説明

通信確立中の二重ネゴシエーションを回避するための方法および装置

ポイント・ツー・ポイント・プロトコル・セッションを確立した場合に、2つのピア間で交換される制御メッセージを監視する2つのピア(202,206)間で仲介者として機能するネットワーク要素(204)。このような制御メッセージ内の関連パラメータは、後で使用するために記憶される(612)。再送信制御メッセージを検出した場合(610)には、ネットワーク要素は、追加のネゴシエーション・ループが回避されるように、記憶しているパラメータに基づいて、再送信制御メッセージを処理する(618)。このようにして、リンクが同時に確立されないことによる、また異なるタイムアウト・タイマによる影響が、このネットワーク要素により緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、無線通信システムに関し、特に、二重ネゴシエーションを回避するこのようなシステムのポイント・ツー・ポイント・プロトコルに基づいて通信を確立するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、当業者にとって周知のものである。このようなシステムは、通常、インフラストラクチャとの無線通信中に、複数の移動電話加入者(MS)または通信装置を備える。当業者であれば周知のように、ポイント・ツー・ポイント・プロトコル(PPP)は、通常、2つのピアの間で通信を確立するために使用される。通常、ピアは、ピアが表示する物理プラットフォームにより実行される論理プロセスとして実施される。ピアツウピア通信が確立されると、1つまたはそれ以上の中間ネットワーク要素を通して、通信装置とインフラストラクチャ内で宛先ピアを実施している他のデバイスとの間でデータを転送することができる。図1にその様子を示す。
【0003】
より詳細に説明すると、図1は、いわゆる開放型システム間相互接続(OSI)モデルによるプロトコル・スタックを示す。この図は、通信装置用のプロトコル・スタック(左側)、ネットワーク要素(中央)、および網間接続装置(IWU)(右側)を示す。当業者であれば周知のように、プロトコル・スタック内の個々の層は、たとえ物理的ではなくても、他のプロトコル・スタックの対応するレベル内で論理的に終端している。例えば、ネットワーク要素とIWUとの間には、物理層102が位置する。同様に、ネットワーク要素と通信装置との間には異なる物理層プロトコル、特に、いわゆるIS95/IS2000プロトコルが実施されている。図1は、また、通常の当業者であれば周知の他のプロトコル層も示す。より詳細に説明すると、PPP層110は、通信装置およびIWUにより終端している。ネットワーク要素は、プロトコル・スタックの低い幾つかのレベルを能動的に変換しながら、ネットワーク要素は、太い矢印で示すように、PPP層110に関するデータをユーザに意識させないで移動することに留意されたい。通信装置およびIWUのところの各プロトコル・スタックの上位の層は、PPP層上に積み上げられている。例えば、インターネット・プロトコル(IP)層112および他の上位の層114は、ポイント・ツー・ポイント・プロトコル層110を通して情報を交換する。
【0004】
当業者であれば周知のように、PPP接続が確立されると、各ピアはリンク・パラメータの時間に敏感なネゴシエーションを行い、その後でデータの転送が行われる。図2は、最適なネゴシエーションの一例を示す。この図に示すように、通信装置202は、1つまたはそれ以上のネットワーク要素204を通してIWU206と通信する。図2の場合には、時間が上から下に進行することに留意されたい。理想的なシナリオの場合には、通信装置202とネットワーク要素204との間の通信リンク、並びにIWU206とネットワーク要素204との間の通信リンクは、図2の太い矢印で示すようにほぼ同時に確立される。その後で、ネゴシエーションは、図2に示すように、構成要求メッセージ(REQ)の各ピアによる送信、およびその後の肯定応答メッセージ(ACK)のタイムリーな送信を含む。この場合、要求メッセージを送信した後で、始動したタイムアウト・タイマが時間切れになる前に、その各目標により受信された場合には、肯定応答は、タイムリーに送信される。図2は、例示としてのタイムアウト・タイマ208の略図である。この場合、タイムアウト・タイマ208は、通信装置202がIWU206に構成要求を送信した直後に、通信装置202により始動する。通信装置が、タイムアウト・タイマ208の時間切れの前に、IWUが通信装置に送信した肯定応答を受信した場合には、通信装置に対するネゴシエーションの終了はすでに成功している。類似のプロセスが、それ自身のタイ
