説明

通信システム、監視装置、計測機器およびプログラム

【課題】複数の計測点を監視する監視システムにおいて、計測の即応性を担保するとともに各計測機器による通信の衝突が発生する可能性を低減させ、監視装置による間欠的な監視を可能にする。
【解決手段】監視装置1は、通信部を用いて一斉同報通信により第1要求信号を各計測機器2へ配信する。第1要求信号を受信した各計測機器2は、それぞれ受信した第1要求信号の要求種別を判定する。その結果、いずれの計測機器2においても第1要求信号を受信したことが判定され、各計測機器2では、計測部により出力される数値が条件を満たしているか否かを判断する。ここで、計測機器2aでは、計測部による計測結果が指定された条件を満たしていないため、受信した第1要求信号に対する返信を行わない。一方、計測機器2bでは、計測部による計測結果が指定された条件を満たしているため、受信した第1要求信号に対する第1返信信号を監視装置1へ返信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、監視装置、計測機器およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の計測点に発信器を配置して計測を行う装置が考えられている。特許文献1には、固有番号を記憶している固有番号発信器を競走者に携帯させて、この固有番号発信器から発信される固有番号信号により、競走者がゴールラインに入線したことを検出する装置が記載されている。特許文献2には、構造物に取り付けられた非接触通信媒体のセンサーが異常値を検知した場合に、この非接触通信媒体から発信される異常信号を受信する受信手段を備えた構造物の監視システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−57104号公報
【特許文献2】特開2008−140178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、ゴールラインに備えられた引き金信号発生手段は、各固有番号発信器に向けて順番に問合せる、いわゆるポーリングを行うのではなく、引き金信号を一斉に配信するので、即応性の高い計測をすることができる。しかしながら、各固有番号発信器は、引き金信号を検知すると固有番号信号を発信するので、引き金信号を受信する固有番号発信器の数が増えると、使用無線帯域での衝突(コリジョン)が発生しやすくなる。
【0005】
また、特許文献2の非接触通信媒体は、監視する側により間欠的に発信される要求に応えて返信するのではなく、それぞれに備えられたセンサーが異常値を検知したときに一方的に異常信号を発信する。したがって、この異常信号を監視する監視システムは、いつ発信されるかわからない異常信号を待ち受けるために連続して非接触通信媒体を監視しなければならず、メンテナンスが困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の計測点を監視する監視システムにおいて、計測の即応性を担保するとともに各計測機器による通信の衝突が発生する可能性を低減させ、且つ、監視装置による間欠的な監視を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る通信システムは、監視装置と、複数の計測機器とを具備する通信システムであって、前記監視装置は、返信を要求する第1要求信号を前記複数の計測機器へ配信する配信手段と、前記配信手段が配信した前記第1要求信号に対して前記計測機器から返信される第1返信信号を取得する第1取得手段とを備え、前記複数の計測機器のそれぞれは、物理量を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、前記監視装置から前記第1要求信号を受信する第1受信手段と、前記第1受信手段が前記第1要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記第1返信信号を前記監視装置に返信する第1返信手段とを備えることを特徴とする。
これにより、複数の計測点を監視する監視システムにおいて、計測の即応性を担保するとともに各計測機器による通信の衝突が発生する可能性を低減させ、且つ、監視装置による間欠的な監視を可能にすることができる。
【0008】
好ましくは、前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記条件を指定する情報を含ませて配信し、前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断するとよい。
これにより、計測機器において判断される条件を、第1要求信号の配信によって指定することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記情報と、前記複数の計測機器のいずれか2以上の識別情報とを含ませて配信し、前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記識別情報のいずれかと前記記憶手段が記憶する識別情報とが一致する場合に、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断するとよい。
これにより、計測機器を特定して、その計測機器に対して第1要求信号を配信することにより、その計測機器で判断される条件を指定することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記複数の計測機器は複数のグループに分類されており、前記計測機器の記憶手段は、前記複数のグループのうち、自身が属するグループを示すグループ識別情報を記憶し、前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記情報と、前記複数のグループのいずれかのグループ識別情報を含ませて配信し、前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記グループ識別情報と前記記憶手段が記憶するグループ識別情報とが一致する場合に、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断するとよい。
これにより、計測機器をグループ単位で特定して、そのグループに属する計測機器に対して第1要求信号を配信することにより、その計測機器で判断される条件を指定することができる。
【0011】
また、好ましくは、前記計測機器の前記計測手段は、物理量を計測した数値を出力し、前記計測機器の前記判断手段は、前記計測手段が出力する数値と、当該数値よりも前に前記計測手段が出力した数値との差が閾値を超える場合に、前記計測結果が前記条件を満たしていると判断するとよい。
これにより、計測機器は、前回の計測と比較して一定の変化があったときにだけ、第1要求信号に対する第1返信信号を返信することとなるので、通信量、消費電力量等が抑制されるとともに、通信の衝突が起こり難くなる。
【0012】
また、好ましくは、前記監視装置は、前記複数の計測機器のそれぞれに対し応答を要求する第2要求信号を、当該各計測機器に定められた優先順位に沿って送信する送信手段と、前記送信手段が送信した前記第2要求信号に対して前記計測機器から返信される第2返信信号を取得する第2取得手段とを備え、前記複数の計測機器のそれぞれは、前記監視装置から前記第2要求信号を受信する第2受信手段と、前記第2受信手段が前記第2要求信号を受信すると、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記第2返信信号を前記監視装置に返信する第2返信手段とを備えるとよい。
