遊技機
【課題】線材等を用いた不正解錠に対する防御性能に優れた遊技機を提供する。
【解決手段】スロットマシン10は、筐体11と、該筐体11の前部にて開閉可能に支持された前面扉12とを備えている。前面扉12は、その裏側に設けられた施錠装置と、筐体11側に設けられた支持金具とによって開放不能な状態とされる。施錠状態においては、施錠装置の鉤部材や支持金具の受け金具に対し直接外力を加え、当該鉤部材や受け金具を解錠方向へ変位させて両者の係合状態を不正に解除しようとしても、両者の係合状態が維持されるため、前面扉12の開放は許容されない。一方、鍵によりシリンダ錠700を操作することにより、鉤部材が解錠方向へ変位し、当該鉤部材及び受け金具の所定量以上の相対変位量が得られると、両者が非係合状態となり、前面扉12の開放が許容される。
【解決手段】スロットマシン10は、筐体11と、該筐体11の前部にて開閉可能に支持された前面扉12とを備えている。前面扉12は、その裏側に設けられた施錠装置と、筐体11側に設けられた支持金具とによって開放不能な状態とされる。施錠状態においては、施錠装置の鉤部材や支持金具の受け金具に対し直接外力を加え、当該鉤部材や受け金具を解錠方向へ変位させて両者の係合状態を不正に解除しようとしても、両者の係合状態が維持されるため、前面扉12の開放は許容されない。一方、鍵によりシリンダ錠700を操作することにより、鉤部材が解錠方向へ変位し、当該鉤部材及び受け金具の所定量以上の相対変位量が得られると、両者が非係合状態となり、前面扉12の開放が許容される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン等の遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊技機の一種として例えばスロットマシンがある。一般に、スロットマシンは、前面が開放された箱状の筐体と、当該筐体の前面側に開閉可能に枢支された前扉とを備え、この内部に、図柄の付された複数のリールよりなる可変表示装置や、遊技制御を行う制御装置、メダルを払い出すホッパ装置などが収容されている。
【0003】
一般にスロットマシン等の遊技機では、メンテナンス等の観点から前扉(扉体)が筐体(支持部材)に対し開閉可能に設けられている。そのため、店員以外の者が無断で前扉を開放できないように、遊技機には施錠装置が設けられている。かかる施錠装置としては、専用の鍵を用いて操作されるシリンダ錠と、筐体に設けられた複数の被係止部に対しそれぞれ係脱可能に設けられた複数の鉤部材と、鍵によるシリンダ錠の解錠操作に応じて複数の鉤部材を連動させる摺動杆とを備えたものが知られている。そして、施錠状態では各鉤部材がそれぞれ対応する被係止部に係合することで前扉が筐体に対し開放不能となる。他方、専用の鍵でシリンダ錠を解錠操作することにより摺動杆を介して各鉤部材が被係止部から同時に離脱し、前扉が開放可能となる。
【0004】
近年、遊技ホールでは、例えば営業中に前扉を不正に解錠し、筐体内側に設けられた制御機器を不正に操作したり交換する等して、多くの遊技媒体を獲得する不正行為が行われることもある。このような不正解錠は、通常、前扉と筐体との隙間から針金等の線材を差込み、当該線材を施錠装置の鉤部材に引っ掛けて解錠方向に動かすことにより行われる。いずれか1つの鉤部材に対して不正な解錠操作が行われると、その動作が摺動杆を介して他の鉤部材に伝達され、全鉤部材が連動して被係止部から離脱し、前扉が開放可能となる。
【0005】
これに対し、例えば、いずれか1つの鉤部材に対して不正な解錠操作が行われた場合に、当該不正解錠操作に応じた鉤部材の動作が、不正解錠操作されていない他の鉤部材に伝達されるのを防止する機構を備えたものもある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−288214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、複数の鉤部材が上下に離れて設けられている。つまり、上述した不正解錠操作を行おうとした場合に線材を引っ掛ける複数の対象が離れた位置関係となる。このため、複数の鉤部材に対して線材を引っ掛けることが比較的容易に行われ、複数の鉤部材を同時に解錠方向へ変位させて、前扉を解錠されてしまうおそれがあった。
【0008】
尚、かかる課題は、スロットマシン等の回胴遊技機に限らず、パチンコ機など、扉体と支持部材とを施錠する施錠機構を備えた他の遊技機にも該当する問題である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能に優れた遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0011】
手段1.支持部材に対し開閉可能に支持された扉体と、
前記支持部材に対し前記扉体を施錠する施錠機構とを備えた遊技機であって、
前記施錠機構は、
前記支持部材又は前記扉体の一方に設けられた施錠装置と、他方に設けられた被係合手段とを備え、
前記施錠装置が、
鍵により操作される錠部材と、
前記錠部材の動作に連動して、少なくとも鉤部施錠側特定位置と鉤部解錠側特定位置との間で変位可能な鉤部とを備え、
前記被係合手段が、
少なくとも係合部施錠側特定位置と係合部解錠側特定位置との間で変位可能な可動係合部を備え、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となることにより、前記扉体の開放が規制される施錠状態となり、
前記鉤部と前記可動係合部とが非係合状態となることにより、前記扉体の開放が許容される解錠状態となる構成であって、
前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となることにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態において、前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、少なくとも前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記非係合状態になるのに必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態で、かつ、前記鍵による前記錠部材の特定の操作がない状態において、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部施錠側特定位置にある場合には、前記鉤部のみが前記鉤部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該鉤部の変位限度位置まで達した場合でも、当該鉤部及び前記可動係合部の係合状態が維持され、
少なくとも前記鉤部が前記鉤部施錠側特定位置にある場合には、前記可動係合部のみが前記係合部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該可動係合部の変位限度位置まで達した場合でも、当該可動係合部及び前記鉤部の係合状態が維持されることを特徴とする遊技機。
【0012】
上記手段1によれば、施錠状態においては、鍵を用いずに鉤部及び可動係合部の一方のみを解錠方向へ変位させただけでは、両者の係合状態が解除されず、扉体の開放が許容されない。一方、鍵により錠部材を操作することにより、少なくとも鉤部が解錠方向へ変位し、当該鉤部及び可動係合部が所定量以上相対変位した場合には、両者が非係合状態となり、扉体の開放が許容される。従って、仮に線材等を用いて鉤部や可動係合部を解錠方向へ変位させて、両者の係合状態を不正に解除しようとした場合には、一箇所で係合し合っている鉤部と可動係合部とに線材等をそれぞれ引っ掛けるといった複雑な操作や、当該引っ掛けた線材等を異なる方向に操作するといった複雑な操作を要するため、不正解錠操作が困難となる。結果として、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。また、鍵を用いずに扉体を閉鎖する際には、少なくとも可動係合部が解錠方向へ変位することにより、扉体の閉鎖に必要な鉤部及び可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られる。つまり、鉤部が変位しなくとも可動係合部が変位することにより、扉体を閉鎖することができる。換言すれば、鍵を用いずとも(少なくとも上記特定の操作を行わずとも)扉体を閉鎖することができ、利便性が高い。
【0013】
なお、以下の手段においても同様であるが、鉤部及びこれに対応する可動係合部の数は1つに限定されるものではなく、これらを複数備えた構成としてもよい。
【0014】
また、錠部材の例としては、鍵が挿入されて回動操作されるシリンダ錠などが挙げられる。この場合、鍵により操作される作動部は、回動可能に設けられた錠軸や、当該錠軸に固定された係合片(カム板)等から構成されることとなる。勿論、錠部材はシリンダ錠に限定されるものではなく、この他、カードキーのような鍵を用いて操作されるものであってもよい。
【0015】
また、構成によっては、鉤部又は可動係合部の「変位限度位置」が「鉤部解錠側特定位置」又は「係合部解錠側特定位置」と同一位置となる場合もある。
【0016】
また、鉤部及び可動係合部の「非係合状態」とは、扉体を開閉方向に動かした場合に、鉤部及び可動係合部が接触しない位置関係、又は接触しつつも扉体を開放可能な位置関係にある状態を指す。つまり、扉体の開閉に必要な鉤部及び可動係合部の「所定量以上の相対変位量」とは、両者がそれぞれ自身の施錠側特定位置に位置した状態(係合状態)から非係合状態に達するまでの所定量以上の相対変位量を指す。例えば、扉体の開閉方向である前後方向に対し鉤部及び可動係合部が係り合うとともに、扉体の開閉に際し、鉤部及び可動係合部の係り合う部位がそれぞれ少なくとも上下方向(扉体の開閉方向に直交する方向)へ変位するような構成においては、両者が係合状態から非係合状態に達するまでの上下方向における所定量以上の相対変位量が上記「所定量以上の相対変位量」に相当することとなる。
【0017】
手段2.前記施錠状態において前記鉤部の前記変位限度位置よりも前記鉤部解錠側特定位置側への変位を規制する鉤部規制手段を備え、
前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、前記鉤部規制手段による規制が解除されることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
【0018】
上記手段2によれば、上記鉤部規制手段を備えることにより、比較的簡単に上記手段1の構成を実現することができる。つまり、鍵を用いて解錠操作を行った場合には、その操作に応じて鉤部が所定量以上変位することにより、係合部施錠側特定位置にある可動係合部と所定量以上の相対変位量が得られ、扉体の開放が許容される。一方、鍵を用いずに線材等によって鉤部に対し直接外力が加えられた場合、すなわち不正な解錠操作が行われた場合には、鉤部の所定量以上の変位が規制され、当該鉤部と可動係合部との係合状態が維持されるため、扉体の開放は許容されない。
【0019】
なお、上記鉤部規制手段を備えた構成では、鍵を用いずに扉体を閉じようとした場合、被係合手段(係合部)が固定されたものであると、鉤部と被係合手段とが衝突し、その衝撃が比較的大きいため、当該鉤部や被係合手段の変形や破損等といった不具合が発生するおそれがある。この点、本手段では、可動係合部が変位する構成となっていることにより、鉤部の変位が規制された状態にあっても、鉤部と可動係合部との所定量以上の相対変位量が確保されるため、上記不具合は発生しにくい。従って、扉体を閉鎖する際に、専用の鍵を用いた施錠操作を行う必要もなく、利便性が向上する。例えば、鉤部の先端が略三角形状に先細りしており、扉体を閉じていくと、先ず鉤部の傾斜部位が可動係合部に接する。さらに扉体を閉じていくことで、コイルばね等の付勢手段の付勢力に抗して可動係合部が解錠方向へ変位する。そして、鉤部が可動係合部を乗り越えると、可動係合部は付勢手段の付勢力により元の位置に戻り、鉤部と係合状態となり、施錠状態となる。
【0020】
手段3.前記施錠装置は、前記錠部材の動作を前記鉤部に伝達する伝達部材を備え、
前記錠部材に鍵の挿入がない場合には、当該錠部材の作動部が所定量以上変位不能となり、当該作動部により前記伝達部材の所定量以上の変位が規制され、当該伝達部材により前記鉤部の前記変位限度位置よりも前記鉤部解錠側特定位置側への変位が規制されることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
【0021】
上記手段3によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏される。例えばシリンダ錠に鍵が挿し込まれないと、シリンダ錠のロック状態が解除されず、シリンダ錠のカム板等に係合した伝達部材ひいては鉤部が所定量以上変位不能な状態に維持される構成などが一例に挙げられる。なお、伝達部材により鉤部の変位が規制される構成には、例えば伝達部材と鉤部とが一体形成され、これにより伝達部材の変位が規制された場合には、鉤部が変位しない構成なども含まれる。
【0022】
手段4.前記施錠状態において前記可動係合部の前記変位限度位置よりも前記係合部解錠側特定位置側への変位を規制する可動係合部規制手段を備えていることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載の遊技機。
【0023】
上記手段4によれば、可動係合部規制手段を備えることにより、比較的簡単に上記手段1の構成を実現することができる。つまり、鍵を用いずに線材等によって可動係合部に対し直接外力が加えられた場合、すなわち不正な解錠操作が行われた場合には、可動係合部の所定量以上の変位が規制され、当該可動係合部と鉤部との係合状態が維持されるため、扉体の開放は許容されない。なお、上記鉤部規制手段と可動係合部規制手段の両方を備えた構成では、不正解錠操作がより困難となるため、両者の相乗効果により不正解錠に対するさらなる防御性能の向上を図ることができる。
【0024】
手段5.前記可動係合部規制手段は、
前記施錠状態において前記可動係合部の変位を規制する第1状態と、
少なくとも前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際に、前記鉤部及び前記可動係合部が係合状態となるのを許容する第2状態とに可変であることを特徴とする手段4に記載の遊技機。
【0025】
上記手段5によれば、可動係合部規制手段に邪魔されることなく、スムーズに扉体の閉鎖作業を行うことができ、利便性が向上する。
【0026】
手段6.前記可動係合部規制手段は、
第1位置と第2位置との間で変位可能な規制部材と、
前記規制部材を前記第1位置側へ付勢する規制部材付勢手段とを備え、
前記規制部材が前記第1位置をとることにより前記第1状態となり、
前記規制部材が前記第2位置をとることにより前記第2状態となる構成であって、
前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位するとともに、
前記規制部材は、
前記係合部解錠側特定位置側へ変位した前記可動係合部が接触することにより、前記規制部材付勢手段の付勢力に抗して前記第2位置側へ変位し、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となった際には、前記可動係合部と非接触状態となり、前記第1位置へ戻ることを特徴とする手段5に記載の遊技機。
【0027】
上記手段6によれば、扉体を閉じることにより、自動的に可動係合部規制手段が状態変化し、鉤部及び可動係合部が係合状態となるのが許容されるとともに、両者が係合した際には、可動係合部の変位が規制された状態となる。従って、扉体を閉じる際に、何らか特殊な操作を行う必要もなく、利便性の向上が図られる。なお、このような作用効果は、上記手段6の「前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位する」構成に代えて、「前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位しつつ、前記鉤部と前記可動係合部とが接触する」構成としても同様に得られる。
【0028】
手段7.前記可動係合部規制手段は、前記鍵による操作に応じた前記錠部材の動作に連動しない構成であることを特徴とする手段4乃至6のいずれかに記載の遊技機。
【0029】
上記手段7によれば、可動係合部規制手段が錠部材の動作に連動しない構成、つまり上記鉤部や伝達部材などと連動しない構成であるため、仮に鍵を用いずに線材等によって鉤部や伝達部材に対し不正操作が行われた場合でも、この応力が可動係合部規制手段に伝達されない。つまり、鉤部や伝達部材等に対する不正操作だけでは、解錠状態とすることはできないため、不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。なお、可動係合部規制手段が錠部材の動作に連動しない構成は、可動係合部規制手段が上記鉤部や伝達部材などと係り合うことなく離間して設けられることにより実現できる。
【0030】
手段8.前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となるとともに、前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の遊技機。
【0031】
仮に鍵を用いずに扉体を支持部材に対し閉鎖する際に可動係合部及び鉤部の一方のみが自身の解錠側特定位置側へ変位する構成によって、上記手段1等に記載の構成を実現しようとした場合、施錠機構の構成が複雑化してしまうおそれもあるが、可動係合部及び鉤部の両者をそれぞれ変位させる手段8の構成とすることにより、施錠機構の簡素化を図ることができる。
【0032】
手段9.前記鉤部を前記鉤部施錠側特定位置側へ付勢する鉤部付勢手段と、前記可動係合部を前記係合部施錠側特定位置側へ付勢する可動係合部付勢手段とを備え、
前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、前記鉤部及び前記可動係合部の両者が、それぞれ自身の前記解錠側特定位置側へ変位することを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載の遊技機。
【0033】
上記手段9によれば、上記手段8と同様の作用効果に加え、鉤部と可動係合部との接触時に、これら個々にかかる負荷を分散し低減することができる。結果として、鉤部等に変形や破損等の不具合が発生することを低減させることができる。一方のみを変位可能とした構成で、このような効果を得ようとした場合には、比較的付勢力の弱い付勢手段を用いればよいが、この場合、上述したような不正行為が行われると、鉤部や可動係合部を自身の解錠側特定位置側へ簡単に変位させられるおそれがある。この点、本手段によれば、個々の付勢手段としては、ある程度、付勢力の強いものを用いつつも、両者に負荷が分散されるため、個々にかかる衝撃力を緩和することができる。
【0034】
以下に、上記各手段が適用される各種遊技機の基本構成を示す。
【0035】
A.上記各手段における前記遊技機は弾球遊技機であること。より詳しい態様例としては、「遊技者が操作する操作手段(遊技球発射ハンドル)と、当該操作手段の操作に基づいて遊技球を弾いて発射する発射手段(発射モータ等)と、当該発射された遊技球が案内される遊技領域と、前記遊技領域内に配置された各入球手段(一般入賞口、可変入賞装置、作動口等)とを備えた弾球遊技機」が挙げられる。
【0036】
B.上記各手段における前記遊技機は略鉛直方向に延びる遊技領域を備えた弾球遊技機であること。より詳しい態様例としては、「遊技者が操作する操作手段(遊技球発射ハンドル)と、当該操作手段の操作に基づいて遊技球を弾いて発射する発射手段(発射モータ等)と、当該発射された遊技球が案内され、略鉛直方向に沿って延びる所定の遊技領域(例えば遊技領域は遊技盤面等により構成される)と、前記遊技領域内に配置された各入球手段(一般入賞口、可変入賞装置、作動口等)とを備え、前記遊技領域を流下する遊技球の挙動を視認可能に構成されてなる弾球遊技機」が挙げられる。
【0037】
C.上記各手段における前記遊技機、又は、上記各弾球遊技機は、パチンコ機又はパチンコ機に準ずる遊技機であること。
【0038】
D.上記各手段における遊技機は、スロットマシン等の回胴式遊技機であること。より詳しい態様例としては、「複数の識別情報(図柄)からなる識別情報列(図柄列;具体的には図柄の付されたリール、ベルト等の回転体)を変動表示(具体的にはリール等の回転)した後に識別情報列を停止表示する可変表示手段(具体的にはリールユニット等の回転体ユニット)を備え、始動用操作手段(具体的にはスタートレバー)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が開始され、停止用操作手段(具体的にはストップボタン)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が停止され、その停止時に有効ライン上に揃った識別情報が特定の識別情報であることを条件に遊技価値が付与されるよう構成した回胴式遊技機」が挙げられる。
【0039】
E.上記各手段における遊技機は、スロットマシンとパチンコ機とを融合した形式の遊技機(特に遊技球を遊技媒体として使用するスロットマシン仕様の遊技機)であること。より詳しい態様例としては、「複数の識別情報(図柄)からなる識別情報列(図柄列;具体的には図柄の付されたリール、ベルト等の回転体)を変動表示(具体的にはリール等の回転)した後に識別情報列を停止表示する可変表示手段(具体的にはリールユニット等の回転体ユニット)を備え、始動用操作手段(具体的にはスタートレバー)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が開始され、停止用操作手段(具体的にはストップボタン)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が停止され、その停止時に有効ライン上に揃った識別情報が特定の識別情報であることを条件に遊技価値が付与されるよう構成し、さらに球受皿(上皿等)を設けてその球受皿から遊技球を取り込む取込手段と、前記球受皿に遊技球の払出しを行う払出手段とを備え、前記取込手段により遊技球が取り込まれることにより遊技の開始条件が成立するように構成した遊技機」が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態におけるスロットマシンの正面図。
【図2】前面扉を閉じた状態を示すスロットマシンの斜視図。
【図3】前面扉を開いた状態を示すスロットマシンの斜視図。
【図4】前面扉を開いた状態を示すスロットマシンの正面図。
【図5】各リールを構成する帯状ベルトの展開図。
【図6】スロットマシンのブロック回路図。
【図7】施錠装置及び支持金具を背面左側から見た斜視図である。
【図8】施錠装置及び支持金具を正面左側から見た斜視図である。
【図9】施錠装置及び支持金具を背面左側から見た分解斜視図である。
【図10】施錠装置及び支持金具を背面右側から見た分解斜視図である。
【図11】施錠装置の背面図である。
【図12】施錠装置の右側面図である。
【図13】施錠装置の正面図である。
【図14】施錠装置の左側面図である。
【図15】支持金具の左側面図である。
【図16】支持金具の正面図である。
【図17】支持金具の右側面図である。
【図18】支持金具の背面図である。
【図19】鍵の非挿入時におけるシリンダ錠を示す断面図である。
【図20】鍵の挿入時におけるシリンダ錠を示す断面図である。
【図21】(a)〜(c)は、カム板の動きを説明するための図である。
【図22】施錠状態にある施錠装置及び支持金具の側面図である。
【図23】施錠状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図24】解錠状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図25】扉体の開放状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図26】扉体を閉鎖する際の鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図27】扉体を閉鎖する際の鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、遊技機の一種である回胴式遊技機、具体的にはスロットマシンに適用した場合の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はスロットマシン10の正面図、図2は前面扉12を閉じた状態のスロットマシン10の斜視図、図3は前面扉12を開いた状態のスロットマシン10の斜視図、図4は前面扉12を開いた状態のスロットマシン10の正面図である。
【0042】
図1〜図4に示すように、スロットマシン10は、その外殻を形成する支持部材としての筺体11を備えている。筐体11は、木製板状に形成された天板11a、底板11b、背板11c、左側板11d及び右側板11eからなり、隣接する各板11a〜11eが接着等の固定手段によって固定されることにより、全体として前面を開放した箱状に形成されている。なお、各板11a〜11eは木製のパネルによって構成する以外に、合成樹脂製パネル又は金属製パネルによって構成してもよいし、合成樹脂材料又は金属材料によって一体の箱状に形成することによって構成してもよい。以上のように構成された筺体11は、遊技ホールへの設置の際にいわゆる島設備に対し釘を打ち付ける等して取り付けられる。
【0043】
筺体11の前面側には、扉体としての前面扉12が設けられている。前面扉12は、筺体11の左側板11dに設けられた上下一対のヒンジ機構25a、25bにより開閉可能に取り付けられている。これにより、前面扉12は筺体11に対してヒンジ機構25a、25bを結ぶ上下方向へ延びる開閉軸線を中心として回動可能に支持され、その回動によって筺体11の前面開放側を開放したり閉鎖することができるように構成されている。
【0044】
また、前面扉12は、その裏側に設けられた施錠装置600と、筐体11側に設けられた被係合手段としての支持金具800とによって開放不能な状態とされる。これら施錠装置600と支持金具800とからなる施錠機構の詳細は後述する。
【0045】
前面扉12の中央部上寄りには、遊技者に遊技状態を報知する遊技パネル30が設けられている。遊技パネル30には、縦長の3つの表示窓31L,31M,31Rが横並びとなるように形成されている。表示窓31L,31M,31Rは透明又は半透明な材質により構成されており、各表示窓31L,31M,31Rを通じてスロットマシン10の内部が視認可能な状態となっている。なお、各表示窓31L,31M,31Rを1つにまとめて共通の表示窓としてもよい。
