通信装置並びに高周波結合器
【課題】量産性と小型化、低背化、電気特性の要求をすべて満たすことのできる高周波結合器を実現する。
【解決手段】前段の第1の共振部173−1と後段の第2の共振部173−2の2段を有する。第1の共振部173−1は先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−1を介して下面のグランド172に接続してショートされ短絡端となっている。第1の共振部173−1のグランド172に短絡されない側はマイクロストリップ線路などで送受信回路モジュールと結線している。第1の共振部173−1のほぼ中央に第2の共振部173−2が接続されている。
【解決手段】前段の第1の共振部173−1と後段の第2の共振部173−2の2段を有する。第1の共振部173−1は先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−1を介して下面のグランド172に接続してショートされ短絡端となっている。第1の共振部173−1のグランド172に短絡されない側はマイクロストリップ線路などで送受信回路モジュールと結線している。第1の共振部173−1のほぼ中央に第2の共振部173−2が接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を行なう通信装置並びに高周波結合器に係り、特に、低背化を実現する通信装置並びに高周波結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信は、認証情報や電子マネーその他の価値情報のメディアとして広く普及している。例えば、ISO/IEC14443に準拠するICカード規格として、TypeA、TypeB、FeliCa(フェリカ)(登録商標)を挙げることができる。さらに、ソニーとPhilips社が開発したNFC(Near Field Communication)は、主にTypeA、TypeB、FeliCaの各ICカードと通信可能なNFC通信装置(リーダー/ライター)の仕様を規定したRFID規格であり、13.56MHz帯を使い、電磁誘導方式により近接型(0〜10cm以下:Proximity)の非接触双方向通信が可能である。
【0003】
最近では、組み込み用途に適したコンパクト・サイズのリーダー/ライター・モジュールが開発製造され、POS(Point Of Sales)端末や自動販売機、パーソナル・コンピューターなどさまざまな機器に実装して用いることができる。例えば、本体キーボードのパームレスト部分にリーダー/ライター・モジュールを内蔵し、近接された非接触ICタグから情報を読み取る、ノートブック型の情報処理装置に関する提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0004】
非接触通信システムのさらなるアプリケーションとして、動画像や音楽などのダウンロードやストリーミングといった大容量データ伝送を挙げることができる。例えば、自動販売機から有料コンテンツを携帯端末にダウンロードし、あるいはインターネットに接続されるパソコンを介して有料サイトから携帯端末にコンテンツをダウンロードする際に、非接触通信を利用することが想起される。その際、携帯端末を読み取り面に翳すという単一のユーザー操作で済み、且つ、従来の認証・課金処理と同じアクセス時間の感覚で完結することが好ましく、それゆえ通信レートの高速化が必須となる。
【0005】
ところが、非接触通信の代表例であるNFC通信の通信レートは106kbps〜424kbps程度であり、個人認証や課金処理には十分であるものの、他の汎用の無線通信(WiFiやBluetoothなど)と比べると非常に低速である。また、キャリア周波数などの物理的な制約からも、NFC通信など従来方式では実現可能な最高通信速度は高々848kbpsまでであり、今後の飛躍的な高速化を期待することはできない。
【0006】
これに対し、高速通信に適用可能な近接無線転送技術として、微弱なUWB(Ultra Wide Band)信号を用いたTransferJet(例えば、特許文献2、非特許文献1を参照のこと)を挙げることができる。
【0007】
上記の近接無線転送技術(TransferJet)は、基本的に、電界結合作用を利用して信号を伝送する方式であり、その通信装置は、高周波信号の処理を行なう通信回路部と、グランドに対しある程度の高さで離間して配置された結合用電極と、結合用電極に高周波信号を効率的に供給する共振部で構成される。上述した非接触ICタグと同様に情報機器に実装して用いるには、微弱UWB通信装置の低背化を実現することが、重要な技術課題の1つとして挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−87263号公報
【特許文献2】特開2008−99236号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】www.transferjet.org/en/index.html(平成21年3月23日現在)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を好適に行なうことができる、低背化された優れた通信装置並びに高周波結合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、 データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、
前記通信回路部に接続される高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする通信装置である。
【0012】
本願発明で言う高周波信号とは、具体的には、請求項8に記載の通り、超広帯域を使用するUWB信号である。
【0013】
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置のグランドは誘電体基板の一方の面に形成された導体パターンであり、また、第1の共振部及び第2の共振部は、それぞれ前記誘電体基板の他方の面に形成された導体パターンからなるスタブとして構成される。
【0014】
また、本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置の第2の共振部は、所定位置の切断部で分割され、一端が前記第1の共振部に接続される第1のスタブと、先端が前記グランドに短絡された第2のスタブからなる。また、前記結合用電極の一方の端子が前記第1のスタブに接続されるとともに他方の端子が前記第2のスタブに接続される。
【0015】
また、本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項3に係る通信装置の前記第1のスタブと前記第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つ。より具体的には、請求項5、6に記載の通り、前記第1のスタブ、前記結合用電極、前記第2のスタブからなる前記第2の共振部全体としてほぼ2分の1波長の位相長さを持ち、前記第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、前記2本の端子で前記第1及び第2のスタブの各々に接続される結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つように構成されている。
【0016】
また、本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置の第1の共振部はほぼ2分の1波長の位相長さ持つスタブであり、且つ、前記伝送路に接続されない他方の端で前記グランドに短絡されている。また、第2の共振部の一端は前記第1の共振部のほぼ中央の位置に接続されている。
【0017】
また、本願の請求項9に記載の発明は、
高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側の高周波結合器に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする高周波結合器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を好適に行なうことができる、低背化された優れた通信装置並びに高周波結合器を提供することができる。
【0019】
また、本願発明によれば、安価で且つ十分な機械強度を有する高周波結合器を実現することができ、低背化しても電気的特性が劣化しにくい。すなわち、本願発明によれば、量産性と小型化、低背化、電気特性の要求をすべて満たすことのできる高周波結合器を実現することができる。
【0020】
本願の請求項1、2、8、9に記載の発明によれば、結合用電極は2本の端子で支持されるので、高周波結合器は十分な機械強度を保つことができる。また、スタブ(若しくは集中定数回路)で構成される第1の共振部によって定在波を発生させて、第2の共振部により強い高周波信号を送り込むことができるので、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0021】
本願の請求項3に記載の発明によれば、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するように構成していることから、結合用電極に流れずに共振用スタブ上を素通りする電流を抑制することができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0022】
本願の請求項4に記載の発明によれば、第1のスタブと第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つことから、電圧振幅の腹と結合用電極の位置が一致するので、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0023】
本願の請求項5、6に記載の発明によれば、第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つことで、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0024】
本願の請求項7に記載の発明によれば、第1の共振部を構成するスタブの中央付近で定在波の電圧振幅が最大となり、当該位置に第2の共振部を接続することで、高周波信号を効率的に第2の共振部に送り込むことができる。これによって、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0025】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信システムの構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、送信機10及び受信機20のそれぞれに配置される高周波結合器の基本構成を示した図である。
【図3】図3は、図2に示した高周波結合器の一実装例を示した図である。
【図4】図4は、微小ダイポールによる電磁界を表した図である。
【図5】図5は、図4に示した電磁界を結合用電極上にマッピングした図である。
【図6】図6は、容量装荷型アンテナの構成例を示した図である。
【図7】図7は、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示した図である。
【図8】図8は、スタブ73上に定在波が発生している様子を示した図である。
【図9A】図9Aは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(打ち抜き加工後)である。
【図9B】図9Bは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(曲げ加工後)である。
【図9C】図9Cは、板金加工によって製作した結合用電極14の一例を示した図(側面図並びに斜視図)である。
【図10A】図10Aは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(打ち抜き加工後)である。
【図10B】図10Bは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(曲げ加工後)である。
【図10C】図10Cは、板金加工によって製作した結合用電極14の一例を示した図(側面図並びに斜視図)である。
