説明

通信装置及び通信方法

【課題】複数の端末装置が異なる周波数を使用して同時に信号フレームを送信し、基地局が複数の信号フレームを一括して復調を行う通信システムにおいて、基地局からの送信信号がない状態においても端末同士で同期したシンボルタイミングによる信号フレームを生成し送信する制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の通信装置は、自局が送信に利用する周波数と異なるチャネルで他の端末からの信号フレームを受信し、シンボルタイミング同期を推定する。送信時には、周波数チャネルを変更し、受信時のシンボルタイミングを調整した送信シンボルタイミング信号を生成し、これに基づく変調処理を行う。これにより複数の端末同期で同期したシンボルタイミングによる多重通信が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つの基地局と複数の端末との間で同時に通信を行う通信システムにおいて用いられる、複数の端末から送信するフレームのシンボルタイミングを同期させる通信装置及び通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユビキタスセンサーネットワークの実現手段として、RFID技術への期待が高まっている。このRFIDによる固体識別認証は、1台のリーダライター(基地局)で複数のRFタグ(端末)から送信される識別情報(ID)を一定時間内に正確に伝送することが求められる。図1は、RFID固体識別システムの一例を示したものである。
図1に示すシステムは、基地局との無線通信が可能なエリアにn台(n>1)の端末局が存在している。ぞれぞれの端末は基地局に対して個々の識別情報を送信し、これに対して基地局はそれぞれの端末に対して正常に受信できたことを知らせる信号を返している。またここで示したシステムでは、各端末からの信号が時間的な衝突によって発生する干渉を回避するために、それぞれの端末に異なる周波数チャネルを割り当てて無線通信を行っているものである。
【0003】
今後RFIDの普及が進むにつれ、一定時間内に読み取らなければならない識別情報の量は大幅に増大していくと考えられる。そのため図1に示したような無線通信システムにおいて伝送効率を向上させる技術が必要となってくる。この伝送効率の向上を実現させる手段の一つとして、周波数多重を用いて複数の端末が異なる周波数チャネルで同時に基地局への無線フレームを送信する方法がある。受信側である基地局は、広い帯域での信号受信を行い複数の無線フレームを一括処理する。図2は、周波数多重を用いて同時に端末が無線フレームを送信した場合の信号スペクトラムの一例を示したものである。
【0004】
図2において201、202、203はそれぞれ同一エリアに存在する端末1、端末2、端末3からの送信信号スペクトラムを示しており、204は端末nからの送信信号スペクトラムを示している。ここで示した例では、端末1〜端末nはそれぞれ異なる周波数チャネルCH1〜CHnを使用して通信を行っており、同時に送信しても信号スペクトラムが重なることがなくチャネル間での干渉が発生しない。これより基地局が図2の205に示す信号帯域で受信を行うことが可能になる。これにより、基地局が単位時間あたりに受けとる端末からのデータ量を増やすことができ、伝送効率を向上させることができる。
【0005】
次に基地局が複数の端末から受ける受信信号の一括復調処理について考える。図2に示すように各端末からの信号キャリアが直交する関係で到来する場合、基地局で受信される複数の端末からの信号をフーリエ変換処理することにより、周波数チャネルごとの信号成分に分離することが可能である。小さい回路規模でフーリエ変換を実現できる手法として
OFDM伝送に用いられるFFT(Fast Fourier transform:高速フーリエ変換)が知られており、ここで示した複数端末からの多重信号の一括復調においても有用である。
【0006】
図3は、基地局に到来する複数端末からの信号フレームをシンボル単位で周波数と時間方向に示したものである。図3において311〜317は端末1から周波数チャネルCH1で到来する変調シンボルであり、同様に323〜326は端末2からの変調シンボル、
332〜338は端末3からの変調シンボル、344〜348は端末nからの変調シンボルをそれぞれ示している。
【0007】
ここで基地局の受信回路で、例えば図3に示すFFT区間4でFFTを行うことにより
それぞれの端末から送信されたこのタイミングでのデータシンボル314、324、334および344を分離して出力することができる。各端末から送信される信号がPSK変調の場合、FFT処理の後に得られる各データシンボルの位相判定を行うことにより復調と復号が可能となる。これより、複数の端末から到来する無線フレームの一括復調がFFT処理を用いることにより実現できる。
【0008】
しかしながら、図3に示したような各端末からのシンボルタイミングが同期した状態で基地局に到来することはありえない。通常、各端末は個々のシンボルタイミングで無線フレームを生成し送信するために、基地局に到来する複数端末からの信号フレームは図4に示すようなものとなる。
ここで一例として図4に示したFFT区間4でFFT処理した場合に得られる信号について考える。端末1からのデータシンボル314は、FFT区間とシンボル区間が一致しているために期待する出力を得ることができ、正常な復調と復号が可能である。しかしながら端末2からのデータシンボルは、FFT区間4内にデータシンボル324と325が存在しており、この区間のFFT処理から得られる信号はシンボル間の干渉が生じた状態であるために、正常な復調と復号が行えない。以下端末3〜端末nからのデータシンボルについても同様である。
【0009】
これより複数端末からの無線フレームの一括復調において、小さい回路規模で周波数多重信号を分離できるFFT処理による復調を実現させるには、端末間のシンボルタイミングを同期させることが必要不可欠となる。この複数端末間から送信する無線フレームのシンボルタイミングを同期させる技術の一つに、基地局から送信された無線フレームを個々の端末が受信してシンボルタイミングを検出し、これを基に各端末が送信するシンボルタイミングを調整する技術がある。
【0010】
図5に構成を示した無線端末装置では、501で基地局から送信された信号を受信する。次に502で受信信号のシンボルタイミングの推定を行い、自己の持つシンボルタイミングを進めたり遅らせたりして調整を行う。このシンボルタイミング調整情報は503を通じて504に示す送信機同期部へ送られる。そして504では受信シンボルに対しての自己シンボルタイミング調整分と同じだけ送信機シンボルタイミングを進めたり、遅らせたりする。最後に505で、この調整済み送信機シンボルタイミングを用いて生成された信号の送信を行うものである。
【0011】
