説明

通信装置および構造物

【課題】構造物に設置された通信装置と他の位置に設置された装置との間で電磁誘導によ
る無線通信をするときの通信距離を、その構造物を利用して長くすること。
【解決手段】比透磁率が1より大きい磁性体の部材を有する構造物に設置される通信装置
であって、前記設置された位置の周囲における特定の物理量を測定する測定手段と、前記
部材に磁気的に結合するアンテナによって、当該部材と磁気的に結合するアンテナを有す
る他の装置との間で電磁誘導を用いた無線通信を実現し、前記測定手段によって測定され
た物理量に応じた情報を、当該他の装置に送信する送信手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導により無線通信を行う通信装置の通信距離を長くする技術に関する

【背景技術】
【0002】
鉄筋を用いた構造物にRFID(Radio Frequency IDentification)技術を用いた無線
通信を行う通信装置が設置された場合、この情報を読取装置において読み取るときには用
いられる電磁波が鉄筋に吸収されることにより、通信距離が大幅に減少することがあった
。そこで、鉄筋自体を通信装置のアンテナとして利用することで、読取装置との通信を可
能とする技術が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−9681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術においては、鉄筋をアンテナと用いることを前提として鉄
筋の形状を設計し、この形状に基づいて構造物の形状を設計しなくてはならなかった。そ
のため、事前にこのような用途を想定していない構造物については、このような技術を用
いることはできなかった。
本発明に係る幾つかの態様は、構造物に設置された通信装置と他の位置に設置された装
置との間で電磁誘導による無線通信をするときの通信距離を、その構造物を利用して長く
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明は、比透磁率が1より大きい磁性体の部材を有する
構造物に設置される通信装置であって、前記設置された位置の周囲における特定の物理量
を測定する測定手段と、前記部材に磁気的に結合するアンテナによって、当該部材と磁気
的に結合するアンテナを有する他の装置との間で電磁誘導を用いた無線通信を実現し、前
記測定手段によって測定された物理量に応じた情報を、当該他の装置に送信する送信手段
とを具備することを特徴とする通信装置を提供する。この通信装置によれば、構造物に設
置された通信装置と他の位置に設置された装置との間で電磁誘導による無線通信をすると
きの通信距離を、その構造物を利用して長くすることができる。
【0006】
別の好ましい態様において、前記アンテナは、前記部材を磁心とするように当該部材の
周囲を巻くように設けられるループアンテナであることを特徴とする。この通信装置によ
れば、構造体における磁性体の部材とアンテナとの磁気的結合の程度が向上し、より通信
距離を長くすることができる。
【0007】
別の好ましい態様において、前記アンテナと電気的に接続されたコンデンサーを有し、
前記アンテナが前記部材に磁気的に結合した状態で、前記アンテナおよび前記コンデンサ
ーを有する共振回路の共振周波数が、前記無線通信に用いられる周波数に応じた値になる
ように、前記コンデンサーの容量を調整する調整手段をさらに具備することを特徴とする
。この通信装置によれば、設置された位置における環境が変わっても、通信距離が短くな
ることを抑制することができる。
【0008】
別の好ましい態様において、前記アンテナは、前記部材より大きい比透磁率の磁心を有
するループアンテナであることを特徴とする。この通信装置によれば、構造体における磁
性体の部材を磁心としなくても、その部材とアンテナとの磁気的結合の程度が向上し、よ
り通信距離を長くすることができる。
【0009】
また、本発明は、比透磁率が1より大きい磁性体の部材と、通信装置とを具備する構造
物であって、前記通信装置は、前記設置された位置の周囲環境に応じた物理量を測定する
測定手段と、前記部材に磁気的に結合するアンテナによって、当該部材と磁気的に結合す
るアンテナを有する他の装置との間で電磁誘導を用いた無線通信を実現し、前記測定手段
によって測定された物理量に応じた情報を、当該他の装置に送信する送信手段とを備える