これにより、監視装置は、計測機器により第1返信信号が返信されないことが、故障等による動作不具合によるものか、計測結果が指定された条件を満たしていないことによるものかを区別することができる。
【0013】
また、好ましくは、前記監視装置は、前記複数の計測機器のそれぞれを前記優先順位が高い順に並べた一覧を生成する生成手段と、前記計測機器により返信された前記第1返信信号を前記第1取得手段が取得すると、当該第1返信信号を返信した計測機器を、前記生成手段により生成された前記一覧から除外するか、または当該一覧の優先順位における最下位に移動させることにより、当該一覧を変更する変更手段を備え、前記監視装置の送信手段は、前記変更手段により変更された前記一覧における前記優先順位に沿って、前記第2要求信号を送信するとよい。
これにより、第1返信信号を取得して或る計測機器についての動作確認がなされると、少なくともその直後にはその計測機器に対して第2要求信号を送信しないので、通信量が抑制され、通信の衝突は回避され易くなる。
【0014】
また、本発明に係る監視装置は、物理量を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む返信信号を返信する返信手段とを備える複数の計測機器のそれぞれに対して、返信を要求する要求信号を配信する配信手段と、前記配信手段が配信した前記要求信号に対して前記計測機器から返信される前記返信信号を取得する取得手段とを備えることを特徴とする。
これにより、監視装置は、複数の計測点を間欠的に監視することができる。
【0015】
また、本発明に係る計測機器は、物理量を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、返信を要求する要求信号を配信する監視装置から前記要求信号を受信する受信手段と、前記受信手段が前記要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記返信信号を前記監視装置に返信する返信手段とを備えることを特徴とする。
これにより、計測機器同士の通信が衝突する可能性が低減される。
【0016】
また、本発明に係るプログラムは、物理量を計測する計測手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、返信を要求する要求信号を配信する監視装置から前記要求信号を受信する受信手段とを備える計測機器のコンピューターを、前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、前記受信手段が前記要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記返信信号を前記監視装置に返信する返信手段として機能させるためのプログラムである。
このプログラムにより、複数の計測点を監視する監視システムにおいて、計測の即応性を担保するとともに各計測機器による通信の衝突が発生する可能性を低減させ、且つ、監視装置による間欠的な監視を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの概略を示す図である。
【図2】監視装置の構成を示す図である。
【図3】監視テーブルの一例を示す図である。
【図4】計測機器の構成を示す図である。
【図5】監視装置の機能的構成を示す図である。
【図6】計測機器の機能的構成を示す図である。
【図7】監視装置が第1要求信号を配信する際の動作を説明する図である。
【図8】監視装置が第2要求信号を送信する際の動作を説明する図である。
【図9】計測機器の動作を説明するための図である。
【図10】通信システムの動作の一例を示す図である。
【図11】通信システムの動作例を示す図である。
【図12】従来技術における監視システムの動作例を示す図である。
【図13】従来技術における監視システムの動作例を示す図である。
【図14】本発明の変形例に係る通信システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.構成
1−1.全体構成
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム9の概略を示す図である。通信システム9は、監視装置1と複数の計測機器2とを具備するシステムである。通信システム9の目的は、複数の護岸ブロック3のうち、閾値を超えて傾いたものを特定して補修し、その欠落や崩壊を未然に防止することにある。護岸ブロック3は、河川や海に面した堤防の法面に貼り付けられて、堤防の侵食等を防止するものである。
計測機器2は、1つの護岸ブロック3につき1つずつ固定され、その傾きを計測し、監視装置1との間でこの計測結果に応じた無線通信を行う。
監視装置1は、複数の計測機器2と無線により通信を行い、各計測機器2により計測された計測内容を監視する。
【0019】
1−2.監視装置の構成
図2は、監視装置1の構成を示す図である。制御部11は、図示しない電源から電力の供給を受けて駆動する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、タイマー等を備える制御手段であり、ROMや記憶部12に記憶されているコンピュータープログラム(以下、プログラムという)をRAMに読み出して実行することにより監視装置1の各部を制御する。ROMは半導体素子等で構成された読み出し専用の不揮発性記憶装置であり、RAMは揮発性記憶装置である。RAMは、制御部11のCPUがプログラムを実行する際のワークエリアとして利用される。タイマーは、水晶振動子を有する発振回路を備えており、その発振回路から出力される発振信号に基づいて時間を計測し、現在時刻を算出する。制御部11は、例えば、後述する送信部112、配信部111、取得部113として機能する。
【0020】
通信部13は、計測機器2との間で無線通信により情報を遣り取りする通信インターフェースである。
記憶部12はハードディスクドライブ等の大容量の記憶手段であり、制御部11に読み込まれるプログラムを記憶する。記憶部12は、各計測機器2の設置位置や動作状態等を記述する監視テーブル121を記憶する。
【0021】
1−3.監視テーブルの構成
記憶部12に記憶される監視テーブル121について説明する。
図3は、監視テーブル121の一例を示す図である。監視テーブル121は、計測機器2ごとに1つずつレコードが対応付けられており、各レコードには対応する計測機器2に関する情報が記述されている。監視テーブル121は、機器ID(Identifier)、設置位置、動作状態および異常兆候の4つのフィールドを有する。「機器ID」のフィールドには、各レコードに対応付けられた計測機器2を識別するための識別情報(以下、機器IDという)が記述される。「設置位置」のフィールドには、各計測機器2を固定している護岸ブロック3が設置されている位置(以下、設置位置という)が記述される。例えば、矩形の護岸ブロック3を縦横に並べて設置するような場合、設置位置は、その並べられた縦と横の各位置を用いて「1行2列」というように記述される。
【0022】
