説明

透明導電膜付基板、及びそれを用いた表示素子及び太陽電池

【課題】
透明導電膜付基板について、ITO部分のみを後に回収する場合、簡便な手法によって行う。
【解決手段】
基板(1)と、第1の透明導電膜(2)と、前記第1の透明導電膜に対して、前記基板が配置された側とは反対側に配置された第2の透明導電膜(3)とを有し、前記第1の透明導電膜は、Zn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiの酸化物を含有し、前記第2の透明導電膜は、酸化インジウムを主成分とし、前記第1の透明導電膜のエッチングレートは前記第2の透明導電膜のエッチングレートより大きく、前記第1の透明導電膜の膜厚は10nm以上であり、前記第1の透明導電膜は、B,Al、もしくはGaを含有することを特徴とする透明導電膜付基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜付基板、及びそれを用いた表示素子及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、各種携帯電話や移動体端末,モバイルコンピュータ,カーナビゲーション等の普及により、軽量で、高精彩,高輝度でかつ安価な小型な平面ディスプレイ(Flat Panel Display,FPD)への要求は高まっている。また、家庭内やオフィスにおいても、省スペース型のデスクトップディプレイや壁掛けテレビ等の平面ディスプレイが、従来のCRT管ディスプレイから置き換わりつつある。特に、高速インターネットの普及やデジタル放送の進展により、数百〜数ギガビット/秒級のデジタル信号伝送が有線,無線の双方で実用化され、一般利用者が極めて大容量の情報をリアルタイムにやり取りする時代に移りつつある。このことから、これら平面ディプレイに対する要求は従来以上の軽量性,高精彩,高輝度,低価格に加えて、デジタル信号処理可能な高速表示性が求められている。このようなFPDには、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display,LCD),プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel,PDP),フィールドエミッションディスプレイ(Field Emission Display),有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode,OLED)ディスプレイ、等々が知られている。これらのディスプレイにおいては、各表示画素に電場や電流を印加することで、光の発生または光量の調節を行い、同時にその光を素子外部に取り出す必要から、可視光は透過するが、電気も流すことが可能な透明電極が用いられている。
【0003】
同時に、新しいディスプレイや移動体通信の普及は世界規模での経済規模を発展させ、著しいエネルギー消費を巻き起こしている。エネルギー資源の供給形態としての太陽電池への要求も高まり、一層高効率で省資源型の太陽電池が求められている。太陽電池にはシリコン単結晶や多結晶を切削加工するバルグ型が最初に実用化されたが、良質のシリコンが枯渇し、より少ない原料で素子形成可能な薄膜型が着目されている。このような太陽電池においては、可視光のみならず、紫外線から赤外線にわたる幅広い波長の光を透過可能な透明電極が求められている。
【0004】
透明電極材料は、大きく結晶系と非晶質系に分類される。結晶系としては、インジウム−スズ酸化物(Indium-Tin-Oxide,ITO)を含む酸化インジウムIn23系,酸化亜鉛ZnO系,酸化スズSnO2系,酸化チタンTiO2系,酸化カドミウムスズCdSnO4系が知られている。また、非晶質系には酸化インジウム亜鉛IZO系(Indium Zinc Oxide。In23とZnOの中間組成で現れる非晶相。代表的にはIn23が80%)が挙げられる。これらの中で圧倒的に普及している透明電極材料は、酸化インジウムIn23系の一種であるITO(In23結晶に10〜20%のスズSnでInを置換したもの。)である。ITOを透明電極として薄膜形成する代表的手法はスパッタ法である。これは透明電極材料であるITOのターゲットを真空装置内に、薄膜形成させたい基板に対向させて配置し、アルゴンArや酸素O2ガスをスパッタガスに用いてターゲット材料を気化させ、基板上に堆積させていく。この手法によって膜厚数十〜数百nmのITO薄膜が、数m角サイズの大型基板上に一括成膜されている。また、ITOからなる透明電極は、FPDを構成するその他の部材とのマッチング性やフォトレジストによるパターニング加工性、途中での加熱処理等によってもその特性が変化することなく、安定である。
【0005】
しかしながら、ITOは稀少金属であるインジウムInを主要成分に含むが、In自身の地下埋蔵量は限られ、かつ亜鉛鉱石の副産物としてしか産出されないため、資源枯渇が懸念されている。このようなことから、ITOに代わる代替え透明電極材料が渇望されている。ITO以外の透明電極材料のうち、SnO2系,TiO2系は導電性自体がITOに比べて1桁以上大きく、かつ加工性に難がある。CdSnO4系はCdの毒性があるため余り検討されていない。IZO系は主成分がInであるため、Inを用いない代替え材料とは言い難い。ITOに近い透明性,導電性が得られているものはZnO系であり、これが代替え材料の最有力候補とされる。しかしながら、現在完全にITOを代替え可能な水準にはなく、透明導電膜としての物性以外に、量産プロセス適合性,エッチング等のパターニング性,プロセス安定性,長期安定性等、残された課題は多い。
【0006】
