通信装置および通信方法
【課題】 エラー訂正処理の処理単位として適切な値を取ることにより、マルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行う場合に、ISDN等の他の通信方式への干渉ノイズ等による影響を与えないで、かつなるべくデータ通信の際の遅延を抑えることができ、データ伝送効率を上げて、最適なエラー訂正を実現する。
【解決手段】 サブフレーム内の処理単位数が10シンボルである場合、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数10シンボルの約数単位である2シンボル及び5シンボルで行うようにしたものである。
【解決手段】 サブフレーム内の処理単位数が10シンボルである場合、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数10シンボルの約数単位である2シンボル及び5シンボルで行うようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数のトーン(キャリアともいう)にデータを割り当ててデータ通信を行うDMT(Discrete MultiTone)変復調方式等のマルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行うようにした通信システムおよび通信装置および通信方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、有線系ディジタル通信方式として、既設の電話用銅線ケーブルを使用して高速ディジタル通信を行うADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)通信方式や、HDSL(high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式、VDSL(Very-high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式等のxDSL通信方式が注目されている。これに用いられている主な変復調方式に、DMT(Discrete MultiTone)変復調方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変復調方式等のマルチキャリア変復調方式がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、マルチキャリア変復調方式を用いたxDSL通信の伝送路と、既存のISDN等の時分割二重方式通信の伝送路とが途中の集合線路で束ねられて隣接している場合に、相互の干渉ノイズ等による影響を考慮する必要がある。
【0004】したがって、xDSL通信装置では、ISDN等の他の通信方式への干渉ノイズの影響を与えないでデータを送信することが必要となるが、このような干渉ノイズの影響を与えないで効率よく最適なエラー訂正を行って伝送する方法は提案されていなかった。
【0005】本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、エラー訂正処理の処理単位として適切な値を取ることにより、マルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行う場合に、ISDN等の他の通信方式への干渉ノイズの影響を与えないで、かつなるべくデータ通信の際の遅延を抑えることができ、データ伝送効率を上げて、最適なエラー訂正を実現することのできる通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る通信装置は、複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えるものである。
【0007】また、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行う初期化設定手段を備えるものである。
【0008】また、前記初期化設定手段は、初期化処理実行時に所定の規則に従ったビットの並び替え及び再生を行うインターリーブ処理に関する情報の設定を行うとともに、前記インターリーブ処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うインターリーブ処理手段を備えるものである。
【0009】また、前記インターリーブ処理を行う経路と行わない経路が存在する場合、前記エラー訂正処理手段は、前記インターリーブ処理を行わない経路におけるエラー訂正処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うものである。
【0010】本発明に係る通信方法は、複数のトーンにデータを割り当ててデータ通信を行い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信方法において、この通信方法が他の通信方法に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うとともに、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行うものである。
【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下の実施の形態では、通信装置はADSL通信方式を行うものとして説明するが、マルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行う通信装置であればよく、これに限られない。ここで、ADSL通信方式は、ANSIのT1.423等において標準化されており、また、ITU−TによるADSLの勧告により、G992.1(G.dmt)およびG992.2(G.lite)の次期バージョンにあたるG.dmt.bisおよびG.lite.bisの日本向け仕様(AnnexC)の高効率化,高品質化が進められている。また、G.dmtおよびG.liteの日本向け仕様においては、ADSL伝送路と半二重通信方式のISDN通信システム例えばTCM−ISDN通信のISDN伝送路が、途中の集合線路で束ねられて隣接している場合に、相互の干渉が起きないように各装置を制御する。従って、上記日本向け仕様では、既知のTCM−ISDN周期(2.5ms)、および米国向け仕様(Annex A)のDMTシンボルの管理単位であるスーパーフレーム(Superframe:17ms)の双方を両立するために、すなわち、両者との同期を確立するために、両者の最小公倍数である85msを単位するハイパーフレーム(Hyperframe)と呼ばれるフレームを採用する。
【0012】図1は、ADSL通信方式におけるハイパーフレームのシンボル形式を示す図である。ADSLサービスにおいては、図1に示すように、遅延を考慮した境界(図示の点線)を設け、例えば、局側装置ATU−CおよびOCU(Office Channel Unit :局内回線終端装置)のもつTTR(TCM-ISDN Timing Reference)のタイミングに同期して、TCM−ISDNのDS(Downstream)時にADSLもDSとし、TCM−ISDNのUS(Upstream)時にADSLもUSとする。具体的にいうと、OCUによるISDN−DS送信時に、ATU−CにてFEXT(Far End Cross Talk)−DS送信を行い、DSU(Digital Service Unit:ディジタル回線終端装置)によるISDN−US送信時に、端末側装置ATU−RにてFEXT(Far End Cross Talk)−US送信を行う。
【0013】なお、図1においては、1ハイパーフレームが通常のシンボル340シンボルと、同期用のシンボルSS、ISS5シンボルとの345シンボル(85ms)にて構成され、ここでは、代表してサイクリックプレフィックスを含むハイパーフレームの例を示しているが、サイクリックプレフィックスを含まないハイパーフレームにおいても、同様に動作するものとする。ただし、その場合は、1ハイパーフレーム(345シンボル)が80msとなる。また、図1における網掛け部分をFEXT期間のシンボルすなわちFEXTシンボルと呼び、その他のデータをNEXT(Near End Cross Talk)期間のシンボルすなわちNEXTシンボルと呼ぶ。
【0014】また、上記ハイパーフレームにおいて、連続する10個のDMTシンボル(1DMTシンボルは0.246ms)に相当する各サブフレーム(Subframe:ただし、図示のSSおよびISSを除く)では、TCM−ISDNの漏話雑音であるFEXTノイズおよびNEXTノイズを回避するため、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルの数が、各周期によってそれぞれ3個と7個である場合と、4個と6個である場合がある(図1参照)。そして、上記のような構成のハイパーフレームを単位とするADSL通信方式では、FEXT期間のシンボルに配分するビット数を多くし、NEXT期間のシンボルに配分するビット数を少なくする或いはNEXT期間にシンボルを配分しないことにより、影響の大きいNEXTノイズを回避する。
【0015】つぎに、上記ADSL通信方式における各DMTシンボルのビットの配分方法を説明する。AnnexCにおける通信方式では、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに対して個別に均等にビットを配分している。従って、例えば、ネットデータレートRが160kbps、ノイズの影響の大きいNEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数は、下記の式により求められる。
f={(R×85ms)−(n×214)}/126≒74ビット (1)式ただし、上記(1)式の85msはハイパーフレームの長さを示すものであり、126はハイパーフレーム中のFEXTシンボル数であり、214はハイパーフレーム中のNEXTシンボル数である。
【0016】図2は、上記(1)式により求められたDMTシンボルのビット配分を図示したものである。以降、これを通常モードと呼ぶ。図2は、レートコンバート前の1シンボル40ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のFEXTシンボルには74ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには20ビットを割り当てた場合を示している。
【0017】しかしながら、上記通常モードでは、レートコンバータによりビット配分を変えるとき、図示のとおり、TCM−ISDN周期毎に伝送されるビット数に偏りがある。そのため、送信側である、例えば、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、すなわち、偏りを吸収するためのバッファ処理を行ってから、シンボルを出力することになり、伝送遅延を増加させることになる。
【0018】図3は、上記通常モードにおける伝送遅延を具体的に説明するための図である。なお、図3は、ネットデータレートR=64kbps、NEXTシンボルに配分できる最大ビット数n=0の条件で、レートコンバータによりビット配分を行った場合の伝送遅延を示すものである。図示のとおり、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになり、ここでは、レートコンバータによる遅延3.904ms及び0.075msと、IFFT及びFFTによる遅延0.246ms×2を合わせた4.472msが伝送遅延となっている。
【0019】そこで、ADSL通信方式においては、上記通常モードに加え、さらにFEC(フォワードエラーコレクション)にてFEC用コードの付加すなわちリードソロモン(以後、R−Sと呼ぶ)多項式によるエラー訂正だけを実行し、インタリーブによるスクランブル処理を行わないファーストデータバッファ経路の使用により、伝送遅延を抑える低遅延伝送モードを採用する。なお、もう1つの経路である、FEC(フォワードエラーコレクション)にてFEC用コードの付加すなわちR−S多項式によるエラー訂正を実行し、さらにインタリーブによるスクランブル処理を行うインターリーブバッファ経路を併用することにより、低遅延伝送に加えて、さらに高レートを実現できる。以下、この低遅延伝送モードおよび高レートについて説明する。
【0020】低遅延伝送モードでは、TCM−ISDN周期に応じた論理フレーム(サブフレーム)毎に、一定量のビットを送信する。従って、例えば、ネットデータレートrが64kbpsで、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のビット配分に余裕があり、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルへのビット配分が均等にできる場合、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに配分されるビット数nは、下記の式により求められる。