「動作状態」のフィールドには、各計測機器2が動作しているか否かを示す情報が記述される。具体的には、このフィールドに「○」が記述されている場合には、このレコードに対応づけられている計測機器2の動作が確認されていることを示しており、「×」が記述されている場合には、この計測機器2は動作が確認されていないことを示している。
【0023】
「異常兆候」のフィールドには、各計測機器2が計測する数値が閾値を超えたか否かを示す情報が記述される。具体的には、このフィールドに「なし」が記述されている場合には、このレコードに対応づけられている計測機器2により計測された数値が閾値を超えていないため、この計測機器2に異常の兆候が見られないことを示している。一方、このフィールドに「あり」が記述されている場合には、この計測機器2により計測された数値が閾値を超えているため、この計測機器2に異常の兆候が見られることを示している。
【0024】
1−4.計測機器の構成
図4は、計測機器2の構成を示す図である。制御部21は、図示しない電池等の電源から電力の供給を受けて駆動する。制御部21は、CPU、ROM、RAMを備える制御手段であり、ROMや記憶部22に記憶されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより計測機器2の各部を制御する。例えば、制御部21は、後述する受信部211、判断部212、返信部213として機能する。
【0025】
通信部23は、監視装置1との間で無線通信により情報を遣り取りする通信インターフェースである。
記憶部22はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶手段であり、制御部21に読み込まれるプログラムを記憶する。記憶部22は、計測機器2を識別する機器ID221と予め定められた閾値222とを記憶する。
【0026】
計測部24は、物理量を計測する計測手段の一例である。計測部24は、加速度センサーを有しており、計測機器2が取り付けられた護岸ブロック3の取り付け面が重力方向に対して傾いている角度を検知する。
【0027】
1−5.監視装置の機能的構成
図5は、監視装置1の機能的構成を示す図である。
配信部111は、返信を要求する第1要求信号を複数の計測機器2へ配信する配信手段の一例である。具体的には、配信部111は、各計測機器2のうち異常兆候のあるものからの返信を要求する第1要求信号DS1を生成し、この第1要求信号DS1を、通信部13を用いて一斉同報通信により各計測機器2へ配信する。この第1要求信号DS1のヘッダ部分には、自身が第1要求信号DS1であることを示す情報が記述されている。なお、一斉同報通信とは、特定しない複数の通信相手に向けて、同じ内容を、一度に通信することを意味する。
【0028】
送信部112は、複数の計測機器のそれぞれに対し応答を要求する第2要求信号を、これら各計測機器に定められた優先順位に沿って送信する送信手段の一例である。具体的には、送信部112は、記憶部12に記憶された監視テーブル121の上から順に、各計測機器2のそれぞれに対し応答を要求する第2要求信号DS2を送信する。ここで、レコードは監視テーブル121において上に記述されているものほど優先順位が高く定められている。したがって、例えば、図3に示した監視テーブル121を参照した場合、送信部112は、機器IDが「2001」→「2002」→「2003」→「2004」である各計測機器2に対してこの順番に第2要求信号DS2を送信する。この第2要求信号DS2のヘッダ部分には、自身が第2要求信号DS2であることを示す情報と、これを送信する送信先である計測機器2の機器IDとが記述されている。
【0029】
取得部113は、配信手段が配信した第1要求信号に対して計測機器から返信される第1返信信号を取得する第1取得手段の一例であり、また、送信手段が送信した第2要求信号に対して計測機器から返信される第2返信信号を取得する第2取得手段の一例である。取得部113は、取得した信号が第1返信信号である場合には、その第1返信信号に含まれている機器IDが記述されているレコードを監視テーブル121から特定し、そのレコードの異常兆候のフィールドに「あり」を書き込む。また、取得部113は、送信部112が第2要求信号DS2を送信してから一定の期間を過ぎても計測機器2から第2返信信号が返信されず、その第2返信信号を取得しなかった場合には、送信した第2要求信号DS2の送信先である機器IDが記述されているレコードを監視テーブル121から特定し、そのレコードの動作状態のフィールドに「×」を書き込む。なお、取得部113は、取得した信号が第2返信信号である場合には、その第2返信信号に含まれている機器IDが記述されているレコードを監視テーブル121から特定し、そのレコードの動作状態のフィールドに「○」を書き込むようにしてもよい。
【0030】
なお、配信部111、送信部112、取得部113は、監視装置1の制御部11によってプログラムが実行されることにより実現される。
【0031】
1−6.計測機器の機能的構成
図6は、計測機器2の機能的構成を示す図である。
受信部211は、監視装置から第1要求信号を受信する第1受信手段の一例であり、また、監視装置から第2要求信号を受信する第2受信手段の一例である。具体的には、受信部211は、通信部23によって受信された要求信号の種別(以下、要求種別という)を判定し、この要求信号が第1要求信号DS1であると判定されれば、判断部212により、計測部24による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断をさせる。一方、この要求信号が第2要求信号DS2であると判定されれば、返信部213に返信処理を行わせる。
【0032】
判断部212は、計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段の一例である。具体的には、以下の通りである。
計測部24は、物理量として、護岸ブロック3の重力方向に対する傾き角度を計測し、その角度を表す数値を出力する。判断部212は、計測部24により出力された数値と、記憶部22から読み出した閾値222とを比較し、この数値が閾値222を超えているか否かを判断する。そして、傾き角度を表す数値が閾値222を超えていると判断した場合にのみ、返信部213に返信処理を行わせる。
【0033】
返信部213は、第1受信手段が第1要求信号を受信すると、判断手段が条件を満たしていると判断した場合に、記憶手段に記憶された識別情報を含む第1返信信号を監視装置に返信する第1返信手段の一例であり、また、第2受信手段が第2要求信号を受信すると、記憶手段に記憶された識別情報を含む第2返信信号を監視装置に返信する第2返信手段の一例である。具体的には、受信部211が受信した要求信号を第1要求信号DS1と判定したとすると、上述したように、判断部212において、計測部24により出力された傾き角度を表す数値が閾値222を超えていると判断した場合にのみ、返信部213は返信処理を行う。返信処理とは、記憶部22に記憶された機器ID221を返信信号に含めて、通信部23を介して監視装置1に返信する処理である。したがって、返信部213は、第1要求信号DS1に対して、計測部24により出力された数値が閾値222を超えたときに、機器ID221を含む返信信号(以下、第1返信信号RS1という)を返信する。
【0034】