このような状況の中、Inを回収リサイクルする動きは、より活発である。非特許文献1によると、LCD製造工程におけるITOのフローを見ると、ITOスパッタターゲットの70%は成膜されずに回収されており、30%が成膜によって消費されている。この30%のうち、マスキング材付着15%,ベルジャー内壁付着5%,エッチング液5%,不良パネル2%が含まれ、最終製品には3%のITOが含まれる。その量は30インチの液晶テレビで0.18gに過ぎない。今日、既にスパッタターゲットやマスクキング材,ベルジャー内壁付着の回収は進められているが、それでもなおInの希少性は変わらず、工程外に搬出される最終製品の中に含まれるITOも効率よく回収する必要に迫られている。最終製品パネルからのITO回収技術については、例えば非特許文献2に記載されており、ITOを塩酸に溶解させたものに各種薬液処理や吸着処理を施して、Inを回収している。このため、Inを化学的に処理するための多くの化学物質を必要とし、環境負荷をかえって高めている。かつ、大きな化学プラントを必要とするため、ITOスパッタターゲットの3%しか含まれない最終製品パネルからのIn回収コストを高くしている。
【0007】
【非特許文献1】遠藤小太郎「希少資源の循環とリサイクル インジウムを例として:第12回リサイクル・技術研究部会資料 廃棄物学会資料」(2007/3/26)
【非特許文献2】本馬隆道、村谷利明、「LCD廃パネルよりのマテリアル回収」、シャープ技報、第92号(2005/8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、製品に含まれるITOに代表される酸化インジウムを主成分とする透明導電膜を効率良く回収するためには、なるべく簡便かつ低コストな回収方法であることが望ましい。特に、ITOをITOとして回収することで、余分な化学薬液処理を必要とせず、その他部材との分離,精製が容易となる。
【0009】
本発明の目的は、簡便な手法によってITO部分のみを後に回収できる透明導電膜付基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、本発明は、基板と、第1の透明導電膜と、第1の透明導電膜に対して、基板が配置された側とは反対側に配置された第2の透明導電膜とを有し、第2の透明導電膜は、酸化インジウムを主成分とし、第1の透明導電膜のエッチングレートは、第2の透明導電膜のエッチングレートより大きいことを特徴とする透明導電膜付基板である。
【0011】
また、本発明は、基板と、透明導電膜とを有し、透明導電膜は、第1の元素としてインジウムを含有し、透明導電膜は、第2の元素としてZn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiを含有し、透明導電膜において、透明導電膜における基板面とは反対側の面側の第1の元素の濃度は、透明導電膜における基板面側の前記第1の元素の濃度より大きく、透明導電膜において、透明導電膜における基板面側の前記第2の元素の濃度は、透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第2の元素の濃度より大きいことを特徴とする透明導電膜付基板である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、簡便な手法によってITO部分のみを後に回収できる透明導電膜付基板、及びそれを用いた表示素子及び太陽電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図面等を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の透明導電膜付基板の基本的な構造を、図1及び図2を用いて説明する。本発明でいう酸化インジウムを主成分とする透明導電膜とは、主成分がインジウムInと酸素Oとからなる無機化合物薄膜であり、インジウム以外に複数の元素を添加元素として含有することができる。そのような添加元素としては、例えばホウ素B,アルミニウムAl,ガリウムGa,インジウムIn,炭素C,シリコンSi,ゲルマニウムGe,スズSn,窒素N,フッ素F,スカンジウムSc,チタンTi,バナジルV,ニッケルNi等の元素をインジウムIn及び酸素O以外の添加元素として含むことができる。また、本発明では、酸化インジウムを主成分とする透明導電膜としているが、その中で代表的な透明導電膜として、ITO(スズ添加酸化インジウム)が挙げられる。
【0015】
図1(a)には、本発明の透明導電膜付基板の断面構造を模式的に示した。図1(a)における透明導電膜付基板は、基板1の上に形成された第1の透明導電膜2と、その直上に形成された第2の透明導電膜3からなる。この透明導電膜付基板の特徴を説明するために、膜厚方向をz方向とし、基板1と第1の透明導電膜2との界面の位置をz0、第1の透明導電膜2と第2の透明導電膜3との界面をz1、第2の透明導電膜3の最上面をz2とする。この第1の透明導電膜2と第2の透明導電膜3には、組成の異なる2種類の透明導電材料を積層して形成するが、その組成や作製方法は、後に示すような条件を満たすことが望ましい。図1(b)には、図1(a)に示した透明導電膜の元素組成比のz方向の変化を模式的に示した。ここでは、一例として、第1の透明導電膜2に酸化亜鉛ZnO、第2の透明導電膜3にITOを用いた場合を示しているが、図1(a)のような透明導電膜の場合、各層を構成する元素(ここでは便宜上、酸素は示していない)比は、第1の透明導電膜2と第2の透明導電膜3との界面をz1で不連続的に変化している。
【0016】
第1の透明導電膜2について、例えば、酸化物系の他の透明導電材料である、酸化亜鉛ZnO,酸化スズSnO2,酸化チタンTiO2等を挙げることができるが、透明導電性として、比抵抗1×10-3Ωcm以下の低抵抗であって、可視光域の平均透過率が60%以上の透明導電材料、例えばAg微粒子を分散させたSiO2分散膜等を挙げることができ、この場合主成分はSiであるが、導電性はAg微粒子が担っている。
【0017】