n=(r×2.5ms)/10=16 (2)式
【0021】図4は、低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を図示したものである。図4は、ファストデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後も16ビットの均一レートデータとして処理し、インターリブドデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のFEXTシンボルには28ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには9ビットを割り当てた場合を示している。16ビットのすなわち、このような場合には、図4に示すとおり、ファーストデータバッファに16ビットづつ配分することにより、データを16ビットだけ蓄積し、1シンボル分の遅延を付加されるだけでデータを出力することができ、低遅延伝送モードが実現される。さらに、ここでは、インターリーブドデータバッファを併用することにより、伝送ロスのない高レートが同時に実現される。
【0022】また、例えば、ネットデータレートrが160kbpsで、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のビット配分に余裕がなく、NEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数は、下記の式により求められる。
f3={(r×2.5ms)−(n×7)}/3≒87ビット (3)式f4={(r×2.5ms)−(n×6)}/4=70ビット (4)式ただし、上記(3)式のf3は、サブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルに配分されるビット数を示すものであり、上記(4)式のf4は、サブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルに配分されるビット数を示すものである。また、上記(3)および(4)式の2.5msはサブフレームの長さを示すものであり、3および4はサブフレーム中のFEXTシンボル数であり、7および6はサブフレーム中のNEXTシンボル数である。
【0023】図5は、上記(3)式および(4)式により求められたDMTシンボルのビット配分を図示したものである。以降、上記(2)式、(3)式および(4)式によるビット配分を低遅延伝送モードと呼ぶ。図5は、レートコンバート前の1シンボル40ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには70ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには87ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには20ビットを割り当てた場合を示している。
【0024】図6は、上記低遅延伝送モードにおける伝送遅延を説明するための図である。なお、図6は、ネットデータレートr=64kbps、NEXTシンボルに配分できる最大ビット数n=0の条件で、レートコンバータによりビット配分を行った場合の伝送遅延を示すものである。図示のとおり、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになるが、ここでは、ファーストデータバッファがサブフレーム単位の構成でよいことから、通常モードより伝送遅延が短くなり、レートコンバータによる遅延1.746ms及び0.196msと、IFFT及びFFTによる遅延0.246ms×2を合わせた2.434msが伝送遅延となっている。
【0025】図7は、低遅延伝送モードかつ高レートのデータ通信を示す図である。図7は、ファストデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには27ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには33ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには9ビットを割り当て、インターリーブドデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには45ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには39ビットを割り当てた場合について示している。ファーストデータバッファに加えて、インターリーブドデータバッファを併用する場合には、例えば、インターリーブドデータバッファ経路のr=64kbps,ファーストデータバッファ経路のr=64kbps,およびNEXT期間の最大ビット数n=9としたう7に示すとおり、ファーストデータバッファ(fastdata buffer)にレートコンバート前の均一レートデータのサブフレーム中に含まれるビット数すなわち160ビットづつ配分することにより、データを160ビットだけ蓄積し、1サブフレーム分の遅延を付加されるだけでデータを出力することができ、低遅延伝送モードが実現されている。さらに、ここでは、インターリーブドデータバッファ(interleaved data buffer)を併用することにより、伝送ロスのない高レートが同時に実現されている。なお、図示のサブフレーム単位における162ビットのうち、2ビットは、ダミービットであるため使われない。
【0026】このように、上述のADSL通信方式における通信装置では、通常モードおよび低伝送遅延モードの2つのモードを使い分けることにより、またはこの2つのモードにて同時に動作させることにより、低伝送遅延および高レートの通信を可能としている。
【0027】ここで、上記通信装置では、ADSL通信方式におけるG992.1(G.dmt)においてのみ、すなわち、インターリーブドデータバッファおよびファーストデータバッファの2種類のバッファを備える通信装置においてのみ、前記低遅延伝送で、しかも高レートのデータ通信を行うことが可能であり、インターリーブドデータバッファしか持たないG992.2(G.lite)における通信装置にて低遅延伝送を行うような場合は、ビットロスが発生し、高レートでの動作ができなくなる。
【0028】具体的にいうと、例えば、G992.2(G.lite)における通信装置が、図5に示すような、低遅延伝送を行うような場合、この通信装置では、サブフレーム単位に同一のビット数を配分するため、FEXT期間が3個と4個の場合でビット配分が異なることになる。そのため、当然3個のFEXT期間のビット数が最大ビット数nとなり、4個のFEXT期間においては、3個のFEXT期間のビット数より少ないビット数n´が配分されることになり、データ通信においてn−n´のビットロスが発生することから、それに伴って高レートでのデータ通信が実現できなくなる。
【0029】また、G992.2(G.lite)における通信装置では、さらに低遅延伝送を行おうとすると、現行の規格にて、サブフレーム単位にFEC用コードすなわちR−S多項式によるエラー訂正およびインターリーブがかけられないため、エラー訂正特性が劣化する。
【0030】すなわち、以上のことからG992.2(G.lite)における通信装置では、低遅延伝送ができないことになり、通常モードにおいては、特にISDNの製品スペックである2〜3msの遅延クリティカル量を満たすことができない。
【0031】また、G992.1(G.dmt)における通信装置では、前述したとおり、低遅延伝送かつ高レートでのデータ通信が可能となるが、現行の規格では、サブフレーム単位のインターリーブがかけられないため(現行では、インターリーブ幅(Interleave depth)Dが1,2,4,8,16,32,64)、バーストエラーによる最適なエラー訂正を行うことができない。
【0032】そこで、以下に、インターリーブドデータバッファ経路およびファーストデータバッファ経路の2つの経路を備える場合(G.dmt)における低伝送遅延、高レートでのデータ通信、および最適なエラー訂正を実現するとともに、インターリーブドデータバッファ経路しか持たない場合(G.lite)における低伝送遅延、および高レートでのデータ通信も実現可能とする通信装置について説明する。
【0033】図8は、本発明にかかる通信装置(ADSLの局側装置であるATU−Cに相当する)によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータである。例えば、ADSL通信方式においては、ハンドシェーク(G.hs:G.994.1)のときに、現行の機能をいかしてベンダ情報を交換することで、ベンダ特有の機能を実現してもよいことになっている。そこで、各メーカでは、標準規格に基づく開発をすすめると同時に、それぞれ個別の特徴をだすため、ベンダ特有の機能をもり込むことにより、他社との差別化をはかっている。
【0034】ここで、まず、本発明にかかる通信装置のポイントを説明する前に、上述のような通信方法を実行可能な通信装置の基本動作を図面に基づいて説明する。DMT(Discrete Multi Tone)変復調方式を用いて、データ通信を行う有線系ディジタル通信方式としては、既設の電話回線を使用して数メガビット/秒の高速ディジタル通信を行うADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)通信方式、およびHDSL(high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式等のxDSL通信方式がある。なお、この方式は、ANSIのT1.413等において標準化されている。
【0035】図9は、本発明にかかる通信装置の送信系の構成を示すものであり、例えば、ATU−Cの送信系の構成を示すものである。なお、ATU−Rの送信系の構成も同様の構成である。図9において、ATU−Cの送信系は、送信データをマルチプレックス/シンクコントロール(図示のMUX/SYNC CONTROLに相当)41にて多重化し、多重化された送信データに対してサイクリックリダンダンシィチェック(CRC : Cyclic redundancy checkに相当)42、43にて誤り検出用コードを付加し、さらに、フォワードエラーコレクション(SCRAM&FECに相当)44、45にてFEC用コードの付加およびスクランブル処理が行われる。
【0036】なお、マルチプレックス/シンクコントロール41から、トーンオーダリング49に至るまでには2つの経路があり、一つはインターリーブ(INTERLEAVE)46が含まれるインターリーブドデータバッファ(Interleaved Data Buffer)経路、もう一方はインターリーブ46を含まないファストデータバッファ(Fast Data Buffer)経路であり、インターリーブ処理を行うインターリーブドデータバッファ経路の方の遅延が大きくなる。
【0037】その後、送信データは、レートコンバーター(RATE-CONVERTORに相当)47、48にてレートコンバート処理を行い、トーンオーダリング(TONE ORDERRING)49にてトーンオーダリング処理を行う。そして、トーンオーダリングされた送信データに基づいて、コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング(CONSTELLATION AND GAIN SCALINGに相当)50にてコンステレーションデータを作成し、逆高速フーリエ変換部(IFFT:Inverse Fast Fourier transformに相当)51にて逆高速フーリエ変換を行う。
【0038】最後に、インプット・パラレル/シリアル・バッファ(INPUT PARALLEL/SERIAL BUFFERに相当)52にてフーリエ変換後のパラレルデータをシリアルデータに変換し、アナログ・プロセッシング・アンド・DAC(ANALOG PROCESSING ANDDACに相当)53にてD/Aコンバータを通してディジタル波形をアナログ波形に変換し、続いてローパスフィルタをかけて、送信データを電話回線上に送信する。
【0039】図10は、本発明にかかる通信装置の受信系の構成を示すものであり、例えば、ATU−Rの受信系の構成を示すものである。なお、ATU−Cの受信系の構成も同様の構成である。図10において、ATU−Rの受信系は、受信データ(前述の送信データ)に対し、アナログ・プロセッシング・アンド・ADC(図示のANALOG PROCESSING AND ADCに相当)141にてローパスフィルタをかけ、その後、A/Dコンバータを通してアナログ波形をディジタル波形に変換し、タイムドメインイコライザ(TECに相当)142にて時間領域の適応等化処理を行う。
【0040】その時間領域の適応等化処理がされたデータは、インプット・シリアル/パラレル・バッファ(INPUT SERIAL / PARALLEL BUFFERに相当)143にてシリアルデータからパラレルデータに変換され、そのパラレルデータに対して高速フーリエ変換部(FFT:Fast Fourier transformに相当)144にて高速フーリエ変換を行い、その後、周波数ドメインイコライザ(FECに相当)145にて周波数領域の適応等化処理を行う。
