説明

通信用回路装置

【課題】 回路構成の複雑化や回路面積の増大を招くことなくスプリアスを低減或いは除去可能な通信用回路装置を提供する。
【解決手段】 異なる発振周波数を持つ複数種類の発振信号を生成可能なフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bを備え、発振周波数を用いて搬送周波数を中間周波数に周波数変換する周波数変換回路12と、中間周波数が第1中間周波数となるように、搬送周波数に応じて発振周波数を設定する制御回路30と、を有する受信回路部10を備え、制御回路30が、搬送周波数及び発振周波数に基づいてオフセット周波数を算出するオフセット周波数算出手段31と、搬送周波数に基づいてオフセット周波数が判定周波数範囲外となる発振周波数の特定値を求める発振周波数算出手段32と、発振周波数を特定値に調整して中間周波数を第1中間周波数以外の第2中間周波数に変換する周波数再設定手段33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラクショナルN型周波数シンセサイザを備えた通信用回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラクショナルN型周波数シンセサイザを用いた通信装置(通信用回路装置)は、一般的に、受信機能に係る構成として、例えば、受信信号(変調信号)を受け付けて所望の希望信号(所望チャネル)を取り出し、後段のベースバンド回路部で利用可能にする受信回路部、及び、受信回路部からの信号を処理するベースバンド回路部を備えて構成されている。
【0003】
従来の一般的な通信装置について、図10を基に簡単に説明する。ここで、図10は、従来の一般的な通信装置の受信機能に係る部分の一構成例を示しており、図11は、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの一構成例を示している。図10に示すように、通信装置の受信回路部110Aは、周波数変換を1回行うシングルコンバージョンの回路であり、受信信号Srを低雑音で増幅して増幅信号Sr’を出力する低雑音可変増幅回路11、異なる発振周波数を持つ複数種類の発振信号Spを生成可能なフラクショナルN型周波数シンセサイザ12b、発振信号Spの発振周波数を用いて増幅信号Sr’を周波数変換(ダウンコンバート)するミキサ回路12a、周波数変換後の信号Siを構成する信号成分の内、希望信号の周波数帯域の信号成分のみを通過させるフィルタ回路13a、及び、フィルタ回路13aからの出力を後段のベースバンド回路部120Aで利用可能な信号レベルに増幅する低周波帯域用可変増幅回路14を備えて構成されている。
【0004】
ベースバンド回路部120Aは、入力信号Si’をデジタル信号に変換するADC(Analog−Digital Converter)21、及び、デジタル信号に変換された入力信号Si’を処理するデジタル処理部22を備えて構成されている。尚、ミキサ回路12a及びフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bで周波数変換回路12を構成している。
【0005】
より詳細には、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bは、図11に示すように、水晶振動子を用いて基準発振信号Sxを生成する発振器b1と、基準発振信号Sxを分周して参照信号Srefを生成する発振器用分周器b2、参照信号Srefと後述する電圧制御発振器b5の分周信号Svの位相及び周波数を比較する位相周波数比較器及びチャージポンプ回路b3、位相周波数比較器及びチャージポンプ回路b3の出力から高周波成分を取り除くためのループフィルタb4、ループフィルタb4からの出力信号の電圧値に応じた発振周波数ωpを有する発振信号Spを生成する電圧制御発振器b5、発振信号Spを分周する電圧制御発振器用分周器b6、及び、発振器用分周器b2と電圧制御発振器b5の分周比を設定する設定回路b8を備えて構成されている。
【0006】
フィルタ回路13aは、ここでは、ノイズを除去或いは低減するためのノイズフィルタ、位相雑音や周波数変換に起因して発生するイメージを除去或いは低減するためのイメージ除去フィルタ、及び、所望チャネルの信号成分を通過させるチャネル選択フィルタ等で構成されている。
【0007】
ところで、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bを用いた通信装置では、位相雑音や周波数変換に起因するイメージ等の不要成分の他、分周比の切り替えに起因するスプリアスと呼ばれる不要成分等が生じるため、これらを取り除く、或いは、低減させる必要がある。
【0008】
位相雑音を低減させる技術としては、従来は、例えば、空芯コイル等のディスクリート部品を利用する等している。また、近年、半導体プロセス技術の向上により、インダクタを生成するメタルの厚さを従来に比べ厚くしたQ値の良いインダクタを生成することが可能になり、これによって、位相雑音等を低減することが可能となってきた。更に、回路技術の進歩により、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bでは、発振周波数のステップ幅を広げることなく電圧制御発振器b5の動作に起因するノイズの抑圧範囲を広げることができ、これによって、位相雑音を良好に保つことが可能である。
【0009】
イメージについては、従来は、一般的に、受信回路部110Aのフィルタ回路13aにおいて、イメージの周波数帯域の減衰比が比較的大きくなるように設定されたイメージ除去フィルタを用いる等して除去或いは低減している。
【0010】
尚、フィルタ回路13aは、一般的に、上述したように、イメージ除去フィルタの他にチャネル選択フィルタを備えている。ここで、一般的に、図10のベースバンド回路部120AのADC21に入力される入力信号Si’の信号帯域の中心周波数は中間周波数(IF周波数)と呼ばれており、イメージの周波数と所望チャネルの周波数の差は、IF周波数ωIFの2倍になる(非特許文献1参照)。IF周波数ωIFが十分に高い場合は、イメージと所望チャネルの周波数差が大きくなりイメージの除去が容易になるため、イメージ除去フィルタの性能に対する制約は厳しくならないが、所望チャネルに隣接する隣接チャネルの不要成分の除去はIF周波数ωIFが低いほど容易になるため、チャネル選択フィルタの性能に対する制約は厳しくなる。逆に、IF周波数ωIFが低い場合は、イメージ除去フィルタの性能に対する制約は厳しくなるが、チャネル選択フィルタの性能に対する制約は相対的に緩くなる。