一方、受信部211が受信した要求信号を第2要求信号DS2と判定したとすると、上述したように、返信部213は返信処理を行うこととなる。したがって、返信部213は、第2要求信号DS2に対して無条件で、機器ID221を含む返信信号(以下、第2返信信号RS2という)を返信する。
【0035】
なお、受信部211、判断部212、返信部213は、計測機器2の制御部21によってプログラムが実行されることにより実現される。
【0036】
2.動作
2−1.監視装置の動作
監視装置1は、大別して第1要求信号DS1を配信する処理と、第2要求信号DS2を送信する処理の2種類の処理を行う。これら2種類の処理は、並列して処理される。以下に、これら2種類の処理を行う際の動作をそれぞれ説明する。
【0037】
2−1−1.第1要求信号を配信する動作
図7は、監視装置1が第1要求信号DS1を配信する際の動作を説明する図である。
なお、通信システム9が稼動する前に、記憶部12の監視テーブル121において、全ての異常兆候のフィールドには、予め「なし」が記述されている。施工直後において全ての護岸ブロック3には破損等がなく、閾値を超えて傾くことがないからである。
【0038】
監視装置1の制御部11は、第1要求信号DS1を配信する配信指示があるか否かを判断する(ステップS111)。この配信指示は、例えば、タイマーにより周期的に発生させた割り込み信号を契機として行う。制御部11は、配信指示がないと判断する間は(ステップS111;NO)、この判断処理を継続する。配信指示があると判断すると(ステップS111;YES)、制御部11は、第1要求信号DS1を配信し(ステップS112)、この第1要求信号DS1に対する第1返信信号RS1の返信を受け付ける。制御部11は、第1返信信号RS1を取得したか否かを判断する(ステップS113)。第1返信信号RS1を取得したと判断すると(ステップS113;YES)、制御部11は、取得した第1返信信号RS1に含まれる機器IDを特定し、監視テーブル121において、その機器IDが記述されているレコードの異常兆候のフィールドを「あり」に変更する(ステップS114)。そして、その後、制御部11は、返信信号を取得するための期間以下、取得期間という)が終了したか否かを判断する(ステップS115)。この「取得期間」は、制御部11が第1要求信号DS1を配信したときからの経過期間である。ステップS113において、第1返信信号RS1を取得していないと判断すると(ステップS113;NO)、制御部11は、ステップS115の判断処理を行う。
【0039】
取得期間が終了したと判断すると(ステップS115;YES)、制御部11は処理を終了する。取得期間が終了していないと判断すると(ステップS115;NO)、制御部11は処理をステップS113に戻す。
【0040】
2−1−2.第2要求信号を送信する動作
図8は、監視装置1が第2要求信号DS2を送信する際の動作を説明する図である。
なお、通信システム9が稼動する前に、記憶部12の監視テーブル121において、全ての動作状態のフィールドには、予め「○」が記述されている。施工直後において全ての計測機器2は故障していないからである。
【0041】
制御部11は、次回の機器IDを特定する(ステップS121)。例えば、監視装置1を起動した直後においては、記憶部12の監視テーブル121において最上位のレコードに記述されている機器IDをこの機器IDとして特定する。一方、他の処理を行った後に、このステップS121に処理が戻ってきたときには、監視テーブル121において次のレコード、すなわち、前回のレコードの直ぐ下のレコードに記述されている機器IDをこの機器IDとして特定する。
【0042】
次に、制御部11は、タイマーが示す時刻を参照し、第2要求信号DS2を送信する時期(以下、送信時期という)が到来しているか否かを判断する(ステップS122)。制御部11は、送信時期が到来していないと判断する間は(ステップS122;NO)、この判断処理を継続する。送信時期が到来したと判断すると(ステップS122;YES)、制御部11は、ステップS121で特定した機器IDで識別される計測機器2に向けて第2要求信号DS2を送信し(ステップS123)、この第2要求信号DS2に対する第2返信信号RS2の返信を受け付ける。具体的には、制御部11は、上記の機器IDを第2要求信号DS2に含めて通信部13により送信させる。
【0043】
次に、制御部11は、第2返信信号RS2を取得したか否かを判断する(ステップS124)。制御部11は、第2返信信号RS2を取得したと判断すると(ステップS124;YES)、処理をステップS121に戻す。第2返信信号RS2を取得していないと判断すると(ステップS124;NO)、制御部11は、取得期間が終了したか否かを判断する(ステップS125)。この「取得期間」は、制御部11が第2要求信号DS2を配信したときからの経過期間である。制御部11は、取得期間が終了していないと判断すると(ステップS125;NO)、処理をステップS124に戻す。取得期間が終了したと判断すると(ステップS125;YES)、制御部11は、第2要求信号DS2を送信した送信先であって、この第2要求信号DS2に対する第2返信信号RS2を返信しなかった計測機器2の機器IDを特定し、監視テーブル121において、その機器IDが記述されているレコードの動作状況のフィールドを「×」に変更する(ステップS126)。そしてその後、制御部11は、処理をステップS121に戻す。
【0044】
2−2.計測機器の動作
図9は、計測機器2の動作を説明するための図である。計測機器2の制御部21は、監視装置1から受信した要求信号があるか否かを判断する(ステップS211)。要求信号がないと判断する間は(ステップS211;NO)、制御部21は、この判断を継続する。要求信号があると判断すると(ステップS211;YES)、制御部21は、その要求信号の種別を判定する。具体的には、その要求信号のヘッダを参照し、その要求信号が第1要求信号DS1であるか否かを判断する(ステップS212)。監視装置1から受信した要求信号が第1要求信号DS1であると判断すると(ステップS212;YES)、制御部21は、計測部24により計測を行わせ、計測部24が出力する数値が記憶部22に記憶した閾値222を超えるか否か、すなわち計測部24の計測結果が予め定めた条件を充足するか否かを判断する(ステップS213)。条件を充足していないと判断すると(ステップS213)、制御部21は、処理をステップS211に戻す。条件を充足していると判断すると(ステップS213;YES)、制御部21は、受信した第1要求信号DS1に対する第1返信信号RS1を返信し(ステップS214)、処理を終了する。
【0045】
ステップS212において、監視装置1から受信した要求信号が第1要求信号DS1ではないと判断すると(ステップS212;NO)、制御部21は、受信した要求信号が自身に向けて送信された第2要求信号DS2であるか否かを判断する(ステップS215)。具体的には、制御部21は、要求信号のヘッダ部分に、自身が第2要求信号DS2であることを示す情報と、この計測機器2の機器IDとが、ともに記述されているか否かを判断する。
【0046】
受信した要求信号が自身に向けて送信された第2要求信号DS2ではないと判断すると(ステップS215;NO)、制御部21は、処理をステップS211に戻す。
受信した要求信号が自身に向けて送信された第2要求信号DS2であると判断すると(ステップS215;YES)、制御部21は、この第2要求信号DS2に対する第2返信信号RS2を返信し(ステップS216)、処理を終了する。