ムアウト・タイマ(図示せず)に基づいてIWU206に適用される。所与のピアがそのタイムアウト・タイマの時間切れの前に肯定応答を受信しなかった場合には、そのピアは、その構成要求を再度送信してネゴシエーションを再度スタートしようとする。従来、PPPは、物理接続が完全に確立した後で、ピア間でリンクが確立されるワイヤライン環境で、およびピア間の異なるタイムアウト・タイマによるすべての影響の尤度が比較的低い環境で使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、無線システムの現実の世界での実施の場合には、ピアとネットワーク要素との間のリンクは、いつでもほぼ同時に確立されるわけではない。その結果、要求/肯定応答の交換のタイミングが、追加の多くの場合複数のネゴシエーション・ループを実行しなければならない点で中断する場合がある。さらに、通信システム内の幾つかのピアを異なる持続時間のタイムアウト・タイマにより構成することができる。その結果、場合によっては、中間ネットワークを通しての要求および/または肯定応答の送信による予測できない遅延により、所与のタイムアウト・タイマがこのような遅延を許容するように構成されていないネゴシエーションが失敗に終わる場合がある。この場合も、この結果、通常、1つまたはそれ以上のネゴシエーション・ループが形成されることになる。このようなネゴシエーション・ループが発生すると、今度は、ピア間の通信を確立するのに必要なセットアップ時間が悪影響を受ける。通信システムの全体の品質が、部分的に通信が確立される速度により判断される限りは、複数のネゴシエーションが発生すると、通信システムのユーザが知覚する品質が低下することになる。それ故、それによりPPP通信が確立された場合に、二重ネゴシエーションが実質的に回避される技術を使用できれば有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リンク確立が同時に行われなくても、またはタイムアウト・タイマが異なる場合でも、二重ネゴシエーション・ループが実質的に回避されるようなPPPセッションを確立するための技術を提供する。この目的のために、2つのピア間の仲介者として機能するネットワーク要素は、2つのピア間で交換されるメッセージを監視する。ピア間の制御メッセージが識別および監視され、このような制御メッセージ内の関連パラメータが後で使用するために記憶される。制御またはデータ・メッセージを監視しても、メッセージがその元の宛先に転送されるのを防止することはできない。その後で、ネットワーク要素が制御メッセージの再送信を検出した場合は、ネットワーク要素は、追加のネゴシエーション・ループの発生が回避されるように、記憶しているパラメータに基づいて再送信された制御メッセージを処理する。この好ましい実施形態の場合には、ピアは、通信装置および網間接続装置を備えることができる。さらに、本発明の他の実施形態の場合には、二重ネゴシエーション・ループを回避するためにネットワーク要素が行う処理は、制御メッセージの再送信を廃棄するステップと、そうしたい場合には、再送信をスタートしたピアへの制御メッセージの再送信の肯定応答を送信するステップとを含む。この方法により、リンクの確立が同時に行われない影響およびタイムアウト・タイマが異なることによる影響が、ネットワーク要素により緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
さらに図3〜図8を参照することにより本発明をさらに分かり易く説明することができる。
図3を参照すると、この図は、本発明による無線通信システム300を示す。より詳細に説明すると、システム300は、無線リソース304を通して中間無線ネットワーク306と通信する複数の移動電話加入者または通信装置302を備える。任意の所与の呼の場合、中間ネットワーク306は、パケット・ネットワーク310または回線ネットワーク314と通信し、これらネットワークは、インターネットまたはワールド・ワイド・ウ
ェブのような公衆網350に接続することができる。図3の通信システム300は、通常、今日では、符号分割多元接続(CDMA)システムで使用される。しかし、本発明は、その用途がこのようなCDMAシステムに限定されないで、無線ピアとインフラストラクチャをベースとするピアとの間での通信を確立するためにPPPが使用される任意の無線通信システムに有利に適用することができる。
【0008】
通信装置302は、事実上任意の無線デバイスを備えることができるが、好ましい実施形態の場合には、車載送受信兼用無線機またはハンドヘルド無線電話のようなモバイル機器および/または携帯機器を備えることができる。しかし、通信装置302は、無線リソース304を通して中間ネットワーク306と通信する。この好ましい実施形態の場合には、無線リソース304は、CDMAプロトコルを実施するRFチャネルを備える。しかし、本発明はこれに限定されないし、無線リソース304は、周波数分割多元接続(FDMA)または時分割多元接続(TDMA)プロトコルのような当業者であれば周知の他のタイプのアクセス・プロトコルを実施する他のタイプの無線チャネルを備えることができる。
