説明

通信装置、通信方法、プログラムおよび通信システム

【課題】開発コストを抑制しつつ、電界結合または磁界結合に基づくデータ通信の通信相手を制限することが可能な技術を提供すること。
【解決手段】表示部36と;表示部36に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部32と;通信相手との電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および通信相手との通信方式によるデータ通信を制御する近距離無線通信制御部50と;を備える。近距離無線通信制御部50は、通信相手から接続確立通信時に送信される信号を受信すると、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されているか否かを判断し、表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、通信相手とのデータ通信を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法、プログラムおよび通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)802.11に規定される電波通信方式が広く普及している。かかる電波通信方式においては、アンテナを利用して無線電波が送受信されるが、当該無線電波が周囲で送受信される無線電波と干渉し、通信に悪影響を及ぼす場合があった。
【0003】
また、電波通信方式以外にも、電界結合や磁界結合を利用して通信を行う近距離無線通信方式が提案されている。かかる近距離無線通信方式においては、例えば、磁界結合を行なう複数の通信装置が近接されると、複数の通信装置が磁界結合し、磁界結合により複数の通信装置間での通信が実現される。このように、電界結合や磁界結合に基づく近距離無線通信方式によれば、通信相手が近接しない場合には信号が送信されないため、干渉の問題が生じ難い点で電波通信方式より有利である。磁界結合により通信を行う技術については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−60283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電界結合や磁界結合に基づく近距離無線通信方式においては、2の通信装置の近接により通信が開始されるため、1の通信装置が、意図しない通信相手である他の通信装置からデータを送り込まれてしまったりするという問題があった。また、1の通信装置が、意図しない通信相手である通信装置にデータを盗まれてしまったりすることがあるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、開発コストを抑制しつつ、電界結合または磁界結合に基づくデータ通信の通信相手を制限することが可能な、新規かつ改良された技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、表示部と;表示部に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部と;記憶部が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されている場合には表示部に表示処理を実行させ、表示状態情報に表示非実行指示が設定されている場合には表示部に表示処理を実行させない表示制御部と;通信相手との電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および通信相手との通信方式によるデータ通信を制御する通信制御部と;を備える通信装置が提供される。より詳細には、通信制御部は、通信相手から接続確立通信時に送信される信号を受信すると、記憶部が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されているか否かを判断し、表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、通信相手とのデータ通信を行わないものである。
【0008】
上記した表示状態情報には、表示実行指示と表示非実行指示と表示実行指示が設定されている場合における表示処理の実行時に消費される電力よりも低い消費電力を使用した省電力モードで表示処理を実行させる旨を示す情報である省電力表示実行指示とのうちのいずれかが設定され、表示制御部は、記憶部が記憶する表示状態情報に省電力表示実行指示が設定されている場合には省電力モードで表示部に表示処理を実行させ、通信制御部は、記憶部が記憶する表示状態情報に表示非実行指示または省電力表示実行指示が設定されているか否かを判断し、表示非実行指示または省電力表示実行指示が設定されていると判断した場合には、通信相手とのデータ通信を行わないこととしてもよい。
【0009】
上記した通信装置は、表示処理の実行を中断する旨を示す情報である表示中断指示または表示処理の実行を再開する旨を示す情報である表示再開指示の入力をユーザから受け付けることが可能である操作部と;操作部が表示中断指示の入力を受け付けた場合には記憶部が記憶する表示状態情報に表示非実行指示を設定し、操作部が表示再開指示の入力を受け付けた場合には記憶部が記憶する表示状態情報に表示実行指示を設定する表示状態切り替え部と;をさらに備えることとしてもよい。
【0010】
上記した記憶部は、閾値をさらに記憶し、上記した表示状態切り替え部は、操作部が最後にユーザから操作情報の入力を受け付けた時刻から経過した時間である経過時間を計測し、経過時間が閾値を超えた場合に記憶部が記憶する表示状態情報に表示非実行指示を設定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、開発コストを抑制しつつ、電界結合または磁界結合に基づくデータ通信の通信相手を制限することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
また、以下に示す項目順序に従って当該「発明を実施するための最良の形態」を説明する。
〔1〕本実施形態の概要
〔2〕本実施形態に至る経緯
〔3〕本実施形態の詳細な説明
〔3−1〕携帯電話のハードウェア構成