【0011】
このため、イメージ除去フィルタとチャネル選択フィルタの両方について、性能に対する要求が厳しくなるのを防止するためのアーキテクチャの1つとして、IF周波数を数MHzの低周波数に周波数変換し、その後、イメージ除去フィルタ処理及びチャネル選択フィルタ処理を実行する低IF方式がある(例えば、非特許文献2参照)。
【0012】
ここで、図12は、低IF方式を用いた通信装置の一構成例を示している。尚、低IF方式は、IF周波数を従来のIF周波数より低く設定するため、周波数変換後の信号を、受信回路部の後段に設置された外部回路でそのまま利用できない場合がある。このため、図12では、1回目の周波数変換後の信号のIF周波数を、低IF周波数から通常のIF周波数に変換する構成となっている。
【0013】
より詳細には、図12に示す受信回路部110Bは、受信機能に係る構成として、低雑音可変増幅回路11、ミキサ回路12a、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12b、フィルタ回路13b、及び、低周波帯域用可変増幅回路14を備えて構成されている。尚、低雑音可変増幅回路11、ミキサ回路12a、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12b及び低周波帯域用可変増幅回路14の構成は、図10に示す構成と同じである。フィルタ回路13bは、ノイズを除去或いは低減するためのノイズフィルタを備えて構成されている。
【0014】
更に、図12に示す受信回路部110Bは、低周波帯域用可変増幅回路14からの信号をデジタル信号に変換するADC15、ADC15の出力信号に対しイメージの除去或いは低減のためのフィルタ処理や、所望チャネルの信号成分を通過させるためのフィルタ処理等を行うデジタル処理部16、デジタル処理部16からの出力信号をアナログ信号に変換するDAC(Digital−Analog Converter)17を備えている。更に、受信回路部110Bは、DAC17の後段に、周波数変換後の信号のIF周波数を低IF周波数から通常のIF周波数に変換するための回路構成として、DAC17からの出力信号Si1’を周波数変換するミキサ回路18a、及び、周波数変換のための発振信号Sp2を生成するインテジャーN型周波数シンセサイザ18bを備えた中間周波数変換回路18を備えている。
【0015】
このように、周波数変換後の信号のIF周波数を低IF周波数から通常のIF周波数に変換するための回路(中間周波数変換回路18)を設ける構成は、周波数変換後の信号を、ベースバンド回路部120Bだけでなく、複数の外部回路に出力する構成の場合に特に有利である。
【0016】
スプリアスを低減させる技術としては、例えば、分周比の切り替えに起因して生じるスプリアスの周波数がループフィルタb4の減衰周波数帯域に位置するように、発振器用分周器b2と電圧制御発振器用分周器b6の分周比を設定する雑音成分除去方法がある(例えば、特許文献1参照)。つまり、図11に示す発振器用分周器b2と電圧制御発振器用分周器b6の分周比を変更することにより、参照信号Srefの周波数を変更し、低い離調周波数領域でスプリアスが発生しない周波数に変更する。
【0017】
また、スプリアスを低減させる他の技術として、例えば、意図的にノイズを付加するディザリングを用いる方法がある。フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bでは、電圧制御発振器用分周器b6の分周比を周期的に切り替えることで分数分周を実現しているが、分周比の切り替えに起因して大きなスプリアスが発生する。このため、分周比をディザリングすることにより、スプリアスを低減している。
【0018】
【特許文献1】特開2004−236141号公報
【非特許文献1】黒田忠広監訳、“RFマイクロエレクトロニクス”、丸善株式会社、2002年3月、P.134−P.137
【非特許文献2】M.Gupta他、“ISSCC2007.Digest of Technical papers”、“A 48−to−860MHz CMOS Direct−Conversion TV Tuner”、p.206−p.207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に記載の雑音成分除去方法では、フラクショナルN型周波数シンセサイザの外部から入力される出力周波数指示信号に基づいて発振器用分周器と電圧制御発振器用分周器の分周比を設定する構成であるが、出力周波数指示信号の設定については明示されていない。通信装置の受信回路部に搭載されるフラクショナルN型周波数シンセサイザは、一般的に、通信装置の受信信号の搬送周波数に応じて発振周波数を適宜変更する。そして、特許文献1に記載の雑音成分除去方法では、搬送周波数等の外部条件が考慮されておらず、フラクショナルN型周波数シンセサイザのみでスプリアスの低減を図るため、発振器用分周器と電圧制御発振器用分周器の両方の分周比の設定を変更する必要がある。発振器用分周器の分周比を変更すると閉伝達特性が変化することから、これに対応するため、フラクショナルN型周波数シンセサイザの回路構成が複雑になるという問題があった。
【0020】
また、分周比をディザリングする方法においても、ノイズの設定や生成、付加等を行う回路が別途必要となるため、回路構成の複雑化や回路面積の増大等が生じるという問題があった。