【0046】
図3,4に示すように、筺体11は仕切り板40によりその内部が上下2分割されており、仕切り板40の上部には、可変表示手段を構成するリールユニット41が取り付けられている。
【0047】
リールユニット41は、円筒状(円環状)にそれぞれ形成された回転体としての左リール42L,中リール42M,右リール42Rを備えている。各リール42L,42M,42Rは、その中心軸線が当該リールの回転軸線となるように回転可能に支持されている。各リール42L,42M,42Rの回転軸線は略水平方向に延びる同一軸線上に配設され、それぞれのリール42L,42M,42Rが各表示窓31L,31M,31Rと1対1で対応している。従って、各リール42L,42M,42Rの表面の一部はそれぞれ対応する表示窓31L,31M,31Rを通じて視認可能な状態となっている。各リール42L,42M,42Rの外周面には帯状のベルトが巻かれており、このベルトの外周面には、識別情報としての図柄が等間隔ごとに多数印刷されている。そして、リール42L,42M,42Rが正回転すると、各表示窓31L,31M,31Rを通じてリール42L,42M,42Rの表面は上から下へ向かって移動しているかのように映しだされる。
【0048】
なお、これら各リール42L,42M,42Rは、それぞれが駆動手段としてのステッピングモータ61L,61M,61R(図6参照)に連結されており、各ステッピングモータ61L,61M,61Rの駆動により各リール42L,42M,42Rが個別に、即ちそれぞれ独立して回転駆動し得る構成となっている。そして、各ステッピングモータ61L,61M,61Rの駆動軸が回転することによりその駆動軸を中心として各リール42L,42M,42Rが自転するように回転する。
【0049】
また、リールユニット41には、リールインデックスセンサ55L,55M,55R(図6参照)が設置されている。本実施形態では、各リールインデックスセンサ55L,55M,55Rとして、発光素子と受光素子とが所定間隔をおいて保持された透過型フォトセンサが採用されている。そして、各リールインデックスセンサ55L,55M,55Rは、各リール42L,42M,42Rがほぼ1周するごとに図示しないセンサカットバンが両素子間を通過するのを検出し、その都度、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて各リール42L,42M,42Rの回転位置をほぼ1周するごとに確認し補正できる。
【0050】
例えば、本実施形態では、ステッピングモータ61L,61M,61Rは504パルスの駆動信号(励磁信号あるいは励磁パルスとも言う。以下同じ)を与えることにより1回転されるように設定されている。つまり、7パルスの駆動信号で各リール42L,42M,42Rが5°角度変化するというように、駆動信号の数に応じた回転量で各リール42L,42M,42Rを回転させるように構成されている。さらに、この駆動信号によってステッピングモータ61L,61M,61Rの回転位置、すなわち各リール42L,42M,42Rの回転位置が制御される。
【0051】
上述した各リール42L,42M,42Rの各ベルト上には、その長辺方向(周回方向)に複数個、具体的には21個の図柄が描かれている。従って、所定の位置においてある図柄から次の図柄へ切り替えるには24パルス(=504パルス÷21図柄)を要する。そして、各リール42L,42M,42Rの回転位置が検出された時点からのパルス数により、どの図柄が各表示窓31L,31M,31Rから視認可能な状態となっているかを認識したり、任意の図柄を各表示窓31L,31M,31Rから視認可能な状態としたりする制御を行うことができる。
【0052】
各リール42L,42M,42Rに付された図柄のうち、表示窓31L,31M,31Rを介して全体を視認可能な図柄数は、主として表示窓31L,31M,31Rの上下方向の長さによって決定される所定数に限られている。本実施形態では各リール3個ずつとされている。このため、各リール42L,42M,42Rがすべて停止している状態では、3×3=9個の図柄が遊技者に視認可能な状態となる。
【0053】
ここで、各リール42L,42M,42Rに付される図柄について説明する。図5には、左リール42L,中リール42M,右リール42Rのそれぞれに巻かれるベルトに描かれた図柄配列が示されている。同図に示すように、各リール42L,42M,42Rにはそれぞれ21個の図柄が一列に設けられている。各リール42L,42M,42Rに対応して番号が1〜21まで付されているが、これは説明の便宜上付したものであり、リール42L,42M,42Rに実際に付されているわけではない。但し、以下の説明では当該番号を使用して説明する。
【0054】
図柄としては、ビッグボーナスゲームに移行するための第1特別図柄としての「赤7」図柄(例えば、左ベルト第20番目)と「白7」図柄(例えば、左ベルト第19番目)とがある。また、レギュラーボーナスゲームに移行するための第2特別図柄としての「BAR」図柄(例えば、左ベルト第14番目)がある。また、リプレイゲームに移行するための第3特別図柄としての「リプレイ」図柄(例えば、左ベルト第11番目)がある。また、小役の払出が行われる小役図柄としての「スイカ」図柄(例えば、左ベルト第9番目)、「ベル」図柄(例えば、左ベルト第8番目)、「チェリー」図柄(例えば、左ベルト第4番目)がある。そして、図5に示すように、各リール42L,42M,42Rに巻かれるベルトにおいて、各種図柄の数や配置順序は全く異なっている。
【0055】
遊技パネル30には、各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして、横方向へ平行に3本、斜め方向へたすき掛けに2本、計5本の組合せラインが付されている。勿論、最大組合せライン数を6以上としてもよく、5未満としてもよく、所定条件に応じて最大組合せライン数を変更するようにしてもよい。これら各組合せラインに対応して、表示窓31L,31M,31R群の正面から見て左側には有効ライン表示部32,33,34が設けられている。第1有効ライン表示部32は組合せラインのうち中央の横ライン(中央ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第2有効ライン表示部33は組合せラインのうち上下の横ライン(上ライン及び下ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第3有効ライン表示部34は組合せラインのうち一対の斜めライン(右下がりライン及び右上がりライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。そして、有効化された組合せライン、すなわち有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となり、予め定められたメダル払出処理や特定遊技への移行処理などが実行される。
【0056】
ここで、入賞となった場合の各図柄に関する払出枚数について説明する。小役図柄に関し、「スイカ」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、「ベル」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には8枚のメダル払出、左リール42Lの「チェリー」図柄が有効ライン上に停止した場合には2枚のメダル払出が行われる。即ち、中リール42M及び右リール42Rの「チェリー」図柄はメダル払出と無関係である。また、「チェリー」図柄に限っては、他の図柄との組合せとは無関係にメダル払出が行われるため、左リール42Lの複数の有効ラインが重なる位置(具体的には上段又は下段)に「チェリー」図柄が停止した場合には、その重なった有効ラインの数を乗算した分だけのメダル払出が行われることとなり、結果として本実施の形態では4枚のメダル払出が行われる。
【0057】
また、その他の図柄に関しては、第1特別図柄(ビッグボーナス図柄)の組合せである「赤7」図柄又は「白7」図柄が同一図柄にて有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、第2特別図柄(レギュラーボーナス図柄)の組合せである「BAR」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合にも15枚のメダル払出が行われる。なお、本実施形態においては、例えば「赤7」図柄と「チェリー」図柄とが同時に成立する場合が生じ得るが、かかる場合におけるメダル払出は15枚である。これは、1回のメダル払出における上限枚数が15枚に設定されているためである。
【0058】
更に、第3特別図柄の組合せである「リプレイ」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合にはメダル払出は行われない。その他の場合、即ち有効ライン上に左リール42Lの「チェリー」図柄が停止せず、また有効ライン上に左・中・右と同一図柄が揃わない場合には、一切メダル払出は行われない。
【0059】
ここで本実施形態におけるボーナスゲームについて説明する。レギュラーボーナス(以下「RB」という)ゲームは、12回のJACゲームで構成さえている。JACゲームは、1枚ベットのみ許されるゲームであり、JAC図柄(ここではリプレイ図柄で代用)が有効ライン上に揃う確率つまりJAC図柄成立の確立が非常に高いゲームである。JACゲームでJAC図柄が成立すると最大枚数(ここでは15枚)のメダルが払い出される。そして、JAC図柄が8回成立すると、JACゲームが12回に達する前であってもRBゲームが終了する。一方、ビッグボーナス(以下「BB」という)ゲームは、30回の小役ゲームと3回のJACインとから構成されている。小役ゲームとは高確率で小役が当選する(有効ライン上に「ベル」図柄などが揃う)ゲームであり、JACインとは12回のJACゲームに突入することを意味し、小役ゲーム中にJAC図柄が有効ライン上に揃うとJACインが成立する。JACゲームはRBゲームの場合と同様である。また、3回目のJACインによるJACゲームが終了すると小役ゲームが30回に達する前であってもBBゲームは終了し、30回の小役ゲームが終了するとJACインが3回に達する前であってもBBゲームは終了する。ボーナスゲームの形態は上記形態に限定されるものではなく、異なる形態であってもよい。
【0060】
さて、遊技パネル30の下方左側には、各リール42L,42M,42Rを一斉(同時である必要はない)に回転開始させるために操作されるスタートレバー71が設けられている。スタートレバー71はリール42L,42M,42Rを回転開始、すなわち可変表示を開始させるべく操作される始動操作手段を構成する。スタートレバー71は、遊技者がゲームを開始するときに手で押し操作するレバーであり、手が離れたあと元の位置に自動復帰する。メダルが投入されているときにこのスタートレバー71が操作されると、各リール42L,42M,42Rが一斉に回転を始める。
【0061】
スタートレバー71の右側には、回転している各リール42L,42M,42Rを個別に停止させるために操作されるボタン状のストップスイッチ72,73,74が設けられている。各ストップスイッチ72,73,74は停止対象となるリール42L,42M,42Rに対応する表示窓31L,31M,31Rの略直下にそれぞれ配置されている。ストップスイッチ72,73,74はリール42L,42M,42Rの回転に基づく可変表示を停止させるべく操作される停止操作手段を構成する。各ストップスイッチ72,73,74は、左リール42Lが回転を開始してから所定時間が経過すると停止させることが可能な状態となり、かかる状態中には図示しないランプが点灯表示されることによって停止操作が可能であることが報知され、回転が停止すると消灯されるようになっている。
【0062】
表示窓31L,31M,31Rの下方右側には、メダルを投入するためのメダル投入口75が設けられている。メダル投入口75から投入されたメダルは、前面扉12の背面に設けられた通路切替手段としてのセレクタ84によって貯留用通路81か排出用通路82のいずれかへ導かれる。すなわち、セレクタ84にはメダル通路切替ソレノイド83(図6参照)が設けられ、そのメダル通路切替ソレノイド83の非励磁時には排出用通路82側とされ、励磁時には貯留用通路81側に切り替えられるようになっている。貯留用通路81に導かれたメダルは、筺体11の内部に収納されたホッパ装置91へと導かれる。一方、排出用通路82に導かれたメダルは、前面扉12の前面下部に設けられたメダル排出口17からメダル受け皿18へと導かれ、遊技者に返還される。
【0063】
メダルを遊技者に付与する払出手段としてのホッパ装置91は、メダルを貯留する貯留タンク92と、メダルを遊技者に払い出す払出装置93とにより構成されている。払出装置93は、図示しないメダル払出用回転板を回転させることにより、排出用通路82の中央右部に設けられた開口94へメダルを排出し、排出用通路82を介してメダル受け皿18へメダルを払い出すようになっている。また、ホッパ装置91の右方には、貯留タンク92内に所定量以上のメダルが貯留されることを回避するための予備タンク95が設けられている。ホッパ装置91の貯留タンク92内部には、この貯留タンク92から予備タンク95へとメダルを排出する誘導プレート96が設けられている。したがって、誘導プレート96が設けられた高さ以上にメダルが貯留された場合、かかるメダルが予備タンク95に貯留されることとなる。
【0064】
メダル投入口75の下方には、ボタン状の返却スイッチ76が設けられている。返却スイッチ76は、メダル投入口75に投入されたメダルがセレクタ84内に詰まった際に押されるスイッチであり、このスイッチが押されることによりセレクタ84が機械的に連動して動作され、当該セレクタ84内に詰まったメダルがメダル排出口17より返却されるようになっている。
【0065】
表示窓31L,31M,31Rの下方左側には、クレジットされた仮想メダルを一度に3枚投入するためのボタン状の第1クレジット投入スイッチ77が設けられている。また、第1クレジット投入スイッチ77の左方には当該スイッチ77よりも小さなボタン状のスイッチとして、第2クレジット投入スイッチ78が設けられている。第2クレジット投入スイッチ78はクレジットされた仮想メダルを一度に1枚投入するためのものである。
【0066】
なお、第1クレジット投入スイッチ77は、1ゲームにつき投入できるメダル最大数(3枚)に達していないことを促すため、図示しない発光部材としてのランプが内蔵されている。当該ランプは、第1クレジット投入スイッチ77のスイッチ操作が有効である状況時において点灯されて当該スイッチ77の操作を促すが、クレジットされた仮想メダルが存在しない場合や既に3枚のメダル投入がなされている状況下では消灯される。ここで、上記点灯に代えて、点滅させてメダル投入の促しを遊技者に一層分かり易くしてもよい。
【0067】
スタートレバー71の左側には、ボタン状の切換スイッチ80が設けられている。切換スイッチ80は、1度押されるとオン状態になり、もう1度押されるとオフ状態になり、その後押下操作が行われるごとにオンオフが切り替わるトグル式に構成されている。切換スイッチ80は、メダル投入口75に必要量より多く投入された投入メダルや、所定の遊技の結果、遊技者に返還される獲得メダルの取扱形式を変更するために操作される。
【0068】
切換スイッチ80がオン状態のときには、所定の最大値(例えばメダル50枚分)となるまでの余剰の投入メダルや入賞時の獲得メダルがクレジットメダルとして貯留記憶されるように設定された「クレジットモード」となる。切換スイッチ80がオフ状態のときには、余剰の投入メダルや入賞時の獲得メダルを現実のメダルとして払い出すように設定された「ダイレクトモード」となる。なお、クレジットモードからダイレクトモードに切り換えられた際にクレジットメダルがある場合には、その分のクレジットメダルが現実のメダルとして払い出される。このように、遊技者はクレジットモードとダイレクトモードとを切り換えることにより自身の好みに応じた形式で遊技を実行することができる。かかる切換スイッチ80は取扱形式を切り換える切換操作手段を構成する。また、クレジットされた仮想メダルを現実のメダルとして払い出すという機能に着目すれば、切換スイッチ80は貯留記憶された遊技価値を実際に払い出すための精算操作手段を構成するものともいえる。なお、切換スイッチ80の操作により「クレジットモード」と「ダイレクトモード」とを切り換えるように構成する他、常に「クレジットモード」としておき切換スイッチ80が操作されると貯留記憶された仮想メダルを払い出すだけの精算スイッチとして機能させてもよい。
【0069】
遊技パネル30の表示窓31L,31M,31R下方には、クレジットモード時に有効化されて貯留記憶されたメダル数を表示する残数表示部35と、ビッグボーナスやレギュラーボーナス等の特別遊技状態の際に例えば残りのゲーム数等を表示するゲーム数表示部36と、獲得メダルの枚数を表示する獲得枚数表示部37とがそれぞれ設けられている。これら表示部35〜37は7セグメント表示器によって構成されているが、液晶表示器等によって代替することは当然可能である。
【0070】
ここで、メダルがベットされる手順について説明する。ダイレクトモード、クレジットモードのいずれのモードにおいても、遊技の開始時にメダル投入口75からメダルが投入されるとベットとなる。
【0071】
すなわち、1枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、第1有効ライン表示部32が点灯し、そしてこれに対応する中央ラインが有効ラインとなり、2枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、更に第2有効ライン表示部33が点灯すると共に、これに対応する上ライン及び下ラインを含む合計3本の組合せラインがそれぞれ有効ラインとなり、3枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、更に第3有効ライン表示部34が点灯し、そしてこれに対応する一対の斜めラインを含む合計5本の組合せライン全てが有効ラインとなる。
【0072】
また、4枚以上のメダルがメダル投入口75に投入されると、3枚を超える余剰メダルは、そのときのモードがダイレクトモードであればセレクタ84により排出用通路82への切替がなされてメダル排出口17からメダル受け皿18へ返却される。一方、クレジットモードであればスロットマシン内部に貯蓄されると共に残数表示部35に貯蓄枚数が表示される。この貯留枚数には上限枚数が決められており(例えば50枚)、それを超える枚数のメダルが投入されたときにはメダル排出口17からメダル受け皿18へ返却される。
【0073】
また、クレジットモードにて遊技が行われ且つ残数表示部35に貯留枚数が表示されている場合には、第1,2クレジット投入スイッチ77,78のいずれかが押された際にも仮想メダルが投入されたこととなりベットとなる。
【0074】
例えば、第2クレジット投入スイッチ78が押された際には、仮想メダルが1枚投入されたこととして残数表示部35に表示されている数値が1つディクリメントされ、第1有効ライン表示部32が点灯して中央ラインが有効ラインとなる。また、第1クレジット投入スイッチ77が押された際には、仮想メダルが3枚投入されたこととして残数表示部35に表示されている数値が3つディクリメントされ、全ての有効ライン表示部32〜34が点灯して合計5本の組合せラインが有効ラインとなる。
【0075】
なお、第1,2クレジット投入スイッチ77,78のいずれかが押された際に投入されるべき仮想メダルが貯留されていない場合、例えば残数表示部35の表示が2のときに第1クレジット投入スイッチ77が押された場合等には、残数表示部35の数値が全てディクリメントされて0となり、投入可能な仮想メダル分だけベットされる。
【0076】
前面扉12の上部には、遊技の進行に伴い点灯したり点滅したりする上部ランプ13と、遊技の進行に伴い種々の効果音を鳴らしたり、遊技者に遊技状態を報知したりする左右一対のスピーカ14Aと、遊技者に各種情報を与える補助表示部15とが設けられている。補助表示部15は、本実施形態では表示内容の多様化及び表示演出の重厚化を意図して液晶表示器によって構成されているが、ドットマトリックス表示器等の他の表示器を使用してもよい。補助表示部15は、遊技に進行に伴って各種表示演出を実行するためのものであり、各リール42L,42M,42Rによる遊技を主表示部によるものと考えることができることから、本実施形態では補助表示部15と称している。補助表示部15の背面には上部ランプ13やスピーカ14A、補助表示部15を駆動させるための表示制御装置111が設けられている。なお、上部ランプ13及びスピーカ14Aの位置や数は特に以上説明したものに限られない。
【0077】
メダル受け皿18の上方には、機種名や遊技に関わるキャラクタなどが表示された下段プレート16が装着されている。また、メダル受け皿18の左方には、手前側下方に反転可能な灰皿19が設けられている。さらに、メダル受け皿18の奥方には、上記スピーカ14Aと同様の左右一対のスピーカ14Bが設けられている。
【0078】
筺体11の内部においてホッパ装置91の左方には、電源ボックス121が設けられている。電源ボックス121は、電源スイッチ122や設定キー挿入孔124などを備えている。電源スイッチ122は、主制御装置131を始めとする各部に電源を供給するための起動スイッチである。設定キー挿入孔124は、ホール管理者などがメダルの出玉調整を行うためのものである。すなわち、ホール管理者等が設定キーを設定キー挿入孔124へ挿入して操作することにより、スロットマシン10の設定状態(当選確率設定処理)を「設定1」から「設定6」まで変更できるようになっている。
【0079】
リールユニット41の上方には、主制御手段としての主制御装置131が筺体11の背板11cに取付けられている。主制御装置131は、主たる制御を司るCPU,遊技プログラムを記憶したROM、遊技の進行に応じた必要なデータを一時的に記憶するRAM、各種機器との連絡をとるポート、時間計数や同期を図る場合などに使用されるクロック回路等を含む主基板を具備しており、主基板が透明樹脂材料等よりなる被包手段としての基板ボックスに収容されて構成されている。基板ボックスは、略直方体形状のボックスベースと該ボックスベースの開口部を覆うボックスカバーとを備えている。これらボックスベースとボックスカバーとは封印手段としての封印ユニットによって開封不能に連結され、これにより基板ボックスが封印されている。
【0080】
次に、本スロットマシン10の電気的構成について、図6のブロック図に基づいて説明する。
【0081】
主制御装置131には、演算処理手段であるCPU151を中心とするマイクロコンピュータが搭載されている。CPU151には、電源ボックス121の内部に設けられた電源装置161の他に、所定周波数の矩形波を出力するクロック回路154や、入出力ポート155などが内部バスを介して接続されている。かかる主制御装置131は、スロットマシン10に内蔵されるメイン基板としての機能を果たすものである。
【0082】
主制御装置131の入力側には、スタートレバー71の操作を検出するスタート検出センサ71a、各ストップスイッチ72,73,74の操作を個別に検出するストップ検出センサ72a,73a,74a、メダル投入口75から投入されたメダルを検出する投入メダル検出センサ75a、各クレジット投入スイッチ77,78の操作を個別に検出するクレジット投入検出センサ77a,78a、切換スイッチ80の操作を検出する切換検出センサ80a、各リール42L,42M,42Rの回転位置を個別に検出するリールインデックスセンサ55L,55M,55R、ホッパ装置91から払い出されるメダルを検出する払出検出センサ91a、後述するリセット操作を検出するリセット検出センサ640、設定キー挿入孔124に設定キーが挿入されたことを検出する設定キー検出センサ124a、前面扉12の開放を検出するための開放検知スイッチ820、後述する鍵Kによる前面扉12の開放操作があったことを検出するための開放操作検知センサ630等の各種センサが接続されており、これら各種センサからの信号は入出力ポート155を介してCPU151に出力されるようになっている。
【0083】
なお、投入メダル検出センサ75aは実際には複数個のセンサより構成されている。即ち、メダル投入口75からホッパ装置91に至る貯留用通路81は、その上流部において、メダルが1列で通行可能なように構成されている。そして、貯留用通路81の上流部には第1センサが設けられるとともに、それよりメダルの幅以上離れた下流側に第2センサ及び第3センサが近接(少なくとも一時期において同一メダルを同時に検出する状態が生じる程度の近接)して設けられており、これら第1乃至第3の各センサによって投入メダル検出センサ75aが構成されている。主制御装置131は、第1センサから第2センサに至る時間を監視し、その経過時間が所定時間を越えた場合にはメダル詰まり又は不正があったものとみなしてエラーとする。エラーになると、エラー報知が行われるとともにエラー解除されるまでの遊技者による操作が無効化される。また、主制御装置131は第2センサと第3センサとがオンオフされる順序をも監視し、第2,第3センサが共にオフ、第2センサのみオン、第2,第3センサが共にオン、第3センサのみオン、第2,第3センサが共にオフという順序通りになった場合で、かつ各オンオフ切換に移行する時間が所定時間内である場合にのみメダルが正常に取り込まれたと判断し、それ以外の場合はエラーとする。このようにするのは、貯留用通路81でのメダル詰まりの他、メダルを投入メダル検出センサ75a付近で往復動させてメダル投入と誤認させる不正を防止するためである。
【0084】
また、主制御装置131の入力側には、入出力ポート155を介して電源装置161に設けられた停電監視回路161bが接続されている。なお、電源装置161には、主制御装置131を始めとしてスロットマシン10の各電子機器に駆動電力を供給する電源部161aや、上述した停電監視回路161bなどが搭載されている。
【0085】
停電監視回路161bは電源の遮断状態を監視し、停電時はもとより、電源スイッチ122による電源遮断時に停電信号を生成するためのものである。この例では直流12ボルトの安定化駆動電圧を監視し、この駆動電圧が例えば10ボルト未満まで低下したとき電圧が遮断されたものと判断して停電信号が出力されるように構成されている。停電信号はCPU151と入出力ポート155のそれぞれに供給され、CPU151ではこの停電信号を認識することにより所定の停電時処理が実行される。
【0086】
電源部161aからは出力電圧が10ボルト未満まで低下した場合でも、主制御装置131などの制御系における駆動電圧として使用される5ボルトの安定化電圧が出力されるように構成されており、この安定化電圧が出力されている時間としては、主制御装置131による停電時処理を実行するに十分な時間が確保されている。
