いることができる。金属電極膜203の材料としては、Au、Ag、Cu、Al、Cr、Mo、Ni等を用いることができる。
【0022】
次に、透明基板201の表面全面に形成された金属電極膜203をフォトリソグラフィー法を用いてパターンニングする。パターン形状は、図2(b1)、図2(b2)、図3(a)に示すように、縦方向と横方向のパターンからなる格子状の形状である。縦パターン203vと横パターン203hの交差部は、図2(b2)に示すように、円形状のパターン203aに形成する。また、交差部のパターン203aの径d1は、縦パターン203vの線幅vw、横パターン203hの線幅hwよりも広くする。後述のように、交差部のパターン203aは、透明導電膜204と電気的に接続されるが、交差部のパターン203aの径を、縦パターン203vの線幅vw、横パターン203hの線幅hwよりも広くすることにより、安定して確実に接続させることができる。一方では、縦パターン203vの線幅vw、横パターン203hの線幅hwを、交差部のパターン203aの径d1よりも狭くすることにより、開口率を上げ透過率を高めることができる。
【0023】
また、図3(a)に示すように、金属電極膜203の周縁には、縦パターン203v、横パターン203hを囲ってそれぞれと接続するパターン203H(周縁横パターン)、パターン203V(周縁縦パターン)からなる矩形状のパターンを形成する。パターン203Hの線幅Hw、パターン203Vの線幅Vwは、それぞれ、横パターン203hの線幅hw以上、複数の横パターンの線幅hwの総和以下、縦パターン203vの線幅vw以上、複数の縦パターンの線幅vwの総和以下、とする。周縁部のパターン203H、203Vの線幅を広くすることにより電気抵抗が小さくなる。しかしながら、総和以上になると、電気抵抗値は飽和に近づき、その効果は小さくなる。したがって狭額縁の観点から考えると、総和以下が望ましい。
【0024】
周縁部のパターン203H、203Vの線幅を広くすることにより電気抵抗が小さくなり、外部から入力される駆動信号を、その周波数特性を損なうことなく、すなわち信号波形をなまらせることなく内部のパターンに供給することができる。
【0025】
尚、交差部のパターン203aの形状は、円形に限定されることなく、楕円形、矩形、多角形等であってもよい。
【0026】
次に、パターン化された金属電極膜203が形成された透明基板201の表面に、透明絶縁膜202を形成する。透明絶縁膜202は、感光性絶縁材料(透明樹脂材料)を、例えばスピンコート法を用いてコートした後、露光、現像することで形成することができる。透明絶縁膜202を形成する際には、図2(c1)、図2(c2)に示すように、金属電極膜203の交差部のパターン203aの上に開口部202aを形成する。また、開口部202aの径d2は、金属電極膜203の交差部のパターン203aの径d1よりも小さくする。これにより、金属電極膜203の交差部のパターン203aの周縁のエッジ部が透明絶縁膜202で覆われる。この為、後述の透明絶縁膜202がエッジ部により損傷を受けることはない。
【0027】
また、透明絶縁膜202は、開口部202aを除き、金属電極膜203の大半(金属電極膜203全面の80%以上、99%以下)を覆って形成されているので、金属電極膜203を保護し、腐食を防止することができる。表面を覆う割合が高ければ高い程、不良率が低下する為歩留まりが高くなる。一方、99%以下でないと、透明導電膜204と金属電極膜203との良好なコンタクトが取れない。よって80%以上、99%以下が好適である。
【0028】
次に、開口部202aが形成された透明絶縁膜202の表面に、透明導電膜204を形成する。透明導電膜204の形成方法としては、スパッタリング法や各種ウェットコーティング法等を用いることができる。透明導電膜204の材料としては、スパッタリング法を用いる場合は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等の無機酸化物等を用いることができる。また、各種ウェットコーティング法等を用いる場合は、ポリスチレンスルホン酸ドープポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT/PSS)に代表される導電性高分子等を用いることができる。尚、この時、図2(d)に示すように、透明導電膜204は、透明絶縁膜202の開口部202aを通して金属電極膜203の交差部のパターン203aに接続される。
【0029】
次に、図2(e)に示すように、透明導電膜204の金属電極膜203と接続される領域の表面に、例えばインクジェット法を用いて、樹脂膜206を形成する。これにより、透明導電膜204にピンポール等の欠陥が発生したした場合でも、金属電極膜203を保護し、腐食を防止することができる。
【0030】