【0021】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路構成の複雑化や回路面積の増大を招くことなくスプリアスを低減或いは除去可能な通信用回路装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係る通信用回路装置は、異なる発振周波数を持つ複数種類の発振信号を生成可能なフラクショナルN型周波数シンセサイザを備え、前記発振信号の発振周波数を用いて入力信号の搬送周波数を所定の中間周波数となるように周波数変換する周波数変換回路と、前記中間周波数が所定の第1中間周波数となるように、前記搬送周波数に応じて前記発振周波数を設定し、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザを制御する制御回路と、を有する通信回路部を備え、前記制御回路が、前記搬送周波数及び前記発振周波数に基づいて、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザにおいてスプリアスが発生するオフセット周波数を算出するオフセット周波数算出手段と、前記オフセット周波数が所定の判定周波数範囲内にある場合に、前記搬送周波数に基づいて、前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲外となる前記発振周波数の特定値を求める発振周波数算出手段と、前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲内にある場合に、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザの前記発振周波数を、前記発振周波数算出手段が算出した前記特定値に調整して、前記中間周波数を前記第1中間周波数以外の第2中間周波数に変換する周波数再設定手段と、を備えることを第1の特徴とする。
【0023】
上記特徴の本発明に係る通信用回路装置は、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザが、所定周波数の基準発振信号を生成する第1発振器と、前記第1発振器の出力信号を分周して参照信号を生成する第1分周器と、前記発振信号を分周して分周信号を生成する第2分周器と、前記参照信号と前記分周信号の位相及び周波数を比較する位相周波数比較回路と、前記位相周波数比較回路の出力信号を構成する信号成分の内、所定帯域の信号成分を通過させるループフィルタと、ループフィルタからの出力信号に応じた前記発振周波数を有する前記発振信号を生成する第2発振器と、を備えて構成され、前記制御回路の前記周波数再設定手段が、前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲内にある場合に、前記第1分周器の設定を固定した状態で前記第2分周器の設定を変更して、前記発振周波数を前記特定値に調整することを第2の特徴とする。
【0024】
上記第1または第2特徴の本発明に係る通信用回路装置は、前記通信回路部が、前記周波数変換回路から出力される中間周波信号を、前記通信回路部の外部回路に出力する出力回路と、前記制御回路が前記周波数再設定手段により前記フラクショナルN型周波数シンセサイザの前記発振周波数を調整する際、前記周波数変換回路の後段に設置された後段回路の内、前記中間周波信号の前記中間周波数に応じて動作条件が変化する所定の後段回路の設定を、前記中間周波信号の周波数に応じて自動的に切り替える設定切り替え回路と、を備えることを第3の特徴とする。
【0025】
上記何れかの特徴の本発明に係る通信用回路装置は、前記通信回路部が、前記周波数変換回路の後段に、前記周波数変換回路の前記中間周波数を前記通信回路部の外部回路で利用可能な所定の周波数に変換する中間周波数変換回路を備えてなることを第4の特徴とする。
【0026】
上記何れかの特徴の本発明に係る通信用回路装置は、前記中間周波数変換回路が、前記中間周波信号をデジタル信号に変換した信号を受け付けて周波数変換を行うデジタル回路で構成されていることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
上記特徴の通信用回路装置によれば、入力信号、即ち、通信用回路装置の受信信号の搬送周波数に基づいて、フラクショナルN型周波数シンセサイザの発振周波数を設定し、且つ、搬送周波数に基づいて算出したオフセット周波数が判定周波数範囲内であるか否かに応じて、中間周波数の設定を複数から選択的に行うように構成したので、受信信号の搬送周波数の夫々に個別的により柔軟に対応することが可能になり、装置構成が複雑化するのを抑えることができる。
【0028】
また、上記特徴の通信用回路装置によれば、中間周波数を少なくとも第1中間周波数或いは第2中間周波数の2つから選択的に設定するので、特許文献1に記載の雑音成分除去方法のように中間周波数の設定が固定されている場合に比べ、イメージ等の他の不要成分に対する低減効果を同時に得ることが可能になる。
【0029】
また、上記特徴の通信用回路装置によれば、オフセット周波数が、判定周波数範囲内である場合、例えば、周波数シンセサイザのループフィルタにおいて所望のスプリアスの低減効果が得られない周波数である場合に、中間周波数を第1中間周波数以外の第2中間周波数に変換するように構成したので、より確実にスプリアスの低減効果を得ることができる。
【0030】
尚、特許文献1に記載の雑音成分除去方法では、フラクショナルN型周波数シンセサイザのみでスプリアスの低減を図ることから、発振器用分周器と電圧制御発振器用分周器の両方の設定を変更する必要が生じ、発振器用分周器の設定変更に伴い、周波数シンセサイザの閉伝達特性が変化する場合がある。即ち、特許文献1に記載の雑音成分除去方法では、発振器用分周器の設定変更に起因してフラクショナルN型周波数シンセサイザの閉伝達特性が変化し、周波数シンセサイザの雑音抑圧特性が悪化する可能性があるため、フラクショナルN型周波数シンセサイザの閉伝達特性の変化を考慮して設定を行う必要があり、装置構成が複雑化する。
【0031】
これに対し、上記第2の特徴の通信用回路装置によれば、中間周波数を、少なくとも第1中間周波数及び第2中間周波数に設定可能に構成したので、発振器用分周器の設定を固定した状態で電圧制御発振器用分周器の設定のみで、スプリアスの低減を図ることができる。つまり、上記第2の特徴の通信用回路装置によれば、発振器用分周器の設定変更に起因する閉伝達特性の変化が生じないため、装置構成の複雑化を防止できる。更に、発振器用分周器の設定変更により出力される参照信号の周波数が低下した場合、周波数シンセサイザのループフィルタの通過帯域における雑音が増加する可能性があるが、上記第2の特徴の通信用回路装置では、発振器用分周器の設定が固定されているため、ループフィルタの通過帯域における雑音の増加を効果的に防止できる。