【0047】
2−3.通信システムの動作
以上、説明したとおり、監視装置1と複数の計測機器2とが処理を行うことで、通信システム9が動作する。
図10は、通信システム9の動作の一例を示す図である。同図の通信システム9は、複数の計測機器2として2つの計測機器2a、2bを備える。以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「計測機器2」と記す
【0048】
監視装置1は、通信部13を用いて一斉同報通信により第1要求信号DS1を各計測機器2へ配信する(ステップS11)。第1要求信号DS1を受信した各計測機器2は、それぞれ受信した第1要求信号DS1の要求種別を判定する(ステップS21a,S21b)。その結果、いずれの計測機器2においても第1要求信号DS1を受信したことが判定され、各計測機器2では、計測部24により出力される数値が条件を満たしているか否かを判断する。ここで、各計測機器2の各計測部24による計測結果は、計測機器2aでは、指定された条件を満たしておらず、計測機器2bでは、指定された条件を満たしていると仮定すると、計測機器2aでは、上記の条件を満たしていないと判断されるため(ステップS22a)、受信した第1要求信号DS1に対する返信を行わない。一方、計測機器2bでは、上記の条件を満たしていると判断されるため(ステップS22b)、受信した第1要求信号DS1に対する第1返信信号RS1を監視装置1へ返信する(ステップS23b)。
【0049】
また、監視装置1は、記憶部12に記憶された監視テーブル121の上から順に機器IDを読み出して、自身が第2要求信号DS2であることを示す情報と、読み出したこの機器IDを記述した第2要求信号DS2を、通信部13を用いて順次送信する。
例えば、図に示すように、監視装置1は、監視テーブル121から計測機器2aの機器IDを読み出し、計測機器2aに向けて第2要求信号DS2を送信する(ステップS12a)。計測機器2aは、受信した第2要求信号DS2の要求種別を判定する(ステップS24a)。そして、計測機器2aは、これが自身に向けて送信された第2要求信号DS2であると判定し、この第2要求信号DS2に対する第2返信信号RS2を監視装置1へ返信する(ステップS25a)。計測機器2aから第2返信信号RS2を取得した監視装置1は、続いて、監視テーブル121における次の機器IDを読み出し、計測機器2bに向けて第2要求信号DS2を送信する(ステップS12b)。計測機器2bは、受信した第2要求信号DS2の要求種別を判定する(ステップS24b)。そして、計測機器2bは、これが自身に向けて送信された第2要求信号DS2であると判定し、この第2要求信号DS2に対する第2返信信号RS2を監視装置1へ返信する(ステップS25b)。
【0050】
2−4.動作例
図11は、通信システム9の動作例を示す図である。同図における横軸は時間の流れを表し、左から右に向かって時間が経過していることを示している。同図の上端には、0〜12の数字が記載されており、経過した時間を表している。この数値の単位は秒である。同図の左端には、通信システム9を構成する計測機器2の機器IDが縦方向に並べられている。計測機器2は6つあり、その機器IDは「2001」〜「2006」である。同図の下端に記載した三角形は監視装置1が第1要求信号を配信するタイミングを表す。同図における白抜きの四角形は監視装置1が第2要求信号を順次送信するタイミングを表す。同図における黒塗りの四角形、または内側に平行斜線を引いた四角形は計測機器2が第1要求信号に対して第1返信信号を返信したことを表す。なお、各要求信号に対する返信信号の取得期間は1秒に設定されている。つまり、3秒ごとに2秒間にわたって監視装置1は休止し、計測機器2は監視装置1からの要求を待つ待機状態になる。
【0051】
この通信システム9において監視装置1は、3秒ごとに第1要求信号を配信するとともに、第2要求信号を送信している。0秒の時点では、どの計測機器2においても計測される数値が閾値を超えない。すなわちどの計測機器2にも異常兆候は見られない。したがって、監視装置1は0〜1秒の間に第1返信信号を取得しない。そして、0秒の時点では、監視テーブル121において読み出される機器IDは「2001」であるため、監視装置1は、機器ID「2001」に対応する計測機器2に対して第2要求信号を送信し、これに対して第2返信信号を取得する。その結果、監視装置1は、上記の計測機器2が正常に動作していることを確認する。
【0052】
次に、0.5秒の時点で、機器IDが「2003」の計測機器2において異常が発生すると仮定する。すなわち、この計測機器2が固定されている護岸ブロック3が傾いたために、この計測機器2で計測される数値が閾値を超える。3秒の時点で、2回目の第1要求信号が監視装置1から配信される。このとき機器IDが「2003」の計測機器2から第1返信信号が返信され、監視装置1はこの計測機器2に異常兆候があることを認識する。また、この時点では、機器IDが「2002」の計測機器2に向けて第2要求信号が送信されるので、監視装置1は、機器IDが「2002」の計測機器2が正常に動作していることを確認する。このように3秒ごとに第1要求信号が配信されるため、長くとも3秒以内に、発生した異常兆候は捉えられることとなる。例えば、7.5秒の時点で機器IDが「2006」の計測機器2に異常が発生すると仮定すると、発生したこの異常は9〜10秒の間に監視装置1によって認識される。
【0053】
ここで、比較のため、従来技術の例を説明する。図12は、従来技術における監視システムの動作例を示す図である。同図に示す監視装置は、3秒ごとに一斉同報通信により配信する要求信号によって、全ての計測機器からその識別情報と計測内容を返信するように要求する。この場合、計測機器において発生した異常を監視装置が認識するまでの時間は本発明に係る通信システム9と同じである。しかし、同図に示す監視装置は、3秒ごとに異常の有無に関わらず全ての計測機器からの返信を受け付けるので、計測機器の数が増大すると、通信に衝突が生じ易くなる。
【0054】
また、図13は、他の従来技術における監視システムの動作例を示す図である。同図に示す監視装置は、一斉同報通信を行わずに、1秒ごとにいわゆるポーリングを行って各計測機器における異常発生の有無を順次確認する。この場合、0.5秒の時点で機器IDが「2003」の計測機器2に発生した異常は2〜3秒の間に監視装置1によって認識される。しかし、7.5秒の時点で機器IDが「2006」の計測機器2に発生した異常は11秒より後にならなければ監視装置1によって認識されることはない。つまり、このように、ポーリングによって全ての計測機器に対して順次、異常の有無を確認していくと、計測機器の数に比例して確認の周期が長くなるので、多数の計測点を監視するシステムにおいては、監視の即応性を欠くこととなる。
【0055】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る通信システム9において、監視装置1は間欠的な監視が可能であるため、連続して監視する必要がある装置に比べてメンテナンスが容易である。
また、監視装置1は、一斉同報通信により配信した第1要求信号に対し、異常が検出された計測機器2から第1返信信号を取得するので、全ての計測機器2から返信を取得する監視装置と比較して、通信に衝突が発生する可能性は低い。