このようにして、透明導電性基板2を得る。尚、透明導電性基板2の製造方法の詳細は(実施例)にて後述する。
【0031】
次に、本発明の実施形態に係る電気化学表示素子の構成を図4を用いて説明する。図4は、電気化学表示素子1の概略構成を示す断面模式図である。
【0032】
電気化学表示素子1の要部は、図2に示すように、透明導電性基板2、電極基板3、及び電解液6等から構成される。
【0033】
電極基板3は、基板301、及び基板301の表面に形成された電極膜303等から構成される。
【0034】
電気化学表示素子1は、観察側に透明導電性基板2が、非観察側に電極基板3が配され、透明導電性基板2の透明導電膜204と電極基板3の電極膜303とが対向するように配置されている。
【0035】
透明導電膜204と電極膜303との間には、ECD素子の場合は、エレクトロクロミック色素と電解液6が充填されており、ED素子の場合には、銀、または銀を化学構造物中に有する化合物を含有した電解液6が充填されている。
【0036】
また、電解液6の中には白色度を高める為に、TiO等の微粒子を混入もしくは、微粒子を水溶性高分子等のバインダーを用いて多孔質化した層を配しても良い。
【0037】
電気化学表示素子1の観察側の基板として、本発明の実施形態による透明導電性基板2を用いることにより、表示面積が大きくなった場合においても電気抵抗に起因する表示濃度のムラを抑えることができる。尚、この場合、非観察側の基板301としては、ガラスやPET等の透明基板の表面に透明導電膜、または金属電極膜を形成した基板を用いることができる他、非観察側の基板301は、必ずしも透明である必要はなく、ステンレスフォイルやポリイミドといった基板も用いることができる。
【0038】
ここで、ECD材料、ED材料、電解液等の詳細を説明する。
【0039】
〔ECD材料〕
本発明の実施形態に係わる電気化学表示素子1に用いられるエレクトロクロミック色素は、電子の供受により光吸収状態を変化させる化合物であり、有機化合物や金属錯体を用いることができる。有機化合物としては、ピリジン化合物や導電性高分子、スチリル化合物を用いることができ、特開2002−328401号公報に記載の各種ビオロゲン化合物、特表2004−537743号に記載の色素、その他公知の色素を用いることができる。また、ロイコ型色素を用いる場合には、必要に応じて顕色剤あるいは消色剤を併用してもよい。
【0040】
これらの材料は、電極の表面に直接塗布してもよいし、電子の供受をより効率的に行う為に、TiOに代表される酸化物半導体ナノ構造を電極上に形成し、その上にエレクトロクロミック材料をインクジェット法等の方法により塗布・含浸させてもよい。
【0041】
〔ED材料〕
本発明の実施形態に係わる電気化学表示素子1に用いられる銀または銀を化学構造中に含む化合物とは、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態、液体への可溶化状態、気体状態等の相の状態種、また、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に限定されない。
【0042】
また、電解液6に含まれる銀イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Ag]≦2.0モル/kgが好ましい。銀イオン濃度が0.2モル/kgより少ないと希薄な銀溶液となり駆動速度が遅延し、2モル/kgよりも大きいと溶解性が劣化し、低温保存時に析出が発生し易くなる。
〔電解液〕
電解質とは、通常、水等の溶媒に溶けて、その溶液がイオン伝導性を示す物質を示すが、本実施形態においては、電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質という。
【0043】
透明導電膜204と電極膜303との間に充填する電解質は、有機溶媒、イオン性液体、酸化還元活性物質、支持電解質、錯化剤、白色散乱物、高分子バインダー等を適宜選択して構成される。
【0044】
以下、本実施形態に係る電解質の各構成要素について詳述する。
(低粘度電解質、ゲル状電解質)
電解質層は、通常、液体電解質とポリマー電解質とに分類される。ポリマー電解質は、さらに、実質的に固体化合物からなる固体電解質と高分子化合物と液体電解質からなるゲル状電解質に分類される。また、流動性の観点からは、固体電解質は実質的に流動性がなく、一方、ゲル状電解質は液体電解質と固体電解質の中間の流動性を有している。
【0045】