これにより、基地局が個々の端末装置に対して個々に送信機シンボルタイミング信号を送信することなく、複数端末間のシンボルタイミング同期を実現することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】国際公開第2002/073870号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、基地局からの信号がない状態において端末側から基地局へ信号を送信する場合においては、受信される無線フレームが存在しないために他の端末とシンボルタイミングを同期させての無線フレーム送信が不可能となるか、無線フレームの送信自体ができなくなるという課題がある。
また、基地局からの制御信号の送出間隔が大きく、端末がデータを送出しようとするタイミングにおいてなかなか無線フレームを受信することができない場合においても、基地局からの信号がない状態と同様に他の端末とシンボルタイミングを同期させての無線フレーム送信が不可能となるか、無線フレームの送信がしばらくの時間できなくなるという課題がある。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題を解決し、基地局からの信号がない状態において最初に端末から信号送信を開始する場合や、自局が送信に利用する周波数チャネルで無線フレームが受信されない場合においても、複数の端末同士でシンボルタイミングを同期して無線フレームを基地局に送信することができる無線通信システムで用いられる通信装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である通信装置は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信する受信部と、第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、前記第1の信号のシンボル周期を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて前記送信部が送信する前記第2の信号のシンボル周期を制御するタイミング調整部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記の態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記検知された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて、前記第2の信号のシンボル周期を調製することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一態様である第1の通信装置は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信する受信部と、第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、前記第1の信号のシンボル周期を検出する検出部と、前記検出部で検出された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて前記送信部が送信する前記第2の信号のシンボル周期を制御するタイミング調整部と、を具備することを特徴とする。
【0017】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記検知された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて、前記第2の信号のシンボル周期を調製することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0018】
本発明の一態様である第2の通信装置は、第1の通信装置の態様において、前記タイミング調整部は、検出された前記第1の信号のシンボル周期を、前記送信部における送信処理で発生する遅延に応じた時間だけずらして前記送信部に入力し、前記送信部は、前記タイミング調整部から入力されたシンボル周期に基づいて前記第2の信号の送信を開始することを特徴とする。
【0019】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記検知された前記第1の信号のシンボル周期よりも、前記送信部における送信処理で発生する遅延時間に応じた時間だけ早いタイミングで前記第2の信号の送信を開始させることで、前記第1の信号のシンボル周期と前記第2のシンボル周期を同期させることができ、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0020】
本発明の一態様である第3の通信装置は、第1の通信装置の態様において、前記第1の周波数チャネルと前記第2の周波数チャネルは同じ周波数チャネルであり、前記検出部がシンボル周期の検出を完了したことを検出すると、前記第1の信号の終了のタイミングに合わせて、前記送信部に対し第2の信号の送信を開始させる制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
本態様によると、他の周波数チャネルで送信された第1の信号のシンボル周期を検出し、シンボル周期の検出が完了すると、前記第1の信号の終了のタイミングに合わせて第2の信号の送信を開始するので、前記第1の信号の終了後に間隔を空けて第2の信号の送信を開始する場合よりも伝送効率を高くすることができる。
本発明の一態様である第4の通信装置は、第1の通信装置の態様において、前記第1の周波数チャネルと前記第2の周波数チャネルは異なる周波数チャネルであり、前記検出部がシンボル周期の検出を完了したことを検出すると、前記第1の信号の受信中であっても、使用する周波数チャネルを第2の周波数チャネルに切り替えて、前記送信部に対し第2の信号の送信を開始させる制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
本態様によると、他の周波数チャネルで送信された第1の信号のシンボル周期を検出し、シンボル周期の検出が完了した時点で第2の周波数チャネルに切り替えて第2の信号の送信を開始するので、第1の周波数チャネルで前記第1の信号の受信終了を待って第2の信号の送信を開始するよりも早い時点で第2の信号の送信を開始できる。
また、本態様によると、シンボル同期の検出から第2の信号の送信を開始するまでの時間が短いため、シンボル同期を検出してから第2の信号を送信するまで待機することで同期がずれることがないので、端末間のシンボルタイミングの同期精度を高く保つことができる。
【0023】
本発明の一態様である第5の通信装置は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号の送信タイミングを、前記第1の周波数チャンネルでの電力量の変化に基づいて検知する検知部と、第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、前記検知部で検出された前記第1の信号の送信タイミングに基づいて前記送信部が送信する前記第2の信号の送信タイミングを制御するタイミング調整部と、を具備することを特徴とする。