〔3−2〕携帯電話の機能
〔3−3〕携帯電話の動作
(動作例)
〔4〕まとめ
【0014】
〔1〕本実施形態の概要
まず、図1を参照し、本発明の一実施形態にかかる通信システム1の概要を説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる通信システム1を示した説明図である。図1に示したように、本実施形態にかかる通信システムは、一対の携帯電話20Aおよび20B(通信装置)からなる。携帯電話20Aおよび20Bは、相互に電界結合することが可能な電界カプラと呼ばれる電極板を備える。携帯電話20Aおよび20Bの双方の電界カプラが例えば3cm以内に近接されると、一方の電界カプラにより発生される誘導電界の変化を他方の電界カプラが感知することにより、携帯電話20Aおよび20Bの間での電界通信が実現される。
【0016】
より具体的には、上記電界通信を行う一対の機器は、一方がイニシエータ(Initiator)として機能し、他方がレスポンダ(Responder)として機能する。イニシエータは接続確立要求を行なう側であり、レスポンダはイニシエータからの接続確立要求を待ち受ける側である。
【0017】
例えば、図1に示した携帯電話20Bがイニシエータとして機能し、携帯電話20Aがレスポンダとして機能する場合、携帯電話20Aおよび20Bが近接されると、携帯電話20Bから送信される接続確立要求を携帯電話20Aが受信する。そして、携帯電話20Aにより接続確立要求が受信されると、携帯電話20Aおよび20Bが接続確立処理の一例としての認証処理を行い、認証処理が正常に終了すると携帯電話20Aおよび20Bがデータ通信可能な状態に接続される。認証処理としては、例えば、ソフトウェアのバージョンや、有するプロトコルを示すエミュレーション方式が携帯電話20Aおよび20Bで一致するか否かの確認などがあげられる。
【0018】
その後、携帯電話20Aおよび20Bが1対1でデータ通信を行う。より詳細には、携帯電話20Bが任意のデータを電界カプラにより携帯電話20Aへ送信する。または、携帯電話20Aが任意のデータを電界カプラにより携帯電話20Bへ送信する。任意のデータとしては、音楽、講演およびラジオ番組などの音楽データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、文書、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどがあげられる。
【0019】
アンテナから放射される電波が距離の2乗に反比例して減衰するのに対し、このような電界カプラから発生される誘導電界の強度は距離の4乗に反比例するため、電界通信が可能な一対の携帯電話20間の距離を制限できる点で有利である。すなわち、当該電界通信によれば、周囲に存在する障害物による信号の劣化が少ない、ハッキングや秘匿性を確保するための技術を簡素化できるなどの効果が得られる。
【0020】
また、アンテナから放射される電波は、電波の進行方向と直交方向に振動する横波成分を有し、偏波がある。これに対し、電界カプラは、進行方向に振動する縦波成分を有し、偏波がない誘導電界を発生するため、一対の電界カプラの面が対向していれば受信側で信号を受信できる点でも利便性が高い。
【0021】
なお、本明細書においては、一対の携帯電話20が電界カプラを利用して近距離無線通信(非接触通信)を行う例に重きをおいて説明するが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、一対の携帯電話20は、磁界結合により通信可能な通信部を介して近距離無線通信を行うことも可能である。また、携帯電話20Aおよび20Bは、電話通信やメール通信を行うことも可能である。
【0022】
また、図1においては通信装置の一例として携帯電話20Aおよび20Bを示しているに過ぎず、本発明はかかる例に限定されない。例えば、通信装置は、PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。
【0023】
〔2〕本実施形態に至る経緯
以上説明したように、近距離無線通信においては、一対の携帯電話20Aおよび20B間のデータ通信が、携帯電話20Aおよび20Bの近接により開始される。このため、近距離無線通信においては、ユーザの利便性を向上できる反面、ユーザの意図しないデータ通信が行われてしまうことが予想された。
【0024】
例えば、満員電車に乗っているユーザが、本実施形態に関連する携帯電話を所有している場合、当該ユーザの知らぬ間に当該ユーザの携帯電話と第三者の携帯電話とが近接され、当該ユーザの携帯電話にデータが送り込まれてしまうという問題があった。または、当該ユーザの知らぬ間に、当該ユーザの携帯電話のデータが第三者の携帯電話により取得されてしまうという問題があった。
【0025】
そこで、上記事情を一着眼点にして本実施形態にかかる携帯電話20を創作するに至った。本実施形態にかかる携帯電話20によれば、ユーザの意図しないデータ通信が行われてしまう場合を防止することができる。以下、このような本実施形態にかかる携帯電話20について詳細に説明する。
【0026】
〔3〕本実施形態の詳細な説明
〔3−1〕携帯電話のハードウェア構成
まず、図2を参照し、本実施形態にかかる携帯電話20のハードウェア構成について説明する。
【0027】
図2は、携帯電話20のハードウェア構成を示したブロック図である。携帯電話20は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、ブリッジ205と、外部バス206と、インタフェース207と、入力装置208と、出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、通信装置215とを備える。
【0028】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って携帯電話20内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。
【0029】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0030】