【0041】そして、その周波数領域の適応等化処理がされたデータは、コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング(CONSTELLATION AND GAIN SCALINGに相当)146およびトーンオーダリング(TONE ORDERRING)147にて行われる複合処理(最尤複合法)およびトーンオーダリング処理により、シリアルデータに変換され、その後、レートコンバーター(RATE-CONVERTORに相当)148,149によるレートコンバート処理、デインターリーブ(DEINTERLEAVEに相当)150によるデインターリーブ処理、DESCRAM&FEC151,152によるFEC(forward error correction:前方誤り訂正)およびデスクランブル処理、サイクリックリダンダンシィチェック(CRC : Cyclic redundancy checkに相当)153,154によるCRC(cyclic redundancy check:巡回冗長検査)等の処理が行われ、最終的にマルチプレックス/シンクコントロール(図示のMUX/SYNC CONTROLに相当)155から受信データが再生される。
【0042】また、上記基本動作を行う通信装置(G.dmtおよびG.lite)では、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに対して個別に均等にビットを配分する通常モードによる動作を行う。従って、例えば、ネットデータレートrが160kbps、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数が、先に説明した(1)式により求められる。
【0043】しかしながら、上記通常モードでは、レートコンバータ47および48によりビット配分を変えるとき、TCM−ISDN周期毎に伝送されるビット数に偏りがあり、例えば、ATU−Cでは、レートコンバータ47および48にデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになり、伝送遅延を増加させることになる(図2,図3参照)。具体的にいうと、最大伝送遅延は、4.472msとなる。
【0044】そこで、G.dmtにおける通信装置においては、さらに、フォワードエラーコレクション44にてFEC処理だけを実行し、インタリーブによるスクランブル処理を行わないファーストデータバッファ経路の使用により、伝送遅延を抑える低遅延伝送モードを採用している(図5,図6参照)。また、もう1つの経路、すなわち、フォワードエラーコレクション45にてFEC処理を実行し、さらにインタリーブ46にてスクランブル処理を行うインターリーブドバッファ経路を併用することにより、低遅延伝送に加えて、さらに高レートのデータ通信を実現している(図4、図7参照)。具体的にいうと、最大伝送遅延は、2.434msとなる。
【0045】このように、本実施の形態における通信装置でも、従来と同様に、G.liteにおける通信装置が通常モードでの動作を行い、G.dmtにおける通信装置が通常モードに加えて、局側装置ATU−Cと端末側装置ATU−Rでテーブルを交換することにより設定される低伝送遅延モードを採用し、この2つのモードを使い分けることにより、またはこの2つのモードにて同時に動作させることにより、低伝送遅延および高レートのデータ通信を可能としている。
【0046】例えば、上記のように、G.dmtにおける通信装置が低遅延伝送モードにて動作を行う場合は、ATU−CおよびATU−RがG.994.1におけるハンドシェークおよびその後の情報の交換(確認)により、すなわち、初期化シーケンスにおいて、相互に低遅延伝送モードでの動作が可能なことを認識したうえでデータ通信を行う。
【0047】図11は、G.dmtに規定されている初期化シーケンスである。なお、ここでは、本実施の形態にかかわる部分についてのみ説明する。
【0048】まず、G.994.1(G.hs)において、ベンダ特有の情報であるベンダ情報の確認を行う。具体的にいうと、ベンダ情報を交換するために、ATU−RがATU−Cに対してCLR(Capabilities List + Request:ATU−RのCapability mode Listを送出し、ATU−CのCapability mode List送出を要求)を送出し、その応答として、ATU−CがATU−Rに対してCL(Capabilities List)を送出する。
【0049】図12は、G.994.1において交換される情報のフォーマットの例を示す図である。ここでは、Identification (I) fieldのMessage type fieldにメッセージの種別(CLR,CL等)が設定され、Vendor ID fieldにベンダ情報(各メーカのコード)が設定され、Standard Information (s) fieldにG.lite、G.dmt、または他の規格が設定される。なお、低遅延伝送モードにて動作する場合は、本実施の形態ではベンダ情報を設定することとしているが、例えば、低遅延伝送モードにて動作可能かどうかを判断するための固有のモード情報を設定または交換することとしてもよい。
【0050】図13は図11におけるC−RATES1およびR−RATES1の情報を示す図であり、所定のデータ交換後、図13(a)のC−RATES1および(b)のR−RATES1に示すように、R(R−Sコードワード毎の冗長バイト数)、S(R−Sコードワード毎のDMTシンボル数)、D(Interleave Depth)の情報を交換する。
【0051】図14は図11におけるC−MSG1およびR−MSG1の情報を示す図であり、その後、さらに、図14に示すC−MSG1およびR−MSG1のリザーブビットm13,m12(ここでは、Low payload transfer delay modeに相当)を使用して、ファーストデータバッファ経路/インターリーブドデータバッファ経路の選択と、低伝送遅延モード/通常モードの選択を行う。
【0052】なお、例えば、m12=0:ファーストデータバッファ経路は通常モードで処理m12=1:ファーストデータバッファ経路は低遅延伝送モードで処理m13=0:インターリーブドバッファ経路は通常モードで処理m13=1:インターリーブドバッファ経路は低遅延伝送モードで処理を意味する。
【0053】このように、G.dmtにおける伝送装置は、上記各テーブルを低遅延伝送モードに設定後、低遅延伝送モードによるデータ通信が可能となる。
【0054】つぎに、G.dmtおよびG.liteにおける通信装置にて、ファーストデータバッファおよびインターリーブドデータバッファに蓄えられるデータのフォーマットについて説明する。
【0055】図15は、各バッファに蓄えられるデータのフォーマットを示す図である。なお、G.liteでは、インターリーブドデータバッファだけを備えており、ファーストデータバッファを持たない。
【0056】例えば、図示のとおり、ファーストデータバッファに格納される1DMTシンボルは、fast byte,…,FEC redundancy(FEC用データ,冗長ビット数:R)から構成され、このデータ単位でファーストデータバッファに格納される。一方、インターリーブドデータバッファに格納される1DMTシンボルは、FEC処理およびインターリーブ後のインターリーブデータとして構成される。
【0057】図16はインターリーブドデータのフォーマットを示す図であり、例えば、図16に示すように、所定ビット数:KIバイトの各データにFEC用冗長コードが付加され、さらにインターリーブされたNIバイトのインターリーブデータが、インターリーブドデータバッファに格納される。
【0058】しかしながら、現行の規定によるADSL通信方式における通信装置では、ADSL通信方式におけるG992.1(G.dmt)においてのみ、すなわち、インターリーブドデータバッファおよびファーストデータバッファの2種類のバッファを備える通信装置においてのみ、先に説明したように、前記低遅延伝送で、しかも高レートのデータ通信を行うことが可能であるが、インターリーブデータバッファしか持たないG992.2(G.lite)における通信装置では、低遅延伝送を行うような場合にビットロスが発生し、高レートでの動作ができない。
【0059】そこで、本実施の形態1においては、G.liteにおける通信装置にて、FEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理すなわちR−S多項式によるエラー訂正が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=10を設けた。設定方法については、先に説明したG.dmtにおける初期化シーケンスにより、すなわち、ATU−CおよびATU−R間でベンダ情報(G.994.1)、S、R(図11におけるC−RATES1、R−RATES1)およびモードの設定(図11におけるC−MSGS1、R−MSGS1)を行うことにより、S=10を設定する。なお、このとき、RはSの整数倍であることから、R=10となる。
【0060】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。この値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0061】また、本実施の形態1においては、さらに、G.liteにおける通信装置にて、インターリーブ実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のインターリーブが可能となるようなインターリーブ幅D=10を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でD=10、S=10(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0062】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、さらに、サブフレーム単位でインターリーブをかけることも可能となるため、低遅延モードにおいても、エラー訂正の特性を向上させることができるようになる。なお、SおよびDのパラメータについては、10のときに最大のエラー訂正性能が得られるが、D=2およびS=2の場合でも、サブフレーム単位のバッファリングが可能であるため、低遅延伝送モードでの動作が可能となる。また、D=5においても、サブフレーム単位のバッファリングが可能であるため、同様の効果が得られる。
【0063】また、本実施の形態1においては、G.dmtにおける通信装置にて、インターリーブドデータバッファ経路を選択する際のパラメータを、前記G.liteにおける通信装置と同様の方法で設定可能とする。さらに、G.dmtにおける通信装置では、ファーストデータバッファ経路を選択する際のFEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すファーストデータバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理(R−S多項式による)が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数:S=10を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でS=10(図11R>1におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0064】これにより、G.dmtにおける通信装置でも、ファーストデータバッファ経路を選択した場合においても、サブフレーム単位のFEC処理がかけられるため、最適なエラー訂正を行うことができる。
【0065】実施の形態2.上記実施の形態1では、サブフレーム単位(10シンボル単位)にFEC処理をかけることができるようにするために、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=10の場合について説明したが、本実施の形態では、要求されるエラー訂正能力に合わせてR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを変えて処理する場合について説明する。
【0066】本発明に係る通信装置の送信系及び受信系の構成は、上記実施の形態1における構成を示した図9及び図10と同一であるため、構成の説明は省略して、図9及び図10を参照して動作のみを説明する。
【0067】なお、本実施の形態2においてエラー訂正処理を行うのは、例えば図9におけるエラー訂正処理手段としてのSCRAM&FEC44,45、図10におけるエラー訂正処理手段としてのDESCRAM&FEC151,152である。また、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報であるR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を行うのは、初期化設定手段としての図示しない通信装置内のF/Wである。