【0024】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記他の通信端末が送信する前記第1の信号の送信タイミングに基づいて、前記第2の信号の送信開始タイミングを決定することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、前記他の通信端末が送信する前記第1の信号の送信タイミングに基づいて決定されるので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0025】
本発明の一態様である第6の通信装置は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルにおいて基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信する受信部と、前記第1の周波数チャンネルと隣接する第2の周波数チャンネルにおいて前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、前記受信した第1の信号に基づいて、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号を発生するクロック制御部と、前記クロック再生部から出力されたクロック信号に基づいて前記第2の信号を前記基地局に送信する制御部と、を具備したことを特徴とする。
【0026】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号に基づいて、前記第2の信号のシンボル周期を調製することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0027】
本発明の一態様である第1の通信方法は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信するステップと、第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、前記第1の信号のシンボル周期を検出するステップと、前記検出された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて前記第2の信号のシンボル周期を制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0028】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記検知された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて、前記第2の信号のシンボル周期を調製することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0029】
本発明の一態様である第2の通信方法は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号の送信タイミングを、前記第1の周波数チャンネルでの電力量の変化に基づいて検知するステップと、第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、検出された前記第1の信号の送信タイミングに基づいて前記第2の信号の送信タイミングを制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0030】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記他の通信端末が送信する前記第1の信号の送信タイミングに基づいて、前記第2の信号の送信開始タイミングを決定することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、前記他の通信端末が送信する前記第1の信号の送信タイミングに基づいて決定されるので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0031】
本発明の一態様である第3の通信方法は、他の通信装置が第1の周波数チャンネルにおいて基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信するステップと、前記第1の周波数チャンネルと隣接する第2の周波数チャンネルにおいて前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、前記受信した第1の信号に基づいて、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号を発生するステップと、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号に基づいて前記第2の信号を前記基地局に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0032】
本態様によると、前記基地局に前記第2の信号を送信する際、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号に基づいて、前記第2の信号のシンボル周期を調製することにより、基地局において複数の通信装置から各々異なる周波数チャンネルを介して信号を受信する場合、前記複数の通信装置から受信する信号の受信タイミングは、いずれかの通信装置が送信した信号に含まれるシンボル周期に同期するので、前記基地局において前記複数の通信装置から複数の信号を受信する場合であっても、FFTで分離することが可能となる。
【0033】
本発明の一態様である第7の通信装置は、PLL回路を内蔵し外部からの制御により無線周波数チャネルを変更することが可能な無線高周波部と、受信された信号フレームのシンボルタイミングを推定し、受信フレームに同期したシンボルタイミングを出力するとともにシンボルタイミング推定が完了したことを報知する受信シンボルタイミング推定手段と、シンボルタイミング推定が完了したことを知らせる信号を受けて無線高周波部の周波数チャネルを変更すると同時に無線変調部の送信処理を開始させる制御手段と、制御手段からの送信処理開始の信号を受け、受信フレームに同期したシンボルタイミングを調整し送信用のシンボルタイミングを生成する送信シンボルタイミング制御手段と、生成された送信シンボルタイミング信号に基づいて送信データ変調し送信データシンボルを生成する変調手段と、を備える。
【0034】
本態様によると、端末局自身が送信に利用する無線周波数チャネルとは異なる周波数チャネルで無線フレームを受信し、この受信した信号フレームのシンボルタイミングに同期させたデータシンボルから成る無線フレームを生成して送信することが可能になる。
これにより端末局は、基地局からの信号フレームを受信できない場合においても他の周波数チャネルを使用して通信を行っている他の端末局の無線フレームを受信し、この無線フレームに対してシンボルタイミングを同期させた無線フレームを他の端末が送信している無線フレームと同時に別の周波数チャネルで送信することができる。また、基地局からの制御信号が専用の制御用チャネルで伝送されるようなシステムにおいても容易に適用することが可能となる。