【0032】
また、上記第3の特徴の通信用回路装置によれば、中間周波信号の中間周波数に応じて動作条件が変化する周波数変換回路の所定の後段回路(通信回路部内の周波数変換回路の後段回路、及び、通信回路部の後段の外部回路を含む)の設定を、中間周波信号の中間周波数の切り替えに応じて切り替える設定切り替え回路を備えたので、後段回路で特に意識することなく、中間周波数の切り替えに対応することが可能になる。
【0033】
上記第4の特徴の通信用回路装置によれば、周波数変換回路の中間周波数を後段の外部回路で利用可能な周波数に変換する中間周波数変換回路を備えたので、外部回路側で中間周波数の切り替えに対応する必要が無いため、後段の外部回路が複数ある場合等に有用である。
【0034】
更に、上記第5の特徴の通信用回路装置によれば、周波数変換回路をデジタル回路で構成するので、周波数変換に係る処理の簡略化、及び、回路面積の増大防止を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明に係る通信用回路装置(以下、適宜「本発明装置」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
〈第1実施形態〉
本発明装置の第1実施形態について、図1及び図2を基に説明する。ここで、図1は、本発明装置1Aの受信回路部10A(通信回路部に相当)とその周辺回路の受信機能に係る部分の概略構成例を示しており、図2は、本発明装置1AのフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの一構成例を示している。
【0037】
本実施形態の本発明装置1Aは、受信信号の周波数変換を1回行うシングルコンバージョンの受信回路部10Aと、ADC21によってデジタル信号に変換された受信回路部10Aからの信号Si'を処理するデジタル処理部22を備えたベースバンド回路部20Aと、を備えて構成されている。尚、ベースバンド回路部20Aは、異なる周波数の複数種類の信号に対応可能に構成されている。
【0038】
より詳細には、本発明装置1Aの受信回路部10Aは、図1に示すように、異なる発振周波数を持つ複数種類の発振信号を生成可能なフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bを備え、発振信号の発振周波数を用いて入力信号の搬送周波数を所定の中間周波数となるように周波数変換する周波数変換回路12と、中間周波数が所定の第1中間周波数となるように、搬送周波数に応じて発振周波数を設定し、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bを制御する制御回路30aと、を有する受信回路部10Aを備えて構成されている。
【0039】
更に、本発明装置1Aの受信回路部10Aは、通常の受信機能に係る構成として、受信信号Srを低雑音で増幅した信号Sr’を周波数変換回路12に出力する低雑音可変増幅回路11、周波数変換後の信号Siを構成する信号成分の内、希望信号の周波数帯域の信号成分のみを通過させるフィルタ回路13a、及び、フィルタ回路13aからの出力を後段のベースバンド回路部20Aで利用可能な信号レベルに増幅する低周波帯域用可変増幅回路14を備えて構成されている。本実施形態では、低周波帯域用可変増幅回路14が、周波数変換回路12から出力される信号を後段のベースバンド回路部20A等に出力する出力回路を構成している。
【0040】
より詳細には、周波数変換回路12は、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bからの発振信号Spの発振周波数ωpと信号Sr’の周波数ωr(受信信号Srの搬送周波数ωr)の差ωi=ωp−ωrの周波数を有する信号Siを生成するミキサ回路12aを備えている。周波数ωiは、中間周波数である。
【0041】
周波数変換回路12のフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bは、図2に示すように、水晶振動子を用いて基準発振信号Sxを生成する発振器b1(第1発振器に相当)と、基準発振信号Sxを分周して参照信号Srefを生成する発振器用分周器b2(第1分周器に相当)、参照信号Srefと後述する電圧制御発振器b5の分周信号Svの位相及び周波数を比較する位相周波数比較器及びチャージポンプ回路b3(位相周波数比較回路に相当)、位相周波数比較器及びチャージポンプ回路b3の出力から高周波成分を取り除くためのループフィルタb4、ループフィルタb4からの出力信号の電圧値に応じた発振周波数を有する発振信号Spを生成する電圧制御発振器b5(第2発振器に相当)、発振信号Spを分周する電圧制御発振器用分周器b6(第2分周器に相当)、及び、発振器用分周器b2と電圧制御発振器b5の分周比を設定する設定回路b7を備えて構成されている。
【0042】
尚、本実施形態のフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bは、設定回路b7により、発振器用分周器b2の分周比を固定し、電圧制御発振器用分周器b6の分周比を変更して、発振信号Spの発振周波数ωpを変更するように構成されている。即ち、発振器用分周器b2から出力される参照信号Srefの参照周波数ωrefは一定となる。
【0043】
フィルタ回路13aは、本実施形態では、周波数変換に起因して発生するイメージを除去或いは低減するためのイメージ除去フィルタ、及び、所望チャネルの信号成分を通過させるチャネル選択フィルタを備えて構成されている。
【0044】