本発明に係る透明導電膜を構成する透明導電膜の膜厚比率や膜厚方向の組成比率分布を最適化することにより、透明導電膜としての可視光透過率と導電性を損なうことなく、その主成分たる酸化インジウムを容易に回収することができる。このような特徴を実現する第1の透明導電膜の膜厚は10nm以上であることが望ましく、特に用いた酸化インジウムを半分以上の酸化インジウムとして回収するには20nm以上であることが望ましい。酸化インジウムとして回収できる割合が高い程、該透明導電膜を各種製品に実装したものから容易に回収できると共に、再び酸化インジウム原料としての再利用や、薬液を用いずにアルカリ土類金属との混錬による金属インジウムへの還元等、より省エネルギーで低コストな資源回収が可能となる。
【0018】
ここで、第1の透明導電膜の膜厚が10nmよりも薄い場合、実際のスパッタ成膜等の膜厚平坦性から鑑みて、酸化インジウムを主成分とする第2の透明導電膜が部分的に基板に接する領域が発生し、第2の透明導電膜を効果的に剥離して回収することが困難になる。また、第1の透明導電膜の膜厚の上限については、その透明導電膜の用途によって異なり、例えば、LCD用途の透明電極の場合は300nm程度、PDP用途の透明電極の場合は1μm程度、太陽電池用途の透明電極の場合は1μm程度が素子としての透明電極の膜厚上限であることから、これらよりも小さいことが必要である。
【0019】
図2(a)には、本発明の透明導電膜付基板のもう1つの断面構造を模式的に示した。図2(a)における本発明の透明導電膜付基板は、基板4の上に形成された透明導電膜5からなる。透明導電膜5の特徴を説明するために、膜厚方向をz方向とし、基板4と透明導電膜5との界面の位置をz0、透明導電膜5の最上面をz2とし、その間の任意の位置をzとする。この透明導電膜5は、連続的に元素組成が変化するように形成するが、その具体的組成や作製方法は後に示すような条件を満たすことが望ましい。図2(b)には、図2(a)に示した透明導電膜5の元素組成比のz方向の変化を模式的に示した。ここでは、一例として、亜鉛Zn,インジウムIn,スズSnの3つの元素からなる透明導電膜5を用いた場合を示しているが、図2(a)のような透明導電膜5の場合、各層を構成する元素(ここでは便宜上、酸素は示していない)比はz軸方向に連続的に変化し、特にある位置zで急速に変化している。
【0020】
透明導電膜としての特性を維持しつつ、製品からの回収も容易となるためには、後に実施例で示すような特定の組成分布が必要となる。同時に、完成された透明導電膜が本発明の構成を有しているかどうかについては、膜厚方向の元素組成分析、例えばアルゴン等でスパッタしながらAESやTOF−SIMS等の分析を行うことによって知ることができる。或いは、図1(a)のような明確な層構造の違いがある場合は、断面TEM等の構造分析によって分析することも可能である。
【0021】
但し、分析の感度によって、例えば図1(a)のような二層の透明導電膜からなる場合でも、その元素プロファイルは図1(b)のような明確なものとならず、図2(b)のような連続的変化に見える場合もある。後に示すように、製造工程上は、図1(a)のような二層の透明導電膜形成を狙ったにも関わらず、出来上がった透明導電膜の界面で素材の混合部分が発生し、図2(a)のような透明導電膜になった場合もある。いずれの場合も、ある種の組成分布の実現により、本発明が目指す透明導電膜としての特性とその製品回収効率の高さの両立が可能となったものである。
【0022】
本発明の透明導電膜を特徴づける溶解性のパラメータとして、エッチングレートを用いている。その評価には、濃度6mol/l,液温20〜40℃の酢酸水溶液に対するエッチングレートを測定することによって行う。例えば、2つの透明導電膜からなる透明導電膜であって、それぞれ単独状態で入手できる場合は、それぞれの透明導電膜を上記エッチング液に浸漬し、時間経過と膜減少の関係からエッチングレートを求めることができる。また、例えば2つの透明導電膜からなる透明導電膜であって、それぞれ単独状態で入手できない場合や、膜厚方向に組成が連続的に変化するような透明導電膜からなる場合は、対象となる透明導電膜を基板ごと膜厚方向に破断し、その破片を上記エッチング液に浸漬し、時間の経過と膜面内方向の膜外周部の後退量をSEM等の分析手段によって測定することによりエッチングレートを求めることができる。
【0023】
本発明の透明導電膜を得る手法には、所謂物理的作製方法のスパッタ法が主に用いることが可能であり、具体的にはDCスパッタ法,DCマグネット論スパッタ法,RFスパッタ法,RFマグネトロンスパッタ法,対向ターゲットスパッタ法,ECRスパッタ法,デュアルマグネトロンスパッタ法、等を用いることができる。
【0024】
本発明の透明導電膜を薄膜化する基板としては、コーニング1737等の一般的な硼珪ガラスや溶融石英等のガラス基板、或いはシリコンや石英等の単結晶基板,SUSや銅,アルミニウム等の金属基板,ポリカーボネート(Polycarbonate)やポリアクリレート(Polyacrylate)等のプラスチック基板、或いはこれらを組み合わせた多層基板を用いることができる。或いは、基板はその母材からの切り出し研磨,射出成形,サンドブラスト法,ダイシング法等の手法によって形成することができる。別の形態として、既に下地に薄膜トランジスタや配線パターニングされたものの上に本発明の透明導電膜を形成したり、或いは別途そのような加工が施された基板と本発明の透明導電膜を形成した別の基板とを貼り合わせたりすることが可能である。
【0025】
本発明に係る透明導電膜または素子形成の過程で、必要とする薄膜または素子構造を作製するために、各種精密加工技術を用いることができる。例えば、精密ダイアモンド切断加工,レーザ加工,エッチング加工,フォトリソグラフィ,反応性イオンエッチング,集束イオンビームエッチング等が挙げられる。また、あらかじめ加工された薄膜または素子を複数個配列させたり、多層化したり、またはその間を光導波路で結合したり、またはその状態で封止したりすることもできる。