【図11】図11は、結合用電極が誘電体からなるスペーサーで支持されるとともに、このスペーサーのスルーホールを貫挿する1本の金属線で結合用電極が共振用スタブに接続された高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図12】図12は、共振用スタブ上で2本の端子により結合用電極が支持されている高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図13】図13は、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれの端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続した高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図14】図14は、第1の共振用スタブを開放端にした場合の、電圧定在波並びに電流定在波それぞれの振幅を示した図である。
【図15】図15は、先端が短絡端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図16A】図16Aは、先端が開放端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図16B】図16Bは、先端が開放端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図17A】図17Aは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(上面図)である。
【図17B】図17Bは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(斜視図)である。
【図17C】図17Cは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(断面図)である。
【図18】図18は、図17に示した高周波結合器の第1の共振部173−1に定在波が発生している様子を示した図である。
【図19】図19は、図17に示した高周波結合器において、第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さをそれぞれ8分の1波長とし、結合用電極178の一方の端子からもう一方の端子までの位相長さが4分の1波長になるように位相長さを配分したときの、第2の共振部173−2に定在波が発生している様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
まず、微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信の動作原理について説明する。
【0029】
図1には、電界結合作用を利用した微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信システムの構成を模式的に示している。同図において、送信機10及び受信機20がそれぞれ持つ送受信に用いられる結合用電極14及び24は、例えば3cm程度離間して対向して配置され、電界結合が可能である。送信機側の送信回路部11は、上位アプリケーションから送信要求が生じると、送信データに基づいてUWB信号などの高周波送信信号を生成し、送信用電極14から受信用電極24へ電界信号として伝搬する。そして、受信機20側の受信回路部21は、受信した高周波の電界信号を復調及び復号処理して、再現したデータを上位アプリケーションへ渡す。
【0030】
UWB通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式によれば、近距離において100Mbps程度の超高速データ伝送を実現することができる。また、後述するように放射電界ではなく静電界若しくは誘導電界の結合作用によりUWB通信を行なう場合、その電界強度は距離の3乗若しくは2乗に反比例することから、無線設備から3メートルの距離での電界強度が所定レベル以下に抑制することで無線局の免許が不要となる微弱無線とすることが可能であり、安価に通信システムを構成することができる。また、電界結合方式により近距離でデータ通信を行なうので、周辺に存在する反射物からの反射波が小さいため干渉の影響が少ない、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がない、といった利点がある。
【0031】
一方、波長に対する伝搬距離の大きさに応じて伝搬損が大きくなることから、電界結合により高周波信号を伝搬する際には、伝搬損を十分低く抑える必要がある。UWB信号のように高周波数の広帯域信号を電界結合で伝送する通信方式では、3cm程度の近距離通信であっても、使用周波数帯4GHzにとっては約2分の1波長に相当するため、無視することはできない長さである。とりわけ、高周波回路では、低周波回路に比べると特性インピーダンスの問題はより深刻であり、送受信機の電極間の結合点においてインピーダンス不整合による影響は顕在化する。
【0032】
kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信では、空間での伝搬損が小さいため、送信機及び受信機が電極のみからなる結合器を備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する場合であっても、所望のデータ伝送を行なうことができる。これに対し、GHz帯の高周波を使い、波長に対して無視できない距離で信号を伝送する通信では、空間での伝搬損が大きいため、伝送信号の反射を抑え、伝送効率を向上させる必要がある。送信機及び受信機のそれぞれにおいて伝送路が所定の特性インピーダンスに調整されているとしても、平行平板コンデンサで結合しただけでは、結合部においてインピーダンス・マッチングをとることはできない。例えば、図1に示した通信システムにおいて、送信回路部11と送信用電極14を結ぶ高周波電界信号の伝送路は例えば50Ωのインピーダンス整合がとられた同軸線路であったとしても、送信用電極14と受信用電極24間の結合部におけるインピーダンスが不整合であると、電界信号は反射して伝搬損を生じることから、通信効率が低下する。
【0033】
そこで、図2に示すように、送信機10及び受信機20のそれぞれに配置される高周波結合器を、平板状の電極14、24と、直列インダクタ12、22、並びに、並列インダクタ13、23からなる共振部を高周波信号伝送路に接続して構成している。ここで言う高周波信号伝送路とは、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路などで構成することができる。このような高周波結合器を向かい合わせて配置すると、準静電界が支配的な極近距離では結合部分がバンドパス・フィルタのように動作して、高周波信号を伝達することができる。また、誘導電界が支配的な、波長に対して無視できない距離であっても、結合用電極とグランドにそれぞれたまる電荷並びに鏡像電荷によって形成される微小ダイポールから発生する誘導電界を介して2つの高周波結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することができる。
【0034】
ここで、送信機10と受信機20の電極間すなわち結合部分において、単にインピーダンス・マッチングを取り、反射波を抑えることだけを目的とするのであれば、各結合器を平板状の電極14、24と直列インダクタを高周波信号伝送路上に直列接続するという簡素な構造であっても、結合部分におけるインピーダンスが連続的となるように設計することは可能である。しかしながら、結合部分の前後における特性インピーダンスに変化はないので電流の大きさも変わらない。これに対し、並列インダクタ13、23を設けることによって、より大きな電化を結合用電極14に送り込み、結合用電極14、24間で強い電界結合作用を生じさせることができる。また、結合用電極14の表面の近傍に大きな電界を誘起したとき、発生した電界は進行方向(微小ダイポールの方向:後述)に振動する縦波の電界信号として、結合用電極14の表面から伝搬する。この電界の波により、結合用電極14、24間の距離(位相長さ)が比較的大きな場合であっても電界信号を伝搬することが可能になる。
【0035】
したがって、微弱UWB通信方式による近距離無線通信システムでは、高周波結合器として必須の条件は以下の通りとなる。
【0036】
(1)グランドに対向して高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間した位置に電界で結合するための結合用電極があること。
(2)より強い電界で結合させるための共振部(並列インダクタやスタブ)があること。
(3)通信に使用する周波数帯において、結合用電極を向かい合わせに置いたときにインピーダンス・マッチングが取れるように、直列・並列インダクタ、及び、結合用電極によるコンデンサの定数、あるいはスタブの長さが設定されていること。
【0037】
図1に示した通信システムにおいて、送信機10及び受信機20の各結合用電極14及び24が適当な距離を隔てて対向すると、2つの高周波結合器は、所望の高周波数帯の電界信号を通過するバンドパス・フィルタとして動作するとともに、単体の高周波結合器としては電流を増幅するインピーダンス変換回路として作用して、結合用電極には振幅の大きな電流が流入する。他方、高周波結合器が自由空間に単独で置かれるとき、高周波結合器の入力インピーダンスは高周波信号伝送路の特性インピーダンスと一致しないので、高周波信号伝送路に入った信号は高周波結合器内で反射され、外部に放射されないことから近隣の他の通信システムへの影響はない。すなわち、送信機側では、通信を行なうべき相手がいないときには、アンテナのように電波を垂れ流すことはなく、通信を行なうべき相手が近づいたときのみインピーダンス整合がとれることによって高周波の電界信号の伝達が行なわれる。
【0038】
図3には、図2に示した高周波結合器の一実装例を示している。送信機10及び受信機20側のいずれの高周波結合器も同様に構成することができる。同図において、結合用電極14は円柱状の誘電体からなるスペーサー15の上面に配設され、プリント基板17上の高周波信号伝送路とはこのスペーサー15内を貫挿するスルーホール16を通して電気的に接続されている。
【0039】
例えば、所望の高さを持つ円柱状の誘電体にスルーホール16を形成した後、スルーホール16中に導体を充填させるとともに、この円柱の上端面に結合用電極14となるべき導体パターンを、例えば鍍金技術により蒸着する。また、プリント基板17上には、高周波伝送線路となる配線パターンが形成されている。そして、プリント基板17上にこのスペーサー15をリフロー半田などにより実装することによって製作することができる。プリント基板17の回路実装面から結合用電極14までの高さ、すなわちスルーホール16の長さ(位相長さ)を使用波長に応じて適当に調整することで、スルーホール16がインダクタンスを持ち、図2に示した直列インダクタ12と代用することができる。また、高周波信号伝送路はチップ状の並列インダクタ13を介してグランド18に接続されている。
【0040】
ここで、送信機10側の結合用電極14において発生する電磁界について考察してみる。
【0041】
図1並びに図2に示すように、結合用電極14は、高周波信号の伝送路の一端に接続され、送信回路部11から出力される高周波信号が流れ込んで、電荷を蓄える。このとき、直列インダクタ12及び並列インダクタ13からなる共振部の共振作用によって、伝送路を介して結合用電極14に流れ込む電流は増幅され、より大きな電荷が蓄えられる。
【0042】
また、結合用電極14に対向するように、高周波信号の波長に対して無視し得る高さ(位相長さ)だけ離間して、グランド18が配置されている。そして、上述のように結合用電極14に蓄えられると、グランド18には鏡像電荷が蓄えられる。平面導体の外部に点電荷Qを置くと、平面導体内には(表面電荷分布を置き換えた仮想的な)鏡像電荷−Qが配置されるが、このことは、例えば溝口正著「電磁気学」(裳華房、第54頁乃至第57頁)にも記載されているように、当業界で周知である。
【0043】
この結果、結合用電極14に蓄えられた電荷の中心とグランド18に蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールが形成される。厳密に言うと、電荷Qと鏡像電荷−Qは体積を持ち、微小ダイポールが電荷の中心と鏡像電荷の中心を結ぶように形成される。ここで言う「微小ダイポール」は、「電気ダイポールの電荷間の距離が非常に短いもの」を指す。例えば虫明康人著「アンテナ・電波伝搬」(コロナ社、16頁〜18頁)にも、「微小ダイポール」が記載されている。そして、微小ダイポールによって、電界の横波成分Eθ、電界の縦波成分ER、微小ダイポール回りの磁界Hφが発生する。
【0044】