本実施形態の制御回路30aは、搬送周波数及び発振周波数に基づいて、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bにおいてスプリアスが発生するオフセット周波数を算出するオフセット周波数算出手段31と、オフセット周波数が所定の判定周波数範囲内にある場合に、搬送周波数に基づいて、オフセット周波数が判定周波数範囲外となる発振周波数の特定値を求める発振周波数算出手段32と、オフセット周波数が判定周波数範囲内にある場合に、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの発振周波数を、発振周波数算出手段32が算出した特定値に調整して、中間周波数を第1中間周波数以外の第2中間周波数に変換する周波数再設定手段33と、を備えている。また、制御回路30aは、本実施形態では、外部から受信チャネルを指定する情報を含む受信周波数情報を受け付け、受信周波数情報から搬送周波数ωrを取得する。
【0045】
更に、本実施形態の制御回路30aは、周波数再設定手段33によりフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの発振周波数を調整する際、周波数変換回路12の後段に設置された後段回路の内、中間周波信号の中間周波数に応じて動作条件が変化する所定の後段回路の設定を、中間周波信号に応じて自動的に切り替える設定切り替え回路34を備えている。ここでは、当該所定の後段回路として、受信回路部10A内に設置されたフィルタ回路13a及び低周波帯域用可変増幅回路14、及び、受信回路部10Aの外部回路の一例としてのベースバンド回路部20Aを想定している。
【0046】
以下、本発明装置1Aの制御回路30aの動作について図3〜図5を用いて説明する。
【0047】
尚、本実施形態では、周波数変換回路12のフラクショナルN型周波数シンセサイザ12bで生成される参照信号Srefの参照周波数ωrefを20MHz、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bのループ帯域を0.6MHzとし、更に、受信信号Srの搬送周波数が、1000MHz〜1100MHzの範囲で、5MHz間隔で構成されている場合を想定して説明する。
【0048】
制御回路30aのオフセット周波数算出手段31は、参照周波数ωrefと分数値Fを用い、オフセット周波数ωofを以下の数1から求められる。
【0049】
[数1]
ωof=±(ωref×F)
【0050】
また、分数値Fは、電圧制御発振器b5の分周比の分数部分であり、発振周波数ωp及び参照周波数ωrefを用いて、以下の数2に示す関係式から求められる。
【0051】
[数2]
ωp/ωref=I+F(Iは整数値)
【0052】
具体的には、例えば、受信信号Srの搬送周波数ωrが1000MHzの場合、第1中間周波数ωiを5.5MHzに設定すると、発振周波数ωpは、ωp=ωr+ωi=1000+5.5=1005.5MHzとなる。また、ここでは、参照周波数ωrefが20MHzであるので、ωp/ωref=1005.5/20=50.275=50+0.275=I+Fより、分数値F=0.275=11/40となる。従って、搬送周波数ωrが1000MHzの場合のオフセット周波数ωofは、ωof=±(20×11/40)=±5.5MHzとなる。同様に、例えば、搬送周波数ωrが1015MHzの場合、ωp/ωref=1020.5/20=51.025=51+0.025=I+Fより、分数値F=0.025=1/40となり、オフセット周波数ωof=20×1/40=0.5MHzとなる。即ち、搬送周波数ωrが1000MHzの場合、±5.5MHzで、搬送周波数ωrが1015MHzの場合、±0.5MHzでスプリアスが発生することとなる。
【0053】
図3は、搬送周波数ωr別にオフセット周波数ωofを算出した結果を夫々示している。図3に示すように、搬送周波数ωrが1015MHz、1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合、オフセット周波数ωof=0.5MHzとなる。同様に、搬送周波数ωrが1000MHz、1020MHz、1040MHz、1060MHz、1080MHz、1100MHzの場合、オフセット周波数ωof=5.5MHzとなり、搬送周波数ωrが1005MHz、1025MHz、1045MHz、1065MHz、1085MHzの場合、オフセット周波数ωof=9.5MHzとなり、搬送周波数ωrが1010MHz、1030MHz、1050MHz、1070MHz、1090MHzの場合、オフセット周波数ωof=4.5MHzとなる。
【0054】
発振周波数算出手段32は、オフセット周波数ωofが判定周波数範囲内にある場合に、搬送周波数ωrに基づいて、オフセット周波数ωofが判定周波数範囲外となる発振周波数ωpの特定値を求める。
【0055】
ここで、図4は、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの閉伝達特性を示している。図4に示すように、スプリアスレベルは、ループ帯域内では略一定であり、ループ帯域の境界、ここでは0.6MHzを超えると、オフセット周波数の値が大きくなる程、スプリアスレベルが減衰する。ここで、判定周波数範囲は、本発明装置1Aに求められるスプリアスレベルを考慮して閉伝達特性に基づいて設定する。尚、本実施形態では、オフセット周波数ωofが1.0MHz以上の場合に、本発明装置1Aに求められるスプリアスレベルの制約を満たすと仮定する。従って、本実施形態では、図3に示すオフセット周波数ωofの算出結果から、オフセット周波数ωofが1.0MHz未満となる場合、即ち、オフセット周波数ωofが0.5MHzの搬送周波数ωrが1015MHz、1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合の夫々について、オフセット周波数ωofが判定周波数範囲外となる発振周波数ωpの特定値を求める。
【0056】
発振周波数算出手段32は、例えば、搬送周波数ωrが1015MHzの場合、上述したように、数1より、オフセット周波数ωof=1.0MHz、参照周波数ωref=20MHzを用いて、F=ωof/ωref=1.0/20が求められ、数2より、I=51を用いて、ωp=(I+F)×ωref=(51+1.0/20)×20=1021.0MHzが求められる。従って、搬送周波数ωrが1015MHzの場合、発振周波数ωp=1021.0MHzが特定値となる。同様にして、搬送周波数ωrが1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合の夫々について、夫々、発振周波数ωpの特定値を求める。ここで、図5は、図3においてオフセット周波数ωofが1.0MHz未満となる場合、つまり、搬送周波数ωrが1015MHz、1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合について、発振周波数ωpの特定値を求めた結果を示している(太枠部分参照)。尚、図5では、図3に示す中間周波数の再設定を行わない場合についても共に示している。