従って、本実施形態におけるゲル状電解質とは、室温環境下で高粘性を備え、かつ流動性を有する液状電解質を示し、例えば、25℃における粘度が、100mPa・s以上、1000mPa・s以下のゲル状もしくは高粘度電解質液を示す。尚、本実施形態におけるゲル状電解質は、温度によるゾルゲル変化を生じる特性を必ずしも備えている必要はない。また、本実施形態における低粘度電解質の粘度は、25℃における粘度が、0.1mPa・s以上、100mPa・s未満である電解質液を示し、電解質の溶媒に対する高分子バインダーの量が質量比で10%未満であることが好ましい。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係わる透明導電性基板2、及び電気化学表示素子1の実施例を説明する。
【0047】
(実施例1)
最初に、前述の図2を用いて透明導電性基板2の実施例を説明する。
【0048】
先ず、ガラス基板(図2(a):透明基板201)の表面全面に、AgPdを真空スパッタリング法を用いて0.5μmの膜厚で成膜し、金属電極膜203を形成した。
【0049】
次に、フォトリソグラフィー法を用いて金属電極膜203をパターンニングした(図2(b1)、図2(b2)、図3(a))。パターンは以下の形状とした。
【0050】
縦パターン203v、横パターン203hの線幅vw、線幅hw:何れも7μm
交差部のパターン203aの径d1:14μmΦ
ピッチ:141μm
縦パターン203vの本数:599本
横パターン203hの本数:799本
周縁縦パターン203Vの線幅Vw:3mm(>599×0.007/2)
周縁横パターン203Hの線幅Hw:3mm(>799×0.007/2)
次に、スピンコート法を用いてPC403(JSR社製の感光アクリル樹脂)を1.5μmの膜厚で成膜した後、露光、現像し、金属電極膜203の交差部のパターン203aの上に開口部202aを有する透明絶縁膜202を形成した(図2(c1)、図2(c2))。開口部202aの径d2は、10μmΦとした。また、透明絶縁膜202は、開口部202aを除き、金属電極膜203の大半(金属電極膜203全面の約96%)を覆って形成した。
【0051】
次に、真空スパッタリング法を用いてITO膜を0.1μmの膜厚で成膜し、透明導電膜204を形成した(図2(d))。
【0052】
次に、インクジェット法を用いて、樹脂膜206を形成し、透明導電性基板2を完成させた(図2(e))。
【0053】
得られた透明導電性基板2のシート抵抗は1.2Ω/□、全光線透過率は75%であった。パネル作成の為、ITO膜をウェットエッチングにてパターンニングしたが、金属電極膜203は腐食されることなく良好な特性を示すことが確認できた。
【0054】
(実施例2)
実施例2は、本発明の実施形態に係わる電気化学表示素子1の実施例である。図5に実施例2による電気化学表示素子1の製造方法を示す。図5(a)乃至図5(e)は、電気化学表示素子1の製造工程を示す断面模式図である。
【0055】
最初に、実施例1で得られた透明導電性基板2を観察側として、また、非観察側としてガラス基板(図5(a):基板301)の表面に形成された図示しないa−Si・TFTアレイに画素電極として100nmの銀パラジウム電極(図5(a):電極膜303)を形成したもの(図5(a):電極基板3)、とを準備した。
【0056】
次に、銀パラジウム電極上にポリビニルアルコール(平均重合度3500、けん化度87%)2質量%を含むイソプロパノール溶液中に、酸化チタン20質量%を超音波分散機で分散させた混和液を各セルに塗布し、加熱乾燥させることにより散乱層5を形成した(図5(b))。散乱層5の厚みは約20μmであった。
【0057】
次に、電極基板3の表面にエポキシ樹脂により電解液のシーリーング材7を、図示しない注入口を除いてディスペンサ法により高さ40μmとなるように形成した(図5(c))。
【0058】
次に、シーリーング材7が形成された電極基板3と、透明導電性基板2とを対向させて重ね合わせた後、エポキシ樹脂を硬化させることによりセル構造を得た(図5(d))。
【0059】
続いて、ジメチルスルホキシド2.5g中に、ヨウ化ナトリウム90mg、ヨウ化銀75mgを加えて完全に溶解させた後に、ポリビニルピロリドン(平均分子量15000)を150mg加えて120℃に加熱しながら1時間攪拌して得た電解液6を真空注入法にてセルに注入して電気化学表示素子1を完成させた(図5(e))。
【0060】
完成した電気化学表示素子1に、全面グレー表示させたが表示エリア全面に渡って表示濃度が均一で表示ムラが無く、透明導電膜204の欠陥に起因する画像欠陥も見られない良好な画像が得られた。
【0061】
このように本発明の実施形態に係る透明導電性基板2においては、透明導電性基板2の高透過率と低抵抗を満たす為に、金属電極膜203のアスペクト比(膜厚/線幅)を大きくした場合に生じる、金属電極膜203と透明基板201との段差を、透明絶縁膜202で埋めることにより、透明導電膜204が該段差で損傷を受けることを防止することができる。さらに金属電極膜203のパターン形状を、縦横にそれぞれ延在する縦パターン203vおよび横パターン203hからなる格子状に形成することにより、金属電極膜203に接続される透明導電膜204の表面電位が略均一となり、表示濃度のムラを抑えることができる。これらにより、高透過率と低抵抗を兼備した優れた特性を備え、高品位な画像を表示することができる透明導電性基板2を得ることができる。
