通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法
【課題】プリント基板へのシールドケースの実装において、プリント基板上でシールドケースが占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することにより、小型化を可能とした通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法を提供すること。
【解決手段】プリント基板に対して、シールドケースの外縁に沿って、プリント基板とシールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布する。シールドケースを半田付けして固定する際は、予備半田を壁として利用し、シールドケースの側面が予備半田に突き当たることで位置決めを行う。
【解決手段】プリント基板に対して、シールドケースの外縁に沿って、プリント基板とシールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布する。シールドケースを半田付けして固定する際は、予備半田を壁として利用し、シールドケースの側面が予備半田に突き当たることで位置決めを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、高周波回路装置、無線通信端末に関し、特に、それらが備えるプリント基板へのシールドケースの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルコードレス電話をはじめ高周波無線通信を行う通信機器が普及している。そのような通信機器に搭載されるプリント基板において、外部への放射ノイズや外部からの外来ノイズを遮蔽するため、シールドケースが用いられる。また、通信機器の小型化、回路の集積化が進んでおり、より高密度、高精度な実装技術が要求されている。
【0003】
下記の特許文献1、2には、基板へのシールドケースの半田付けによる実装に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133786号公報
【特許文献2】特開2005−79458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示された技術では、下面が開口した箱形のシールドケースの側面下部を外側に折り曲げた、L字状の脚部が形成される。しかしながら、L字状の脚部は基板と面で接触するため、基板上でシールドケースの占める面積が大きくなり、小型化の観点から見て望ましくない。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑み提案されたものである。本発明は、プリント基板へのシールドケースの実装において、プリント基板上でシールドケースが占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することにより、小型化を可能とした通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る通信装置は、電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る通信装置は、請求項1の通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺上に、前記プリント基板を貫通して形成された位置決め孔を有し、前記シールドケースは、前記位置決め孔と対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された位置決め突起を有し、前記位置決め突起が前記位置決め孔に挿入されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る通信装置は、請求項2の通信装置において、前記位置決め孔は真円であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る通信装置は、請求項2の通信装置において、前記位置決め孔は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺のうち少なくとも一辺については複数形成され、前記シールドケースの側面下端と接触する辺を挟むように複数の位置決め孔は中心位置が該辺に対してずらされて配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る通信装置は、請求項1乃至4のいずれかの通信装置において、前記シールドケースの側面が突き当たる前記予備半田の端面は、前記シールドケースの周囲に形成されたグランド以外のパターン領域より前記シールドケースに近接していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る通信装置は、請求項1乃至5のいずれかの通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺が全てレジストで覆われていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7に係る高周波回路装置は、高周波回路を搭載するプリント基板と、前記プリント基板に取り付けられて前記高周波回路を電磁遮蔽する、中空箱型形状を有したシールドケースと、を備える高周波回路装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る無線通信端末は、電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える無線通信端末において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9に係るシールドケース装着方法は、電子部品が実装されるプリント基板に、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースを装着するシールドケース装着方法であって、前記プリント基板に対して、前記シールドケースの外縁に沿って、前記プリント基板と前記シールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布するステップと、前記シールドケースの側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めを行って、前記シールドケースを前記予備半田が塗布された前記プリント基板に載せ置くステップと、前記シールドケースと前記プリント基板とを、前記予備半田が塗布された領域に半田付けすることで、前記シールドケースを前記プリント基板に固定するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係る通信装置によれば、プリント基板に塗布される予備半田を壁として利用することで、シールドケースの位置決めを行うことができる。ここで、予備半田とは、電子部品をリフロー実装する際にプリント基板に塗布される、半田の粒子をフラックスで練ったクリーム半田のことを言う。
また、本発明の請求項1に係る通信装置によれば、シールドケースは、プリント基板と面で接触するL字状の脚部を持たず、プリント基板と線で接触するため、シールドケースが占める面積を最小限に抑え、通信装置を小型化することができる。
【0017】
本発明の請求項2に係る通信装置によれば、位置決め孔と位置決め突起とにより、プリント基板に対するシールドケースの位置決めを、高精度に行うことができる。また、シールドケースの取り付け強度を向上することができる。
【0018】