【0057】
周波数再設定手段33は、オフセット周波数ωofが1.0MHz未満となる搬送周波数ωrが1015MHz、1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合に、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの発振周波数ωpを、発振周波数算出手段32が算出した特定値に調整して、中間周波数ωiを第1中間周波数(5.5MHz)以外の第2中間周波数に変換する。ここでは、第2中間周波数は、ωp=ωr+ωiより、図5に示すように、6.0MHzとなる。
【0058】
上述したように、本実施形態では、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの発振器用分周器b2の分周比が固定され、参照信号Srefの参照周波数ωrefが20MHzに固定されているため、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12bの閉伝達特性が変化することがない。そして、電圧制御発振器用分周器b6の分周比のみを設定変更して中間周波数ωiを変更するので、装置構成を簡素化できる。
【0059】
設定切り替え回路34は、周波数再設定手段33が、中間周波数ωiを6.0MHzの第2中間周波数に再設定する場合、即ち、搬送周波数ωrが1015MHz、1035MHz、1055MHz、1075MHz、1095MHzの場合に、受信回路部10A内に構築された周波数変換回路12の所定の後段回路に対し、周波数変換回路12から出力される中間周波信号の中間周波数が切り替えられたことを示す設定切り替え信号を出力する。ここでは、所定の後段回路として、受信回路部10A内のフィルタ回路13aや低周波帯域用可変増幅回路14、及び、外部回路であるベースバンド回路部20Aに対し、設定切り替え信号を出力する。
【0060】
フィルタ回路13aは、設定切り替え信号を受け付けると、イメージ除去フィルタ及びチャネル選択フィルタの動作周波数帯域を、切り替えられた中間周波数に応じて設定する。低周波帯域用可変増幅回路14は、設定切り替え信号を受け付けると、動作周波数帯域を切り替えられた中間周波数に応じて設定する。ベースバンド回路部20Aは、設定切り替え信号を受け付けると、動作周波数(動作クロックの周波数)を切り替えられた中間周波数に応じて変更する。
【0061】
尚、本実施形態では、設定切り替え回路34により、周波数変換回路12における中間周波数の切り替えに応じて、所定の後段回路の設定を切り替えるように構成したが、必ずしも設定の切り替えが必要でない場合もある。例えば、フィルタ回路13aや低周波帯域用可変増幅回路14等、特定の後段回路が、ある程度の周波数変化を許容可能となるように動作周波数帯域が広く設定されており、且つ、第1中間周波数と第2中間周波数の差が、当該特定の後段回路の周波数変化の許容範囲内である場合等には、当該特定の後段回路について、設定切り替え回路34による設定の切り替えを行わない、即ち、例えば、設定切り替え回路34が当該特定の後段回路に対して設定切り替え信号を出力しない構成にしても良い。
【0062】
〈第2実施形態〉
本発明装置の第2実施形態について、図6を基に説明する。本実施形態では、上記第1実施形態とは、受信回路部10の回路構成が異なる場合について説明する。より具体的には、上記第1実施形態では、従来の通常の受信回路部に中間周波数の切り替えに係る構成を構築した場合について説明したが、本実施形態では、低IF方式により構築された受信回路部に中間周波数の切り替えに係る構成を構築する場合について説明する。尚、本実施形態では、受信回路部が低IF方式である場合を想定して説明するが、これに限るものではなく、例えば、後段回路の構成等に応じて、低IF方式以外の方式の受信回路部に中間周波数の切り替えに係る構成を構築するのも好適である。
【0063】
ここで、図6は、本実施形態の本発明装置1Bの受信回路部10Bとその周辺回路の受信機能に係る部分の概略構成例を示している。本実施形態の本発明装置1Bの受信回路部10Bは、図6に示すように、受信機能に係る構成として、低雑音可変増幅回路11、周波数変換回路12、フィルタ回路13b、低周波帯域用可変増幅回路14、及び、制御回路30bを備えている。更に、本実施形態の受信回路部10Bは、低周波帯域用可変増幅回路14からの出力をデジタル信号に変換するADC15、ADC15からのデジタル信号に対しイメージの除去或いは低減や所望チャネルの選択を行うデジタル処理部16、デジタル処理部16からの出力信号をアナログ信号に変換するDAC17、DAC17からの出力信号Si1’を周波数変換する中間周波数変換回路18を備えて構成されている。
【0064】
尚、低雑音可変増幅回路11、周波数変換回路12、及び、低周波帯域用可変増幅回路14の構成は、上記第1実施形態と同じである。また、本実施形態では、中間周波数変換回路18が受信回路部10Bの後段に設置されたベースバンド回路部20B等の外部回路に出力する出力回路を構成している。
【0065】
本実施形態のフィルタ回路13bは、隣接妨害波等の不要成分を除去するフィルタ等からなるフィルタ機能を備えて構成されている。尚、本実施形態では、受信回路部10B全体で求められるフィルタ機能を、フィルタ回路13bとデジタル処理部16の2つの回路によって実現するように構成している。
【0066】