【0087】
主制御装置131の出力側には、各有効ライン表示部32,33,34、残数表示部35、ゲーム数表示部36、獲得枚数表示部37、各リール42L,42M,42Rを回転させるための各ステッピングモータ61L,61M,61R、セレクタ84に設けられたメダル通路切替ソレノイド83、ホッパ装置91、表示制御装置111、遊技ホールのホール管理装置などに情報を送信できる外部集中端子板171等が入出力ポート155を介して接続されている。
【0088】
表示制御装置111は、上部ランプ13やスピーカ14A,14B、補助表示部15を駆動させるための制御装置であり、これらを駆動させるためのCPU、ROM、RAM等が一体化された基板を備えている。そして、主制御装置131からの信号を受け取った上で、表示制御装置111が独自に上部ランプ13、スピーカ14A,14B及び補助表示部15を駆動制御する。従って、表示制御装置111は、遊技を統括管理するメイン基板たる主制御装置131との関係では補助的な制御を実行するサブ基板となっている。即ち、間接的な遊技に関する音声やランプ、表示についてはサブ基板を設けることにより、メイン基板の負担軽減を図っている。なお、各種表示部32〜37を表示制御装置111が制御する構成としてもよい。
【0089】
上述したCPU151には、このCPU151によって実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM152と、このROM152内に記憶されている制御プログラムを実行するに当たって各種のデータを一時的に記憶する作業エリアを確保するためのRAM153のほかに、図示はしないが周知のように割込み回路を始めとしてタイマ回路、データ送受信回路などスロットマシン10において必要な各種の処理回路や、クレジット枚数をカウントするクレジットカウンタなどの各種カウンタが内蔵されている。ROM152とRAM153によって記憶手段としてのメインメモリが構成され、各種処理を実行するためのプログラムは、制御プログラムの一部として上述したROM152に記憶されている。
【0090】
RAM153は、スロットマシン10の電源が遮断された後においても電源ボックス121内に設けられた電源装置161からバックアップ電圧が供給されてデータを保持(バックアップ)できる構成となっており、RAM153には、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリやエリアの他に、バックアップエリアが設けられている。
【0091】
バックアップエリアは、停電などの発生により電源が遮断された場合において、電源遮断時(電源スイッチ122の操作による電源遮断をも含む。以下同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアであり、停電解消時(電源スイッチ122の操作による電源投入をも含む。以下同様)には、バックアップエリアの情報に基づいてスロットマシン10の状態が電源遮断前の状態に復帰できるようになっている。バックアップエリアへの書き込みは停電時処理によって電源遮断時に実行され、バックアップエリアに書き込まれた各値の復帰は電源投入時のメイン処理において実行される。なお、CPU151のNMI端子(ノンマスカブル割込端子)には、停電等の発生による電源遮断時に、停電監視回路161bからの停電信号が入力されるように構成されており、停電等の発生に伴うNMI割込み処理が即座に実行される。
【0092】
なお、電源装置161の電源部161aは、上述したNMI割込み処理及び停電時処理を実行するのに十分な時間、制御系の駆動電圧として使用される安定化電圧(5ボルト)の出力が保持されるように構成されている。本実施形態では、30msecの間、駆動電圧が出力され続けるようになっている。
【0093】
次に、前面扉12の施錠機構について説明する。前面扉12の施錠機構は、上述したように前面扉12に取付けられた施錠装置600と、筐体11に取付けられた支持金具800とにより構成される。
【0094】
施錠装置600は、前面扉12の右側辺部背面側、すなわち前面扉12の回動軸側とは反対側の側辺部に沿って取付けられている。一方、支持金具800は、施錠装置600に対応して、筐体11の右側板11e内側に取付けられている。そして、筺体11に対して前面扉12を閉鎖した際には、施錠装置600と支持金具800とが係合し施錠状態となることにより、前面扉12の開放が規制された状態となる。なお、これら施錠装置600や支持金具800を構成する主な部材は、金属平板をプレス成形等することにより形成されている。
【0095】
また、前面扉12の閉鎖状態においては、施錠装置600のうち、後述するシリンダ錠700(図1等参照)だけが前面扉12の前面側に露出した状態となる。そして、このシリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、所定方向(本実施形態では時計回り方向)に回動操作することで、施錠装置600と支持金具800とが解錠状態となり、前面扉12の開放が許容される状態となる。
【0096】
先ず施錠装置600について図7〜図14を参照して詳細に説明する。図7は、施錠装置600及び支持金具800を背面左側から見た斜視図であり、図8は、施錠装置600及び支持金具800を正面左側から見た斜視図である。但し、図7,8では、便宜上、施錠装置600及び支持金具800に関連する筐体11及び前面扉12も併せて模式的に図示している。また、図9は、施錠装置600及び支持金具800を背面左側から見た分解斜視図であり、図10は、施錠装置600及び支持金具800を正面左側から見た分解斜視図である。また、図11は、施錠装置600の背面図であり、図12は右側面図、図13は正面図であり、図14は左側面図である。
【0097】
施錠装置600の外郭を構成する縦長の基枠601は、前面扉12の背面部に固定される取付部としての取付板602と、当該取付板602の前面扉12内方側(左側)の端縁から後方に突出した支持部としての支持板603と、取付板602の前面扉12外方側(右側)の端縁から後方に突出したフランジ部604とを備えており、これらが一体となって横断面略コ字状をなしている。
【0098】
取付板602は、シリンダ錠700の配置位置に対応する所定の上下区間が他部位より左右方向に幅広の幅広部602aとなっており、支持板603では、前記幅広部602aに対応する上下区間が前面扉12内方側へ膨出した膨出部603aとなっている。これは、遊技パネル30の領域や各種機器等の設置スペースをより広く確保するために、施錠装置600全体の横幅を極力狭くしつつ、シリンダ錠700の配設位置においては、その設置スペースを確保するためである。
【0099】
支持板603の内側(前面扉12外方側)には、施錠機構の主要構成部となる第1摺動杆610及び上下一対の鉤部材611,612が配設されている。鉤部材611,612が本実施形態における鉤部に相当し、第1摺動杆610が伝達部材に相当する。
【0100】
第1摺動杆610は、長尺状をなし、支持板603に沿って上下方向に摺動可能に配設されている。第1摺動杆610には、支持板603の膨出部603aに対応する所定の上下区間において、前面扉12内方側へ膨出した膨出部610aが形成されている。但し、第1摺動杆610の膨出部610aの形成区間は、支持板603の膨出部603aの形成区間よりも短く設定されており、第1摺動杆610の摺動の妨げとならないようになっている。
【0101】
鉤部材611,612は、軸ピン613,614により支持板603に対し回動可能に軸支されている。また、第1摺動杆610は、前面扉12外方側から鉤部材611,612の前端部及びその近傍(取付板602側の端部及びその近傍)に重畳するように、支持板603に対し配設されている。そして、当該重畳部分において、第1摺動杆610と鉤部材611,612とが軸ピン615,616を介して係合されている。これにより、第1摺動杆610の上下方向の摺動変位に連動して、鉤部材611,612が回動変位する。
【0102】
鉤部材611,612は、その上辺部に係止凹部611a,612aが形成されるとともに、その後部が支持板603より後方へ突出している。これにより、鉤部材611,612は、支持板603より後方へ突出した部分が鉤状となっており、当該突出部分が係止部(係止爪)として機能する。
【0103】
また、鉤部材611,612における係止凹部611a,612aより後端側、すなわち鉤部材611,612の頭部611b,612bは、その上辺部が後方に向け下方傾斜した傾斜部611c,612cとなっている。
【0104】
なお、取付板602には、上下方向3箇所において、第1摺動杆610の前面扉12外方側への動きを規制する規制突起602bが設けられている。また、支持板603には、膨出部603aよりも上方位置において、前面扉12外方側に向け突出した支持突部603bが設けられている。規制突起602bや持突部603bは、第1摺動杆610の取付状態の安定性を高める機能とともに、第1摺動杆610の摺動動作の安定性を高めるガイド部としての機能を備えている。従って、第1摺動杆610は、取付板602の規制突起602bや支持板603の支持突部603bにより左右方向(図11左右方向)への動きを規制され、かつ、鉤部材611,612との係合により前後方向(図12左右方向)への動きを規制されつつ、上下方向へ摺動できるようになっている。
【0105】
また、第1摺動杆610の下端部近傍には、下側の鉤部材612との係合位置よりもやや上方位置において、前面扉12内方側に向け突出した突起片617が設けられている。これに対応して、支持板603の後縁部には切欠き凹部618が形成されており、突起片617は当該切欠き凹部618を介して支持板603よりも前面扉12内方側へ突出している。
【0106】
また、支持板603には、切欠き凹部618の上方位置において、前面扉12内方側へ突出した取付基部619が設けられている。この取付基部619の下面側には開放操作検知センサ630が取付けられている。本実施形態では、開放操作検知センサ630として、発光素子と受光素子とが所定間隔をおいて保持された透過型フォトセンサが採用されている。そして、第1摺動杆610の上方への摺動変位があった場合、すなわち後述するように鍵Kによる前面扉12の開放操作があった場合には、突起片617が開放操作検知センサ630の両素子間に入り込み、開放操作検知センサ630がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、鍵Kによる前面扉12の開放操作があったことを把握することができる。
【0107】
また、支持板603には、当該支持板603と第1摺動杆610とに挟まれるようにして、第2摺動杆620が配設されている。但し、第2摺動杆620は、その上下長が比較的短く設定されており、第1摺動杆610の膨出部610aの上端部近傍から、開放操作検知センサ630のやや上方位置までの区間に対応して設けられている。従って、第2摺動杆620は、第1摺動杆610の膨出部610aに沿って配設される上片部620aと、第1摺動杆610の一般部に沿って配設される下片部620bとが段差をもって形成された構成となっている。
【0108】
第2摺動杆620の下片部620bには、下端部から前面扉12内方側に向け突出した第1突起片621が設けられるとともに、下端部近傍の後縁部から前面扉12内方側に向け突出した第2突起片622が設けられている。これに対応して、支持板603には挿通孔623,624が形成されており、両突起片621,622は当該挿通孔623,624を介してそれぞれ支持板603より前面扉12内方側へ突出している。第1突起片621は、第2摺動杆620を下方へ摺動操作して、後述するようなリセット操作を行うための手動操作用の操作部として機能する。一方、第2突起片622は、後述するリセット検出センサ640により検出される被検知部として機能する。
【0109】
また、支持板603には、両挿通孔623,624よりも上方位置において、前面扉12内方側へ突出した取付基部625が設けられている。この取付基部625の下面側にはリセット検出センサ640が取付けられている。本実施形態では、リセット検出センサ640として、上記開放操作検知センサ630と同様の透過型フォトセンサが採用されている。通常時、すなわち第2摺動杆620が基準位置にある場合には、このリセット検出センサ640の両素子間に第2突起片622が入り込んだ状態となっている。そして、第2摺動杆620の下方への摺動変位があった場合、すなわち後述するように鍵Kや第1突起片621を介したリセット操作があった場合には、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出し、リセット検出センサ640がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、リセット操作があったことを把握することができる。
【0110】
さて、第1摺動杆610は、鉤部付勢手段としてのコイルばねC1により下方へ付勢されている。より詳しくは、コイルばねC1は、第1摺動杆610の上下方向略中央部に設けられたフック部641に一端が掛けられるとともに、他端が、取付板602の背面側に設けられたフック部642に掛けられている。
【0111】
また、第2摺動杆620は、コイルばねC2により上方へ付勢されている。より詳しくは、第1摺動杆610には、膨出部610aのやや下方位置においてフック部643が形成されるとともに、それよりも下方位置の前縁部において切欠き凹部644が形成されている。また、第2摺動杆620の下端部近傍にはフック部645が形成されている。そして、第1摺動杆610のフック部643にコイルばねC2の一端が掛けられるとともに、他端が、切欠き凹部644を介して第1摺動杆610の前面扉12外方側へ突出した第2摺動杆620のフック部645に掛けられている。
【0112】
そして、シリンダ錠700が操作された場合には、コイルばねC1,C2の引張力に抗して、第1摺動杆610が上方へ、又は、第2摺動杆620が下方へ摺動変位する。
【0113】
通常時、第1摺動杆610は、コイルばねC1の引張力によって、図7等に示すような基準位置において保持されている。この状態では、第1摺動杆610に係合された鉤部材611,612は、その前端部が下方に引っ張られ、支持板603に設けられた下規制突起647,648に当接することにより略水平状態に維持されている(図23参照)。なお、下規制突起647,648によって鉤部材611,612の動きが規制されることにより、第1摺動杆610の下方への動作も規制された状態となっている。
【0114】
そして、第1摺動杆610が上方へ摺動する場合には、これに連動して鉤部材611,612が回動変位する。但し、鉤部材611,612は、支持板603に設けられた上規制突起649,650に当接することにより、それ以上の回動が規制される。この状態では、鉤部材611,612は、その前端側が上に、後端側が下となるよう傾いた状態となる(図24参照)。
【0115】
従って、鉤部材611,612の回動変位範囲のうち、鉤部材611,612が下規制突起647,648に当接する位置が、本実施形態における鉤部施錠側特定位置(基準位置)に相当する。これに対し、鉤部材611,612が上規制突起649,650に当接する位置が鉤部解錠側特定位置に相当する。
【0116】
一方、第2摺動杆620は、通常時、コイルばねC2の引張力によって、図7等に示すような基準位置において保持されている。この状態で、第2摺動杆620は、突起片621,622が挿通孔623,624の上縁部に付勢されることにより、上方への動作が抑えられた状態となっている。また、この状態では、上述したように第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間に入り込んだ状態となっている。そして、第2摺動杆620の下方への摺動変位があった場合には、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出した状態となる。
【0117】
さて、取付板602の幅広部602aには、錠部材としてのシリンダ錠700が取付けられている。図19に示すように、シリンダ錠700は、略筒状をなすシリンダ本体701と、シリンダ本体701内部に設けられ、内部に鍵穴702を有してなる錠軸703と、シリンダ本体701の外周に設けられた外筒704とを備えている。
【0118】
シリンダ錠700は、取付板602の取付孔602bに対しシリンダ本体701を挿通した状態で、フランジ部705を取付板602の背面側にネジ699により固定されている。
【0119】
シリンダ本体701には、該シリンダ本体701の内外を連通する上下8つずつ、合計16個の透孔706が形成されている。これに対応して、錠軸703にも、各透孔706と連通する16個の透孔708が形成されている。かかる透孔708の鍵穴702側は、後述するピン714等の収容部材が鍵穴702内に脱落しないように他の部位よりも小径に形成されている。
【0120】
各透孔706内には、それぞれバネ709が収容されている。バネ709の一端は前記外筒704に当接し、他端には台座711が連結されている。また、各透孔708内には、前記台座711に支持されるようにして、複数のスペーサ712,713及びピン714が収容されている。そして、これらピン714、スペーサ712,713、台座711は、バネ709の伸縮によって各透孔706,708内を上下動可能となっている。このうち、ピン714は、前記透孔708の鍵穴702側の小径部を介して鍵穴702内に出没可能となっている。
【0121】
上記構成により、鍵穴702内への鍵Kの挿入時には、当該鍵Kの上下両側の凹凸形状に沿って各ピン714等が上下動する。そして、鍵Kの挿入完了状態にあっては、図20に示すように各ピン714がそれぞれ鍵Kの溝に入り込んだ状態となり、ピン714の基端面、又は、スペーサ712若しくは713の一方の端面と、錠軸703の外周面とが面一になる。これにより、鍵Kの挿入完了状態にあっては、鍵Kの回動操作に伴って錠軸703が回動可能となる。つまり、このシリンダ錠700は、少なくとも鍵穴702に鍵Kを挿し込まない限り錠軸703を回動させることができない内部構造となっている。
【0122】
また、錠軸703の後端部には、鍵穴702に挿入された鍵Kの回動動作を第1摺動杆610又は第2摺動杆620に伝達するカム板720が固定されている。
【0123】
カム板720は、上下一対の上係合爪720a及び下係合爪720bを備えている。これらの係合爪720a,720bは、カム板720の回動方向に所定間隔を置いて形成されている。
【0124】
これに合わせて、第1摺動杆610の膨出部610aには、係合爪720a,720bが出入可能な上下一対の上係合孔725及び下係合孔726が形成されている。同様に、第2摺動杆620の上片部620aには、係合爪720a,720bが出入可能な上下一対の上係合孔727及び下係合孔728が形成されている。また、支持板603の膨出部603aには、係合爪720a,720bの動作を妨げないように透孔730が形成されている。
【0125】
第1摺動杆610の係合孔725,726及び第2摺動杆620の係合孔727,728は、第1摺動杆610の膨出部610a及び第2摺動杆620の上片部620aの重畳状態にあっては、少なくとも上係合孔725,727同士、及び、下係合孔726,728同士が連通状態となっている(図21参照)。
【0126】
なお、第1摺動杆610側では、両係合孔725,726のうち上方に位置する上係合孔725の方が、下係合孔726よりも、上下方向の形成区間が長めに設定されている。これに対し、第2摺動杆620側では、両係合孔727,728のうち下方に位置する下係合孔728の方が、上係合孔727よりも、上下方向の形成区間が長めに設定されている。これは、後述するように第1摺動杆610又は第2摺動杆620の一方をカム板720が摺動させる際に、他方に上係合爪720a又は下係合爪720bを接触させないようにして、他方を摺動させないようにするためである。
【0127】
上記構成のもと、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kが挿し込まれていない状態で、錠軸703及びカム板720が基準位置にある場合には、図21(a)に示すように、上係合爪720aの先端が、第1摺動杆610及び第2摺動杆620の上係合孔725,727に非挿通状態となるとともに、下係合爪720bの先端が、第1摺動杆610及び第2摺動杆620の下係合孔726,728に非挿通状態となる。
【0128】
また、第1摺動杆610には、下係合孔726の下縁部から前面扉12外方側へ向けて突出したストッパ部731が設けられている。このストッパ部731は、前面扉12の閉鎖状態において、第1摺動杆610がカム板720以外の力によって解錠方向(上方)に動かされた場合、例えば鍵Kを用いずに第1摺動杆610に対し線材等を不正に引っ掛けて、解錠方向への外力がかけられた場合に、カム板720の下係合爪720bに当接することにより、第1摺動杆610の解錠方向への摺動を阻止し、不正解錠を防止するものである。
【0129】
上述したように、本実施形態のシリンダ錠700は、鍵穴702に鍵Kの挿入がない場合には錠軸703及びカム板720を回動させることができない状態(ロック状態)となる。そのため、ストッパ部731がカム板720の下係合爪720bに引っ掛かった場合でも、カム板720は回動せず、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位は、遊び幅を除き実質的に規制される。従って、シリンダ錠700やストッパ部731などにより、本実施形態における鉤部規制手段が構成される。
【0130】
また、支持板603には、上側の鉤部材611の上方位置において可動係合部規制手段(規制部材)としてのロック部材660が設けられている。ロック部材660は、前面扉12の閉鎖状態において、不正な解錠操作による支持金具800側の受け金具803の摺動変位を規制し、当該受け金具803を基準位置に維持することによって、前面扉12の不正解錠を防止するためのものである。
【0131】
ロック部材660は、縦長で略平板状の本体片部660aを備えている。本体片部660aには、その上部に軸孔660bが形成されるとともに、下部にガイド孔660cが形成されている。ガイド孔660cは、軸孔660bを中心にとって略円弧状に形成されている。そして、前面扉12外方側からこれら軸孔660b,ガイド孔660cに対しそれぞれ差し込まれた軸ピン663,664が支持板603に固定されている。これにより、ロック部材660は、軸孔660b(軸ピン663)を中心として回動変位可能に軸支されている。
【0132】
本体片部660aの上部後縁には、前面扉12外方側へ向けて突出したフック部660dが設けられている。そして、このフック部660dに規制部材付勢手段としてのコイルばねC3の一端が掛けられるとともに、他端が、取付板602に設けられたフック部665に掛けられている。通常時、ロック部材660は、コイルばねC3の引張力により上部が前方へ引っ張られることにより、下部が後方へ付勢された状態となっている。この状態において、ロック部材660は、ガイド孔660cの前縁部が軸ピン664に当接した状態となり、図23に示すような基準姿勢をとる。この位置(状態)が本実施形態におけるロック部材660の第1位置(第1状態)に相当する。なお、ガイド孔660cの大きさ(形成範囲)は、少なくともロック部材660が、前記基準姿勢をとる位置から、後述するように受け金具803に押されて回動し、鉤部材611の頭部611bの上端部が受け金具803の係合部803fを越える位置まで変位可能な大きさとなっている。
【0133】
本体片部660aの下端部には、前面扉12外方側へ向けて突出したストッパ部660eが設けられている。後述するように、このストッパ部660eが支持金具800側の受け金具803の摺動変位を規制する機能を果たす。
【0134】
また、支持板603の後縁部には、ロック部材660に対応する位置において、前面扉12外方側へ向けて突出したリブ667が設けられている。このリブ667は、後述する開放検知スイッチ820に接触する被検知部としての機能を備えるとともに、基枠601内側への線材等の侵入を防ぎ、ロック部材660等に対する不正な解錠操作を防ぐ機能などを備えている。
【0135】
また、支持板603の下端部には、合成樹脂製のカバー部材670がネジ698により固定されている。カバー部材670は、その後端下部がR形状となっている。これは、前面扉12を筐体11に対して閉鎖する際に、支持板603が底板11bと衝突するのを防ぎ、前面扉12をスムーズに閉鎖させるための工夫である。
【0136】
次に支持金具800について図7〜図10及び図15〜図18を参照して詳細に説明する。図15は支持金具800の左側面図であり、図16は正面図であり、図17は右側面図であり、図18は背面図である。
【0137】
支持金具800は、筐体11の右側板11e内側に固定される取付部としての縦長の取付板801を備えている。
【0138】
取付板801の前縁部は、その略全域が筐体11外方側に向け屈曲形成されている。これは、前面扉12を筐体11に対して閉鎖する際に、施錠装置600が取付板801の前縁部に引っ掛かることなく、前面扉12をスムーズに閉鎖させるための工夫である。
【0139】
取付板801には、上記施錠装置600の鉤部材611,612と係合する上下一対の受け金具803,804が設けられている。
【0140】
受け金具803,804は、取付板801に当接状態で配設される略平板状の本体部803a,804aを備えている。受け金具803,804が本実施形態における可動係合部を構成する。
【0141】
本体部803a,804aは、縦長の縦片部803b,804bと、当該縦片部803b,804bの上端部から前方に向け延出した上片部803c,804cと、縦片部803b,804bの下端部から前方に向け延出した下片部803d,804dとを備えており、全体としては前方に向け凹となる側面視略コ字状に形成されている。
【0142】
縦片部803b,804bの略中央部にはガイド孔803e,804eが形成されている。ガイド孔803e,804eは、上下方向に延びる長孔状となっている。そして、筐体11内方側からガイド孔803e,804eに対しそれぞれ差し込まれた軸ピン805,806が取付板801に固定されている。これにより、受け金具803,804は上下方向に摺動可能となる。受け金具803,804の摺動範囲のうち、ガイド孔803e,804eの上縁部が軸ピン805,806に当接する位置が、本実施形態における係合部施錠側特定位置に相当し、ガイド孔803e,804eの下縁部が軸ピン805,806に当接する位置が係合部解錠側特定位置に相当する。
【0143】