また、監視装置1は、第1要求信号を一斉同報通信により配信し、この第1要求信号に対する第1返信信号を取得するので、全ての計測機器2に対して順番に問合せることによって異常の有無を確認する監視装置と比較して、速やかに異常の発生を認識することができる。
【0056】
また、監視装置1は、一斉同報通信により配信する第1要求信号とは別に、全ての計測機器2に対して第2要求信号を順番に送信することにより、計測機器2のうち故障等により動作が確認されていないものを発見しているので、計測機器2により第1返信信号が返信されないことが、故障等による動作不具合によるものか、計測結果が指定された条件を満たしていないことによるものかを区別することができる。
また、計測機器2は、監視装置1から第1要求信号の配信があったときにだけ計測を行えばよいので、連続して計測し続ける必要がある計測機器に比べて電力消費量を抑制することができる。
【0057】
3.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0058】
(1)上述の実施形態において、監視装置1は、一斉同報通信により配信する第1要求信号とは別に、全ての計測機器2に対して第2要求信号を順番に送信することにより、計測機器2のうち故障等により動作が確認されていないものを発見していたが、監視装置1は、第2要求信号を送信しなくてもよい。
【0059】
(2)上述の実施形態において、制御部21によって実現される判断部212は、計測部24により出力された数値と、記憶部22から読み出した閾値222とを比較し、この数値が閾値222を超えているか否かを判断し、この数値が閾値222を超えていると判断した場合にのみ、返信部213に返信処理を行わせていたが、この閾値222を記憶部22から読み出す代わりに、第1要求信号から抽出してもよい。この場合、監視装置1の制御部11は、第1要求信号に閾値222を含ませて配信すればよい。第1要求信号に含ませられる閾値222は、監視装置1の図示しない操作部を介して利用者が入力したものであってもよい。
【0060】
また、計測部により出力される数値は1つに限られず2つ以上であってもよく、閾値222も2つ以上であってもよい。例えば、2つ以上の出力値のいずれかが、2つ以上の閾値で示される或る範囲内に収まっている場合に、監視装置1の制御部11は、計測手段による計測結果が指定された条件を満たしていると判断してもよい。要するに、監視装置の配信手段は、第1要求信号に条件を指定する情報を含ませて配信し、計測機器の判断手段は、第1要求信号に含まれる情報により指定された条件を、計測結果が満たしているか否かを判断すればよい。
これにより、計測機器2において判断される条件を、第1要求信号の配信によって指定することができる。
【0061】
(3)上述の変形例において、監視装置1の制御部11は、第1要求信号に条件を指定する情報を含ませて配信していたが、この情報に加えて、配信する対象である2以上の計測機器2の各機器IDを第1要求信号に含ませて配信してもよい。この場合、計測機器2の制御部21は、受信した第1要求信号に含まれる機器IDと、記憶部22に記憶されている機器IDとを比較し、両者が一致する場合に、計測部24による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断すればよい。つまり、この監視装置1の制御部11は、第1要求信号に条件を指定する情報と、複数の計測機器2のいずれか2以上の機器IDとを含ませて配信し、計測機器の制御部21は、第1要求信号に含まれる機器IDのいずれかと記憶手段が記憶する機器IDとが一致する場合に、第1要求信号に含まれる情報により指定された条件を、計測結果が満たしているか否かを判断すればよい。
これにより、複数の計測機器2を特定して、それらの各計測機器2に対して第1要求信号を配信することにより、それらの計測機器2で判断される条件をそれぞれ指定することができる。
【0062】
(4)上述の変形例において、監視装置1の制御部11は、第1要求信号に条件を指定する情報に加えて、配信する対象である2以上の計測機器2の機器IDを第1要求信号に含ませて配信していたが、機器IDに加えて、または機器IDに代えて、計測機器2の属するグループを識別するグループID(グループ識別情報)を第1要求信号に含ませて配信してもよい。
【0063】
この場合、複数の計測機器2は複数のグループに分類されており、計測機器2の記憶部22は、複数のグループのうち、自身が属するグループを示すグループIDを記憶しているとよい。そして、計測機器2の制御部21は、第1要求信号に含まれるグループIDと記憶部22が記憶するグループIDとが一致する場合に、第1要求信号に含まれる情報により指定された条件を、計測結果が満たしているか否かを判断すればよい。なお、第1要求信号に含ませるグループIDは1つに限られず、2以上であってもよい。
【0064】
これにより、計測機器2をグループ単位で特定して、そのグループに属する計測機器2に対して第1要求信号を配信することにより、その計測機器2で判断される条件を指定することができる。
【0065】
(5)上述の実施形態において、計測機器2の制御部21は、計測部24により計測を行わせ、計測部24が出力する数値が記憶部22に記憶した閾値222を超えるか否かを判断していたが、計測部24により少なくとも2回にわたり計測を行わせ、計測部24が出力する数値の変化量(差分)が閾値を超えるか否かを判断してもよい。つまり、制御部21は、計測手段が出力する数値と、当該数値よりも前に前記計測手段が出力した数値との差が閾値を超える場合に、前記計測結果が前記条件を満たしていると判断すればよい。
【0066】
例えば、図11において「黒塗りの四角形」は、計測機器2に異常が発生してからはじめて第1要求信号に対する第1返信信号を返信するタイミングを示しており、「内側に平行斜線を引いた四角形」は、計測機器2に異常が発生してから1回以上返信した後で、第1返信信号を返信するタイミングを示している。したがって、後者の場合には、差分は変化していない場合がある。上述のように、差分が閾値を超える場合に、条件を満たしていると判断して第1返信信号を返すようにすれば、後者の通信は省略される。
【0067】
これにより、計測機器2は、前回の計測と比較して一定の変化があったときにだけ、第1要求信号に対する第1返信信号を返信することとなるので、通信量、消費電力量等が抑制されるとともに、通信の衝突が起こり難くなる。なお、前回の計測により出力した数値は、例えば制御部21のRAMや記憶部22等に記憶してもよい。
【0068】
(6)上述の実施形態において、監視装置1は、記憶部12に記憶された監視テーブル121の上から順に機器IDを読み出して、自身が第2要求信号DS2であることを示す情報と、読み出したこの機器IDを記述した第2要求信号DS2を、通信部13を用いて順次送信していたが、取得した第1返信信号RS1に応じて、この第2要求信号DS2を送信する順番を変更してもよい。
【0069】
例えば、監視装置1は、記憶部12に計測機器2の機器IDに順位を割り当てた機器IDリスト(一覧)を記憶する。この機器IDリストは、監視装置1が起動されたときに、制御部11により、監視テーブル121を上から順に読み取り、この機器IDの配列に基づいて生成する。そして、制御部11は、監視テーブル121ではなく、この機器IDリストにおける優先順位に沿って第2要求信号DS2を送信すればよい。そして、監視装置1が計測機器2から第1返信信号を取得すると、制御部11は、この第1返信信号に含まれる機器IDを機器IDリストから除外するか、または機器IDリストの優先順位における最下位に移動させればよい。
