説明

通信システムにおけるソース・デバイス同期化のための方法および装置

複数の信号ソースを活動化する工程と、同期化イベントに応答して複数の信号ソースにデータを同時に伝送させるために複数の信号ソースに同期化イベントを伝送する工程と、を含む通信方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に通信システムで使用される同期化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の参照
本出願は、モトローラ社(Motorola,Inc)により本出願と共に所有される、
2001年10月17日出願のクフナーら(Kuffner,et al.)による「Collision Mitigation Methods used in a Communication System」という名称の米国特許出願第09/982279号(整理番号CM01969G)、
2003年3月11日出願のクフナーら(Kuffner,et al.)による「Method and Apparatus for Electronic Item Identification in a Communication System」という名称の米国特許出願第10/385549号(整理番号CM05697G)、および
2003年3月11日出願のクフナーら(Kuffner,et al.)による「Method and Apparatus for Adaptive Processing Gain for Multiple Source Devices in a Communication System」という名称の米国特許出願第10/385886号(整理番号CM05698G)、に関する。
【0003】
マルチ・ユーザ・システムでデータを高速、効率的、および確実に通信する手段は多くの適用分野にとって望ましい。こうしたシステムの必要性は、(複数ソースからの)複数個のデータが受信機によって即時に読み取られる必要がある場合に生じる。こうした技術の特定の適用分野の1つが、複数アイテムの電子識別である。
【0004】
電子識別産業は、リアルタイムのアイテムの追跡および在庫を含む多くの商業および軍事適用分野にとって重要である。こうした使用は、何らかの形の製造、倉庫保管、流通、および小売に関係するほぼすべてを含む無数のシナリオにおいて、運用効率を大幅に向上させることができる。即時および効率的に正確なリアルタイムの在庫追跡を実行する機能により、アイテムの置き違え、アイテムの在庫過剰または在庫不足、およびアイテムの盗難を含むがこれらに限定されることのない多くの形で、無駄を大幅に削減することができる。
【0005】
現在の電子識別業界は、複数のアイテムを識別する際に手作業の(光ベースの)スキャニングに大幅に依拠しており、それぞれのアイテムに製品コードが割り当てられている。現在では米国の小売業界全体にわたって、統一商品コード(UPC)システムが広く普及している。しかしながら、手作業でのアイテムのスキャニングはかなり時間がかかり、人的な間違いが起こりやすい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、複数のソースから受信機へ、高速、効率的、および確実にデータを伝送するための方法を提供することが求められている。より具体的に言えば、RFIDシステムにおけるすべての可能な運用ケースで、こうしたデータをできる限り即時に読み取ることが求められている。RFIDシステムではデータ通信のスループットを最大にするために
、RF搬送周波数の感知できる部分であるように十分高い、非常に高いシンボル・レート(symbol rate)を使用することが可能である。これらのケースでは、確実なシステム・オペレーションが保持されなければならない。いくつかの低搬送周波数システムでは、所望のスループットを達成するために使用する必要があるRFサイクルはシンボル当たりわずか2つでよい。こうした高い相対シンボル・レート・システムでは、タイミング・エラーに対して(特に良好なシンボル同期化に依拠したシステムに対して)わずかな余裕しか残されておらず、高度に正確な同期化の方法および装置の必要性が強調される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
記載されたシステムは、複数のソース・デバイスが即時および効率的に宛先デバイスに情報を送ることが可能な改善された通信方法を提供する。記載された通信システムは、いくつかの技法の組み合わせを利用することにより従来技術を介して優れた性能を達成する。本システムの1実施形態において所望のスループットを達成するために、ソース・デバイスは、特に低搬送周波数(たとえば125kHz)で搬送周波数に対して非常に高いシンボル・レートの比率で通信するが、記載された方法は高周波システムにも同様に適用可能である。記載された技法は、高(絶対)シンボル・レート・システムの場合により重要となる。大量のデータを1つ(または複数)の場所から他の場所へ即時に転送する必要のある、高速高スループット通信リンクの場合は、高シンボル・レート(または高チップ・レート・スペクトル拡散)システムが望ましい。
【0008】
記載されたシステムはUPC置換用の手段を提供する一方で、手作業(光ベース)のスキャニングをなくし、スキャニング速度を大幅に向上させるなどの、追加の特徴および利点が加えられる。さらに本発明は、店内の在庫管理などの多くの応用例でかなり有用な多数のアイテムの高速同時識別も提供する。しばしばこうした情報の管理は、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで実行される場合により有益である。本発明は、搬送波に対して非常に高いシンボル・レートの比率、または高絶対シンボル・レートを使用することで、スループットを向上させ、結果として所与の数のアイテムを反映するのに必要な時間を削減することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態は、ソース・デバイス上の回路を簡略化するために一般に(ソース・デバイスから宛先デバイスへの)1方向通信を使用するため、ソース・デバイスはデータ受信機を使用する必要がない。
【0010】
ソース・デバイスから宛先デバイスに送られる情報は、通常、2進の電子製品コード(Electronic Product Code)(「EPC」)または識別(「ID」)情報の形を取るが、いかなる形でもこれらの情報形式に限られるものではない。電子遠隔測定法などの他のタイプの情報(または任意の他のタイプの測定または割り当てられたデータ)を送ることも可能である。実際のところ、2進数(または他の)フォーマットでの表現を有する任意の情報を、記載されたシステムで送ることが可能である。
【0011】
次に本発明について同じ参照番号が同じ要素を示す添付の図面を参照しながら説明するが、これらは例として示したものにすぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示されるように、情報は通常、ソース・デバイス110、120、130の集合から単一の宛先デバイス100に送信され、本発明の好ましい実施形態では、ソース・デバイス110、120、130の集合から宛先デバイス100への情報の同時通信を使用する。本発明には実施例の情況に応じて多数の応用例があるため、考察全体を通じて使用される用語のいくつかはわかりやすくするために他の用語と交換することができる。した
がって、ソース・デバイス、応答器、ユーザ、アイテム、タグなどの用語は、一般性を失うことなく以下の考察全体を通じて交換可能であること、また、宛先デバイス、システム・コントローラ、呼び掛け器(interrogator)、読み取り装置、受信機、などの用語は、一般性を失うことなく以下の考察全体を通じて交換可能に使用されることにも留意されたい。
【0013】
本発明が採用する通信システムは、光通信、無線周波(RF)通信、有線(接続)通信、音波通信、容量結合通信、または誘導結合通信を含むがこれらに限定されることのない、いくつかの異なる形の通信140を包含することができる。本発明の好ましい実施形態は、タグ110、120、130と読み取り装置100との間で容量結合通信を使用するが、他の形の通信リンクも制限なしに使用可能である。
【0014】
本発明の以下の説明は、本システムの多くの重要な態様を説明するいくつかの背景セクション(I〜II)と、本発明の細部を説明する後続セクション(III〜V)に分けられる。本システムの好ましい実施形態は、以下で説明する重要な技法のすべてを使用するが、他の実施形態では記載された技法のサブセットのみを使用することが可能である。
【0015】
I.データのスクランブリングおよび逆スクランブリング(Descrambling)
図2に示されるように、記載されたシステムでタグ110によって読み取り装置100へ送られるデータ200は、以下で説明するように測定されたデータまたは他のユーザ定義データを含むがこれらに限定されることのない、多くの形を取ることが可能である。本発明の好ましい実施形態では、通信データ200は少なくとも識別データ・シーケンスからなる。たとえば、少なくともデータ200は、デビッド・エル・ブロック(David
L.Brock)の「The Electronic Product Code」MIT−自動IDセンター(MIT−Auto ID Center)、2001年1月によって概説されるような96ビットの識別データを有するEPCからなってもよい。EPC200は、ヘッダ203、オブジェクト・クラス204、ベンダ・コード205、および通し番号206用のフィールドを予約することによって、システム内の各タグ(またはアイテム)110を一意に識別する働きをする。たとえば、96ビットの情報は大量の固有ID(296〜8×1028、この数字の膨大さを示すものとして、地球の質量は6×1027グラムである)を規定することに留意されたい。
【0016】
好ましい実施形態では、タグ110上に格納されたデータ200に、ユーザ情報、エラーのチェックまたは訂正情報(たとえば順方向エラー訂正(FEC)、巡回冗長検査(CRC)など)、および他の予約済みビットなどの、追加情報202が付加される。追加情報(たとえばエラー検出または訂正データ)は、以下に説明するデータ・スクランブリング工程の前または後のいずれに付加することも可能であるが、この追加情報がデータ・スクランブリングの後に付加される場合は、均一にランダムな特性も有することが望ましい。
【0017】
当業者であれば、いくつかの異なる追加の形の情報(たとえば、プログラム可能タイムスタンプ、他のユーザ個人識別番号(PIN)、測定データ、環境データなど)を事前に決定し、タグ110、120、130上に格納することも可能であることを理解されよう。記載されたシステムでは、タグ110、120、130上に格納されるデータの量またはタイプにどのような制限もないことに留意されたい。
【0018】
すべてのタグ機能は、一般に低複雑性(すなわち低コスト)回路で実施される。タグ110上の回路を単純に維持するため、および(以下で完全に説明するように)システム内のチャネル選択工程の性能を向上させるために、オリジナルのIDデータ200はタグ1
10上への格納に先立ってスクランブルすることが非常に望ましい。これは一般に、タグ110上へのデータの格納オペレーション230の前に実行されるランダム化またはスクランブリング工程211を介して実施される。
【0019】
このスクランブリング・アルゴリズム211は、一般に、EPCデータ200がスクランブル220された後に望ましい統計的(すなわち均一およびランダム)な特性を示すことを保証するために、システム全体に広く適用される。別の方法として、他の実施形態では、スクランブル済みデータ220を効果的に作成するために、何らかの他のスクランブリング、暗号化、または番号付け割り当てアルゴリズムを格納済みデータ200に適用することが可能である。追加情報のプライバシを得るために、個々のベンダはオプションで事前暗号化210を適用することができる。
【0020】
図3は、記載されたシステムの好ましい実施形態に従った、スクランブル済みデータ220をタグ110に埋め込むためのシステムの実施例を示す。図3では、オリジナルのEPC200が、製造業者などのEPCマネージャ310から通常の形で取得される。EPC200はその後スクランブラ330に入力され、これがスクランブリング・アルゴリズムを実行してスクランブル済みデータ(S_EPC)220を出力する。RFタグ・プログラマ/作成者350は、その後スクランブル済みデータS_EPC 220をタグ110に埋め込む。スクランブル済みデータ220はオリジナル・データ200の修正版であり、ここでタグ110内に常駐する。
【0021】
図4は、多くのRFタグ・デバイス110、120、130から電子識別データ200を同時に読み取るための高水準ブロック図である。この実施例では、典型的な在庫カウント時に棚上の商品に関連付けられたタグを読み取ることが可能な方法が示される。オペレーション時に、読み取り装置100はタグ110、120、130の集合を同時に活動化する。活動化されたタグ110、120、130は、チャネル選択の根拠としてスクランブル済みタグ・データ220を使用し、複数パス伝送アルゴリズムを実行する(以下のセクションIIIで詳細に説明する)。
【0022】
たとえば、複数パス・アルゴリズムの第1のパスでは、少なくともS_EPC1の一部を使用してチャネルA240を選択し、少なくともS_EPC2の一部を使用してチャネルB240を選択し、少なくともS_EPCnの一部を使用してチャネルC240を選択する。チャネルA、B、およびC、またはそれらのいずれかの組み合わせは、同じであるかまたは異なり得る。読み取り装置100はその復調アルゴリズムを実行し、最終的に棚上のタグ110、120、130用のS_EPC220を取得する。S_EPC220は逆スクランブラ460にルーティングされ、これが逆スクランブリング・アルゴリズムを実行してタグ11、120、130のオリジナルEPCデータ200を取得する。その後各タグに対応するEPCデータ200を読み取り装置100内に維持し、在庫レポートの形でオリジナルEPCマネージャ310(たとえば製造業者)に返送することが可能である。当業者であれば、逆スクランブリング・オペレーションが、リモートに配置されたコンピュータまたはオンライン・サーバなどの他の場所でも実行可能であることを理解されよう。図4のシステム内では、高度に構成されたEPCデータ200の代わりに、タグ110、120、130がスクランブル済みバージョンの少なくとも一部を使用して複数パス伝送アルゴリズムの各パス中にチャネルを選択することから、衝突が最小限になる。このスクランブル済みデータ220は、均一に分散されたデータに非常に酷似しているため、同様のEPCデータ200を備えた商品間での衝突は最小限になる。複数パス伝送アルゴリズムおよびチャネル選択に関する詳細は以下のセクションIIIを、衝突および衝突耐性に関する詳細は以下のセクションVを参照されたい。
【0023】
タグ110が(以下で説明するように)伝送用に使用するチャネルを選択する必要が生
じる前に、タグ110と読み取り装置100との間では、同期化情報(および可能な拡散利得調整)以外の情報は交換されない。したがって、記載されたシステムにおけるスクランブリングおよび逆スクランブリング方法は自己参照専用でなければならず、EPC200のスクランブルまたはS_EPC220の逆スクランブルに必要な情報は、データそれ自体のみである。
【0024】
記載されたシステムは、一定の重要な特性を有するスクランブリング方法を使用する必要がある。重要な特性とは、スクランブリング方法が均一なランダム分散の特性を示す結果に典型的なデータ・シーケンス(EPCデータ・シーケンスなど)をマッピングするものである。好ましい実施形態では、スクランブリング方法は以下の2つの主要な特性を有する。
【0025】
1. k進数で表される2つの典型的なEPC200が与えられ、kが所定の整数である(たとえば典型的なEPC200のペアでは、k進数の多くが同じであるがすべてではない)場合、これらのEPC200に対応するスクランブル済みS_EPC220がn個の連続するk進数(タグ110がチャネル割り当ての決定に使用する)と一致する確率は、およそ1/kである。
【0026】
2. k進数で表される2つの典型的なEPC200が与えられ、kが所定の整数であり(たとえば典型的なEPC200のペアでは、k進数の多くが同じであるがすべてではない)、そのスクランブル済み出力がn個の連続するk進数(タグ110がチャネル割り当ての決定に使用する)と一致する場合、後続のm個のk進数(タグ110が後続のチャネル割り当ての決定に使用する)はおよそ1/kの確率で一致することになる。
【0027】
2進で表されたEPC200の実施例では、これらの特性は、各出力ビットがあらゆる入力ビットに依存して単一の入力ビットを変更し、平均して出力ビットの半分を変更する、強いアバランシェ(avalanche)特性に関する。
【0028】
前述のスクランブリング工程に加えて、データ200は他のデータのセキュリティを保証するために、ユニバーサル・スクランブリング・アルゴリズムを適用する前または後に(たとえばタグ110のプログラミングに先行して)暗号化210することも可能である。当分野では、このタスクに使用可能な様々な既知の暗号化アルゴリズムがある(たとえばAES、データ暗号化標準(Data Encryption Standard)、国際データ暗号化アルゴリズム(International Data Encryption Algorithm)など)。この追加レベルのセキュリティの可用性は、高プライバシ・アプリケーション(タグが機密の医療または財務データを含む可能性がある場合など)にとって重要である。