【0068】図17は、本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータである。図17に記載されたパラメータは図8と同一である。本実施の形態2においては、G.liteにおける通信装置にて、FEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図1717に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理すなわちR−S多項式によるエラー訂正が可能となるようなR−Sコードワード毎にDMTシンボル数S=2及び5を設けた。2及び5はサブフレーム単位である10シンボルの約数である。設定方法については、先に説明したG.dmtにおける初期化シーケンスにより、すなわち、ATU−CおよびATU−R間でベンダ情報(G.994.1)、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S、R−Sコードワード毎の冗長バイト数R(図11におけるC−RATES1、R−RATES1)およびモードの設定(図11におけるC−MSGS1,R−MSGS1)を行うことにより、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2或いは5を設定する。なお、このとき、R−Sコードワード毎の冗長バイト数RはSの整数倍であることから、S=2のときR=2、4、8、10となり、S=5のときR=5、10となる。
【0069】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができる。すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。それと同時に、R−S符号化によるエラー訂正能力はR/Sが大きいほどエラー訂正能力は高くなるため、例えば、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2を設定し、それに合わせてR−Sコードワード毎の冗長バイト数R=2、4、8、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。S=5を設定した場合も同様に、それに合わせてR=5、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。また、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを小さくすることにより、符号をデコードする際のバッファを小さくすることができる。また、上記遅延時間の値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0070】また、本実施の形態2においては、さらに、G.liteにおける通信装置にて、インターリーブ実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図1に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のインターリーブが可能となるようなインターリーブ幅D=5を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でインターリーブ幅D=2、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)或いはD=5、S=5の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0071】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、さらに、サブフレーム単位でインターリーブをかけることも可能となり、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができるため、低遅延モードにおいても、エラー訂正の特性を向上させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な処理を行うことができるようになる。
【0072】また、本実施の形態2においては、G.dmtにおける通信装置にて、インターリーブドデータバッファ経路を選択する際のパラメータを、前記G.liteにおける通信装置と同様の方法で設定可能とする。さらに、G.dmtにおける通信装置では、ファーストデータバッファ経路を選択する際のFEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図17に示すファーストデータバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理(R−S多項式による)が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2及び5を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でS=2及び5(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0073】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができる。すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。それと同時に、R−S符号化によるエラー訂正能力はR/Sが大きいほどエラー訂正能力は高くなるため、例えば、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2を設定し、それに合わせてR−Sコードワード毎の冗長バイト数R=2、4、8、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。S=5を設定した場合も同様に、それに合わせてR=5、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。また、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを小さくすることにより、符号をデコードする際のバッファを小さくすることができる。また、上記遅延時間の値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0074】また、本実施の形態2では初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を行っているが、エラー訂正処理手段としてのSCRAM&FEC44、45、DESCRAM&FEC151、152で、例えばS=R=D=2と決めて処理するようにしてもよい。
【0075】また、本実施の形態2では、サブフレーム内の処理単位数が10シンボルであり、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数10シンボルの約数単位である2シンボル及び5シンボルで行う場合について説明したが、これに限られず、サブフレーム内の処理単位数が12シンボルであり、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数12シンボルの約数単位である2シンボル、3シンボル、4シンボル、6シンボルで行う等他の値を用いても同様の効果を得ることができる。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えることにより、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ADSL通信方式におけるハイパーフレームのシンボル形式を示す説明図
【図2】 通常モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図3】 通常モードにおける伝送遅延を具体的に説明した説明図
【図4】 低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図5】 低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図6】 低遅延伝送モードにおける伝送遅延を説明した説明図
【図7】 低遅延伝送モードかつ高レートのデータ通信を示す説明図
【図8】 本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータを示す説明図
【図9】 本発明にかかる通信装置の送信系の構成を示す構成図
【図10】 本発明にかかる通信装置の受信系の構成を示す構成図
【図11】 G.dmtに規定されている初期化シーケンスを示す説明図
【図12】 G.994.1において交換される情報のフォーマットを示す説明図
【図13】 C−RATES1およびR−RATES1の情報を示す説明図
【図14】 C−MSG1およびRMSG1の情報を示す説明図
【図15】 各バッファに蓄えられるデータのフォマットを示す説明図
【図16】 インターリブドデータのフォーマットを示す説明図
【図17】 本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータを示す説明図
【符号の説明】
41 マルチプレックス/シンクコントロール
42、43 サイクリックリダンダンシィチェック(CRC)
44、45 フォワードエラーコレクション(FEC)(エラー訂正手段)
46 インターリーブ
47,48 レートコンバーター
49 トーンオーダリング
50 コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング
51 逆高速フーリエ変換部(IFFT)
52 インプット・パラレル/シリアル・バッファ
53 アナログ・プロセッシング・アンド・DAC
141 アナログ・プロセッシング・アンド・ADC
142 タイムドメインイコライザ(TEC)、
143 インプット・シリアル/パラレル・バッファ
144 高速フーリエ変換部(FFT)
145 周波数ドメインイコライザ(FEC)
146 コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング
147 トーンオーダリング
148、149 レートコンバーター
150 デインターリーブ
151,152 DESCRAM&FEC(エラー訂正手段)
153,154 サイクリックリダンダンシィチェック(CRC)
155 マルチプレックス/シンクコントロール
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数のトーン(キャリアともいう)にデータを割り当ててデータ通信を行うDMT(Discrete MultiTone)変復調方式等のマルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行うようにした通信システムおよび通信装置および通信方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、有線系ディジタル通信方式として、既設の電話用銅線ケーブルを使用して高速ディジタル通信を行うADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)通信方式や、HDSL(high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式、VDSL(Very-high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式等のxDSL通信方式が注目されている。これに用いられている主な変復調方式に、DMT(Discrete MultiTone)変復調方式やOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)変復調方式等のマルチキャリア変復調方式がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、マルチキャリア変復調方式を用いたxDSL通信の伝送路と、既存のISDN等の時分割二重方式通信の伝送路とが途中の集合線路で束ねられて隣接している場合に、相互の干渉ノイズ等による影響を考慮する必要がある。
【0004】したがって、xDSL通信装置では、ISDN等の他の通信方式への干渉ノイズの影響を与えないでデータを送信することが必要となるが、このような干渉ノイズの影響を与えないで効率よく最適なエラー訂正を行って伝送する方法は提案されていなかった。