【0009】
中間ネットワーク306は、1つまたはそれ以上の基地局コントローラ324に結合している基地局トランシーバ・システム320の無線フロントエンドを備える。この場合、各基地局コントローラ324は、当業者であれば周知のように、移動交換センタ326に結合している。基地局トランシーバ・システム320、基地局コントローラ324および移動交換センタ326の構成および動作は当業者にとって周知のものであるので、これ以上の説明は省略する。図3にさらに示すように、基地局コントローラ324および移動交換センタ326は、それぞれ各記憶装置332、342に結合している1つまたはそれ以上のプロセッサ330、340を備える。プロセッサ330、340は、それぞれ1つまたはそれ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、これらの組合わせ、または通常の当業者であれば周知の他のこのようなデバイスを備えることができる。同様に、記憶装置332、342は、それぞれランダム・アクセス・メモリ(RAM)および/または読出専用メモリ(ROM)またはその等価物のような揮発性および不揮発性デジタル記憶素子を備えることができる。より詳細に説明すると、基地局コントローラ324および移動交換センタ326内に位置するプロセッサ/記憶装置の組合わせは、記憶装置332、342内に記憶していて、プロセッサ・プラットフォーム330、340により実行されるソフトウェア・アルゴリズムを実施するために使用することができる。
【0010】
図に示すように、基地局コントローラ324は、IWU308を備えるパケット・ネットワーク310に結合している。同様に、移動交換センタ326は、また、IWU312を備える回線交換網314に結合している。当業者であれば周知のように、IWUは、自分達が結合しているデバイス(例えば、基地局コントローラまたは移動交換センタ)とネットワーク間で通信を行うことができる。他の実施形態の場合には、IWU308、312は、PDSN(packet data serving node)またはアクセス・ゲートウェイのようなデバイスで実施することができる。これらのデバイスは通常の当業者にとって周知のものである。基地局コントローラ324または移動交換センタは、本発明を実施することができるネットワーク要素であることに留意されたい。最後に、パケットおよび回線交換網に常駐しているIWU308、312は、自分自身をインターネットまたはワールド・ワイド・ウェブのような公衆網350に結合することができる。
【0011】
すでに説明したように、通信装置302は、中間ネットワーク306を通してIWU308、312との通信を確立することができる。この目的のために、二方向初期化を必要とする任意のピアツウピア・プロトコルを備えるPPPを使用することができる。図4および図5は、それぞれ、同時にリンク確立ができないことによる、また異なるタイムアウ
ト・タイマによる問題、およびそのPPP確立に対するその影響をさらに図示している。
【0012】
図4を参照すると、この図はリンク確立が同時に行われなかった場合の問題を示すタイミング図である。(図4、図5、図7および図8においては、図4と同様に、時間が上から下に進行していることに留意されたい。)より詳細に説明すると、通信装置202は、ネットワーク要素204を通してIWU206との通信を確立しようとする。しかし、通信装置202は、太い矢印で示すように、IWU206とネットワーク要素204との間のリンクの後で、ネットワーク要素204へのリンクを実質的に確立させる。IWUとネットワーク要素との間のリンクは通信装置とネットワーク要素との間のリンクのかなり前に確立されるので、IWUは、そのピア・プロセスが初期化された後で要求402を送信する。この要求402は、通信装置に対するリンクが確立された直後に、通信装置に到着する。しかし、通信装置202のピア・プロセスは初期化の機会をまだ持っていないので、要求メッセージは無視される。IWUが、その送信した要求402に応じて、肯定応答の返送を待っている第1のタイムアウト・タイマ408をスタートすることに留意されたい。
【0013】
通信装置のピア・プロセスが初期化された後で、通信装置は、それ自身の要求メッセージ404をIWUに送信し、IWUが通信装置に肯定応答406を返送する。IWUの肯定応答406を受信した後で、通信装置は、IWUからの構成要求の受信をまだ行っていない第2のタイムアウト・タイマ410をスタートする。通信装置への到着が早すぎたために、元来IWUが送信した構成要求402が無視されたことを思い出されたい。第2のタイムアウト・タイマ410が時間切れになると、通信装置は、ネゴシエーション・プロセスを再スタートし、その構成要求412を再送信する必要があると見なす。同様に、第1のタイムアウト・タイマ408が時間切れになると、IWUはその構成要求414を再送信する。この時点で、各要求に対して肯定応答416、418が行われ、それによりネゴシエーション・ハンドシェイクが終了し、呼設定を引き続き行うことができる。しかし、構成要求412、414の再送信により要求した追加のネゴシエーション、およびその後の肯定応答416、418は、呼設定をかなり遅延している。ネゴシエーションの段階により、このような遅延を、例えば、100ミリ秒〜2秒というように、数ミリ秒から数秒程度にすることができる。