【0029】
II.電力投入(power−on)方法
図7では、好ましい実施形態の趣旨におけるタグ110を示すブロック図が示されている。容量結合システムの場合、アンテナ701は1対の導電性電極(たとえば容量板)であるが、一般には、電磁場から回路にエネルギーを結合する任意の方法とすることができる。読み取り装置100によって生成されたRF搬送波信号中の交流(「AC」)電力は、受動的に電力が供給される(passively powered)タグ110に結合されて、電力変換装置703で整流され、そのうちの直流(「DC」)出力がタグ110に電力を与える際に使用され、タグ・エネルギー・モニタ704としても働き、これが通信も可能にする(このエレメントについては、以下でより詳細に説明する)。タグはローカル電源を持たないため、受動的に電力が供給されると言われる。状態コントローラ705は伝送情報を生成するためにタグ・データ220および通信チャネル選択ブロック240上で動作し、この情報がチャネル変調器708の制御の下で伝送エレメント702(当
分野で周知のロード変調エレメントなど)に印加される。同期化は一般にエネルギー・モニタ704内で実行され、これを使用して、セクションIIIで説明するようにすべてのソース・デバイスからの通信の時間合わせを行う。
【0030】
各タグ110上に格納されたデータ220は、典型的には低複雑性(すなわち低コスト)回路に格納され、次にこれが読み取り装置100からの照会に応答する。各タグ110、120、130は、典型的には第1の所定の条件に合致するまで待機した後に、その情報を複数パス・アルゴリズムで活動化および伝送する。第1の所定の条件は、典型的には各タグ110、120、130について同じであるように設定されるが、他の実施形態ではランダムに選択または割り当てることが可能である。タグ伝送条件を示す一般的な流れ図の1例が、図8に示されている。この流れ図では、様々な尺度によって(たとえば第1の所定の条件にもはや合致しないか、または第2の所定の条件に合致する場合)第2の所定の条件に合致する場合があることに留意されたい。
【0031】
好ましい実施形態では、読み取り装置100は搬送波信号を介してタグ110、120、130にリモートに電力を供給する。タグ110での瞬間受領電力レベルが所定のしきい値(一般に703および704によって決定される)を超える場合に、第1の所定の伝送条件に合致する。図9はこのアクションを示す流れ図であり、T1およびT2は第1および第2の電力レベルしきい値を表す。一般に、タグは第1の所定の条件T1を満たしている場合、たとえT1を満たすことなく作動および同期化に十分な電力を有する可能性があるとしても、典型的には所定持続時間の搬送波内ギャップである同期化イベントにのみ応答することになる。(たとえば電力供給フィールド内でのタグの移動または結合条件における何らかの他の変化によって)同期化パルスまたはギャップ(すなわち、搬送波信号が伝送されない)が生じた後にT1が満たされるという条件にタグが偶然入ってしまった場合、タグは、次の同期化イベントが読み取り装置から受け取られるまで通信しないことになる。一般に、複数パス・アルゴリズムの第1のパスのみが同期化を必要とするが、これは制限ではなく、複数パス・アルゴリズムの後続のパス中にも追加の同期化イベントが同様に発生する可能性がある。本発明のいくつかの応用例では、各伝送パスの開始時にすべてのアクティブに伝送されるタグを再同期化することが望ましい(タグがシンボル・クロック・ソースに対してローカル発振器を使用している可能性があるケースなど、本明細書で説明されるようなスペクトル拡散システムの場合、シンボル・クロックはチップ・クロックである)。同期化イベントは、一般にパルス幅変調技法を使用してタグに送ることが可能であり、この場合、同時に(同期化情報に加えて)他の情報もタグに搬送することができる。たとえば同期化イベントは、2003年3月11日出願のクフナーら(Kuffner,et al.)による「Method and Apparatus for
Adaptive Processing Gain for Multiple Source Devices in a Communication System」という名称の米国出願第(整理番号CM05698G)で開示されるような、システム内の使用可能チャネル数の調整、または他のアクティブ集団管理の手段としての電力投入領域(すなわち所定の条件)の調整などの、他のイベントを同時に発信するために使用することもできる。パルス幅変調は、タグの伝送の同期化に加えて、電力投入レンジを増加または減少させるためにすべてのアクティブ・タグに発信する際に使用することが可能である。マルチソース通信システム・チャネル化はソース間の近似同期化に依拠しているため、伝送中のソースが同期化されることが重要である。
【0032】
当業者であれば、記載されたシステムの趣旨から逸脱することなく、他の所定の伝送条件を採用する実施が使用可能であることに留意されたい。タグ110が同期化および電力を受信する(受動タグの場合は読み取り装置100からリモートに、アクティブ・タグの場合は自己動力のいずれかで)と、タグ110は受信した信号強度を継続して監視し、これが依然として伝送可能な所定の条件内にあるかどうかを判別する。上述のように、タグ
は依然として読み取り装置の信号発信(たとえば、追加の同期化または適応パルスまたはギャップ)を受け入れることも可能である。タグ110はいったんそのデータの変調および伝送250を開始すると、完全に活動化される。システムの好ましい実施形態では、複数のタグ110、120、130は、典型的には所与の時間に完全に活動化されることになる。
【0033】
グループ内で完全に活動化されたタグは、第2の所定の伝送条件に合致するまでそれらの情報を複数のパス内で引き続き伝送することになり(以下で全面的に説明する)、その時点でデータの伝送を停止する。好ましい実施形態では、タグ110で受信した電力レベルは、タグ・エネルギー・モニタ704によって監視された際に、第1の所定のしきい値を下回るか、または典型的には第1の所定のしきい値よりも高く設定される第2の所定のしきい値を超えるかのいずれかの場合に、第2の所定の伝送条件に合致する。
【0034】
この方法では、タグの各グループが典型的には完全に活動化される、第1および第2の所定の伝送条件が受信する電力レベルのレンジ(たとえばウィンドウ)を形成する。記載されたシステムの好ましい実施形態では、電力投入レンジは典型的には約3dB幅であり、これは、タグ110、120、130が(何らかの正規化された受信済み電力レベルに関連して)1〜2Xのレンジ内の電力に応答することを意味する。電力供給ウィンドウは、一般に、タグの伝送を比較的狭い電力ウィンドウ内に収めさせるものであり、これによって(たとえば、非直交拡散コードを使用するスペクトル拡散システムでの)典型的ないくつかの通信システムに影響を与える遠近問題(near−far problem)を緩和するのに役立つことに留意されたい。
【0035】
好ましい実施形態では、システム内のすべてのタグ110、120、130に典型的には同じ電力投入レンジが割り当てられるが、プログラム可能(たとえば事前に割り当て済みであるがおそらく異なる)またはランダムな電力投入条件を使用するなど、他の実施形態も可能である。こうした実施例の1つは、異なる製造業者に異なる電力投入レンジ・レベルが割り当てられ、異なる製造業者の製品間に何らかの分離(または区別)が与えられた場合に生じる可能性がある。
【0036】
記載されたシステムの他の実施形態では、(基本の同期化を越える)2方向通信機能を備えたタグが存在する可能性があり、この場合、第1および第2の所定の伝送条件が何らかの他の信号発信情報からなる場合がある。所定の伝送条件がランダムな場合、これらの条件はタグ110上でランダムに決定される、読み取り装置によって適応的に決定される、またはタグ110のプログラミング時、とすることが可能である。ここでも、本システムの趣旨を逸脱することなく、これらの伝送制御の他の実施(たとえばタグを使用する2方向通信など)が可能であることに留意されたい。
【0037】
図10に示された実施形態例では、コントローラ1001によって本社からリモートに制御することが可能な読み取り装置100が、伝送媒体1003を介して棚1005上に取り付けられたアンテナ1004に接続される。物理的寸法の異なるオブジェクト1020、1021、1022にはパッケージの異なる部分にタグ110、120、130が配置され、結果として、読み取り装置100に関連付けられたアンテナ1004と、タグ110、120、130に関連付けられたアンテナ701との間の結合に変化を生じさせ、さらにその結果、タグ電子部品1012によって受け取られる電力レベルが異なることになる。読み取り装置アンテナ1004とシステム内の様々なタグ110、120、130との間の異なる結合特徴により、所与の読み取り装置アンテナの励起レベル(すなわち読み取り装置の伝送電力レベル)に対して異なるタグが異なる電力レベル(レンジ境界線1030および1031によって示される)を受け入れることが可能になる。様々なタグ110、120、130が異なる読み取り装置伝送電力レベルで、および異なる時間に、伝
送を開始することになる可能性があるため、この効果は、好ましい実施形態でシステム内に存在するタグの粗集団削減(coarse population reduction)としても働く。しかしながら複数のタグ110、120、130は、記載されたシステムの好ましい実施形態における特定の電力レベルについて、典型的には依然として同時に伝送を開始することに留意されたい。たとえば、識別が必要な1000のアイテムが在庫されており、読み取り装置100は10の異なる可能な電力レベルを通り、各電力レベルでおよそ100のタグのグループを活動化させる場合がある(ただし、一番上および一番下の電力レベルではより少ないタグを活動化させる場合がある)。システムの他の実施形態では、ユーザが伝送のために(共通基準に関連して)特定の時間スロットを選択する、時間スロット化(チャネル化)システムの場合など、複数タグからの伝送が同期化される(必ずしも同時ではないが)だけの場合がある。1実施形態では、読み取り装置100は最低の伝送電力レベルから始まるすべての可能な伝送電力レベルを通ることに留意されたい。したがって、タグ110、120、130の特定の電力投入レンジにより、読み取り装置100はタグの各グループが伝送を開始および終了するタイミングを効果的に制御する。読み取り装置100は、特定の電力投入レンジ(たとえば1030と1031との間)にあるタグ110、120、130のすべてが一意に識別された時間を特定し、その時間に次の電力レベル(たとえば1031より上)に入るか、または識別工程を終了することが可能であるため、この態様は重要である。
【0038】
他の実施形態では、読み取り装置100は所与の在庫プロファイルに関する予測された電力レベルのレンジを「習得」または記憶すること、および活動履歴とともにそれらの電力レベルに与えられた優先順位を使用してその電力スイープ(sweep)を調整することが可能である。読み取り装置100が、タグの活動化されていない電力レベルに入った場合、その状況を(典型的にはエネルギーまたは変調の検出測定値が低いことによって)感知し、以下でより詳細に説明するようにタグの合計読み取り時間を最小限にするために、即時に次の電力レベルに入る。他の応用例では、伝送システム全体の効率を最適化するために、読取装置がタグに信号を発信して、それらの電力投入レンジを(たとえばより狭いかまたはより広い電力投入ウィンドウに)適合させることができる。
【0039】
III.チャネル選択および伝送方法
すべての複数ソース(またはマルチユーザ)通信方法は、本発明と同様に何らかのタイプのチャネル化方法を使用する。記載されたシステムでは、いくつかのチャネル化方法または技法のうちのいずれか1つを使用することが可能である。一般に使用されるチャネル化方法は、直交チャネル化方法または準直交チャネル化方法という、2つのカテゴリに分けることができる。本発明は、所与の数のアクティブなタグおよび通信チャネル条件に対してシステム・オペレーション(すなわち使用可能なチャネル数)を最適化することが可能であるという事実に依拠している。
【0040】
直交通信チャネルには、選択されたチャネル上での通信が線形システム内の他のチャネル上での通信を(まったく)妨害しないという利点がある(すなわち、異なるチャネル間でのシンボル時間を介した相互相関がゼロに定義される)。準直交チャネルはほぼ直交であり(たとえば異なるチャネルについてゼロに近い相互相関値を有する)、典型的には直接拡散符号分割多重アクセス(DS−CDMA)システムで使用され、このシステムでは典型的には各ユーザに異なる拡散コードが割り当てられる。
【0041】
最大長の線形フィードバック・シフト・レジスタ(「LFSR」)シーケンス(すなわち、mシーケンス)の異なる位相(すなわち時間シフト)が低い(すなわち準直交)相互相関特性を有することが分かっていることは、当分野では周知である。2つの位置合わせされていないシーケンスの相互相関値は、−1/N(正規化済み)となるように定義され、ここでNはLFSR擬似雑音(「PN」)シーケンスの長さである。符号分割多重アク
セス・システムにおいて異なるユーザをチャネル化するために、しばしば同じ基底mシーケンスの異なるコード位相が使用される。当分野で周知であるように、PNシーケンス内の各シンボルまたはビットが典型的には「チップ」と呼ばれる。
【0042】
特別に増補されたPNコードの1例が、シーケンス内に(コード位相に応じてシーケンス内の異なるポイントで)人工的に挿入された(すなわち、LFSRの通常オペレーションによって生成されたのではない)2進のゼロを有するものであり、その結果、各チャネルの同じ時間オフセットで時間合わせ(すなわち同期化)された人工的に挿入されたゼロが発生し、結果として同じmシーケンスの異なるコード位相間にゼロの相互相関値が生じる。本発明の好ましい実施形態では、これらの特別に増補されたmシーケンス(その生成は図11に示す)を使用して、同期化システムにおける直交コード・チャネルを取得することに留意されたい。採用されたスペクトル拡散技法の付加された特典として、通信分野ではよく知られている耐妨害性(処理または拡散利得とも呼ばれる)も達成される。こうした技法の適用は、出荷時設定などの厳しい電磁環境にとって重要である。
【0043】
特に多くのユーザをかかえるシステムにおいて直交性を維持することの必要性は、正確なタイミング同期化の必要性を重視するものである。特に、直交拡散コード(たとえば、特に増補されたmシーケンス、ウォルシュ・コードなど)を使用するスペクトル拡散RFIDシステムの場合、正確なチップレベルのタイミング同期化は特に重要である。理想的な無雑音システムでは、変調パルスはスクエアであって完全に時間合わせされており、チップ期間内のいずれのサンプリング瞬間も十分である。しかしながら、受信機フィルタリング、特に雑音帯域幅を制限しSNRを最大にすることが意図された受信機フィルタリングが導入されると、パルスが理想的なサンプリング・レベルからわずかに離れるサンプル・タイミング・レンジは縮小し始めるか、または消えてしまう。この理想的なレベルからの逸脱は、当分野ではよく知られたしばしば符号間干渉(ISI)と呼ばれる線形歪みによるものであり、エラーの量は当該シンボル・サンプリング瞬間周辺の、以前および場合によっては後続のデータ・シンボルに依存する。
【0044】
フィルタリングによりサンプリング・ポイント周辺で形成される歪みは、一般に相関付けられているPNコードに対して非直交である。この歪みは、相関器の出力時の雑音寄与として現れる。典型的な通信システムでは、この歪みは信号によって発生するものであるため信号強度に比例し、信号レベルの5から10%のRMS値を有する可能性がある。このような場合、たとえ非常に強い信号状態であっても、こうしたISI歪みは信号対雑音比を20から26dBに制限する。これはより高位の配置(constellation)(たとえば16 QAMまたはそれ以上)が使用されていない限り、TDMAなどの単一占有チャネリング方法に対する十分なSNRよりも多い。
【0045】
しかしながらCDMAスペクトル拡散システムでは、すべてのユーザが同じ時間に同じ周波数上に存在する。多くのユーザが存在する場合、各ユーザからの非直交線形歪みが全体の雑音レベルに合計されることになり、単一のユーザによって寄与されるものに比例して悪くなる。すべての波形が同時に存在するため、当該ユーザはそれ自体のISI(一般にそのコードに対して非直交である)だけでなく、他のユーザによって生成されたISI(これも一般にそのコードに対して非直交である)も受ける。一般に拡散コードの直交性は、時間同期化がユーザ間でスリップする際に弱まる(特に、直交拡散コードの場合)。たとえば、すべてが同じ信号レベルを有する100人の同時ユーザが存在し、それぞれが26dBの線形歪みによるSNRを有する場合、各信号が認識する全体の歪みはそれら100の歪み波形の合計、すなわち20dB多く、結果として各信号について6dBのSNRとなる。何らかの信号レベル変動がある場合、弱い方のタグにはやや悪いSNRが見られ、強い方のタグにはやや良いSNRが見られる。
【0046】