ことを特徴とする構造物を提供する。この構造物によれば、この構造物に設置された通信
装置と他の位置に設置された装置との間で電磁誘導による無線通信をするときの通信距離
を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】通信装置および読取装置が設置された構造物の構成を示す図である。
【図2】通信装置と読取装置との通信の態様を説明する図である。
【図3】通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】アンテナ部の構成を説明する図である。
【図5】読取装置の構成を示すブロック図である。
【図6】変形例1に係る構造物における通信装置と読取装置の設置例を示す図である。
【図7】読取装置が複数設置されたときの通信の態様を説明する図である。
【図8】変形例3に係る通信装置と読取装置との通信の態様を説明する図である。
【図9】変形例3に係るアンテナ部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
[全体構成]
図1は、通信装置10および読取装置20が設置された構造物500の構成を示す図で
ある。構造物500は、ワイヤー50を有する構造物であって、この例においては、つり
橋である。ワイヤー50は、鋼、鉄、ステンレスなど、1より大きい比透磁率を有する磁
性体の部材である。比透磁率は、後述する通信距離を長くするために、100以上、さら
には1000以上であることが望ましい。通信装置10および読取装置20は、このワイ
ヤー50に取り付けられることにより、構造物500に設置されている。通信装置10は
、いわゆるRFIDの技術を用いた無線タグであり、読取装置20は、無線タグの情報を
読み出したり書き込んだりするリーダーライターである。なお、通信装置10と読取装置
20とは、電磁誘導を用いた無線通信をする装置であれば、どのような装置であってもよ
い。また、図1においては、通信装置10は3台、読取装置20が1台設置された例を示
しているが、それぞれこの台数に限られない。
【0012】
通信装置10は、利用者によってワイヤー50に取り付けられて一旦設置された後は、
設置された位置から移動されないものとする。一方、読取装置20は、通信装置10と同
様に設置された後は移動されないものとしてもよいが、この例においては、後述するよう
にして、通信装置10から情報を取得するときに、利用者によって設置されるものとする

通信装置10と読取装置20とは、電磁誘導を用いた無線通信により情報の送受信を行
う。送受信される情報の一例としては、通信装置10により測定された物理量に応じた情
報などである。詳細については後述する。
【0013】
図2は、通信装置10と読取装置20との通信の態様を説明する図である。通信装置1
0は、通信すべき情報に応じた信号の出力を実現するための構成を持つ本体部11、およ
びその信号に応じた磁界を発生させるためのループアンテナを有するアンテナ部12を有
する。通信装置10は、ワイヤー50に取り付けられると、図2に示すように、アンテナ
部12が有するループアンテナの磁心がワイヤー50となるように構成される。
読取装置20は、通信すべき情報に応じた信号の出力を実現するための構成を持つ本体
部21、およびその信号に応じた磁界を発生させるためのアンテナ部22を有する。読取
装置20は、ワイヤー50に取り付けられると、通信装置10と同様に、アンテナ部22
が有するループアンテナの磁心がワイヤー50となるように構成される。
【0014】
この状態において、アンテナ部12、22の一方が他方に対して情報を送信するための
磁界を発生させると、その磁界に係る磁力線Mは、透磁率の高いワイヤー50に引き寄せ
られる。すなわち、アンテナ部12、22はともに、ワイヤー50と磁気的に結合する。
これにより、アンテナ部12、22がワイヤー50と磁気的に結合しない場合と比べて、
アンテナ部12、22の間を効率的に磁界が伝達されることになり、通信装置10と読取
装置20との電磁誘導を用いた無線通信が可能な通信距離は長くなる。この無線通信の実
現には、例えば、周波数が131kHz程度の長波(LF:Low Frequency)が使用され
る。
続いて、通信装置10の構成について説明する。
【0015】
[通信装置10の構成]
図3は、通信装置10の構成を示すブロック図である。通信装置10は、上述したよう
に本体部11およびアンテナ部12を有する。本体部11は、制御部110、記憶部11