受信回路部10Bの制御回路30bは、オフセット周波数算出手段31、発振周波数算出手段32、周波数再設定手段33、及び、設定切り替え回路34を備えている。尚、オフセット周波数算出手段31、発振周波数算出手段32、及び、周波数再設定手段33の構成は、上記第1実施形態と同じである。設定切り替え回路34は、本実施形態では、フィルタ回路13b、低周波帯域用可変増幅回路14、ADC15、デジタル信号処理部16、DAC17及び中間周波数変換回路18に対し、設定切り替え信号を出力するように構成されている。フィルタ回路13bは、設定切り替え信号を受け付けると、フィルタの動作周波数帯域を切り替えられた中間周波数に応じて変更する。
低周波帯域用可変増幅回路14、ADC15、デジタル処理部16及びDAC17は、設定切り替え信号を受け付けると、動作周波数帯域を切り替えられた中間周波数に応じて変更する。中間周波数変換回路18は、設定切り替え信号を受け付けると、インテジャーN型周波数シンセサイザ18bの周波数変換周波数(アップコンバージョン周波数)を切り替えられた中間周波数に応じて変更する。
【0067】
ここで、図7は、搬送周波数ωr別にオフセット周波数ωofを算出した結果を夫々示しており、図8は、図7において、中間周波数の再設定を行う場合の発振周波数ωpの特定値の算出結果を示している。
【0068】
中間周波数変換回路18は、本実施形態では、ミキサ回路18a及びインテジャーN型周波数シンセサイザ18bを備えて構成されており、DAC17の後段に設置されている。中間周波数変換回路18は、中間周波数を外部回路で利用可能な一定の周波数に変換する。
【0069】
より具体的には、本実施形態の中間周波数変換回路18は、図7及び図8に示すように、ベースバンド回路部20Bが、中間周波数が50MHzの信号を利用可能な場合を想定しており、設定切り替え回路34から出力される設定切り替え信号に基づいて、第1中間周波数5.5MHz、第2中間周波数6.0MHzを、50MHzに変換する。
【0070】
このように構成することにより、本発明装置1Bの受信回路部10Bからは常に一定の中間周波数、例えば、50MHzの中間周波数を有する信号Si2’が出力されることになるので、受信回路部10Bの後段に設置されたベースバンド回路部20B等の外部回路において、IF周波数の変動に対応する必要がなくなる。従って、本実施形態では、設定制御回路30bの切り替え回路34は、ベースバンド回路20B等の外部回路へは設定切り替え信号を出力しない。
【0071】
尚、本実施形態では、本発明装置1Bの中間周波数変換回路18を、図6に示すように、ミキサ回路18a及びインテジャーN型周波数シンセサイザ18bを用いて構成したが、これに限るものではない。例えば、図9に示す本発明装置1Cのように、受信回路部10Cの中間周波数変換回路18の機能を、デジタル回路16内に構築するのも好ましい実施態様である。
【0072】
〈別実施形態〉
〈1〉上記第1及び第2実施形態では、周波数変換回路12及び制御回路30により、スプリアスのみを考慮して中間周波数の設定・再設定を実行したが、スプリアスに加え、他の不要成分、例えば、隣接チャネルに起因する妨害成分等も考慮して中間周波数の設定・再設定を実行するように構成しても良い。
【0073】
具体的には、例えば、上記第1実施形態の本発明装置1Aは、受信信号Srの搬送周波数ωrが1000MHzの場合、図5より、中間周波数ωiを5.5MHz、発振周波数ωpを1005.5MHzとなるように周波数変換回路12を制御する。この場合に、1011MHzの高レベルの妨害成分が発生したと仮定すると、この妨害成分は、周波数変換回路12において、5.5MHz(1011−1005.5)に、つまり、搬送周波数ωrの周波数変換後の中間周波数ωiと同じ周波数に変換される。そうすると、妨害成分により、所望チャネルの信号成分が劣化する等の問題が生じる。従って、この場合にも、中間周波数を、例えば、6.0MHzの第2中間周波数に再設定するように構成すれば、妨害成分は5.0MHzに変換されることとなり、妨害成分の除去や低減が可能になり、妨害波耐性を強化可能になる。
【0074】
〈2〉上記第1及び第2実施形態では、通信回路部が、受信信号を入力信号として受け付ける受信回路部10である場合を想定して説明したが、これに限るものではない。フラクショナルN型周波数シンセサイザを用いて周波数変換を行う機能を備えた送信回路部において、本発明装置における制御回路30のように、フラクショナルN型周波数シンセサイザ12の発振周波数を切り替える制御を行うように構成しても良い。
【0075】
〈3〉上記第1及び第2実施形態において、例えば、複数のチャネル別に、制御回路30によって制御される周波数変換回路12を構築し、周波数変換回路12夫々を並列に配置するように構成しても良い。また、上記第1実施形態において、制御回路30aによって制御される周波数変換回路12の複数を縦列に配置するように構成しても良いし、上記第2実施形態において、中間周波数変換回路18の前段に、制御回路30bによって制御される周波数変換回路12の複数を縦列に配置するように構成しても良い。
【0076】
〈4〉上記第1及び第2実施形態では、周波数変換回路12が、中間周波数を第1中間周波数または特定の第2中間周波数に変換するように構成したが、第2中間周波数は、複数設定しても良い。例えば、特定のオフセット周波数が、スプリアスの制約を満たしているが他の不要成分が大きくなる周波数である場合等には、当該特定のオフセット周波数毎に異なる第2中間周波数を設定しても良い。即ち、当該特定のオフセット周波数を持つ中間周波信号の中間周波数を、夫々に設定された第2中間周波数に周波数変換するように構成しても良い。このように構成すれば、スプリアスだけでなく、他の不要成分に対する除去や低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る通信用回路装置の第1実施形態における受信機能に係る部分の構成例を示す概略部分ブロック図
【図2】本発明に係る通信用回路装置のフラクショナルN型周波数シンセサイザの構成例を示す概略部分ブロック図
【図3】搬送周波数別のオフセット周波数の一算出例を示す表
【図4】本発明に係る通信用回路装置のフラクショナルN型周波数シンセサイザの閉伝達特性を示すグラフ
【図5】本発明に係る通信用回路装置における中間周波数の再設定後の搬送周波数別のオフセット周波数の一例を示す表
【図6】本発明に係る通信用回路装置の第2実施形態における受信機能に係る部分の構成例を示す概略部分ブロック図
【図7】搬送周波数別のオフセット周波数の一算出例を示す表