【0035】
また、他の端末局の無線フレームにシンボルタイミングを同期させる場合においては、受信フレームの終了を待たずに送信を開始することができるために、無線周波数チャネルの変更を瞬時に行えば、受信状態から直ぐに無線フレームを送信することができる。このため従来技術に比べて、推定した受信シンボルタイミングから送信データシンボル生成にかかる時間を大幅に短縮することができるため、端末間のシンボルタイミングの同期精度を高く保つことができる。
【0036】
また、本態様によると、端末局が他の端末局の無線フレームと高精度に同期したシンボルタイミングで無線フレームを送出することができる。これにより基地局では、FFT処理による各端末からの信号分離と一括復調が可能になるために、複雑な構成の変復調回路を備えずに周波数利用効率の高い、複数端末との周波数多重通信が可能となる。
(実施の形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0037】
まず図6を用いて本発明の実施の形態における無線通信装置のシンボル周波数とアナログ/ディジタル変換および変復調処理の動作クロック周波数の関係について説明する。図5に示す601〜608は受信した無線フレームを構成する個々のシンボルであり、610は受信処理のための動作クロック波形である。また620は、個々のシンボル単位の区切りを示したシンボルタイミング信号を示している。本実施の形態における無線通信装置は、受信フレームの1シンボルに対して複数のポイントでサンプリングするものであり、シンボルの区切りを示すシンボルタイミング信号を用いて信号フレームの変復調を行うものである。
【0038】
図7は本実施の形態における無線通信装置の構成を示す図である。図7において701はアンテナ、702は無線変復調部、703は制御部を示している。また無線変復調部702を構成する機能要素として、704は無線高周波部、705は無線高周波部704に含まれるPLL(Phase−locked loop:位相同期回路)回路、706はアナログベースバンド信号をディジタル信号に変換するA/D変換部、707は受信フレームのシンボルタイミングを推定しタイミング信号を出力する受信シンボルタイミング推定部、708は受信フレームを受信シンボルタイミング推定部707が出力するタイミング信号に基づいて復調し受信データを出力する復調部、709は受信シンボルタイミング推定部707が出力するタイミング信号を調整し送信のためのシンボルタイミングを生成し出力する送信シンボルタイミング調整部、710は送信シンボルタイミング制御部のタイミング信号に基づいて送信データを変調する変調部、711は変調されたディジタル信号をアナログベースバンド信号に変換するD/A変換部である。
【0039】
次に本実施の形態における無線通信装置がデータを無線フレームにして送信するまでの動作を順に説明する。まず送信すべきデータを保持する制御部703は、この無線通信装置が使用する無線周波数チャネルとは異なる周波数チャネルに高周波部704のPLL705を制御し、無線変復調部702を受信状態にする。このチャネルで他の無線局が送信した信号フレームが存在した場合、アンテナ701で受信された信号が高周波部704によりベースバンド信号に変換され出力される。ベースバンド信号はさらにA/D変換部706によりサンプリングされ、ディジタル信号として出力される。受信シンボルタイミング推定部707は、受信した信号フレームのシンボルタイミングを推定しそのタイミング信号を出力するとともに、シンボルタイミング推定が完了したことを通知する信号を制御部703に出力する。シンボルタイミング推定が完了したことを受けて制御部703は無線変復調部702の送信制御を行う。具遺体的には、PLL705を制御してこの無線通信装置が使用する無線周波数チャネルに高周波部704を設定する。同時に送信シンボルタイミング調整部709を動作させる。送信シンボルタイミング調整部709は、受信シンボルタイミング推定部707が出力するタイミング信号を調整し変調処理を行う際の最適なシンボルタイミング信号を生成し出力する。変調部710は制御部703から出力される送信データをこのシンボルタイミングに基づいて変調することでデータシンボルを生成し送信する信号フレームを生成する。変調部710より出力された信号フレームはD/A変換部711によりアナログベースバンド信号に変換される。さらにアナログベースバンド信号は高周波部704により高周波無線信号に変換されアンテナ701により送出される。
【0040】
なお、送信シンボルタイミング調整部709で行われるタイミング信号の調整とは、アンテナ701から受信された受信信号フレームのシンボルタイミングに対して、同じアンテナ701から送信するこの無線通信装置の信号フレームのシンボルタイミングが時間的に一致するように、無線変復調部702内部の伝送遅延や各信号処理回路で発生する処理遅延を補正するものである。
【0041】
図8は本実施の形態における無線通信装置が無線フレームを送信するまでの処理手順を示すフローチャートである。送信要求(ステップS801)があるとこの無線通信装置は一旦受信状態となり(ステップS802)、同じエリアに存在する他の無線通信装置が信号フレームを送信中でるかどうかを判断する(ステップS803)。他の無線通信装置からの信号フレームが検出され受信された場合(ステップS803:YES)、受信フレームのシンボルタイミング推定処理を行う(ステップS804)。
【0042】
その後シンボルタイミング推定処理が完了し受信信号フレームに対してのシンボルタイミング同期がとれたかどうかを判断する(ステップS805)。シンボルタイミング推定処理が完了していない場合(ステップS805:NO)、ステップS804のシンボルタイミング推定処理に戻りシンボルタイミング同期がとれるまでこれらの処理を継続する。シンボルタイミング推定処理が完了し受信信号フレームに対してのシンボルタイミング同期がとれた場合(ステップS805:YES)、このタイミング信号を調整し送信のためのシンボルタイミング生成を行い(ステップS806)、ステップS808の処理に遷移する。
【0043】
またステップS803で他の無線通信装置からの信号フレームが検出されなかった場合(ステップS803:NO)、送信のためのシンボルタイミングを他と同期させる必要がないと判断できるため、この無線通信装置の自己のタイミングで送信シンボルタイミングを発生させ(ステップS807)、ステップS808の処理に遷移する。
ステップ808では、無線高周波部の周波数チャネルをこの無線通信装置が送信する無線周波数に変更設定を行うと同時に、変調部を動作させ生成したシンボルタイミングでの変調信号の生成を行う(ステップS808)。その後、変調された信号は高周波部で無線信号フレームに変換されこの無線通信装置より送出される(ステップS809)。
【0044】
(実施の形態2)