1、アンテナ接続部112、測定部113、時計部114および電源部115を有し、互
いにバスにより接続されている。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理回路、ROM(R
ead Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、CPUは、ROMに
記憶されたプログラムをRAMにロードして実行する。これにより、制御部110は、バ
スを介して本体部11の各部の制御を行う。また、ROMには、自装置を識別する識別情
報が記憶されている。
記憶部111は、不揮発性メモリなどの記憶手段であって、履歴情報を記憶する。履歴
情報については、後述する。
【0016】
アンテナ接続部112は、アンテナ部12と接続する接続端子を有する。また、アンテ
ナ接続部112は、さらにコンデンサーなどの回路を有し、接続されたアンテナ部12と
で共振回路を構成する。このコンデンサーは、制御部110の制御によって、その容量が
調整されるように構成される。具体的には、コンデンサーは、制御部110の制御によっ
て、共振回路の共振周波数が無線通信の周波数(131kHz)に近づくように、その容
量が調整される。すなわち、制御部110は、コンデンサーの容量を調整する調整手段と
しても機能する。制御部110によるコンデンサーの容量が調整されるタイミングは、例
えば、アンテナ部12がアンテナ接続部112に接続されたとき、読取装置20から無線
通信により調整指示があったときなどとすればよい。
アンテナ接続部112は、アンテナ部12により受信した信号を制御部110に出力す
る受信手段として機能する一方、制御部110の制御によって生成される信号をアンテナ
部12から送信させる送信手段としても機能する。受信する信号としては、読取装置20
から送信される信号であって、例えば、履歴情報の送信を要求する信号である。また、送
信する信号としては、読取装置20の要求に応じて送信する信号であって、例えば、履歴
情報を示す信号である。
【0017】
測定部113は、加速度センサーを有し、通信装置10が設置された位置における振動
などにより生じる加速度を測定する測定手段であって、測定結果に応じた測定情報を制御
部110へ出力する。なお、測定部113は、加速度の測定に限らず、通信装置10が設
置された位置の周囲における特定の物理量を測定し、測定結果に応じた測定情報を出力す
るものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、温度、湿度を測定するもので
あってもよいし、ワイヤー50と接触して、その部分における応力変化などを測定するも
のであってもよい。
時計部114は、時刻を示す時刻情報を生成する機能を有し、あらかじめ決められた間
隔で制御部110へ時刻情報を出力する。制御部110は、この時刻情報を用いて、日時
などの時刻または時間に応じた制御をする。
制御部110は、測定部113から出力される測定情報と時計部114から出力される
時刻情報とを対応付けて記憶部111に履歴情報として記憶させる。このように、履歴情
報は、加速度の時間変化を示す情報となるから、この情報を解析すれば、通信装置10の
振動状態(周波数分布、振幅など)を特定することができる。なお、制御部110は、ア
ンテナ部12が接続されたとき、読取装置20から無線通信により測定指示があったとき
などをきっかけとして、測定部113における測定情報を取得するようにしてもよいし、
そのタイミングを履歴情報に係る時刻情報の基準時刻としてもよい。また、現在の時刻か
ら予め決められた時間以上前の時刻に対応する履歴情報は削除してもよい。
電源部115は、一次電池を有し、本体部11の各部に電力を供給する。このように、
電源部115が電力を供給することにより、通信装置10が通信をしていないときもその
電力により各部が動作し、履歴情報が蓄積される。
【0018】
アンテナ部12は、ワイヤー50など柱状の部材の周囲を巻くように設けられるもので
あり、アンテナ部12をワイヤー50に巻く作業を作業者が容易に行うことができる構成
となっている。以下、図4を用いて具体的に説明する。
【0019】
図4は、アンテナ部12の構成を説明する図である。アンテナ部12は、プラスチック
、不織布など、電気的な絶縁性が高く、また可撓性のある板状の巻付部材121、その両