【0070】
図14は、監視装置1が計測機器2から取得した第1返信信号に含まれる機器IDを機器IDリストから除外した場合の通信システム9の動作例を示す図である。同図に示すように、3〜4秒の時点において、監視装置1は、機器IDが「2003」である計測機器2に異常が発生していることを認識するとともに、この計測機器2が動作することを認識している。ここで、制御部11は、機器IDリストから「2003」を除外する。そして、6秒の時点で、監視装置1は、第1要求信号を配信するとともに、第2要求信号を送信する。このとき、監視装置1は、「2003」が除外された機器IDリストから次の機器IDを読み出すので、機器IDが「2004」の計測機器2に向けて第2要求信号を送信することとなる。
【0071】
このように、第1返信信号に含まれる機器IDを機器IDリストから除外することにより、異常兆候がありと認められた計測機器2については、それ以降の動作確認を行わなくなるので、通信量が抑制され、通信の衝突は回避され易くなる。また、このような除外を行わない場合に比べて、全ての計測機器2に対する動作確認を速く完了することができる。
【0072】
また、第1返信信号を返信したばかりの計測機器2は、故障していないことが明らかであるから、上述のように第1返信信号に含まれる機器IDを機器IDリストの優先順位における最下位に移動させることで、故障していないことが明らかな計測機器2の動作確認を行うタイミングを先延ばしにすることができる。これによっても、通信量が抑制され、通信の衝突は回避され易くなる。すなわち、監視装置1は、複数の計測機器のそれぞれを優先順位が高い順に並べた一覧を生成する生成手段と、計測機器により返信された第1返信信号を第1取得手段が取得すると、当該第1返信信号を返信した計測機器を、生成手段により生成された一覧から除外するか、または当該一覧の優先順位における最下位に移動させることにより、当該一覧を変更する変更手段を備え、監視装置の送信手段は、変更手段により変更された一覧における優先順位に沿って、第2要求信号を送信すればよい。
【0073】
(7)制御部11および制御部21によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体、光ディスク等の光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリー等の、コンピューター装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、制御部11および制御部21によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置を適用することができ、例えば、専用のプロセッサ等を用いてもよい。また、制御部11および制御部21がプログラムを実行することにより実現される各種機能は、それぞれ専用のプロセッサ等によって実現されてもよい。
【0074】
(8)上述の実施形態において、通信システム9は、護岸ブロック3の傾きの異常を検知することに使用されたが、他の様々な分野に適用することができる。例えば、周囲の温度を計測する温度センサーを備えた複数の計測機器2を、農地に分散配置して、監視装置1により農地の各計測点における温度の変化を監視してもよい。また、キノコ等の培養室において保管される複数の培養器に、湿度や発熱量を計測するセンサーを備えた計測機器2をそれぞれ配置して、変化を監視し、これに基づいて温度および湿度管理を行ってもよい。また、土地の境界に埋め込まれる杭に加速度センサーや角速度センサー等を備えた計測機器2を固定し、杭の位置や傾きの変化を監視して、土地の所有権に関する不正行為の予防を行ってもよい。また、この通信システム9に、害虫、雨滴、照度、花粉等を検知するセンサーを備えた計測機器2を適用することにより、害虫の発生や、降雨、日照、花粉の飛散等を監視してもよい。
【0075】
(9)1つの計測機器2には、1つの計測部24が備えられていたが、2つ以上の計測部が備えられていてもよい。例えば、計測機器2は、温度と加速度のそれぞれを計測する計測部を備えていてもよい。また、計測機器2に備えられた計測部により、電池の電圧値を計測してもよい。この場合、電池の電圧値が予め定めた電圧値以下になったときには、返信をしないように定めてもよい。
【0076】
(10)なお、2以上の計測機器2が1つの第1要求信号に対して返信をする場合に、通信の衝突が生じる可能性がある。この場合には、1つの計測機器2を除く計測機器2に信号出力を停止させ、順次出力させる計測機器2を切り替えて通信を行うアンチコリジョン機能を用いて衝突を回避すればよい。具体的には、例えば、監視装置1が、2以上の第1返信信号の返信を検知して、これによる通信の衝突によりいずれも取得できない場合に、特定範囲の機器IDを指定して、各計測機器2に対して再度の返信を要求する。この結果、なお、衝突が解消されない場合に、監視装置1は、機器IDの範囲を狭めて再度返信を要求する。そして、これを繰り返して、通信の衝突が解消された、すなわち、第1返信信号を返信する計測機器2が1つになったときに、監視装置1は、その計測機器2から第1返信信号を取得すればよい。そしてその後、監視装置1は、第1返信信号を取得した計測機器2の機器IDを除いた特定範囲の機器IDを指定して、残りの計測機器2に対し、返信を要求すればよい。
また、最も早く通信を確立した計測機器2が優先して通信を行い、他の計測機器2は、先に通信を行っている計測機器2が通信を終了するのを待って、通信を行うようにしてもよい。
【0077】
(11)上述の実施形態において、無線通信に用いられる通信帯域については特に記載していないが、短波帯、超短波帯、極超短波帯等のほか、例えば、LF(Low Frequency)帯等の長波帯を好適に用いることができる。本発明に係る通信システム9によれば、通信量および通信衝突発生の可能性が低減されるので、長波帯による通信が短波帯等による通信に比べて通信速度が遅いことによる不具合が解消される。また、長波帯による通信は、短波帯等による通信に比べて、水、土、金属等を超えて伝播することができるという利点があるので、様々な用途に適用することができる。
【0078】
(12)上述の実施形態において、第1要求信号DS1を配信する配信指示は、タイマーにより周期的に発生させた割り込み信号を契機として行われていたが、他のタイミングを契機として行ってもよい。例えば、監視装置1の制御部11は、記憶部12に予め記憶されたスケジュールに沿って割り込み信号を発生させてもよい。このスケジュールには、割り込み信号を発生させるタイミングとして、例えば、午前7時、午前8時、午後1時、午後4時および午後10時半、というように、一定でない間隔で定められた複数のタイミングが記述されていてもよい。また、上述の配信指示は、監視装置1の図示しない操作部を介して利用者が操作をしたときに行われてもよい。
【0079】