【0014】
図5を参照すると、この図は、個々のピアのところの幾つかのタイムアウト・タイマの持続時間の発生による問題を示すタイミング図である。この場合、通信装置202と、IWU206とネットワーク要素204との間のリンクは、図に示すように、ほぼ同時に確立される。同様に、通信装置とIWUの両方でピア・プロセスが初期化されると、構成要求502、504が各ピアにより他方に送信される。同様に、その後で、構成肯定応答506、508が、各要求502、504に応じて送信される。しかし、この場合、IWUが送信した肯定応答508は、通信装置が送信する肯定応答506と比較すると、送信時間が幾分長くかかる。待ち時間、無線周波損失による低い層の再送信、および処理遅延のような種々の理由が、肯定応答の送信の際のIWUによる長い遅延の原因になることがある。
【0015】
しかし、その対応する構成要求502、504を送信すると、各ピアも構成肯定応答の応答を待機しているタイムアウト・タイマをスタートする。しかし、この場合、通信装置の第1のタイムアウト・タイマ510の持続時間は、IWU内の第2のタイムアウト・タイマ512の持続時間より短い。そのため、通信装置が送信した肯定応答506は、第2のタイムアウト・タイマが時間切れになる前にIWUにより受信される。その結果、IWU内のピア・プロセスは、PPPの最初のリンク制御段階の初期化が成功したものと見なし、適当な要求516を発行することにより許可段階をスタートする。しかし、第1のタイムアウト・タイマ510の持続時間の方が短いので、IWUが送信した肯定応答508
は、図に示すように、第1のタイムアウト・タイマ510が時間切れになった後でだけ通信装置に到着することになる。これに応じて、通信装置はネゴシエーションを新たにスタートし、その構成要求514を再送信しようとする。その結果、PPPが確立される前に、少なくとも1つの追加のネゴシエーション・ループが発生し、それにより呼設定の遅延が起こる。図4および図5の両方のシナリオの場合、ネットワーク要素204は、ユーザに意識させない方法で各ピアに単に制御メッセージ(すなわち、構成要求および肯定応答)を送信するだけであることに留意されたい。すなわち、ネットワーク要素204は、制御メッセージの内容を知らない。図1はその様子を示す。この図においては、ピア(通信装置およびIWU)内の終端プロトコル層と交換したPPPメッセージは、変化しないでネットワーク要素を通過する。
【0016】
図6は、図4および図5の問題を防止するための方法のフローチャートである。図6の方法は、好適には、中間ネットワーク内に常駐するネットワーク要素が実行するソフトウェア・アルゴリズムとして実施することが好ましい。この好ましい実施形態の場合には、図6のプロセスは、上記のように、基地サイト・コントローラまたは移動交換センタにより行われる。図6のプロセスは、構成要求が再送信された時間を検出し、それに応じてもう1つのネゴシエーション・ループが形成されるのを回避するために適当な手段を講じる。図6の方法は、図4および図5の問題を各ピアに起因するものとして突き止める可能性を持つことに留意されたい。
【0017】
ブロック602からスタートして、ネットワーク要素は、ポイント・ツー・ポイント・プロトコル制御メッセージが第1のピアにより送信されたかどうかを判断するために、ピア間で交換したメッセージ、特に、例えば、構成要求のような第1のピアによるポイント・ツー・ポイント・プロトコル・セッションのネゴシエーション段階に関する制御メッセージを監視する。この目的のために、ネットワーク要素は、その宛先へポイント・ツー・ポイント・プロトコル・メッセージをユーザに意識させないで送るのではなく、代わりにピア内のPPP層宛のデータを含む任意のメッセージをチェックする。より詳細に説明すると、ネットワーク要素は、物理リンク(すなわち、MSとIWUとネットワーク要素との間の物理リンク)が確立した後で、監視をスタートする。その後で、ネットワーク要素は、制御メッセージまたはデータ・メッセージとして状態を表示するPPPヘッダを含むパケットを探して、通過する各パケットをチェックする。ブロック602において、第1のピアからの制御メッセージを検出できなかった場合には、データ・メッセージが送信されたことを意味するので、ブロック604のところで継続的に処理が行われ、ここでネットワーク要素は、通常数百ミリ秒程度の間、構成可能な所定の時間の間待機する。