本発明の請求項3に係る通信装置によれば、プリント基板に形成される位置決め孔は、真円である。一般に、基板を貫通して形成される孔は、楕円などと比較して真円の方が加工精度は高い。そのため、位置決め孔を真円とすることで、シールドケースの位置決めをより高精度に行うことができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る通信装置によれば、シールドケースの位置決め突起の自由度を抑え、シールドケースの回転を抑止することができる。そのため、シールドケースが斜めにずれて半田付けされることを防止することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る通信装置によれば、グランド電位に接続されるシールドケースとグランド以外のパターンとの短絡による不具合を確実に防止することができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る通信装置によれば、予備半田をプリント基板の所望の位置へ正確に塗布することができる。
【0022】
また、本発明の請求項7に係る高周波回路装置、請求項8に係る無線通信端末、請求項9に係るシールドケース装着方法としても本発明は構成可能であり、上述した請求項1乃至6のいずれかに係る通信装置と同様の効果が得られる。特に、本発明は、コードレス電話の子機のような小型化の要求が強い無線通信端末として実現されると好適である。
【0023】
本発明に係る通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法によれば、プリント基板へのシールドケースの実装において、プリント基板上でシールドケースが占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することにより、小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係るプリント基板とメタルマスクとを示す斜視図である。
【図2】図1に示されるプリント基板とメタルマスクとを重ねた状態におけるA−A線断面図である。
【図3】図1、図2に示されるメタルマスクを使用してプリント基板にクリーム半田が塗布され、プリント基板のランド部に予備半田が形成された状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示されるプリント基板のA−A線断面図である。
【図5】図3、図4に示されるプリント基板にシールドケースを載せた状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図7】図5、図6に示されるプリント基板とシールドケースとが半田付けにより固定された状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図9】実施例2に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図10】実施例3に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図11】実施例4に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図12】図11の部分拡大図である。
【図13】実施例5に係るプリント基板を示す部分拡大図である。
【図14】実施例6に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図15】図14に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図16】その他の実施例に係るプリント基板を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明される各実施例におけるプリント基板とシールドケースとを備えることにより、本発明に係る通信装置、高周波回路装置、無線通信端末が実現される。
【実施例1】
【0026】
図1乃至図8を参照して、本発明の実施例1に係るプリント基板とシールドケースとついて、製造工程の順を追って説明する。図1は、プリント基板10とメタルマスク20とを示す斜視図である。図2は、図1に示されるプリント基板10とメタルマスク20とを重ねた状態におけるA−A線断面図である。ここで、メタルマスク20は、クリーム半田を塗布するために使用される、エッチングで孔を開けた薄い金属板である。図1において、プリント基板10の表面の破線は、プリント基板10に半田付けされるシールドケースの外縁を示す(以下、いくつかの図において同様の表示を行う)。すなわち、破線部においてプリント基板10とシールドケースとが接触することになる。また、説明のため、メタルマスク20においても対応する箇所が破線で示されている。
【0027】
図2に示されるように、プリント基板10は、絶縁体基材13に銅箔などの導電体によって形成された配線であるパターン12、絶縁被膜であるレジスト11が積層されて構成される。レジスト11の開口部は、パターン12が露出し、半田付けの際に半田が乗るランド部になる。図1に示されるように、プリント基板10にはシールドケースを半田付けするため、4つのランド部12A、12B、12C、12Dが形成される。また、メタルマスク20には、プリント基板10の4つのランド部12A、12B、12C、12Dと対応する位置に、メタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dが形成される。ここで、メタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dは、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dと比較して小さく、破線で示されるシールドケースの外縁より外側にのみ開口するように形成される。
【0028】
図3は、図1、図2に示されるメタルマスク20を使用してプリント基板10にクリーム半田が塗布され、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに予備半田30が形成された状態を示す斜視図である。図4は、図3に示されるプリント基板10のA−A線断面図である。図1、図2で説明したように、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対応して形成されるメタルマスク20のメタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dは、シールドケースの外縁より外側にのみ開口する。したがって、図3、図4に示されるように、予備半田30はプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対して、シールドケースの外縁に沿って、プリント基板10がシールドケースと接触する辺より外側の領域に塗布される。
【0029】
図5は、図3、図4に示されるプリント基板10にシールドケース40を載せた状態を示す斜視図である。図6は、図5に示されるプリント基板10とシールドケース40とのA−A線断面図である。なお、図5においては、部材間の関係を示すため、シールドケース40が透視された状態が破線で示されている。ここで、シールドケース40は、下面が開口した中空箱型形状を有し、プリント基板10に実装される電子部品を覆う。シールドケース40は、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12D(図1乃至図4参照)と半田付けされることでグランド電位に接続され、プリント基板10を電磁遮蔽する。特に、プリント基板10に実装される電子部品が高周波回路を構成する場合、シールドケース40は、高周波回路の信号が漏れて他の回路に影響したり、他の回路から不要な信号が高周波回路内に侵入したりして、プリント基板10を搭載する機器(例えば、デジタルコードレス電話の子機)の動作が不安定になったり、通話品質が悪化したりするという問題を防止する。