縦片部803b,804bの前縁部には、筐体11内方側へ向け突出した係合部803f,804fが設けられている。この係合部803f,804fに鉤部材611,612が係止されることとなる。
【0144】
上片部803c,804cの前端部には、筐体11内方側へ向け突出した突起片803g,804gが設けられている。このうち、上側の受け金具803の突起片803gは、後述するように上記ロック部材660と係り合う作用部として機能することとなる。
【0145】
縦片部803b,804bの下部にはフック部803h,804hが設けられている。そして、このフック部803h,804hに可動係合部付勢手段としてのコイルばねC4,C5の一端が掛けられるとともに、他端が、取付板801に設けられたフック部807,808に掛けられている。コイルばねC4,C5の引張力により、通常時、受け金具803,804は下方へ付勢されている。
【0146】
また、取付板801には、受け金具803,804の下方位置において規制突起809,810が設けられている。従って、受け金具803,804は、通常時、下端部が規制突起809,810に当接した基準位置にて保持された状態となる(図15参照)。また、この状態では、ガイド孔803e,804eの上縁部が軸ピン805,806に当接した状態となっている。
【0147】
一方、取付板801の後縁部には、受け金具803,804及びコイルばねC4,C5に対応した上下方向所定区間において、筐体11内方側へ向け突出したフランジ部811,812が設けられている。これに対し、取付板801の前後方向略中央部には、係合部803f,804fに対応して、自身の一部を切欠くようにして筐体11内方側へ向け屈曲形成されたリブ813,814が設けられている。
【0148】
フランジ部811,812やリブ813,814gは、受け金具803,804の取付状態の安定性を高める機能とともに、受け金具803,804の摺動動作の安定性を高めるガイド部としての機能を備えている。従って、受け金具803,804は、フランジ部811,812やリブ813,814gにより前後方向(図15左右方向)への動きを規制され、かつ、軸ピン805,806との係合により左右方向(図16左右方向)への動きを規制されつつ、上下方向へ摺動できるようになっている。また、リブ813,814は、鉤部材611,612が係合部803f,804fに係合する際に当該係合部803f,804fを支える支持手段としての機能を備えている。つまり、リブ813,814により係合部分の剛性を高め、鉤部材611,612及び係合部803f,804fの係合状態、ひいては前面扉12の施錠状態の安定性を高めることができる。従って、本実施形態では、前記効果をより確実にするため、左右方向における鉤部材611,612の係合位置が、リブ813,814と係合部803f,804fとの重畳範囲内に収まるように設定されている。
【0149】
また、取付板801の後縁部には、上側の受け金具803の上方位置において、筐体11内方側へ向け突出した取付基部819が設けられている。この取付基部819には開放検知スイッチ820が取付けられている。
【0150】
開放検知スイッチ820は、スイッチ部820aが前方に向くように取付けられている。かかる構成により、前面扉12の閉鎖状態においては、このスイッチ部820aが施錠装置600側のリブ667に押圧されることによって、スイッチ本体内へ没入した状態となっている(図22参照)。一方、前面扉12が開放状態となった場合には、施錠装置600側のリブ667から離間することにより、スイッチ部820aがスイッチ本体から突出した状態となる(図15参照)。
【0151】
開放検知スイッチ820は、スイッチ部820aが突出状態にある場合にはオン信号を出力し、スイッチ部820aが没入状態にある場合にはオフ信号を出力する。つまり、前面扉12が開放状態となると、開放検知スイッチ820から主制御装置131に対しオン信号が出力される。主制御装置131は、このオン信号に基づいて、前面扉12の開放があった旨を把握する。
【0152】
次に、施錠装置600及び支持金具800の作用について詳しく説明する。図22に示すように施錠装置600及び支持金具800の施錠状態においては、第1摺動杆610が基準位置をとることにより、図23に示すように、鉤部材611,612が受け金具803,804の係合部803f,804fの背面側にて係止され、前面扉12の開放が規制されている。
【0153】
前面扉12が筐体11に施錠された状態では、上側の受け金具803の上方への摺動が、ロック部材660により規制されている。より詳しくは、受け金具803の突起片803gの直上に、ロック部材660のストッパ部660eが位置しており、これに接触することにより、受け金具803の上方への摺動が、遊び幅を除き実質的に規制される。つまり、受け金具803がロック部材660のストッパ部660eに当接する位置が、施錠状態における受け金具803の変位限度位置となる。
【0154】
また、前面扉12の閉鎖状態においては、上述したように、シリンダ錠700のカム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となっている。つまり、第1摺動杆610のストッパ部731が、シリンダ錠700のカム板720に当接した状態における鉤部材611の位置が、施錠状態における鉤部材611の変位限度位置となる。
【0155】
そして、前面扉12を開放する際には、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、スロットマシン10の正面側(図1参照)から見て時計回り方向に回動させる。この操作が本実施形態における特定の操作に相当する。これにより、カム板720が同方向に回動して、下係合爪720bが第1摺動杆610の下係合孔726の上縁部に接触する〔図21(b)参照〕。但し、図21(b)は、スロットマシン10の背面側から見た図であるため、カム板720の回動方向は反時計回り方向となっている。
【0156】
その後、さらにカム板720を回動させていくに従って、下係合爪720bがコイルばねC1の引張力に抗して第1摺動杆610を上方へ押し上げていく。この際、下係合爪720bが挿通された第2摺動杆620の下係合孔728の上部には、下係合爪720bが上方へ変位するスペースが確保されているため、第1摺動杆610を押し上げていく過程において、下係合爪720bが第2摺動杆620に当接せず、その動作が妨げられないようになっている。勿論、この場合、カム板720が第1摺動杆610を摺動させるため、ストッパ部731が作用することはない。
【0157】
第1摺動杆610が上方へ摺動すると、図24に示すように、鉤部材611,612が回動し、受け金具803,804の係合部803f,804fとの係合が解除される。つまり、鉤部材611,612と受け金具803,804とが非係合状態となる。これにより、施錠装置600及び支持金具800が解錠状態となり、前面扉12の開放が許容される。従って、鉤部材611,612の頭部611b,612bと、受け金具803,804の係合部803f,804fとの上下方向における相対変位量が、非係合状態となるのに必要な相対変位量である。
【0158】
また、前面扉12が開放された時点で、鍵Kを操作する手の力を緩めると、コイルばねC1の引張力により、第1摺動杆610は下方へ引き下げられ、基準位置に復帰する。これに伴い、カム板720及び錠軸703も基準位置に復帰する。
【0159】
上述したように、本実施形態では、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kが挿入されていない場合には、第1摺動杆610の摺動が規制されているが、開放状態にある前面扉12を施錠する際には、鍵Kを用いることなく施錠を行うことができるよう工夫されている。
【0160】
より詳しくは、図25に示すように、施錠装置600及び支持金具800が解錠状態となった前面扉12の開放状態から、当該前面扉12を閉じていくと、まず鉤部材611,612の頭部611b,612bの傾斜部611c,612cが受け金具803,804の係合部803f,804fの下辺に接触する(図26参照)。
【0161】
この際、上述したように第1摺動杆610ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制されているため、さらに前面扉12を閉じていくと、図27に示すように、鉤部材611,612はやや回動変位するものの大きくは回動変位せず、施錠状態における変位限度位置にて、やや回動した状態を維持する。このため、主として受け金具803,804がコイルばねC4,C5の引張力に抗して上方へ摺動することとなる。
【0162】
そして、上方へ摺動した上側の受け金具803は、図27に示すように、上片部803cの前端部の突起片803gがロック部材660のストッパ部660eに前方より接触する。これにより、ロック部材660は、受け金具803に押されて回動し、下部側が後方へ変位する。つまり、前面扉12を閉じていく際に、ロック部材660が邪魔にならない仕組みとなっている。なお、この位置(状態)が本実施形態におけるロック部材660の第2位置(第2状態)に相当する。
【0163】
その後、鉤部材611,612の頭部611b,612bが受け金具803,804の係合部803f,804fを越えると、コイルばねC4,C5の引張力により係合部803f,804fが係止凹部611a,612aに入り込むようにして、受け金具803,804が元の位置に戻り、鉤部材611,612の頭部611b,612bが受け金具803,804の係合部803f,804fに係止される(図23参照)。従って、この際、鉤部材611,612の頭部611b,612bと、受け金具803,804の係合部803f,804fとの上下方向における相対変位量が、頭部611b,612bが係合部803f,804fを乗り越えるのに必要な相対変位量、つまり前面扉12を閉鎖するのに必要な相対変位量である。
【0164】
受け金具803,804が元の位置に戻ると、ロック部材660も元の姿勢に戻り、ロック部材660のストッパ部660eが、受け金具803の上片部803cの突起片803gの直上位置に位置した状態となる。これにより、施錠が完了し、前面扉12の開放が規制された状態となるとともに、ロック部材660により受け金具803の上方への摺動が、遊び幅を除き実質的に規制された状態、つまりロックがかかった状態(ロック状態)となる。
【0165】
次にリセット操作について詳しく説明する。前面扉12の閉鎖状態においては、第2摺動杆620が基準位置をとることにより、上述したように第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間に入り込んだ状態となっている。
【0166】
そして、前面扉12の閉鎖状態においてリセット操作を行う際には、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、スロットマシン10の正面側から見て反時計回り方向に回動させる。これにより、カム板720が同方向に回動して、上係合爪720aが第2摺動杆620の上係合孔727の上縁部に接触する〔図21(c)参照〕。但し、図21(c)は、スロットマシン10の背面側から見た図であるため、カム板720の回動方向は時計回り方向となっている。
【0167】
その後、さらにカム板720を回動させていくに従って、上係合爪720aがコイルばねC2の引張力に抗して第2摺動杆620を下方へ押し下げていく。この際、上係合爪720aが挿通された第1摺動杆610の上係合孔725の下部には、上係合爪720aが下方へ変位するスペースが確保されているため、第2摺動杆620を押し下げていく過程において、上係合爪720aが第1摺動杆610に当接せず、その動作が妨げられないようになっている。
【0168】
第2摺動杆620が下方へ摺動すると、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出し、リセット検出センサ640がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、リセット操作があったことを把握することができる。これにより、例えばホッパーエラー等のエラー状態のリセットを、前面扉12を開放することなく行うことができる。
【0169】
そして、鍵Kを操作する手の力を緩めると、コイルばねC2の引張力により、第2摺動杆620は上方へ引き上げられ、基準位置に復帰する。これに伴い、カム板720及び錠軸703も基準位置に復帰する。
【0170】
一方、前面扉12の開放状態においては、第1突起片621を手動操作して、第2摺動杆620を下方へ摺動させることで上記同様のリセット操作を行うことができる。上述したように本スロットマシン10は各種データのバックアップ機能を有しており、万一停電が発生した際でも停電時の状態を保持し、停電からの復旧(復電)の際には停電時の状態に復帰できるようになっている。従って、遊技ホールの営業が終了する場合のように通常手順で電源を遮断すると遮断前の状態が記憶保持されるが、例えば第1突起片621を押しながら電源スイッチ122をオンすると、バックアップデータがリセットされるようになっている。
【0171】
以上詳述したように、本実施形態では、シリンダ錠700に鍵Kの挿入がない場合には、カム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となる。
【0172】
また、ロック部材660を備えることにより、前面扉12の閉鎖状態においては、受け金具803の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となる。
【0173】
これにより、施錠状態において、仮に線材等を用いて鉤部材611や受け金具803に対し直接外力を加え、当該鉤部材611や受け金具803を解錠方向へ変位させて両者の係合状態を不正に解除しようとしても、両者の係合状態が維持されるため、前面扉12の開放は許容されない。勿論、本実施形態では、施錠状態における変位限度位置まで両者を同時に変位させた場合でも、両者の係合状態が維持される構成となっているため、不正解錠に対する防御性能は非常に高い。
【0174】
さらに、ロック部材660は、鍵Kによる操作に応じたシリンダ錠700の動作に連動しない構成、つまり鉤部材611,612や第1摺動杆610などと連動しない構成であるため、仮に鍵Kを用いずに線材等によって鉤部材611,612や第1摺動杆610に対し不正操作が行われた場合でも、この応力がロック部材660に伝達されることはない。つまり、鉤部材611,612や第1摺動杆610等に対する不正操作だけでは、解錠状態とすることはできないため、不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。
【0175】
一方、鍵Kによりシリンダ錠700を操作することにより、鉤部材611,612が解錠方向へ変位し、当該鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が得られると、両者が非係合状態となり、前面扉12の開放が許容される。
【0176】
なお、上述したようにシリンダ錠700に鍵Kの挿入がない場合に鉤部材611,612の変位が規制される構成では、仮に受け金具803,804が固定されたものであると、鍵Kを用いずに前面扉12を閉じようとした場合、鉤部材611,612と受け金具803,804とが衝突し、その衝撃が比較的大きいため、当該鉤部材611,612や受け金具803,804の変形や破損等といった不具合が発生するおそれがある。この点、本実施形態では、受け金具803,804が変位する構成であるため、鉤部材611,612の変位が規制された状態にあっても、鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が確保されるため、上記不具合は発生しにくい。従って、前面扉12を閉鎖する際には、鍵Kを用いてシリンダ錠700を操作する必要がないため、利便性が高い。
【0177】
また、前面扉12を閉鎖する際には、鉤部材611,612及び受け金具803,804が接触してそれぞれ解錠方向へ変位することにより、前面扉12の閉鎖に必要な両者の相対変位量が得られるとともに、受け金具803の接触により自動的にロック部材660が状態変化し、鉤部材611及び受け金具803の係合後に元に戻る構成となっているため、前面扉12を閉鎖する際のさらなる利便性の向上が図られる。
【0178】
加えて、鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者が変位可能な構成となっていることにより、両者の接触時にこれら個々にかかる負荷を分散し低減することができる。結果として、鉤部材611,612等に変形や破損等の不具合が発生することを低減させることができる。一方のみを変位可能とした構成で、このような効果を得ようとした場合には、比較的付勢力の弱いコイルばねC1等を用いればよいが、この場合、線材等を用いた不正行為が行われると、鉤部材611,612等を解錠方向へ簡単に変位させられるおそれがある。この点、本実施形態によれば、個々のコイルばねとしては、ある程度、付勢力の強いものを用いつつも、鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者に負荷が分散されるため、個々にかかる衝撃力を緩和することができる。
【0179】
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0180】
(a)上記実施形態では、カム板720とストッパ部731との係合により施錠状態における鉤部材611,612の解錠方向への変位を規制したり、ロック部材660を備えることにより、施錠状態における受け金具803の解錠方向への変位を規制して、線材等を用いた不正な解錠操作によっては、鉤部材611及び受け金具803の係合が解除されない構成となっている。これに限らず、鉤部材611,612の変位を規制する規制手段、及び受け金具803の変位を規制する規制手段の少なくとも一方を省略した構成とすることも可能である。つまり、少なくとも鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者が変位可能な構成とするとともに、鍵Kを用いずに鉤部材611,612及び受け金具803,804の一方のみを解錠方向へ変位させただけでは、両者の係合状態が解除されない構成とすれば、線材等を用いた不正な解錠操作を行おうとした場合、鉤部材611,612と受け金具803,804とにそれぞれ引っ掛けた線材等を異なる方向に操作するといった複雑な操作を要するため、不正解錠操作が困難となる。結果として、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能は従来より格段に向上する。
【0181】
また、鍵Kを用いずに前面扉12を閉鎖する際には、少なくとも受け金具803,804が解錠側へ変位することで、前面扉12の閉鎖に必要な鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が得られればよい。しかし、受け金具803の変位を規制するロック部材660を省略した構成の場合には、受け金具803,804が施錠状態における変位限度位置にある場合でも、前面扉12の開放に必要な前記相対変位量が得られないようにしなければならないため、前面扉12を閉鎖する際には鉤部材611,612もある程度変位する必要がある。
【0182】
(b)鉤部材611,612の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、鉤部材611,612が第1摺動杆610に一体形成され、上下方向に摺動変位する構成を採用してもよい。
【0183】
(c)鉤部材611,612、受け金具803,804、及びこれらに対応するロック部材660の数は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0184】
例えば鉤部材611,612及び受け金具803,804を一対又は3対以上備えた構成としてもよい。
【0185】
また、上記実施形態では、上側の受け金具803のみに対応してロック部材660が設けられているが、下側の受け金具804にのみ対応して設けてもよいし、両受け金具803,804にそれぞれ対応して設けてもよい。不正解錠に対する防御性能の向上を図る上では、受け金具が複数ある場合には、それぞれに対応してロック部材660を設けることが好ましい。但し、少なくとも1つに対応して設けられていれば、不正解錠に対する防御性能を十分に発揮することはできる。特に上記実施形態のように上側の受け金具803に対応してロック部材660が設けられていれば、遊技ホール等において不正行為を行う際に、座席から立ち上がった状態で行う必要があるため、不正行為の抑止効果が高い。
【0186】
また、上記実施形態では、可動係合部規制手段(規制部材)としてのロック部材660を施錠装置600に設けているが、前面扉12や筐体11など、他の部位に設けた構成としてもよい。
【0187】
(d)受け金具803,804の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、受け金具803,804が、上下動するとともに回動変位可能な構成を採用してもよい。
【0188】
また、上記実施形態では、前面扉12を閉鎖する際に、受け金具803,804は鉤部材611,612に接触することにより、解錠方向へ変位する。これに限らず、例えば前面扉12の開閉に伴い、受け金具803,804が電気的駆動手段により変位する構成としてもよい。具体例としては、例えば開放検知スイッチ820や開放操作検知センサ630の検出結果に応じてソレノイド等を制御して、受け金具803,804を変位させる構成などが挙げられる。
【0189】
(e)ロック部材660の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、前面扉12を閉鎖する際に、受け金具803の接触により自動的にロック部材660が回動変位して、鉤部材611及び受け金具803の係合後に元に戻る構成となっている。これに対し、例えば略水平方向にスライド変位するロック部材を採用してもよい。また、受け金具803との接触により変位するのではなく、例えば前面扉12の開閉に伴い、電気的駆動手段により、受け金具803の変位を規制する第1状態と、鉤部材611及び受け金具803が係合状態となるのを許容する第2状態とに変化可能な構成としてもよい。具体例としては、例えば開放検知スイッチ820や開放操作検知センサ630の検出結果に応じてソレノイド等を制御して、ロック部材を変位させる構成などが挙げられる。また、このような構成を採用した場合には、鍵Kを用いない不正な解錠操作などによっては前記ソレノイドやロック部材などが変位しないように、当該ソレノイドやロック部材などの動きを規制する構成を備えることが好ましい。例えば、ソレノイドの励磁・非励磁により駆動するプランジャ又は当該プランジャに連動するリンク部材を介してのみロック部材が変位可能となり、ロック部材に線材等を引っ掛けてロック部材を不正に変位させようとした場合にはプランジャやリンク部材等により規制されロック部材が変位しない構成例が一例として挙げられる。さらに、前記プランジャやリンク部材に線材等を引っ掛けることができないようにソレノイドを覆うカバー部材などを設けることで不正行為に対する防御性能を高めることができる。
【0190】
(f)上記実施形態のシリンダ錠700は、鍵Kの挿入がない場合にはロック状態となり、カム板720が変位不能となる。そして、ロック状態にあるカム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が規制される。これに限らず、シリンダ錠700と異なるシリンダ錠を採用してもよい。例えば、鍵Kの非挿入状態でもカム板720が変位不能とならないシリンダ錠を採用してもよい。但し、この場合には、鍵Kを用いずに鉤部材611,612や第1摺動杆610に対して直接行われる不正な解錠操作に対して防御制御を高めるため、鉤部材611,612又は第1摺動杆610の変位を規制する他の規制手段を備えることが好ましい。勿論、受け金具803,804との兼ね合いによっては、規制手段を設けることなく、施錠時において、鍵Kを用いない不正な解錠操作が行われた場合でも受け金具803,804との係合状態が解除されない構成とすることができる。
【0191】
勿論、錠部材はシリンダ錠に限定されるものではなく、この他、カードキーのような鍵を用いて操作されるものであってもよい。
【0192】
(g)上記実施形態では、スロットマシン10について具体化した例を示したが、パチンコ機や、スロットマシンとパチンコ機とを融合した形式の遊技機など他の遊技機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0193】
10…スロットマシン、11…筐体、12…前面扉、600…施錠装置、610…第1摺動杆、611,612…鉤部材、660…ロック部材、700…シリンダ錠、800…支持金具、803,804…受け金具、803f,804f…係合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン等の遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遊技機の一種として例えばスロットマシンがある。一般に、スロットマシンは、前面が開放された箱状の筐体と、当該筐体の前面側に開閉可能に枢支された前扉とを備え、この内部に、図柄の付された複数のリールよりなる可変表示装置や、遊技制御を行う制御装置、メダルを払い出すホッパ装置などが収容されている。
【0003】
一般にスロットマシン等の遊技機では、メンテナンス等の観点から前扉(扉体)が筐体(支持部材)に対し開閉可能に設けられている。そのため、店員以外の者が無断で前扉を開放できないように、遊技機には施錠装置が設けられている。かかる施錠装置としては、専用の鍵を用いて操作されるシリンダ錠と、筐体に設けられた複数の被係止部に対しそれぞれ係脱可能に設けられた複数の鉤部材と、鍵によるシリンダ錠の解錠操作に応じて複数の鉤部材を連動させる摺動杆とを備えたものが知られている。そして、施錠状態では各鉤部材がそれぞれ対応する被係止部に係合することで前扉が筐体に対し開放不能となる。他方、専用の鍵でシリンダ錠を解錠操作することにより摺動杆を介して各鉤部材が被係止部から同時に離脱し、前扉が開放可能となる。
【0004】
近年、遊技ホールでは、例えば営業中に前扉を不正に解錠し、筐体内側に設けられた制御機器を不正に操作したり交換する等して、多くの遊技媒体を獲得する不正行為が行われることもある。このような不正解錠は、通常、前扉と筐体との隙間から針金等の線材を差込み、当該線材を施錠装置の鉤部材に引っ掛けて解錠方向に動かすことにより行われる。いずれか1つの鉤部材に対して不正な解錠操作が行われると、その動作が摺動杆を介して他の鉤部材に伝達され、全鉤部材が連動して被係止部から離脱し、前扉が開放可能となる。