【0026】
本発明に係る透明導電膜は、素子を不活性ガスまたは不活性液体を充填させた容器に保存することをも可能である。更に、その動作環境を調整するための冷却または加熱機構を共存させることもできる。容器に用いることができる素材としては銅,銀,ステンレス,アルミニウム,真鍮,鉄,クロム等の各種金属やその合金、或いはポリエチレンやポリスチレン等の高分子材料等にこれら金属を分散させた複合材料,セラミック材料等を用いることができる。また、断熱層には発泡スチロール,多孔質セラミックス,ガラス繊維シート,紙等を用いることができる。特に、結露を防止するためのコーティングを行うことも可能である。また、内部に充填する不活性液体としては、水,重水,アルコール,低融点ワックス,水銀、等の液体やその混合物を用いることができる。また、内部に充填する不活性ガスとしては、ヘリウム,アルゴン,窒素等を挙げることができる。また、容器内部の湿度低減のために、乾燥剤を入れることも可能である。
【0027】
また、本発明に係る透明導電膜は、製品の形成後に、外観,特性の向上や長寿命化のための処理を行ってもよい。こうした後処理としては、熱アニ−リング,放射線照射,電子線照射,光照射,電波照射,磁力線照射,超音波照射等が挙げられる。更に、該有機電界発光素子を各種の複合化、例えば接着,融着,電着,蒸着,圧着,染着,溶融成形,混練,プレス成形,塗工等、その用途または目的に応じた手段を用いて複合化させることができる。また、本発明に係る酸化亜鉛薄膜を透明導電膜として用いた素子、特に表示素子においては、駆動させるための電子回路と近接させて高密度実装させることも可能であり、外部との信号の授受のインターフェースやアンテナ等と一体化することもできる。
【0028】
本発明に係る透明導電膜付基板は、薄膜形成手法によっては、例えば、半導体性や絶縁性の酸化インジウム薄膜を形成することも可能である。
【0029】
本発明は、各種光電子素子、例えば、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ,有機発光ダイオード素子,太陽電池、等に用いることができる。或いは、タッチパネル,電磁波シールド,無機発光ダイオードやレーザダイオード等、透明導電膜を利用する各種デバイスに本発明の酸化インジウムを主成分とする透明導電膜を用いることができる。
【0030】
本発明に係る透明導電膜付基板を透明電極として使用した表示素子の一例を図3〜図6に示す。なお、図3〜図6に示した表示素子や太陽電池は、本発明の適用例であり具体的な構造はこれらに限定されるものではない。
【0031】
図3には、表示素子として液晶ディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイスの中では、上下に対向した透明電極付の基板に液晶が挟まれたタイプの液晶ディスプレイについて示している。透明電極6及び6′は上下に対向した基板11及び11′上に形成されている。上部の基板11表面には、RGBのカラーフィルタ10,ブラックマトリクス8,透明電極6及び配向膜7等が形成されており、その面が液晶9に接している。基板11の液晶9側とは反対側の表面には偏光板12が貼り付けられている。また、下部の基板11′表面には透明電極6′,配向膜7′が形成されており、その面が液晶9に接している。基板11′の基板11の液晶9側とは反対側の表面には偏光板12′が貼り付けられており、その更に下部には光源14が設けられている。上下の基板11及び11′は接着材13及び13′を介して一定間隔に保たれており、その間に液晶9が充填されており、その外部には駆動回路15及び15′が設けられている。
【0032】
図4には、表示素子としてプラズマディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイスの中では、前面ガラス基板17上に表示電極として透明電極16が設けられており、更に電圧降下を抑制するためのバス電極18,上部誘電体層19,保護層(MgO)20が形成されている。その下には、RGB蛍光体24を含む背面ガラス基板25上の構造体が形成されており、その構造体は表示電極23,下部誘電体層22,隔壁21等を更に含んでいる。
【0033】
図5には、表示素子として有機発光ダイオードディスプレイに本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。このデバイス中では、ガラス基板29上に形成された透明電極26があり、その上部にはRGB発光層を含む有機層27が形成されている。それらは隔壁30により区切られており、それら全体を覆うように陰極28が形成されている。素子全体は封止缶31で覆われており(簡略して示している)、外気に触れることがないように保護されている。
【0034】
図6には、太陽電池に本発明を適用した場合のデバイス構造を示している。ここに例示した太陽電池は、可視光と近赤外光の両方を電気エネルギーに変換可能な二層型薄膜シリコン太陽電池の構造であり、このデバイス中では、ガラス基板32上に形成された透明電極33があり、その上部にはアモルファスシリコン薄膜34が形成され、更にその上部には多結晶シリコン薄膜35が形成され、最上部には背面電極36が形成されている。
【0035】
以上のように構成された各種表示素子においては、ITOに代わる透明電極として上述したような酸化亜鉛薄膜を使用している。この酸化亜鉛薄膜は、酸化亜鉛薄膜全体の導電性や透過率の安定性が向上しており、薄膜,軽量,高精細にして高効率かつ長寿命なものとなる。
【0036】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
実施例1について、図表を用いて説明する。