【0030】
図5、図6に示されるように、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と4辺で接触する。図3、図4で説明したように、予備半田30は、シールドケース40の外縁に沿って、プリント基板10がシールドケース40と接触する辺より外側の領域に塗布される。したがって、シールドケース40は、プリント基板10と半田付けされる際、図5、図6に示されるように、その側面が予備半田30に突き当たる。これにより、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用し、シールドケース40の位置決めを行うことができる。
【0031】
図7は、図5、図6に示されるプリント基板10とシールドケース40とが半田付けにより固定された状態を示す斜視図である。図8は、図7に示されるプリント基板10とシールドケース40とのA−A線断面図である。ここで、半田付けはリフロー処理によって機械的に行われてもよいし、個別に手作業で行われてもよい。図5、図6で説明したように、半田付けの際、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用することで、シールドケース40の位置決めを行う。そのため、特別な治具等を用いることなく、容易にシールドケース40をプリント基板10に半田付けして固定することができる。したがって、組み立て工数の短縮、歩留まりの向上を図ることができる。また、シールドケース40はプリント基板10と線で接触するため、面で接触する場合と比較してシールドケース40がプリント基板10上で占める面積を小さく抑えることができる。その結果、プリント基板10の小型化が可能となり、プリント基板10を備える通信装置、高周波回路装置、無線通信端末の小型化の要求に応えることができる。
【実施例2】
【0032】
続いて、図9の斜視図を参照して、本発明の実施例2に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。なお、図9では、実施例1と対応する部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施例1と異なる点を中心に説明する。
【0033】
図9に示されるように、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と接触する辺上に形成された、略楕円状の3つのスルーホール14A、14B、14Cを有する。また、シールドケース40は、プリント基板10の3つのスルーホール14A、14B、14Cと対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された爪部41A、41B、41Cを有する。
【0034】
実施例2では、実施例1と同様にプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに予備半田30が塗布された後、シールドケース40の爪部41A、41B、41Cがそれぞれプリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cに挿入される。したがって、リフロー処理もしくは手作業による半田付けの際、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用するとともに、スルーホール14A、14B、14Cと爪部41A、41B、41Cとを利用することで、プリント基板10に対するシールドケース40の位置決めを、高精度に行うことができる。また、爪部41A、41B、41Cにより、シールドケース40の取り付け強度を向上することができる。
【実施例3】
【0035】
続いて、図10の斜視図を参照して、本発明の実施例3に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例3は、実施例2(図9参照)と比較して、プリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cの形状が異なる。スルーホール14A、14B、14Cを除くその他の構成は実施例2と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
図10に示されるように、実施例3では、プリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cの形状が真円である。一般に、スルーホールのように基板を貫通する孔を加工する場合、孔の形状は楕円などと比較して真円の方が精度良く加工することができる。そのため、実施例3のように、スルーホール14A、14B、14Cの形状を真円とすることで、シールドケース40の位置決めをより高精度に行うことができる。
【実施例4】
【0037】
続いて、図11乃至図12を参照して、本発明の実施例4に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例4は、実施例2(図9参照)と比較して、プリント基板10が、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に形成された2つのスルーホール14A1、14A2を有し、シールドケース40が、スルーホール14A1、14A2に対応して爪部41A1、41A2を有する点で異なる。その他の点は実施例2と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図12の拡大図に示されるように、スルーホール14A1、14A2は、シールドケース40の側面下端と接触する辺(破線)を挟むように、中心位置がシールドケース40との接触辺に対して互いに反対方向にずらされて配置される。すなわち、シールドケース40との接触辺に対して、スルーホール14A1は中心位置がプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)に、スルーホール14A2は中心位置がプリント基板10の内側方向(シールドケース40の方向)に、それぞれずれている。これにより、シールドケース40の爪部41A1、41A2は、スルーホール14A1、14A2に挿入されると、スルーホール14A1、14A2の接触辺寄りの側壁に当たって、反時計回り方向へのシールドケース40のずれを抑える。
【0039】
このように、実施例4では、プリント基板10において、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に2つのスルーホール14A1、14A2をずらして配置することで、シールドケース40の爪部41A1、41A2の自由度を抑え、シールドケース40の回転を抑止することができる。そのため、シールドケース40が斜めにずれて半田付けされることを防止することができる。
【実施例5】
【0040】
続いて、図13を参照して、本発明の実施例5に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例5では、実施例1(図1乃至図8参照)においてシールドケース40の側面が突き当たる予備半田30の端面と、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域との位置関係について説明する。
【0041】
図13は、図3に対応して、実施例1に係るプリント基板10に形成されるランド部12Aの周辺を拡大して示す平面図である。図13において、斜線部は、プリント基板10内でグランドパターンが形成されるグランドパターン領域を示す。ランド部12Aは、斜線部で示されるグランドパターン領域にあるグランドパターンと連結しており、グランド電位に接続される。また、斜線部とランド部12Aとを除いた部分は、プリント基板10内でグランド以外のパターンが形成される領域である。