図4には、微小ダイポールによる電磁界を表している。また、図5には、この電磁界を結合用電極上にマッピングした様子を示している。図示のように、電界の横波成分Eθは伝搬方向と垂直な方向に振動し、電界の縦波成分ERは伝搬方向と平行な向きに振動する。また、微小ダイポール回りには磁界Hφが発生する。下式(1)〜(3)は微小ダイポールによって生成される電磁界を表している。同式中、距離Rの3乗に反比例する成分は静電界、距離Rの2乗に反比例する成分は誘導電界、距離Rに反比例する成分は放射電界である。
【0045】
【数1】
【0046】
図1に示した近距離無線通信システムにおいて、周辺の他のシステムへの妨害波を抑制するには、放射電界の成分を含む横波Eθを抑制しながら、放射電界の成分を含まない縦波ERを利用することが好ましいと考えられる。何故ならば、上式(1)、(2)から分かるように、電界の横波成分Eθは距離に反比例する(すなわち、距離減衰の小さい)放射電界を含むのに対して、縦波成分ERは放射電界を含まないからである。
【0047】
まず、電界の横波成分Eθを生じないようにするには、高周波結合器がアンテナとして動作しないようにする必要がある。図2に示した高周波結合器は、一見すると、アンテナ素子の先端に金属を取り付けて静電容量を持たせ、アンテナの高さを短縮させる「容量装荷型」のアンテナと構造が類似する。したがって、高周波結合器が容量装荷型アンテナとして動作しないようにする必要がある。図6には、容量装荷型アンテナの構成例を示しているが、同図中で矢印A方向に主に電界の縦波成分ERが発生するとともに、矢印B1、B2方向には電界の横波成分Eθが発生する。
【0048】
図3に示した結合用電極の構成例では、誘電体15とスルーホール16は、結合用電極14とグランド18との結合を回避する役割と、直列インダクタ12を形成する役割を兼ね備えている。プリント基板17の回路実装面から電極14まで十分な高さをとって直列インダクタ12を構成することによって、グランド18と電極14との電界結合を回避して、受信機側の高周波結合器との電界結合作用を確保する。但し、誘電体15の高さが大きい、すなわちプリント基板17の回路実装面から電極14までの距離が使用波長に対して無視できない長さになると、高周波結合器が容量装荷型アンテナとして作用してしまい、図6中の矢印B1、B2方向で示したような横波成分Eθが発生する。よって、誘電体15の高さは、電極14とグランド18との結合を回避して高周波結合器としての特性を得るとともに、インピーダンス・マッチング回路として作用するために必要な直列インダクタ12を構成するために十分な長さとし、直列インダクタ12に流れる電流による不要電波Eθの放射が大きくならない程度に短いことが条件となる。
【0049】
他方、上式(2)から、縦波ER成分は微小ダイポールの方向となす角θ=0度で極大となることが分かる。したがって、電界の縦波ERを効率的に利用して非接触通信を行なうには、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して受信機側の高周波結合器を配置して、高周波の電界信号を伝送することが好ましい。
【0050】
また、直列インダクタ12と並列インダクタ13からなる共振部によって、共振部によって結合用電極14に流れ込む高周波信号の電流をより大きくすることができる。この結果、結合用電極14に蓄積される電荷とグランド側の鏡像電荷によって形成される微小ダイポールのモーメントを大きくすることができ、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となる伝搬方向に向かって、縦波ERからなる高周波の電界信号を効率的に放出することができる。
【0051】
図2に示した高周波結合器では、インピーダンス整合部は並列インダクタ及び直列インダクタの定数L1、L2により動作周波数f0が決定される。ところが、高周波回路では集中定数回路は分布定数回路よりも帯域が狭いことが知られており、また周波数が高いときインダクタの定数は小さくなるので、定数のばらつきによって共振周波数がずれるという問題がある。これに対し、インピーダンス整合部や共振部を集中定数回路から分布定数回路に代えて高周波結合器を構成することで、広帯域化を実現するという解決方法が考えられる。
【0052】
図7には、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示している。図示の例では、下面にグランド導体72が形成されるとともに、上面に印刷パターンが形成されたプリント基板上71に、高周波結合器が配設されている。高周波結合器のインピーダンス整合部並びに共振部として、並列インダクタと直列インダクタの代わりに、分布定数回路として作用するマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路すなわちスタブ73が形成され、信号線パターン74を介して送受信回路モジュール75と結線している。スタブ73は、先端においてプリント基板71を貫挿するスルーホール76を介して下面のグランド72に接続してショートされる。また、スタブ73の中央付近において、細い金属線からなる1本の端子77を介して結合用電極78に接続される。
【0053】
なお、電子工学の技術分野で言う「スタブ(stub)」は、一端を接続、他端を未接続又はグランド接続した電線の総称であり、調整、測定、インピーダンス整合、フィルタなどの用途で回路の途中に設けられる。
【0054】
ここで、信号線を介して送受信回路から入力された信号は、スタブ73の先端部で反射し、スタブ73内には定在波が立つことになる。スタブ73の位相長さは高周波信号の2分の1波長(位相にして、180度)程度とし、信号線74とスタブ73はプリント基板71上のマイクロストリップ線路、コプレーナ線路などで形成される。図8に示すように、スタブ73の位相長さが2分の1波長で先端がショートしているときには、スタブ73内に発生する定在波の電圧振幅はスタブ73の先端で0となり、スタブ73の中央、すなわちスタブ73の先端から4分の1波長(90度)のところで最大となる。定在波の電圧振幅が最大となるスタブ73の中央に結合用電極78を1本の端子77で接続することで、伝搬効率の良い高周波結合器を作ることができる。
【0055】
図7中では、スタブ73は、プリント基板71上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路であり、その直流抵抗が小さいことから、高周波信号でも損失が少なく、高周波結合器間の伝搬損を小さくすることができる。また、分布定数回路を構成するスタブ73のサイズは高周波信号の2分の1波長程度と大きいことから、製造時の公差による寸法の誤差は全体の位相長さに比較すると微量であり、特性のバラツキが生じにくい。
【0056】
図7に示した高周波結合器では、結合用電極をそのほぼ中心で金属線からなる1本の端子により支持している構造であり、機械強度が充分でない。例えば、図3に示したように、誘電体からなるスペーサーの上端面に結合用電極となるパターンを蒸着し、スペーサー内を貫挿するスルーホールに充填した導体を直列インダクタの代用とするという設計方法も考えられる。但し、スペーサーを配置することにより部品コストが増大するとともに、装置重量が増大してしまうことが懸念される。
【0057】
他方、結合用電極の部分を板金加工によって製作する方法も考えられる。共振用スタブ上に結合用電極を支持する端子の本数を複数にすることで、スペーサーなしでも十分な機械強度を確保することができ、また、簡易且つ安価に製作することができることから、量産向きである。
【0058】
図9並びに図10には、板金加工を利用して、複数本の端子で支持される結合用電極の製作方法をそれぞれ図解している。なお、板金には、例えば表面を金鍍金したリン青銅板などを用いることができる。
【0059】
銅などからなる板金にまず打ち抜き加工を施して、上面平坦部と、端子を形成する。上面平坦部は、比較的広い表面積を持ち、電荷を蓄える結合用電極14として作用する。また、端子は、上面平坦部を基板上で支持する支持手段になるとともに、結合用電極14への電荷の伝搬路となり且つ直列インダクタ12としても作用する。
【0060】
続いて、端子に折り曲げ加工を施して、上面平坦部に対し端子をほぼ垂直に屈曲させるとともにさらに端子の下端を屈曲させて、高周波信号線との接続部にもなる足平部を形成し、併せて端子を所望の高さとする。ここで言う所望の高さとは、上述したように、容量装荷型アンテナとして動作しないで且つ結合用電極14とグランド18との結合を回避する役割と、この端子が直列インダクタ12を形成する役割を兼ね備え得る寸法に相当する。
【0061】
このようにして出来上がった結合用電極を、例えばプリント基板上の該当する場所に治具(図示しない)などで固定して、リフロー半田などにより接続部としての足平部を基板上の配線パターンに取り付けることができる。
【0062】
ここで、端子1本で結合用電極を共振用スタブに接続した場合と端子2本で結合用電極を支持した場合とで、電気的特性の相違について考察してみる。図11には、結合用電極が誘電体からなるスペーサーで支持されるとともに、このスペーサーのスルーホールを貫挿する1本の金属線からなる端子で結合用電極が共振用スタブに接続された高周波結合器の断面構成を示している。また、図12には、共振用スタブ上で2本の端子により結合用電極が支持されている高周波結合器の断面構成を示している。
【0063】
送受信回路部から信号線を介して入力される電流は、共振用スタブ及びその先端のスルーホールを介してグランドに向かって流れるが、その際に、より多くの電流が端子を介して結合用電極側に流れ込むと、高周波結合器の送信信号強度が増すと考えられる。図8に示したように、2分の1波長の位相長さからなるスタブの先端部をグランドにショートすると、スタブ内に発生する定在波の電圧振幅はスタブの中央すなわちその先端から4分の1波長(90度)のところで最大となることから、スタブの中央に結合用電極を端子で接続することが好ましい(前述)。
【0064】
ところが、実験の結果、図11において共振用スタブから1本の端子を介して結合用電極に流れ込む電流(同図中の矢印1及び2)よりも、図12において共振用スタブから2本の端子を介して結合用電極に流れ込む電流(同図中の矢印4及び5)の方が小さくなることが分かった。これは、結合用電極を共振用スタブに接続する端子を2本にすることで、結合用電極に流れ込むことなく、共振用スタブ上を素通りする電流(図12中の矢印6)は、端子が1本のときに共振用スタブ上を素通りする電流(図12中の矢印3)よりも増加するためであり、その結果、結合用電極側に電流は流れ難くなり高周波結合器の効率が悪化する。
【0065】
そこで、本出願人に既に譲渡されている特開2008−312074号公報には、図13に示すように、結合用電極に流れずに共振用スタブ上を素通りする電流を抑制するために、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子を、この切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するようにした高周波結合器について提案している。以下では、切断した共振用スタブの先端側を「第1の共振用スタブ」と呼び、他方の信号線の入力端側を「第2の共振用スタブ」と呼ぶことにする。
【0066】
図13に示すような構成によれば、送受信回路部から信号線を介して入力される電流が共振用スタブの先端に向かって流れるには、同図中の矢印7に示すように一旦は片方の端子を介して結合用電極に流れた後、同図中の矢印8に示すように他方の端子を介して切断部以降の共振用スタブに流れ込むことになる。すなわち、図12の矢印6に示したように結合用電極を素通りして共振用スタブを流れる電流成分は極めて少なくなる。したがって、図13中の矢印7及び8に示した電流の量を大きくすれば、高周波結合器の特性は改善される。
【0067】
続いて、結合用電極の取り付け位置、若しくは共振用スタブの切断位置について考察してみる。
【0068】
図13に示すような共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するという構成からなる高周波結合器においても、図7に示した構成例と同様に、電圧定在波の振幅が大きい位置の付近に結合用電極が配置されることが望ましい。
【0069】
図14には、第1の共振用スタブを開放端にした場合における、共振用スタブ内部の電圧定在波並びに電流定在波それぞれの振幅を示している。この場合、図示の通り、第1の共振用スタブ側の開放端及び第2の共振用スタブ側の入力端の各々において最大となるような電圧定在波が立ち、電流定在波はこのような電圧定在波に対しπ/4だけ位相差を持つ。したがって、図示のように共振用スタブと端子と結合用電極を合わせた全体の長さ(位相長さ)をおよそ共振周波数の位相長にして360度すなわち1波長程度とすると、ほぼその中央において電圧定在波の振幅が大きくなるので、ほぼ中央において共振用スタブを第1及び第2の共振用スタブに切断するとともに、この切断部分を2本の端子で接続するように結合用電極を取り付けることが好ましい。