端部分に設けられるコネクター123−1、123−2、コネクター123−1と接続さ
れたアンテナ端子122−1、およびコネクター123−2と接続されたアンテナ端子1
22−2を有する。アンテナ端子122−1、122−2は、本体部11のアンテナ接続
部112に接続される端子である。また、コネクター123−1は、接続端子124−1
、124−3、124−5を有し、コネクター123−2は、接続端子124−2、12
4−4、124−6を有する。
【0020】
また、アンテナ部12は、ループアンテナを構成する導電性の金属部材であるアンテナ
線125−1、125−2、125−3、125−4を有し、それぞれ、巻付部材121
の内部に設けられている。アンテナ線125−1、125−2、125−3、125−4
は、巻付部材121の表面とは絶縁されている。また、コネクター123−1、123−
2が接続されていないときには、アンテナ線125−1、125−2、125−3、12
5−4のそれぞれは互いに絶縁されている。
図4(a)に示すように、アンテナ線125−1は、その両端の一方がコネクター12
3−1を介してアンテナ端子122−1に接続され、他方が接続端子124−2に接続さ
れている。アンテナ線125−2は、その両端の一方が接続端子124−1に、他方が接
続端子124−4に接続されている。また、アンテナ線125−3は、その両端の一方が
接続端子124−3に、他方が接続端子124−6に接続されている。
アンテナ線125−4は、その両端の一方がコネクター123−2を介してアンテナ端
子122−2に接続され、他方が接続端子124−5に接続されている
【0021】
コネクター123−1とコネクター123−2とは、互いに着脱可能に構成されている
。そのため、図4(b)に示すように、アンテナ部12は、巻付部材121を曲げてコネ
クター123−1とコネクター123−2とを接続することにより互いの位置関係を固定
することができるようになっている。コネクター123−1とコネクター123−2とが
接続されているときには、コネクター123−1とコネクター123−2とは、接続端子
124−1および接続端子124−2を電気的に接続し、接続端子124−3および接続
端子124−4を電気的に接続し、接続端子124−5および接続端子124−6を電気
的に接続する。
アンテナ部12は、このようにコネクター123−1とコネクター123−2とが接続
されると、アンテナ線125−1、125−2、125−3、125−4がそれぞれ電気
的に接続され、アンテナ端子122−1、122−2を両端としたループアンテナを構成
する。また、ワイヤー50に巻きつけたときに、ワイヤー50と巻付部材121とが接触
しても、アンテナ線125−1、125−2、125−3、125−4とワイヤー50と
は電気的に絶縁される。このように、アンテナ部12は、ワイヤー50に1回巻きをする
だけで、複数回巻きのループコイルを形成することができ、アンテナ線を複数回ワイヤー
50に巻きつけるよりも容易に複数回巻きのループコイルを形成することができる。
なお、この例におけるアンテナ部12の構成は一例であって、アンテナ部12は、ワイ
ヤー50に周囲が絶縁部材で覆われたアンテナ線を直接巻きつけるようにしてループアン
テナを構成したものであってもよい。
続いて、読取装置20の構成について説明する。
【0022】
[読取装置20の構成]
図5は、読取装置20の構成を示すブロック図である。読取装置20は、上述したよう
に本体部21およびアンテナ部22を有する。本体部21は、制御部210、記憶部21
1、アンテナ接続部212、表示部216、操作部217およびインターフェイス218
を有し、互いにバスにより接続されている。
制御部210は、CPUなどの演算処理回路、ROM、RAMなどを有し、CPUは、
ROMに記憶されたプログラムをRAMにロードして実行する。これにより、制御部21
0は、バスを介して本体部21の各部の制御を行う。また、ROMには、自装置を識別す
る識別情報が記憶されている。
記憶部211は、不揮発性メモリ、ハードディスクなどの記憶手段であって、通信装置
10から読み取った履歴情報などを記憶する。
【0023】
アンテナ接続部212は、通信装置10におけるアンテナ接続部112と同様の機能を
有するため詳細の説明を省略するが、送受信する信号は次のとおりである。送信する信号
としては、通信装置10に送信する信号であって、例えば、履歴情報の送信を要求する信
号である。また、受信する信号としては、通信装置10から受信する信号であって、例え