入力装置208は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。携帯電話20のユーザは、該入力装置208を操作することにより、携帯電話20に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0031】
出力装置210は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Display)装置およびランプなどの表示装置と、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置で構成される。出力装置210は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。
【0032】
ストレージ装置211は、データ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置211は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0033】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、携帯電話20に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203に出力する。
【0034】
通信装置215は、例えば、通信網12に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。具体的には、通信装置215は、電話通信およびメール通信などを行うためのアンテナ(図3におけアンテナ42)や無線チップなどの装置、および近距離無線通信を行うための電界カプラ(図3における電界カプラC)などに該当する。
【0035】
〔3−2〕携帯電話の機能
以上、図2を参照して本実施形態にかかる携帯電話20のハードウェア構成について説明した。続いて、図3〜図6を参照し、当該携帯電話20の機能について説明する。
【0036】
図3は、本実施形態にかかる携帯電話20の構成を示した機能ブロック図である。図3に示したように、本実施形態にかかる携帯電話20は、記憶部32と、操作部34と、表示部36と、通話制御部38と、アンテナ42と、近距離無線通信制御部50と、アプリケーション60と、電界カプラCと、を備える。
【0037】
記憶部32は、受信データなどを記憶する記憶装置である。また、記憶部32は、表示部36に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である。記憶部32は、閾値をさらに記憶することとしてもよい。
【0038】
表示状態情報には、表示実行指示と表示非実行指示と省電力モードで表示処理を実行させる旨を示す情報である省電力表示実行指示とのうちのいずれかが設定されることとしてもよい。省電力モードとは、表示実行指示が設定されている場合における表示処理の実行時に消費される電力よりも低い消費電力を使用したモードのことを意味する。
【0039】
なお、記憶部32は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリや、ハードディスクおよび円盤型磁性体ディスクなどの磁気ディスクや、CD−R(Compact Disc Recordable)/RW(ReWritable)、DVD−R(Digital Versatile Disc Recordable)/RW/+R/+RW/RAM(Ramdom Access Memory)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))―R/BD−REなどの光ディスクや、MO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体であってもよい。
【0040】
操作部34(例えば、図2に示した入力装置208に対応)は、携帯電話20とユーザとのインタフェースである。ユーザは、かかる操作部34を操作することにより、携帯電話20へ各種データや各種指示を入力することができる。また、操作部34は、表示処理の実行を中断する旨を示す情報である表示中断指示または表示処理の実行を再開する旨を示す情報である表示再開指示の入力をユーザから受け付けることが可能である。
【0041】
表示部36(例えば、図2に示した出力装置210に対応)は、操作部34へのユーザ操作に応じた画面や、着信時には発信者を示す画面を表示する。
【0042】
表示制御部37は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されている場合には表示部36に表示処理を実行させるものである。また、表示制御部37は、表示状態情報に表示非実行指示が設定されている場合には表示部36に表示処理を実行させないものである。ここで、表示処理は、例えば、記憶部32が記憶する表示対象データを表示部36に表示することをいうものとする。
【0043】
また、表示制御部37は、記憶部32が記憶する表示状態情報に省電力表示実行指示が設定されている場合には省電力モードで表示部36に表示処理を実行させることとしてもよい。
【0044】
通話制御部38は、他の通信装置との電話通信を制御するものである。例えば、通話制御部38は、マイクロホンにより得られたユーザの音声データをアンテナ42から送信可能な形式に変換し、他の通信装置へアンテナ42から送信させる。また、通話制御部38は、アンテナ42により受信された音声データの復調、および復号などを行なう。
【0045】
表示状態切り替え部39は、操作部34が表示中断指示の入力を受け付けた場合には記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示を設定するものである。また、表示状態切り替え部39は、操作部34が表示再開指示の入力を受け付けた場合には記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示を設定するものである。
【0046】
表示状態切り替え部39は、操作部34が最後にユーザから操作情報の入力を受け付けた時刻から経過した時間である経過時間を計測することとしてもよい。その場合、表示状態切り替え部39は、その経過時間が閾値を超えた場合に記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示を設定することとしてもよい。