【0070】
また、1本の端子で結合用電極を支持する場合には、この端子を電流が流れることによって不要な電波が発生することが懸念される(図6を参照のこと)。これに対し、2本の端子で結合用電極を支持する場合には、それぞれの端子には互いに逆向きとなる電流が流れるような位置に結合用電極を設置すれば、電流が互いに打ち消し合って不要な電波の放射を低減することができる。
【0071】
続いて、高周波結合器の低背化について考察する。
【0072】
図7に示したような1本の端子で結合用電極を支持する構造の場合、共振部としてのスタブの先端がグランドにショートされていることから、プリント基板上のスタブとグランドとの電界を強く保つことができる(図15を参照のこと)。この結果として、グランドから結合用電極までの高さを低くしても、結合用電極とスタブの電気的な結合を抑制することができ、低背化が可能である。本発明者の実験により、現状の3mmから1.5mmまで低背化できることが確認できた。但し、1本の端子でのみ結合用電極を支持する構造は機械強度が十分でない。また、図3に示したようにスペーサーを介在させて結合用電極を支持する構造にすると、部品コストが高くなり、量産には不向きである。
【0073】
これに対し、板金加工を用いて製作され、2本の端子で結合用電極を支持する構造によると、上述したように、十分な機械強度を確保できるとともに、量産にも適している。また、図14に示したように、共振スタブの先端を開放端にした場合、上述したように、共振用スタブと結合用電極全体の位相長さを1波長程度とし、且つ、ほぼその中央に取り付けた結合用電極に効率的に信号を送り込むことができる。例えば、位相長さが8分の3波長である第2のスタブに、位相長さが4分の1波長の結合用電極の一方の端子を接続し、さらに、結合用電極の他方の端子を、位相長さが8分の3波長である第1のスタブに接続する。
【0074】
ところが、共振用スタブの先端を開放端にした場合、グランドから結合用電極までの高さを低くすると、帯域が狭くなるなど、電気的特性が劣化することが、本発明者の実験により確認された。これは、低背化により結合用電極とスタブ間で電気的な結合作用が発生し、これに伴って本来の動作が損なわれることが原因と推察される。
【0075】
本来、スタブは、プリント基板上のマイクロストリップ線路によって構成され、その性質はプリント基板上のパターンと背面のグランドによって成り立っている。図16Aに示すように結合電極の高さが高いときにはスタブの電界は基板上のパターンとグランドの間に集中して本来の性能を発揮する。ところが、図16Bに示すように結合電極の高さが低くなりスタブに近づくと、結合電極とスタブが電気的に結合してしまい、本来のスタブとしての共振動作が損なわれてしまう。
【0076】
つまり、スタブの先端が短絡端であると、そこで強制的に電位を0Vに固定することができるのに対し、スタブの先端が開放端であると電位が不定になり易く、特に近くに結合電極があると、そちらと結合して電気的に不安定な状態に陥ってしまう。
【0077】
そこで、本発明者は、板金加工による量産可能な結合用電極を引き継ぎつつ、低背化しても所望の電気特性を得ることができる、新しい共振部構造を有する高周波結合器について提案する。
【0078】
図17A〜図17Cには、板金加工により製作された結合用電極を、プリント基板上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路として形成された共振用スタブに取り付けて構成される高周波結合器の、上面図、斜視図、断面図をそれぞれ示している。なお、図示の例では、図9に示した結合用電極を用いているが、勿論、図10に示した結合用電極や、板金加工によって製作された2本の端子で結合用電極を支持するその他の構造を、同様に適用することができる。
【0079】
図17において、下面にグランド導体172が形成されるとともに、上面に印刷パターンが形成されたプリント基板上171に、高周波結合器が配設されている。高周波結合器のインピーダンス整合部並びに共振部として、分布定数回路として作用するマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路すなわちスタブが形成され、信号線パターンを介して送受信回路モジュール(図示しない)と結線している。
【0080】
図示の高周波結合器における共振部はスタブで構成され、前段の第1の共振部173−1と、後段の第2の共振部173−2の2段を有する。第1の共振部173−1は、先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−1を介して下面のグランド172に接続してショートされ、短絡端となっている。また、第1の共振部173−1のグランド172に短絡されない側は、マイクロストリップ線路などで送受信回路モジュール(図示しない)と結線している。そして、第1の共振部173−1のほぼ中央に、第2の共振部173−2が接続されている。
【0081】
第2の共振部173−2をなすスタブは、第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bの2つに切断されている。結合用電極178を支持する前後それぞれ2本の端子は、この切断部をまたぐようにして第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bに接続されており、第1のスタブ173−2Aと結合用電極178の一部と第2のスタブ173−2Bでひとつの共振部として動作する。第2のスタブ173−2Bは、先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−2を介して下面のグランド172に接続してショートされており、第2の共振部173−2短絡端となっている。
【0082】
なお、図17A〜図17Cには送受信回路部を描いていないが、同じ基板上に設けても良いし、あるいは高周波コネクタや同軸ケーブルを介して別の基板に構成して、無線機の最適な位置にそれぞれ離して置くようにしても良い。
【0083】
上述と同様に、電圧定在波の振幅が大きい位置の付近に結合用電極178が配置されることが望ましい。以下では、電圧定在波を考慮した、高周波結合器の構成方法について説明する。
【0084】
前段の第1の共振部173−1は、位相長さが2分の1波長をなすスタブであり、その先端は短絡端である。したがって、図18に示すように、第1の共振部173−1内に発生する定在波の電圧振幅は、先端で0となり、中央付近すなわち4分の1波長(90度)のところで最大となる。そして、電圧定在波がほぼ最大となる中央付近に第2の共振部173−2を接続することで、第1の共振部173−1から第2の共振部173−2へ、より効率的に高周波信号を送り込むことができる。
【0085】
後段の第2の共振部173−2は、2つの分割された第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bと、これらスタブの間に接続された結合用電極178で構成される。そして、第2の共振部173−2全体の位相長さは2分の1波長程度とし、先端はスルーホール176−2を介してグランド172に短絡されている。
【0086】
ここで、結合用電極178を、第2の共振部173−2のちょうど中央に位置するように接続すると、第2のスタブ173−2Bの先端がグランド172に接続されて電圧振幅が0の節になるのに対して、結合用電極178の位置では電圧振幅が最大の腹になる。
【0087】
第2の共振部173−2は、先端を短絡した長さ2分の1波長の位相長さを持ち、且つ、第1の共振部173−1の中央に接続されている。第1の共振部のグランドに短絡されていない側はマイクロストリップ線路などで送受信回路に接続される。
【0088】
図17のような構成にすることで、所望の周波数で共振する高周波結合器を製作することができる。第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さを同じにすると、定在波の電圧振幅の腹と結合用電極の位置が一致することから、より強く結合する高周波結合器となる。さらに高周波結合器の感度を高めるためには、第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さをそれぞれ8分の1波長とし、結合用電極178の一方の端子からもう一方の端子までの位相長さが4分の1波長になるように、2分の1波長の位相長さを配分するのがよい。
【0089】
図19には、このように配分した場合の第2の共振部173−2に定在波が発生している様子を示している。同図から、結合用電極178の位置は、定在波の電圧振幅の腹と一致することから、より強く結合する高周波結合器となることを理解できよう。
【0090】
また、スタブのインピーダンス特性に相当するような回路を集中定数のチップインダクタとチップコンデンサによって作ると、さらに共振部173−1、173−2を小型化することができる。
【0091】
図17に示した高周波結合器に用いられる結合用電極178は1枚の板金から、打ち抜きと折り曲げによって作ると安価に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0093】
本明細書では、UWB信号を電界結合によりケーブルレスでデータ伝送する通信システムに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、UWB通信方式以外の高周波信号を使用する通信システムや、比較的低い周波数信号を用いて電界結合によりデータ伝送を行なう通信システムに対しても、同様に本発明を適用することができる。
【0094】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0095】
10…送信機、
11…送信回路部
12、22…直列インダクタ
13、23…並列インダクタ
14…送信用電極
15…誘電体(スペーサー)
16…スルーホール
17…プリント基板
18…グランド
20…受信機
21…受信回路部
24…受信用電極
71…プリント基板
72…グランド導体
73…スタブ
74…信号線パターン
75…送受信回路モジュール
76…スルーホール
77…端子
78…結合用電極
171…プリント基板
172…グランド導体
173−1…第1の共振部
173−2…第2の共振部
173−2A…第1のスタブ
173−2B…第2のスタブ
176−1、176−2…スルーホール
178…結合用電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を行なう通信装置並びに高周波結合器に係り、特に、低背化を実現する通信装置並びに高周波結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通信は、認証情報や電子マネーその他の価値情報のメディアとして広く普及している。例えば、ISO/IEC14443に準拠するICカード規格として、TypeA、TypeB、FeliCa(フェリカ)(登録商標)を挙げることができる。さらに、ソニーとPhilips社が開発したNFC(Near Field Communication)は、主にTypeA、TypeB、FeliCaの各ICカードと通信可能なNFC通信装置(リーダー/ライター)の仕様を規定したRFID規格であり、13.56MHz帯を使い、電磁誘導方式により近接型(0〜10cm以下:Proximity)の非接触双方向通信が可能である。
【0003】
最近では、組み込み用途に適したコンパクト・サイズのリーダー/ライター・モジュールが開発製造され、POS(Point Of Sales)端末や自動販売機、パーソナル・コンピューターなどさまざまな機器に実装して用いることができる。例えば、本体キーボードのパームレスト部分にリーダー/ライター・モジュールを内蔵し、近接された非接触ICタグから情報を読み取る、ノートブック型の情報処理装置に関する提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0004】
非接触通信システムのさらなるアプリケーションとして、動画像や音楽などのダウンロードやストリーミングといった大容量データ伝送を挙げることができる。例えば、自動販売機から有料コンテンツを携帯端末にダウンロードし、あるいはインターネットに接続されるパソコンを介して有料サイトから携帯端末にコンテンツをダウンロードする際に、非接触通信を利用することが想起される。その際、携帯端末を読み取り面に翳すという単一のユーザー操作で済み、且つ、従来の認証・課金処理と同じアクセス時間の感覚で完結することが好ましく、それゆえ通信レートの高速化が必須となる。