【0005】
これに対し、例えば、いずれか1つの鉤部材に対して不正な解錠操作が行われた場合に、当該不正解錠操作に応じた鉤部材の動作が、不正解錠操作されていない他の鉤部材に伝達されるのを防止する機構を備えたものもある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−288214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、複数の鉤部材が上下に離れて設けられている。つまり、上述した不正解錠操作を行おうとした場合に線材を引っ掛ける複数の対象が離れた位置関係となる。このため、複数の鉤部材に対して線材を引っ掛けることが比較的容易に行われ、複数の鉤部材を同時に解錠方向へ変位させて、前扉を解錠されてしまうおそれがあった。
【0008】
尚、かかる課題は、スロットマシン等の回胴遊技機に限らず、パチンコ機など、扉体と支持部材とを施錠する施錠機構を備えた他の遊技機にも該当する問題である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能に優れた遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0011】
手段1.支持部材に対し開閉可能に支持された扉体と、
前記支持部材に対し前記扉体を施錠する施錠機構とを備えた遊技機であって、
前記施錠機構は、
前記支持部材又は前記扉体の一方に設けられた施錠装置と、他方に設けられた被係合手段とを備え、
前記施錠装置が、
鍵により操作される錠部材と、
前記錠部材の動作に連動して、少なくとも鉤部施錠側特定位置と鉤部解錠側特定位置との間で変位可能な鉤部とを備え、
前記被係合手段が、
少なくとも係合部施錠側特定位置と係合部解錠側特定位置との間で変位可能な可動係合部を備え、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となることにより、前記扉体の開放が規制される施錠状態となり、
前記鉤部と前記可動係合部とが非係合状態となることにより、前記扉体の開放が許容される解錠状態となる構成であって、
前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となることにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態において、前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、少なくとも前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記非係合状態になるのに必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態で、かつ、前記鍵による前記錠部材の特定の操作がない状態において、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部施錠側特定位置にある場合には、前記鉤部のみが前記鉤部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該鉤部の変位限度位置まで達した場合でも、当該鉤部及び前記可動係合部の係合状態が維持され、
少なくとも前記鉤部が前記鉤部施錠側特定位置にある場合には、前記可動係合部のみが前記係合部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該可動係合部の変位限度位置まで達した場合でも、当該可動係合部及び前記鉤部の係合状態が維持されることを特徴とする遊技機。
【0012】
上記手段1によれば、施錠状態においては、鍵を用いずに鉤部及び可動係合部の一方のみを解錠方向へ変位させただけでは、両者の係合状態が解除されず、扉体の開放が許容されない。一方、鍵により錠部材を操作することにより、少なくとも鉤部が解錠方向へ変位し、当該鉤部及び可動係合部が所定量以上相対変位した場合には、両者が非係合状態となり、扉体の開放が許容される。従って、仮に線材等を用いて鉤部や可動係合部を解錠方向へ変位させて、両者の係合状態を不正に解除しようとした場合には、一箇所で係合し合っている鉤部と可動係合部とに線材等をそれぞれ引っ掛けるといった複雑な操作や、当該引っ掛けた線材等を異なる方向に操作するといった複雑な操作を要するため、不正解錠操作が困難となる。結果として、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。また、鍵を用いずに扉体を閉鎖する際には、少なくとも可動係合部が解錠方向へ変位することにより、扉体の閉鎖に必要な鉤部及び可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られる。つまり、鉤部が変位しなくとも可動係合部が変位することにより、扉体を閉鎖することができる。換言すれば、鍵を用いずとも(少なくとも上記特定の操作を行わずとも)扉体を閉鎖することができ、利便性が高い。
【0013】
なお、以下の手段においても同様であるが、鉤部及びこれに対応する可動係合部の数は1つに限定されるものではなく、これらを複数備えた構成としてもよい。
【0014】
また、錠部材の例としては、鍵が挿入されて回動操作されるシリンダ錠などが挙げられる。この場合、鍵により操作される作動部は、回動可能に設けられた錠軸や、当該錠軸に固定された係合片(カム板)等から構成されることとなる。勿論、錠部材はシリンダ錠に限定されるものではなく、この他、カードキーのような鍵を用いて操作されるものであってもよい。
【0015】
また、構成によっては、鉤部又は可動係合部の「変位限度位置」が「鉤部解錠側特定位置」又は「係合部解錠側特定位置」と同一位置となる場合もある。
【0016】
また、鉤部及び可動係合部の「非係合状態」とは、扉体を開閉方向に動かした場合に、鉤部及び可動係合部が接触しない位置関係、又は接触しつつも扉体を開放可能な位置関係にある状態を指す。つまり、扉体の開閉に必要な鉤部及び可動係合部の「所定量以上の相対変位量」とは、両者がそれぞれ自身の施錠側特定位置に位置した状態(係合状態)から非係合状態に達するまでの所定量以上の相対変位量を指す。例えば、扉体の開閉方向である前後方向に対し鉤部及び可動係合部が係り合うとともに、扉体の開閉に際し、鉤部及び可動係合部の係り合う部位がそれぞれ少なくとも上下方向(扉体の開閉方向に直交する方向)へ変位するような構成においては、両者が係合状態から非係合状態に達するまでの上下方向における所定量以上の相対変位量が上記「所定量以上の相対変位量」に相当することとなる。
【0017】
手段2.前記施錠状態において前記鉤部の前記変位限度位置よりも前記鉤部解錠側特定位置側への変位を規制する鉤部規制手段を備え、
前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、前記鉤部規制手段による規制が解除されることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
【0018】
上記手段2によれば、上記鉤部規制手段を備えることにより、比較的簡単に上記手段1の構成を実現することができる。つまり、鍵を用いて解錠操作を行った場合には、その操作に応じて鉤部が所定量以上変位することにより、係合部施錠側特定位置にある可動係合部と所定量以上の相対変位量が得られ、扉体の開放が許容される。一方、鍵を用いずに線材等によって鉤部に対し直接外力が加えられた場合、すなわち不正な解錠操作が行われた場合には、鉤部の所定量以上の変位が規制され、当該鉤部と可動係合部との係合状態が維持されるため、扉体の開放は許容されない。
【0019】
なお、上記鉤部規制手段を備えた構成では、鍵を用いずに扉体を閉じようとした場合、被係合手段(係合部)が固定されたものであると、鉤部と被係合手段とが衝突し、その衝撃が比較的大きいため、当該鉤部や被係合手段の変形や破損等といった不具合が発生するおそれがある。この点、本手段では、可動係合部が変位する構成となっていることにより、鉤部の変位が規制された状態にあっても、鉤部と可動係合部との所定量以上の相対変位量が確保されるため、上記不具合は発生しにくい。従って、扉体を閉鎖する際に、専用の鍵を用いた施錠操作を行う必要もなく、利便性が向上する。例えば、鉤部の先端が略三角形状に先細りしており、扉体を閉じていくと、先ず鉤部の傾斜部位が可動係合部に接する。さらに扉体を閉じていくことで、コイルばね等の付勢手段の付勢力に抗して可動係合部が解錠方向へ変位する。そして、鉤部が可動係合部を乗り越えると、可動係合部は付勢手段の付勢力により元の位置に戻り、鉤部と係合状態となり、施錠状態となる。
【0020】
手段3.前記施錠装置は、前記錠部材の動作を前記鉤部に伝達する伝達部材を備え、
前記錠部材に鍵の挿入がない場合には、当該錠部材の作動部が所定量以上変位不能となり、当該作動部により前記伝達部材の所定量以上の変位が規制され、当該伝達部材により前記鉤部の前記変位限度位置よりも前記鉤部解錠側特定位置側への変位が規制されることを特徴とする手段1に記載の遊技機。
【0021】
上記手段3によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏される。例えばシリンダ錠に鍵が挿し込まれないと、シリンダ錠のロック状態が解除されず、シリンダ錠のカム板等に係合した伝達部材ひいては鉤部が所定量以上変位不能な状態に維持される構成などが一例に挙げられる。なお、伝達部材により鉤部の変位が規制される構成には、例えば伝達部材と鉤部とが一体形成され、これにより伝達部材の変位が規制された場合には、鉤部が変位しない構成なども含まれる。
【0022】
手段4.前記施錠状態において前記可動係合部の前記変位限度位置よりも前記係合部解錠側特定位置側への変位を規制する可動係合部規制手段を備えていることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載の遊技機。
【0023】
上記手段4によれば、可動係合部規制手段を備えることにより、比較的簡単に上記手段1の構成を実現することができる。つまり、鍵を用いずに線材等によって可動係合部に対し直接外力が加えられた場合、すなわち不正な解錠操作が行われた場合には、可動係合部の所定量以上の変位が規制され、当該可動係合部と鉤部との係合状態が維持されるため、扉体の開放は許容されない。なお、上記鉤部規制手段と可動係合部規制手段の両方を備えた構成では、不正解錠操作がより困難となるため、両者の相乗効果により不正解錠に対するさらなる防御性能の向上を図ることができる。
【0024】
手段5.前記可動係合部規制手段は、
前記施錠状態において前記可動係合部の変位を規制する第1状態と、
少なくとも前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際に、前記鉤部及び前記可動係合部が係合状態となるのを許容する第2状態とに可変であることを特徴とする手段4に記載の遊技機。
【0025】
上記手段5によれば、可動係合部規制手段に邪魔されることなく、スムーズに扉体の閉鎖作業を行うことができ、利便性が向上する。
【0026】
手段6.前記可動係合部規制手段は、
第1位置と第2位置との間で変位可能な規制部材と、
前記規制部材を前記第1位置側へ付勢する規制部材付勢手段とを備え、
前記規制部材が前記第1位置をとることにより前記第1状態となり、
前記規制部材が前記第2位置をとることにより前記第2状態となる構成であって、
前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位するとともに、
前記規制部材は、
前記係合部解錠側特定位置側へ変位した前記可動係合部が接触することにより、前記規制部材付勢手段の付勢力に抗して前記第2位置側へ変位し、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となった際には、前記可動係合部と非接触状態となり、前記第1位置へ戻ることを特徴とする手段5に記載の遊技機。
【0027】
上記手段6によれば、扉体を閉じることにより、自動的に可動係合部規制手段が状態変化し、鉤部及び可動係合部が係合状態となるのが許容されるとともに、両者が係合した際には、可動係合部の変位が規制された状態となる。従って、扉体を閉じる際に、何らか特殊な操作を行う必要もなく、利便性の向上が図られる。なお、このような作用効果は、上記手段6の「前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位する」構成に代えて、「前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位しつつ、前記鉤部と前記可動係合部とが接触する」構成としても同様に得られる。
【0028】
手段7.前記可動係合部規制手段は、前記鍵による操作に応じた前記錠部材の動作に連動しない構成であることを特徴とする手段4乃至6のいずれかに記載の遊技機。
【0029】
上記手段7によれば、可動係合部規制手段が錠部材の動作に連動しない構成、つまり上記鉤部や伝達部材などと連動しない構成であるため、仮に鍵を用いずに線材等によって鉤部や伝達部材に対し不正操作が行われた場合でも、この応力が可動係合部規制手段に伝達されない。つまり、鉤部や伝達部材等に対する不正操作だけでは、解錠状態とすることはできないため、不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。なお、可動係合部規制手段が錠部材の動作に連動しない構成は、可動係合部規制手段が上記鉤部や伝達部材などと係り合うことなく離間して設けられることにより実現できる。
【0030】
手段8.前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となるとともに、前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の遊技機。
【0031】
仮に鍵を用いずに扉体を支持部材に対し閉鎖する際に可動係合部及び鉤部の一方のみが自身の解錠側特定位置側へ変位する構成によって、上記手段1等に記載の構成を実現しようとした場合、施錠機構の構成が複雑化してしまうおそれもあるが、可動係合部及び鉤部の両者をそれぞれ変位させる手段8の構成とすることにより、施錠機構の簡素化を図ることができる。
【0032】
手段9.前記鉤部を前記鉤部施錠側特定位置側へ付勢する鉤部付勢手段と、前記可動係合部を前記係合部施錠側特定位置側へ付勢する可動係合部付勢手段とを備え、
前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、前記鉤部と前記可動係合部とが接触することにより、前記鉤部及び前記可動係合部の両者が、それぞれ自身の前記解錠側特定位置側へ変位することを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載の遊技機。
【0033】
上記手段9によれば、上記手段8と同様の作用効果に加え、鉤部と可動係合部との接触時に、これら個々にかかる負荷を分散し低減することができる。結果として、鉤部等に変形や破損等の不具合が発生することを低減させることができる。一方のみを変位可能とした構成で、このような効果を得ようとした場合には、比較的付勢力の弱い付勢手段を用いればよいが、この場合、上述したような不正行為が行われると、鉤部や可動係合部を自身の解錠側特定位置側へ簡単に変位させられるおそれがある。この点、本手段によれば、個々の付勢手段としては、ある程度、付勢力の強いものを用いつつも、両者に負荷が分散されるため、個々にかかる衝撃力を緩和することができる。
【0034】
以下に、上記各手段が適用される各種遊技機の基本構成を示す。
【0035】
A.上記各手段における前記遊技機は弾球遊技機であること。より詳しい態様例としては、「遊技者が操作する操作手段(遊技球発射ハンドル)と、当該操作手段の操作に基づいて遊技球を弾いて発射する発射手段(発射モータ等)と、当該発射された遊技球が案内される遊技領域と、前記遊技領域内に配置された各入球手段(一般入賞口、可変入賞装置、作動口等)とを備えた弾球遊技機」が挙げられる。
【0036】
B.上記各手段における前記遊技機は略鉛直方向に延びる遊技領域を備えた弾球遊技機であること。より詳しい態様例としては、「遊技者が操作する操作手段(遊技球発射ハンドル)と、当該操作手段の操作に基づいて遊技球を弾いて発射する発射手段(発射モータ等)と、当該発射された遊技球が案内され、略鉛直方向に沿って延びる所定の遊技領域(例えば遊技領域は遊技盤面等により構成される)と、前記遊技領域内に配置された各入球手段(一般入賞口、可変入賞装置、作動口等)とを備え、前記遊技領域を流下する遊技球の挙動を視認可能に構成されてなる弾球遊技機」が挙げられる。
【0037】
C.上記各手段における前記遊技機、又は、上記各弾球遊技機は、パチンコ機又はパチンコ機に準ずる遊技機であること。
【0038】
D.上記各手段における遊技機は、スロットマシン等の回胴式遊技機であること。より詳しい態様例としては、「複数の識別情報(図柄)からなる識別情報列(図柄列;具体的には図柄の付されたリール、ベルト等の回転体)を変動表示(具体的にはリール等の回転)した後に識別情報列を停止表示する可変表示手段(具体的にはリールユニット等の回転体ユニット)を備え、始動用操作手段(具体的にはスタートレバー)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が開始され、停止用操作手段(具体的にはストップボタン)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が停止され、その停止時に有効ライン上に揃った識別情報が特定の識別情報であることを条件に遊技価値が付与されるよう構成した回胴式遊技機」が挙げられる。
【0039】
E.上記各手段における遊技機は、スロットマシンとパチンコ機とを融合した形式の遊技機(特に遊技球を遊技媒体として使用するスロットマシン仕様の遊技機)であること。より詳しい態様例としては、「複数の識別情報(図柄)からなる識別情報列(図柄列;具体的には図柄の付されたリール、ベルト等の回転体)を変動表示(具体的にはリール等の回転)した後に識別情報列を停止表示する可変表示手段(具体的にはリールユニット等の回転体ユニット)を備え、始動用操作手段(具体的にはスタートレバー)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が開始され、停止用操作手段(具体的にはストップボタン)の操作に起因して識別情報(図柄)の変動が停止され、その停止時に有効ライン上に揃った識別情報が特定の識別情報であることを条件に遊技価値が付与されるよう構成し、さらに球受皿(上皿等)を設けてその球受皿から遊技球を取り込む取込手段と、前記球受皿に遊技球の払出しを行う払出手段とを備え、前記取込手段により遊技球が取り込まれることにより遊技の開始条件が成立するように構成した遊技機」が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態におけるスロットマシンの正面図。
【図2】前面扉を閉じた状態を示すスロットマシンの斜視図。
【図3】前面扉を開いた状態を示すスロットマシンの斜視図。
【図4】前面扉を開いた状態を示すスロットマシンの正面図。
【図5】各リールを構成する帯状ベルトの展開図。
【図6】スロットマシンのブロック回路図。
【図7】施錠装置及び支持金具を背面左側から見た斜視図である。
【図8】施錠装置及び支持金具を正面左側から見た斜視図である。
【図9】施錠装置及び支持金具を背面左側から見た分解斜視図である。
【図10】施錠装置及び支持金具を背面右側から見た分解斜視図である。
【図11】施錠装置の背面図である。
【図12】施錠装置の右側面図である。
【図13】施錠装置の正面図である。
【図14】施錠装置の左側面図である。
【図15】支持金具の左側面図である。
【図16】支持金具の正面図である。
【図17】支持金具の右側面図である。
【図18】支持金具の背面図である。
【図19】鍵の非挿入時におけるシリンダ錠を示す断面図である。
【図20】鍵の挿入時におけるシリンダ錠を示す断面図である。
【図21】(a)〜(c)は、カム板の動きを説明するための図である。
【図22】施錠状態にある施錠装置及び支持金具の側面図である。
【図23】施錠状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図24】解錠状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図25】扉体の開放状態における鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図26】扉体を閉鎖する際の鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【図27】扉体を閉鎖する際の鉤部材、受け金具及びロック部材等を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、遊技機の一種である回胴式遊技機、具体的にはスロットマシンに適用した場合の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はスロットマシン10の正面図、図2は前面扉12を閉じた状態のスロットマシン10の斜視図、図3は前面扉12を開いた状態のスロットマシン10の斜視図、図4は前面扉12を開いた状態のスロットマシン10の正面図である。
【0042】
図1〜図4に示すように、スロットマシン10は、その外殻を形成する支持部材としての筺体11を備えている。筐体11は、木製板状に形成された天板11a、底板11b、背板11c、左側板11d及び右側板11eからなり、隣接する各板11a〜11eが接着等の固定手段によって固定されることにより、全体として前面を開放した箱状に形成されている。なお、各板11a〜11eは木製のパネルによって構成する以外に、合成樹脂製パネル又は金属製パネルによって構成してもよいし、合成樹脂材料又は金属材料によって一体の箱状に形成することによって構成してもよい。以上のように構成された筺体11は、遊技ホールへの設置の際にいわゆる島設備に対し釘を打ち付ける等して取り付けられる。
【0043】
筺体11の前面側には、扉体としての前面扉12が設けられている。前面扉12は、筺体11の左側板11dに設けられた上下一対のヒンジ機構25a、25bにより開閉可能に取り付けられている。これにより、前面扉12は筺体11に対してヒンジ機構25a、25bを結ぶ上下方向へ延びる開閉軸線を中心として回動可能に支持され、その回動によって筺体11の前面開放側を開放したり閉鎖することができるように構成されている。
【0044】
また、前面扉12は、その裏側に設けられた施錠装置600と、筐体11側に設けられた被係合手段としての支持金具800とによって開放不能な状態とされる。これら施錠装置600と支持金具800とからなる施錠機構の詳細は後述する。
【0045】
前面扉12の中央部上寄りには、遊技者に遊技状態を報知する遊技パネル30が設けられている。遊技パネル30には、縦長の3つの表示窓31L,31M,31Rが横並びとなるように形成されている。表示窓31L,31M,31Rは透明又は半透明な材質により構成されており、各表示窓31L,31M,31Rを通じてスロットマシン10の内部が視認可能な状態となっている。なお、各表示窓31L,31M,31Rを1つにまとめて共通の表示窓としてもよい。
【0046】
図3,4に示すように、筺体11は仕切り板40によりその内部が上下2分割されており、仕切り板40の上部には、可変表示手段を構成するリールユニット41が取り付けられている。
【0047】
リールユニット41は、円筒状(円環状)にそれぞれ形成された回転体としての左リール42L,中リール42M,右リール42Rを備えている。各リール42L,42M,42Rは、その中心軸線が当該リールの回転軸線となるように回転可能に支持されている。各リール42L,42M,42Rの回転軸線は略水平方向に延びる同一軸線上に配設され、それぞれのリール42L,42M,42Rが各表示窓31L,31M,31Rと1対1で対応している。従って、各リール42L,42M,42Rの表面の一部はそれぞれ対応する表示窓31L,31M,31Rを通じて視認可能な状態となっている。各リール42L,42M,42Rの外周面には帯状のベルトが巻かれており、このベルトの外周面には、識別情報としての図柄が等間隔ごとに多数印刷されている。そして、リール42L,42M,42Rが正回転すると、各表示窓31L,31M,31Rを通じてリール42L,42M,42Rの表面は上から下へ向かって移動しているかのように映しだされる。
【0048】
なお、これら各リール42L,42M,42Rは、それぞれが駆動手段としてのステッピングモータ61L,61M,61R(図6参照)に連結されており、各ステッピングモータ61L,61M,61Rの駆動により各リール42L,42M,42Rが個別に、即ちそれぞれ独立して回転駆動し得る構成となっている。そして、各ステッピングモータ61L,61M,61Rの駆動軸が回転することによりその駆動軸を中心として各リール42L,42M,42Rが自転するように回転する。
【0049】
また、リールユニット41には、リールインデックスセンサ55L,55M,55R(図6参照)が設置されている。本実施形態では、各リールインデックスセンサ55L,55M,55Rとして、発光素子と受光素子とが所定間隔をおいて保持された透過型フォトセンサが採用されている。そして、各リールインデックスセンサ55L,55M,55Rは、各リール42L,42M,42Rがほぼ1周するごとに図示しないセンサカットバンが両素子間を通過するのを検出し、その都度、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて各リール42L,42M,42Rの回転位置をほぼ1周するごとに確認し補正できる。
【0050】
例えば、本実施形態では、ステッピングモータ61L,61M,61Rは504パルスの駆動信号(励磁信号あるいは励磁パルスとも言う。以下同じ)を与えることにより1回転されるように設定されている。つまり、7パルスの駆動信号で各リール42L,42M,42Rが5°角度変化するというように、駆動信号の数に応じた回転量で各リール42L,42M,42Rを回転させるように構成されている。さらに、この駆動信号によってステッピングモータ61L,61M,61Rの回転位置、すなわち各リール42L,42M,42Rの回転位置が制御される。
【0051】