選択した特定の持続時間は、好適には、システム構成およびセットアップ中に行った最適化測定に基づいて選択することが好ましい。しかし、待機後に、ネットワーク要素は、ブロック606において、第2のピアから制御メッセージを受信したかどうかを判断する。受信していない場合には、データ・メッセージが第2のピアにより第1のピアに送信されたことを意味するので、ピア間にポイント・ツー・ポイント・プロトコル・セッションがすでに確立していると見なされ、プロセスは終了する。本発明の場合には、このことは、任意の記憶しているパラメータ(以下に説明する)が廃棄され、新しい呼がスタートするまで、制御メッセージの監視は行われないことを意味する。
【0018】
しかし、ブロック602において、第1のピアからの制御メッセージを検出した場合には、制御メッセージが、ポイント・ツー・ポイント・プロトコル構成要求であるかどうかを判断するために、ブロック608において継続して処理が行われる。制御メッセージが構成要求でない場合には、肯定応答であることを意味しているので、ブロック612において継続して処理が行われ、ここで肯定応答に含まれているパラメータが記憶され、その後で、肯定応答がその意図する宛先に転送される。実際には、肯定応答内のパラメータは、肯定応答する特定の構成要求を識別する。構成要求および肯定応答が含んでいる適当な
パラメータの例としては、識別、マジック番号、最大受信単位、アドレス・フィールド圧縮およびIPアドレス等がある。その後で、ブロック602で処理が再開され、ネットワーク要素は、制御メッセージに対する第1および第2のピア間のメッセージを監視する。
【0019】
制御メッセージが構成要求である場合には、ブロック610において継続して処理が行われ、ここで構成要求が前の構成要求の再送信であるかどうかの判断が行われる。そうでない場合には、構成要求は第1のピアが送信したこのような第1の要求であることを意味するので、ステップ602において継続して処理が行われる。参照番号602〜612で示すこれらのブロックの処理は、セッションがすでに確立していると判断されるか(例えば、両方のピアによるデータの送信により判断されたように)、または構成要求が第1または第2のピアにより再送信されるまで継続して行われる。ブロック610において、再送信した要求を第1または第2のピアからすでに受信していると判断した場合には、ブロック614において継続して処理が行われ、ここで再送信した構成要求に対応する肯定応答をすでに肯定応答したかどうかが判断される。肯定応答してない場合には、再送信した要求を発信しているピアは、他のピアからの構成要求の受信に失敗した後で、ネゴシエーションを再スタートしようとするか、または新しいネゴシエーションをスタートしようとしていることを意味するので、ブロック616において継続して処理が行われ、ここで再送信した要求が目的の宛先に転送される。
【0020】
しかし、すでに受信した再送信要求に対して肯定応答を行った場合には、ブロック618において継続して処理が行われ、ここでネットワーク要素は、その目的の宛先に再送信要求を単に送るのではなく、代わりに前に受信した肯定応答から記憶しているパラメータに基づいて再送信要求自身を処理する。この好ましい実施形態の場合には、ネットワーク要素は、再送信構成要求を処理する場合に、再送信要求を廃棄し、それにより再送信要求が目的の宛先に到着するのを防止し、ネットワーク要素は、そうしたい場合には(しかし、好適には)、再送信構成要求の送信側に肯定応答を返送する。このようにして、ネットワーク要素は、再送信構成要求の送信側が、必ずネゴシエーション・プロセスの終了に成功し、それにより追加のネゴシエーション・ループが形成されるのを回避するようにすることができる。図7および図8はこの様子をさらに図示している。
【0021】
図7および図8の円により概略示すように、本発明によるネットワーク要素は、ピア間で送信されるPPPメッセージを監視する。それ故、図7および図8の両方の場合、ネットワーク要素は、通信装置202が送信した構成要求に応じて、IWU206が送信した肯定応答に関連するパラメータを記憶する。その後で、ネットワーク要素は、通信装置による構成要求の再送信702を認識する。図7のシナリオの場合には、単に再送信要求702を廃棄する好適でない技術を示す。この場合、IWUは再送信要求702を決して受信しない。何故なら、ネットワーク要素は再送信要求がIWUによりすでに肯定応答済みであると判断するからである。その結果、要求を再送信したそれ自身の構成要求704が通信装置に再び送られる。何故なら、この構成要求に対しては前に肯定応答が行われていないからである。その後で、IWUからの再送信要求704が、通信装置により肯定応答706が行われる。対照的に、図8は、再送信要求の送信側、すなわち通信装置に、肯定応答802がネットワーク要素により返送される好ましい実施形態を示す。一般的に、構成要求をすでに再送信したピアの見地からいって、ハンドシェイク・プロトコルをきちんと終了させるために、再送信要求に対して肯定応答を行うことが好ましい。