前述の考察は、依然として波形の正確なタイミング合わせを前提としている。波形が時間合わせに失敗した場合、それらのISIは一般に数パーセント大きくなり、コンポジット信号に寄与する歪み(雑音)は悪化する可能性がある。タグがそれらの通信を同期させるためにパワーアップまたはしきい値超過情報にのみ依拠していた場合、性能を大幅に低下させるいくつかの状況が生じる可能性がある。タグを不適切に同期させる可能性は2つあり、どちらについても以下の段落でより詳細に実証する。1つのケースでは、タグは、タグ上での結合における差異およびしきい値化回路における許容差など、多数の影響によって異なる時間にそれらの第1の所定の条件についてのパワーアップしきい値を超過している。この影響の結果、タイミング合わせの失敗で2つまたはそれ以上のサイクルの搬送波を生じる可能性があるが、これは比較的狭い電力ウィンドウを維持することによって大幅に緩和することが可能である。シンボル・レートが搬送波周波数よりも大幅に小さいシステムの場合、これによって重大なタイミング・エラーは生じない。しかしながら、シンボル・レートが搬送波の感知できる部分であるか、または大規模な絶対レートであるシステムの場合、タイミング合わせの失敗は重大であるか、または極端なケースでは通信を阻止する可能性もある。これらの影響によって導入されるタイミングの不確実性は、パワーアップあいまいさとみなされる可能性がある。
【0047】
他方のケースでは、タグは物理的に異なるように方向付けされている可能性があり、それらの基準フレームは不確実である。たとえば容量結合システムにおいて、1つのタグが他方のタグに対して上下反転している場合、電力を供給しているE場の極性と、そのタイミングを提供している搬送波のゼロ交差の感知は、位相外れの搬送波サイクルの半分である。ここでも、シンボル・レートが搬送波周波数よりも大幅に小さいシステムの場合、これによって重大なタイミング・エラーは生じない。しかしながら、シンボル・レートが搬送波の感知できる部分であるシステムの場合、これは重大な(しかしより小さな)タイミング・エラーの別の原因である。このタイミング合わせの失敗への寄与は、配向あいまいさと呼ばれる。誘導または電磁などの他の結合方法も、これらと同じ影響を受けやすいことに留意されたい。たとえば、誘導システムでは、誘導器の平面がH場に対して逆である場合、誘導された電圧は
【0048】
【数1】

【0049】
に基づいて反対の符号を伴い、上式でemfは誘導された電圧、Nは誘導器内での回転数、
Φはリンクされた磁束であり、これは時間tに関して差分化される。このケースでは、導電器の平面が反転されている場合、リンクされた磁束は反対の符号を有し、誘導されたemfも同様である。
【0050】
図5では、システムの図、および、異なる結合値を伴い、異なるしきい値許容差を有する同じ読み取り装置に結合された2つのタグに見られる波形を示すことによって、パワーアップあいまいさを実証する。501は読み取り装置であり、アンテナ502に接続される。近距離に結合されたタグ1(503)および遠距離に結合されたタグ2(504)は、505で表されるフィールド線を介して結合される。読み取り装置搬送波形507は送信機フィルタの過渡応答に応じて相対的に即時に生じる。しかしながら、DC側のバイパス・コンデンサがRFサイクルごとに蓄積するために使用可能な誘導電荷の量は制限されているため、タグ1およびタグ2は、より遅く生じるDC波形を有することになる。強く結合されたタグの場合、より多くの電荷がタグ・アンテナ上に誘導されてサイクルごとに
DC側のバイパス・コンデンサに注入されるため、その後はより速く生じる。弱く結合されたタグはそれらのプレート上に誘導される電荷が少なく、本質的に整流器はそれを通じて流れる電流量が小さいことからより大きな動的ソース・インピーダンスを有するため、同じバイパス・コンデンサを充電するためにより長い時間がかかることになる。これらの変動する電荷注入の結果、2つの異なる充電波形510(タグ1用)および515(タグ2用)が生じる。
【0051】
加えて、タグは、結合差異に鑑みて好適に調節することが不可能な構成要素許容差を有する場合がある。これらの許容差は、「電源オン」条件に合致しているかどうかを判別する差異に使用されるしきい値に影響を与える。これらの許容差は、波形520(タグ1の電力投入)および521(タグ2の電力投入)に示されるように、電源オンされたことをタグが認識する瞬間にさらなる不確実性を加えることになる。
【0052】
図6では、読み取り装置の電力による同じE場が通常のタグおよび反転(配向の意味で)されたタグ上でどのように処理されるかを示すことによって、配向あいまいさを実証する。タグ・アンテナ電極601、602がE場603内に浸漬され、回路ノード604と605との間に電圧が誘導される。この電圧は整流器606を横切って印加され、これがエネルギー散逸エレメント607(電力を消費するタグ上のアナログおよびデジタルのすべての回路を表す)、およびバイパスまたはリップル・コンデンサであるエネルギー蓄積エレメント608によってDC側にロードされる。タグ向けのローカル接地は609であり、タグ上のすべての回路に共通の戻り点である。
【0053】
図示された配向の場合、印加されるE場は波形610によって表される。クロック信号はアンテナ接続604または605のいずれかから回復可能である。611は、ノード604と接地609との間の電圧に関する波形である。612は、ノード605と接地609との間の電圧に関する波形である。どちらの場合も、波形は整流器の構造によりローカル接地より下に1ダイオード電圧降下(所与の注入電流レベルの場合)613より多く下がることはない。波形からわかるように、2つの電極電圧の立ち上がりは180°異なる。
【0054】
ここで614のように場内でタグの配向が逆転(または等価として、印加されるE場の極性が逆転)し、同じ波形が測定された場合、その結果はノード604については615に、ノード605については616に示されるようになる。604から抽出されたクロックの立ち上がりは、以前の配向での604のクロック信号と180°位相がずれ、605から抽出されたクロックでも同様である。125kHzの搬送波システムの場合、この180°の位相シフトは4μ秒の差に対応する。この方法では、たとえ等しく結合され垂直に配向された(必ずしも同じ絶対的な意味ではない)アイテムであっても、4μ秒の同期外れが発生する可能性がある。
【0055】
本発明は、前述のあいまいさの問題を防ぐ方法に対処している。これは、タグ・クロックおよび搬送周波数がローカルに(タグ上で)生成されるケースにも適用される。パワーオンあいまいさおよび配向あいまいさの両方を、所定の持続時間、一貫したタイミング(搬送波ゼロ交差に関して)の同期化ギャップを読み取り装置の送信機波形に挿入すること、および2つ(またはそれ以上)の回路実施形態(以下の文で詳細に説明する)のうちの1つをタグ電子部品に配置することによって、解決可能である。この読み取り装置からの信号発信方法は本発明の1実施形態にすぎず、当業者であればタグに同期化イベントを発信する他の方法があることを理解されよう。この特定の実施形態では、オンオフ・キーイング(OOK)またはパルス幅変調(PWM)の形を使用して、タグに同期化イベントを返信する。
【0056】
読み取り装置クロックの事前に定義された位相で開始し、所定の期間持続して、読み取り装置信号の事前に定義された位相で終了する、ギャップを挿入することにより、タグにそれら自体を配向する際に使用する絶対基準を与えることになる。(ギャップの持続時間は、タグがこの時間中には蓄えられた電荷のみで動作するため、長すぎなければ重要ではない。)これは図25に示される。好ましい実施形態では、読み取り装置の波形2500には、立ち上がりゼロ交差2502、2503で開始および停止するギャップ2501がある。このギャップは、タグのバイパス・コンデンサが完全に充電を終えることが可能な所定の時間が経過するまで挿入されない。タグのDC側波形2504は、典型的な電荷遷移を示す。初期の遷移が落ち着いていなかったため、またはギャップ中に何らかの電荷が除去されたため(タグは、この時間中RFがオフになっている状態で、コンデンサに蓄えられた電荷のみで動作しているため)のいずれかにより、バイパス・コンデンサが完全に充電されない場合、ギャップの終わりでタグの立ち上がりにより長い時間がかかることになる。しかし、コンデンサが完全に充電された場合、コンデンサを再充電するための時間は必要でなく、本質的にDC波形は読み取り装置の波形に追従する。ギャップの間も一部の回路(特に同期化回路)は作動しなければならないため、必然的に一部の電荷はこの間にコンデンサから放電されることになるが、この電荷の量は通常のタグ動作に比べて非常に少ない。その結果、この間のわずかなドループが2505に示される。しかしながら、この動作消費電流は最低に保たれるため、ドループの量は少なく、引き続いて生じる遷移2506は異論を挟むものではない。
【0057】
クロックがノード604および605の両方から抽出される場合、クロックのどちらの位相もタグを選び出すために使用可能である。ギャップ後の第1の端が立ち上がり端となることをタグが認識している場合、タグは第1の端を立ち上がり端として与えるクロックを選択することができる。これにより、それらのクロック・ソースに関する受信したかまたは回復した搬送波形に依拠するタグに対して存在するクロック位相のあいまいさがなくなる。別の方法として、604と605との間の差分波形は、第2の高速(たとえばDC側でフィルタリングされない)整流器を使用して全波を整流し、その後周波数2分割回路を介して整流済みの波形を送り、適切な位相でオリジナルの周波数を回復させることが可能である。どちらの方法も、同期イベントの終わりを検出することで、所定の条件を満たしていればタグにデータの伝送を開始させることが可能である。次にこれら両方の実施形態について、詳細に説明する。
【0058】
図26は、全波整流器を使用する実施形態を示す。電極2601および2602はアンテナとして働き、これらのノードを横切る差分信号が高速整流器2607に送られる。全波整流済み波形はロード2608を横切る。バッファ2609は、タイマとして働くランプ波発生器と整流器とを分離させる。ランプ波発生器は、ランプ波コンデンサ2611を高速充電する充電エレメント2610、この実施形態ではpチャネルMOSFETからなる。このコンデンサはエレメント2612を介して放電され、この実施形態では放電時定数を設定するために使用される大規模値抵抗器(large valued resistor)である。このランプ波が抵抗分割器2613によって決定されたしきい値を下回った場合、比較器2614が作動し、出力2615がフリップフロップ2616を起動する。このフリップフロップの出力2619がクリアスルー(clear through)RCネットワーク2617へ再送され、これによって出力2619がワンショット・ショート・パルスとなり、この持続時間は時定数によって決定される。ORゲート2618は、初回パワーアップ時にフリップフロップを初期化するためのリセット・パスを提供する。ワンショット出力が2分割構造のフリップフロップ2620の状態(あいまい)をクリアするため、ギャップが終了して2620が再度トグルを開始した場合、フリップフロップ出力2621は意図された配向に対して適切な基準となるクロックの知られた位相を提供する。ブロック2603および2607は整流器回路であり、図6のブロック606と同様の形態を有する。エレメント2604は、残留アナログおよびデジタル・タグ回路
のインピーダンスを表す等価ロード・エレメント(それらの回路の電力散逸をモデル化するために使用可能)である。エレメント2605は、タグ上の電源バイパス・コンデンサを表す。タグ用のローカル接地は2606であり、タグ上のすべての回路に共通の戻り点である。上記のすべての回路は、本発明の可能な1実施形態のみを形成することに留意されたい。当業者であれば、本発明の精神を逸脱することのない多くの可能な形態の同期化回路が存在することを理解されよう。
【0059】
この回路に関する波形が図27に示される。2701は、ギャップ2702を伴う読み取り装置伝送波形である。ギャップは立ち上がり端ゼロ交差で開始および終了することに留意されたい。2705は高速整流器2607の出力であり、2610で現れる波形でもある。2707はランプ波発生器の出力であり、2708は2613のしきい値である。2710は比較器出力2615であり、2711はワンショット出力2619であって、これは2分割フリップフロップ2620をクリアするために使用される。2712は2620の出力であり、すべての後続のタイミングに使用される最終の適切に位相取りされたクロックである。
【0060】
図28は、前の実施形態よりも1つ多いフリップフロップといくつか多いゲートを使用するが、第2の整流器はない、代替実施形態を示す。図26と同じエレメントには同じラベルが付けられている。各電極からのクロックはバッファリングされ、タイマ・ラインアップ2625、2630、およびラッチ2803、2804を駆動する。これらのいずれかのラッチの立ち上がり端がそのラッチを設定する。ワンショット出力はORゲート2805、2806を介してギャップに先立ってラッチを初期化バーストからクリアする。第1の立ち上がり端が適時に現れた場合(読み取り装置はギャップ後に立ち上がり端を伝送するため、これは真に第1の立ち上がり端でもある)、そのフリップフロップが第1にラッチし、その設定された出力がORゲートを介して他のフリップフロップのクリア入力に印加されるため、不適切な位相の立ち上がり端がそのフリップフロップをラッチすることはない。いずれかのラッチの出力(2808、2809)を使用して、適切なクロック位相2810を残留回路に渡すマルチプレクサ2807を制御することが可能である。
【0061】
図26および/または図28で開示された回路によって提供されるようなシステム・クロック(好ましい実施形態では読み取り装置搬送波)の共通位相をタグが使用できるようになると、すべてのタグが絶対基準端から動作するようになり、同期タイミングを有することになる。一般に、共通システム・クロック位相が決定されると、タグはシステム・クロックからシンボルまたはチップ・クロックを導出して、典型的にはクロックを整数比で分割することによってそれらの伝送のタイミングを合わせることになる。他の同期化実施形態の構想も可能である。たとえば、搬送周波数がシンボル・クロックよりもかなり高い場合、高周波数分割器が極端に大量の電流を消費している可能性がある。こうしたケースでは、自走型(free−running)であるが同期可能な発振器を使用して、ローカルに生成された(すなわちタグ上に常駐する)シンボル・クロックを使用することがより効率的な可能性がある。こうしたケースでは、たとえばギャップの終わりなどの同期イベントの何らかの特徴に基づいて、ローカル・シンボル・クロック(たとえば当分野でよく知られたRC発振器)を所与の開始位相(初期条件)で開始させることが可能である。
【0062】
上記では、読み取り装置信号がタイミングだけでなくタグ用の電源ソースも提供する、受動的に電力が供給されるタグ・システムについて詳細に説明した。他の実施形態または応用例では、電力自給型の(たとえばローカル・バッテリを備えた)タグを必要とする場合がある。こうしたタグは、電力を提供するために読み取り装置搬送波の存在を必要とせず、こうしたケースでは、同期イベントは搬送波パルスの不在ではなく搬送波パルスの存在である可能性がある。2つの搬送波ギャップを搬送波の短いバーストによって分離できることも構想可能であり、搬送波の短いバーストの特徴は同期化イベントとして働く。
【0063】
上記で参照されたような受動的に電力が供給されるシステムに戻ると、記載されたシステム内のタグ110、120、130は複数パス伝送アルゴリズムを使用してそれらのデータを伝送する。複数パス伝送アルゴリズムはタグ110、120、130の合計読み取り時間を決定する際に重要であり、いくつかの異なる面からなる。アルゴリズムで採用される一般的な考えでは、各タグ110、120、130が各アルゴリズム・パスでの通信用に特定の(好ましくは均一にランダムな)チャネルを選択することになる。
【0064】
記載されたシステムの好ましい実施形態では、チャネル選択240は典型的にはタグ110に格納されたデータ220に直接的に基づく。その後、一般にタグ110は、新しいチャネルを選択して工程を繰り返すことになる時点であるアルゴリズムの次のパスまで、好ましい実施形態では選択されたチャネル上でその情報(すなわち識別データ)を伝送する。本発明の好ましい実施形態では、タグの伝送は(第1の所定の伝送条件により)おおよそ同期化されるものと想定される。
【0065】
それぞれのタグによるチャネル選択は、所定の情報(すなわち、典型的な実施形態でのタグ・プログラミング230時に決定された、タグによって集められた実際のデータ、またはタグそれ自体の設計で可能な)に基づくものである。本発明の好ましい実施形態では、各タグ110のチャネル選択は、(以下でより詳細に説明するように)タグ110に格納された識別データ220から直接(アルゴリズム方式で)決定される。他の実施形態では、読み取り装置受信機内で何らかの方法でシーケンスが導出可能な限り、前述の所定の情報がタグ110上に格納されたデータには直接基づかない擬似ランダムに生成された数を含むことが可能であることにも留意されたい。
【0066】
前述のセクションIで全面的に説明したように、また良好なシステム性能にとって重要なように、記載されたシステムの好ましい実施形態では、データ200の少なくとも一部(たとえばEPC、CRCなど)がタグ110上に格納する230前に事前にランダム化(またはスクランブル)211されることを必要とする。タグ110は本質的に、格納されたデータ220またはその一部(たとえば221、222)を使用して複数パス・アルゴリズムの各パス内の通信チャネルを選択する240ので、システム全体の性能が最高であるためにデータ220が均一にランダムであるように見えることがきわめて重要である。これは、前述のセクションIで説明した低複雑性の可逆性スクランブリング・アルゴリズム211を介して実施される。