【0038】
基板には、旭ガラス製無アルカリガラスAN−100(無研磨品)を用いた。基板サイズは、100×100×0.7mmである。このガラス基板に、中性洗剤洗浄,純水超音波洗浄,エタノール蒸気洗浄,純水超音波洗浄を施した後、紫外線照射装置(アイグラフィック製,PL1−406C)にて表面をUV/O3洗浄した。洗浄を終えた基板は、なるべく早期に次の透明導電膜形成装置に搬入した。
【0039】
透明導電膜の作製は、dcマグネトロンスパッタ法によって行った。図7には、今回用いた透明導電膜作製装置の概略を示した。スパッタ装置には、透明導電膜形成装置(日立製model KR−104)を用いた。装置や成膜の主な特徴を示すと、基板を仕込む真空チャンバ37(仕込室)と成膜を行う第1成膜室39がゲートバルブ38で仕切られ、その先に、同様にゲートバルブ38′で仕切られた別の材料の成膜を行う第2成膜室40が連結されたロードロック式で、独立した排気系を有し、ベース圧力はそれぞれ1×10-8,1×10-7,1×10-7Torrである。特に図示はしていないが、これら3つのチャンバにはそれぞれ独立に基板加熱機構が設けられており、室温から最大300℃まで加熱可能である。特に、仕込室の基板加熱機構には水流による冷却機構も設けられており、高温加熱した基板やその上に形成された透明導電膜を比較的短時間で冷却することも可能である。
【0040】
洗浄済みガラス基板は専用のステンレス製基板ホルダに組み込まれ、基板ホルダごと仕込室37に搬入され、直ちに真空排気される。基板は、この基板ホルダ(最大300mm角基板まで対応可能)ごと、搬送機構によって水平に移動させることが可能である。所定のベース圧力に到達すると、ゲートバルブ38を開放して、基板を第1成膜室39に搬送し、再びゲートバルブ38を閉める。
【0041】
第1成膜室39では、第1の透明導電膜をスパッタ成膜する。ターゲットには2%アルミニウム添加酸化亜鉛ターゲット(東ソー製)を用い、ターゲットサイズは12.7×38.1cm、ターゲット〜基板間距離は70mmである。スパッタガスには純Ar(純度6N,流量50.0sccm,流入時圧力5.0×10-3Torr)を用い、スパッタ電力は300〜500Wである。チャンバ内の基板加熱機構によって基板温度200℃に加熱した後、スパッタターゲット上を仕込室側から第2成膜室40側に一方向に移動させ、所定の膜厚だけ成膜した。成膜量は、事前に複数の移動速度やスパッタ電力の下で成膜して、目標膜厚が作製される成膜条件を決定した。所定の成膜を終えた基板は、一旦仕込室37に搬送され、室温まで真空中で冷却される。その後、ゲートバルブ38,38′を開けて基板を第2成膜室40まで搬送して、再びゲートバルブ38,38′を閉める。
【0042】
第2成膜室40では、第2の透明導電膜をスパッタ成膜する。ターゲットには10%スズ添加酸化インジウムターゲット(日鉱金属製)を用い、ターゲットサイズは12.7×38.1cm、ターゲット〜基板間距離は70mmである。スパッタガスにはO2添加Ar(O2濃度1%,流量50.0sccm,流入時圧力5.0×10-3Torr)を用い、スパッタ電力は300〜400Wである。チャンバ内の基板加熱機構によって基板温度200℃に加熱した後、スパッタターゲット上を仕込室側から第2成膜室40側に一方向に移動させ、所定の膜厚だけ成膜した。成膜量は、事前に複数の移動速度やスパッタ電力の下で成膜して、目標膜厚が作製される成膜条件を決定した。その後、ゲートバルブ38,38′を開けて基板を仕込室37まで搬送して、再びゲートバルブ38,38′を閉める。
【0043】
仕込室37に搬送された基板は、大気開放して、装置から取り出される。取り出された透明導電膜付基板は、大気中で300℃に加熱され、1時間その温度に保持される。その後、必要な測定や処理に利用される(取り出された透明導電膜付基板を、以後試料と呼ぶことにする。)。
【0044】
作製された試料は、シート抵抗(抵抗率測定器,共和理研製,K−705RM),膜厚(表面形状測定装置サーフェスプロファイラ,ケーエルエー・テンコール製,P−10),可視光透過率(分光光度計,日立ハイテクノロジーズ製,U−3900H)を測定した。また、試料のシート抵抗と膜厚は複数位置(面内40点平均)で測定した。抵抗、及び膜厚のばらつきは最大でもそれぞれ5%,10%であった。比抵抗は平均のシート抵抗×膜厚によって決定した。
【0045】
表1には作製した試料の、第1の透明導電膜の膜厚をz1、第2の透明導電膜の膜厚z2とした時の、全膜厚z1+z2と比抵抗ρの一覧を示した。ここでは比較のため、ITO単独膜も同様に作製し、その時の比抵抗をρ0とし、(ρ−ρ0)/ρ0の百分率を上昇率とした。ITO単独膜の比抵抗は膜厚60〜200nmの範囲で1.2〜1.9×10-4Ωcmの範囲にあり、いずれの膜も透過率は80%以上であった。これに対して、第1の透明導電膜を加えると、若干比抵抗が上昇する。第1の透明導電膜の膜厚z1=10nmの時は、この膜厚範囲で上昇率は15%以下であり、実用上問題のない特性を示した。第1の透明導電膜の膜厚z1=20nmの時は、全膜厚140nm以上では上昇率は15%以下であるが、全膜厚80〜120nmでは上昇率は20%台、最小の60nmでは33%とやや大きな上昇率である。第1の透明導電膜の膜厚z1=30nmの時は、膜厚100nm以下で30%以上の上昇率となり、第1の透明導電膜の膜厚z1=40nmの時は、膜厚180nm以下で30%以上の上昇率となった。これらの試料の透過率はすべて80%あり、ITO単独膜との差異は検知できなかった。以上のように、このような透明導電膜は、その主成分はITOであり、ほぼ実用上も問題のない、抵抗を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