上述した各リール42L,42M,42Rの各ベルト上には、その長辺方向(周回方向)に複数個、具体的には21個の図柄が描かれている。従って、所定の位置においてある図柄から次の図柄へ切り替えるには24パルス(=504パルス÷21図柄)を要する。そして、各リール42L,42M,42Rの回転位置が検出された時点からのパルス数により、どの図柄が各表示窓31L,31M,31Rから視認可能な状態となっているかを認識したり、任意の図柄を各表示窓31L,31M,31Rから視認可能な状態としたりする制御を行うことができる。
【0052】
各リール42L,42M,42Rに付された図柄のうち、表示窓31L,31M,31Rを介して全体を視認可能な図柄数は、主として表示窓31L,31M,31Rの上下方向の長さによって決定される所定数に限られている。本実施形態では各リール3個ずつとされている。このため、各リール42L,42M,42Rがすべて停止している状態では、3×3=9個の図柄が遊技者に視認可能な状態となる。
【0053】
ここで、各リール42L,42M,42Rに付される図柄について説明する。図5には、左リール42L,中リール42M,右リール42Rのそれぞれに巻かれるベルトに描かれた図柄配列が示されている。同図に示すように、各リール42L,42M,42Rにはそれぞれ21個の図柄が一列に設けられている。各リール42L,42M,42Rに対応して番号が1〜21まで付されているが、これは説明の便宜上付したものであり、リール42L,42M,42Rに実際に付されているわけではない。但し、以下の説明では当該番号を使用して説明する。
【0054】
図柄としては、ビッグボーナスゲームに移行するための第1特別図柄としての「赤7」図柄(例えば、左ベルト第20番目)と「白7」図柄(例えば、左ベルト第19番目)とがある。また、レギュラーボーナスゲームに移行するための第2特別図柄としての「BAR」図柄(例えば、左ベルト第14番目)がある。また、リプレイゲームに移行するための第3特別図柄としての「リプレイ」図柄(例えば、左ベルト第11番目)がある。また、小役の払出が行われる小役図柄としての「スイカ」図柄(例えば、左ベルト第9番目)、「ベル」図柄(例えば、左ベルト第8番目)、「チェリー」図柄(例えば、左ベルト第4番目)がある。そして、図5に示すように、各リール42L,42M,42Rに巻かれるベルトにおいて、各種図柄の数や配置順序は全く異なっている。
【0055】
遊技パネル30には、各表示窓31L,31M,31Rを結ぶようにして、横方向へ平行に3本、斜め方向へたすき掛けに2本、計5本の組合せラインが付されている。勿論、最大組合せライン数を6以上としてもよく、5未満としてもよく、所定条件に応じて最大組合せライン数を変更するようにしてもよい。これら各組合せラインに対応して、表示窓31L,31M,31R群の正面から見て左側には有効ライン表示部32,33,34が設けられている。第1有効ライン表示部32は組合せラインのうち中央の横ライン(中央ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第2有効ライン表示部33は組合せラインのうち上下の横ライン(上ライン及び下ライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。第3有効ライン表示部34は組合せラインのうち一対の斜めライン(右下がりライン及び右上がりライン)が有効化された場合に点灯等によって表示報知される。そして、有効化された組合せライン、すなわち有効ライン上に図柄が所定の組合せで停止した場合に入賞となり、予め定められたメダル払出処理や特定遊技への移行処理などが実行される。
【0056】
ここで、入賞となった場合の各図柄に関する払出枚数について説明する。小役図柄に関し、「スイカ」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、「ベル」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合には8枚のメダル払出、左リール42Lの「チェリー」図柄が有効ライン上に停止した場合には2枚のメダル払出が行われる。即ち、中リール42M及び右リール42Rの「チェリー」図柄はメダル払出と無関係である。また、「チェリー」図柄に限っては、他の図柄との組合せとは無関係にメダル払出が行われるため、左リール42Lの複数の有効ラインが重なる位置(具体的には上段又は下段)に「チェリー」図柄が停止した場合には、その重なった有効ラインの数を乗算した分だけのメダル払出が行われることとなり、結果として本実施の形態では4枚のメダル払出が行われる。
【0057】
また、その他の図柄に関しては、第1特別図柄(ビッグボーナス図柄)の組合せである「赤7」図柄又は「白7」図柄が同一図柄にて有効ライン上に左・中・右と揃った場合には15枚のメダル払出、第2特別図柄(レギュラーボーナス図柄)の組合せである「BAR」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合にも15枚のメダル払出が行われる。なお、本実施形態においては、例えば「赤7」図柄と「チェリー」図柄とが同時に成立する場合が生じ得るが、かかる場合におけるメダル払出は15枚である。これは、1回のメダル払出における上限枚数が15枚に設定されているためである。
【0058】
更に、第3特別図柄の組合せである「リプレイ」図柄が有効ライン上に左・中・右と揃った場合にはメダル払出は行われない。その他の場合、即ち有効ライン上に左リール42Lの「チェリー」図柄が停止せず、また有効ライン上に左・中・右と同一図柄が揃わない場合には、一切メダル払出は行われない。
【0059】
ここで本実施形態におけるボーナスゲームについて説明する。レギュラーボーナス(以下「RB」という)ゲームは、12回のJACゲームで構成さえている。JACゲームは、1枚ベットのみ許されるゲームであり、JAC図柄(ここではリプレイ図柄で代用)が有効ライン上に揃う確率つまりJAC図柄成立の確立が非常に高いゲームである。JACゲームでJAC図柄が成立すると最大枚数(ここでは15枚)のメダルが払い出される。そして、JAC図柄が8回成立すると、JACゲームが12回に達する前であってもRBゲームが終了する。一方、ビッグボーナス(以下「BB」という)ゲームは、30回の小役ゲームと3回のJACインとから構成されている。小役ゲームとは高確率で小役が当選する(有効ライン上に「ベル」図柄などが揃う)ゲームであり、JACインとは12回のJACゲームに突入することを意味し、小役ゲーム中にJAC図柄が有効ライン上に揃うとJACインが成立する。JACゲームはRBゲームの場合と同様である。また、3回目のJACインによるJACゲームが終了すると小役ゲームが30回に達する前であってもBBゲームは終了し、30回の小役ゲームが終了するとJACインが3回に達する前であってもBBゲームは終了する。ボーナスゲームの形態は上記形態に限定されるものではなく、異なる形態であってもよい。
【0060】
さて、遊技パネル30の下方左側には、各リール42L,42M,42Rを一斉(同時である必要はない)に回転開始させるために操作されるスタートレバー71が設けられている。スタートレバー71はリール42L,42M,42Rを回転開始、すなわち可変表示を開始させるべく操作される始動操作手段を構成する。スタートレバー71は、遊技者がゲームを開始するときに手で押し操作するレバーであり、手が離れたあと元の位置に自動復帰する。メダルが投入されているときにこのスタートレバー71が操作されると、各リール42L,42M,42Rが一斉に回転を始める。
【0061】
スタートレバー71の右側には、回転している各リール42L,42M,42Rを個別に停止させるために操作されるボタン状のストップスイッチ72,73,74が設けられている。各ストップスイッチ72,73,74は停止対象となるリール42L,42M,42Rに対応する表示窓31L,31M,31Rの略直下にそれぞれ配置されている。ストップスイッチ72,73,74はリール42L,42M,42Rの回転に基づく可変表示を停止させるべく操作される停止操作手段を構成する。各ストップスイッチ72,73,74は、左リール42Lが回転を開始してから所定時間が経過すると停止させることが可能な状態となり、かかる状態中には図示しないランプが点灯表示されることによって停止操作が可能であることが報知され、回転が停止すると消灯されるようになっている。
【0062】
表示窓31L,31M,31Rの下方右側には、メダルを投入するためのメダル投入口75が設けられている。メダル投入口75から投入されたメダルは、前面扉12の背面に設けられた通路切替手段としてのセレクタ84によって貯留用通路81か排出用通路82のいずれかへ導かれる。すなわち、セレクタ84にはメダル通路切替ソレノイド83(図6参照)が設けられ、そのメダル通路切替ソレノイド83の非励磁時には排出用通路82側とされ、励磁時には貯留用通路81側に切り替えられるようになっている。貯留用通路81に導かれたメダルは、筺体11の内部に収納されたホッパ装置91へと導かれる。一方、排出用通路82に導かれたメダルは、前面扉12の前面下部に設けられたメダル排出口17からメダル受け皿18へと導かれ、遊技者に返還される。
【0063】
メダルを遊技者に付与する払出手段としてのホッパ装置91は、メダルを貯留する貯留タンク92と、メダルを遊技者に払い出す払出装置93とにより構成されている。払出装置93は、図示しないメダル払出用回転板を回転させることにより、排出用通路82の中央右部に設けられた開口94へメダルを排出し、排出用通路82を介してメダル受け皿18へメダルを払い出すようになっている。また、ホッパ装置91の右方には、貯留タンク92内に所定量以上のメダルが貯留されることを回避するための予備タンク95が設けられている。ホッパ装置91の貯留タンク92内部には、この貯留タンク92から予備タンク95へとメダルを排出する誘導プレート96が設けられている。したがって、誘導プレート96が設けられた高さ以上にメダルが貯留された場合、かかるメダルが予備タンク95に貯留されることとなる。
【0064】
メダル投入口75の下方には、ボタン状の返却スイッチ76が設けられている。返却スイッチ76は、メダル投入口75に投入されたメダルがセレクタ84内に詰まった際に押されるスイッチであり、このスイッチが押されることによりセレクタ84が機械的に連動して動作され、当該セレクタ84内に詰まったメダルがメダル排出口17より返却されるようになっている。
【0065】
表示窓31L,31M,31Rの下方左側には、クレジットされた仮想メダルを一度に3枚投入するためのボタン状の第1クレジット投入スイッチ77が設けられている。また、第1クレジット投入スイッチ77の左方には当該スイッチ77よりも小さなボタン状のスイッチとして、第2クレジット投入スイッチ78が設けられている。第2クレジット投入スイッチ78はクレジットされた仮想メダルを一度に1枚投入するためのものである。
【0066】
なお、第1クレジット投入スイッチ77は、1ゲームにつき投入できるメダル最大数(3枚)に達していないことを促すため、図示しない発光部材としてのランプが内蔵されている。当該ランプは、第1クレジット投入スイッチ77のスイッチ操作が有効である状況時において点灯されて当該スイッチ77の操作を促すが、クレジットされた仮想メダルが存在しない場合や既に3枚のメダル投入がなされている状況下では消灯される。ここで、上記点灯に代えて、点滅させてメダル投入の促しを遊技者に一層分かり易くしてもよい。
【0067】
スタートレバー71の左側には、ボタン状の切換スイッチ80が設けられている。切換スイッチ80は、1度押されるとオン状態になり、もう1度押されるとオフ状態になり、その後押下操作が行われるごとにオンオフが切り替わるトグル式に構成されている。切換スイッチ80は、メダル投入口75に必要量より多く投入された投入メダルや、所定の遊技の結果、遊技者に返還される獲得メダルの取扱形式を変更するために操作される。
【0068】
切換スイッチ80がオン状態のときには、所定の最大値(例えばメダル50枚分)となるまでの余剰の投入メダルや入賞時の獲得メダルがクレジットメダルとして貯留記憶されるように設定された「クレジットモード」となる。切換スイッチ80がオフ状態のときには、余剰の投入メダルや入賞時の獲得メダルを現実のメダルとして払い出すように設定された「ダイレクトモード」となる。なお、クレジットモードからダイレクトモードに切り換えられた際にクレジットメダルがある場合には、その分のクレジットメダルが現実のメダルとして払い出される。このように、遊技者はクレジットモードとダイレクトモードとを切り換えることにより自身の好みに応じた形式で遊技を実行することができる。かかる切換スイッチ80は取扱形式を切り換える切換操作手段を構成する。また、クレジットされた仮想メダルを現実のメダルとして払い出すという機能に着目すれば、切換スイッチ80は貯留記憶された遊技価値を実際に払い出すための精算操作手段を構成するものともいえる。なお、切換スイッチ80の操作により「クレジットモード」と「ダイレクトモード」とを切り換えるように構成する他、常に「クレジットモード」としておき切換スイッチ80が操作されると貯留記憶された仮想メダルを払い出すだけの精算スイッチとして機能させてもよい。
【0069】
遊技パネル30の表示窓31L,31M,31R下方には、クレジットモード時に有効化されて貯留記憶されたメダル数を表示する残数表示部35と、ビッグボーナスやレギュラーボーナス等の特別遊技状態の際に例えば残りのゲーム数等を表示するゲーム数表示部36と、獲得メダルの枚数を表示する獲得枚数表示部37とがそれぞれ設けられている。これら表示部35〜37は7セグメント表示器によって構成されているが、液晶表示器等によって代替することは当然可能である。
【0070】
ここで、メダルがベットされる手順について説明する。ダイレクトモード、クレジットモードのいずれのモードにおいても、遊技の開始時にメダル投入口75からメダルが投入されるとベットとなる。
【0071】
すなわち、1枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、第1有効ライン表示部32が点灯し、そしてこれに対応する中央ラインが有効ラインとなり、2枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、更に第2有効ライン表示部33が点灯すると共に、これに対応する上ライン及び下ラインを含む合計3本の組合せラインがそれぞれ有効ラインとなり、3枚目のメダルがメダル投入口75に投入されると、更に第3有効ライン表示部34が点灯し、そしてこれに対応する一対の斜めラインを含む合計5本の組合せライン全てが有効ラインとなる。
【0072】
また、4枚以上のメダルがメダル投入口75に投入されると、3枚を超える余剰メダルは、そのときのモードがダイレクトモードであればセレクタ84により排出用通路82への切替がなされてメダル排出口17からメダル受け皿18へ返却される。一方、クレジットモードであればスロットマシン内部に貯蓄されると共に残数表示部35に貯蓄枚数が表示される。この貯留枚数には上限枚数が決められており(例えば50枚)、それを超える枚数のメダルが投入されたときにはメダル排出口17からメダル受け皿18へ返却される。
【0073】
また、クレジットモードにて遊技が行われ且つ残数表示部35に貯留枚数が表示されている場合には、第1,2クレジット投入スイッチ77,78のいずれかが押された際にも仮想メダルが投入されたこととなりベットとなる。
【0074】
例えば、第2クレジット投入スイッチ78が押された際には、仮想メダルが1枚投入されたこととして残数表示部35に表示されている数値が1つディクリメントされ、第1有効ライン表示部32が点灯して中央ラインが有効ラインとなる。また、第1クレジット投入スイッチ77が押された際には、仮想メダルが3枚投入されたこととして残数表示部35に表示されている数値が3つディクリメントされ、全ての有効ライン表示部32〜34が点灯して合計5本の組合せラインが有効ラインとなる。
【0075】
なお、第1,2クレジット投入スイッチ77,78のいずれかが押された際に投入されるべき仮想メダルが貯留されていない場合、例えば残数表示部35の表示が2のときに第1クレジット投入スイッチ77が押された場合等には、残数表示部35の数値が全てディクリメントされて0となり、投入可能な仮想メダル分だけベットされる。
【0076】
前面扉12の上部には、遊技の進行に伴い点灯したり点滅したりする上部ランプ13と、遊技の進行に伴い種々の効果音を鳴らしたり、遊技者に遊技状態を報知したりする左右一対のスピーカ14Aと、遊技者に各種情報を与える補助表示部15とが設けられている。補助表示部15は、本実施形態では表示内容の多様化及び表示演出の重厚化を意図して液晶表示器によって構成されているが、ドットマトリックス表示器等の他の表示器を使用してもよい。補助表示部15は、遊技に進行に伴って各種表示演出を実行するためのものであり、各リール42L,42M,42Rによる遊技を主表示部によるものと考えることができることから、本実施形態では補助表示部15と称している。補助表示部15の背面には上部ランプ13やスピーカ14A、補助表示部15を駆動させるための表示制御装置111が設けられている。なお、上部ランプ13及びスピーカ14Aの位置や数は特に以上説明したものに限られない。
【0077】
メダル受け皿18の上方には、機種名や遊技に関わるキャラクタなどが表示された下段プレート16が装着されている。また、メダル受け皿18の左方には、手前側下方に反転可能な灰皿19が設けられている。さらに、メダル受け皿18の奥方には、上記スピーカ14Aと同様の左右一対のスピーカ14Bが設けられている。
【0078】
筺体11の内部においてホッパ装置91の左方には、電源ボックス121が設けられている。電源ボックス121は、電源スイッチ122や設定キー挿入孔124などを備えている。電源スイッチ122は、主制御装置131を始めとする各部に電源を供給するための起動スイッチである。設定キー挿入孔124は、ホール管理者などがメダルの出玉調整を行うためのものである。すなわち、ホール管理者等が設定キーを設定キー挿入孔124へ挿入して操作することにより、スロットマシン10の設定状態(当選確率設定処理)を「設定1」から「設定6」まで変更できるようになっている。
【0079】
リールユニット41の上方には、主制御手段としての主制御装置131が筺体11の背板11cに取付けられている。主制御装置131は、主たる制御を司るCPU,遊技プログラムを記憶したROM、遊技の進行に応じた必要なデータを一時的に記憶するRAM、各種機器との連絡をとるポート、時間計数や同期を図る場合などに使用されるクロック回路等を含む主基板を具備しており、主基板が透明樹脂材料等よりなる被包手段としての基板ボックスに収容されて構成されている。基板ボックスは、略直方体形状のボックスベースと該ボックスベースの開口部を覆うボックスカバーとを備えている。これらボックスベースとボックスカバーとは封印手段としての封印ユニットによって開封不能に連結され、これにより基板ボックスが封印されている。
【0080】
次に、本スロットマシン10の電気的構成について、図6のブロック図に基づいて説明する。
【0081】
主制御装置131には、演算処理手段であるCPU151を中心とするマイクロコンピュータが搭載されている。CPU151には、電源ボックス121の内部に設けられた電源装置161の他に、所定周波数の矩形波を出力するクロック回路154や、入出力ポート155などが内部バスを介して接続されている。かかる主制御装置131は、スロットマシン10に内蔵されるメイン基板としての機能を果たすものである。
【0082】
主制御装置131の入力側には、スタートレバー71の操作を検出するスタート検出センサ71a、各ストップスイッチ72,73,74の操作を個別に検出するストップ検出センサ72a,73a,74a、メダル投入口75から投入されたメダルを検出する投入メダル検出センサ75a、各クレジット投入スイッチ77,78の操作を個別に検出するクレジット投入検出センサ77a,78a、切換スイッチ80の操作を検出する切換検出センサ80a、各リール42L,42M,42Rの回転位置を個別に検出するリールインデックスセンサ55L,55M,55R、ホッパ装置91から払い出されるメダルを検出する払出検出センサ91a、後述するリセット操作を検出するリセット検出センサ640、設定キー挿入孔124に設定キーが挿入されたことを検出する設定キー検出センサ124a、前面扉12の開放を検出するための開放検知スイッチ820、後述する鍵Kによる前面扉12の開放操作があったことを検出するための開放操作検知センサ630等の各種センサが接続されており、これら各種センサからの信号は入出力ポート155を介してCPU151に出力されるようになっている。
【0083】
なお、投入メダル検出センサ75aは実際には複数個のセンサより構成されている。即ち、メダル投入口75からホッパ装置91に至る貯留用通路81は、その上流部において、メダルが1列で通行可能なように構成されている。そして、貯留用通路81の上流部には第1センサが設けられるとともに、それよりメダルの幅以上離れた下流側に第2センサ及び第3センサが近接(少なくとも一時期において同一メダルを同時に検出する状態が生じる程度の近接)して設けられており、これら第1乃至第3の各センサによって投入メダル検出センサ75aが構成されている。主制御装置131は、第1センサから第2センサに至る時間を監視し、その経過時間が所定時間を越えた場合にはメダル詰まり又は不正があったものとみなしてエラーとする。エラーになると、エラー報知が行われるとともにエラー解除されるまでの遊技者による操作が無効化される。また、主制御装置131は第2センサと第3センサとがオンオフされる順序をも監視し、第2,第3センサが共にオフ、第2センサのみオン、第2,第3センサが共にオン、第3センサのみオン、第2,第3センサが共にオフという順序通りになった場合で、かつ各オンオフ切換に移行する時間が所定時間内である場合にのみメダルが正常に取り込まれたと判断し、それ以外の場合はエラーとする。このようにするのは、貯留用通路81でのメダル詰まりの他、メダルを投入メダル検出センサ75a付近で往復動させてメダル投入と誤認させる不正を防止するためである。
【0084】
また、主制御装置131の入力側には、入出力ポート155を介して電源装置161に設けられた停電監視回路161bが接続されている。なお、電源装置161には、主制御装置131を始めとしてスロットマシン10の各電子機器に駆動電力を供給する電源部161aや、上述した停電監視回路161bなどが搭載されている。
【0085】
停電監視回路161bは電源の遮断状態を監視し、停電時はもとより、電源スイッチ122による電源遮断時に停電信号を生成するためのものである。この例では直流12ボルトの安定化駆動電圧を監視し、この駆動電圧が例えば10ボルト未満まで低下したとき電圧が遮断されたものと判断して停電信号が出力されるように構成されている。停電信号はCPU151と入出力ポート155のそれぞれに供給され、CPU151ではこの停電信号を認識することにより所定の停電時処理が実行される。
【0086】
電源部161aからは出力電圧が10ボルト未満まで低下した場合でも、主制御装置131などの制御系における駆動電圧として使用される5ボルトの安定化電圧が出力されるように構成されており、この安定化電圧が出力されている時間としては、主制御装置131による停電時処理を実行するに十分な時間が確保されている。
【0087】
主制御装置131の出力側には、各有効ライン表示部32,33,34、残数表示部35、ゲーム数表示部36、獲得枚数表示部37、各リール42L,42M,42Rを回転させるための各ステッピングモータ61L,61M,61R、セレクタ84に設けられたメダル通路切替ソレノイド83、ホッパ装置91、表示制御装置111、遊技ホールのホール管理装置などに情報を送信できる外部集中端子板171等が入出力ポート155を介して接続されている。
【0088】
表示制御装置111は、上部ランプ13やスピーカ14A,14B、補助表示部15を駆動させるための制御装置であり、これらを駆動させるためのCPU、ROM、RAM等が一体化された基板を備えている。そして、主制御装置131からの信号を受け取った上で、表示制御装置111が独自に上部ランプ13、スピーカ14A,14B及び補助表示部15を駆動制御する。従って、表示制御装置111は、遊技を統括管理するメイン基板たる主制御装置131との関係では補助的な制御を実行するサブ基板となっている。即ち、間接的な遊技に関する音声やランプ、表示についてはサブ基板を設けることにより、メイン基板の負担軽減を図っている。なお、各種表示部32〜37を表示制御装置111が制御する構成としてもよい。
【0089】
上述したCPU151には、このCPU151によって実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶したROM152と、このROM152内に記憶されている制御プログラムを実行するに当たって各種のデータを一時的に記憶する作業エリアを確保するためのRAM153のほかに、図示はしないが周知のように割込み回路を始めとしてタイマ回路、データ送受信回路などスロットマシン10において必要な各種の処理回路や、クレジット枚数をカウントするクレジットカウンタなどの各種カウンタが内蔵されている。ROM152とRAM153によって記憶手段としてのメインメモリが構成され、各種処理を実行するためのプログラムは、制御プログラムの一部として上述したROM152に記憶されている。
【0090】
RAM153は、スロットマシン10の電源が遮断された後においても電源ボックス121内に設けられた電源装置161からバックアップ電圧が供給されてデータを保持(バックアップ)できる構成となっており、RAM153には、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリやエリアの他に、バックアップエリアが設けられている。
【0091】
バックアップエリアは、停電などの発生により電源が遮断された場合において、電源遮断時(電源スイッチ122の操作による電源遮断をも含む。以下同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアであり、停電解消時(電源スイッチ122の操作による電源投入をも含む。以下同様)には、バックアップエリアの情報に基づいてスロットマシン10の状態が電源遮断前の状態に復帰できるようになっている。バックアップエリアへの書き込みは停電時処理によって電源遮断時に実行され、バックアップエリアに書き込まれた各値の復帰は電源投入時のメイン処理において実行される。なお、CPU151のNMI端子(ノンマスカブル割込端子)には、停電等の発生による電源遮断時に、停電監視回路161bからの停電信号が入力されるように構成されており、停電等の発生に伴うNMI割込み処理が即座に実行される。
【0092】
なお、電源装置161の電源部161aは、上述したNMI割込み処理及び停電時処理を実行するのに十分な時間、制御系の駆動電圧として使用される安定化電圧(5ボルト)の出力が保持されるように構成されている。本実施形態では、30msecの間、駆動電圧が出力され続けるようになっている。