ば、履歴情報を示す信号である。
アンテナ部22の構成については、上述した通信装置10におけるアンテナ部12の構
成と同様に、図4に示すような構成であるため説明を省略する。
【0024】
表示部216は、液晶ディスプレイなどの表示画面を有するデバイスであって、制御部
210により表示内容が制御される。
操作部217は、ボタン、キーボード、タッチパネルなどの操作子を有し、利用者が操
作子を操作すると、その操作内容を示すデータが制御部210に出力される。
インターフェイス218は、USB(Universal Serial Bus)などの端子を用いたり、
通信網に接続する通信機能を用いたりすることで、外部装置と情報のやり取りをするため
の接続機能を有する。
以上が各装置の構成についての説明である。
【0025】
[動作]
次に、本実施形態における通信装置10および読取装置20を構造物500に設置して
用いたときの動作についての具体例について説明する。
まず、利用者は、構造物500が完成した後に、通信装置10をワイヤー50に取り付
け、また、アンテナ部12をワイヤー50に巻きつけて、ワイヤー50がアンテナ部12
のループアンテナの磁心となるように設置する。この例においては、図1に示すように、
床版51から離れた位置の3箇所に設置したものとする。
通信装置10がワイヤー50に取り付けられ、アンテナ部12がアンテナ接続部112
に接続されることにより、制御部110の制御によって、アンテナ接続部112における
コンデンサーの容量が調整される。通信装置10が設置された位置よっては、その通信装
置10を基準とした構造物500のワイヤー50の配置関係が変わることから、アンテナ
部12におけるインダクタンス成分が異なるものとなり、同じコンデンサーの容量では共
振周波数が変化してしまう。このようなコンデンサーの容量を調整する処理を行うことに
より、変化した共振周波数を、無線通信に用いる周波数に近づけることができるため、設
置された位置における環境が変わっても、通信距離が短くなることを抑制することができ
る。
また、制御部110は、履歴情報の記憶を開始し、測定部113から出力される測定情
報と時計部114から出力される時刻情報とを対応付けて履歴情報として記憶部111に
記憶していく。
【0026】
次に、利用者は、通信装置10の記憶部111に記憶された履歴情報を取得するために
、読取装置20のアンテナ部22をワイヤー50に巻きつける。このとき、読取装置20
は、図1に示すように、利用者が床版51に立った状態でも取り付けることができるよう
な床版51に近い位置に設置される。
読取装置20がワイヤー50に取り付けられ、アンテナ部22がアンテナ接続部212
に接続されることにより、または、操作部217の調整指示操作により、制御部210は
、アンテナ接続部212におけるコンデンサーの容量を調整する。
利用者が操作部217を操作して、通信装置10から履歴情報を取得する指示をすると
、制御部210は、履歴情報の送信を要求する信号を、アンテナ接続部212に接続され
たアンテナ部22を介して送信させる。このとき、送信する信号には通信装置10を識別
する識別情報が含まれるようにして、通信対象となる通信装置10を特定するようにして
もよい。また、履歴情報のうち特定の時刻範囲に対応する履歴情報だけを要求するものと
してもよい。
【0027】
通信対象とされた通信装置10は、履歴情報の送信を要求する信号を受信すると、制御
部110は、記憶部111に記憶されている履歴情報を要求内容に応じて読み出し、アン
テナ接続部112に接続されているアンテナ部12を介して、読み出した履歴情報を示す
信号を送信させる。読取装置20は、通信装置10から送信された履歴情報を受信すると
、制御部210は、その履歴情報と、その履歴情報を送信した通信装置10を識別する情
報とを対応付けて、記憶部211に記憶する。読取装置20は、この履歴情報の受信を各
通信装置10に対応して行うことにより、各通信装置10から履歴情報を読み取る。この
とき、利用者は、読取装置20の取り付け位置を変更しながら通信装置10から履歴情報
を読み取ってもよい。
読取装置20の制御部210は、受信した履歴情報に基づいて通信装置10が設置され
た位置における振動状態を特定し、その振動状態から振動モードを解析し、過去に解析し
た振動モード、構造物500の設計から予定される振動モードなど予め設定決められた振