【0005】
ところが、非接触通信の代表例であるNFC通信の通信レートは106kbps〜424kbps程度であり、個人認証や課金処理には十分であるものの、他の汎用の無線通信(WiFiやBluetoothなど)と比べると非常に低速である。また、キャリア周波数などの物理的な制約からも、NFC通信など従来方式では実現可能な最高通信速度は高々848kbpsまでであり、今後の飛躍的な高速化を期待することはできない。
【0006】
これに対し、高速通信に適用可能な近接無線転送技術として、微弱なUWB(Ultra Wide Band)信号を用いたTransferJet(例えば、特許文献2、非特許文献1を参照のこと)を挙げることができる。
【0007】
上記の近接無線転送技術(TransferJet)は、基本的に、電界結合作用を利用して信号を伝送する方式であり、その通信装置は、高周波信号の処理を行なう通信回路部と、グランドに対しある程度の高さで離間して配置された結合用電極と、結合用電極に高周波信号を効率的に供給する共振部で構成される。上述した非接触ICタグと同様に情報機器に実装して用いるには、微弱UWB通信装置の低背化を実現することが、重要な技術課題の1つとして挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−87263号公報
【特許文献2】特開2008−99236号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】www.transferjet.org/en/index.html(平成21年3月23日現在)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を好適に行なうことができる、低背化された優れた通信装置並びに高周波結合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、 データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、
前記通信回路部に接続される高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする通信装置である。
【0012】
本願発明で言う高周波信号とは、具体的には、請求項8に記載の通り、超広帯域を使用するUWB信号である。
【0013】
また、本願の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置のグランドは誘電体基板の一方の面に形成された導体パターンであり、また、第1の共振部及び第2の共振部は、それぞれ前記誘電体基板の他方の面に形成された導体パターンからなるスタブとして構成される。
【0014】
また、本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置の第2の共振部は、所定位置の切断部で分割され、一端が前記第1の共振部に接続される第1のスタブと、先端が前記グランドに短絡された第2のスタブからなる。また、前記結合用電極の一方の端子が前記第1のスタブに接続されるとともに他方の端子が前記第2のスタブに接続される。
【0015】
また、本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項3に係る通信装置の前記第1のスタブと前記第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つ。より具体的には、請求項5、6に記載の通り、前記第1のスタブ、前記結合用電極、前記第2のスタブからなる前記第2の共振部全体としてほぼ2分の1波長の位相長さを持ち、前記第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、前記2本の端子で前記第1及び第2のスタブの各々に接続される結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つように構成されている。
【0016】
また、本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項1に係る通信装置の第1の共振部はほぼ2分の1波長の位相長さ持つスタブであり、且つ、前記伝送路に接続されない他方の端で前記グランドに短絡されている。また、第2の共振部の一端は前記第1の共振部のほぼ中央の位置に接続されている。
【0017】
また、本願の請求項9に記載の発明は、
高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側の高周波結合器に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする高周波結合器である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高周波の広帯域を用いる微弱UWB通信方式により近接距離で大容量データ伝送を好適に行なうことができる、低背化された優れた通信装置並びに高周波結合器を提供することができる。
【0019】
また、本願発明によれば、安価で且つ十分な機械強度を有する高周波結合器を実現することができ、低背化しても電気的特性が劣化しにくい。すなわち、本願発明によれば、量産性と小型化、低背化、電気特性の要求をすべて満たすことのできる高周波結合器を実現することができる。
【0020】
本願の請求項1、2、8、9に記載の発明によれば、結合用電極は2本の端子で支持されるので、高周波結合器は十分な機械強度を保つことができる。また、スタブ(若しくは集中定数回路)で構成される第1の共振部によって定在波を発生させて、第2の共振部により強い高周波信号を送り込むことができるので、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0021】
本願の請求項3に記載の発明によれば、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するように構成していることから、結合用電極に流れずに共振用スタブ上を素通りする電流を抑制することができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0022】
本願の請求項4に記載の発明によれば、第1のスタブと第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つことから、電圧振幅の腹と結合用電極の位置が一致するので、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0023】
本願の請求項5、6に記載の発明によれば、第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つことで、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0024】
本願の請求項7に記載の発明によれば、第1の共振部を構成するスタブの中央付近で定在波の電圧振幅が最大となり、当該位置に第2の共振部を接続することで、高周波信号を効率的に第2の共振部に送り込むことができる。これによって、高周波結合器はより強い結合作用を得ることができ、低背化に伴う電気特性の劣化を抑制することができる。
【0025】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信システムの構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、送信機10及び受信機20のそれぞれに配置される高周波結合器の基本構成を示した図である。
【図3】図3は、図2に示した高周波結合器の一実装例を示した図である。
【図4】図4は、微小ダイポールによる電磁界を表した図である。
【図5】図5は、図4に示した電磁界を結合用電極上にマッピングした図である。
【図6】図6は、容量装荷型アンテナの構成例を示した図である。
【図7】図7は、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示した図である。
【図8】図8は、スタブ73上に定在波が発生している様子を示した図である。
【図9A】図9Aは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(打ち抜き加工後)である。
【図9B】図9Bは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(曲げ加工後)である。
【図9C】図9Cは、板金加工によって製作した結合用電極14の一例を示した図(側面図並びに斜視図)である。
【図10A】図10Aは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(打ち抜き加工後)である。
【図10B】図10Bは、高周波結合器の結合用電極14の部分を板金加工によって製作する方法の一例を示した図(曲げ加工後)である。
【図10C】図10Cは、板金加工によって製作した結合用電極14の一例を示した図(側面図並びに斜視図)である。
【図11】図11は、結合用電極が誘電体からなるスペーサーで支持されるとともに、このスペーサーのスルーホールを貫挿する1本の金属線で結合用電極が共振用スタブに接続された高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図12】図12は、共振用スタブ上で2本の端子により結合用電極が支持されている高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図13】図13は、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれの端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続した高周波結合器の断面構成を示した図である。
【図14】図14は、第1の共振用スタブを開放端にした場合の、電圧定在波並びに電流定在波それぞれの振幅を示した図である。
【図15】図15は、先端が短絡端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図16A】図16Aは、先端が開放端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図16B】図16Bは、先端が開放端となるスタブの動作特性を説明するための図である。
【図17A】図17Aは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(上面図)である。
【図17B】図17Bは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(斜視図)である。
【図17C】図17Cは、板金加工により製作された結合用電極をプリント基板上に実装して構成される高周波結合器を示した図(断面図)である。
【図18】図18は、図17に示した高周波結合器の第1の共振部173−1に定在波が発生している様子を示した図である。
【図19】図19は、図17に示した高周波結合器において、第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さをそれぞれ8分の1波長とし、結合用電極178の一方の端子からもう一方の端子までの位相長さが4分の1波長になるように位相長さを配分したときの、第2の共振部173−2に定在波が発生している様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
まず、微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信の動作原理について説明する。
【0029】
図1には、電界結合作用を利用した微弱UWB通信方式による近距離高速無線通信システムの構成を模式的に示している。同図において、送信機10及び受信機20がそれぞれ持つ送受信に用いられる結合用電極14及び24は、例えば3cm程度離間して対向して配置され、電界結合が可能である。送信機側の送信回路部11は、上位アプリケーションから送信要求が生じると、送信データに基づいてUWB信号などの高周波送信信号を生成し、送信用電極14から受信用電極24へ電界信号として伝搬する。そして、受信機20側の受信回路部21は、受信した高周波の電界信号を復調及び復号処理して、再現したデータを上位アプリケーションへ渡す。
【0030】