【0005】本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、エラー訂正処理の処理単位として適切な値を取ることにより、マルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行う場合に、ISDN等の他の通信方式への干渉ノイズの影響を与えないで、かつなるべくデータ通信の際の遅延を抑えることができ、データ伝送効率を上げて、最適なエラー訂正を実現することのできる通信装置および通信方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る通信装置は、複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えるものである。
【0007】また、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行う初期化設定手段を備えるものである。
【0008】また、前記初期化設定手段は、初期化処理実行時に所定の規則に従ったビットの並び替え及び再生を行うインターリーブ処理に関する情報の設定を行うとともに、前記インターリーブ処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うインターリーブ処理手段を備えるものである。
【0009】また、前記インターリーブ処理を行う経路と行わない経路が存在する場合、前記エラー訂正処理手段は、前記インターリーブ処理を行わない経路におけるエラー訂正処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うものである。
【0010】本発明に係る通信方法は、複数のトーンにデータを割り当ててデータ通信を行い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信方法において、この通信方法が他の通信方法に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うとともに、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行うものである。
【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下の実施の形態では、通信装置はADSL通信方式を行うものとして説明するが、マルチキャリア変復調方式によりデータ通信を行う通信装置であればよく、これに限られない。ここで、ADSL通信方式は、ANSIのT1.423等において標準化されており、また、ITU−TによるADSLの勧告により、G992.1(G.dmt)およびG992.2(G.lite)の次期バージョンにあたるG.dmt.bisおよびG.lite.bisの日本向け仕様(AnnexC)の高効率化,高品質化が進められている。また、G.dmtおよびG.liteの日本向け仕様においては、ADSL伝送路と半二重通信方式のISDN通信システム例えばTCM−ISDN通信のISDN伝送路が、途中の集合線路で束ねられて隣接している場合に、相互の干渉が起きないように各装置を制御する。従って、上記日本向け仕様では、既知のTCM−ISDN周期(2.5ms)、および米国向け仕様(Annex A)のDMTシンボルの管理単位であるスーパーフレーム(Superframe:17ms)の双方を両立するために、すなわち、両者との同期を確立するために、両者の最小公倍数である85msを単位するハイパーフレーム(Hyperframe)と呼ばれるフレームを採用する。
【0012】図1は、ADSL通信方式におけるハイパーフレームのシンボル形式を示す図である。ADSLサービスにおいては、図1に示すように、遅延を考慮した境界(図示の点線)を設け、例えば、局側装置ATU−CおよびOCU(Office Channel Unit :局内回線終端装置)のもつTTR(TCM-ISDN Timing Reference)のタイミングに同期して、TCM−ISDNのDS(Downstream)時にADSLもDSとし、TCM−ISDNのUS(Upstream)時にADSLもUSとする。具体的にいうと、OCUによるISDN−DS送信時に、ATU−CにてFEXT(Far End Cross Talk)−DS送信を行い、DSU(Digital Service Unit:ディジタル回線終端装置)によるISDN−US送信時に、端末側装置ATU−RにてFEXT(Far End Cross Talk)−US送信を行う。
【0013】なお、図1においては、1ハイパーフレームが通常のシンボル340シンボルと、同期用のシンボルSS、ISS5シンボルとの345シンボル(85ms)にて構成され、ここでは、代表してサイクリックプレフィックスを含むハイパーフレームの例を示しているが、サイクリックプレフィックスを含まないハイパーフレームにおいても、同様に動作するものとする。ただし、その場合は、1ハイパーフレーム(345シンボル)が80msとなる。また、図1における網掛け部分をFEXT期間のシンボルすなわちFEXTシンボルと呼び、その他のデータをNEXT(Near End Cross Talk)期間のシンボルすなわちNEXTシンボルと呼ぶ。
【0014】また、上記ハイパーフレームにおいて、連続する10個のDMTシンボル(1DMTシンボルは0.246ms)に相当する各サブフレーム(Subframe:ただし、図示のSSおよびISSを除く)では、TCM−ISDNの漏話雑音であるFEXTノイズおよびNEXTノイズを回避するため、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルの数が、各周期によってそれぞれ3個と7個である場合と、4個と6個である場合がある(図1参照)。そして、上記のような構成のハイパーフレームを単位とするADSL通信方式では、FEXT期間のシンボルに配分するビット数を多くし、NEXT期間のシンボルに配分するビット数を少なくする或いはNEXT期間にシンボルを配分しないことにより、影響の大きいNEXTノイズを回避する。
【0015】つぎに、上記ADSL通信方式における各DMTシンボルのビットの配分方法を説明する。AnnexCにおける通信方式では、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに対して個別に均等にビットを配分している。従って、例えば、ネットデータレートRが160kbps、ノイズの影響の大きいNEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数は、下記の式により求められる。
f={(R×85ms)−(n×214)}/126≒74ビット (1)式ただし、上記(1)式の85msはハイパーフレームの長さを示すものであり、126はハイパーフレーム中のFEXTシンボル数であり、214はハイパーフレーム中のNEXTシンボル数である。
【0016】図2は、上記(1)式により求められたDMTシンボルのビット配分を図示したものである。以降、これを通常モードと呼ぶ。図2は、レートコンバート前の1シンボル40ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のFEXTシンボルには74ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには20ビットを割り当てた場合を示している。
【0017】しかしながら、上記通常モードでは、レートコンバータによりビット配分を変えるとき、図示のとおり、TCM−ISDN周期毎に伝送されるビット数に偏りがある。そのため、送信側である、例えば、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、すなわち、偏りを吸収するためのバッファ処理を行ってから、シンボルを出力することになり、伝送遅延を増加させることになる。
【0018】図3は、上記通常モードにおける伝送遅延を具体的に説明するための図である。なお、図3は、ネットデータレートR=64kbps、NEXTシンボルに配分できる最大ビット数n=0の条件で、レートコンバータによりビット配分を行った場合の伝送遅延を示すものである。図示のとおり、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになり、ここでは、レートコンバータによる遅延3.904ms及び0.075msと、IFFT及びFFTによる遅延0.246ms×2を合わせた4.472msが伝送遅延となっている。
【0019】そこで、ADSL通信方式においては、上記通常モードに加え、さらにFEC(フォワードエラーコレクション)にてFEC用コードの付加すなわちリードソロモン(以後、R−Sと呼ぶ)多項式によるエラー訂正だけを実行し、インタリーブによるスクランブル処理を行わないファーストデータバッファ経路の使用により、伝送遅延を抑える低遅延伝送モードを採用する。なお、もう1つの経路である、FEC(フォワードエラーコレクション)にてFEC用コードの付加すなわちR−S多項式によるエラー訂正を実行し、さらにインタリーブによるスクランブル処理を行うインターリーブバッファ経路を併用することにより、低遅延伝送に加えて、さらに高レートを実現できる。以下、この低遅延伝送モードおよび高レートについて説明する。
【0020】低遅延伝送モードでは、TCM−ISDN周期に応じた論理フレーム(サブフレーム)毎に、一定量のビットを送信する。従って、例えば、ネットデータレートrが64kbpsで、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のビット配分に余裕があり、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルへのビット配分が均等にできる場合、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに配分されるビット数nは、下記の式により求められる。
n=(r×2.5ms)/10=16 (2)式
【0021】図4は、低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を図示したものである。図4は、ファストデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後も16ビットの均一レートデータとして処理し、インターリブドデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のFEXTシンボルには28ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには9ビットを割り当てた場合を示している。16ビットのすなわち、このような場合には、図4に示すとおり、ファーストデータバッファに16ビットづつ配分することにより、データを16ビットだけ蓄積し、1シンボル分の遅延を付加されるだけでデータを出力することができ、低遅延伝送モードが実現される。さらに、ここでは、インターリーブドデータバッファを併用することにより、伝送ロスのない高レートが同時に実現される。
【0022】また、例えば、ネットデータレートrが160kbpsで、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のビット配分に余裕がなく、NEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数は、下記の式により求められる。
f3={(r×2.5ms)−(n×7)}/3≒87ビット (3)式f4={(r×2.5ms)−(n×6)}/4=70ビット (4)式ただし、上記(3)式のf3は、サブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルに配分されるビット数を示すものであり、上記(4)式のf4は、サブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルに配分されるビット数を示すものである。また、上記(3)および(4)式の2.5msはサブフレームの長さを示すものであり、3および4はサブフレーム中のFEXTシンボル数であり、7および6はサブフレーム中のNEXTシンボル数である。
【0023】図5は、上記(3)式および(4)式により求められたDMTシンボルのビット配分を図示したものである。以降、上記(2)式、(3)式および(4)式によるビット配分を低遅延伝送モードと呼ぶ。図5は、レートコンバート前の1シンボル40ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには70ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには87ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには20ビットを割り当てた場合を示している。