動モードと比較する。そして、異なる振動モードが存在する場合には、構造物500のワ
イヤー50などに切断、亀裂などの異常が存在している可能性があることを示す表示を表
示部216の表示画面に行うなどして、異常を報知してもよい。以上が動作についての説
明である。
【0028】
上述したように、通信装置10が床版51から離れた位置に設置され、読取装置20が
床版51に近い位置に設置されている場合、通信装置10と読取装置20との距離だけを
みると、通信可能な距離を越えるものとなる場合がある。一方、この実施形態のように、
それぞれのアンテナ部12、22がワイヤー50と磁気的に結合することによって、ワイ
ヤー50を介して効率的に磁界が伝達されることから、磁気的に結合していない場合に比
べて、通信装置10と読取装置20との間の通信距離を長くすることができる。
したがって、通信装置10および読取装置20は、通信装置10が設置される位置と、
読取装置20が設置される位置との距離における通信を可能とする構成にしなくてもよく
、その距離より短い距離における通信を可能とする構成にすることができるため、消費電
力の低減などを実現することができ、通信装置10における電源部115の長寿命化が可
能である。また、電磁誘導方式においては、その方式の特徴から通信可能な距離には上限
が存在することになるが、その上限を超えた通信も可能である。さらに、通信装置10が
設置された位置の近くに読取装置20を移動させて無線通信をしなくてもよい。したがっ
て、つり橋などの構造物500の高い位置に通信装置10が設置されたとしても、読取装
置20に履歴情報を読み出させるときに読取装置20を設置する位置の制限が少なくなり
、利用者の作業性を向上させることもできる。
【0029】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様
で実施可能である。
[変形例1]
上述した実施形態においては、構造物500は、1より大きい比透磁率を有する磁性体
の部材であるワイヤー50を有するつり橋を例として説明したが、このような部材であれ
ばワイヤー50に限らず鉄筋、鉄骨などを用いたものであってもよい。
【0030】
図6は、構造物の他の例を説明する図である。図6(a)は鉄骨50Aをラーメン構造
として用いた構造物500A、図6(b)は鉄骨50Bをトラス構造として用いた構造物
500Bである場合において、通信装置10、読取装置20が設置される位置の例を示し
たものである。この例においては読取装置20が複数設置されているが、実施形態のよう
に単数であってもよい。
【0031】
また、アンテナ部12、22と磁気的に結合させる部材は、ワイヤー50、鉄筋、鉄骨
などに限られず、水道管などの鉄管であってもよいし、電車に電力を供給するトロリー線
を支えるための吊架線であってもよい。すなわち、1より大きい比透磁率を有する磁性体
の部材を用いれば、どのような部材であってもよい。
【0032】
[変形例2]
上述した実施形態においては、構造物500に設置される読取装置20は単数であった
が、複数設置されてもよい。読取装置20が複数設置される場合については、以下の態様
で読取装置20を動作させてもよい。
第1の態様として、複数の読取装置20は、相互に通信して、通信装置10との無線通
信を行う期間を決定する。そして、いずれかの読取装置20が通信装置10と無線通信を
行う期間においては、他の読取装置20が通信装置10と無線通信を行わないようにする
。すなわち、各読取装置20が通信装置10と通信する期間を時分割で制御するようにす
ればよい。このようにすると、同一の構造物500において一の通信装置10と通信可能
な読取装置20が複数存在しても、各読取装置20は、同じ周波数の搬送波を用いること
ができる。
また、読取装置20は、他の読取装置20に対して、すでに履歴情報を読み取った通信
装置10を通知することで、通知を受けた他の読取装置20が同一の通信装置10から重
複して履歴情報を読み取ることを防止してもよい。
第2の態様については、図7を用いて説明する。
【0033】
図7は、読取装置20が複数設置されたときの通信の態様を説明する図である。変形例
1で説明した構造物500Bにおいて、通信装置10が4台(それぞれ通信装置10−1
、10−2、10−3、10−4という)、読取装置20が2台(それぞれ読取装置20
−1、20−2という)が設置された場合を例として説明する。この例における読取装置
20−2は、実施形態における読取装置20とは異なり、履歴情報の要求は行わないが、