【0022】
本発明を使用すれば、無線ネットワーク内にPPPセッションを確立する場合、二重ネゴシエーション・ループまたはハンドシェイクを回避することができる。制御メッセージについて2つのピア間で交換されるメッセージを監視することにより、また関連パラメータを記憶することにより、本発明は、中間ネットワーク要素に二重ネゴシエーションを起こす恐れがある再送信構成要求の発生を認識させ、追加のネゴシエーション・ループの発
生を回避するように、記憶しているパラメータに基づいて再送信要求を処理させることができる。このようにして、リンクの確立が同時に行われない場合の影響、異なるタイムアウト・タイマによる影響がネットワーク要素により緩和される。
【0023】
特定の実施形態を参照しながら本発明を今まで説明してきた。しかし、通常の当業者であれば、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなしに、種々の修正および変更を行うことができることを理解することができるだろう。それ故、本明細書および図面は例示としてのものであって、本発明を制限するものではないと見なすべきである。またすべてのこのような修正は、本発明の範囲内に含まれる。
【0024】
特定の実施形態を参照しながら、本発明の利益、他の利点および問題の解決方法について説明してきた。しかし、上記利益、利点、問題の解決方法、および何らかの利益、利点または解決方法をもたらしたり、より優れたものにすることができる任意の要素は、任意のまたはすべての請求項の重要な、必要なまたは本質的な機能または要素と解釈すべきではない。本明細書で使用する場合、「備える」、「備えている」または任意の他の派生語は、要素のリストを備えるプロセス、方法、物品または装置が、これらの要素を含むばかりでなく、リストに明示されていないか、またはこのようなプロセス、方法、物品または装置固有の他の要素を含むことができるように、非排他的な内容を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術による通信システムの種々の要素内のプロトコル・スタック間の関係の略図。
【図2】ポイント・ツー・ポイント・プロトコルの最適なネゴシエーションを示すタイミング図。
【図3】本発明による無線通信システムのブロック図。
【図4】通信リンクが同時に確立しなかった場合の二重ネゴシエーションの発生を示すタイミング図。
【図5】異なるタイムアウト・タイマによる二重ネゴシエーションの発生を示すタイミング図。
【図6】本発明によるピアツウピア通信を確立した場合に、二重ネゴシエーションを回避するための方法を示すフローチャート。
【図7】本発明の動作の他の実施形態を示すタイミング図。
【図8】本発明の動作の他の実施形態を示すタイミング図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインフラストラクチャ要素を備える中間ネットワークを横切って相互に通信する少なくとも2つのピアを備える通信システムにおいて、前記少なくとも2つのピアのうちの2つのピア間に通信を確立するために、前記少なくとも1つのインフラストラクチャ要素のうちのインフラストラクチャ要素のための方法であって、
制御メッセージについて前記2つのピア間で交換されるメッセージの少なくとも一部を監視するステップと、
記憶しているパラメータを供給するために、前記2つのピア間で交換される前記制御メッセージに対応する少なくとも幾つかのパラメータを記憶するステップと、
前記2つのピアのうちの一方からの、前記2つのピア間に二重ネゴシエーションを発生する制御メッセージの再送信の発生を検出するステップと、
前記二重ネゴシエーションを回避するように、前記記憶しているパラメータに基づいて前記制御メッセージの再送信を処理するステップとを備える方法。
【請求項2】
前記通信システムが、無線通信システムを備え、前記少なくとも2つのピアが、前記中間ネットワークを通して少なくとも1つの網間接続装置と通信する少なくとも1つの無線通信装置を備え、前記制御メッセージが、少なくとも1つの無線通信装置のうちの無線通信装置から送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通信システムが、無線通信システムを備え、前記少なくとも2つのピアが、前記中間ネットワークを通して少なくとも1つの網間接続装置と通信する少なくとも1つの無線通信装置を備え、前記制御メッセージが、前記少なくとも1つの網間接続装置のうちの網間接続装置から送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記制御メッセージの再送信を検出する前に、