【0042】
図13に示されるように、グランドパターン領域とグランド以外のパターン領域との境界は、破線で示されるシールドケース40の外縁よりもプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)にずらされている。一方、予備半田30は、図3で説明したように、破線で示されるシールドケース40の外縁に沿って塗布される。したがって、シールドケース40の側面が突き当たる予備半田30の端面は、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域よりシールドケース40に近接した配置となる。そのため、予備半田30を壁として利用してシールドケース40の位置決めを行えば、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域とシールドケース40とが接触することはない。これにより、ランド部12Aを介してグランド電位に接続されるシールドケース40とグランド以外のパターンとの間の接触による不良、短絡による不具合を確実に防止することができる。
【実施例6】
【0043】
続いて、図14乃至図15を参照して、本発明の実施例6に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例6は、実施例1(図1乃至図8参照)と比較して、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dの形状が異なる。ランド部12A、12B、12C、12Dを除くその他の構成は実施例1と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
実施例6では、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と接触する辺が全てレジスト11で覆われる。そのため、図14及びそのA−A線断面図である図15に示されるように、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dは、シールドケース40の側面下端と接触する辺より外側、すなわち、予備半田30が塗布される部分にのみ形成される。したがって、予備半田30がプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対してずれて塗布されることを防止し、予備半田30をプリント基板10の所望の位置へ正確に塗布することができる。
【0045】
ここで、特許請求の範囲との対応は以下の通りである。
スルーホール14A、14B、14C、14A1、14A2は、それぞれ位置決め孔の一例である。また、爪部41A、41B、41C、41A1、41A2は、それぞれ位置決め突起の一例である。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本発明の各実施例によれば、プリント基板10へのシールドケース40の実装において、プリント基板10上でシールドケース40が占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することができる。上述した各実施例におけるプリント基板10とシールドケース40とを備えることにより、通信装置、高周波回路装置、無線通信端末の小型化が可能になる。
【0047】
なお、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、プリント基板10の位置決め孔として、スルーホール14A、14B、14C、14A1、14A2を用いたが、ノンスルーホールを用いてもよい。また、孔の形状、数、などを変更してもよい。
【0048】
また、実施例4(図11乃至図12参照)に関して、シールドケース40との接触辺に対するスルーホール14A1、14A2のずらし方を変更してもよい。例えば、実施例4とは逆に、スルーホール14A1の中心位置をプリント基板10の内側方向(シールドケース40の方向)に、スルーホール14A2の中心位置をプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)に、それぞれずらすことによって、時計回り方向へのシールドケース40のずれを抑えることができる。
さらに、図16に示されるように、プリント基板10において、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に3つのスルーホールを交互にずらして配置してもよい。これにより、時計回り方向及び反時計回り方向の両方向へのシールドケース40のずれを抑えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 プリント基板
14A〜C、14A1、14A2 スルーホール(位置決め孔)
30 予備半田
40 シールドケース
41A〜C、41A1、41A2 爪部(位置決め突起)
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、高周波回路装置、無線通信端末に関し、特に、それらが備えるプリント基板へのシールドケースの装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルコードレス電話をはじめ高周波無線通信を行う通信機器が普及している。そのような通信機器に搭載されるプリント基板において、外部への放射ノイズや外部からの外来ノイズを遮蔽するため、シールドケースが用いられる。また、通信機器の小型化、回路の集積化が進んでおり、より高密度、高精度な実装技術が要求されている。
【0003】
下記の特許文献1、2には、基板へのシールドケースの半田付けによる実装に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−133786号公報
【特許文献2】特開2005−79458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示された技術では、下面が開口した箱形のシールドケースの側面下部を外側に折り曲げた、L字状の脚部が形成される。しかしながら、L字状の脚部は基板と面で接触するため、基板上でシールドケースの占める面積が大きくなり、小型化の観点から見て望ましくない。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑み提案されたものである。本発明は、プリント基板へのシールドケースの実装において、プリント基板上でシールドケースが占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することにより、小型化を可能とした通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る通信装置は、電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る通信装置は、請求項1の通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺上に、前記プリント基板を貫通して形成された位置決め孔を有し、前記シールドケースは、前記位置決め孔と対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された位置決め突起を有し、前記位置決め突起が前記位置決め孔に挿入されることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る通信装置は、請求項2の通信装置において、前記位置決め孔は真円であることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る通信装置は、請求項2の通信装置において、前記位置決め孔は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺のうち少なくとも一辺については複数形成され、前記シールドケースの側面下端と接触する辺を挟むように複数の位置決め孔は中心位置が該辺に対してずらされて配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る通信装置は、請求項1乃至4のいずれかの通信装置において、前記シールドケースの側面が突き当たる前記予備半田の端面は、前記シールドケースの周囲に形成されたグランド以外のパターン領域より前記シールドケースに近接していることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に係る通信装置は、請求項1乃至5のいずれかの通信装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺が全てレジストで覆われていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7に係る高周波回路装置は、高周波回路を搭載するプリント基板と、前記プリント基板に取り付けられて前記高周波回路を電磁遮蔽する、中空箱型形状を有したシールドケースと、を備える高周波回路装置において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8に係る無線通信端末は、電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える無線通信端末において、前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9に係るシールドケース装着方法は、電子部品が実装されるプリント基板に、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースを装着するシールドケース装着方法であって、前記プリント基板に対して、前記シールドケースの外縁に沿って、前記プリント基板と前記シールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布するステップと、前記シールドケースの側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めを行って、前記シールドケースを前記予備半田が塗布された前記プリント基板に載せ置くステップと、前記シールドケースと前記プリント基板とを、前記予備半田が塗布された領域に半田付けすることで、前記シールドケースを前記プリント基板に固定するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係る通信装置によれば、プリント基板に塗布される予備半田を壁として利用することで、シールドケースの位置決めを行うことができる。ここで、予備半田とは、電子部品をリフロー実装する際にプリント基板に塗布される、半田の粒子をフラックスで練ったクリーム半田のことを言う。
また、本発明の請求項1に係る通信装置によれば、シールドケースは、プリント基板と面で接触するL字状の脚部を持たず、プリント基板と線で接触するため、シールドケースが占める面積を最小限に抑え、通信装置を小型化することができる。
【0017】
本発明の請求項2に係る通信装置によれば、位置決め孔と位置決め突起とにより、プリント基板に対するシールドケースの位置決めを、高精度に行うことができる。また、シールドケースの取り付け強度を向上することができる。
【0018】
本発明の請求項3に係る通信装置によれば、プリント基板に形成される位置決め孔は、真円である。一般に、基板を貫通して形成される孔は、楕円などと比較して真円の方が加工精度は高い。そのため、位置決め孔を真円とすることで、シールドケースの位置決めをより高精度に行うことができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る通信装置によれば、シールドケースの位置決め突起の自由度を抑え、シールドケースの回転を抑止することができる。そのため、シールドケースが斜めにずれて半田付けされることを防止することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る通信装置によれば、グランド電位に接続されるシールドケースとグランド以外のパターンとの短絡による不具合を確実に防止することができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る通信装置によれば、予備半田をプリント基板の所望の位置へ正確に塗布することができる。
【0022】
また、本発明の請求項7に係る高周波回路装置、請求項8に係る無線通信端末、請求項9に係るシールドケース装着方法としても本発明は構成可能であり、上述した請求項1乃至6のいずれかに係る通信装置と同様の効果が得られる。特に、本発明は、コードレス電話の子機のような小型化の要求が強い無線通信端末として実現されると好適である。
【0023】
本発明に係る通信装置、高周波回路装置、無線通信端末、並びにシールドケース装着方法によれば、プリント基板へのシールドケースの実装において、プリント基板上でシールドケースが占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することにより、小型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係るプリント基板とメタルマスクとを示す斜視図である。
【図2】図1に示されるプリント基板とメタルマスクとを重ねた状態におけるA−A線断面図である。
【図3】図1、図2に示されるメタルマスクを使用してプリント基板にクリーム半田が塗布され、プリント基板のランド部に予備半田が形成された状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示されるプリント基板のA−A線断面図である。
【図5】図3、図4に示されるプリント基板にシールドケースを載せた状態を示す斜視図である。
【図6】図5に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図7】図5、図6に示されるプリント基板とシールドケースとが半田付けにより固定された状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図9】実施例2に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図10】実施例3に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図11】実施例4に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図12】図11の部分拡大図である。
【図13】実施例5に係るプリント基板を示す部分拡大図である。
【図14】実施例6に係るプリント基板とシールドケースとを示す斜視図である。
【図15】図14に示されるプリント基板とシールドケースとのA−A線断面図である。
【図16】その他の実施例に係るプリント基板を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。以下で説明される各実施例におけるプリント基板とシールドケースとを備えることにより、本発明に係る通信装置、高周波回路装置、無線通信端末が実現される。
【実施例1】
【0026】