【0093】
次に、前面扉12の施錠機構について説明する。前面扉12の施錠機構は、上述したように前面扉12に取付けられた施錠装置600と、筐体11に取付けられた支持金具800とにより構成される。
【0094】
施錠装置600は、前面扉12の右側辺部背面側、すなわち前面扉12の回動軸側とは反対側の側辺部に沿って取付けられている。一方、支持金具800は、施錠装置600に対応して、筐体11の右側板11e内側に取付けられている。そして、筺体11に対して前面扉12を閉鎖した際には、施錠装置600と支持金具800とが係合し施錠状態となることにより、前面扉12の開放が規制された状態となる。なお、これら施錠装置600や支持金具800を構成する主な部材は、金属平板をプレス成形等することにより形成されている。
【0095】
また、前面扉12の閉鎖状態においては、施錠装置600のうち、後述するシリンダ錠700(図1等参照)だけが前面扉12の前面側に露出した状態となる。そして、このシリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、所定方向(本実施形態では時計回り方向)に回動操作することで、施錠装置600と支持金具800とが解錠状態となり、前面扉12の開放が許容される状態となる。
【0096】
先ず施錠装置600について図7〜図14を参照して詳細に説明する。図7は、施錠装置600及び支持金具800を背面左側から見た斜視図であり、図8は、施錠装置600及び支持金具800を正面左側から見た斜視図である。但し、図7,8では、便宜上、施錠装置600及び支持金具800に関連する筐体11及び前面扉12も併せて模式的に図示している。また、図9は、施錠装置600及び支持金具800を背面左側から見た分解斜視図であり、図10は、施錠装置600及び支持金具800を正面左側から見た分解斜視図である。また、図11は、施錠装置600の背面図であり、図12は右側面図、図13は正面図であり、図14は左側面図である。
【0097】
施錠装置600の外郭を構成する縦長の基枠601は、前面扉12の背面部に固定される取付部としての取付板602と、当該取付板602の前面扉12内方側(左側)の端縁から後方に突出した支持部としての支持板603と、取付板602の前面扉12外方側(右側)の端縁から後方に突出したフランジ部604とを備えており、これらが一体となって横断面略コ字状をなしている。
【0098】
取付板602は、シリンダ錠700の配置位置に対応する所定の上下区間が他部位より左右方向に幅広の幅広部602aとなっており、支持板603では、前記幅広部602aに対応する上下区間が前面扉12内方側へ膨出した膨出部603aとなっている。これは、遊技パネル30の領域や各種機器等の設置スペースをより広く確保するために、施錠装置600全体の横幅を極力狭くしつつ、シリンダ錠700の配設位置においては、その設置スペースを確保するためである。
【0099】
支持板603の内側(前面扉12外方側)には、施錠機構の主要構成部となる第1摺動杆610及び上下一対の鉤部材611,612が配設されている。鉤部材611,612が本実施形態における鉤部に相当し、第1摺動杆610が伝達部材に相当する。
【0100】
第1摺動杆610は、長尺状をなし、支持板603に沿って上下方向に摺動可能に配設されている。第1摺動杆610には、支持板603の膨出部603aに対応する所定の上下区間において、前面扉12内方側へ膨出した膨出部610aが形成されている。但し、第1摺動杆610の膨出部610aの形成区間は、支持板603の膨出部603aの形成区間よりも短く設定されており、第1摺動杆610の摺動の妨げとならないようになっている。
【0101】
鉤部材611,612は、軸ピン613,614により支持板603に対し回動可能に軸支されている。また、第1摺動杆610は、前面扉12外方側から鉤部材611,612の前端部及びその近傍(取付板602側の端部及びその近傍)に重畳するように、支持板603に対し配設されている。そして、当該重畳部分において、第1摺動杆610と鉤部材611,612とが軸ピン615,616を介して係合されている。これにより、第1摺動杆610の上下方向の摺動変位に連動して、鉤部材611,612が回動変位する。
【0102】
鉤部材611,612は、その上辺部に係止凹部611a,612aが形成されるとともに、その後部が支持板603より後方へ突出している。これにより、鉤部材611,612は、支持板603より後方へ突出した部分が鉤状となっており、当該突出部分が係止部(係止爪)として機能する。
【0103】
また、鉤部材611,612における係止凹部611a,612aより後端側、すなわち鉤部材611,612の頭部611b,612bは、その上辺部が後方に向け下方傾斜した傾斜部611c,612cとなっている。
【0104】
なお、取付板602には、上下方向3箇所において、第1摺動杆610の前面扉12外方側への動きを規制する規制突起602bが設けられている。また、支持板603には、膨出部603aよりも上方位置において、前面扉12外方側に向け突出した支持突部603bが設けられている。規制突起602bや持突部603bは、第1摺動杆610の取付状態の安定性を高める機能とともに、第1摺動杆610の摺動動作の安定性を高めるガイド部としての機能を備えている。従って、第1摺動杆610は、取付板602の規制突起602bや支持板603の支持突部603bにより左右方向(図11左右方向)への動きを規制され、かつ、鉤部材611,612との係合により前後方向(図12左右方向)への動きを規制されつつ、上下方向へ摺動できるようになっている。
【0105】
また、第1摺動杆610の下端部近傍には、下側の鉤部材612との係合位置よりもやや上方位置において、前面扉12内方側に向け突出した突起片617が設けられている。これに対応して、支持板603の後縁部には切欠き凹部618が形成されており、突起片617は当該切欠き凹部618を介して支持板603よりも前面扉12内方側へ突出している。
【0106】
また、支持板603には、切欠き凹部618の上方位置において、前面扉12内方側へ突出した取付基部619が設けられている。この取付基部619の下面側には開放操作検知センサ630が取付けられている。本実施形態では、開放操作検知センサ630として、発光素子と受光素子とが所定間隔をおいて保持された透過型フォトセンサが採用されている。そして、第1摺動杆610の上方への摺動変位があった場合、すなわち後述するように鍵Kによる前面扉12の開放操作があった場合には、突起片617が開放操作検知センサ630の両素子間に入り込み、開放操作検知センサ630がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、鍵Kによる前面扉12の開放操作があったことを把握することができる。
【0107】
また、支持板603には、当該支持板603と第1摺動杆610とに挟まれるようにして、第2摺動杆620が配設されている。但し、第2摺動杆620は、その上下長が比較的短く設定されており、第1摺動杆610の膨出部610aの上端部近傍から、開放操作検知センサ630のやや上方位置までの区間に対応して設けられている。従って、第2摺動杆620は、第1摺動杆610の膨出部610aに沿って配設される上片部620aと、第1摺動杆610の一般部に沿って配設される下片部620bとが段差をもって形成された構成となっている。
【0108】
第2摺動杆620の下片部620bには、下端部から前面扉12内方側に向け突出した第1突起片621が設けられるとともに、下端部近傍の後縁部から前面扉12内方側に向け突出した第2突起片622が設けられている。これに対応して、支持板603には挿通孔623,624が形成されており、両突起片621,622は当該挿通孔623,624を介してそれぞれ支持板603より前面扉12内方側へ突出している。第1突起片621は、第2摺動杆620を下方へ摺動操作して、後述するようなリセット操作を行うための手動操作用の操作部として機能する。一方、第2突起片622は、後述するリセット検出センサ640により検出される被検知部として機能する。
【0109】
また、支持板603には、両挿通孔623,624よりも上方位置において、前面扉12内方側へ突出した取付基部625が設けられている。この取付基部625の下面側にはリセット検出センサ640が取付けられている。本実施形態では、リセット検出センサ640として、上記開放操作検知センサ630と同様の透過型フォトセンサが採用されている。通常時、すなわち第2摺動杆620が基準位置にある場合には、このリセット検出センサ640の両素子間に第2突起片622が入り込んだ状態となっている。そして、第2摺動杆620の下方への摺動変位があった場合、すなわち後述するように鍵Kや第1突起片621を介したリセット操作があった場合には、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出し、リセット検出センサ640がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、リセット操作があったことを把握することができる。
【0110】
さて、第1摺動杆610は、鉤部付勢手段としてのコイルばねC1により下方へ付勢されている。より詳しくは、コイルばねC1は、第1摺動杆610の上下方向略中央部に設けられたフック部641に一端が掛けられるとともに、他端が、取付板602の背面側に設けられたフック部642に掛けられている。
【0111】
また、第2摺動杆620は、コイルばねC2により上方へ付勢されている。より詳しくは、第1摺動杆610には、膨出部610aのやや下方位置においてフック部643が形成されるとともに、それよりも下方位置の前縁部において切欠き凹部644が形成されている。また、第2摺動杆620の下端部近傍にはフック部645が形成されている。そして、第1摺動杆610のフック部643にコイルばねC2の一端が掛けられるとともに、他端が、切欠き凹部644を介して第1摺動杆610の前面扉12外方側へ突出した第2摺動杆620のフック部645に掛けられている。
【0112】
そして、シリンダ錠700が操作された場合には、コイルばねC1,C2の引張力に抗して、第1摺動杆610が上方へ、又は、第2摺動杆620が下方へ摺動変位する。
【0113】
通常時、第1摺動杆610は、コイルばねC1の引張力によって、図7等に示すような基準位置において保持されている。この状態では、第1摺動杆610に係合された鉤部材611,612は、その前端部が下方に引っ張られ、支持板603に設けられた下規制突起647,648に当接することにより略水平状態に維持されている(図23参照)。なお、下規制突起647,648によって鉤部材611,612の動きが規制されることにより、第1摺動杆610の下方への動作も規制された状態となっている。
【0114】
そして、第1摺動杆610が上方へ摺動する場合には、これに連動して鉤部材611,612が回動変位する。但し、鉤部材611,612は、支持板603に設けられた上規制突起649,650に当接することにより、それ以上の回動が規制される。この状態では、鉤部材611,612は、その前端側が上に、後端側が下となるよう傾いた状態となる(図24参照)。
【0115】
従って、鉤部材611,612の回動変位範囲のうち、鉤部材611,612が下規制突起647,648に当接する位置が、本実施形態における鉤部施錠側特定位置(基準位置)に相当する。これに対し、鉤部材611,612が上規制突起649,650に当接する位置が鉤部解錠側特定位置に相当する。
【0116】
一方、第2摺動杆620は、通常時、コイルばねC2の引張力によって、図7等に示すような基準位置において保持されている。この状態で、第2摺動杆620は、突起片621,622が挿通孔623,624の上縁部に付勢されることにより、上方への動作が抑えられた状態となっている。また、この状態では、上述したように第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間に入り込んだ状態となっている。そして、第2摺動杆620の下方への摺動変位があった場合には、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出した状態となる。
【0117】
さて、取付板602の幅広部602aには、錠部材としてのシリンダ錠700が取付けられている。図19に示すように、シリンダ錠700は、略筒状をなすシリンダ本体701と、シリンダ本体701内部に設けられ、内部に鍵穴702を有してなる錠軸703と、シリンダ本体701の外周に設けられた外筒704とを備えている。
【0118】
シリンダ錠700は、取付板602の取付孔602bに対しシリンダ本体701を挿通した状態で、フランジ部705を取付板602の背面側にネジ699により固定されている。
【0119】
シリンダ本体701には、該シリンダ本体701の内外を連通する上下8つずつ、合計16個の透孔706が形成されている。これに対応して、錠軸703にも、各透孔706と連通する16個の透孔708が形成されている。かかる透孔708の鍵穴702側は、後述するピン714等の収容部材が鍵穴702内に脱落しないように他の部位よりも小径に形成されている。
【0120】
各透孔706内には、それぞれバネ709が収容されている。バネ709の一端は前記外筒704に当接し、他端には台座711が連結されている。また、各透孔708内には、前記台座711に支持されるようにして、複数のスペーサ712,713及びピン714が収容されている。そして、これらピン714、スペーサ712,713、台座711は、バネ709の伸縮によって各透孔706,708内を上下動可能となっている。このうち、ピン714は、前記透孔708の鍵穴702側の小径部を介して鍵穴702内に出没可能となっている。
【0121】
上記構成により、鍵穴702内への鍵Kの挿入時には、当該鍵Kの上下両側の凹凸形状に沿って各ピン714等が上下動する。そして、鍵Kの挿入完了状態にあっては、図20に示すように各ピン714がそれぞれ鍵Kの溝に入り込んだ状態となり、ピン714の基端面、又は、スペーサ712若しくは713の一方の端面と、錠軸703の外周面とが面一になる。これにより、鍵Kの挿入完了状態にあっては、鍵Kの回動操作に伴って錠軸703が回動可能となる。つまり、このシリンダ錠700は、少なくとも鍵穴702に鍵Kを挿し込まない限り錠軸703を回動させることができない内部構造となっている。
【0122】
また、錠軸703の後端部には、鍵穴702に挿入された鍵Kの回動動作を第1摺動杆610又は第2摺動杆620に伝達するカム板720が固定されている。
【0123】
カム板720は、上下一対の上係合爪720a及び下係合爪720bを備えている。これらの係合爪720a,720bは、カム板720の回動方向に所定間隔を置いて形成されている。
【0124】
これに合わせて、第1摺動杆610の膨出部610aには、係合爪720a,720bが出入可能な上下一対の上係合孔725及び下係合孔726が形成されている。同様に、第2摺動杆620の上片部620aには、係合爪720a,720bが出入可能な上下一対の上係合孔727及び下係合孔728が形成されている。また、支持板603の膨出部603aには、係合爪720a,720bの動作を妨げないように透孔730が形成されている。
【0125】
第1摺動杆610の係合孔725,726及び第2摺動杆620の係合孔727,728は、第1摺動杆610の膨出部610a及び第2摺動杆620の上片部620aの重畳状態にあっては、少なくとも上係合孔725,727同士、及び、下係合孔726,728同士が連通状態となっている(図21参照)。
【0126】
なお、第1摺動杆610側では、両係合孔725,726のうち上方に位置する上係合孔725の方が、下係合孔726よりも、上下方向の形成区間が長めに設定されている。これに対し、第2摺動杆620側では、両係合孔727,728のうち下方に位置する下係合孔728の方が、上係合孔727よりも、上下方向の形成区間が長めに設定されている。これは、後述するように第1摺動杆610又は第2摺動杆620の一方をカム板720が摺動させる際に、他方に上係合爪720a又は下係合爪720bを接触させないようにして、他方を摺動させないようにするためである。
【0127】
上記構成のもと、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kが挿し込まれていない状態で、錠軸703及びカム板720が基準位置にある場合には、図21(a)に示すように、上係合爪720aの先端が、第1摺動杆610及び第2摺動杆620の上係合孔725,727に非挿通状態となるとともに、下係合爪720bの先端が、第1摺動杆610及び第2摺動杆620の下係合孔726,728に非挿通状態となる。
【0128】
また、第1摺動杆610には、下係合孔726の下縁部から前面扉12外方側へ向けて突出したストッパ部731が設けられている。このストッパ部731は、前面扉12の閉鎖状態において、第1摺動杆610がカム板720以外の力によって解錠方向(上方)に動かされた場合、例えば鍵Kを用いずに第1摺動杆610に対し線材等を不正に引っ掛けて、解錠方向への外力がかけられた場合に、カム板720の下係合爪720bに当接することにより、第1摺動杆610の解錠方向への摺動を阻止し、不正解錠を防止するものである。
【0129】
上述したように、本実施形態のシリンダ錠700は、鍵穴702に鍵Kの挿入がない場合には錠軸703及びカム板720を回動させることができない状態(ロック状態)となる。そのため、ストッパ部731がカム板720の下係合爪720bに引っ掛かった場合でも、カム板720は回動せず、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位は、遊び幅を除き実質的に規制される。従って、シリンダ錠700やストッパ部731などにより、本実施形態における鉤部規制手段が構成される。
【0130】
また、支持板603には、上側の鉤部材611の上方位置において可動係合部規制手段(規制部材)としてのロック部材660が設けられている。ロック部材660は、前面扉12の閉鎖状態において、不正な解錠操作による支持金具800側の受け金具803の摺動変位を規制し、当該受け金具803を基準位置に維持することによって、前面扉12の不正解錠を防止するためのものである。
【0131】
ロック部材660は、縦長で略平板状の本体片部660aを備えている。本体片部660aには、その上部に軸孔660bが形成されるとともに、下部にガイド孔660cが形成されている。ガイド孔660cは、軸孔660bを中心にとって略円弧状に形成されている。そして、前面扉12外方側からこれら軸孔660b,ガイド孔660cに対しそれぞれ差し込まれた軸ピン663,664が支持板603に固定されている。これにより、ロック部材660は、軸孔660b(軸ピン663)を中心として回動変位可能に軸支されている。
【0132】
本体片部660aの上部後縁には、前面扉12外方側へ向けて突出したフック部660dが設けられている。そして、このフック部660dに規制部材付勢手段としてのコイルばねC3の一端が掛けられるとともに、他端が、取付板602に設けられたフック部665に掛けられている。通常時、ロック部材660は、コイルばねC3の引張力により上部が前方へ引っ張られることにより、下部が後方へ付勢された状態となっている。この状態において、ロック部材660は、ガイド孔660cの前縁部が軸ピン664に当接した状態となり、図23に示すような基準姿勢をとる。この位置(状態)が本実施形態におけるロック部材660の第1位置(第1状態)に相当する。なお、ガイド孔660cの大きさ(形成範囲)は、少なくともロック部材660が、前記基準姿勢をとる位置から、後述するように受け金具803に押されて回動し、鉤部材611の頭部611bの上端部が受け金具803の係合部803fを越える位置まで変位可能な大きさとなっている。
【0133】
本体片部660aの下端部には、前面扉12外方側へ向けて突出したストッパ部660eが設けられている。後述するように、このストッパ部660eが支持金具800側の受け金具803の摺動変位を規制する機能を果たす。
【0134】
また、支持板603の後縁部には、ロック部材660に対応する位置において、前面扉12外方側へ向けて突出したリブ667が設けられている。このリブ667は、後述する開放検知スイッチ820に接触する被検知部としての機能を備えるとともに、基枠601内側への線材等の侵入を防ぎ、ロック部材660等に対する不正な解錠操作を防ぐ機能などを備えている。
【0135】
また、支持板603の下端部には、合成樹脂製のカバー部材670がネジ698により固定されている。カバー部材670は、その後端下部がR形状となっている。これは、前面扉12を筐体11に対して閉鎖する際に、支持板603が底板11bと衝突するのを防ぎ、前面扉12をスムーズに閉鎖させるための工夫である。
【0136】
次に支持金具800について図7〜図10及び図15〜図18を参照して詳細に説明する。図15は支持金具800の左側面図であり、図16は正面図であり、図17は右側面図であり、図18は背面図である。
【0137】
支持金具800は、筐体11の右側板11e内側に固定される取付部としての縦長の取付板801を備えている。
【0138】
取付板801の前縁部は、その略全域が筐体11外方側に向け屈曲形成されている。これは、前面扉12を筐体11に対して閉鎖する際に、施錠装置600が取付板801の前縁部に引っ掛かることなく、前面扉12をスムーズに閉鎖させるための工夫である。
【0139】
取付板801には、上記施錠装置600の鉤部材611,612と係合する上下一対の受け金具803,804が設けられている。
【0140】
受け金具803,804は、取付板801に当接状態で配設される略平板状の本体部803a,804aを備えている。受け金具803,804が本実施形態における可動係合部を構成する。
【0141】
本体部803a,804aは、縦長の縦片部803b,804bと、当該縦片部803b,804bの上端部から前方に向け延出した上片部803c,804cと、縦片部803b,804bの下端部から前方に向け延出した下片部803d,804dとを備えており、全体としては前方に向け凹となる側面視略コ字状に形成されている。
【0142】
縦片部803b,804bの略中央部にはガイド孔803e,804eが形成されている。ガイド孔803e,804eは、上下方向に延びる長孔状となっている。そして、筐体11内方側からガイド孔803e,804eに対しそれぞれ差し込まれた軸ピン805,806が取付板801に固定されている。これにより、受け金具803,804は上下方向に摺動可能となる。受け金具803,804の摺動範囲のうち、ガイド孔803e,804eの上縁部が軸ピン805,806に当接する位置が、本実施形態における係合部施錠側特定位置に相当し、ガイド孔803e,804eの下縁部が軸ピン805,806に当接する位置が係合部解錠側特定位置に相当する。
【0143】
縦片部803b,804bの前縁部には、筐体11内方側へ向け突出した係合部803f,804fが設けられている。この係合部803f,804fに鉤部材611,612が係止されることとなる。
【0144】
上片部803c,804cの前端部には、筐体11内方側へ向け突出した突起片803g,804gが設けられている。このうち、上側の受け金具803の突起片803gは、後述するように上記ロック部材660と係り合う作用部として機能することとなる。
【0145】
縦片部803b,804bの下部にはフック部803h,804hが設けられている。そして、このフック部803h,804hに可動係合部付勢手段としてのコイルばねC4,C5の一端が掛けられるとともに、他端が、取付板801に設けられたフック部807,808に掛けられている。コイルばねC4,C5の引張力により、通常時、受け金具803,804は下方へ付勢されている。
【0146】
また、取付板801には、受け金具803,804の下方位置において規制突起809,810が設けられている。従って、受け金具803,804は、通常時、下端部が規制突起809,810に当接した基準位置にて保持された状態となる(図15参照)。また、この状態では、ガイド孔803e,804eの上縁部が軸ピン805,806に当接した状態となっている。
【0147】
一方、取付板801の後縁部には、受け金具803,804及びコイルばねC4,C5に対応した上下方向所定区間において、筐体11内方側へ向け突出したフランジ部811,812が設けられている。これに対し、取付板801の前後方向略中央部には、係合部803f,804fに対応して、自身の一部を切欠くようにして筐体11内方側へ向け屈曲形成されたリブ813,814が設けられている。
【0148】
フランジ部811,812やリブ813,814gは、受け金具803,804の取付状態の安定性を高める機能とともに、受け金具803,804の摺動動作の安定性を高めるガイド部としての機能を備えている。従って、受け金具803,804は、フランジ部811,812やリブ813,814gにより前後方向(図15左右方向)への動きを規制され、かつ、軸ピン805,806との係合により左右方向(図16左右方向)への動きを規制されつつ、上下方向へ摺動できるようになっている。また、リブ813,814は、鉤部材611,612が係合部803f,804fに係合する際に当該係合部803f,804fを支える支持手段としての機能を備えている。つまり、リブ813,814により係合部分の剛性を高め、鉤部材611,612及び係合部803f,804fの係合状態、ひいては前面扉12の施錠状態の安定性を高めることができる。従って、本実施形態では、前記効果をより確実にするため、左右方向における鉤部材611,612の係合位置が、リブ813,814と係合部803f,804fとの重畳範囲内に収まるように設定されている。
【0149】
また、取付板801の後縁部には、上側の受け金具803の上方位置において、筐体11内方側へ向け突出した取付基部819が設けられている。この取付基部819には開放検知スイッチ820が取付けられている。
【0150】
開放検知スイッチ820は、スイッチ部820aが前方に向くように取付けられている。かかる構成により、前面扉12の閉鎖状態においては、このスイッチ部820aが施錠装置600側のリブ667に押圧されることによって、スイッチ本体内へ没入した状態となっている(図22参照)。一方、前面扉12が開放状態となった場合には、施錠装置600側のリブ667から離間することにより、スイッチ部820aがスイッチ本体から突出した状態となる(図15参照)。
【0151】
開放検知スイッチ820は、スイッチ部820aが突出状態にある場合にはオン信号を出力し、スイッチ部820aが没入状態にある場合にはオフ信号を出力する。つまり、前面扉12が開放状態となると、開放検知スイッチ820から主制御装置131に対しオン信号が出力される。主制御装置131は、このオン信号に基づいて、前面扉12の開放があった旨を把握する。