通信装置10から送信された履歴情報については受信する構成である。
この例においては、読取装置20から送信される信号の出力が、通信装置10から送信
させる信号の出力よりも大きいものとする。このような状況は、通信装置10の電源部1
15が供給可能な電力量、アンテナ部12のループアンテナの性能、アンテナ接続部11
2の回路構成などについて、読取装置20との違いによって発生する。そのため、例えば
、通信装置10−4は、読取装置20−1から送信される信号を受信することができるが
、読取装置20−1は、通信装置10−4から送信される信号を受信できない場合が生じ
る。
【0034】
一方、読取装置20−2においては、読取装置20−1に比べて通信装置10−4から
の距離が近い。したがって、読取装置20−1からの要求に対する応答である履歴情報を
示す信号が通信装置10−4から送信されると、読取装置20−2においては、この信号
を受信することができる。この例においては、読取装置20−2は、読取装置20−1の
要求に応じた応答である履歴情報を示す信号については、その他、通信装置10−2、1
0−3からも受信したものとする。
この結果、読取装置20−1は、通信装置10−1、10−2、10−3に対応する履
歴情報を記憶する。また、読取装置20−2は、通信装置10−2、10−3、10−4
に対応する履歴情報を記憶する。
【0035】
利用者は、履歴情報の読み出しが終了した読取装置20−1、20−2を構造物500
Bから取り外し、インターフェイス218を介してサーバー1000に接続させる。そし
て、読取装置20−1、20−2は、それぞれに記憶されている履歴情報をサーバー10
00に出力する。サーバー1000は、通信装置10−2、10−3に対応する履歴情報
については重複するものであるから、重複する履歴情報のいずれか一方を削除して、各通
信装置10からの履歴情報から振動モードの解析などを行う。
このようにして、構造物500Bに設置された複数の通信装置10に対応した履歴情報
を読み取るときに、履歴情報の送信を要求する読取装置20と受信する読取装置20とが
異なるようにしてもよい。そして、サーバー1000などにおいて読み取った履歴情報を
統合して解析してもよい。
なお、第1の態様のように読取装置20−1、20−2間において互いに通信できる場
合には、読取装置20−1は、読取装置20−2を経由して通信装置10−4に対応する
履歴情報を受信してもよい。
【0036】
[変形例3]
上述した実施形態においては、アンテナ部12、22は、ワイヤー50の周囲を巻くこ
とにより、ワイヤー50を磁心とするように構成されていたが、ワイヤー50を磁心とす
る構成に限られない。例えば、図8に示すような構成にすればよい。
【0037】
図8は、通信装置10Aと読取装置20Aとの通信の態様を説明する図である。通信装
置10Aは、ワイヤー50の比透磁率よりも大きい比透磁率を有する磁性部材120を磁
心とするアンテナ部12Aを有する。読取装置20Aは、ワイヤー50の比透磁率よりも
大きい比透磁率を有する磁性部材220を磁心とするアンテナ部22Aを有する。磁性部
材120、220は、例えば、フェライトである。
このような通信装置10Aおよび読取装置20Aにおいては、信号の送受信のときに発
生する磁界については、その磁界に係る磁力線Mは、磁性部材120、220に引き寄せ
られるとともに、それ以外の部分においてはワイヤー50に引き寄せられる。このように
してアンテナ部12A、22Aは、ワイヤー50と磁気的に結合する。
信号を受信するときには、ワイヤー50よりも比透磁率が大きい磁性部材120、22
0が磁心として存在することにより、磁力線Mをワイヤー50からアンテナ部12A、2
2Aに引き寄せるため、受信感度を向上させることができる。
【0038】
また、実施形態においては、アンテナ部12、22をワイヤー50に巻きつける必要が
あったが、アンテナ部12A、22Aを用いれば、ワイヤー50に巻きつける必要がなく
、ワイヤー50の近くに設置すればよいため、設置作業が容易である。
なお、通信装置10と読取装置20Aとの組み合わせ、通信装置10Aと読取装置20
との組み合わせで使用してもよい。
【0039】
このようなアンテナ部12A、22Aを用いると、アンテナ部12、22とは異なり、
予めループアンテナとして形成しておくことができるから、図9に示すような構成のアン
テナ部12Bを用いるようにしてもよい。