図1乃至図8を参照して、本発明の実施例1に係るプリント基板とシールドケースとついて、製造工程の順を追って説明する。図1は、プリント基板10とメタルマスク20とを示す斜視図である。図2は、図1に示されるプリント基板10とメタルマスク20とを重ねた状態におけるA−A線断面図である。ここで、メタルマスク20は、クリーム半田を塗布するために使用される、エッチングで孔を開けた薄い金属板である。図1において、プリント基板10の表面の破線は、プリント基板10に半田付けされるシールドケースの外縁を示す(以下、いくつかの図において同様の表示を行う)。すなわち、破線部においてプリント基板10とシールドケースとが接触することになる。また、説明のため、メタルマスク20においても対応する箇所が破線で示されている。
【0027】
図2に示されるように、プリント基板10は、絶縁体基材13に銅箔などの導電体によって形成された配線であるパターン12、絶縁被膜であるレジスト11が積層されて構成される。レジスト11の開口部は、パターン12が露出し、半田付けの際に半田が乗るランド部になる。図1に示されるように、プリント基板10にはシールドケースを半田付けするため、4つのランド部12A、12B、12C、12Dが形成される。また、メタルマスク20には、プリント基板10の4つのランド部12A、12B、12C、12Dと対応する位置に、メタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dが形成される。ここで、メタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dは、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dと比較して小さく、破線で示されるシールドケースの外縁より外側にのみ開口するように形成される。
【0028】
図3は、図1、図2に示されるメタルマスク20を使用してプリント基板10にクリーム半田が塗布され、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに予備半田30が形成された状態を示す斜視図である。図4は、図3に示されるプリント基板10のA−A線断面図である。図1、図2で説明したように、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対応して形成されるメタルマスク20のメタルマスク開口部21A、21B、21C、21Dは、シールドケースの外縁より外側にのみ開口する。したがって、図3、図4に示されるように、予備半田30はプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対して、シールドケースの外縁に沿って、プリント基板10がシールドケースと接触する辺より外側の領域に塗布される。
【0029】
図5は、図3、図4に示されるプリント基板10にシールドケース40を載せた状態を示す斜視図である。図6は、図5に示されるプリント基板10とシールドケース40とのA−A線断面図である。なお、図5においては、部材間の関係を示すため、シールドケース40が透視された状態が破線で示されている。ここで、シールドケース40は、下面が開口した中空箱型形状を有し、プリント基板10に実装される電子部品を覆う。シールドケース40は、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12D(図1乃至図4参照)と半田付けされることでグランド電位に接続され、プリント基板10を電磁遮蔽する。特に、プリント基板10に実装される電子部品が高周波回路を構成する場合、シールドケース40は、高周波回路の信号が漏れて他の回路に影響したり、他の回路から不要な信号が高周波回路内に侵入したりして、プリント基板10を搭載する機器(例えば、デジタルコードレス電話の子機)の動作が不安定になったり、通話品質が悪化したりするという問題を防止する。
【0030】
図5、図6に示されるように、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と4辺で接触する。図3、図4で説明したように、予備半田30は、シールドケース40の外縁に沿って、プリント基板10がシールドケース40と接触する辺より外側の領域に塗布される。したがって、シールドケース40は、プリント基板10と半田付けされる際、図5、図6に示されるように、その側面が予備半田30に突き当たる。これにより、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用し、シールドケース40の位置決めを行うことができる。
【0031】
図7は、図5、図6に示されるプリント基板10とシールドケース40とが半田付けにより固定された状態を示す斜視図である。図8は、図7に示されるプリント基板10とシールドケース40とのA−A線断面図である。ここで、半田付けはリフロー処理によって機械的に行われてもよいし、個別に手作業で行われてもよい。図5、図6で説明したように、半田付けの際、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用することで、シールドケース40の位置決めを行う。そのため、特別な治具等を用いることなく、容易にシールドケース40をプリント基板10に半田付けして固定することができる。したがって、組み立て工数の短縮、歩留まりの向上を図ることができる。また、シールドケース40はプリント基板10と線で接触するため、面で接触する場合と比較してシールドケース40がプリント基板10上で占める面積を小さく抑えることができる。その結果、プリント基板10の小型化が可能となり、プリント基板10を備える通信装置、高周波回路装置、無線通信端末の小型化の要求に応えることができる。
【実施例2】
【0032】
続いて、図9の斜視図を参照して、本発明の実施例2に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。なお、図9では、実施例1と対応する部分には同じ符号を付して説明を省略し、実施例1と異なる点を中心に説明する。
【0033】
図9に示されるように、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と接触する辺上に形成された、略楕円状の3つのスルーホール14A、14B、14Cを有する。また、シールドケース40は、プリント基板10の3つのスルーホール14A、14B、14Cと対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された爪部41A、41B、41Cを有する。
【0034】
実施例2では、実施例1と同様にプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに予備半田30が塗布された後、シールドケース40の爪部41A、41B、41Cがそれぞれプリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cに挿入される。したがって、リフロー処理もしくは手作業による半田付けの際、プリント基板10に塗布される予備半田30を壁として利用するとともに、スルーホール14A、14B、14Cと爪部41A、41B、41Cとを利用することで、プリント基板10に対するシールドケース40の位置決めを、高精度に行うことができる。また、爪部41A、41B、41Cにより、シールドケース40の取り付け強度を向上することができる。
【実施例3】
【0035】
続いて、図10の斜視図を参照して、本発明の実施例3に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例3は、実施例2(図9参照)と比較して、プリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cの形状が異なる。スルーホール14A、14B、14Cを除くその他の構成は実施例2と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