UWB通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式によれば、近距離において100Mbps程度の超高速データ伝送を実現することができる。また、後述するように放射電界ではなく静電界若しくは誘導電界の結合作用によりUWB通信を行なう場合、その電界強度は距離の3乗若しくは2乗に反比例することから、無線設備から3メートルの距離での電界強度が所定レベル以下に抑制することで無線局の免許が不要となる微弱無線とすることが可能であり、安価に通信システムを構成することができる。また、電界結合方式により近距離でデータ通信を行なうので、周辺に存在する反射物からの反射波が小さいため干渉の影響が少ない、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がない、といった利点がある。
【0031】
一方、波長に対する伝搬距離の大きさに応じて伝搬損が大きくなることから、電界結合により高周波信号を伝搬する際には、伝搬損を十分低く抑える必要がある。UWB信号のように高周波数の広帯域信号を電界結合で伝送する通信方式では、3cm程度の近距離通信であっても、使用周波数帯4GHzにとっては約2分の1波長に相当するため、無視することはできない長さである。とりわけ、高周波回路では、低周波回路に比べると特性インピーダンスの問題はより深刻であり、送受信機の電極間の結合点においてインピーダンス不整合による影響は顕在化する。
【0032】
kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信では、空間での伝搬損が小さいため、送信機及び受信機が電極のみからなる結合器を備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する場合であっても、所望のデータ伝送を行なうことができる。これに対し、GHz帯の高周波を使い、波長に対して無視できない距離で信号を伝送する通信では、空間での伝搬損が大きいため、伝送信号の反射を抑え、伝送効率を向上させる必要がある。送信機及び受信機のそれぞれにおいて伝送路が所定の特性インピーダンスに調整されているとしても、平行平板コンデンサで結合しただけでは、結合部においてインピーダンス・マッチングをとることはできない。例えば、図1に示した通信システムにおいて、送信回路部11と送信用電極14を結ぶ高周波電界信号の伝送路は例えば50Ωのインピーダンス整合がとられた同軸線路であったとしても、送信用電極14と受信用電極24間の結合部におけるインピーダンスが不整合であると、電界信号は反射して伝搬損を生じることから、通信効率が低下する。
【0033】
そこで、図2に示すように、送信機10及び受信機20のそれぞれに配置される高周波結合器を、平板状の電極14、24と、直列インダクタ12、22、並びに、並列インダクタ13、23からなる共振部を高周波信号伝送路に接続して構成している。ここで言う高周波信号伝送路とは、同軸ケーブル、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路などで構成することができる。このような高周波結合器を向かい合わせて配置すると、準静電界が支配的な極近距離では結合部分がバンドパス・フィルタのように動作して、高周波信号を伝達することができる。また、誘導電界が支配的な、波長に対して無視できない距離であっても、結合用電極とグランドにそれぞれたまる電荷並びに鏡像電荷によって形成される微小ダイポールから発生する誘導電界を介して2つの高周波結合器の間で効率よく高周波信号を伝達することができる。
【0034】
ここで、送信機10と受信機20の電極間すなわち結合部分において、単にインピーダンス・マッチングを取り、反射波を抑えることだけを目的とするのであれば、各結合器を平板状の電極14、24と直列インダクタを高周波信号伝送路上に直列接続するという簡素な構造であっても、結合部分におけるインピーダンスが連続的となるように設計することは可能である。しかしながら、結合部分の前後における特性インピーダンスに変化はないので電流の大きさも変わらない。これに対し、並列インダクタ13、23を設けることによって、より大きな電化を結合用電極14に送り込み、結合用電極14、24間で強い電界結合作用を生じさせることができる。また、結合用電極14の表面の近傍に大きな電界を誘起したとき、発生した電界は進行方向(微小ダイポールの方向:後述)に振動する縦波の電界信号として、結合用電極14の表面から伝搬する。この電界の波により、結合用電極14、24間の距離(位相長さ)が比較的大きな場合であっても電界信号を伝搬することが可能になる。
【0035】
したがって、微弱UWB通信方式による近距離無線通信システムでは、高周波結合器として必須の条件は以下の通りとなる。
【0036】
(1)グランドに対向して高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間した位置に電界で結合するための結合用電極があること。
(2)より強い電界で結合させるための共振部(並列インダクタやスタブ)があること。
(3)通信に使用する周波数帯において、結合用電極を向かい合わせに置いたときにインピーダンス・マッチングが取れるように、直列・並列インダクタ、及び、結合用電極によるコンデンサの定数、あるいはスタブの長さが設定されていること。
【0037】
図1に示した通信システムにおいて、送信機10及び受信機20の各結合用電極14及び24が適当な距離を隔てて対向すると、2つの高周波結合器は、所望の高周波数帯の電界信号を通過するバンドパス・フィルタとして動作するとともに、単体の高周波結合器としては電流を増幅するインピーダンス変換回路として作用して、結合用電極には振幅の大きな電流が流入する。他方、高周波結合器が自由空間に単独で置かれるとき、高周波結合器の入力インピーダンスは高周波信号伝送路の特性インピーダンスと一致しないので、高周波信号伝送路に入った信号は高周波結合器内で反射され、外部に放射されないことから近隣の他の通信システムへの影響はない。すなわち、送信機側では、通信を行なうべき相手がいないときには、アンテナのように電波を垂れ流すことはなく、通信を行なうべき相手が近づいたときのみインピーダンス整合がとれることによって高周波の電界信号の伝達が行なわれる。
【0038】
図3には、図2に示した高周波結合器の一実装例を示している。送信機10及び受信機20側のいずれの高周波結合器も同様に構成することができる。同図において、結合用電極14は円柱状の誘電体からなるスペーサー15の上面に配設され、プリント基板17上の高周波信号伝送路とはこのスペーサー15内を貫挿するスルーホール16を通して電気的に接続されている。
【0039】
例えば、所望の高さを持つ円柱状の誘電体にスルーホール16を形成した後、スルーホール16中に導体を充填させるとともに、この円柱の上端面に結合用電極14となるべき導体パターンを、例えば鍍金技術により蒸着する。また、プリント基板17上には、高周波伝送線路となる配線パターンが形成されている。そして、プリント基板17上にこのスペーサー15をリフロー半田などにより実装することによって製作することができる。プリント基板17の回路実装面から結合用電極14までの高さ、すなわちスルーホール16の長さ(位相長さ)を使用波長に応じて適当に調整することで、スルーホール16がインダクタンスを持ち、図2に示した直列インダクタ12と代用することができる。また、高周波信号伝送路はチップ状の並列インダクタ13を介してグランド18に接続されている。
【0040】
ここで、送信機10側の結合用電極14において発生する電磁界について考察してみる。
【0041】
図1並びに図2に示すように、結合用電極14は、高周波信号の伝送路の一端に接続され、送信回路部11から出力される高周波信号が流れ込んで、電荷を蓄える。このとき、直列インダクタ12及び並列インダクタ13からなる共振部の共振作用によって、伝送路を介して結合用電極14に流れ込む電流は増幅され、より大きな電荷が蓄えられる。
【0042】
また、結合用電極14に対向するように、高周波信号の波長に対して無視し得る高さ(位相長さ)だけ離間して、グランド18が配置されている。そして、上述のように結合用電極14に蓄えられると、グランド18には鏡像電荷が蓄えられる。平面導体の外部に点電荷Qを置くと、平面導体内には(表面電荷分布を置き換えた仮想的な)鏡像電荷−Qが配置されるが、このことは、例えば溝口正著「電磁気学」(裳華房、第54頁乃至第57頁)にも記載されているように、当業界で周知である。
【0043】
この結果、結合用電極14に蓄えられた電荷の中心とグランド18に蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールが形成される。厳密に言うと、電荷Qと鏡像電荷−Qは体積を持ち、微小ダイポールが電荷の中心と鏡像電荷の中心を結ぶように形成される。ここで言う「微小ダイポール」は、「電気ダイポールの電荷間の距離が非常に短いもの」を指す。例えば虫明康人著「アンテナ・電波伝搬」(コロナ社、16頁〜18頁)にも、「微小ダイポール」が記載されている。そして、微小ダイポールによって、電界の横波成分Eθ、電界の縦波成分ER、微小ダイポール回りの磁界Hφが発生する。
【0044】
図4には、微小ダイポールによる電磁界を表している。また、図5には、この電磁界を結合用電極上にマッピングした様子を示している。図示のように、電界の横波成分Eθは伝搬方向と垂直な方向に振動し、電界の縦波成分ERは伝搬方向と平行な向きに振動する。また、微小ダイポール回りには磁界Hφが発生する。下式(1)〜(3)は微小ダイポールによって生成される電磁界を表している。同式中、距離Rの3乗に反比例する成分は静電界、距離Rの2乗に反比例する成分は誘導電界、距離Rに反比例する成分は放射電界である。
【0045】
【数1】
【0046】
図1に示した近距離無線通信システムにおいて、周辺の他のシステムへの妨害波を抑制するには、放射電界の成分を含む横波Eθを抑制しながら、放射電界の成分を含まない縦波ERを利用することが好ましいと考えられる。何故ならば、上式(1)、(2)から分かるように、電界の横波成分Eθは距離に反比例する(すなわち、距離減衰の小さい)放射電界を含むのに対して、縦波成分ERは放射電界を含まないからである。
【0047】
まず、電界の横波成分Eθを生じないようにするには、高周波結合器がアンテナとして動作しないようにする必要がある。図2に示した高周波結合器は、一見すると、アンテナ素子の先端に金属を取り付けて静電容量を持たせ、アンテナの高さを短縮させる「容量装荷型」のアンテナと構造が類似する。したがって、高周波結合器が容量装荷型アンテナとして動作しないようにする必要がある。図6には、容量装荷型アンテナの構成例を示しているが、同図中で矢印A方向に主に電界の縦波成分ERが発生するとともに、矢印B1、B2方向には電界の横波成分Eθが発生する。
【0048】
図3に示した結合用電極の構成例では、誘電体15とスルーホール16は、結合用電極14とグランド18との結合を回避する役割と、直列インダクタ12を形成する役割を兼ね備えている。プリント基板17の回路実装面から電極14まで十分な高さをとって直列インダクタ12を構成することによって、グランド18と電極14との電界結合を回避して、受信機側の高周波結合器との電界結合作用を確保する。但し、誘電体15の高さが大きい、すなわちプリント基板17の回路実装面から電極14までの距離が使用波長に対して無視できない長さになると、高周波結合器が容量装荷型アンテナとして作用してしまい、図6中の矢印B1、B2方向で示したような横波成分Eθが発生する。よって、誘電体15の高さは、電極14とグランド18との結合を回避して高周波結合器としての特性を得るとともに、インピーダンス・マッチング回路として作用するために必要な直列インダクタ12を構成するために十分な長さとし、直列インダクタ12に流れる電流による不要電波Eθの放射が大きくならない程度に短いことが条件となる。
【0049】
他方、上式(2)から、縦波ER成分は微小ダイポールの方向となす角θ=0度で極大となることが分かる。したがって、電界の縦波ERを効率的に利用して非接触通信を行なうには、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して受信機側の高周波結合器を配置して、高周波の電界信号を伝送することが好ましい。
【0050】
また、直列インダクタ12と並列インダクタ13からなる共振部によって、共振部によって結合用電極14に流れ込む高周波信号の電流をより大きくすることができる。この結果、結合用電極14に蓄積される電荷とグランド側の鏡像電荷によって形成される微小ダイポールのモーメントを大きくすることができ、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となる伝搬方向に向かって、縦波ERからなる高周波の電界信号を効率的に放出することができる。