【0067】
特に、図12に示されるように、好ましい実施形態の複数伝送パスそれぞれでのチャネル選択工程240は、事前にスクランブルされた(すなわちランダム化および格納された)データ220の所定のサブセット(たとえば221、222、223、224)を使用して、各パスで通信チャネルを選択する240ことによって実行される。整流子(commutator)またはマルチプレクシング・デバイス1240などのチャネル・セレクタ1220は、典型的にはチャネルを選択する。タグ220上に格納されたデータの新しいサブセット221、222、223、224(すなわち新しい乱数ドロー(draw))は、典型的にはアルゴリズムの各後続パスでのチャネル選択に使用され、複数パス伝送アルゴリズム全体にわたるランダムかつ独立したチャネルの選択が保証される。
【0068】
タグ110は、各アルゴリズム・パスでそのデータ220のすべて(好ましい実施形態の場合と同様)、またはデータの一部のみを伝送する(すなわち、一般に次のパスでタグによって使用されるチャネルを決定するために十分なデータが伝送される)ことが可能であることに留意されたい。典型的には、アルゴリズムの各パスでチャネル選択に使用されるデータの一部221、222、223、224は一意であり、データ220の連続したセクションであって、好ましくは事前にランダム化されているが、これらの条件は厳密に
必要ではない。複数パス伝送アルゴリズムのパスに対する特定のチャネル選択は、「チャネル選択プロファイル」と呼ばれる。
【0069】
たとえば、各タグ上に格納された事前にスクランブルされた128ビットの識別データ220を備えたシステムでは、一意であるが連続した8ビットのセクションを使用して、16(すなわち128/8)のアルゴリズム・パスそれぞれで256(すなわち2)チャネルのうちの1つを選択することが可能である。したがって、各タグ用のデータの第1のランダム化されたバイト(たとえば221)は、アルゴリズムの第1のパス上でそれぞれ各タグ用の通信チャネルを選択240し、各タグ用のランダム化されたデータの第2の(さらに望ましくは異なる)バイト(たとえば222)を使用してアルゴリズムの第2のパス上で伝送用チャネルを選択240する、という具合である。この複数伝送パス工程は、タグ上に格納されたすべてのデータが使い果たされるまで(たとえば、この例では16番目のパスが完了され、図2ではこれは224に対応する)、または読み取り装置100が伝送を停止するようにタグに信号を発信する(一般に、前述のように704(1210)で第2の所定の条件に合致することによってタグ110で感知される)まで続行する。データが使い果たされると、工程全体はオプションで反復可能であるが、タグは典型的には同じ(決定性)チャネルを選択することになる。必然的に発生することになる衝突をランダム化するために、各タグ用の各アルゴリズムについてランダムかつ一意に決定されたチャネルを選択することが望ましいことに再度留意されたい(以下のセクションVの詳細を参照のこと)。
【0070】
もちろん、当業者であれば、データの他の(たとえば非連続的または完全に一意でない)セクションを使用して、直接または間接的に各パス内の通信チャネルが選択可能であることを理解されよう。この方法では、チャネル選択を反復する前に、ほぼ制限なしにアルゴリズム・パスの最大数を拡張することが可能である。同じデータの異なるサブセット220が(パターンの任意の反復が生じる前に一意のチャネル選択を拡張するために)後でチャネル選択1220に使用されるように、チャネル選択プロファイル(またはチャネル選択アルゴリズム)をいくつかの伝送パス後に修正することが可能である。たとえば、複数パス伝送アルゴリズムの16のパスの後に、タグはアルゴリズムの後続パス用の新しいチャネル選択に達するために、チャネル選択データ(すなわち所定のデータ)をnビット(上記の例ではn=1...8)だけシフトすることが可能である。この方法では、一意のチャネル選択の数を事実上制限なしに拡張することが可能であるが、タグ回路の複雑さは増加する。
【0071】
チャネル選択アルゴリズムの他の実施形態は、タグ上に格納またはプログラミングされた(一般に制限付きの)データからチャネル選択を決定するために、何らかのタイプのマッピング(一般に1対1ルックアップ・テーブル、または他の代数または論理)関数を適用することも可能である。チャネル選択工程の唯一の重要な特徴は、タグ内のデータについての情報の何らかの部分がわかっていれば、チャネル選択が読み取り装置100内で計算可能なことである。
【0072】
チャネル・ソースが制限されている(すなわち複数パス通信アルゴリズムの各パス内で選択するための各ユーザに使用可能なチャネルの数が制限されている)ため、伝送タグ間には必然的に衝突が生じることになる。衝突とは、特定のアルゴリズム・パス中に2つまたはそれ以上のタグを同じチャネル上で送るように選択する場合として定義される。この状況は、通常のシステム・オペレーションの下で予測される。たとえば、25のタグが64のチャネルを介して送られる典型的なケースでは、少なくとも1つの衝突が生じる確率は1パス当たり99.6%である。これは、M個のタグがN個のチャネルを介して送られる場合、衝突が起こらない確率を表す式は以下のとおりである(M<Nの場合)。
【0073】
【数2】

【0074】
衝突型タグ伝送のいくつかの数値例およびそれらの対応策について、以下のセクションV−衝突緩和方法で論じる。
多くのケースでは、システム内に(特定の電力投入レベルで)存在するタグの数は、使用可能チャネルの数を超える可能性さえある(特に、好ましい実施形態アルゴリズムの初期のパス上で、または以下で説明するように使用可能なチャネル数が少なく設定された場合)。この状況は、本発明で直交チャネル化手段が使用される場合には完全に受け入れ可能である。(準直交チャネル化コードを使用する)典型的なDS−CDMAシステムはその時点で過負荷であるとみなされ、信頼可能な通信は(特に、タグの伝送特徴に関する詳細な知識なしでは)実行できない。重要なことには、記載されたシステムにおいては、活動化されたタグ集団は衝突緩和技法によって効果的にさらに削減可能であり、これについては以下のセクションVで完全に説明する。
【0075】
さらに重要なことには、記載されたシステムの好ましい実施形態では、システム全体の性能(たとえば合計読み取り時間、合計システム容量、信頼度など)を向上させるために、複数パス伝送アルゴリズムの1パス当たりの可変チャネル数(一般に221、222、...224で決定される)を使用する。言い換えれば、複数パス伝送アルゴリズムの1パス内で使用可能なチャネル数は、伝送アルゴリズムの他のパス内で使用可能なチャネル数とは異なることが可能である。使用可能なチャネル数は時間とともに動的に変化することから、アルゴリズム・パス当たり(すなわちユニット時間当たり)の可変チャネル数は本考察では動的チャネル・プロファイルとも呼ばれる。動的チャネル・プロファイルの実施は、本質的に1つまたは複数の予測されるタグ集団に関する合計伝送時間(または合計読み取り時間)を最適化する。
【0076】
アルゴリズムの各パスについての伝送時間は、典型的には(使用されるチャネル化方法に関係なく)アルゴリズムのそのパスに使用可能なチャネル数に比例する。複数パス伝送アルゴリズムでの合計伝送時間(TTX)は、以下のように表すことが可能であり、
【0077】
【数3】

【0078】
上式でLはデータを首尾よく伝送するために必要な伝送パスの数、Rは伝送(信号発信またはチャネル・シンボル)レート、Bは1パス当たりの伝送されるデータ・シンボル数、Nはアルゴリズムのi番目のパスで使用可能なチャネル数(または拡散利得)である。記載されたシステムの1実施形態では、Lは16パスに等しいことが可能であり(許容され)、Bは128ビットに固定され、Rは62.5KHzに等しく、上記の実施例では特定のN値が与えられるが、これは本システムの特定の1実施形態であるにすぎないことに留意されたい。情報を伝送するための多くの異なる搬送周波数が可能であるように、多くの他の信号発信レートおよびデータ・フォーマットが可能である。1パス当たりの使用可能なチャネル数(N)は一般に、以下のように(240にも示されるように)、各パスにおいて通信チャネルを選択するために使用されるビット数(n)に依存する。
【0079】
【数4】

【0080】
本システムの好ましい実施形態では、Nは拡散利得および1パス当たりの使用可能なコード位相数を表し、Rは1秒あたりのチップ内での信号発信レートである。所与の伝送パス内で可能なすべてのチャネルを使用する必要はないが、すべてのチャネルをデータ伝送に使用可能にすることが望ましいことに留意されたい。高度な衝突緩和技法(以下のセクションVで説明)の応用例では、タグ110、120、130からの伝送パスの必要数(L)を大幅に削減することが可能である。一般に、記載されたシステムの他の実施形態では、上式のいかなる値にも制約はない。
【0081】
上記で示したように、好ましい実施形態における1パス当たりの伝送時間は1パスあたりのチャネル数(およびシンボル・レート)に依存するため、タグの数が少ない場合、複数パス伝送アルゴリズムの初期のパスにおいてより少ないチャネル数を使用することによって、システムの合計読み取り(すなわち獲得)時間性能を向上させることが可能である(こうしたケースでは、タグの数が少ない場合、システムにチャネルを追加してもほとんど利益は得られないため)。チャネル数は、アルゴリズムのその後のパスで(潜在的には複数の工程で)増加させ、より多くのタグがシステム内に存在する場合、または通信チャネルが乏しく、読み取り装置100が以下のセクションVで参照されるより高度な信号処理(たとえば高度な衝突緩和)技法を採用しない場合に、対処することが可能である。拡散利得の増加は、他の雑音または干渉源に対するシステムの耐性を向上させ、さらにシステムの堅固さも向上させる(様々な通信チャネル条件下で首尾よく動作可能にする)。
【0082】
この方法では、より多くの(初期の)チャネルを選択するシステムはより長い伝送時間であることから、タグの数が少ないシステムは典型的には不利にならないと同時に、タグの数がより多いシステムもそれほど不利にはならない(複数パス・アルゴリズムの初期のパスも、初期に使用されるチャネル数がより少ないことから、典型的にはかなり短い時間しかかからないため)。さらに、後のアルゴリズム・パスでチャネル選択数を増やすことによって、タグの数が多いシステムが、数が制限されたアルゴリズム・パスにおけるすべてのデータを首尾よく獲得することが保証される(したがってシステムの信頼性が向上する)。
【0083】
たとえば、記載されたシステムの好ましい実施形態では、第1および第2のアルゴリズム・パスでは32チャネル、第3および第4のアルゴリズム・パスでは64チャネル、第5から第8のパスでは128チャネル、およびその後の8つのアルゴリズム・パスでは1024チャネルを備える、128ビットのデータ220を使用する。本実施形態では、データ220の一意のサブセットを使用して各パス内の通信チャネル1260を直接選択1220し、結果として、データの一意の重複しない部分が使い果たされる前に再度合計16のアルゴリズム・パスが生じることに再度留意されたい。本システムの他の実施形態では、所定のパス数後に変化する伝送アルゴリズム当たり可変数のチャネルを使用することが可能である。たとえば上記の例で、複数パス伝送アルゴリズムの最初の16のパスは、32〜256の使用可能チャネル(すなわち5から8ビットのチャネル選択データ)のいずれでも使用可能であり、次の16のパスは256〜4096の使用可能チャネル(すなわち8から12ビットのチャネル選択データ)のいずれでも使用可能である。この方法では、動的チャネル・プロファイル(またはアルゴリズム・パス当たりの使用可能チャネル数)はほぼ無制限に拡張可能である。ここでも、データの重複またはインタリーブ部分を使用してチャネル選択アルゴリズムを駆動することによって、最大パス数が拡張可能であ
ることに留意されたい。システムの特定の実施形態において、アルゴリズム・パス当たりの使用可能チャネル数(動的チャネル・プロファイルとも呼ばれる)を実際に選択することは、(システム内に存在するタグの予測数に加えて)読み取り装置100内で使用される信号処理アルゴリズムの予測されるまたは最も重要なタイプ(衝突緩和アルゴリズムのタイプなど)に依存することが可能である。
【0084】
具体的には、記載されたシステムの好ましい実施形態では、複数パス伝送アルゴリズムの各パス内でランダムチャネル選択を使用して特定の拡散コード(または1220でのコード・チャネル)を選択する。より具体的には、好ましい実施形態で、タグ110上に格納/プログラミングされたデータ220の部分を使用して、長さNの特別に増補されたmシーケンス(前述のように、Nは特定のアルゴリズム・パス内のチャネル数に等しい)の時間オフセット(または1220の場合はコード位相)を直接指定する。拡散コードは、一般性を何ら失うことなく複雑に値付けすることができることにも留意されたい。この工程は図11で概略的に示される。PNシーケンスの異なる位相は、一般に、2つまたはそれ以上のmシーケンスのモジュロ2合計を効果的に実行して、同じmシーケンスの第3のコード位相を生成する、PN発生器(LFSR)状態のマスキング機能(またはAND−XOR低減ネットワーク1100)を適用することによって取得される。したがって好ましい実施形態では、タグ110、120、130すべての伝送が既知の基本初期発生器状態と同期されるように、タグ110、120、130のすべてが、同じ初期発生器状態で始まる各アルゴリズム位相の同じ基本LFSR(mシーケンス)発生器を使用する。これらの態様は、下記のセクションIVに記載されるように、読み取り装置100内の即時および効果的な復調にとって重要である。前述のように、基本的なLFSRシーケンス発生器長(すなわち原始多項式)は、典型的にはアルゴリズム・パス当たりで動的に変化する(チャネル数が変化)ことに留意されたい。
【0085】
好ましい実施形態では、第1のチップ(またはPNビット)時間に対してゼロ出力を強制することによって、従来のmシーケンス発生器が典型的には特別に増補されたPNシーケンス発生器となり、異なるタグからのシーケンスの相互相関が所与のシーケンス期間にわたってゼロになることが保証される。他の実施形態では、LFSR PN発生器の代わりに他のタイプの直交関数発生器が使用可能である(たとえばウォルシュ(Walsh)またはアダマール(Hadamard)関数)が、こうしたコードは望ましい干渉阻止機能を有さないことになる。次に、タグ110上に格納されたデータ220が、従来の手段1230(たとえば、当業者には周知であるように、デジタル実施におけるXORゲート、またはアナログ実施における乗算器)によって生成された拡散コードによって拡散される1260。その後、活動化されたタグの拡散データ信号が(全体として)所与の通信チャネルを介して送信される。
【0086】
タグは、あるレンジの変調タイプを使用してそれらのデータを伝送することが可能であることに留意されたい(たとえば、振幅変調、位相変調、周波数変調、またはそれらの何らかの組合せ)。本システムの好ましい実施形態では、伝送エレメント702を介してロード変調からある形の振幅偏移変調(「ASK」)を使用するが、他の変調タイプおよび実施(たとえば、差分4位相偏移変調、4相振幅変調、パルス符号変調、パルス振幅変調、パルス位置変調、など)も確実に可能である。タグ情報を伝送するための、数十キロヘルツから数ギガヘルツまでの多くの異なる搬送周波数の使用が可能である(たとえば、125KHz、13MHz、900MHz、2.4GHz)。記載されたシステムでは、様々なデータ符号化およびマッピング技法の実施形態も可能である。符号化技法の例には、ゼロ復帰(RZ)、非ゼロ復帰(NRZ)、マンチェスタ(Manchester)、および差分符号化が含まれるがこれらに限定されるものではなく、これらはすべて当分野で周知である。当業者であれば周知のように、本発明では、一般性を失うことなく多くのタイプの異なる符号化、変調、符号化、および信号発信が使用可能であることに留意された
い。符号化技法のいくつかの例には、CRCコード、重畳コード、ブロック・コード、などが含まれ、これらもすべて当業者には周知である。
【0087】
好ましい実施形態におけるタグ110、120、130は、伝送エレメント702を介して読み取り装置100によって供給される搬送波を直接変調するため、(記載されたシステムの範囲内ではローカルに生成された搬送波の使用が可能であり、いかなる方法でもその応用例を制限しないが)ローカル発振器は備えていない。記載されたシステムの好ましい実施形態では、読み取り装置100がタグ110上の回路にリモートに電力を供給するように、電力変換器703が読み取り装置100からの搬送波信号を整流する。アクティブに電力を供給されるタグを使用することも可能であり、いかなる方法でも本発明の使用を制限しないことに留意されたい。システムの全体的な目標は、タグ110の複雑さを最小限に抑えることであり、好ましい実施形態に記載された技法を使用することによって、タグ110上の回路を最小限に維持することが可能である。
【0088】
IV.高速復調方法