(13)上述の実施形態において、計測機器2の制御部21は、監視装置1から受信した要求信号が第1要求信号DS1であると判断すると、計測部24により計測を行わせ、計測部24が出力する数値が記憶部22に記憶した閾値222を超えるか否かを判断していたが、このときに、既に計測部24により計測され出力された数値のうち、最新の数値が閾値222を超えるか否かを判断するようにしてもよい。この場合、計測部24は、最新の出力値を記憶部22に逐次上書きして記憶すればよい。すなわち、計測部24は、監視装置1から第1要求信号を受信してから計測するのではなく、受信に関わりなく連続的に計測を行ってもよい。この場合であっても、計測機器2は、監視装置1から配信された第1要求信号に対して返信を行うので、監視装置1は、間欠的に監視を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1…監視装置、11…制御部、111…配信部、112…送信部、113…取得部、12…記憶部、121…監視テーブル、13…通信部、2,2a,2b…計測機器、21…制御部、211…受信部、212…判断部、213…返信部、22…記憶部、221…機器ID、222…閾値、23…通信部、24…計測部、3…護岸ブロック、9…通信システム、DS1…第1要求信号、DS2…第2要求信号、RS1…第1返信信号、RS2…第2返信信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視装置と、複数の計測機器とを具備する通信システムであって、
前記監視装置は、
返信を要求する第1要求信号を前記複数の計測機器へ配信する配信手段と、
前記配信手段が配信した前記第1要求信号に対して前記計測機器から返信される第1返信信号を取得する第1取得手段とを備え、
前記複数の計測機器のそれぞれは、
物理量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、
自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、
前記監視装置から前記第1要求信号を受信する第1受信手段と、
前記第1受信手段が前記第1要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記第1返信信号を前記監視装置に返信する第1返信手段とを備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記条件を指定する情報を含ませて配信し、
前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記情報と、前記複数の計測機器のいずれか2以上の識別情報とを含ませて配信し、
前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記識別情報のいずれかと前記記憶手段が記憶する識別情報とが一致する場合に、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記複数の計測機器は複数のグループに分類されており、
前記計測機器の記憶手段は、前記複数のグループのうち、自身が属するグループを示すグループ識別情報を記憶し、
前記監視装置の前記配信手段は、前記第1要求信号に前記情報と、前記複数のグループのいずれかのグループ識別情報を含ませて配信し、
前記計測機器の前記判断手段は、前記第1要求信号に含まれる前記グループ識別情報と前記記憶手段が記憶するグループ識別情報とが一致する場合に、前記第1要求信号に含まれる前記情報により指定された条件を、前記計測結果が満たしているか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記計測機器の前記計測手段は、物理量を計測した数値を出力し、
前記計測機器の前記判断手段は、前記計測手段が出力する数値と、当該数値よりも前に前記計測手段が出力した数値との差が閾値を超える場合に、前記計測結果が前記条件を満たしていると判断する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の通信システム。
【請求項6】
前記監視装置は、
前記複数の計測機器のそれぞれに対し応答を要求する第2要求信号を、当該各計測機器に定められた優先順位に沿って送信する送信手段と、
前記送信手段が送信した前記第2要求信号に対して前記計測機器から返信される第2返信信号を取得する第2取得手段とを備え、
前記複数の計測機器のそれぞれは、
前記監視装置から前記第2要求信号を受信する第2受信手段と、
前記第2受信手段が前記第2要求信号を受信すると、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記第2返信信号を前記監視装置に返信する第2返信手段とを備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の通信システム。
【請求項7】
前記監視装置は、
前記複数の計測機器のそれぞれを前記優先順位が高い順に並べた一覧を生成する生成手段と、
前記計測機器により返信された前記第1返信信号を前記第1取得手段が取得すると、当該第1返信信号を返信した計測機器を、前記生成手段により生成された前記一覧から除外するか、または当該一覧の優先順位における最下位に移動させることにより、当該一覧を変更する変更手段を備え、
前記監視装置の送信手段は、前記変更手段により変更された前記一覧における前記優先順位に沿って、前記第2要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
物理量を計測する計測手段と、前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む返信信号を返信する返信手段とを備える複数の計測機器のそれぞれに対して、返信を要求する要求信号を配信する配信手段と、
前記配信手段が配信した前記要求信号に対して前記計測機器から返信される前記返信信号を取得する取得手段と
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項9】
物理量を計測する計測手段と、
前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、
自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、
返信を要求する要求信号を配信する監視装置から前記要求信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が前記要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記返信信号を前記監視装置に返信する返信手段と
を備えることを特徴とする計測機器。
【請求項10】
物理量を計測する計測手段と、自身を示す識別情報を記憶する記憶手段と、返信を要求する要求信号を配信する監視装置から前記要求信号を受信する受信手段とを備える計測機器のコンピューターを、
前記計測手段による計測結果が指定された条件を満たしているか否かを判断する判断手段と、
前記受信手段が前記要求信号を受信すると、前記判断手段が前記条件を満たしていると判断した場合に、前記記憶手段に記憶された前記識別情報を含む前記返信信号を前記監視装置に返信する返信手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−232820(P2011−232820A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100098(P2010−100098)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】