【0047】
アンテナ42は、他の通信装置とのインタフェースであって、他の通信装置から電磁波により送信された音声データを受信したり、他の通信装置へ電磁波により音声データを送信したりする。
【0048】
電界カプラCは、「〔1〕本実施形態の概要」において説明したように、近接された通信装置の電界カプラと電界結合により通信を行う通信部として機能する。
【0049】
近距離無線通信制御部50は、他の通信装置との電界結合に基づく近距離無線通信(通信方式)を制御する通信制御部として機能する。例えば、近距離無線通信制御部50は、アプリケーション60から供給されるデータを電界カプラCから送信させたり、電界カプラCにより受信されたデータを記憶部32へ供給したりする。以下、図4を参照し、近距離無線通信制御部50の機能について詳細に説明する。
【0050】
図4は、近距離無線通信制御部50の構成を示した機能ブロック図である。図4に示したように、近距離無線通信制御部50は、送信バッファ104と、送信処理部108と、受信処理部112と、受信バッファ116と、セレクタ124と、接続確立処理部130と、を備える。
【0051】
送信バッファ104は、電界カプラCから他の通信装置へ転送するための転送データ(送信データ)を保持する記憶媒体である。転送データは、例えば、記憶部32から供給される。
【0052】
送信処理部108は、送信バッファ104から入力される転送データ、または接続確立処理部130から入力される接続確立要求などの接続用データを、電界カプラCから送信可能な信号形式に変換するための信号処理を行う。
【0053】
受信処理部112は、電界カプラCにより受信されたデータの復号処理を行う。例えば、受信処理部112は、高周波信号として電界カプラCにより受信されたデータをベースバンド信号にダウンコンバージョンし、コンスタレーションに基づいてビット列を得てもよい。
【0054】
受信バッファ116は、受信処理部112により復号されたデータを保持する記憶媒体である。受信バッファ116に保持されたデータは、例えば、記憶部32へ供給される。
【0055】
セレクタ124は、電界カプラCと、送信処理部108または受信処理部112のいずれかを選択的に接続する。より詳細には、携帯電話20の送信時には電界カプラCがセレクタ124により送信処理部108と接続され、受信時には電界カプラCがセレクタ124により受信処理部112と接続される。
【0056】
接続確立処理部130は、携帯電話20と他の通信装置の間でデータ通信を行なうに際して必要になる接続確立処理(接続確立通信)を行う。例えば、接続確立処理部130は、携帯電話20がイニシエータとして機能する場合、接続確立要求を送信処理部108へ出力し、他の通信装置と電界カプラCが近接された場合に電界カプラCから接続確立要求を送信させる。
【0057】
また、接続確立処理部130は、レスポンダとして機能する場合、他の通信装置から接続確立要求を受信すると、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されているか否かを判断する。接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、他の通信装置からの接続確立要求を拒否し、他の通信装置との通信を終了する。
【0058】
一方、接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されていると判断した場合には、接続確立要求に応答するACKを、送信処理部108を介して他の通信装置へ送信する。なお、接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示または省電力表示実行指示が設定されているか否かを判断することとしてもよい。この場合には、接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示または省電力表示実行指示が設定されていると判断した場合に、他の通信装置からの接続確立要求を拒否し、他の通信装置との通信を終了することとしてもよい。また、このように接続確立要求およびACKの送受信を含む一連の通信を接続確立通信と称する場合もある。
【0059】
そして、他の通信装置は、携帯電話20からACKを受信すると、携帯電話20へのデータ送信を開始することができる。ここで、他の通信装置は、データに自装置の連絡先情報および現在時刻を付加して送信してもよい。この場合、携帯電話20は、受信したデータと、当該データに付加された連絡先情報および現在時刻とを対応付けて記憶部32に供給してもよい。かかる構成によれば、携帯電話20は、受信したデータごとに、いつ、誰から送信されたかを把握することが可能となる。
【0060】
〔3−3〕携帯電話の動作
以上、図3〜図4を参照し、本実施形態にかかる携帯電話20の機能について説明した。続いて、図5を参照し、本実施形態にかかる携帯電話20において実行される通信方法を説明する。
【0061】
(動作例)
図5は、本実施形態にかかる携帯電話20の動作例の流れを示したシーケンス図である。まず、図5に示したように、イニシエータとして機能する携帯電話20Aは、レスポンダとして機能する携帯電話20Bと近接されると、接続確立要求を送信する(S204)。携帯電話20Bの接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されているか否かを判断する。(S208)。
【0062】
そして、携帯電話20Bの接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示非実行指示が設定されていると判断した場合(S208で「YES」)、携帯電話20Aからの接続確立要求を拒否する(S212)。すなわち、携帯電話20Bの接続確立処理部130は、携帯電話20Aとの通信を終了する。なお、携帯電話20Bの接続確立処理部130は、携帯電話20Aからの接続確立要求を拒否する場合、その旨を示す応答を送信処理部108から送信させてもよい。
【0063】