図10に示されるように、実施例3では、プリント基板10のスルーホール14A、14B、14Cの形状が真円である。一般に、スルーホールのように基板を貫通する孔を加工する場合、孔の形状は楕円などと比較して真円の方が精度良く加工することができる。そのため、実施例3のように、スルーホール14A、14B、14Cの形状を真円とすることで、シールドケース40の位置決めをより高精度に行うことができる。
【実施例4】
【0037】
続いて、図11乃至図12を参照して、本発明の実施例4に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例4は、実施例2(図9参照)と比較して、プリント基板10が、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に形成された2つのスルーホール14A1、14A2を有し、シールドケース40が、スルーホール14A1、14A2に対応して爪部41A1、41A2を有する点で異なる。その他の点は実施例2と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図12の拡大図に示されるように、スルーホール14A1、14A2は、シールドケース40の側面下端と接触する辺(破線)を挟むように、中心位置がシールドケース40との接触辺に対して互いに反対方向にずらされて配置される。すなわち、シールドケース40との接触辺に対して、スルーホール14A1は中心位置がプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)に、スルーホール14A2は中心位置がプリント基板10の内側方向(シールドケース40の方向)に、それぞれずれている。これにより、シールドケース40の爪部41A1、41A2は、スルーホール14A1、14A2に挿入されると、スルーホール14A1、14A2の接触辺寄りの側壁に当たって、反時計回り方向へのシールドケース40のずれを抑える。
【0039】
このように、実施例4では、プリント基板10において、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に2つのスルーホール14A1、14A2をずらして配置することで、シールドケース40の爪部41A1、41A2の自由度を抑え、シールドケース40の回転を抑止することができる。そのため、シールドケース40が斜めにずれて半田付けされることを防止することができる。
【実施例5】
【0040】
続いて、図13を参照して、本発明の実施例5に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例5では、実施例1(図1乃至図8参照)においてシールドケース40の側面が突き当たる予備半田30の端面と、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域との位置関係について説明する。
【0041】
図13は、図3に対応して、実施例1に係るプリント基板10に形成されるランド部12Aの周辺を拡大して示す平面図である。図13において、斜線部は、プリント基板10内でグランドパターンが形成されるグランドパターン領域を示す。ランド部12Aは、斜線部で示されるグランドパターン領域にあるグランドパターンと連結しており、グランド電位に接続される。また、斜線部とランド部12Aとを除いた部分は、プリント基板10内でグランド以外のパターンが形成される領域である。
【0042】
図13に示されるように、グランドパターン領域とグランド以外のパターン領域との境界は、破線で示されるシールドケース40の外縁よりもプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)にずらされている。一方、予備半田30は、図3で説明したように、破線で示されるシールドケース40の外縁に沿って塗布される。したがって、シールドケース40の側面が突き当たる予備半田30の端面は、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域よりシールドケース40に近接した配置となる。そのため、予備半田30を壁として利用してシールドケース40の位置決めを行えば、シールドケース40の周囲に形成されたグランド以外のパターン領域とシールドケース40とが接触することはない。これにより、ランド部12Aを介してグランド電位に接続されるシールドケース40とグランド以外のパターンとの間の接触による不良、短絡による不具合を確実に防止することができる。
【実施例6】
【0043】
続いて、図14乃至図15を参照して、本発明の実施例6に係るプリント基板とシールドケースとついて説明する。実施例6は、実施例1(図1乃至図8参照)と比較して、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dの形状が異なる。ランド部12A、12B、12C、12Dを除くその他の構成は実施例1と同様であるため、同一部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
実施例6では、プリント基板10は、シールドケース40の側面下端と接触する辺が全てレジスト11で覆われる。そのため、図14及びそのA−A線断面図である図15に示されるように、プリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dは、シールドケース40の側面下端と接触する辺より外側、すなわち、予備半田30が塗布される部分にのみ形成される。したがって、予備半田30がプリント基板10のランド部12A、12B、12C、12Dに対してずれて塗布されることを防止し、予備半田30をプリント基板10の所望の位置へ正確に塗布することができる。
【0045】
ここで、特許請求の範囲との対応は以下の通りである。
スルーホール14A、14B、14C、14A1、14A2は、それぞれ位置決め孔の一例である。また、爪部41A、41B、41C、41A1、41A2は、それぞれ位置決め突起の一例である。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本発明の各実施例によれば、プリント基板10へのシールドケース40の実装において、プリント基板10上でシールドケース40が占める面積を抑え、かつ、実装精度を向上することができる。上述した各実施例におけるプリント基板10とシールドケース40とを備えることにより、通信装置、高周波回路装置、無線通信端末の小型化が可能になる。
【0047】
なお、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、プリント基板10の位置決め孔として、スルーホール14A、14B、14C、14A1、14A2を用いたが、ノンスルーホールを用いてもよい。また、孔の形状、数、などを変更してもよい。
【0048】
また、実施例4(図11乃至図12参照)に関して、シールドケース40との接触辺に対するスルーホール14A1、14A2のずらし方を変更してもよい。例えば、実施例4とは逆に、スルーホール14A1の中心位置をプリント基板10の内側方向(シールドケース40の方向)に、スルーホール14A2の中心位置をプリント基板10の外側方向(シールドケース40と反対の方向)に、それぞれずらすことによって、時計回り方向へのシールドケース40のずれを抑えることができる。