【0062】
また、本発明の実施形態に係わる透明導電性基板2と、該透明導電性基板2に対向し電解液6を挟んで、基板301の表面に電極膜303が形成された電極基板3と、を備えた構成の電気化学表示素子1とすることにより、表示エリア全面渡って表示濃度が均一で表示ムラが無く、画像欠陥の少ない画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る透明導電性基板の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る透明導電性基板の製造工程を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る金属電極膜のパターン形状を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気化学表示素子の概略構成を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電気化学表示素子の製造工程を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 電気化学表示素子
2 透明導電性基板
201 透明基板
202 透明絶縁膜
203 金属電極膜
204 透明導電膜
206 樹脂膜
3 電極基板
301 基板
303 電極膜
5 錯乱層
6 電解液
7 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板の上に形成されたパターン化された金属電極膜と、
前記金属電極膜を含む前記透明基板の上に形成された透明絶縁膜と、
前記透明絶縁膜の上に形成された透明導電膜と、を備え、
前記透明導電膜は、前記透明絶縁膜に設けられた開口部を通して前記金属電極膜に電気的に接続されている透明導電性基板であって、
前記金属電極膜のパターン形状は、縦横にそれぞれ延在する縦パターンおよび横パターンからなる格子状に形成されていることを特徴とする透明導電性基板。
【請求項2】
前記金属電極膜の周縁には、前記縦パターンおよび前記横パターンを囲ってそれぞれと接続する周縁横パターンおよび周縁縦パターンからなる矩形状のパターンが形成され、
前記周縁横パターンの線幅は、前記横パターンの線幅以上、複数の前記横パターンの線幅の総和以下、
前記周縁縦パターンの線幅は、前記縦パターンの線幅以上、複数の前記縦パターンの線幅の総和以下、であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性基板。
【請求項3】
前記開口部は、前記縦パターンおよび前記横パターンの上に形成され、
前記開口部の幅は、前記縦パターンおよび前記横パターンの線幅よりも狭いことを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電性基板。
【請求項4】
前記縦パターンおよび前記横パターンの線幅は、前記開口部に対応する領域で、広くなっていることを特徴とする請求項3に記載の透明導電性基板。
【請求項5】
前記開口部は、前記縦パターンと前記横パターンとが交差する領域の上に形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【請求項6】
前記透明絶縁膜は、前記金属電極膜の表面の80%以上、99%以下の領域を覆っていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【請求項7】
前記開口部の上に位置する前記透明導電膜の上には、樹脂膜が形成されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の透明導電性基板。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の透明導電性基板と、
前記透明導電性基板に対向し電解質を挟んで配され、基板の表面に電極膜が形成された電極基板と、を有することを特徴とする電気化学表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−108684(P2010−108684A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278025(P2008−278025)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】