【0024】図6は、上記低遅延伝送モードにおける伝送遅延を説明するための図である。なお、図6は、ネットデータレートr=64kbps、NEXTシンボルに配分できる最大ビット数n=0の条件で、レートコンバータによりビット配分を行った場合の伝送遅延を示すものである。図示のとおり、ATU−Cでは、レートコンバータにデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになるが、ここでは、ファーストデータバッファがサブフレーム単位の構成でよいことから、通常モードより伝送遅延が短くなり、レートコンバータによる遅延1.746ms及び0.196msと、IFFT及びFFTによる遅延0.246ms×2を合わせた2.434msが伝送遅延となっている。
【0025】図7は、低遅延伝送モードかつ高レートのデータ通信を示す図である。図7は、ファストデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには27ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには33ビット、レートコンバート後のNEXTシンボルには9ビットを割り当て、インターリーブドデータについては、レートコンバート前の1シンボル16ビットの均一レートデータを、レートコンバート後のサブフレーム中に4個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには45ビット、レートコンバート後のサブフレーム中に3個のFEXTシンボルがある場合のFEXTシンボルには39ビットを割り当てた場合について示している。ファーストデータバッファに加えて、インターリーブドデータバッファを併用する場合には、例えば、インターリーブドデータバッファ経路のr=64kbps,ファーストデータバッファ経路のr=64kbps,およびNEXT期間の最大ビット数n=9としたう7に示すとおり、ファーストデータバッファ(fastdata buffer)にレートコンバート前の均一レートデータのサブフレーム中に含まれるビット数すなわち160ビットづつ配分することにより、データを160ビットだけ蓄積し、1サブフレーム分の遅延を付加されるだけでデータを出力することができ、低遅延伝送モードが実現されている。さらに、ここでは、インターリーブドデータバッファ(interleaved data buffer)を併用することにより、伝送ロスのない高レートが同時に実現されている。なお、図示のサブフレーム単位における162ビットのうち、2ビットは、ダミービットであるため使われない。
【0026】このように、上述のADSL通信方式における通信装置では、通常モードおよび低伝送遅延モードの2つのモードを使い分けることにより、またはこの2つのモードにて同時に動作させることにより、低伝送遅延および高レートの通信を可能としている。
【0027】ここで、上記通信装置では、ADSL通信方式におけるG992.1(G.dmt)においてのみ、すなわち、インターリーブドデータバッファおよびファーストデータバッファの2種類のバッファを備える通信装置においてのみ、前記低遅延伝送で、しかも高レートのデータ通信を行うことが可能であり、インターリーブドデータバッファしか持たないG992.2(G.lite)における通信装置にて低遅延伝送を行うような場合は、ビットロスが発生し、高レートでの動作ができなくなる。
【0028】具体的にいうと、例えば、G992.2(G.lite)における通信装置が、図5に示すような、低遅延伝送を行うような場合、この通信装置では、サブフレーム単位に同一のビット数を配分するため、FEXT期間が3個と4個の場合でビット配分が異なることになる。そのため、当然3個のFEXT期間のビット数が最大ビット数nとなり、4個のFEXT期間においては、3個のFEXT期間のビット数より少ないビット数n´が配分されることになり、データ通信においてn−n´のビットロスが発生することから、それに伴って高レートでのデータ通信が実現できなくなる。
【0029】また、G992.2(G.lite)における通信装置では、さらに低遅延伝送を行おうとすると、現行の規格にて、サブフレーム単位にFEC用コードすなわちR−S多項式によるエラー訂正およびインターリーブがかけられないため、エラー訂正特性が劣化する。
【0030】すなわち、以上のことからG992.2(G.lite)における通信装置では、低遅延伝送ができないことになり、通常モードにおいては、特にISDNの製品スペックである2〜3msの遅延クリティカル量を満たすことができない。
【0031】また、G992.1(G.dmt)における通信装置では、前述したとおり、低遅延伝送かつ高レートでのデータ通信が可能となるが、現行の規格では、サブフレーム単位のインターリーブがかけられないため(現行では、インターリーブ幅(Interleave depth)Dが1,2,4,8,16,32,64)、バーストエラーによる最適なエラー訂正を行うことができない。
【0032】そこで、以下に、インターリーブドデータバッファ経路およびファーストデータバッファ経路の2つの経路を備える場合(G.dmt)における低伝送遅延、高レートでのデータ通信、および最適なエラー訂正を実現するとともに、インターリーブドデータバッファ経路しか持たない場合(G.lite)における低伝送遅延、および高レートでのデータ通信も実現可能とする通信装置について説明する。
【0033】図8は、本発明にかかる通信装置(ADSLの局側装置であるATU−Cに相当する)によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータである。例えば、ADSL通信方式においては、ハンドシェーク(G.hs:G.994.1)のときに、現行の機能をいかしてベンダ情報を交換することで、ベンダ特有の機能を実現してもよいことになっている。そこで、各メーカでは、標準規格に基づく開発をすすめると同時に、それぞれ個別の特徴をだすため、ベンダ特有の機能をもり込むことにより、他社との差別化をはかっている。
【0034】ここで、まず、本発明にかかる通信装置のポイントを説明する前に、上述のような通信方法を実行可能な通信装置の基本動作を図面に基づいて説明する。DMT(Discrete Multi Tone)変復調方式を用いて、データ通信を行う有線系ディジタル通信方式としては、既設の電話回線を使用して数メガビット/秒の高速ディジタル通信を行うADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)通信方式、およびHDSL(high-bit-rate Digital Subscriber Line)通信方式等のxDSL通信方式がある。なお、この方式は、ANSIのT1.413等において標準化されている。
【0035】図9は、本発明にかかる通信装置の送信系の構成を示すものであり、例えば、ATU−Cの送信系の構成を示すものである。なお、ATU−Rの送信系の構成も同様の構成である。図9において、ATU−Cの送信系は、送信データをマルチプレックス/シンクコントロール(図示のMUX/SYNC CONTROLに相当)41にて多重化し、多重化された送信データに対してサイクリックリダンダンシィチェック(CRC : Cyclic redundancy checkに相当)42、43にて誤り検出用コードを付加し、さらに、フォワードエラーコレクション(SCRAM&FECに相当)44、45にてFEC用コードの付加およびスクランブル処理が行われる。
【0036】なお、マルチプレックス/シンクコントロール41から、トーンオーダリング49に至るまでには2つの経路があり、一つはインターリーブ(INTERLEAVE)46が含まれるインターリーブドデータバッファ(Interleaved Data Buffer)経路、もう一方はインターリーブ46を含まないファストデータバッファ(Fast Data Buffer)経路であり、インターリーブ処理を行うインターリーブドデータバッファ経路の方の遅延が大きくなる。
【0037】その後、送信データは、レートコンバーター(RATE-CONVERTORに相当)47、48にてレートコンバート処理を行い、トーンオーダリング(TONE ORDERRING)49にてトーンオーダリング処理を行う。そして、トーンオーダリングされた送信データに基づいて、コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング(CONSTELLATION AND GAIN SCALINGに相当)50にてコンステレーションデータを作成し、逆高速フーリエ変換部(IFFT:Inverse Fast Fourier transformに相当)51にて逆高速フーリエ変換を行う。
【0038】最後に、インプット・パラレル/シリアル・バッファ(INPUT PARALLEL/SERIAL BUFFERに相当)52にてフーリエ変換後のパラレルデータをシリアルデータに変換し、アナログ・プロセッシング・アンド・DAC(ANALOG PROCESSING ANDDACに相当)53にてD/Aコンバータを通してディジタル波形をアナログ波形に変換し、続いてローパスフィルタをかけて、送信データを電話回線上に送信する。
【0039】図10は、本発明にかかる通信装置の受信系の構成を示すものであり、例えば、ATU−Rの受信系の構成を示すものである。なお、ATU−Cの受信系の構成も同様の構成である。図10において、ATU−Rの受信系は、受信データ(前述の送信データ)に対し、アナログ・プロセッシング・アンド・ADC(図示のANALOG PROCESSING AND ADCに相当)141にてローパスフィルタをかけ、その後、A/Dコンバータを通してアナログ波形をディジタル波形に変換し、タイムドメインイコライザ(TECに相当)142にて時間領域の適応等化処理を行う。
【0040】その時間領域の適応等化処理がされたデータは、インプット・シリアル/パラレル・バッファ(INPUT SERIAL / PARALLEL BUFFERに相当)143にてシリアルデータからパラレルデータに変換され、そのパラレルデータに対して高速フーリエ変換部(FFT:Fast Fourier transformに相当)144にて高速フーリエ変換を行い、その後、周波数ドメインイコライザ(FECに相当)145にて周波数領域の適応等化処理を行う。
【0041】そして、その周波数領域の適応等化処理がされたデータは、コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング(CONSTELLATION AND GAIN SCALINGに相当)146およびトーンオーダリング(TONE ORDERRING)147にて行われる複合処理(最尤複合法)およびトーンオーダリング処理により、シリアルデータに変換され、その後、レートコンバーター(RATE-CONVERTORに相当)148,149によるレートコンバート処理、デインターリーブ(DEINTERLEAVEに相当)150によるデインターリーブ処理、DESCRAM&FEC151,152によるFEC(forward error correction:前方誤り訂正)およびデスクランブル処理、サイクリックリダンダンシィチェック(CRC : Cyclic redundancy checkに相当)153,154によるCRC(cyclic redundancy check:巡回冗長検査)等の処理が行われ、最終的にマルチプレックス/シンクコントロール(図示のMUX/SYNC CONTROLに相当)155から受信データが再生される。
【0042】また、上記基本動作を行う通信装置(G.dmtおよびG.lite)では、FEXTシンボルおよびNEXTシンボルに対して個別に均等にビットを配分する通常モードによる動作を行う。従って、例えば、ネットデータレートrが160kbps、かつノイズの影響の大きいNEXT期間のシンボルに配分できる最大のビット数nが20ビットの場合、FEXTシンボルに配分されるビット数が、先に説明した(1)式により求められる。
【0043】しかしながら、上記通常モードでは、レートコンバータ47および48によりビット配分を変えるとき、TCM−ISDN周期毎に伝送されるビット数に偏りがあり、例えば、ATU−Cでは、レートコンバータ47および48にデータをある程度蓄積してから、シンボルを出力することになり、伝送遅延を増加させることになる(図2,図3参照)。具体的にいうと、最大伝送遅延は、4.472msとなる。
【0044】そこで、G.dmtにおける通信装置においては、さらに、フォワードエラーコレクション44にてFEC処理だけを実行し、インタリーブによるスクランブル処理を行わないファーストデータバッファ経路の使用により、伝送遅延を抑える低遅延伝送モードを採用している(図5,図6参照)。また、もう1つの経路、すなわち、フォワードエラーコレクション45にてFEC処理を実行し、さらにインタリーブ46にてスクランブル処理を行うインターリーブドバッファ経路を併用することにより、低遅延伝送に加えて、さらに高レートのデータ通信を実現している(図4、図7参照)。具体的にいうと、最大伝送遅延は、2.434msとなる。
【0045】このように、本実施の形態における通信装置でも、従来と同様に、G.liteにおける通信装置が通常モードでの動作を行い、G.dmtにおける通信装置が通常モードに加えて、局側装置ATU−Cと端末側装置ATU−Rでテーブルを交換することにより設定される低伝送遅延モードを採用し、この2つのモードを使い分けることにより、またはこの2つのモードにて同時に動作させることにより、低伝送遅延および高レートのデータ通信を可能としている。