【0051】
図2に示した高周波結合器では、インピーダンス整合部は並列インダクタ及び直列インダクタの定数L1、L2により動作周波数f0が決定される。ところが、高周波回路では集中定数回路は分布定数回路よりも帯域が狭いことが知られており、また周波数が高いときインダクタの定数は小さくなるので、定数のばらつきによって共振周波数がずれるという問題がある。これに対し、インピーダンス整合部や共振部を集中定数回路から分布定数回路に代えて高周波結合器を構成することで、広帯域化を実現するという解決方法が考えられる。
【0052】
図7には、インピーダンス整合部や共振部に分布定数回路を用いた高周波結合器の構成例を示している。図示の例では、下面にグランド導体72が形成されるとともに、上面に印刷パターンが形成されたプリント基板上71に、高周波結合器が配設されている。高周波結合器のインピーダンス整合部並びに共振部として、並列インダクタと直列インダクタの代わりに、分布定数回路として作用するマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路すなわちスタブ73が形成され、信号線パターン74を介して送受信回路モジュール75と結線している。スタブ73は、先端においてプリント基板71を貫挿するスルーホール76を介して下面のグランド72に接続してショートされる。また、スタブ73の中央付近において、細い金属線からなる1本の端子77を介して結合用電極78に接続される。
【0053】
なお、電子工学の技術分野で言う「スタブ(stub)」は、一端を接続、他端を未接続又はグランド接続した電線の総称であり、調整、測定、インピーダンス整合、フィルタなどの用途で回路の途中に設けられる。
【0054】
ここで、信号線を介して送受信回路から入力された信号は、スタブ73の先端部で反射し、スタブ73内には定在波が立つことになる。スタブ73の位相長さは高周波信号の2分の1波長(位相にして、180度)程度とし、信号線74とスタブ73はプリント基板71上のマイクロストリップ線路、コプレーナ線路などで形成される。図8に示すように、スタブ73の位相長さが2分の1波長で先端がショートしているときには、スタブ73内に発生する定在波の電圧振幅はスタブ73の先端で0となり、スタブ73の中央、すなわちスタブ73の先端から4分の1波長(90度)のところで最大となる。定在波の電圧振幅が最大となるスタブ73の中央に結合用電極78を1本の端子77で接続することで、伝搬効率の良い高周波結合器を作ることができる。
【0055】
図7中では、スタブ73は、プリント基板71上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路であり、その直流抵抗が小さいことから、高周波信号でも損失が少なく、高周波結合器間の伝搬損を小さくすることができる。また、分布定数回路を構成するスタブ73のサイズは高周波信号の2分の1波長程度と大きいことから、製造時の公差による寸法の誤差は全体の位相長さに比較すると微量であり、特性のバラツキが生じにくい。
【0056】
図7に示した高周波結合器では、結合用電極をそのほぼ中心で金属線からなる1本の端子により支持している構造であり、機械強度が充分でない。例えば、図3に示したように、誘電体からなるスペーサーの上端面に結合用電極となるパターンを蒸着し、スペーサー内を貫挿するスルーホールに充填した導体を直列インダクタの代用とするという設計方法も考えられる。但し、スペーサーを配置することにより部品コストが増大するとともに、装置重量が増大してしまうことが懸念される。
【0057】
他方、結合用電極の部分を板金加工によって製作する方法も考えられる。共振用スタブ上に結合用電極を支持する端子の本数を複数にすることで、スペーサーなしでも十分な機械強度を確保することができ、また、簡易且つ安価に製作することができることから、量産向きである。
【0058】
図9並びに図10には、板金加工を利用して、複数本の端子で支持される結合用電極の製作方法をそれぞれ図解している。なお、板金には、例えば表面を金鍍金したリン青銅板などを用いることができる。
【0059】
銅などからなる板金にまず打ち抜き加工を施して、上面平坦部と、端子を形成する。上面平坦部は、比較的広い表面積を持ち、電荷を蓄える結合用電極14として作用する。また、端子は、上面平坦部を基板上で支持する支持手段になるとともに、結合用電極14への電荷の伝搬路となり且つ直列インダクタ12としても作用する。
【0060】
続いて、端子に折り曲げ加工を施して、上面平坦部に対し端子をほぼ垂直に屈曲させるとともにさらに端子の下端を屈曲させて、高周波信号線との接続部にもなる足平部を形成し、併せて端子を所望の高さとする。ここで言う所望の高さとは、上述したように、容量装荷型アンテナとして動作しないで且つ結合用電極14とグランド18との結合を回避する役割と、この端子が直列インダクタ12を形成する役割を兼ね備え得る寸法に相当する。
【0061】
このようにして出来上がった結合用電極を、例えばプリント基板上の該当する場所に治具(図示しない)などで固定して、リフロー半田などにより接続部としての足平部を基板上の配線パターンに取り付けることができる。
【0062】
ここで、端子1本で結合用電極を共振用スタブに接続した場合と端子2本で結合用電極を支持した場合とで、電気的特性の相違について考察してみる。図11には、結合用電極が誘電体からなるスペーサーで支持されるとともに、このスペーサーのスルーホールを貫挿する1本の金属線からなる端子で結合用電極が共振用スタブに接続された高周波結合器の断面構成を示している。また、図12には、共振用スタブ上で2本の端子により結合用電極が支持されている高周波結合器の断面構成を示している。
【0063】
送受信回路部から信号線を介して入力される電流は、共振用スタブ及びその先端のスルーホールを介してグランドに向かって流れるが、その際に、より多くの電流が端子を介して結合用電極側に流れ込むと、高周波結合器の送信信号強度が増すと考えられる。図8に示したように、2分の1波長の位相長さからなるスタブの先端部をグランドにショートすると、スタブ内に発生する定在波の電圧振幅はスタブの中央すなわちその先端から4分の1波長(90度)のところで最大となることから、スタブの中央に結合用電極を端子で接続することが好ましい(前述)。
【0064】
ところが、実験の結果、図11において共振用スタブから1本の端子を介して結合用電極に流れ込む電流(同図中の矢印1及び2)よりも、図12において共振用スタブから2本の端子を介して結合用電極に流れ込む電流(同図中の矢印4及び5)の方が小さくなることが分かった。これは、結合用電極を共振用スタブに接続する端子を2本にすることで、結合用電極に流れ込むことなく、共振用スタブ上を素通りする電流(図12中の矢印6)は、端子が1本のときに共振用スタブ上を素通りする電流(図12中の矢印3)よりも増加するためであり、その結果、結合用電極側に電流は流れ難くなり高周波結合器の効率が悪化する。
【0065】
そこで、本出願人に既に譲渡されている特開2008−312074号公報には、図13に示すように、結合用電極に流れずに共振用スタブ上を素通りする電流を抑制するために、共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子を、この切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するようにした高周波結合器について提案している。以下では、切断した共振用スタブの先端側を「第1の共振用スタブ」と呼び、他方の信号線の入力端側を「第2の共振用スタブ」と呼ぶことにする。
【0066】
図13に示すような構成によれば、送受信回路部から信号線を介して入力される電流が共振用スタブの先端に向かって流れるには、同図中の矢印7に示すように一旦は片方の端子を介して結合用電極に流れた後、同図中の矢印8に示すように他方の端子を介して切断部以降の共振用スタブに流れ込むことになる。すなわち、図12の矢印6に示したように結合用電極を素通りして共振用スタブを流れる電流成分は極めて少なくなる。したがって、図13中の矢印7及び8に示した電流の量を大きくすれば、高周波結合器の特性は改善される。
【0067】
続いて、結合用電極の取り付け位置、若しくは共振用スタブの切断位置について考察してみる。
【0068】
図13に示すような共振用スタブを切断し、結合用電極を支持する前後それぞれ2本の端子をこの切断部をまたぐようにして共振用スタブに接続するという構成からなる高周波結合器においても、図7に示した構成例と同様に、電圧定在波の振幅が大きい位置の付近に結合用電極が配置されることが望ましい。
【0069】
図14には、第1の共振用スタブを開放端にした場合における、共振用スタブ内部の電圧定在波並びに電流定在波それぞれの振幅を示している。この場合、図示の通り、第1の共振用スタブ側の開放端及び第2の共振用スタブ側の入力端の各々において最大となるような電圧定在波が立ち、電流定在波はこのような電圧定在波に対しπ/4だけ位相差を持つ。したがって、図示のように共振用スタブと端子と結合用電極を合わせた全体の長さ(位相長さ)をおよそ共振周波数の位相長にして360度すなわち1波長程度とすると、ほぼその中央において電圧定在波の振幅が大きくなるので、ほぼ中央において共振用スタブを第1及び第2の共振用スタブに切断するとともに、この切断部分を2本の端子で接続するように結合用電極を取り付けることが好ましい。
【0070】
また、1本の端子で結合用電極を支持する場合には、この端子を電流が流れることによって不要な電波が発生することが懸念される(図6を参照のこと)。これに対し、2本の端子で結合用電極を支持する場合には、それぞれの端子には互いに逆向きとなる電流が流れるような位置に結合用電極を設置すれば、電流が互いに打ち消し合って不要な電波の放射を低減することができる。
【0071】
続いて、高周波結合器の低背化について考察する。
【0072】
図7に示したような1本の端子で結合用電極を支持する構造の場合、共振部としてのスタブの先端がグランドにショートされていることから、プリント基板上のスタブとグランドとの電界を強く保つことができる(図15を参照のこと)。この結果として、グランドから結合用電極までの高さを低くしても、結合用電極とスタブの電気的な結合を抑制することができ、低背化が可能である。本発明者の実験により、現状の3mmから1.5mmまで低背化できることが確認できた。但し、1本の端子でのみ結合用電極を支持する構造は機械強度が十分でない。また、図3に示したようにスペーサーを介在させて結合用電極を支持する構造にすると、部品コストが高くなり、量産には不向きである。
【0073】
これに対し、板金加工を用いて製作され、2本の端子で結合用電極を支持する構造によると、上述したように、十分な機械強度を確保できるとともに、量産にも適している。また、図14に示したように、共振スタブの先端を開放端にした場合、上述したように、共振用スタブと結合用電極全体の位相長さを1波長程度とし、且つ、ほぼその中央に取り付けた結合用電極に効率的に信号を送り込むことができる。例えば、位相長さが8分の3波長である第2のスタブに、位相長さが4分の1波長の結合用電極の一方の端子を接続し、さらに、結合用電極の他方の端子を、位相長さが8分の3波長である第1のスタブに接続する。
【0074】
ところが、共振用スタブの先端を開放端にした場合、グランドから結合用電極までの高さを低くすると、帯域が狭くなるなど、電気的特性が劣化することが、本発明者の実験により確認された。これは、低背化により結合用電極とスタブ間で電気的な結合作用が発生し、これに伴って本来の動作が損なわれることが原因と推察される。
【0075】
本来、スタブは、プリント基板上のマイクロストリップ線路によって構成され、その性質はプリント基板上のパターンと背面のグランドによって成り立っている。図16Aに示すように結合電極の高さが高いときにはスタブの電界は基板上のパターンとグランドの間に集中して本来の性能を発揮する。ところが、図16Bに示すように結合電極の高さが低くなりスタブに近づくと、結合電極とスタブが電気的に結合してしまい、本来のスタブとしての共振動作が損なわれてしまう。
【0076】
つまり、スタブの先端が短絡端であると、そこで強制的に電位を0Vに固定することができるのに対し、スタブの先端が開放端であると電位が不定になり易く、特に近くに結合電極があると、そちらと結合して電気的に不安定な状態に陥ってしまう。
【0077】
そこで、本発明者は、板金加工による量産可能な結合用電極を引き継ぎつつ、低背化しても所望の電気特性を得ることができる、新しい共振部構造を有する高周波結合器について提案する。
【0078】