以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。但し、本実施の形態において、第1の実施の形態と実質的に同じ構成要素には第1の実施の形態と同じ符号を付し、第1の実施の形態の説明が適用できるため本実施の形態ではその説明を省略する。
【0045】
図9は本実施の形態における無線通信装置の構成を示す図である。図9において上記の図7と同様に701はアンテナ、702は無線変復調部、703は制御部を示している。また無線変復調部702を構成する機能要素で図7と異なるものとして、912はA/D変換部の出力値から受信電力レベルの計算を行い、その電力レベルの変化したタイミングを検出する受信電力検出部、913は受信電力検出部が出力する電力レベル変化のタイミング信号から、送信のためのシンボルタイミングを生成し出力する送信シンボルタイミング生成部である。
【0046】
次に本実施の形態における無線通信装置がデータを無線フレームにして送信するまでの動作を順に説明する。受信された無線フレームがベースバンド信号に変換され、さらにA/D変換部706によりサンプリングされてディジタル信号として出力されるまでは、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態における無線通信装置では、ディジタル信号に変換された信号は受信シンボルタイミング推定部707と復調部708の他に受信電力検出部912にも出力される。
【0047】
受信電力検出部912では、入力される信号の電力レベルを常時演算し電力レベルの変化を監視する。この電力レベルが急激に増加すると、受信電力検出部912は瞬時に電力検出完了の通知を制御部703に出力する。制御部703はこの信号を受け、他の無線通信装置から無線フレームが送信されたことを判断し、無線変復調部702の動作の送信制御を行う。送信シンボルタイミング生成部913は、受信電力検出部912が出力する電力レベルの急激な変化タイミングを示す信号を基準にして、変調処理を行う際の最適なシンボルタイミング信号を生成し出力する。
【0048】
ここで送信シンボルタイミング生成部913において生成する最適なシンボルタイミング信号とは、アンテナ701から受信された受信信号フレームのシンボルタイミングに対して、同じアンテナ701から送信されるこの無線通信装置の信号フレームのシンボルタイミングが時間的に一致するように、無線変復調部702内部の伝送遅延や電力レベル計算などの信号処理回路で発生する処理遅延を補正したタイミング信号である。
【0049】
以降の動作については、第1の実施の形態と同じである。
図10は本実施の形態における無線通信装置が無線フレームを送信するまでの処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態における無線通信装置は、受信動作(ステップS802)になると、受信信号の電力計算を開始する(ステップS1010)。次に電力レベルの変化を監視し、他の無線通信装置から送信されたかどうかを判断する(ステップS1011)。他の無線通信装置からの信号フレーム送信による電力変化が検出された場合(ステップS1011:YES)、受信されたフレーム信号における先頭部分であるフレームタイミングの推定を行う(ステップS1012)。その後、このタイミング信号を時間的に調整し送信のためのシンボルタイミング生成を行い(ステップS1013)、ステップS808の処理に遷移する。
【0050】
またステップS1011で他の無線通信装置からの信号フレーム送信による電力変化が検出されない場合(ステップS1011:NO)、タイマーを動作させた上で(ステップS1014)、タイマーの値が規定値より大きいかそれ以下かを判断する(ステップS1015)。ここでタイマーの値が規定値以下の場合(ステップS1015:NO)、電力レベルの計算を継続するためにステップS1010に戻る。またタイマーの値が規定値より大きくなった場合(ステップS1015:YES)、同じエリアで送信を行っている他の無線通信装置が存在しないと判断できるため、この無線通信装置の自己のタイミングで送信シンボルタイミングを発生させ(ステップS807)、ステップS808の処理に遷移する。
【0051】
以降ステップS808以降の処理については、第1の実施の形態における図8の説明と同様である。
(実施の形態3)
以下、本発明の第3の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。但し、本実施の形態において、第1の実施の形態と実質的に同じ構成要素には第1の実施の形態と同じ符号を付し、第1の実施の形態の説明が適用できるため本実施の形態ではその説明を省略する。
【0052】
まず図11を用いて本発明の実施の形態における無線通信装置のシンボル周波数とアナログ/ディジタル変換および変復調処理の動作クロック周波数の関係について説明する。図11に示す1101〜1108は受信した無線フレームを構成する個々のシンボルであり、1110は受信処理のための動作クロック波形である。本実施の形態における無線通信装置は、受信フレームの1シンボルに対して1ポイントでサンプリングし変復調を行うシステムである。
【0053】
図12は本実施の形態における無線通信装置の構成を示す図である。図12において上記の図7と同様に701はアンテナ、702は無線変復調部、703は制御部を示している。また無線変復調部702を構成する機能要素で図7と異なるものとして、1214は
A/D変換部の出力信号を入力しクロック位相の調整を行い受信信号フレームのシンボルタイミングに同期したクロックを出力する受信クロック再生部であり、出力される再生されたクロックでアナログ信号のサンプリングがA/D変換部で行われる。また、1215は受信信号フレームのシンボルタイミングに同期したクロック信号を調整し、変調処理とD/A変換のための送信用クロックを生成し出力する送信クロック調整部である。
【0054】
次に本実施の形態における無線通信装置がデータを無線フレームにして送信するまでの動作を順に説明する。受信された無線フレームがベースバンド信号に変換され、さらにA/D変換部706によりサンプリングされてディジタル信号として出力されるまでは、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態における無線通信装置では、ディジタル信号に変換された信号は復調部708と受信クロック再生部1214に出力される。
【0055】
受信クロック再生部1214では、受信されるフレームを構成する個々のシンボルに対して、A/D変換部706でのサンプリングタイミングが早いか遅いかを判断し、これを補正するクロック信号を出力する。A/D変換部706はこの補正されたクロックで受信フレームのサンプリングを行う。A/D変換部706におけるサンプリング処理とクロック位相の調整が繰り返されることで最終的に受信フレームのシンボルに対して完全に同期された受信クロックが再生される。
【0056】