さらに、図16に示されるように、プリント基板10において、シールドケース40の側面下端と接触する同一の辺上に3つのスルーホールを交互にずらして配置してもよい。これにより、時計回り方向及び反時計回り方向の両方向へのシールドケース40のずれを抑えることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 プリント基板
14A〜C、14A1、14A2 スルーホール(位置決め孔)
30 予備半田
40 シールドケース
41A〜C、41A1、41A2 爪部(位置決め突起)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える通信装置において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺上に、前記プリント基板を貫通して形成された位置決め孔を有し、
前記シールドケースは、前記位置決め孔と対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された位置決め突起を有し、
前記位置決め突起が前記位置決め孔に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記位置決め孔は真円である
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記位置決め孔は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺のうち少なくとも一辺については複数形成され、前記シールドケースの側面下端と接触する辺を挟むように複数の位置決め孔は中心位置が該辺に対してずらされて配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記シールドケースの側面が突き当たる前記予備半田の端面は、前記シールドケースの周囲に形成されたグランド以外のパターン領域より前記シールドケースに近接している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺が全てレジストで覆われている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
高周波回路を搭載するプリント基板と、前記プリント基板に取り付けられて前記高周波回路を電磁遮蔽する、中空箱型形状を有したシールドケースと、を備える高周波回路装置において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする高周波回路装置。
【請求項8】
電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える無線通信端末において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項9】
電子部品が実装されるプリント基板に、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースを装着するシールドケース装着方法であって、
前記プリント基板に対して、前記シールドケースの外縁に沿って、前記プリント基板と前記シールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布するステップと、
前記シールドケースの側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めを行って、前記シールドケースを前記予備半田が塗布された前記プリント基板に載せ置くステップと、
前記シールドケースと前記プリント基板とを、前記予備半田が塗布された領域に半田付けすることで、前記シールドケースを前記プリント基板に固定するステップと、
を備えることを特徴とするシールドケース装着方法。
【請求項1】
電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える通信装置において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺上に、前記プリント基板を貫通して形成された位置決め孔を有し、
前記シールドケースは、前記位置決め孔と対応する位置に、側面下端が下方に延びて形成された位置決め突起を有し、
前記位置決め突起が前記位置決め孔に挿入される
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記位置決め孔は真円である
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記位置決め孔は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺のうち少なくとも一辺については複数形成され、前記シールドケースの側面下端と接触する辺を挟むように複数の位置決め孔は中心位置が該辺に対してずらされて配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記シールドケースの側面が突き当たる前記予備半田の端面は、前記シールドケースの周囲に形成されたグランド以外のパターン領域より前記シールドケースに近接している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記プリント基板は、前記シールドケースの側面下端と接触する辺が全てレジストで覆われている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
高周波回路を搭載するプリント基板と、前記プリント基板に取り付けられて前記高周波回路を電磁遮蔽する、中空箱型形状を有したシールドケースと、を備える高周波回路装置において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする高周波回路装置。
【請求項8】
電子部品が実装されるプリント基板と、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースと、を備える無線通信端末において、
前記プリント基板は、前記シールドケースの外縁に沿って、前記シールドケースの側面下端と接触する辺より外側の領域に予備半田が塗布され、
前記シールドケースは、側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めされて、前記予備半田が塗布された領域に前記シールドケースと前記プリント基板とが半田付けされることで前記プリント基板に固定される
ことを特徴とする無線通信端末。
【請求項9】
電子部品が実装されるプリント基板に、中空箱型形状を有し、前記プリント基板に載置されて前記電子部品を覆うシールドケースを装着するシールドケース装着方法であって、
前記プリント基板に対して、前記シールドケースの外縁に沿って、前記プリント基板と前記シールドケースの側面下端とが接触する辺より外側の領域に予備半田を塗布するステップと、
前記シールドケースの側面が前記予備半田に突き当たることで位置決めを行って、前記シールドケースを前記予備半田が塗布された前記プリント基板に載せ置くステップと、
前記シールドケースと前記プリント基板とを、前記予備半田が塗布された領域に半田付けすることで、前記シールドケースを前記プリント基板に固定するステップと、
を備えることを特徴とするシールドケース装着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−192756(P2010−192756A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36806(P2009−36806)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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