読み取り装置は多くの重要な信号処理工程を実行する責務を負う。図13に示されるように、読み取り装置100は典型的には、伝送レベル制御1320および増幅器1330を使用して信号ソース1310の出力を初期化すること、ならびに何らかの最低レベルで電力を伝送することによって、タグ110、120、130の読み取り工程を開始する。好ましい実施形態では、その後読み取り装置100はそのレベルで連続波の伝送を開始する。読み取り装置100は特定の電力レベルで伝送している場合、典型的にはタグ110、120、130から何らかの戻り信号を(結合デバイス1340およびアンテナ1345を介して)聴取する。この活動検出は、それぞれの可能な通信チャネル内の信号レベルまたは信号揺れの検出(以下でさらに説明する)などの、変調またはエネルギー検出測定の形を取ることが可能である。この測定および特徴付け期間をできる限り短くすることが望ましいため、特定の電力レベルで活動化されたタグがない場合、読み取り装置100は迅速に次の電力レベルに(通常は増加していく形で)進むことが可能である。特定の伝送電力レベルの信号が感知された場合、読み取り装置100は(場合によっては、以下のセクションVで考察するような衝突緩和技法を使用して)全復調処理1390を開始することが可能である。システムの他の実施形態では、読み取り装置100は、一般性を失うことなく変調済み搬送波信号、同期パルス、または非対称搬送波形を送信することも可能である。
【0089】
読み取り装置100によって実行される信号処理は、ハードウェアまたはソフトウェア・アーキテクチャ、あるいはそれらの何らかの組合せのいずれかで実行可能である。典型的な実施形態は、何らかの選択性1365、増幅1370、アナログ−デジタル変換1375、ならびにDC獲得および利得制御機能1380を含む。
【0090】
一般に読み取り装置100は、ある実施形態において、その搬送波信号の能動的または受動的抑制、および干渉または雑音消去(システム内の所望のタグ以外のソースからの任意の形の干渉に対して)も実行することが可能である。
【0091】
前述のように、本発明の好ましい実施形態は、タグ110、120、130内でスペクトル拡散変調を使用する。したがって受信されたデータは、当分野で周知のように、可能な各拡散コードを第1に逆印加すること(または各複合拡散コードの複合共役(complex conjugate))によって、各コード・チャネルについて読み取り装置100内で逆拡散(despread)されなければならない。
【0092】
より具体的に言えば、記載されたシステムの好ましい実施形態は、タグ110内のシーケンスを拡散する際に特別に増補されたmシーケンスを使用するため、読み取り装置復調
処理1390において非常に高速および効率的な復調(すなわち逆拡散およびチャネル化)技法を使用することが可能である。これらの技法は、読み取り装置復調処理1390に必要な処理電力を大幅に(たとえば好ましい実施形態では約57分の1に)減少させ、その結果、読み取り装置100の読み取り時間は速く、実施コストは低くなる。実際の処理による節約は、複数パス・システムの各パスで使用されるチャネル数に依存し、従来の逆拡散オペレーションの数と、シンボルあたりの改善された逆拡散オペレーションの数との比率に等しい、係数(F)で以下のように表すことが可能であり(受信したシーケンスの再順序付けおよび高速アダマール変換(FHT)の組合せを使用する)、
【0093】
【数5】

【0094】
上式で、Lはソース・データを首尾よく復調するために必要なパスの数に等しく、Nは(ここでも)i番目のパス内のチャネル数に等しい。この係数は、読み取り装置復調処理1390における処理の節約(典型的には毎秒100万演算(MOPS)または毎秒100万命令(MIPS)で表される)を直接表す。したがってこの実施例では、最高の(以下で説明するように衝突緩和がない)場合、好ましい実施形態の読み取り装置100内で57分の1の機能(たとえば10 MOPS対570 MOPS)の処理装置1390を使用することが可能である。
【0095】
特別に増補されたmシーケンス(図11のボックス1120に示される)が、直交ウォルシュ・コード(図14のボックス1420に示される)とのある程度の類似性を有する従来のPNシーケンスの直交拡張であり、すなわち、2セットのシーケンスがシーケンス内に同じ数の2進の1および0を有する(すなわちそれらが同じ重みである)ことを想起されたい。実際に、単一の特別な再順序付け機能を使用して、2つのタイプのシーケンス(すなわち、長さNの特別に増補されたmシーケンスおよびウォルシュ・シーケンス)が関係付けられる。特別な再順序付け機能は、図15の読み取り装置受信機ブロック1520内で、(タグ・シーケンス発生器1110内に示されるような)基底mシーケンスを生成するために使用される原始多項式から直接導出される。シーケンスの再順序付け機能1510を使用して、以下で全面的に説明するように、データ・サンプル(またはエレメント)を受信側デバイス1375が受信する際に、直接再順序付けする。受信側デバイス1375は、アナログ−デジタル変換器、アナログ・サンプルおよび保持デバイス、レジスタ、または信号を受信する任意の他のデバイスとすることが可能である。単一シーケンス再順序付け1510機能は、複数のコード・チャネル(または110の場合はコード位相)を使用するいくつかの異なるタグ110、120、130からの伝送からなる複合受信信号に適用される。
【0096】
複合受信信号(いくつかのmシーケンス・コード位相からなる)がメモリ・バッファ1530などの記憶媒体内で再順序付けされた場合、1セットの有効なウォルシュ・シーケンスからのシーケンスに類似しており、高速アダマール変換(FHT)などの高速変換技法を使用して、(1540に示されるように)すべてのデータ・チャネルに対してタグ110からのデータを高速に(および同時に)逆拡散することが可能である。FHTを使用して、当業者には周知のように、ウォルシュ・コードの完全なセットに対して(並行して)データ・シーケンスを高速に相関させる。FHTに関係付けられた任意の変換(たとえば高速ウォルシュ変換、ウォルシュ−アダマール変換、帰納的ウォルシュ変換など)を、記載されたシステムの趣旨を逸脱することなく、記載された高速相関方法で使用すること
が可能である。また、記載されたすべての処理技法は、アナログまたはデジタルのいずれかの信号処理領域内で実行することも可能である。
【0097】
従来の(たとえばボックス1410に示されるような)FHTアルゴリズムはよく知られており、それらの基本カーネル演算(ボックス1400で「バタフライ」と表される)が図14に示されていることに留意されたい。基数2のFHTバタフライは、データ・エレメントと+1および−1値のみとの乗算(言い換えると、データ値の加算および減算を合わせる)からなるが、基数2のFFTバタフライと同様である。8×8 FHTの格子構造1410も示される。FHT 1550の各出力はFHTビンまたはFHTコード・チャネルと呼ばれる。NポイントFHTは、完了時に、すべての可能な長さNの直交ウォルシュ・シーケンスに対して効果的に相関される。好ましいシステムでは、これは長さNのシーケンスの場合のすべての可能なコード位相に対する相関と等価である。FHTは高速変換であるため、従来の相関を介した処理の節約(上記に表された係数Fと同様)は、Nポイントの直交シーケンスの場合の(N/N log N)に等しい。この同じ節約は、前述の高速相関技法を使用することで実現される。
【0098】
完全受信データの特別な再順序付け機能1520は、通常のオペレーション(以下の実施例も参照)中にタグ・フィボナッチ(Fibonacci)LFSR(1110に示されるような、またはその等価物)が循環する状態を監視することによって決定される。LFSRが進行する状態は特別な再順序付け機能に直接対応するか、または着信(拡散)受信データがサンプリングする間接アドレスを、適時に(線形的に)受信された際に受信データのメモリ・バッファ(1530または他の記憶媒体)に格納しなければならない。このアドレスのシーケンス(1520)は、別の方法として、受信機内でアクティブに生成する代わりに記憶媒体(たとえば、ランダム・アクセス・メモリ、リード・オンリー・メモリ、ハード・ディスク・ドライブなど)に格納することが可能である。これらのシーケンスは、システムで使用される基底拡散コード(すなわち原始多項式)につき1回だけ生成する必要があることに留意されたい。この方法では、受信されたmシーケンスのエレメント(またはmシーケンスの合計)は、ウォルシュ・シーケンス内のエレメント(より具体的に言えば、アダマール行列内の行)を正確に表すように再順序付けされる。したがって、ここで従来の高速(アダマール)変換(相関)方法を(1540で)使用して、受信データ・チャネルを並行して効果的に逆拡散することが可能である。データ・シーケンスは、任意の処理待ち時間に対処するためにメモリ内に2重にバッファリングすることも可能である。
【0099】
信号エネルギーを示すFHTの出力索引(またはビン)1550は、タグ110、120、130のAND−XOR低減1100で使用されたマスク値1130(2進で表される場合)に直接対応する。たとえば、チャネル選択コード1130(図11に示される「c0〜c4」)(送信機処理)は、図15のFHTブロック1540のアクティブ出力1550(受信機処理)に直接対応する。2進マスク値1130は、特定のコード・チャネル(またはコード位相)を選択するためにタグ110内で適用されることを想起されたい。これは図7にも示されており、ここでマスク710は、チャネル選択240に入力するためにタグ・データ240から引き出される。すなわち、2進マスク値1130(およびFHTビン索引)は、特定のパス中にチャネルを選択するために使用されたタグ110上に格納されたデータ221、222、223、224に直接対応する(タグ・データをチャネル選択に関係付ける方法の補足実証については、図17および図18の識別子1710、1820、1830、および1840も参照)。各タグ110は、そのデータ220を、好ましい実施形態では複数パス・アルゴリズムの各パスの持続期間に固定チャネル1260を介して送信することになる。各FHTビンでの出力信号レベルは、逆拡散後の各コード・チャネル1260上の信号レベル(たとえば各コード位相について)に直接対応する。したがって複合受信信号は、FHTの出力時にその構成要素に効果的にチャネル化
されている。
【0100】
以下でより詳細に説明するように、受信データ・シーケンスのチャネル選択部分でのアクティブな各FHTビンの出力時のデータ信号1550は、2進FHT索引値と突き合わせることによって検証可能である(2つのシーケンスは有効データが一致するはずであるため)。この技法によって粗野な形の追加エラー検出が可能となり、複数パス伝送アルゴリズムのパス#2について図18に示されている。第2のパス用のチャネル240を選択するために使用される部分222にわたるデータ・シーケンス1820、1830、1840は、FHTビン数の2進等価であることに留意されたい。
【0101】
好ましい実施形態では、図15に示されている組合せの再順序付けおよびFHT技法を介して、復調器がすべての可能なコード・チャネル(すなわちコード位相)を高速復調(すなわち逆拡散)することが可能である。NポイントFHTは通常、受信機内の各受信シンボル期間についてNチャネルを復調する必要がある(各潜在データ・チャネルおよびシンボルに対して必要なチャネル化解除(dechannelizing)および逆拡散オペレーションに対応する)ことに留意されたい。さらに、応答器システムの他の実施形態がチャネル化機能に直交ウォルシュ・コードを使用可能であり、このケースでは、FHTビンがウォルシュ・コード・チャネル索引に直接対応すること(および再順序付け工程は不要であること)にも留意されたい。ウォルシュ・チャネル化コードは定期的であり、定期的な干渉源と高度に相関される可能性があるため、こうしたシステムは、好ましい実施形態と比較するとそれほど良い干渉阻止機能を備えていない。したがって、システムの好ましい実施形態は、特別に増補されたmシーケンスをチャネル化機能および前述の復調技法として使用する。記載されたシステムでは、記載された高速相関技法を必ずしも厳密に使用する必要がない(すなわち、強引な(brute force)または従来の相関/逆拡散技法が使用可能である)が、こうした実施では実施コスト(たとえば回路部分または電流ドレイン)が高くなることにも留意されたい。
【0102】
1例として、タグ送信機内で長さ16(N=16、n=4)の特別に増補されたPNシーケンスを使用するシステムの場合、2進で「0001」(1)のチャネル選択値1130(n)で表されるシーケンス1260は、「0111101011001000」となり、2進で「1001」(9)のチャネル選択(マスク)1130値で表されるシーケンス1260は、「0010110010001111」となる(これは、後に先行ゼロで特別に増補される同じ基本mシーケンスの単なる異なる時間シフトまたはコード位相である)。23の原始多項式についてのタグPN生成およびマスク回路の1例(標準の8進表記法で表された場合)が、図11に示される。2つのタグ送信機は、通信チャネルを介してこれらのシーケンスを独立して送信すると想定される。読み取り装置受信機は、特別な再順序付け機能1520およびFHT処理を使用して(図15に示されるように)これらの2つの信号を解決する。伝送済みPNシーケンスに使用しなければならない特別な受信データ・サンプル再順序付けは、等価の特別に増補されたPN発生器が循環することになる状態と同じ、またはこの実施例では{0,15,7,11,5,10,13,6,3,9,4,2,1,8,12,14,1120に示された物と同じ}である。このシーケンスは、タグ110で使用されるmシーケンス発生器1110を複製すること、およびPN発生器の状態を監視すること、または単に必要な再順序付けシーケンスをメモリに格納することによって、読み取り装置100内で生成することが可能である。再順序付けシーケンスは、間接アドレス指定を使用して着信する受信データ・サンプル・ストリームをメモリに格納するために使用される。たとえば、読み取り装置に着信した(拡散またはチップ・レートで最適にサンプリングされた)第1の有効A/Dサンプルは、(すべての特別に増補されたコードの場合と同様)記憶媒体1530のメモリ・バッファ位置0に格納され、第2のサンプルはメモリ位置15に格納され、第3は位置7に、という具合である。N(この実施例では16)のサンプルが受信されると、メモリ・バッファ1530内で新
しく再順序付けされたデータ・サンプル上で通常のFHT処理1540を実行することが可能である。再順序付け機能は、上記の「0001」PNコードをシーケンス「0101010101010101」(ウォルシュ・コード1と同一)に変換し、「1001」PNコードをシーケンス「0101010110101010」(ウォルシュ・コード9と同一)に変換する。FHT 1540は、信号エネルギーが出力1550のビン1(チャネル・コード1に対応)内およびビン9(チャネル・コード9に対応)内に存在すること(たとえばタグが伝送されている)を示す。したがって、各伝送済みシンボルについてビン1およびビン9のFHT出力を監視することによって、残りのタグ・データを感知することが可能である。
【0103】
受信機内でタグ110によって送信される第1のチップ(またはシンボル)が2進のゼロ(チャネル上の+1正規化信号値と等価)であると仮定することによって、たとえこうした信号が実際には送信されていない場合であっても、上記に記載された技法は従来の(すなわち特別に増補されていない)mシーケンスに使用可能であることに留意されたい。したがって、記憶媒体1530内の第1のバッファ位置は+1値に初期設定され、処理(すなわち再順序付け1510およびFHT 1540)は通常通り続行される。この方法では、従来のPNシーケンスの複数コード・チャネル(またはコード位相)に対して、かなり高速の相関を実行することが可能である。他の通常通りに増補されたPNシーケンスには、追加チップ(たとえば前述の第1チップ以外)がシーケンスのどこに挿入されるかを追跡することによって対処することも可能である。
【0104】
前述の高速相関技法(すなわち特定の受信シーケンス再順序付け1510およびFHT
1540)は、AND−XOR低減ネットワーク1100で生成可能なPNシーケンス(こうしたネットワークで生成されるか否かにかかわらず)を使用する任意の通信システムに適用する。多くの一般的な通信システムは、これらのタイプのPNシーケンスまたは従来のmシーケンス(当分野で周知のゴールド・コードなど)の組合せから生成されたシーケンスを使用する。こうしたシステムの例が、IS−95、IS−2000、3GPP
CDMAセルラー・システム、およびGPS CDMA位置特定システムである。上記の高速相関技法は、これらのシステムでも同様に効果的であることが可能である。
【0105】
いずれのケースでも(チャネル化技法が使用されるかどうかにかかわらず)、図16に示されるように、複合受信信号は受信器のフロント・エンドでフィルタリングおよび増幅1610され、その後読み取り装置100内でチャネル化(またはチャネル化解除)1620されなければならない。その後、信号および衝突検出の目的で、一般に各チャネルは(通常は1630で)別々に(並行する場合もある)処理される。たとえば、記載されたmシーケンスの代わりにウォルシュ・コードを使用するシステムの他の実施形態では、依然としてFHTオペレーションを使用して、前述のように異なるデータ・チャネルをすべて同時に復調することが可能である。システムの他の実施形態は、(並列または時分割の)従来の逆拡散器のバンクを(1540、1620の代わりに)使用して、チャネル化解除および逆拡散工程を実行することが可能である。当分野では周知のように、逆拡散器は典型的には乗算器とそれに続く積分およびダンプ機能からなる。
【0106】
通信システムの他の実施例では、他の実施形態が(スロット・アロハ方式などで)直交タイムスロットをチャネルとして使用することが可能であり、この場合、異なるタグからの信号が着信時に(時間的に異なる時点で)復調される。選択されたチャネル化方法は、以下でさらに説明するように、読み取り装置100で使用可能な汎用タイプの衝突緩和アルゴリズムを変更しないことに留意されたい。