【図8】本発明に係る通信用回路装置における中間周波数の再設定後の搬送周波数別のオフセット周波数の一例を示す表
【図9】本発明に係る通信用回路装置の他の実施形態における受信機能に係る部分の構成例を示す概略部分ブロック図
【図10】従来技術に係る通信用回路装置の受信機能に係る部分の構成例を示す概略部分ブロック図
【図11】従来技術に係る通信用回路装置の受信機能に係る部分の他の構成例を示す概略部分ブロック図
【図12】従来技術に係る通信用回路装置のフラクショナルN型周波数シンセサイザの構成例を示す概略部分ブロック図
【符号の説明】
【0078】
1 本発明に係る通信用回路装置
1A 本発明に係る通信用回路装置
1B 本発明に係る通信用回路装置
1C 本発明に係る通信用回路装置
10 受信回路部
10A 受信回路部
10B 受信回路部
10C 受信回路部
11 低雑音可変増幅回路
12 周波数変換回路
12a ミキサ回路
12b フラクショナルN型周波数シンセサイザ
13 フィルタ回路
14 低周波帯域用可変増幅回路
15 ADC
16 デジタル処理部
17 DAC
18 中間周波数変換回路
18a ミキサ回路
18b インテジャーN型周波数シンセサイザ
20 ベースバンド回路部
20A ベースバンド回路部
20B ベースバンド回路部
21 ADC
22 デジタル処理部
30 制御回路
30a 制御回路
30b 制御回路
31 オフセット周波数算出手段
32 発振周波数算出手段
33 周波数再設定手段
34 設定切り替え手段
100A 従来技術に係る通信用回路装置
100B 従来技術に係る通信用回路装置
110A 受信回路部
110B 受信回路部
120A ベースバンド回路部
120B ベースバンド回路部
b1 発振器
b2 発振器用分周器
b3 位相周波数比較器及びチャージポンプ回路b3
b4 ループフィルタ
b5 電圧制御発振器
b6 電圧制御発振器用分周器
b7 本発明に係る設定回路
b8 従来技術に係る設定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる発振周波数を持つ複数種類の発振信号を生成可能なフラクショナルN型周波数シンセサイザを備え、前記発振信号の発振周波数を用いて入力信号の搬送周波数を所定の中間周波数となるように周波数変換する周波数変換回路と、
前記中間周波数が所定の第1中間周波数となるように、前記搬送周波数に応じて前記発振周波数を設定し、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザを制御する制御回路と、を有する通信回路部を備え、
前記制御回路が、
前記搬送周波数及び前記発振周波数に基づいて、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザにおいてスプリアスが発生するオフセット周波数を算出するオフセット周波数算出手段と、
前記オフセット周波数が所定の判定周波数範囲内にある場合に、前記搬送周波数に基づいて、前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲外となる前記発振周波数の特定値を求める発振周波数算出手段と、
前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲内にある場合に、前記フラクショナルN型周波数シンセサイザの前記発振周波数を、前記発振周波数算出手段が算出した前記特定値に調整して、前記中間周波数を前記第1中間周波数以外の第2中間周波数に変換する周波数再設定手段と、を備えることを特徴とする通信用回路装置。
【請求項2】
前記フラクショナルN型周波数シンセサイザが、
所定周波数の基準発振信号を生成する第1発振器と、
前記第1発振器の出力信号を分周して参照信号を生成する第1分周器と、
前記発振信号を分周して分周信号を生成する第2分周器と、
前記参照信号と前記分周信号の位相及び周波数を比較する位相周波数比較回路と、
前記位相周波数比較回路の出力信号を構成する信号成分の内、所定帯域の信号成分を通過させるループフィルタと、
ループフィルタからの出力信号に応じた前記発振周波数を有する前記発振信号を生成する第2発振器と、を備えて構成され、
前記制御回路の前記周波数再設定手段が、前記オフセット周波数が前記判定周波数範囲内にある場合に、前記第1分周器の設定を固定した状態で前記第2分周器の設定を変更して、前記発振周波数を前記特定値に調整することを特徴とする請求項1に記載の通信用回路装置。
【請求項3】
前記通信回路部が、
前記周波数変換回路から出力される中間周波信号を、前記通信回路部の外部回路に出力する出力回路と、
前記制御回路が前記周波数再設定手段により前記フラクショナルN型周波数シンセサイザの前記発振周波数を調整する際、前記周波数変換回路の後段に設置された後段回路の内、前記中間周波信号の前記中間周波数に応じて動作条件が変化する所定の後段回路の設定を、前記中間周波信号の周波数に応じて自動的に切り替える設定切り替え回路と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の通信用回路装置。
【請求項4】
前記通信回路部が、前記周波数変換回路の後段に、前記周波数変換回路の前記中間周波数を前記通信回路部の外部回路で利用可能な所定の周波数に変換する中間周波数変換回路を備えてなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1に記載の通信用回路装置。
【請求項5】
前記中間周波数変換回路が、前記中間周波信号をデジタル信号に変換した信号を受け付けて周波数変換を行うデジタル回路で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の通信用回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−88605(P2009−88605A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251695(P2007−251695)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】