【0046】例えば、上記のように、G.dmtにおける通信装置が低遅延伝送モードにて動作を行う場合は、ATU−CおよびATU−RがG.994.1におけるハンドシェークおよびその後の情報の交換(確認)により、すなわち、初期化シーケンスにおいて、相互に低遅延伝送モードでの動作が可能なことを認識したうえでデータ通信を行う。
【0047】図11は、G.dmtに規定されている初期化シーケンスである。なお、ここでは、本実施の形態にかかわる部分についてのみ説明する。
【0048】まず、G.994.1(G.hs)において、ベンダ特有の情報であるベンダ情報の確認を行う。具体的にいうと、ベンダ情報を交換するために、ATU−RがATU−Cに対してCLR(Capabilities List + Request:ATU−RのCapability mode Listを送出し、ATU−CのCapability mode List送出を要求)を送出し、その応答として、ATU−CがATU−Rに対してCL(Capabilities List)を送出する。
【0049】図12は、G.994.1において交換される情報のフォーマットの例を示す図である。ここでは、Identification (I) fieldのMessage type fieldにメッセージの種別(CLR,CL等)が設定され、Vendor ID fieldにベンダ情報(各メーカのコード)が設定され、Standard Information (s) fieldにG.lite、G.dmt、または他の規格が設定される。なお、低遅延伝送モードにて動作する場合は、本実施の形態ではベンダ情報を設定することとしているが、例えば、低遅延伝送モードにて動作可能かどうかを判断するための固有のモード情報を設定または交換することとしてもよい。
【0050】図13は図11におけるC−RATES1およびR−RATES1の情報を示す図であり、所定のデータ交換後、図13(a)のC−RATES1および(b)のR−RATES1に示すように、R(R−Sコードワード毎の冗長バイト数)、S(R−Sコードワード毎のDMTシンボル数)、D(Interleave Depth)の情報を交換する。
【0051】図14は図11におけるC−MSG1およびR−MSG1の情報を示す図であり、その後、さらに、図14に示すC−MSG1およびR−MSG1のリザーブビットm13,m12(ここでは、Low payload transfer delay modeに相当)を使用して、ファーストデータバッファ経路/インターリーブドデータバッファ経路の選択と、低伝送遅延モード/通常モードの選択を行う。
【0052】なお、例えば、m12=0:ファーストデータバッファ経路は通常モードで処理m12=1:ファーストデータバッファ経路は低遅延伝送モードで処理m13=0:インターリーブドバッファ経路は通常モードで処理m13=1:インターリーブドバッファ経路は低遅延伝送モードで処理を意味する。
【0053】このように、G.dmtにおける伝送装置は、上記各テーブルを低遅延伝送モードに設定後、低遅延伝送モードによるデータ通信が可能となる。
【0054】つぎに、G.dmtおよびG.liteにおける通信装置にて、ファーストデータバッファおよびインターリーブドデータバッファに蓄えられるデータのフォーマットについて説明する。
【0055】図15は、各バッファに蓄えられるデータのフォーマットを示す図である。なお、G.liteでは、インターリーブドデータバッファだけを備えており、ファーストデータバッファを持たない。
【0056】例えば、図示のとおり、ファーストデータバッファに格納される1DMTシンボルは、fast byte,…,FEC redundancy(FEC用データ,冗長ビット数:R)から構成され、このデータ単位でファーストデータバッファに格納される。一方、インターリーブドデータバッファに格納される1DMTシンボルは、FEC処理およびインターリーブ後のインターリーブデータとして構成される。
【0057】図16はインターリーブドデータのフォーマットを示す図であり、例えば、図16に示すように、所定ビット数:KIバイトの各データにFEC用冗長コードが付加され、さらにインターリーブされたNIバイトのインターリーブデータが、インターリーブドデータバッファに格納される。
【0058】しかしながら、現行の規定によるADSL通信方式における通信装置では、ADSL通信方式におけるG992.1(G.dmt)においてのみ、すなわち、インターリーブドデータバッファおよびファーストデータバッファの2種類のバッファを備える通信装置においてのみ、先に説明したように、前記低遅延伝送で、しかも高レートのデータ通信を行うことが可能であるが、インターリーブデータバッファしか持たないG992.2(G.lite)における通信装置では、低遅延伝送を行うような場合にビットロスが発生し、高レートでの動作ができない。
【0059】そこで、本実施の形態1においては、G.liteにおける通信装置にて、FEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理すなわちR−S多項式によるエラー訂正が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=10を設けた。設定方法については、先に説明したG.dmtにおける初期化シーケンスにより、すなわち、ATU−CおよびATU−R間でベンダ情報(G.994.1)、S、R(図11におけるC−RATES1、R−RATES1)およびモードの設定(図11におけるC−MSGS1、R−MSGS1)を行うことにより、S=10を設定する。なお、このとき、RはSの整数倍であることから、R=10となる。
【0060】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。この値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0061】また、本実施の形態1においては、さらに、G.liteにおける通信装置にて、インターリーブ実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のインターリーブが可能となるようなインターリーブ幅D=10を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でD=10、S=10(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0062】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、さらに、サブフレーム単位でインターリーブをかけることも可能となるため、低遅延モードにおいても、エラー訂正の特性を向上させることができるようになる。なお、SおよびDのパラメータについては、10のときに最大のエラー訂正性能が得られるが、D=2およびS=2の場合でも、サブフレーム単位のバッファリングが可能であるため、低遅延伝送モードでの動作が可能となる。また、D=5においても、サブフレーム単位のバッファリングが可能であるため、同様の効果が得られる。
【0063】また、本実施の形態1においては、G.dmtにおける通信装置にて、インターリーブドデータバッファ経路を選択する際のパラメータを、前記G.liteにおける通信装置と同様の方法で設定可能とする。さらに、G.dmtにおける通信装置では、ファーストデータバッファ経路を選択する際のFEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図8に示すファーストデータバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理(R−S多項式による)が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数:S=10を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でS=10(図11R>1におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0064】これにより、G.dmtにおける通信装置でも、ファーストデータバッファ経路を選択した場合においても、サブフレーム単位のFEC処理がかけられるため、最適なエラー訂正を行うことができる。
【0065】実施の形態2.上記実施の形態1では、サブフレーム単位(10シンボル単位)にFEC処理をかけることができるようにするために、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=10の場合について説明したが、本実施の形態では、要求されるエラー訂正能力に合わせてR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを変えて処理する場合について説明する。
【0066】本発明に係る通信装置の送信系及び受信系の構成は、上記実施の形態1における構成を示した図9及び図10と同一であるため、構成の説明は省略して、図9及び図10を参照して動作のみを説明する。
【0067】なお、本実施の形態2においてエラー訂正処理を行うのは、例えば図9におけるエラー訂正処理手段としてのSCRAM&FEC44,45、図10におけるエラー訂正処理手段としてのDESCRAM&FEC151,152である。また、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報であるR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を行うのは、初期化設定手段としての図示しない通信装置内のF/Wである。
【0068】図17は、本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータである。図17に記載されたパラメータは図8と同一である。本実施の形態2においては、G.liteにおける通信装置にて、FEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図1717に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理すなわちR−S多項式によるエラー訂正が可能となるようなR−Sコードワード毎にDMTシンボル数S=2及び5を設けた。2及び5はサブフレーム単位である10シンボルの約数である。設定方法については、先に説明したG.dmtにおける初期化シーケンスにより、すなわち、ATU−CおよびATU−R間でベンダ情報(G.994.1)、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S、R−Sコードワード毎の冗長バイト数R(図11におけるC−RATES1、R−RATES1)およびモードの設定(図11におけるC−MSGS1,R−MSGS1)を行うことにより、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2或いは5を設定する。なお、このとき、R−Sコードワード毎の冗長バイト数RはSの整数倍であることから、S=2のときR=2、4、8、10となり、S=5のときR=5、10となる。
【0069】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができる。すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。それと同時に、R−S符号化によるエラー訂正能力はR/Sが大きいほどエラー訂正能力は高くなるため、例えば、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2を設定し、それに合わせてR−Sコードワード毎の冗長バイト数R=2、4、8、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。S=5を設定した場合も同様に、それに合わせてR=5、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。また、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを小さくすることにより、符号をデコードする際のバッファを小さくすることができる。また、上記遅延時間の値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0070】また、本実施の形態2においては、さらに、G.liteにおける通信装置にて、インターリーブ実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図1に示すインターリーブドバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のインターリーブが可能となるようなインターリーブ幅D=5を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でインターリーブ幅D=2、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)或いはD=5、S=5の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0071】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、さらに、サブフレーム単位でインターリーブをかけることも可能となり、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができるため、低遅延モードにおいても、エラー訂正の特性を向上させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な処理を行うことができるようになる。