【0107】
本発明の多くの実施形態では、典型的にはすべてのタグがそれらの情報を複数パス伝送アルゴリズムの第1のパス上で首尾よく伝送する見込がないため、復調工程は一般に複数
の反復工程であることにも留意されたい。したがって読み取り装置100は、(同じ電力レベルで)パワーアップされた状態のままであり、(以下で説明する方法をさらに使用して)タグからのすべてのデータが首尾よく受信されるまで着信データを継続して復調しなければならない。また、(以下で詳細に説明するように)読み取り装置100内で高度な衝突緩和技法1630が使用される場合、複数パス・アルゴリズムの各パスに対して複数の復調反復(たとえばFHT)が必要となる可能性がある。複数パス伝送アルゴリズムの後続のパスは、上記の動的チャネル・プロファイルの考察で説明したように、復調器を新しい数のチャネルに適合させる必要がある可能性のあることにも留意されたい。
【0108】
V.衝突緩和方法
前述のように、タグ110、120、130を使用して読み取り装置100と通信可能な本(および任意の)通信システム内にある通信チャネル・リソースの数は限定されている。通信チャネルの数が限定されており、チャネルは複数のタグ間で組織的に割り当てられていない(すなわち、ランダム割り当てが効果的に使用されている)ため、記載されたシステム内のタグからの伝送は必然的に衝突することになる。衝突とは、2つまたはそれ以上のタグを同じチャネル上で同時に(すなわち、複数パス伝送アルゴリズムの特定のパス中に)送るように選択する場合またはイベントとして定義される。本明細書のセクションIに示されるように、タグ上に格納されたデータは均一にランダムなデータを綿密に近似するため、割り当ては効果的にランダムであることを想起されたい。
【0109】
記載されたシステムの読み取り装置100では、読み取り装置100の所望の複雑さに応じて、(以下でさらに詳細に説明するように)衝突緩和技法を使用することもしないことの可能である。たとえば、低コストの受信機はいずれの衝突緩和技法も使用せず、高コスト(高処理電力バージョン)の受信機は高度な衝突緩和技法を使用することが可能である。
【0110】
以下の一般的な考察では、第1に特定の衝突緩和技法を使用しないことを想定し、後に衝突緩和技法が使用されるケースを検討する。一般にタグ110、120、130は、衝突緩和が読み取り装置100内で使用されるかどうかに関わらず、同じパターンを伝送することに留意されたい。各タグ(たとえば110)は、システム内に存在する他のタグ(たとえば120、130)に事実上「気付かない」。以下の追加の工程を実行することで、受信機内の復調工程がさらに実行される。
【0111】
一般に、読み取り装置100は、所与の通信パスにおける可能なそれぞれの逆拡散通信チャネルを(順次または同時のいずれかで)循環し、それぞれでの信号動作または信号エネルギーを探す。記載された発明における読み取り装置受信機は、以下で全面的に説明するように、使用可能チャネルのそれぞれで衝突を検出することも可能なはずである。これら信号特徴のすべてはチャネルごとに発生し、(一般性を失うことなく、逆拡散の前に等価のオペレーションを実行することも可能であるが)実施の複雑さを削減するために、一般にいったん逆拡散が完了すると実行される。本システムの好ましい実施形態では、他の方法(オーバーサンプリングおよびサンプリング後の最適なサンプリング・タイミングの決定を含む)が可能であるが、受信する信号は(最適なサンプリング・ポイントで)同期的にサンプリングされることに留意されたい。
【0112】
受信機の好ましい実施形態では、各チャネル上の信号エネルギーを推定する複雑さ削減方法を使用する。具体的には、この方法は、記載された発明において各チャネルの最適にサンプリングされた逆拡散器出力信号の累積(合計)絶対値を検査する。所与のチャネルの累積絶対値が所定のしきい値を超える場合、信号はその特定のチャネル上に存在すると言える。所定のしきい値は、(読み取り装置受信機内の他の条件に基づいて)プログラム可能または適応的にすることが可能である。この方法は、信号の有無を決定するために費
用のかかる乗算を必要としないという点で、従来のエネルギー推定(平方和)手段に勝る利点を有する。
【0113】
具体的に言えば、本システムの特定の1実施形態では、タグからの低偏差ASK信号は、通常、正規化された信号を取得するためにチャネルから任意の平均信号レベル(すなわち1380内にあるようなdc値)を減算すること、および、前述のように、残りの(正規化された)信号の絶対値を検査することによって検出される。信号レベルをさらに正規化するために、自動利得制御(これも1380内)の形を適用することも可能である。
【0114】
特定チャネル上で信号が検出されると、通常、読み取り装置100はそのチャネル上で衝突が発生したかどうかを検出しなければならない。これは通常、何らかの期間にわたって正規化された信号レベルの絶対値の変動(variance)を検査することによって達成可能である。信号の絶対値の変動が何らかの(異なる)しきい値を超えた場合、その特定チャネル上で衝突が発生したと言える(異なるタグのIDデータの競合する2進データ値による−図17を参照)が、そうでない場合、そのチャネル上には単一の信号が存在すると言える(図18の場合)。単一の信号が存在するチャネルは「単一占有」チャネルとも呼ばれる。ここでも、当業者であれば、これらの測定値およびインジケータのフィルタリングまたは平均化を使用して、(たとえば推定値のSNRを向上させるために)信頼度を上げることが可能であることを理解されよう。したがって、こうした推定値を監視する(および後続のフィルタリングに使用する)期間が長いほど、推定値の正確さおよび信頼度が上がる(すなわち処理利得が上がる)ことになる。
【0115】
前述のように、読み取り装置受信機は各チャネル上の正規化された信号の変動を検査することによって、各チャネル上の衝突を感知することが可能である。正規化された信号の変動はエラー信号とみなすことが可能であり、理想的な信号からの偏差を表す。ここでも、好ましい実施形態では、信号の衝突を決定するための複雑さ削減手段が実行される。具体的には、正規化された(場合によってはdc訂正された)エラー信号の絶対値が各チャネルについて累積される。累積絶対エラー信号が第2の所定の(場合によっては適応的に決定された)しきい値を超える場合、そのチャネル上で衝突が発生したと言える。正規化されたエラー信号は、前述の複雑さ削減信号の存在計算の結果から部分的に決定することができる。具体的に言えば、正規化されたエラー信号は、最適にサンプリングされた逆拡散器の出力の絶対値から、絶対平均信号レベル(上記の累積絶対値計算のスケーリングによって決定される)を引いた値に等しく設定可能である。この値をすべての逆拡散器出力ビット全体にわたって合計し、(推定のSNRを向上させるために)追加の雑音平均化を提供することが可能である。この方法は、信号衝突の有無を決定するために費用のかかる乗算を必要としないという点で、従来の変動推定(サンプルの平方和マイナス平均値)手段に勝る利点も有する。
【0116】
当業者であれば、信号の有無を検出するため、および衝突の有無を検出するために使用可能な多くの方法があり、これは変調および信号発信タイプに基づいて変化する可能性があることを理解されよう。衝突は標準エラー検出(CRC)手段などの代替手段によって検出することが可能であるが、これらの方法がすべてのケースで(誤り(falsing)により)衝突を適切に検出できるとは限らない。チャネル上での衝突の発生があろうとなかろうと、標準エラー訂正手段を使用して伝送エラーを訂正し、信号推定の正確さを向上させることが可能であることにも留意されたい。ここでも、これらの信号特徴測定値は典型的には所与のパス内のすべての使用可能な(可能な)通信チャネル上で実行される(前述のように、複数パス・アルゴリズムのパスの数によって変化する可能性がある)。
【0117】
したがって読み取り装置100は、通常、任意の信号が1パス当たりのすべての可能な通信チャネル上に存在するか否か、および信号が存在する各チャネル上で衝突が発生した
か否か、を特徴付ける。衝突とは一般に、2つまたはそれ以上のタグが複数パス・アルゴリズムの同じパス中に同じ通信チャネルを使用する場合として定義されることを想起されたい。所与のチャネル上で衝突が発生した場合、衝突緩和技法が使用されなければそのチャネル向けのデータは一般に失われる。所与のチャネル上に信号が存在し、衝突が検出されない場合、通常、その(所与の)チャネル上の特定の信号は首尾よく受信されたことになり、一般に読み取り装置100はその特定のタグのデータ・シーケンス全体を認識している。
【0118】
いくつかの実施形態は、エラー検出または訂正(または何らかの他のタイプの信号整合性測定)を実行し、データが有効であることおよび正しく受信されたことを保証可能であることに留意されたい。また、タグ・チャネル選択データが伝送された場合、読み取り装置100はタグ110が予測された通信チャネル上で(前述のようなチャネルの決定に使用されるデータの一部に関する他の形のエラー・チェックとして働き、図18も参照すると、第2のパス用のチャネル選択データ222が1820、1830、1840で識別されるようなチャネル選択と合致しなければならない)実際に通信されたことをチェック可能であることにも留意されたい。
【0119】
タグ110からの信号が認識される(および場合によっては確認される)と、これは無視するか、または(以下で説明するように)残りの信号集団から除去することが可能である。特定のタグからの信号が効果的に除去されるかまたは(以下で説明する様々な可能なアルゴリズムを介して)信号集団から減じられる場合に、ある形の衝突緩和が実施される。この方法では、知られた(識別された)タグからの信号を除去することが可能であるため、望まない「干渉」をシステムから除去することになる。これにより貴重な通信リソースを効果的に解放する。実際のところ、システム全体は自己編成型ネットワークであり、組織のすべてが送信機自体ではなく読み取り装置受信機内で実行される。信号の除去が、衝突緩和からの恩恵に必ずしも厳密に気付かなければならないわけではないことに留意されたい。
【0120】
図19は、衝突緩和技法を使用する場合の読み取り装置動作に関する一般的な流れ図である。この場合、読み取り装置100は複数パス伝送アルゴリズムの次のパスに移る前に(たとえば好ましい実施形態において読み取り装置伝送電力を一定に保持することによって)できる限り多くの衝突(たとえばデータにおけるエラー)を解決しようと試みる。
【0121】
前述のように、読み取り装置100は一般に、すべてのアクティブに伝送しているタグが識別される何らかの信頼レベル(または確率)が得られるまで所与の電力レベルで伝送を維持する。
【0122】
信号が信号集団(または複合受信信号)からアクティブに除去(または減算)されない場合、衝突緩和は発生しなかったと言える。その場合、読み取り装置100内で様々なアルゴリズムを使用して、タグからのデータのすべてを首尾よく獲得(または復調)することが可能である。この場合の一般的な考えは、各タグが、複数パス・ソース・デバイス伝送アルゴリズムのパスのうちの少なくとも1つで一意の(すなわち、1人のユーザが占有する)通信チャネルを選択するまで待機することである。この技法は一般に、読み取り装置100内で使用可能な、一般に最も遅いが(すなわち、1つの情報を送信するために最も長い合計伝送時間を必要とする)最も複雑さの低い識別方法である。
【0123】
読み取り装置100によって衝突緩和技法が使用されない場合のための1つの非常に複雑さの低いアルゴリズムは、単にタグ110、120、130に複数パス通信アルゴリズム内で最大数のパスを伝送させることである。典型的には、タグ上に格納されたデータの一意の部分が使い果たされた場合に、(前述のように)最大数のパスが決定される。
【0124】
前述のように、読み取り装置100は第1および第2の所定の伝送条件を制御することによって、タグが伝送するパスの数を直接制御する。本発明の好ましい実施形態では、他の第1および第2の所定の伝送条件はタグからの伝送グループを制御することが可能であるが、完全に活動化されたタグ間での伝送を続行するために、読み取り装置伝送電力レベルが一定に保持される。最大数のパスは一般に特定チャネル選択アルゴリズムによって決定されるが、完全に一意の(重複しない)チャネル選択の選択肢については、データのチャネル選択部分の合計(ビット単位)で割ったデータ長さ(ビット単位)に部分的に制限される。したがって128ビットのデータ、および各パス内に8ビットのチャネルID選択データを備えた上記で与えられた例では、(重複しないチャネル選択肢が再度反復を開始する前に)複数パス・アルゴリズム内には最大16(すなわち128/8)の通信パスがある。したがって、好ましい実施形態においてチャネル(たとえばPN)シンボル・レートが与えられた場合、最大問い合わせ時間を決定することが可能であり、(前述の数式でも示されるように)必要な伝送パス数が与えられた場合、すべてのケースについて合計獲得(または読み取り)時間が固定される。
【0125】
衝突緩和技法を使用しない他の(多くの場合、より複雑な)アルゴリズムも可能である。こうした代替形態の1つが、受信データ(または作成されたタグの在庫リスト)が正しい旨の所与の信頼レベルが得られるように、(最大より少ない)限定数のパスについてタグ110、120、130に伝送させるものである。これは一般に、システム内に(または各電力投入レベルで)存在するソース・デバイス(またはタグ)の予測数および所望の信頼レベル(またはシステム内のアイテムまたはタグを首尾よく識別する確率)によって決定される。たとえば、前述の例で与えられた動的チャネル・プロファイルの場合、シミュレーション(1000試行にわたる)により、1000試行でタグを一意に識別するためには最大10のパスが必要であったが、50のタグを識別するためには平均7.73伝送パスかかることが示された。したがって読み取り装置100は、50(ほど)のタグすべてがそれらのデータを一意のチャネル上で首尾よく伝送した旨の妥当な信頼を得るために、所与の電力レベルで10パスの間パワーアップしておくことが可能である。ここでも、読み取り装置100は、自分のIDデータを受信するためにチャネル上に1つのタグ110しかない時間を決定できるだけでよい。その結果、絶対最大数16のパスではなく、上記の例で与えられた10のパスのみが実行されたため、大幅な合計獲得時間が節約されることになる。所与のタグ数に対する他の信頼レベルまたはパス数を決定するために、他のシミュレーション、統計、または確率の分析も適用可能である。いくつかの応用例では、読み取り装置100は最初に在庫リストを作成する際に最大数のパスを利用し、その後、システム内で提示されるタグの予測される(すなわち測定または観測された)数に基づいてパスの数を調整する。
【0126】
別の方法として、読み取り装置100によって使用されるアルゴリズムは、各タグについて(そのデータまたはID情報が首尾よく受信された場合)予測される衝突場所(すなわちチャネル)を追跡すること、およびシステム内で識別される予定のタグがいくつ残されているかを推定することが可能である。したがって読み取り装置100は、(システム内に他のタグが存在しないであろうと決定された場合)前述の技法よりも早く問い合わせ工程を停止できる可能性がある。言い換えれば、必要な伝送パスの数は、前述のようにタグの予測数に基づいて事前に計算するのではなく、受信時に読み取り装置100によって適応的に推定される。この技法については、以下の実施例および図22でさらに説明する。
【0127】
読み取り装置100のより高度な実施形態では、いくつかの形の衝突緩和技法のうちの任意の1つを使用することが可能である。衝突緩和技法は、一般に所与の通信チャネル上での衝突の衝撃を和らげる。理論上、それらはチャネル上での特定の衝突の影響を除去す
る。これは記載されたシステムにおいて、知られた信号を再生成すること、および全信号集団(または複合受信信号)から知られた信号を減じることによって、実施可能である。知られた信号は他の(未知の)信号への干渉とみなすことが可能であるため、記載された技法は、干渉消去技法としても知られる。この干渉信号の減算は、復調工程のいかなる段階でも発生する可能性がある(たとえば、チップ・レートで発生するか、または好ましい実施形態の逆拡散後に発生する可能性がある)ことに留意されたい。本発明の好ましい実施形態は、実施の複雑さを減らすために、逆拡散後に衝突緩和を実行する。
【0128】
概して、1群の衝突緩和技法には様々なレベルの複雑さが存在し、一般には衝突緩和技法を使用しない実施よりも複雑である(たとえばより多くの処理電力、メモリ、またはハードウェアを必要とする)。しかしながらこうした技法は一般に、タグ・データ獲得(読み取り)時間の合計がかなり短く、システム容量を大幅に増やすことが可能である。ここでも、チャネルは準静的であり、システム性能を最高にするためにシステムは相対的に線形であると想定される。
【0129】