【0040】
図9は、アンテナ部12Bの構成を説明する図である。アンテナ部12Bは、磁性部材
120を磁心とし、同じ方向に巻かれているループアンテナ126−1、126−2を有
する。磁性部材120の一端側のループアンテナ126−1の端部X1と他端側のループ
アンテナ126−2の端部Y2は、それぞれ、実施形態における構成と同様に、アンテナ
接続部112に接続されるアンテナ端子122A−1、122A−2である。一方、残り
のループアンテナ126−1の端部Y1とループアンテナ126−2の端部X2とは電気
的に接続され、アンテナ端子122A−3に接続されている。このアンテナ端子122A
−3は、アンテナ接続部112の回路駆動に用いられる電源電圧の低電位側(または高電
位側)に接続される。これにより、アンテナ接続部112は、アンテナ部12Aに比べて
2倍の電圧振幅でアンテナ部12Bを駆動することができる。なお、読取装置20のアン
テナ部についてもこの構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,10A,10−1,10−2,10−3,10−4…通信装置、11…本体部、1
2,12A,12B…アンテナ部、110…制御部、111…記憶部、112…アンテナ
接続部、113…測定部、114…時計部、115…電源部、120…磁性部材、121
…巻付部材、122−1,122−2,122A−1,122A−2,122A−3…ア
ンテナ端子、123−1,123−2…コネクター、124−1,・・・,124−6…
接続端子、125−1,・・・,125−4…アンテナ線、126−1,126−2…ル
ープアンテナ、20,20A,20−1,20−2…読取装置、21…本体部、22,2
2A…アンテナ部、210…制御部、211…記憶部、212…アンテナ接続部、216
…表示部、217…操作部、218…インターフェイス、220…磁性部材、50…ワイ
ヤー、51…床版、500,500A,500B…構造物、1000…サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比透磁率が1より大きい磁性体の部材を有する構造物に設置される通信装置であって、
前記設置された位置の周囲における特定の物理量を測定する測定手段と、
前記部材に磁気的に結合するアンテナによって、当該部材と磁気的に結合するアンテナ
を有する他の装置との間で電磁誘導を用いた無線通信を実現し、前記測定手段によって測
定された物理量に応じた情報を、当該他の装置に送信する送信手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記アンテナは、前記部材を磁心とするように当該部材の周囲を巻くように設けられる
ループアンテナである
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記アンテナと電気的に接続されたコンデンサーを有し、前記アンテナが前記部材に磁
気的に結合した状態で、前記アンテナおよび前記コンデンサーを有する共振回路の共振周
波数が、前記無線通信に用いられる周波数に応じた値になるように、前記コンデンサーの
容量を調整する調整手段をさらに具備する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記アンテナは、前記部材より大きい比透磁率の磁心を有するループアンテナである
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
比透磁率が1より大きい磁性体の部材と、通信装置とを具備する構造物であって、
前記通信装置は、
前記設置された位置の周囲環境に応じた物理量を測定する測定手段と、
前記部材に磁気的に結合するアンテナによって、当該部材と磁気的に結合するアンテナ
を有する他の装置との間で電磁誘導を用いた無線通信を実現し、前記測定手段によって測
定された物理量に応じた情報を、当該他の装置に送信する送信手段と
を備える
ことを特徴とする構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−65324(P2011−65324A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214158(P2009−214158)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】