この受信フレームのシンボルに対して受信クロックが完全に同期したことを受信クロック再生部1214が検出すると、受信クロック再生部1214は制御部703に対してクロック再生完了を通知する信号を出力する。受信クロック再生が完了したことを受けて制御部703は無線変復調部702の送信制御を行う。具遺体的には、PLL705を制御してこの無線通信装置が使用する無線周波数チャネルに高周波部704を設定する。同時に送信クロック調整部1215を動作させる。送信クロック調整部1215は、受信クロック再生部1214が出力するクロック信号を調整し変調処理とD/A変換処理を行う際の最適なクロック信号を生成し出力する。変調部710は制御部703から出力される送信データをこの送信クロックで変調し送信信号フレームを生成する。変調部710より出力された信号はD/A変換部711によりアナログベースバンド信号に変換されアンテナより送出される。
【0057】
なお、送信クロック調整部1215で行われるクロック信号の調整とは、アンテナ701から受信された受信信号フレームのシンボルタイミングに対して、同じアンテナ701から送信するこの無線通信装置の信号フレームのシンボルタイミングが時間的に一致するように、無線変復調部702内部の伝送遅延や各信号処理回路で発生する処理遅延を補正するものである。
【0058】
図13は本実施の形態における無線通信装置が無線フレームを送信するまでの処理手順を示すフローチャートである。ステップS801の送信要求発生からステップS803の
同じエリアに存在する他の無線通信装置が信号フレームを送信中でるかどうかの判断までの手順は、第1の実施の形態における図8の説明と同様である。
本実施の形態における無線通信装置は、ステップS803で他の無線通信装置からの信号フレームが検出され受信された場合(ステップS803:YES)、受信フレームのシンボルタイミングに同期させたクロック再生処理を行う(ステップS1316)。その後クロック再生処置が完了し受信信号フレームに対してのクロック同期がとれたかどうかを判断する(ステップ1317)。クロック再生処理が間慮していない場合(ステップ1317:NO)、ステップS1316のクロック再生処理に戻りシンボルタイミングにクロックが同期するまでこれらの処理を継続する。クロック再生処理が完了し受信信号フレームに対してクロック同期が取れた場合(ステップS1317:YES)、このクロック信号を調整し送信のための送信クロック生成を行い(ステップS1318)、ステップS808の処理に遷移する。
【0059】
またステップS803で他の無線通信装置からの信号フレームが検出されなかった場合(ステップS803:NO)、送信のためのクロックを他と同期させる必要がないと判断できるため、この無線通信装置でクロックを発生させ(ステップS1319)、ステップS808の処理に遷移する。
ステップ808では、無線高周波部の周波数チャネルをこの無線通信装置が送信する無線周波数に変更設定を行うと同時に、変調部を動作させ生成したクロックで変調信号の生成を行う(ステップS808)。その後、変調された信号は高周波部で無線信号フレームに変換されこの無線通信装置より送出される(ステップS809)。
【0060】
なお、本発明の実施の形態におけるこれまでの説明において変調処理とD/A変換に使用するクロックと、無線高周波部内部のPLL基準クロックを別としてきたが、図14に示すように高周波部のPLL基準クロックとして送信クロック制御部から出力されるクロックを利用することも可能である。
図14に示す無線通信装置の態様において図12の構成と異なる点は、高周波部に内臓されるPLLの基準クロックとして送信クロック制御部から出力されるクロック信号が入力されているところである。
【0061】
この図14に示した構成の無線通信装置によれば、他の無線通信装置とのシンボルタイミングだけでなく、無線周波数の周波数オフセット誤差も端末間で同調されるために、基地局装置での一括受信に必要となる処理を減らすことができるために、システムで見た場合の回路規模削減を実現できる。
(実施の形態4)
以下、本発明の第5の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0062】
図15は、本発明の無線通信装置がn台同じエリアに存在しており、それぞれの端末が送出する無線フレームの時間関係の一例を示したものである。
図15において1501は端末1が無線周波数チャネルCH1を使用して送信したフレームであり、1502は端末2が無線周波数チャネルCH2を使用して送信したフレーム、
1503は端末3が無線周波数チャネルCH3を使用して送信したフレーム、1504は端末nが無線周波数チャネルCHnを使用して送信したフレームを示している。
【0063】
ここではまず端末1に送信要求が発生している。端末1が送信しようとした時点では同じエリアで送信を開始している端末がないため、端末1は信号フレーム1501を送信する。
次に端末2に送信要求が発生する。ここで端末2はCH1で送信を開始している端末1からの信号フレーム1501を確認することができるため、1501のシンボルタイミングを推定し、これに同期した信号フレーム1502を生成して送信する。
【0064】
その次に端末3に送信要求が発生する。同様にして端末3はCH2で送信を開始している端末2からの信号フレーム1502を確認することができるため、1502のシンボルタイミングを推定し、これに同期した信号フレーム1503を生成して送信する。
以上の処理を繰り返し、端末nは他の端末が送信している信号フレームに同期した信号フレーム1504を生成して送信する。
【0065】
以上図15に示した複数の無線端末装置が同時に送信を行う無線通信システムでは、すでに送信を開始している他の端末からの信号フレームにシンボルタイミングを同期させるために端末間での高精度のタイミング同期が実現できる。
また図16は、図15とは異なる本発明の無線通信装置が送出する無線フレームの時間関係の一例を示したものである。
【0066】
図16において1601は基地局が制御CHを使用して制御信号フレームを送信し、各無線端末はこれに反応して送信を開始するものである。このとき端末1は、無線周波数を制御CHに設定しておき、基地局からの制御フレームを受信する。その次に送信するタイミングで同じエリアで送信を開始している端末がないため、端末1は信号フレーム1501を送信する。
【0067】
また端末2は、端末1と同様まず無線周波数を制御CHに設定しておき、基地局からの制御フレームを受信する。その次に端末2が送信するタイミングではCH1で送信を開始している端末1からの信号フレーム1501を確認することができるため、1501のシンボルタイミングを推定し、これに同期した信号フレーム1502を生成して送信する。
以上端末3〜端末nについても同様の処理で信号フレーム1503〜1504の送信を行う。
【0068】
以上図16に示した基地局からの制御フレームに対して複数の無線端末装置が同時に送信を行う無線通信システムでは、すでに送信を開始している他の端末からの信号フレームにシンボルタイミングを同期させるために端末間での高精度のタイミング同期が実現できる。さらに、この場合基地局からの制御フレームに各端末が送信を開始するタイミング又は順番を示す情報を含めることで、各端末はあらかじめ観測すべき信号フレームの無線周波数チャネルを設定することが可能になり、より伝送効率の高い無線通信システムを実現することが可能である。