一般に、衝突緩和技法を使用する場合、知られている(すなわち首尾よく決定される)信号が多いほど、複数パス・アルゴリズムの所与のパスについてシステム内に存在することが分かるタグは少ない。好ましい実施形態では、タグ110上に格納されたデータはチャネル選択を直接決定する(またはそうでなければ読み取り装置100によって認識される)ため、読み取り装置100は首尾よくデータを受信すると(一般に、タグ110が他の方法で占有されていないチャネル上で伝送する場合に発生する)、タグ110が複数パス通信アルゴリズムのあらゆるパスについて実行することになるすべてのチャネル選択がわかる。したがって読み取り装置100は、前述のように、タグ110のどのチャネルが将来の(および過去の)伝送に使用されるかを予測することが可能である。一般に、タグ110からの観測された信号レベルは、通常の信号検出工程時に読み取り装置100内でも測定(または低域フィルタリング)されるため、所与の(衝突のない)タグの実際の信号強度の信頼できる推定値が入手可能である。この知識を使用して、既知の信号を効果的に再作成し、これを受信信号の集合体から正確に減算することによって、他の伝送パスからその影響を除去することが可能である。
【0130】
具体的には、首尾よく受信された各タグ信号に関する平均信号レベル(および場合によっては位相)は、1つまたは複数の伝送パスの何らかの部分にわたって平均化することによって決定可能である。タグは、単一占有チャネル上を伝送される場合に首尾よく受信され、この場合、そのデータは従来の手段によって首尾よく復調が可能であることを想起されたい。ここでも、システムの好ましい実施形態における処理を簡略化するために、(前述の信号検出段階と同様に)平均累積絶対値が計算される。各チャネル上の(場合によってはdc訂正済みの)絶対信号レベルの(逆拡散後の)平均値は、そのタグの予測信号レベル(すなわち受信信号強度)を表す。(RF結合システムにあるような)複合データ・パスを採用している受信機の場合、伝送パスの一部分にわたって信号位相を平均化することも可能である。
【0131】
チャネルが準静的、または当該期間にわたって安定している場合(しばしば短い読み取りサイクルの場合)、干渉タグの信号レベルは安定していると推定できるため、そのローカルに再生成された形を複合受信信号から除去または減じることが可能である。首尾よく受信したタグからの信号はもはや必要ないかまたは有用でないため(そのデータが決定された場合)、これを除去することによって、他の未知のタグを送信するために通信チャネルが開放される。既知のタグのデータ信号は、その復調されたデータ・シンボルまたはビット・シーケンスに平均予測信号レベルを掛け合わせることによって、再作成可能である。この信号の減算は逆拡散後に実行可能であり、そうでなければ、特定の拡散シーケンスが逆拡散前に減じられなかった場合、これを再適用しなければならないことになる(計算
上の複雑さの見地から、これはまったく望ましくない)。タグの信号は複数パス伝送アルゴリズムの各パス内でチャネルを変更するために認識されるものであり、減算工程でも考慮に入れることが可能であることに留意されたい。また、使用可能なチャネルおよび拡散コードの数は、複数パス・アルゴリズムの各パスについて変更される場合があることも留意されたい。
【0132】
比較的単純な形の衝突緩和には、既知の信号を複数パス・アルゴリズムの(時間に関して順方向の)後続のパスから減じることが含まれる。したがって、この形の衝突緩和は一般に順方向衝突緩和と呼ばれる。図20は、順方向衝突緩和技法を使用した読み取り装置処理に関する実施例の流れ図を示し、ここでは工程を理解しやすいように処理は順次(たとえば1度に1チャネル)様式で実行される。この工程には、一般に、どのタグ110、120、130がそのIDデータを(前述の受信機アルゴリズムで説明したように)首尾よく伝送したかを決定すること、ならびに、複数パス・アルゴリズムの各パスについて既知の(タグの)チャネル選択および推定信号レベルを含むデータ構造(またはリスト)を維持することが含まれる。タグのIDデータおよび伝送されたタグ信号の信号レベルがわかると、そのタグが関与する任意の後続の衝突からこれを効果的に除去することが可能である。ここでも信号レベルは、正確さのレベルが向上していく干渉信号レベルを取得するために、時間を増加させながら測定およびフィルタリングすることが可能である。したがって、本発明の1実施形態では、タグ信号が推定される(あるレベルの正確さの範囲内で決定される)と、複数パス伝送アルゴリズムのその後のパスにある適切な(事前に決定された)チャネルからこれが減じられ、他のユーザによって伝送される他の信号上でのその(既知の)タグの信号のいずれの干渉影響をも打ち消すことになる。この技法は、典型的にはタグ110上に格納されたデータに基づく、各タグのチャネル選択の決定性によって実行が可能である。
【0133】
測定された信号レベルおよび可能な位相は、一般にすべての後続のパスまたは少なくとも現在の伝送パスに対して保持されるものと想定されるため、ここでは、準静的チャネル想定が重要になる。一般に信号レベル推定値は、ゆっくりと変化するチャネル条件を反映するために、あらゆる伝送パスで更新可能である。(以下で説明するアルゴリズムでは受信したすべてのバーストをメモリに格納するのに対して)このアルゴリズムを実行するために格納する必要があるのは、既知のタグ信号情報(典型的にはデータ構造またはリストに含まれる)および現在の伝送パス(またはバースト)からの複合受信信号のみであることに留意されたい。一般に、このタイプの順方向衝突緩和アルゴリズムは、いかなる衝突緩和も実行しない方法を介して合計読み取り時間を大幅に(2〜4倍)することが可能である。
【0134】
他のより高度な形の衝突緩和には、複数パス伝送の後続および以前の両方のパスから、既知の信号を減じることが含まれる。これが可能であるのは、タグ110からのデータがいったん識別されると、以前のパスを占有しているチャネルを確認し、任意の以前の衝突に対するその寄与を無効にすることが可能であるためである。このクラスの衝突緩和アルゴリズムは、一般に双方向衝突緩和技法と呼ばれる。双方向衝突緩和は計算の面ではより複雑である(さらに、一般に以前の通信パスを格納するためにより多くのメモリを必要とする)が、合計タグ読み取り時間は大幅に削減される(いかなる衝突緩和も実行しない方法に比べておよそ1桁削減される)。
【0135】
一般にこの方法では、識別されたタグ用の各通信パス(前述のケースと同様に)における既知のチャネル選択および推定された信号レベルを含む、データ構造を格納する必要がある。しかしながら信号は、(順方向衝突緩和アルゴリズムの場合のような現在のパスに加えて)以前の伝送パスから減じられるため、追加の衝突も解決可能である。たとえば、複数パス通信アルゴリズムの第3のパスからデータが解決される(すなわち、首尾よく受
信される)場合、アルゴリズムの以前のパス(たとえば第2のパス)内の他のユーザからのデータも解決可能となり、これが次に伝送の以前のパス(たとえば第1のパス)または後続のパス(たとえば第3のパス)のいずれかで以前に衝突していた他のユーザを解放することになる。新しいユーザからのデータが解決されるたびに、その再構築された信号が(現在のパスまでおよびこれを含む)すべての伝送パスから減じられ、単一占有であるチャネルおよび衝突しているチャネルの数が(すべての可能な通信チャネルおよびパスについて)再評価される。この方法では、読み取り装置100は使用可能な(現在のパスまでおよびこれを含む)すべての伝送パスを循環し、(現在のパスまでおよびこれを含む)いかなるパスにも解決可能なユーザがいなくなる時点に達するまで、より多くのタグ信号をほぼ連続して解決することが可能である。読み取り装置100は、その後次の電力レベルに進み、双方向衝突緩和アルゴリズムを続行する。この効果は後の伝送パスでもかなり強力であり、使用可能な通信チャネル数よりもかなり多くの数のタグ信号を解決することが可能である。
【0136】
拡散利得は(1パス当たり)動的に変更可能であるため、読み取り装置によって指示された場合、それらを複合受信信号から減じる前に、特定の拡散係数について信号を再度正規化する必要が生じる可能性があることに留意されたい。さらに、双方向干渉取消しの帰納的パスは(時間的に)任意の順序で実行可能であることにも留意されたい。
【0137】
すべてのタグ・データを受信すると、読み取り装置100は好ましくは任意の信号取消しが発生する前に、前述の手段(たとえばエラー検出および訂正)を介してデータの整合性をチェックすることが可能である。従来のデータ復調技法は、タグ伝送で使用された変調タイプに基づいて実行することが可能である。読み取り装置100はデータを後処理することも可能であり、これには典型的に、逆スクランブリング、復号、分類、および冗長アイテム(本発明の好ましい実施形態では複数の電源投入レンジでパワーアップする)の除去などの機能が含まれる。これらの機能の一部またはすべてが中央位置で実行可能であり、これによって複数の読み取り装置またはアンテナを処理することに留意されたい。
【0138】
衝突緩和技法を使用する完全な読み取りサイクルが完了する(すなわちすべてのアクティブ・タグが識別される)と、システム内の各信号の干渉特徴がわかる。具体的には、複数パス伝送アルゴリズムの各パスについて、信号の振幅および位相がわかり(または推定され)、システム内に存在する各アクティブ・タグのデータ・シーケンスがわかる。実際には、各タグの信号に関するすべての情報がわかる。前述の数式で記載したように、信号発信レートおよびデータ・ペイロード・サイズに応じて、合計トランザクション(読み取り)時間に関連付けが可能なL’伝送パスを取るための完全な読み取りサイクルがわかる。
【0139】
システム・オペレーションの実施例
これらのアルゴリズムのオペレーションは、おそらく実施例によって最もよく伝えられるであろう。ランダムなチャネルの各パスを取り出した実施例では、簡略化された仮想上のタグ・システムを詳細に説明する。この実施例の説明に使用される図21、23、および24は、伝送アルゴリズムを介して各後続パス上で通信するために各タグがどのチャネルを選ぶかを示す、システムの状態図である。実施例中の状態は、チャネルを選択するためにランダム数の発生器を使用した実際の実験の不変の出力である。物理チャネルのタイプ(たとえばコード位相など)はこの時点では無関係である。これは、前述のセクションIに詳細に示された本発明のデータ・スクランブリング部分により、システム全体の正確なモデルを提供するはずである。
【0140】
図21、23、および24に詳細に示された実施例は8つのタグの集団を想定し、さらにタグを取り出すことのできる8つのチャネルの通信するためのパス当たりの固定チャネ
ル・サイズも想定する。したがって、各タグの3ビットの(たとえば、場合によっては一意のサブセットの)ID情報を使用して、好ましい実施形態の各パスの伝送時に各タグ110が伝送される8つのチャネルのうちの1つを選択する。8進数を使用することで、タグIDの最初の30ビットはランダムに生成されたが、便宜上以下で繰り返す。
【0141】
タグ1:0033 0436 07...
タグ2:1106 2551 65...
タグ3:4767 4416 41...
タグ4:2044 6111 36...
タグ5:6072 3355 74...
タグ6:1476 5432 40...
タグ7:5443 3675 34...
タグ8:2135 5115 64...
タグ1は、パス#1でチャネル0、パス#2でチャネル0、パス#3でチャネル3、というように選択する。タグ2は、パス#1でチャネル1、パス#2でチャネル1、パス#3でチャネル0、というように選択する。このリストから、最初の8進数からチャネルを取り出すパス#1では、タグ1はチャネル0の単独占有者であり、タグ3はチャネル4の単独占有者であり、タグ5はチャネル6の単独占有者であり、タグ7はチャネル5の単独占有者であることがわかる。これらのチャネルには衝突がないため、タグ1、3、5、および7は全体として首尾よく識別され、タグ1、3、5、および7はそれらの完全IDを衝突のないチャネルで通信した。しかしながら、パス#1上では、タグ2および6はチャネル1で衝突し、タグ4および8はチャネル2で衝突した。これらのタグは首尾よく識別できず、解決するために後続のパスが必要となる。読み取り装置100は、衝突の存在を監視し、印加する電力を現在のレベルのままとし、すべてのタグがパス#2について第2の8進数から他のチャネルを引き出せるようにする。どのタグも、伝送工程の任意の段階で自分のID情報が首尾よく伝送されたかどうかを知らない。読み取り装置のみがこの知識を有し、伝送条件を除去すること(たとえばパワーダウン)によって、読み取り工程全体がいつ完了したかをタグに通知することになる。
【0142】
パス#2では、衝突に関与しないタグはタグ3のみである。このタグはすでにパス#1で識別されたため、読み取り装置100はいかなる新しい情報も獲得しなかった。パス#1で衝突しなかったどのタグも未だ識別不能である。統計的に言えば、8つのタグおよび8つのチャネルの場合、少なくとも1つの衝突が存在する確率は1−8!/8=99.76%である。この結果は、上記で与えられたN個のチャネルを介するM個のタグ間で衝突が起こらない確率のより一般的なケース
【0143】
【数6】

【0144】
およびP{衝突}=1−P{衝突なし}という事実から得られる。このアルゴリズムを介して各パスについて少なくとも1つの衝突が起こる確率は同じとなる。このタグおよびチャネルの組み合わせは、100,000の実験にわたって平均化され、1パスにつき8チャンネルのうちの2.7498が占有されず、3.1386のチャネルが単一のタグを含み、1.5737のチャネルが2つのタグを含み、0.4482のチャネルが3つのタグを含み、0.0796のチャネルが4つのタグを含み、0.0093のチャネルが5つのタグを含み、7.2×10−4のチャネルが6つのタグを含み、4×10−5のチャネル
が7つのタグを含み、1つのチャネルに8つのタグを含むケースはないことが記録された。
【0145】
無衝突軽減例
衝突緩和がない場合、タグが識別されるためにはチャネル内にそのタグだけが現れなければならない。実験を行うための十分な時間が与えられれば、これが発生するであろう。しかしながらタグID 220情報内のビット数が限られている場合、実験は反復が開始されるまでに限られた回数しか実行できない。たとえば、タグIDが96ビット長であり、チャネル(8つのうちの1つ)を取り出すために1パス当たり3ビットが使用された場合、工程は32回の実験後に反復することになる。1パス当たり少なくとも1つの衝突が生じる可能性は高い(本シナリオの場合99.76%)ため、実験を通じてそれぞれおよびあらゆるパス上での衝突の際にタグのIDが「隠れる」ことが可能な確率は小さいが有限である。これは、タグのID 220が全体として異なるタグのIDと同一であることを意味するものではない(一意のタグIDの想定およびスクランブリングされたタグIDへの一意および可逆性のマッピングによって許可されない)。少ないビット数(この場合は3)にわたる実験を使用してそのパス用のチャネル・スペースが定義された場合に、タグのID 220が少なくとも1つの他のタグのIDと同一であることを意味するのみである。これにより、タグの在庫についてある信頼度までに限って知られている場合、在庫またはアイテムの不確実性の概念が導入される。
【0146】
図21の実験例では、各タグが衝突のないチャネル内に現れるには8回の試行が必要である。すでに述べたように、タグ1、3、5、および7はパス#1で識別され、タグ2はパス#3に現れ、タグ4および8はパス#4で識別され、タグ6はパス#8まで現れない。タグ6は、一意のタグがたとえ一意のIDを有していても、衝突においてどのように隠れることが可能であるかを示す良い例である。この実験がパス#7までしか実行されなかった場合(すなわちIDが21ビット長のみであった場合)、タグ6は識別されないことになる。
【0147】
パス#1では、4つのタグが識別される。2つの衝突も識別され、少なくとも4つの他のタグがあることを示している(単一の衝突が生じるためには少なくとも2つのタグが必要であるため、2つの衝突が生じるためには少なくとも4つのタグが必要である)。したがって、第1のパスの後、読み取り装置100は既知のタグが4つ、および未知のタグが少なくとも4つ、または合計で少なくとも8つのタグがあると決定することが可能である。
【0148】
パス#2では、単一の以前に知られたタグのみが一意の(未使用の)チャネルを占有している。読み取り装置100はタグ1、3、5、および7の完全なIDを知っているため、これらのアイテムが次および後続のすべてのパス内でどのチャネルを占有することになるかがわかる。読み取り装置100は、タグ1および5がチャネル0に進み、7がチャネル4に進むことになることを知っている。したがって読み取り装置100は、チャネル0上で衝突が生じると予測するが、チャネル0を占有している未知のタグ(この場合はタグ4)も存在する確率がある。チャネル0は2つの既知のタグと、1つまたは複数の未知のタグの可能性を示す。読み取り装置100はチャネル1上での衝突は予測していなかった(既知のタグのいずれもこのチャネルを選択することが予測されなかったため)。個々での衝突は、少なくともあと2つ、あるいはそれ以上の未知のタグがあることを示す。タグ7しか予測されなかったチャネル4上での衝突は、少なくとも1つの他の未知のタグがあることを示す。したがってパス#2は結果的に、以前から既知の4つのタグと、少なくとも(確実に)3つの未知のタグになる。これは4つの既知のタグおよび少なくとも4つの未知のタグという第1のパスによって定義された集合よりも少ないため、読み取り装置100は第2のパスでは新しい情報を収集しなかった。
【0149】
パス#3では、チャネル0上でタグ2が識別される。タグ1はチャネル3に進むことが予測された唯一のタグであったため、ここでの衝突は少なくとも1つの未知のタグがあることを示す。タグ7はチャネル4に進むことが予測された唯一のアイテムであったため、ここでの衝突は少なくとも2つの未知のタグ(チャネル3上の未知のタグおよびチャネル4上の未知のタグ)があることを示す。タグ3はここでも単独である。タグ5はチャネル7に進むことが予測された唯一のタグであった。ここでの衝突は、少なくとも3つの未知のタグ(チャネル3、4、および7上で未知のタグをカウント)があることを示す。これらならびにこの時点で5つの未知のタグが、少なくとも8つのタグがあることを示す。