図17A〜図17Cには、板金加工により製作された結合用電極を、プリント基板上のマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路として形成された共振用スタブに取り付けて構成される高周波結合器の、上面図、斜視図、断面図をそれぞれ示している。なお、図示の例では、図9に示した結合用電極を用いているが、勿論、図10に示した結合用電極や、板金加工によって製作された2本の端子で結合用電極を支持するその他の構造を、同様に適用することができる。
【0079】
図17において、下面にグランド導体172が形成されるとともに、上面に印刷パターンが形成されたプリント基板上171に、高周波結合器が配設されている。高周波結合器のインピーダンス整合部並びに共振部として、分布定数回路として作用するマイクロストリップライン又はコプレーナ導波路すなわちスタブが形成され、信号線パターンを介して送受信回路モジュール(図示しない)と結線している。
【0080】
図示の高周波結合器における共振部はスタブで構成され、前段の第1の共振部173−1と、後段の第2の共振部173−2の2段を有する。第1の共振部173−1は、先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−1を介して下面のグランド172に接続してショートされ、短絡端となっている。また、第1の共振部173−1のグランド172に短絡されない側は、マイクロストリップ線路などで送受信回路モジュール(図示しない)と結線している。そして、第1の共振部173−1のほぼ中央に、第2の共振部173−2が接続されている。
【0081】
第2の共振部173−2をなすスタブは、第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bの2つに切断されている。結合用電極178を支持する前後それぞれ2本の端子は、この切断部をまたぐようにして第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bに接続されており、第1のスタブ173−2Aと結合用電極178の一部と第2のスタブ173−2Bでひとつの共振部として動作する。第2のスタブ173−2Bは、先端においてプリント基板171を貫挿するスルーホール176−2を介して下面のグランド172に接続してショートされており、第2の共振部173−2短絡端となっている。
【0082】
なお、図17A〜図17Cには送受信回路部を描いていないが、同じ基板上に設けても良いし、あるいは高周波コネクタや同軸ケーブルを介して別の基板に構成して、無線機の最適な位置にそれぞれ離して置くようにしても良い。
【0083】
上述と同様に、電圧定在波の振幅が大きい位置の付近に結合用電極178が配置されることが望ましい。以下では、電圧定在波を考慮した、高周波結合器の構成方法について説明する。
【0084】
前段の第1の共振部173−1は、位相長さが2分の1波長をなすスタブであり、その先端は短絡端である。したがって、図18に示すように、第1の共振部173−1内に発生する定在波の電圧振幅は、先端で0となり、中央付近すなわち4分の1波長(90度)のところで最大となる。そして、電圧定在波がほぼ最大となる中央付近に第2の共振部173−2を接続することで、第1の共振部173−1から第2の共振部173−2へ、より効率的に高周波信号を送り込むことができる。
【0085】
後段の第2の共振部173−2は、2つの分割された第1のスタブ173−2Aと第2のスタブ173−2Bと、これらスタブの間に接続された結合用電極178で構成される。そして、第2の共振部173−2全体の位相長さは2分の1波長程度とし、先端はスルーホール176−2を介してグランド172に短絡されている。
【0086】
ここで、結合用電極178を、第2の共振部173−2のちょうど中央に位置するように接続すると、第2のスタブ173−2Bの先端がグランド172に接続されて電圧振幅が0の節になるのに対して、結合用電極178の位置では電圧振幅が最大の腹になる。
【0087】
第2の共振部173−2は、先端を短絡した長さ2分の1波長の位相長さを持ち、且つ、第1の共振部173−1の中央に接続されている。第1の共振部のグランドに短絡されていない側はマイクロストリップ線路などで送受信回路に接続される。
【0088】
図17のような構成にすることで、所望の周波数で共振する高周波結合器を製作することができる。第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さを同じにすると、定在波の電圧振幅の腹と結合用電極の位置が一致することから、より強く結合する高周波結合器となる。さらに高周波結合器の感度を高めるためには、第1のスタブ173−2A、第2のスタブ173−2Bの位相長さをそれぞれ8分の1波長とし、結合用電極178の一方の端子からもう一方の端子までの位相長さが4分の1波長になるように、2分の1波長の位相長さを配分するのがよい。
【0089】
図19には、このように配分した場合の第2の共振部173−2に定在波が発生している様子を示している。同図から、結合用電極178の位置は、定在波の電圧振幅の腹と一致することから、より強く結合する高周波結合器となることを理解できよう。
【0090】
また、スタブのインピーダンス特性に相当するような回路を集中定数のチップインダクタとチップコンデンサによって作ると、さらに共振部173−1、173−2を小型化することができる。
【0091】
図17に示した高周波結合器に用いられる結合用電極178は1枚の板金から、打ち抜きと折り曲げによって作ると安価に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0093】
本明細書では、UWB信号を電界結合によりケーブルレスでデータ伝送する通信システムに適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、UWB通信方式以外の高周波信号を使用する通信システムや、比較的低い周波数信号を用いて電界結合によりデータ伝送を行なう通信システムに対しても、同様に本発明を適用することができる。
【0094】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0095】
10…送信機、
11…送信回路部
12、22…直列インダクタ
13、23…並列インダクタ
14…送信用電極
15…誘電体(スペーサー)
16…スルーホール
17…プリント基板
18…グランド
20…受信機
21…受信回路部
24…受信用電極
71…プリント基板
72…グランド導体
73…スタブ
74…信号線パターン
75…送受信回路モジュール
76…スルーホール
77…端子
78…結合用電極
171…プリント基板
172…グランド導体
173−1…第1の共振部
173−2…第2の共振部
173−2A…第1のスタブ
173−2B…第2のスタブ
176−1、176−2…スルーホール
178…結合用電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、
前記通信回路部に接続される高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記グランドは誘電体基板の一方の面に形成された導体パターンであり、
前記第1の共振部及び前記第2の共振部は、それぞれ前記誘電体基板の他方の面に形成された導体パターンからなるスタブである、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2の共振部は、所定位置の切断部で分割され、一端が前記第1の共振部に接続される第1のスタブと、先端が前記グランドに短絡された第2のスタブからなり、
前記結合用電極の一方の端子が前記第1のスタブに接続されるとともに他方の端子が前記第2のスタブに接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1のスタブと前記第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のスタブ、前記結合用電極、前記第2のスタブからなる前記第2の共振部全体としてほぼ2分の1波長の位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、前記2本の端子で前記第1及び第2のスタブの各々に接続される結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の共振部はほぼ2分の1波長の位相長さ持つスタブであり、且つ、前記伝送路に接続されない他方の端で前記グランドに短絡され、
前記第2の共振部の一端は前記第1の共振部のほぼ中央の位置に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記の高周波信号は、超広帯域を使用するUWB信号である、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側の高周波結合器に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする高周波結合器。
【請求項1】
データを伝送する高周波信号の処理を行なう通信回路部と、
前記通信回路部に接続される高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記グランドは誘電体基板の一方の面に形成された導体パターンであり、
前記第1の共振部及び前記第2の共振部は、それぞれ前記誘電体基板の他方の面に形成された導体パターンからなるスタブである、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第2の共振部は、所定位置の切断部で分割され、一端が前記第1の共振部に接続される第1のスタブと、先端が前記グランドに短絡された第2のスタブからなり、
前記結合用電極の一方の端子が前記第1のスタブに接続されるとともに他方の端子が前記第2のスタブに接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1のスタブと前記第2のスタブはほぼ同じ位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1のスタブ、前記結合用電極、前記第2のスタブからなる前記第2の共振部全体としてほぼ2分の1波長の位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のスタブはともにほぼ8分の1波長の位相長さを持ち、且つ、前記2本の端子で前記第1及び第2のスタブの各々に接続される結合用電極はほぼ4分の1波長の位相長さを持つ、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1の共振部はほぼ2分の1波長の位相長さ持つスタブであり、且つ、前記伝送路に接続されない他方の端で前記グランドに短絡され、
前記第2の共振部の一端は前記第1の共振部のほぼ中央の位置に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記の高周波信号は、超広帯域を使用するUWB信号である、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
高周波信号の伝送路と、
グランドと、
前記グランドに対向して前記高周波信号の波長に対して無視し得る高さだけ離間するように2本の端子で支持される結合用電極と、
前記伝送路を介して前記結合用電極に流れ込む電流を大きくするための共振部を有し、
前記共振部は、前記伝送路に接続される第1の共振部と、一端が前記第1の共振部に接続されるとともに他端が前記グランドに短絡され、前記結合用電極の前記端子が接続される第2の共振部からなり、
前記結合用電極に蓄えられた前記電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手側の高周波結合器に向けて前記高周波信号を伝送する、
ことを特徴とする高周波結合器。
【図8】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図19】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図19】
【公開番号】特開2010−233130(P2010−233130A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80793(P2009−80793)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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