【0069】
また図17は、図15、図16とは異なる本発明の無線通信装置が送出する無線フレームの時間関係の一例を示したものである。
図17において1701〜1704は基地局が各端末の使用する無線周波数CHに一斉に制御信号フレームを送信し、各無線端末はこれに反応して送信を開始するものである。このとき端末1は、無線周波数をまずCH1に設定しておき、基地局からの制御フレームを受信する。その次に送信するタイミングで同じエリアで送信を開始している端末がないため、端末1は信号フレーム1501を送信する。
【0070】
また端末2は、無線周波数をまずCH2に設定しておき、基地局からの制御フレームを受信する。その次に端末2が送信するタイミングではCH1で送信を開始している端末1からの信号フレーム1501を確認することができるため、1501のシンボルタイミングを推定し、これに同期した信号フレーム1502を生成して送信する。
以上端末3〜端末nについても同様の処理で信号フレーム1503〜1504の送信を行う。
【0071】
以上図17に示した基地局からの制御フレームが各無線端末の使用する無線周波数チャネルを使用して一斉に送信され、これに対して複数の無線端末装置が同時に送信を行う無線通信システムにおいても、すでに送信を開始している他の端末からの信号フレームにシンボルタイミングを同期させるために端末間での高精度のタイミング同期が実現できる。さらに、図16の説明と同様に基地局からの制御フレームに各端末が送信を開始するタイミング又は順番を示す情報を含めることで、各端末はあらかじめ観測すべき信号フレームの無線周波数チャネルを設定することが可能になり、より伝送効率の高い無線通信システムを実現することが可能である。
【0072】
最後に図18は、図15、図16、図18とは異なる本発明の無線通信装置が送出する無線フレームの時間関係の一例を示したものである。
図18において1801〜1804は、それぞれ端末1〜端末nが基地局に向けて送信している信号フレームを示している。この図の例では複数の無線端末が同一の無線周波数チャネルを使用して送信する場合を示している。このとき端末1が送信するタイミングで同じエリアで送信を開始している端末がないため、端末1は信号フレーム1801を送信する。
【0073】
また端末2が送信するタイミングでは端末1からの信号フレーム1801を確認することができるため、1801のシンボルタイミングを推定すると同時に電力検出レベル変動などにより信号フレーム1801の終わりを検出する。このタイミングと同時に端末2は同じ無線周波数チャネルのまま1801のシンボルタイミングに同期させた信号フレーム1802を生成して送信する。なお端末2が端末1からの受信信号フレーム1801を復調することにより、あらかじめ信号フレーム1801の修了タイミングを知ることも可能である。
【0074】
以上端末3〜端末nについても同様の処理で信号フレーム1803〜1804の送信を行う。
以上図18に示した無線端末が同一の無線周波数チャネルを使用して送信を行う無線通信システムにおいても、すでに送信を開始している他の端末からの信号フレームにシンボルタイミングを同期させることができるために端末間での高精度のタイミング同期が実現できる。さらにこのシステムの場合、複数の端末からの信号フレームが同一の周波数チャネルを使用してシンボルタイミングが同期された状態で連結されて基地局に受信されるので、先頭のフレーム以外のヘッダー信号(プリアンブル信号)を省略して送信を行っても基地局の受信には影響を与えない。このため、より伝送効率の高い無線通信システムを実現することが可能である。
【0075】
本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく、例えば、次のようなものであっても良い。
(1)上記の各実施の形態では、シンボルタイミングを同期させる目的で無線周波数チャネルを変更し他の無線通信装置が出力する信号フレームを受信すると説明したが、受信信号帯域が広い無線通信装置の態様においては、無線周波数チャネルの変更をしなくともに、例えば隣接チャネルで受信される信号フレームからのシンボルタイミング推定処理又はクロック再生処理を行うことも可能である。
【0076】
(2)上記の第1〜第3の実施の形態では、一つの無線高周波部を受信と送信で共用する無線通信装置を前提に説明したが、送信用と受信用に別の無線高周波部を備えても同様の処理が可能である。さらにこの場合においては、受信フレームのシンボルタイミング推定処理又はクロック再生処理を行いながら、送信信号フレームの生成が可能となるために、一つの無線高周波部しか持たない無線通信装置よりも高い精度でのシンボルタイミング同期が可能である。
【0077】
(3)上記の第3の実施の形態では、A/D変換後のディジタル信号を用いてのクロック再生処理で説明したが、端末間の無線周波数オフセットずれを同調させる目的で、A/D変換回路を持たないアナログ信号処理によるクロック再生と変復調を行う無線通信装置の態様においても適用可能である。
(4)上記の各実施の形態の無線通信機器或いは信号検出部は、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてよい。各回路を個別に1チップとしてもよいし、全ての回路又は一部の回路を含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとして記載したが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0078】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラム化することが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。プロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよい。
【0079】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えばアクティブタグを用いた固体識別認証システムに代表されるような、一つの基地局が複数の無線端末装置と短時間で通信を行うような通信ネットワークシステムに用いられる通信装置及び通信方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】基地局と複数端末による無線ネットワークシステムの一例を示す構成図
【図2】複数端末同時送信による信号スペクトラムの一例を示す図
【図3】複数端末間で同期されたシンボルの時間関係を示した図
【図4】複数端末間で同期されていないシンボルの時間関係を示した図
【図5】従来技術による無線通信装置の機能を示すブロック図
【図6】本発明の第1の実施の形態における無線通信装置の内部信号の一例を示す図
【図7】本発明の第1の実施の形態における無線通信装置の構成を示すブロック図