これら第1の透明導電膜と第2の透明導電膜のエッチングレートは、それぞれの透明導電膜をガラス基板上にそれぞれの同じ膜厚で形成したものを試験片とし、濃度6mol/l,液温40℃の酢酸水溶液にいくつかの時間浸漬して、その膜厚の変化から決定した。対するエッチングレートが、第1の透明導電膜については10nm/min以上であるのに対して、第2の透明導電膜については1nm/min以下であった。
【0048】
次に、本発明の透明導電膜の回収の容易性を以下のように、弱酸性溶液を用いたITOとしての薄膜回収率から評価した。まず、透明導電膜を成膜した100mm角基板をガラススクライバを用いて、10mm角に切断した。この切断されたガラス基板群を5リットルの一つのビーカに入れる。ここに、1wt%の希塩酸を1リットルを注ぎ、マグネチックスターラーを入れ、水滴飛散防止のためにフィルムで蓋をして、室温(21℃)にて1時間攪拌する。その後、0.5mmメッシュのステンレス製篩を通して、ガラス基板と、剥離した透明電極及び溶液分とを分離し、篩に留まったガラス基板はその状態で純水で充分リンスする。その後、ロートと濾紙で、剥離した透明導電膜と、残った溶液とを分離し、濾紙に残ったものを純水で充分洗浄する。濾紙に残った剥離物を恒温槽で乾燥後、その重量を計測する。1バッチの成膜で100mm角試料が4つ製造でき、これを20バッチ分行って、剥離物は同じ濾紙に回収した。また、その後、回収物の組成をAESで分析した。
【0049】
表2には、第1の透明導電膜の膜厚z1=0〜40nmの時の、薄膜の回収率を示した。ここで、回収率評価用には第2の透明導電膜であるITO層の膜厚は500nmに固定し、その比重を7.0g/cm3と仮定した時の薄膜の総重量(1枚当りの薄膜体積は100mm×100mm×500nm=0.005cm3、重量は7.0g/cm3×0.005cm3=2.8g)に対して、回収物の重量の比率を回収率とした。第1の透明導電膜が無い場合は、薄膜は全く剥離されず、回収率は0%であった。第1の透明導電膜膜厚=10nmの時は回収率5%で、20nmでは55%回収され、30nmでは84%、40%では96%であった。回収物の成分をAESで分析したところ、In23とSnO2のみで、その比率は元のITOと同じであり、Znに関係する成分は検知されなかった。以上のことから、本発明の透明導電膜のように、第1の透明導電膜のエッチングレートを前記第2の透明導電膜のエッチングレートより大きくすることにより、1wt%程度の希塩酸の処理でも、容易に回収できることがわかった。
【0050】
【表2】

【実施例2】
【0051】
実施例2について、図表を用いて説明する。
【0052】
まず、本実施例における透明導電膜付基板を作製する手順について説明する。この場合、透明導電膜付基板のガラス基板やその洗浄過程は実施例1と同じとし、透明導電膜の成膜装置も同じものを用いた。但し、本実施例は、第1成膜室は用いず、第2成膜室のみで成膜した。成膜の手順も、実施例1とほぼ同様に、仕込室側から第2成膜室側に基板を1方向に一定速度で第2成膜室のスパッタターゲット上を移動させながら成膜した。その際、組成分布を持たせるために、スパッタターゲット上に、添加材料チップを複数配置することで行った。図8は、その配置の一例を示した。スパッタターゲット41にはその下に置かれた電磁石の磁場強度分布に対応して、優先的にスパッタが進行するエロージョン領域42が発生する。図8の場合、縦長の楕円のような形状である。この楕円の仕込室側の外周部に、複数の添加材料チップ43を配置する。ここでは、酸化亜鉛ZnOのチップ(高純度化学製,純度4N,サイズ5mm×5mm×1mm)を配置した(図示したチップの配置間隔や個数は一例である)。このようにして、スパッタしつつ、基板を一方向に移動させると、基板側にZnOの成分が多く堆積される。
【0053】
図9には、このようにして形成された透明導電膜付基板の膜厚方向の元素組成比分析のイメージを示した。ガラス基板に近い側から、材料がスパッタ堆積されるために、z0近くの方で、ZnO由来のZnの組成は増加し、途中で最大位置を示した後、z2側に向かうにつれて減少する(AESの深さ分析を行う場合は透明導電膜表面から組成分析が進行するため、測定直後はそのエッチング時間に対してはz2側からz0側への分布となるが、図2の定義に合わせて、ここではz0側からz2側への分布を示している。)。一方、Inの組成比はZn成分の増減に反比例して、z0側で少なく、z2側で増加する。そこで、In組成比の最小濃度R1と最大濃度R2の中間濃度R3を示すz方向の位置(AES分析の深さ分析ではエッチング時間が与えられるので、別途測定した透明導電膜の全膜厚で換算する)を特性位置zcとした。また、Znの最大濃度R5を示すz位置をzaとし、zaでのIn,Sn,Znに対するZnの相対原子濃度を特性添加濃度CZnとした。
【0054】
表3には、膜厚を60〜200nmで変化させた時の、比抵抗ρとその上昇率、及びその時の特性位置zcと特性添加濃度CZnを示した。この場合、いずれの膜厚に対しても、比抵抗の上昇率は15%以下に抑えられている。特にはデータを示していないが、透過率はいずれも80%以上あり、変化はなかった。また、特性位置は膜厚が厚くなる程大きくなるが、これは厚膜を形成するためには、スパッタ時の基板搬送速度を低速にするためと思われる。また、特性添加濃度は4.8〜5.2%であった。
【0055】
【表3】

【0056】
これら膜厚方向に連続的に組成の変化する透明導電膜付基板のエッチングレートは、各透明導電膜をガラス基板ごと破断したものを試験片とし、濃度6mol/l,液温40℃の酢酸水溶液にいくつかの時間浸漬して、その膜面内方向への膜周辺部の後退量をSEM観察によって測定し、基板界面側10nmの範囲のエッチングレートと膜表面側10nmの膜厚の変化から決定した。その結果、エッチングレートは、基板界面側が10nm/min以上であるのに対して、膜表面側は1nm/min以下であった。
【0057】