【0152】
次に、施錠装置600及び支持金具800の作用について詳しく説明する。図22に示すように施錠装置600及び支持金具800の施錠状態においては、第1摺動杆610が基準位置をとることにより、図23に示すように、鉤部材611,612が受け金具803,804の係合部803f,804fの背面側にて係止され、前面扉12の開放が規制されている。
【0153】
前面扉12が筐体11に施錠された状態では、上側の受け金具803の上方への摺動が、ロック部材660により規制されている。より詳しくは、受け金具803の突起片803gの直上に、ロック部材660のストッパ部660eが位置しており、これに接触することにより、受け金具803の上方への摺動が、遊び幅を除き実質的に規制される。つまり、受け金具803がロック部材660のストッパ部660eに当接する位置が、施錠状態における受け金具803の変位限度位置となる。
【0154】
また、前面扉12の閉鎖状態においては、上述したように、シリンダ錠700のカム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となっている。つまり、第1摺動杆610のストッパ部731が、シリンダ錠700のカム板720に当接した状態における鉤部材611の位置が、施錠状態における鉤部材611の変位限度位置となる。
【0155】
そして、前面扉12を開放する際には、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、スロットマシン10の正面側(図1参照)から見て時計回り方向に回動させる。この操作が本実施形態における特定の操作に相当する。これにより、カム板720が同方向に回動して、下係合爪720bが第1摺動杆610の下係合孔726の上縁部に接触する〔図21(b)参照〕。但し、図21(b)は、スロットマシン10の背面側から見た図であるため、カム板720の回動方向は反時計回り方向となっている。
【0156】
その後、さらにカム板720を回動させていくに従って、下係合爪720bがコイルばねC1の引張力に抗して第1摺動杆610を上方へ押し上げていく。この際、下係合爪720bが挿通された第2摺動杆620の下係合孔728の上部には、下係合爪720bが上方へ変位するスペースが確保されているため、第1摺動杆610を押し上げていく過程において、下係合爪720bが第2摺動杆620に当接せず、その動作が妨げられないようになっている。勿論、この場合、カム板720が第1摺動杆610を摺動させるため、ストッパ部731が作用することはない。
【0157】
第1摺動杆610が上方へ摺動すると、図24に示すように、鉤部材611,612が回動し、受け金具803,804の係合部803f,804fとの係合が解除される。つまり、鉤部材611,612と受け金具803,804とが非係合状態となる。これにより、施錠装置600及び支持金具800が解錠状態となり、前面扉12の開放が許容される。従って、鉤部材611,612の頭部611b,612bと、受け金具803,804の係合部803f,804fとの上下方向における相対変位量が、非係合状態となるのに必要な相対変位量である。
【0158】
また、前面扉12が開放された時点で、鍵Kを操作する手の力を緩めると、コイルばねC1の引張力により、第1摺動杆610は下方へ引き下げられ、基準位置に復帰する。これに伴い、カム板720及び錠軸703も基準位置に復帰する。
【0159】
上述したように、本実施形態では、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kが挿入されていない場合には、第1摺動杆610の摺動が規制されているが、開放状態にある前面扉12を施錠する際には、鍵Kを用いることなく施錠を行うことができるよう工夫されている。
【0160】
より詳しくは、図25に示すように、施錠装置600及び支持金具800が解錠状態となった前面扉12の開放状態から、当該前面扉12を閉じていくと、まず鉤部材611,612の頭部611b,612bの傾斜部611c,612cが受け金具803,804の係合部803f,804fの下辺に接触する(図26参照)。
【0161】
この際、上述したように第1摺動杆610ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制されているため、さらに前面扉12を閉じていくと、図27に示すように、鉤部材611,612はやや回動変位するものの大きくは回動変位せず、施錠状態における変位限度位置にて、やや回動した状態を維持する。このため、主として受け金具803,804がコイルばねC4,C5の引張力に抗して上方へ摺動することとなる。
【0162】
そして、上方へ摺動した上側の受け金具803は、図27に示すように、上片部803cの前端部の突起片803gがロック部材660のストッパ部660eに前方より接触する。これにより、ロック部材660は、受け金具803に押されて回動し、下部側が後方へ変位する。つまり、前面扉12を閉じていく際に、ロック部材660が邪魔にならない仕組みとなっている。なお、この位置(状態)が本実施形態におけるロック部材660の第2位置(第2状態)に相当する。
【0163】
その後、鉤部材611,612の頭部611b,612bが受け金具803,804の係合部803f,804fを越えると、コイルばねC4,C5の引張力により係合部803f,804fが係止凹部611a,612aに入り込むようにして、受け金具803,804が元の位置に戻り、鉤部材611,612の頭部611b,612bが受け金具803,804の係合部803f,804fに係止される(図23参照)。従って、この際、鉤部材611,612の頭部611b,612bと、受け金具803,804の係合部803f,804fとの上下方向における相対変位量が、頭部611b,612bが係合部803f,804fを乗り越えるのに必要な相対変位量、つまり前面扉12を閉鎖するのに必要な相対変位量である。
【0164】
受け金具803,804が元の位置に戻ると、ロック部材660も元の姿勢に戻り、ロック部材660のストッパ部660eが、受け金具803の上片部803cの突起片803gの直上位置に位置した状態となる。これにより、施錠が完了し、前面扉12の開放が規制された状態となるとともに、ロック部材660により受け金具803の上方への摺動が、遊び幅を除き実質的に規制された状態、つまりロックがかかった状態(ロック状態)となる。
【0165】
次にリセット操作について詳しく説明する。前面扉12の閉鎖状態においては、第2摺動杆620が基準位置をとることにより、上述したように第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間に入り込んだ状態となっている。
【0166】
そして、前面扉12の閉鎖状態においてリセット操作を行う際には、シリンダ錠700の鍵穴702に鍵Kを挿入し、スロットマシン10の正面側から見て反時計回り方向に回動させる。これにより、カム板720が同方向に回動して、上係合爪720aが第2摺動杆620の上係合孔727の上縁部に接触する〔図21(c)参照〕。但し、図21(c)は、スロットマシン10の背面側から見た図であるため、カム板720の回動方向は時計回り方向となっている。
【0167】
その後、さらにカム板720を回動させていくに従って、上係合爪720aがコイルばねC2の引張力に抗して第2摺動杆620を下方へ押し下げていく。この際、上係合爪720aが挿通された第1摺動杆610の上係合孔725の下部には、上係合爪720aが下方へ変位するスペースが確保されているため、第2摺動杆620を押し下げていく過程において、上係合爪720aが第1摺動杆610に当接せず、その動作が妨げられないようになっている。
【0168】
第2摺動杆620が下方へ摺動すると、第2突起片622がリセット検出センサ640の両素子間から抜け出し、リセット検出センサ640がこれを検出し、後述する主制御装置131に対し検出信号を出力する。主制御装置131は、この検出信号に基づいて、リセット操作があったことを把握することができる。これにより、例えばホッパーエラー等のエラー状態のリセットを、前面扉12を開放することなく行うことができる。
【0169】
そして、鍵Kを操作する手の力を緩めると、コイルばねC2の引張力により、第2摺動杆620は上方へ引き上げられ、基準位置に復帰する。これに伴い、カム板720及び錠軸703も基準位置に復帰する。
【0170】
一方、前面扉12の開放状態においては、第1突起片621を手動操作して、第2摺動杆620を下方へ摺動させることで上記同様のリセット操作を行うことができる。上述したように本スロットマシン10は各種データのバックアップ機能を有しており、万一停電が発生した際でも停電時の状態を保持し、停電からの復旧(復電)の際には停電時の状態に復帰できるようになっている。従って、遊技ホールの営業が終了する場合のように通常手順で電源を遮断すると遮断前の状態が記憶保持されるが、例えば第1突起片621を押しながら電源スイッチ122をオンすると、バックアップデータがリセットされるようになっている。
【0171】
以上詳述したように、本実施形態では、シリンダ錠700に鍵Kの挿入がない場合には、カム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となる。
【0172】
また、ロック部材660を備えることにより、前面扉12の閉鎖状態においては、受け金具803の解錠方向への変位が、遊び幅を除き実質的に規制された状態となる。
【0173】
これにより、施錠状態において、仮に線材等を用いて鉤部材611や受け金具803に対し直接外力を加え、当該鉤部材611や受け金具803を解錠方向へ変位させて両者の係合状態を不正に解除しようとしても、両者の係合状態が維持されるため、前面扉12の開放は許容されない。勿論、本実施形態では、施錠状態における変位限度位置まで両者を同時に変位させた場合でも、両者の係合状態が維持される構成となっているため、不正解錠に対する防御性能は非常に高い。
【0174】
さらに、ロック部材660は、鍵Kによる操作に応じたシリンダ錠700の動作に連動しない構成、つまり鉤部材611,612や第1摺動杆610などと連動しない構成であるため、仮に鍵Kを用いずに線材等によって鉤部材611,612や第1摺動杆610に対し不正操作が行われた場合でも、この応力がロック部材660に伝達されることはない。つまり、鉤部材611,612や第1摺動杆610等に対する不正操作だけでは、解錠状態とすることはできないため、不正解錠に対する防御性能が格段に向上する。
【0175】
一方、鍵Kによりシリンダ錠700を操作することにより、鉤部材611,612が解錠方向へ変位し、当該鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が得られると、両者が非係合状態となり、前面扉12の開放が許容される。
【0176】
なお、上述したようにシリンダ錠700に鍵Kの挿入がない場合に鉤部材611,612の変位が規制される構成では、仮に受け金具803,804が固定されたものであると、鍵Kを用いずに前面扉12を閉じようとした場合、鉤部材611,612と受け金具803,804とが衝突し、その衝撃が比較的大きいため、当該鉤部材611,612や受け金具803,804の変形や破損等といった不具合が発生するおそれがある。この点、本実施形態では、受け金具803,804が変位する構成であるため、鉤部材611,612の変位が規制された状態にあっても、鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が確保されるため、上記不具合は発生しにくい。従って、前面扉12を閉鎖する際には、鍵Kを用いてシリンダ錠700を操作する必要がないため、利便性が高い。
【0177】
また、前面扉12を閉鎖する際には、鉤部材611,612及び受け金具803,804が接触してそれぞれ解錠方向へ変位することにより、前面扉12の閉鎖に必要な両者の相対変位量が得られるとともに、受け金具803の接触により自動的にロック部材660が状態変化し、鉤部材611及び受け金具803の係合後に元に戻る構成となっているため、前面扉12を閉鎖する際のさらなる利便性の向上が図られる。
【0178】
加えて、鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者が変位可能な構成となっていることにより、両者の接触時にこれら個々にかかる負荷を分散し低減することができる。結果として、鉤部材611,612等に変形や破損等の不具合が発生することを低減させることができる。一方のみを変位可能とした構成で、このような効果を得ようとした場合には、比較的付勢力の弱いコイルばねC1等を用いればよいが、この場合、線材等を用いた不正行為が行われると、鉤部材611,612等を解錠方向へ簡単に変位させられるおそれがある。この点、本実施形態によれば、個々のコイルばねとしては、ある程度、付勢力の強いものを用いつつも、鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者に負荷が分散されるため、個々にかかる衝撃力を緩和することができる。
【0179】
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0180】
(a)上記実施形態では、カム板720とストッパ部731との係合により施錠状態における鉤部材611,612の解錠方向への変位を規制したり、ロック部材660を備えることにより、施錠状態における受け金具803の解錠方向への変位を規制して、線材等を用いた不正な解錠操作によっては、鉤部材611及び受け金具803の係合が解除されない構成となっている。これに限らず、鉤部材611,612の変位を規制する規制手段、及び受け金具803の変位を規制する規制手段の少なくとも一方を省略した構成とすることも可能である。つまり、少なくとも鉤部材611,612及び受け金具803,804の両者が変位可能な構成とするとともに、鍵Kを用いずに鉤部材611,612及び受け金具803,804の一方のみを解錠方向へ変位させただけでは、両者の係合状態が解除されない構成とすれば、線材等を用いた不正な解錠操作を行おうとした場合、鉤部材611,612と受け金具803,804とにそれぞれ引っ掛けた線材等を異なる方向に操作するといった複雑な操作を要するため、不正解錠操作が困難となる。結果として、線材等を用いた不正解錠に対する防御性能は従来より格段に向上する。
【0181】
また、鍵Kを用いずに前面扉12を閉鎖する際には、少なくとも受け金具803,804が解錠側へ変位することで、前面扉12の閉鎖に必要な鉤部材611,612及び受け金具803,804の所定量以上の相対変位量が得られればよい。しかし、受け金具803の変位を規制するロック部材660を省略した構成の場合には、受け金具803,804が施錠状態における変位限度位置にある場合でも、前面扉12の開放に必要な前記相対変位量が得られないようにしなければならないため、前面扉12を閉鎖する際には鉤部材611,612もある程度変位する必要がある。
【0182】
(b)鉤部材611,612の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、鉤部材611,612が第1摺動杆610に一体形成され、上下方向に摺動変位する構成を採用してもよい。
【0183】
(c)鉤部材611,612、受け金具803,804、及びこれらに対応するロック部材660の数は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0184】
例えば鉤部材611,612及び受け金具803,804を一対又は3対以上備えた構成としてもよい。
【0185】
また、上記実施形態では、上側の受け金具803のみに対応してロック部材660が設けられているが、下側の受け金具804にのみ対応して設けてもよいし、両受け金具803,804にそれぞれ対応して設けてもよい。不正解錠に対する防御性能の向上を図る上では、受け金具が複数ある場合には、それぞれに対応してロック部材660を設けることが好ましい。但し、少なくとも1つに対応して設けられていれば、不正解錠に対する防御性能を十分に発揮することはできる。特に上記実施形態のように上側の受け金具803に対応してロック部材660が設けられていれば、遊技ホール等において不正行為を行う際に、座席から立ち上がった状態で行う必要があるため、不正行為の抑止効果が高い。
【0186】
また、上記実施形態では、可動係合部規制手段(規制部材)としてのロック部材660を施錠装置600に設けているが、前面扉12や筐体11など、他の部位に設けた構成としてもよい。
【0187】
(d)受け金具803,804の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、受け金具803,804が、上下動するとともに回動変位可能な構成を採用してもよい。
【0188】
また、上記実施形態では、前面扉12を閉鎖する際に、受け金具803,804は鉤部材611,612に接触することにより、解錠方向へ変位する。これに限らず、例えば前面扉12の開閉に伴い、受け金具803,804が電気的駆動手段により変位する構成としてもよい。具体例としては、例えば開放検知スイッチ820や開放操作検知センサ630の検出結果に応じてソレノイド等を制御して、受け金具803,804を変位させる構成などが挙げられる。
【0189】
(e)ロック部材660の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、前面扉12を閉鎖する際に、受け金具803の接触により自動的にロック部材660が回動変位して、鉤部材611及び受け金具803の係合後に元に戻る構成となっている。これに対し、例えば略水平方向にスライド変位するロック部材を採用してもよい。また、受け金具803との接触により変位するのではなく、例えば前面扉12の開閉に伴い、電気的駆動手段により、受け金具803の変位を規制する第1状態と、鉤部材611及び受け金具803が係合状態となるのを許容する第2状態とに変化可能な構成としてもよい。具体例としては、例えば開放検知スイッチ820や開放操作検知センサ630の検出結果に応じてソレノイド等を制御して、ロック部材を変位させる構成などが挙げられる。また、このような構成を採用した場合には、鍵Kを用いない不正な解錠操作などによっては前記ソレノイドやロック部材などが変位しないように、当該ソレノイドやロック部材などの動きを規制する構成を備えることが好ましい。例えば、ソレノイドの励磁・非励磁により駆動するプランジャ又は当該プランジャに連動するリンク部材を介してのみロック部材が変位可能となり、ロック部材に線材等を引っ掛けてロック部材を不正に変位させようとした場合にはプランジャやリンク部材等により規制されロック部材が変位しない構成例が一例として挙げられる。さらに、前記プランジャやリンク部材に線材等を引っ掛けることができないようにソレノイドを覆うカバー部材などを設けることで不正行為に対する防御性能を高めることができる。
【0190】
(f)上記実施形態のシリンダ錠700は、鍵Kの挿入がない場合にはロック状態となり、カム板720が変位不能となる。そして、ロック状態にあるカム板720とストッパ部731との係合により、第1摺動杆610の上方への摺動変位、ひいては鉤部材611,612の解錠方向への変位が規制される。これに限らず、シリンダ錠700と異なるシリンダ錠を採用してもよい。例えば、鍵Kの非挿入状態でもカム板720が変位不能とならないシリンダ錠を採用してもよい。但し、この場合には、鍵Kを用いずに鉤部材611,612や第1摺動杆610に対して直接行われる不正な解錠操作に対して防御制御を高めるため、鉤部材611,612又は第1摺動杆610の変位を規制する他の規制手段を備えることが好ましい。勿論、受け金具803,804との兼ね合いによっては、規制手段を設けることなく、施錠時において、鍵Kを用いない不正な解錠操作が行われた場合でも受け金具803,804との係合状態が解除されない構成とすることができる。
【0191】
勿論、錠部材はシリンダ錠に限定されるものではなく、この他、カードキーのような鍵を用いて操作されるものであってもよい。
【0192】
(g)上記実施形態では、スロットマシン10について具体化した例を示したが、パチンコ機や、スロットマシンとパチンコ機とを融合した形式の遊技機など他の遊技機に適用してもよい。
【符号の説明】
【0193】
10…スロットマシン、11…筐体、12…前面扉、600…施錠装置、610…第1摺動杆、611,612…鉤部材、660…ロック部材、700…シリンダ錠、800…支持金具、803,804…受け金具、803f,804f…係合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に対し開閉可能に支持された扉体と、
前記支持部材に対し前記扉体を施錠する施錠機構とを備えた遊技機であって、
前記施錠機構は、
前記支持部材又は前記扉体の一方に設けられた施錠装置と、他方に設けられた被係合手段とを備え、
前記施錠装置が、
鍵により操作される錠部材と、
前記錠部材の動作に連動して、少なくとも鉤部施錠側特定位置と鉤部解錠側特定位置との間で変位可能な鉤部とを備え、
前記被係合手段が、
少なくとも係合部施錠側特定位置と係合部解錠側特定位置との間で変位可能な可動係合部を備え、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となることにより、前記扉体の開放が規制される施錠状態となり、
前記鉤部と前記可動係合部とが非係合状態となることにより、前記扉体の開放が許容される解錠状態となる構成であって、
前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となることにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態において、前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、少なくとも前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記非係合状態になるのに必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態で、かつ、前記鍵による前記錠部材の特定の操作がない状態において、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部施錠側特定位置にある場合には、前記鉤部のみが前記鉤部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該鉤部の変位限度位置まで達した場合でも、当該鉤部及び前記可動係合部の係合状態が維持され、
少なくとも前記鉤部が前記鉤部施錠側特定位置にある場合には、前記可動係合部のみが前記係合部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該可動係合部の変位限度位置まで達した場合でも、当該可動係合部及び前記鉤部の係合状態が維持されることを特徴とする遊技機。
【請求項1】
支持部材に対し開閉可能に支持された扉体と、
前記支持部材に対し前記扉体を施錠する施錠機構とを備えた遊技機であって、
前記施錠機構は、
前記支持部材又は前記扉体の一方に設けられた施錠装置と、他方に設けられた被係合手段とを備え、
前記施錠装置が、
鍵により操作される錠部材と、
前記錠部材の動作に連動して、少なくとも鉤部施錠側特定位置と鉤部解錠側特定位置との間で変位可能な鉤部とを備え、
前記被係合手段が、
少なくとも係合部施錠側特定位置と係合部解錠側特定位置との間で変位可能な可動係合部を備え、
前記鉤部と前記可動係合部とが係合状態となることにより、前記扉体の開放が規制される施錠状態となり、
前記鉤部と前記可動係合部とが非係合状態となることにより、前記扉体の開放が許容される解錠状態となる構成であって、
前記鍵を用いずに前記扉体を前記支持部材に対し閉鎖する際には、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部解錠側特定位置側へ変位した状態となることにより、前記扉体の閉鎖に必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態において、前記鍵による前記錠部材の特定の操作があった場合には、少なくとも前記鉤部が前記鉤部解錠側特定位置側へ変位することにより、前記非係合状態になるのに必要な前記鉤部及び前記可動係合部の所定量以上の相対変位量が得られ、
前記施錠状態で、かつ、前記鍵による前記錠部材の特定の操作がない状態において、
少なくとも前記可動係合部が前記係合部施錠側特定位置にある場合には、前記鉤部のみが前記鉤部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該鉤部の変位限度位置まで達した場合でも、当該鉤部及び前記可動係合部の係合状態が維持され、
少なくとも前記鉤部が前記鉤部施錠側特定位置にある場合には、前記可動係合部のみが前記係合部解錠側特定位置側へ変位して、前記施錠状態における当該可動係合部の変位限度位置まで達した場合でも、当該可動係合部及び前記鉤部の係合状態が維持されることを特徴とする遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
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【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−56217(P2013−56217A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−280794(P2012−280794)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2007−217781(P2007−217781)の分割
【原出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000144522)株式会社三洋物産 (4,662)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2007−217781(P2007−217781)の分割
【原出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000144522)株式会社三洋物産 (4,662)
【Fターム(参考)】
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