【0150】
パス#4は新しいタグ4および8を識別する。タグ3、5、および7は衝突のないチャネルに現れる。タグ1および2はチャネル6上で衝突すると予測されたが、ここには追加のタグが存在する可能性がある。これにより、7つの未知のタグ、および以前の実験から少なくとも1つの未知のタグが残される。
【0151】
パス#5では新しいタグが識別されない。チャネル5上での衝突は予測されなかったため、ここでも7つの既知のタグおよび少なくとも1つの未知のタグが示される。パス#6およびパス#7からも同様の解釈を行うことが可能である。
【0152】
パス#8では、タグ6が識別される。すべての他の衝突は予測された。ここでは以前のパスから予測された最低数の8つのタグが識別される。しかしながら、衝突において隠れたタグが依然として存在する可能性がある。たとえば、チャネル1、0、4、6、3、1、1、5を選択したタグがある可能性があり、このタグは他の衝突によって隠されることになる。タグがこの特定のIDを有する確率は、1/8または6×10−8となる。
【0153】
たとえばチャネル2、4、4、6、5、4、5、6を選択し、6×10−8の確率も備えたタグがある可能性もある。合計で、パス#1では2つの衝突、パス#2では3つの衝突、パス#3では3つの衝突、パス#4では1つの衝突、パス#5では2つの衝突、パス#6では2つの衝突、パス#7では3つの衝突、パス#8では3つの衝突があり、2×3×3×1×2×2×3×3=648の可能な隠れIDがあり、それぞれが確率6×10−8を備え、追加の単一の隠れタグの確率は648/8=38.6×10−6(38.6ppm)である。追加の2つの隠れタグの確率はさらに小さく、648・647/816=1.5×10−9となる。他の実施形態では、データを逆スクランブリングすること、および、たとえば他のアイテムがすべて食品雑貨アイテムである場合、隠れタグがタイヤ(tire)または何らかの他の予測されていないアイテムであると決定することによって、在庫信頼度レベルをさらに改善することが可能である。
【0154】
隠れタグの確率は、識別された後に衝突情報に基づく最低数の予測されたタグ(この場合、8つのタグ)で実験を続けることによって減少させることが可能である。1パス当たりの衝突数をカウントすること、および1パス当たりのチャネル数に基づいて隠れタグの確率を知ることにより、読み取り装置100は何らかの信頼度レベルを満たすまで、または一意のチャネル・パターンを使い果たすまで(使い果たしID)、パスを実行し続けることが可能である。1パス当たり6481/8=2.246の衝突を想定すると、2つのパスが追加された(合計10のパス)後、単一の隠れタグの確率は3.04×10−6まで減少する。さらに2つのパスが追加される(合計12のパス)と、単一の隠れタグの確率は240×10−9まで減少する。パスを追加するごとに、単一の隠れタグの確率は等比級数的におよそ6481/8/8=.281Xずつ減少する。
【0155】
前述の不干渉取消方法に関連する工程を示す流れ図が、図22に示される。開始2210でシステムは、肯定(positive)IDなし、および未知(unknown)な
しで初期化され、これらを合わせてアイテム合計ゼロに対応する。第1パス2220の分析2230後、肯定ID(たとえばパス#1のアイテム1、3、5、および7)が肯定IDのリストに記録および追加される2240。パス内の衝突数2250も記録される(たとえばパス#1には2つの衝突)。衝突が予想された場合2260、将来のパスで明らかになる可能性のある潜在的未知はあるが、確実な未知はない。衝突が予想されなかった場合2270、2つの未知が未知リストに追加される。その後、アイテムの合計数は、肯定的に識別されたアイテムおよび記録された衝突を発生させる可能性のある未知の最低数となるように推定される2280。肯定IDが推定された合計アイテムに等しくないと想定すると、未知の合計はゼロにリセットされ2295、他のパス2220が開始される。このループは、肯定IDの数が以前に識別されたIDの最大数プラス未知に等しい場合、および所定の信頼度レベルを満たした場合2296、最終的に終了する2290。
【0156】
これまでのところ、チャネルの時間的変動および受信信号レベルについては何も想定してこなかった。チャネルが静的であるか動的であるかにかかわらず、「衝突緩和なし方法」を適用することが可能である。戻り信号が一貫した電力レベルおよび位相を有する静的チャネル条件の場合、読み取り装置100では、受信信号レベルの形でより多くの情報が使用可能である。既知のタグが将来のパスでどのチャネルを選択することになるかを知っていることに加えて、その信号レベルも分かっていると想定した場合、予測される衝突に追加の隠れタグがあるかどうかを判別することが可能である。たとえば、パス#2のチャネル0での衝突は、2つの既知のタグおよび1つの未知のタグを含んでいた。既知のタグの信号レベルもわかっていた場合、衝突の合計信号レベルを個々の信号レベルと比較して、この衝突に追加の未知のタグが隠されていたかどうかを判別することが可能であった。こうした環境により、読み取り装置100はすべてのタグが独立して識別された後、すべての衝突が反映されることになるため、隠れタグが存在しなかったという確信をもってその照会を終了させることができる。
【0157】
このようにして、識別されたタグの信号レベルの知識は在庫の会計においてより大きな信頼性を与える。しかしながら信号レベル情報は、すべての既知のタグが個々に現れた後に単に照会を終わらせること以上に、獲得時間に改善をもたらす。これについては次のセクションで論じる。
【0158】
順方向衝突緩和の実施例
タグが個々に識別された場合、読み取り装置100はすべての後続のパスに関するそのチャネル選択がわかる。さらにタグの信号レベルおよび位相がわかった場合、そのタグの衝突への寄与を無効にすることが可能である。本来、タグからの信号は後続の衝突から除去することが可能であり、それによって集団から効果的に除去される。図23に示された実験について考えてみる。タグ1、3、5、および7はパス#1で肯定的に識別される。それらの信号レベルおよび位相も決定されるものと想定する。
【0159】
パス#2で、タグ1および5がチャネル0を介してそれらのデータを伝送することがわかっている。それらの既知の信号レベルを利用してそれらを減じることが可能であり、その結果タグ4のみが残されて識別が可能となる。同様にパス#2で、タグ7はチャネル4を介してそのデータを伝送することが予測され、このタグを取り消すことによってタグ6のみが残され、識別される。チャネル1には依然として未解決の衝突があるため、このアルゴリズムを介して少なくとも1つの他のパスが必要である。
【0160】
パス#3で、タグ2が単独で現れ、識別される。タグ1はチャネル3を介してそのデータを伝送すると予測されたため、これが減じられてタグ8のみが残され、識別が可能となる。他のすべての衝突には既知のタグのみが含まれるため、図21のように衝突緩和がない場合、タグのアカウンティングはアルゴリズムを介した完全な信頼度をもって8または
それ以上のパスを使用せずに3つのパスで(必要な信頼度レベルに応じて)完了する。
【0161】
コヒーレント静的チャネルの場合、識別されたタグの信号強度を高精度で知ることが可能である。増補されたPNチャネルの場合を考えてみる。この実験では、タグは8チップ長の増補されたPNシーケンスの異なるコード位相を選択することになる。この8チップ長PNシーケンスは、特定のIDビットの意味に応じてタグのIDの各ビットについて真または反転されて伝送される。読み取り装置100では、本質的に受信機内の相関器が、1ビットあたり8チップにわたって信号レベルを平均化する。これがID内のすべてのビット(たとえば128)に対して実行され、信号対雑音比の平均化利得が10 log (1024)=30dBの場合、8×128=1024のサンプルにわたる平均値が得られる。より多くの予測されるタグおよびより多くの使用可能チャネル(>32)がある、さらに実際的なケースでは、利得は増加する。32チャネルおよび128ビットの場合、信号対雑音比の利得は36dBとなる。
【0162】
双方向衝突緩和の実施例
読み取り装置100が以前のパスからの波形サンプルを格納する場合、アカウンティング時間におけるさらに大きな改善が可能である。格納された波形を使用して以前のパスを再訪し、これらを後続のパスとして処理し、以前の衝突を取り消すことが可能である。これは、いったんタグが識別されると、すべての後続の活動がわかるだけでなく、すべての以前のチャネル選択および信号レベルもわかるためである。
【0163】
図24に示された実施例について考えてみる。パス#1で、タグ1、3、5、および7はビット・パターンならびに信号のレベルおよび位相の両方で識別される。順方向衝突緩和の場合と同様に、チャネル0での衝突からタグ1および5の影響を除去できるため、タグ4はパス#2で識別可能である。同様に、チャネル4での衝突からタグ7の影響を除去することで、タグ6の識別が可能である。パス#2および順方向衝突緩和の適用後、タグ1、3、4、5、6、および7が既知となる。
【0164】
第3のパスを必要とする代わりに、順方向衝突緩和を適用した後にパス#1の結果を再訪することが可能である。パス#2でタグ4が識別されているため、第1のパスの格納結果のチャネル2からこれを除去してタグ8を解決することが可能である。パス#2でタグ6が識別されているため、第1のパスの格納結果のチャネル1からこれを除去してタグ2を解決することも可能である。この場合、8つのタグすべてを首尾よく識別するために必要なパスは2つだけである。順方向および双方向の両方の衝突緩和の効果は、関与するチャネルおよびタグの数が増えるほどより高くなる。
【0165】
以上、優れた性能(たとえば読み取り時間および容量)を提供する複数パス伝送アルゴリズムを使用する(好ましくはスペクトル拡散技法を使用する)1方向通信システムについて説明してきた。衝突緩和技法、動的チャネル・プロファイル、および電力投入レンジを組み込むことにより、システム性能はさらに向上する。記載された通信システムは、好ましい実施形態および本文で詳細に説明した実際の実施例に限定されることのない、多くの応用例を有する。本発明は、その本来の特徴(添付の特許請求の範囲に記載)から逸脱することのない、双方向通信デバイス、能動的に電力が供給されるユーザ・デバイス、およびネットワーク・デバイスにおいても応用例を有する。
【0166】
本発明は、その趣旨または本来の特徴から逸脱することなく、他の特定の形式で具体化することが可能である。記載された実施形態は、すべての点において例示的なものに過ぎず、限定的でないものとみなされる。したがって本発明の範囲は、前述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の等価物の意味および領域内でのすべての変更は、その範囲内に含まれるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0167】
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明に従った単一宛先デバイスと通信する複数ソース・デバイスを示す高水準図。
【図2】本発明に従った、動作中に通信チャネルを決定するためにタグ上に格納されたデータを変更および使用する方法を示す図。
【図3】本発明に従った、タグ上に格納されたデータをスクランブルするために使用される工程を示す高水準図。
【図4】本発明に従った、読み取り装置内で実行される複数タグ通信およびスクランブル反転(逆スクランブル方法)を示す高水準システム図。
【図5】本発明に従った高水準システムおよび付随の波形を示す図。
【図6】本発明に従ったタグの高水準モデルに関するアンテナ・ノード波形を示す図。
【図7】本発明に従ったタグを示す高水準ブロック図。
【図8】本発明に従ったタグ伝送条件の概要を示す概括的流れ図。
【図9】本発明に従ったタグ伝送条件の概要を示す詳細な流れ図。
【図10】本発明に従った典型的実施形態において、読み取り装置と様々なタグとの間で容量結合を使用する応用例を示す図。
【図11】本発明に従った、タグ上に格納されたデータに基づいてタグの送信時に介するチャネルを生成するための方法を示す図。
【図12】本発明に従った、パス依存および変調方法に焦点を当てた簡略化されたタグ回路機能を示すブロック図。
【図13】本発明に従った読み取り装置を示す詳細なブロック図。
【図14】本発明に従った、ウォルシュ(Walsh)符号化信号に関する高速変換方法の1例を示す図。
【図15】本発明に従った、擬似雑音シーケンスの高速相関に関する読み取り装置受信機信号処理の詳細な例を示す図。
【図16】本発明従った読み取り装置信号処理を示す簡略化された機能ブロック図。
【図17】本発明に従った、衝突が存在する波形の1例を示す図。
【図18】本発明に従った、衝突が存在しない波形のいくつかの例を示す図。
【図19】本発明に従った読み取り装置動作に関する概括的流れ図。
【図20】本発明に従った、順方向衝突緩和技法を使用する読み取り装置処理信号を示す詳細な流れ図。
【図21】本発明に従った、衝突緩和技法を適用しない在庫アカウンティングの1例を示す図。
【図22】本発明に従った、衝突緩和技法を適用しない場合の在庫アルゴリズムの1例を示す流れ図。
【図23】本発明に従った、順方向衝突緩和技法を使用した在庫アカウンティングの1例を示す図。
【図24】本発明に従った、双方向衝突緩和技法を使用した在庫アカウンティングの1例を示す図。
【図25】本発明に従った、読み取り装置の伝送波形および対応するタグ・パワーアップ過渡波形を示す図。
【図26】本発明に従った、第2の整流器を使用するタグ・クロック同期回路の1例を示す図。
【図27】本発明に従った、第2の整流器を使用するタグ・クロック同期回路の波形を示す図。
【図28】本発明に従った、位相の集合から所望のクロック位相を選択するタグ・クロック同期回路の代替実施形態を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号ソースを活動化する工程と、
該複数の信号ソースに同期化イベントを伝送し、該同期化イベントに応答して該複数の信号ソースにデータを同時に伝送させる工程と、からなる通信方法。
【請求項2】
前記同期化イベントは、所定の期間について搬送波信号の伝送がないこと、および所定の期間について搬送波信号があることのうちの1つであり、前記同期化イベントを伝送する工程はパルス幅変調を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同期化イベントは前記搬送波信号の所定の位相で開始および終了する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の信号ソースは、少なくとも1つの伝送パスを有する複数パス伝送アルゴリズムに従ってデータを伝送する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス幅変調は前記複数の信号ソースに、前記同期化イベントに加えて情報を搬送し、さらに前記同期化イベントは前記複数の信号ソースにそれらの電源投入レンジを変更させる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の信号ソースは、前記同期化イベントに基づく所定の位相で開始するローカルに生成されたシンボル・クロックと、搬送波導出シンボル・クロックとのうちの、少なくとも1つを使用して同時に伝送する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
それぞれがデータを伝送するように適合された複数のソース・デバイスと、
該複数のソース・デバイスを活動化するように適合され、かつ同期化イベントに応答して該複数のソース・デバイスにデータを同時に伝送させるために該複数のソース・デバイスに該同期化イベントを伝送するように適合された、少なくとも1つの宛先デバイスと、からなる通信システム。
【請求項8】
さらに前記複数のソース・デバイスは、少なくとも1つの伝送パスを有する複数パス伝送アルゴリズムに従ってデータを伝送するように適合された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
さらに前記少なくとも1つの宛先デバイスは、パルス幅変調を使用して前記同期化イベントを伝送するように適合された請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
さらに前記複数のソース・デバイスは、前記同期化イベントに基づく所定の位相で開始するローカルに生成されたシンボル・クロックと、搬送波導出シンボル・クロックとのうちの、少なくとも1つを使用してデータを同時に伝送するように適合された請求項7に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2006−521036(P2006−521036A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501220(P2006−501220)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006922
【国際公開番号】WO2004/082304
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】