表4には、これら試料のITO回収率を示した。評価方法は実施例1と同様である。膜厚60〜200nmの範囲で、回収率は81〜93%程度あり、比較的高い回収率である(実施例1に示したように、ITO単独膜では回収率は0%)。
【0058】
【表4】

【0059】
以上のように、透明導電膜における基板面側のインジウム濃度より、透明導電膜における基板面とは反対側の面のインジウム濃度を大きくすることにより、ITO単独膜とほぼ同等の透明導電性を確保しながら、高いITO回収率を達成することができる。
【実施例3】
【0060】
次に、実施例1において、第1の透明導電膜の添加元素を変えた場合の特性の変化を検討した結果について説明する。
【0061】
実施例1では、第1の透明導電膜にアルミニウムAlを2%添加した酸化亜鉛ZnOを用い、第2の透明導電膜にスズSnを10%添加した酸化インジウムIn23を用いた。ここでは、Al以外の添加元素として、ホウ素B,ガリウムGa,スズSn,チタンTiを2%添加したもの、及び添加元素のない酸化亜鉛ZnOターゲットを用いて第1の透明導電膜を形成し、第1の透明導電膜は30nmに固定し、第2の透明導電膜の膜厚を変化させた透明導電膜を形成した。それら透明導電膜の作製方法や評価方法は先の実施例と同様である。また、回収率の評価には第2の透明導電膜の膜厚を500nmとした透明導電膜を形成し、先の実施例と同様に回収手続きを行い、回収率を評価した。
【0062】
表5には、得られた透明導電膜の比抵抗と回収率の変化を示した。添加元素がAl,B,Gaの場合は、比抵抗の上昇率は概ね30%以下であり、回収率は83〜84%と安定している。
【0063】
【表5】

【0064】
以上のように、Al,B,Ga等の元素を添加することにより、透明導電膜付基板としての高いITO回収率を達成することができ、また、高い導電性を達成することができる。
【0065】
なお、実施例2に記載の透明導電膜に対してAl,B,Ga等の元素を添加する場合には、Al,B,Ga等の濃度分布をZn等の濃度分布と略同等となるように添加することにより、透明導電膜付基板としての高いITO回収率を達成することができ、また、高い導電性を達成することができる。
【実施例4】
【0066】
次に、実施例1と同様の薄膜構成で、第1の透明導電膜に、実用上透明な金属アルミニウムAl薄膜を用いた場合との差異を検討した結果を説明する。
【0067】
第2の透明導電膜にスズSnを10%添加した酸化インジウムIn23を用いた。第2の透明導電膜の膜厚は500nmとした。第1の透明導電膜には、実施例1と同様にアルミニウムAlを2%添加した酸化亜鉛ZnOを用いた場合と、金属アルミニウム(純度99.99%)を用いた場合とを準備した。第1の透明導電膜膜厚は30nmとした。実施例1と同様に、膜形成,比抵抗,透過率の変化や回収率の変化を見積もった。また、アルカリ溶液に対する耐性を見るために、1%KOH水溶液に液温35℃で30分間浸漬処理した後の透過率の変化も測定した。これは実際に各種デバイス形成時に透明導電膜が薬液処理される場合の耐性を見積もるためである。
【0068】
その結果を、表6に示した。得られた透明導電膜の比抵抗の上昇はいずれもわずかであるが、大きな違いは透過率である。第1の透明導電膜にZnOを用いた場合は酸化インジウム単独膜とほぼ同等の透過率であったが、第1の導電層にAlを用いた場合は、作製直後の透過率が64%となった。更に、アルカリ処理を施した後の透過率は、3%とほとんど光を通さなくなった。これは、Alと酸化インジウムとの間の電池反応が起こり、酸化インジウムが還元されて金属Inが析出したためと思われる。また、回収率も73%となった。
【0069】
【表6】

【0070】
以上のように、第1の透明導電膜にZnOを用いることにより、高いITO回収率を達成することができ、高透過率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(a),(b)は本発明に係る透明導電膜付基板の概略構成図である。
【図2】(a),(b)は本発明に係る透明導電膜付基板の概略構成図である。
【図3】本発明に係る透明導電膜付基板を用いた液晶ディスプレイを模式的に示す要部断面図である。
【図4】本発明に係る透明導電膜付基板を用いたプラズマディスプレイを模式的に示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る透明導電膜付基板を用いた有機発光ダイオードディスプレイを模式的に示す要部断面図である。
【図6】本発明に係る透明導電膜付基板を用いた太陽電池を模式的に示す要部断面図である。
【図7】本発明に係る透明導電膜付基板を具体的に作製した成膜装置の説明図である。
【図8】本発明に係る透明導電膜付基板を具体的に作製した成膜装置中のスパッタターゲットの説明図である。
【図9】本発明に係る実施例2の組成分布と特性位置の関係の説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1,4,11,11′ 基板
2 第1の透明導電膜
3 第2の透明導電膜
5 透明導電膜
6,6′,16,26,33 透明電極
7,7′ 配向膜
8 ブラックマトリクス
9 液晶
10 RGBカラーフィルタ
12,12′ 偏光板
13,13′ 接着材
14 光源
15,15′ 駆動回路
17 前面ガラス基板
18 バス電極
19 上部誘電体層
20 保護層
21,30 隔壁
22 下部誘電体層
23 表示電極
24 RGB蛍光体
25 背面ガラス基板
27 有機層
28 陰極
29,32 ガラス基板
31 封止缶
34 アモルファスシリコン薄膜
35 多結晶シリコン薄膜
36 背面電極
37 仕込室
38,38′ ゲートバルブ
39 第1成膜室
40 第2成膜室
41 ターゲット
42 エロージョン領域