一方、携帯電話20Bの接続確立処理部130は、記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されていると判断した場合(S208で「NO」)、接続確立要求に応答するACKを送信処理部108から携帯電話20Aへ送信させる(S216)。携帯電話20Aは、携帯電話20BからACKを受信すると、携帯電話20Bへのデータ送信を開始する(S220)。
【0064】
以上説明したように、本実施形態にかかる携帯電話20の動作例によれば、レスポンダとして機能する携帯電話20Bを他の通信装置と通信可能とするときを、携帯電話20Aの記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されていると判断した場合に制限することができる。したがって、携帯電話20Bのユーザの知らぬ間に、第三者の通信装置から携帯電話20Bへデータが送り込まれてしまうことや、携帯電話20Bのデータを第三者の通信装置に盗まれてしまうことを防止することができる。
【0065】
〔4〕まとめ
以上説明したように、本実施形態にかかる携帯電話20は、近距離無線通信によるデータ通信を可能とするときを、携帯電話20Aの記憶部32が記憶する表示状態情報に表示実行指示が設定されていると判断した場合に制限することができる。したがって、例えば満員電車において携帯電話20へ第三者の通信装置が近接された場合であっても、第三者の通信装置から携帯電話20へデータ(例えば、ユーザの不要な広告データ、有害データなど)が送り込まれてしまう場合を防止することができる。同様に、本実施形態によれば、携帯電話20のユーザの知らぬ間に、第三者の通信装置により携帯電話20のデータが取得されてしまう場合を防止することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、携帯電話20が元々保持している表示部36による表示処理が行われているか否かという情報に基づいて近距離無線通信による通信相手を制限することができる。すなわち、本実施形態によれば、通信相手を制限するために表示部36による表示処理が行われているか否かという情報を使用すればよいので、通信相手を制限する新たな機能を携帯電話20に追加するに際して、開発コストを抑制することができる。
【0067】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
また、「〔3−3〕携帯電話の動作」においては、イニシエータとして機能する携帯電話20からデータが送信される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図5に示したレスポンダとして機能する携帯電話20Bは、S216におけるACKの送信の後、携帯電話20Aへのデータ送信を開始してもよい。
【0069】
また、本明細書の携帯電話20の処理における各ステップは、必ずしもシーケンス図として記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、携帯電話20の処理における各ステップは、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)を含んでもよい。
【0070】
また、携帯電話20に内蔵されるCPU201、ROM202およびRAM203などのハードウェアを、上述した携帯電話20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。また、図3および図4の機能ブロック図で示したそれぞれの機能ブロックをハードウェアで構成することで、一連の処理をハードウェアで実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態にかかる通信システムを示した説明図である。
【図2】携帯電話のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態にかかる携帯電話の構成を示した機能ブロック図である。
【図4】近距離無線通信制御部の構成を示した機能ブロック図である。
【図5】本実施形態にかかる携帯電話の動作例の流れを示したシーケンス図である。
【符号の説明】
【0072】
1 通信システム
12 通信網
20(20A、20B) 携帯電話
24 リムーバブル記録媒体
32 記憶部
34 操作部
36 表示部
37 表示制御部
38 通話制御部
39 表示状態切り替え部
42 アンテナ
50 近距離無線通信制御部
104 送信バッファ
108 送信処理部
112 受信処理部
116 受信バッファ
124 セレクタ
130 接続確立処理部
201 CPU
202 ROM
203 RAM
204 ホストバス
205 ブリッジ
206 外部バス
207 インタフェース
208 入力装置
210 出力装置
211 ストレージ装置
212 ドライブ
215 通信装置
C 電界カプラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と;
前記表示部に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または前記表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部と;
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させ、前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させない表示制御部と;
通信相手との電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および前記通信相手との前記通信方式によるデータ通信を制御する通信制御部と;
を備え、
前記通信制御部は、
前記通信相手から前記接続確立通信時に送信される信号を受信すると、前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されているか否かを判断し、前記表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、前記通信相手との前記データ通信を行わない、通信装置。
【請求項2】
前記表示状態情報には、