【0072】また、本実施の形態2においては、G.dmtにおける通信装置にて、インターリーブドデータバッファ経路を選択する際のパラメータを、前記G.liteにおける通信装置と同様の方法で設定可能とする。さらに、G.dmtにおける通信装置では、ファーストデータバッファ経路を選択する際のFEC処理実行時に必要となるパラメータに、すなわち、図17に示すファーストデータバッファ経路での処理におけるパラメータに、サブフレーム単位のFEC処理(R−S多項式による)が可能となるようなR−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2及び5を設けた。なお、設定方法については、ATU−CおよびATU−R間でS=2及び5(図11におけるC−RATES1,R−RATES1)の設定を行う以外は、上記と同様のため、説明を省略する。
【0073】これにより、G.liteにおける通信装置では、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせたR−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを使用することができる。すなわち、データの送信に1サブフレーム分の遅延(約2.46ms)しかかからないため、高レートでのデータ通信が可能となる。それと同時に、R−S符号化によるエラー訂正能力はR/Sが大きいほどエラー訂正能力は高くなるため、例えば、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S=2を設定し、それに合わせてR−Sコードワード毎の冗長バイト数R=2、4、8、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。S=5を設定した場合も同様に、それに合わせてR=5、10のいずれかを設定することができ、要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。また、R−Sコードワード毎のDMTシンボル数Sを小さくすることにより、符号をデコードする際のバッファを小さくすることができる。また、上記遅延時間の値は、音声サービスの遅延クリティカル量である2〜3msを満たすことになる。
【0074】また、本実施の形態2では初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を行っているが、エラー訂正処理手段としてのSCRAM&FEC44、45、DESCRAM&FEC151、152で、例えばS=R=D=2と決めて処理するようにしてもよい。
【0075】また、本実施の形態2では、サブフレーム内の処理単位数が10シンボルであり、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数10シンボルの約数単位である2シンボル及び5シンボルで行う場合について説明したが、これに限られず、サブフレーム内の処理単位数が12シンボルであり、初期化シーケンス実行時にエラー訂正処理に関する情報R−Sコードワード毎のDMTシンボル数S及びR−Sコードワード毎の冗長バイト数R、インターリーブ処理に関する情報であるインターリーブ幅Dの設定を、サブフレーム内の処理単位数12シンボルの約数単位である2シンボル、3シンボル、4シンボル、6シンボルで行う等他の値を用いても同様の効果を得ることができる。
【0076】
【発明の効果】以上説明したように、複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えることにより、サブフレーム単位にFEC処理をかけることが可能となり、インターリーブドデータバッファ経路におけるバッファリング処理の遅延を減少させることができ、かつ要求されるエラー訂正能力に合わせた柔軟な設定をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ADSL通信方式におけるハイパーフレームのシンボル形式を示す説明図
【図2】 通常モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図3】 通常モードにおける伝送遅延を具体的に説明した説明図
【図4】 低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図5】 低遅延伝送モードにおけるDMTシンボルのビット配分を示す説明図
【図6】 低遅延伝送モードにおける伝送遅延を説明した説明図
【図7】 低遅延伝送モードかつ高レートのデータ通信を示す説明図
【図8】 本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータを示す説明図
【図9】 本発明にかかる通信装置の送信系の構成を示す構成図
【図10】 本発明にかかる通信装置の受信系の構成を示す構成図
【図11】 G.dmtに規定されている初期化シーケンスを示す説明図
【図12】 G.994.1において交換される情報のフォーマットを示す説明図
【図13】 C−RATES1およびR−RATES1の情報を示す説明図
【図14】 C−MSG1およびRMSG1の情報を示す説明図
【図15】 各バッファに蓄えられるデータのフォマットを示す説明図
【図16】 インターリブドデータのフォーマットを示す説明図
【図17】 本発明にかかる通信装置によるデータ通信において、FECおよびインターリーブを実行する際に必要となるパラメータを示す説明図
【符号の説明】
41 マルチプレックス/シンクコントロール
42、43 サイクリックリダンダンシィチェック(CRC)
44、45 フォワードエラーコレクション(FEC)(エラー訂正手段)
46 インターリーブ
47,48 レートコンバーター
49 トーンオーダリング
50 コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング
51 逆高速フーリエ変換部(IFFT)
52 インプット・パラレル/シリアル・バッファ
53 アナログ・プロセッシング・アンド・DAC
141 アナログ・プロセッシング・アンド・ADC
142 タイムドメインイコライザ(TEC)、
143 インプット・シリアル/パラレル・バッファ
144 高速フーリエ変換部(FFT)
145 周波数ドメインイコライザ(FEC)
146 コンステレーションエンコーダ・ゲインスケーリング
147 トーンオーダリング
148、149 レートコンバーター
150 デインターリーブ
151,152 DESCRAM&FEC(エラー訂正手段)
153,154 サイクリックリダンダンシィチェック(CRC)
155 マルチプレックス/シンクコントロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】 データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行う初期化設定手段を備えるとともに、前記エラー訂正処理手段は、前記初期化設定手段により設定された前記エラー訂正処理に関する情報に基づいてエラー訂正処理を行うことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】 前記初期化設定手段は、初期化処理実行時に所定の規則に従ったビットの並び替え及び再生を行うインターリーブ処理に関する情報の設定を行うとともに、前記インターリーブ処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うインターリーブ処理手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】 前記インターリーブ処理を行う経路と行わない経路が存在する場合、前記エラー訂正処理手段は、前記インターリーブ処理を行わない経路におけるエラー訂正処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うことを特徴とする請求項3記載の通信装置。
【請求項5】 複数のトーンにデータを割り当ててデータ通信を行い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信方法において、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行うとともに、前記通信方法が前記通信方法とは異なる他の通信方法に対して影響を及ぼす場合、前記設定されたエラー訂正処理に関する情報に基づいて、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うことを特徴とする通信方法。
【請求項1】 複数のトーンにデータを割り当ててデータを通信する通信方法を用い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信装置において、前記データ通信の際に前記通信方法とは異なる他の通信方法を用いた通信装置に対して影響を及ぼす場合、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うエラー訂正処理手段を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】 データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行う初期化設定手段を備えるとともに、前記エラー訂正処理手段は、前記初期化設定手段により設定された前記エラー訂正処理に関する情報に基づいてエラー訂正処理を行うことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】 前記初期化設定手段は、初期化処理実行時に所定の規則に従ったビットの並び替え及び再生を行うインターリーブ処理に関する情報の設定を行うとともに、前記インターリーブ処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うインターリーブ処理手段を備えたことを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】 前記インターリーブ処理を行う経路と行わない経路が存在する場合、前記エラー訂正処理手段は、前記インターリーブ処理を行わない経路におけるエラー訂正処理を前記サブフレーム内の処理単位数の約数単位で行うことを特徴とする請求項3記載の通信装置。
【請求項5】 複数のトーンにデータを割り当ててデータ通信を行い、データ誤りが生じた場合エラーを訂正するエラー訂正処理を行う通信方法において、データ通信に先立って行う初期化処理実行時に前記エラー訂正処理に関する情報の設定を行うとともに、前記通信方法が前記通信方法とは異なる他の通信方法に対して影響を及ぼす場合、前記設定されたエラー訂正処理に関する情報に基づいて、前記他の通信方法の周期に応じた論理フレームであるサブフレーム内の処理単位数の約数単位で前記エラー訂正処理を行うことを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図13】
【図4】
【図5】
【図8】
【図17】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図13】
【図4】
【図5】
【図8】
【図17】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2001−69116(P2001−69116A)
【公開日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−241014
【出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年8月27日(1999.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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