43 添加材料チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1の透明導電膜と、
前記第1の透明導電膜に対して、前記基板が配置された側とは反対側に配置された第2の透明導電膜とを有し、
前記第2の透明導電膜は、酸化インジウムを主成分とし、
前記第1の透明導電膜のエッチングレートは、前記第2の透明導電膜のエッチングレートより大きいことを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項2】
請求項1に記載の透明導電膜付基板において、
前記第1の透明導電膜は、Zn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiの酸化物を含有することを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項3】
請求項1に記載の透明導電膜付基板において、
前記第1の透明導電膜の膜厚は、10nm以上1μm以下であることを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項4】
請求項1に記載の透明導電膜付基板において、
前記第1の透明導電膜の膜厚は、20nm以上1μm以下であることを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項5】
請求項1に記載の透明導電膜付基板において、
前記第1の透明導電膜は、B,Al、もしくはGaを含有することを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項6】
基板と、
透明導電膜とを有し、
前記透明導電膜は、第1の元素としてインジウムを含有し、
前記透明導電膜は、第2の元素としてZn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiを含有し、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第1の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面側の前記第1の元素の濃度より大きく、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面側の前記第2の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第2の元素の濃度より大きいことを特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項7】
請求項6に記載の透明導電膜付基板において、
前記透明導電膜は、第3の元素としてB,Al、もしくはGaを含有し、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面側の前記第3の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第3の元素の濃度より大きい特徴とする透明導電膜付基板。
【請求項8】
基板と、
第1の透明導電膜と、
前記第1の透明導電膜に対して、前記基板が配置された側とは反対側に配置された第2の透明導電膜とを有し、
前記第2の透明導電膜は、酸化インジウムを主成分とし、
前記第1の透明導電膜のエッチングレートは、前記第2の透明導電膜のエッチングレートより大きいことを特徴とする表示素子。
【請求項9】
基板と、
透明導電膜とを有し、
前記透明導電膜は、第1の元素としてインジウムを含有し、
前記透明導電膜は、第2の元素としてZn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiを含有し、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第1の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面側の前記第1の元素の濃度より大きく、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面側の前記第2の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第2の元素の濃度より大きいことを特徴とする表示素子。
【請求項10】
基板と、
第1の透明導電膜と、
前記第1の透明導電膜に対して、前記基板が配置された側とは反対側に配置された第2の透明導電膜とを有し、
前記第2の透明導電膜は、酸化インジウムを主成分とし、
前記第1の透明導電膜のエッチングレートは、前記第2の透明導電膜のエッチングレートより大きいことを特徴とする太陽電池。
【請求項11】
基板と、
透明導電膜とを有し、
前記透明導電膜は、第1の元素としてインジウムを含有し、
前記透明導電膜は、第2の元素としてZn,Sn,Ti,V,Ni、もしくはSiを含有し、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第1の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面側の前記第1の元素の濃度より大きく、
前記透明導電膜において、前記透明導電膜における基板面側の前記第2の元素の濃度は、前記透明導電膜における基板面とは反対側の面側の前記第2の元素の濃度より大きいことを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−80358(P2010−80358A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249469(P2008−249469)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】