前記表示実行指示と前記表示非実行指示と前記表示実行指示が設定されている場合における前記表示処理の実行時に消費される電力よりも低い消費電力を使用した省電力モードで前記表示処理を実行させる旨を示す情報である省電力表示実行指示とのうちのいずれかが設定され、
前記表示制御部は、
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記省電力表示実行指示が設定されている場合には前記省電力モードで前記表示部に前記表示処理を実行させ、
前記通信制御部は、
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示または前記省電力表示実行指示が設定されているか否かを判断し、前記表示非実行指示または前記省電力表示実行指示が設定されていると判断した場合には、前記通信相手との前記データ通信を行わない、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記表示処理の実行を中断する旨を示す情報である表示中断指示または前記表示処理の実行を再開する旨を示す情報である表示再開指示の入力をユーザから受け付けることが可能である操作部と;
前記操作部が前記表示中断指示の入力を受け付けた場合には前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示を設定し、前記操作部が前記表示再開指示の入力を受け付けた場合には前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示実行指示を設定する表示状態切り替え部と;
をさらに備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記記憶部は、
閾値をさらに記憶し、
前記表示状態切り替え部は、
前記操作部が最後にユーザから操作情報の入力を受け付けた時刻から経過した時間である経過時間を計測し、前記経過時間が前記閾値を超えた場合に前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示を設定する、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
表示部と、
前記表示部に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または前記表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させ、前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させない表示制御部と、
通信相手との電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および前記通信相手との前記通信方式によるデータ通信を制御する通信制御部と、
を備える通信装置の前記通信制御部が、
前記通信相手から前記接続確立通信時に送信される信号を受信するステップと;
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されているか否かを判断するステップと;
前記表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、前記通信相手との前記データ通信を行わないステップと;
を含む、通信方法。
【請求項6】
コンピュータを、
表示部と;
前記表示部に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または前記表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部と;
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させ、前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させない表示制御部と;
通信相手との電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および前記通信相手との前記通信方式によるデータ通信を制御する通信制御部と;
を備え、
前記通信制御部は、
前記通信相手から前記接続確立通信時に送信される信号を受信すると、前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されているか否かを判断し、前記表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、前記通信相手との前記データ通信を行わない、通信装置として機能させるための、プログラム。
【請求項7】
表示部、
前記表示部に表示処理を実行させる旨を示す情報である表示実行指示または前記表示処理を実行させない旨を示す情報である表示非実行指示が設定される表示状態情報を記憶することが可能である記憶部、
前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させ、前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されている場合には前記表示部に前記表示処理を実行させない表示制御部、
電界結合または磁界結合に基づく通信方式による接続確立通信および前記通信方式によるデータ通信を制御する通信制御部、
を有する第1の通信装置と;
前記接続確立通信時に信号を送信する第2の通信装置と;
を備え、
前記通信制御部は、前記第2の通信装置から前記接続確立通信時に送信される信号を受信すると、前記記憶部が記憶する前記表示状態情報に前記表示非実行指示が設定されているか否かを判断し、前記表示非実行指示が設定されていると判断した場合には、前記第2の通信装置との前記データ通信を行わない、通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−161509(P2010−161509A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1157(P2009−1157)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】