【図8】本発明の第1の実施の形態における処理手順を示すフローチャート
【図9】本発明の第2の実施の形態における無線通信装置の構成を示すブロック図
【図10】本発明の第2の実施の形態における処理手順を示すフローチャート
【図11】本発明の第3の実施の形態における無線通信装置の内部信号の一例を示す図
【図12】本発明の第3の実施の形態における無線通信装置の構成を示す第1のブロック図
【図13】本発明の第3の実施の形態における処理手順を示すフローチャート
【図14】本発明の第3の実施の形態における無線通信装置の構成を示す第2のブロック図
【図15】本発明の第4の実施の形態における無線通信システムが送信する信号フレームの一例を示す第1の図
【図16】本発明の第4の実施の形態における無線通信システムが送信する信号フレームの一例を示す第2の図
【図17】本発明の第4の実施の形態における無線通信システムが送信する信号フレームの一例を示す第3の図
【図18】本発明の第4の実施の形態における無線通信システムが送信する信号フレームの一例を示す第4の図
【符号の説明】
【0082】
701 アンテナ
702 無線変復調部
703 制御部
704 無線高周波部
705 無線高周波部704内部のPLL回路
706 A/D変換部
707 受信シンボルタイミング推定部
708 復調部
709 送信シンボルタイミング調整部
710 変調部
711 D/A変換部
912 受信電力演算および受信電力検出部
913 送信シンボルタイミング生成部
1214 受信クロック再生部
1215 送信クロック調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信する受信部と、
第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、
前記第1の信号のシンボル周期を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて前記送信部が送信する前記第2の信号のシンボル周期を制御するタイミング調整部と、を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記タイミング調整部は、検出された前記第1の信号のシンボル周期を、前記送信部における送信処理で発生する遅延に応じた時間だけずらして前記送信部に入力し、
前記送信部は、前記タイミング調整部から入力されたシンボル周期に基づいて前記第2の信号の送信を開始することを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の周波数チャネルと前記第2の周波数チャネルは同じ周波数チャネルであり、
前記検出部がシンボル周期の検出を完了したことを検出すると、前記第1の信号の終了のタイミングに合わせて、前記送信部に対し第2の信号の送信を開始させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項4】
前記第1の周波数チャネルと前記第2の周波数チャネルは異なる周波数チャネルであり、
前記検出部がシンボル周期の検出を完了したことを検出すると、前記第1の信号の受信中であっても、使用する周波数チャネルを第2の周波数チャネルに切り替えて、前記送信部に対し第2の信号の送信を開始させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項5】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号の送信タイミングを、前記第1の周波数チャンネルでの電力量の変化に基づいて検知する検知部と、
第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、
前記検知部で検出された前記第1の信号の送信タイミングに基づいて前記送信部が送信する前記第2の信号の送信タイミングを制御するタイミング調整部と、を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルにおいて基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信する受信部と、
前記第1の周波数チャンネルと隣接する第2の周波数チャンネルにおいて前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信する送信部と、
前記受信した第1の信号に基づいて、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号を発生するクロック制御部と、
前記クロック再生部から出力されたクロック信号に基づいて前記第2の信号を前記基地局に送信する制御部と、を具備したことを特徴とする通信装置。
【請求項7】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信するステップと、
第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、
前記第1の信号のシンボル周期を検出するステップと、
前記検出された前記第1の信号のシンボル周期に基づいて前記第2の信号のシンボル周期を制御するステップと、を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルを介して基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号の送信タイミングを、前記第1の周波数チャンネルでの電力量の変化に基づいて検知するステップと、
第2の周波数チャンネルを介して前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、
検出された前記第1の信号の送信タイミングに基づいて前記第2の信号の送信タイミングを制御するステップと、を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
他の通信装置が第1の周波数チャンネルにおいて基地局に送信する複数のシンボルからなる第1の信号を受信するステップと、
前記第1の周波数チャンネルと隣接する第2の周波数チャンネルにおいて前記基地局に複数のシンボルからなる第2の信号を送信するステップと、
前記受信した第1の信号に基づいて、前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号を発生するステップと、
前記第1の信号のシンボル周期に同期したクロック信号に基づいて前記第2の信号を前記基地局に送信するステップと、を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−11292(P2010−11292A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170451(P2008−170451)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】