前記2つの各ピアによるデータの送信を検出するステップと、
前記2つの各ピアによるデータの送信の検出に応じて前記記憶しているパラメータを廃棄するステップとをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのインフラストラクチャ要素を備える中間ネットワークを横切って相互に通信する少なくとも2つのピアを備える通信システムにおいて、前記少なくとも2つのピアのうちの第1のピアと第2のピアとの間に通信を確立するための前記少なくとも1つのインフラストラクチャ要素のうちのインフラストラクチャ要素のための方法であって、
前記第1のピアから、前記第2のピア宛の要求制御メッセージを受信するステップと、
記憶している要求制御メッセージ・パラメータを供給するために、前記要求制御メッセージからパラメータを記憶するステップと、
前記第2のピアに前記要求制御メッセージを転送するステップと、
前記第1のピアから、前記第2のピア宛の前記要求制御メッセージの再送信を受信するステップと、
前記記憶している要求制御メッセージ・パラメータに基づいて、前記要求制御メッセージの再送信を処理するステップとを備える方法。
【請求項6】
前記制御メッセージの再送信の処理が、前記制御メッセージの再送信を廃棄するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記制御メッセージの再送信の処理が、前記制御メッセージの再送信に対して肯定応答を行うステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の要求制御メッセージの再送信を受信する前に、
前記第1および第2の各ピアによるデータの送信を検出するステップと、
前記第1および第2のピアによるデータの送信の検出に応じて、前記記憶している要求制御メッセージ・パラメータを廃棄するステップとをさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
通信システムの一部を形成している中間ネットワークで使用するための装置であって、前記通信システムが、前記中間ネットワークを横切って相互に通信する少なくとも2つのピアを備え、前記装置が、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つの記憶装置とを備え、前記記憶装置が、前記少なくとも1つのプロセッサに結合していて、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、
制御メッセージのために前記少なくとも2つのピアのうちの2つのピア間で交換されるメッセージの少なくとも一部を監視させ、
前記少なくとも1つの記憶装置内に、記憶しているパラメータを供給するために、前記2つのピア間で交換される前記制御メッセージに対応する少なくとも幾つかのパラメータを記憶させ、
前記制御メッセージの再送信が、前記2つのピア間に二重ネゴシエーションが発生する恐れがある場合に、前記2つのピアのうちの一方からの制御メッセージの再送信の発生を検出させ、
前記二重ネゴシエーションを回避するように、前記記憶しているパラメータに基づいて前記制御メッセージの再送信を処理させる
命令をその上に記憶している装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの記憶装置が、前記少なくとも1つのプロセッサが実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記制御メッセージの再送信を廃棄することにより前記制御メッセージの再送信を処理させる
命令をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの記憶装置が、前記少なくとも1つのプロセッサにより実行された場合に、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記制御メッセージの再送信に対して肯定応答を行うことにより、前記制御メッセージの再送信を処理させる
命令をさらに備える、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−508552(P2006−508552A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−570542(P2003−570542)
【出願日】平成15年1月13日(2003.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/001007
【国際公開番号】WO2003/071765
【国際公開日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】