説明

遊技機

【課題】改変不能とされているサウンドデータについてさまざまな音響効果を加える。
【解決手段】遊技機の音響制御部において、改変不能とされているサウンドデータを予め記憶しているサウンドデータ記憶部と、前記サウンドデータに基づき第1音響信号を発生する第1再生部と、第2音響信号を発生する第2再生部と、前記第1音響信号と前記第2音響信号を合成して合成音響信号を出力する合成部とを備える。さらに、前記第1音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の一つ又は複数を制御するための第1パラメータと、前記第2音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の一つ又は複数を制御するためのパラメータであって前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを予め記憶するとともに、前記第1パラメータと前記第2パラメータを前記第1再生部と前記第2再生部へそれぞれ与える再生制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置を備えるスロットマシン等の遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スロットマシン等の遊技機にはメダルの投入口が設けられており、遊技者は所定の枚数のメダルを投入してゲームを楽しむことができる。遊技に必要なメダルは、遊技ホール内に設けられたメダル貸機等で借りることができ、所望の遊技機のメダル投入口に投入することによりゲームを開始することができる。
【0003】
従来の遊技機の動作は次のようなものであった。
先ず、スタートスイッチが操作されることにより、スタートスイッチがONとなる。これを受けて遊技機内部の当選判定手段により抽選処理が行われる。ここで所定の役に当選すると当選フラグがセットされる。回転リールの回転が開始する。ストップスイッチが操作されることにより、ストップスイッチがONとなる。そして、対応する回転リールの回転が停止する。全部の回転リールに対応するストップスイッチの操作が行われた後、当選フラグ成立中に当該当選フラグに対応する入賞図柄が有効入賞ライン上に揃ったか否か、すなわち、入賞が確定したか否かが判定される。入賞が確定したと判定された場合、入賞図柄に相当するメダルが払い出される。
【0004】
抽選処理の評価が例えば外れの場合は所定の図柄が揃わないように設定され(いわゆる蹴飛ばし)、当たりの場合はストップスイッチが所定のタイミングで押下されることなどを条件に所定の図柄が揃うように設定される(いわゆる引き込み)。つまり、抽選処理において当選しているときのみ所定の条件の下で図柄が揃い入賞することにより、メダルが払い出されるが、当選しないときはストップスイッチをどのように操作してもメダルが払い出されることはない。これはメダルの払い出しを一定確率に保つためである。これを実現するため抽選処理において乱数発生器が用いられている。
【0005】
また、スロットマシンなどの遊技機は、演出表示を行うための液晶表示装置(LCD)及び音響装置(スピーカー)を備える。液晶表示装置には演出に係るアニメーションなどが表示され、スピーカーからは音楽や効果音とともに当該アニメーションに対応するナレーションや台詞(キャラボイス)などの音声が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−173584号公報 入力された音響信号を複数の周波数帯域の音響信号に分割して、それぞれに残響効果を付加し、それらの音響信号を混合して、1つの音響信号として出力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遊技機は、スピーカーから音響を発生させるサウンドコントローラを備える。これは、例えばひとつ又は複数のICで構成されるものであり、遊技機の基板(サブ基板、制御基板)に搭載されるか、あるいは当該基板から信号を受けて処理を行う。スピーカーはサウンドコントローラにより制御ないし駆動される。
【0008】
サウンドコントローラは、予め記憶された音響のデータ(サウンドフレーズ、フレーズデータ)をデコードすることで音響を再生するものである。ところで、音響のデータはメモリに記憶されるが当該メモリの容量に限りがあること、及び/又は、サウンドコントローラで扱えるフレーズの数に限りがあることにより、発生可能な音響には制限がある。このため、遊技機の演出の設計は当該制限内において行わなければならない。
【0009】
しかし、機種によっては演出の数が多く、この結果サウンドフレーズ数が足りなくなることがある。このため、同じサウンドフレーズを使いまわしたり、フレーズを削減することが迫られる場合もある。これではその作業のための労力が発生するばかりではなく、演出に単調になり深みがなくなるおそれがある。このため、前記音響のデータの容量を抑制でき、かつ、多様な音響を発生できることが望ましい。
【0010】
また、権利的な問題で加工することが不可能なサウンドがある。著作権などの権利の関係上、権利許諾者からの許諾の下で提供された音響のデータは、これに一切の手を加えることなくそのままの状態で遊技機のメモリに記憶させておかなければならないケースが考えられる。この場合には、当該音響のデータについては特殊な音響効果を及ぼしたものを予め用意してメモリに記憶しておくということはできないから、当該加工不可のデータに基づき何らかの処理を行うことで多様な音響(何らかのエフェクトをかけた音響)を発生できるようにすることが望ましい。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、上記問題を生じさせることなく、多様な演出に対応することのできる音響装置を備える遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、所定のコマンドに基づき演出に係る処理を行う制御基板と、前記演出に係る音響を発生する音響装置と、前記制御基板の制御に基づき前記音響装置を制御する音響制御部とを備える遊技機において、
前記音響制御部は、
少なくともひとつのサウンドデータ(当該サウンドデータは改変不能とされている。この点については後述する)を予め記憶しているサウンドデータ記憶部と、
前記サウンドデータに基づき第1音響信号を発生する第1再生部と、
前記サウンドデータに基づき、前記第1音響信号とは異なる第2音響信号を発生する第2再生部と、
前記第1音響信号と前記第2音響信号を合成して合成音響信号を出力する合成部とを備え、
前記第1再生部及び前記第2再生部は、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の音量をそれぞれ制御する音量調整部と、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の出力タイミングをそれぞれ制御する遅延処理部と、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の再生速度をそれぞれ制御する再生速度調整部のうちの少なくともいずれかを、それぞれ含み、
さらに、前記第1音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するための第1パラメータと、前記第2音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するためのパラメータであって前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを予め記憶するとともに、前記第1パラメータと前記第2パラメータを前記第1再生部と前記第2再生部へそれぞれ与える再生制御部を備え、
前記第1再生部及び前記第2再生部は、それぞれ、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに従って前記第1音響信号及び前記第2音響信号を発生するものである。
【0013】
例えば、前記第1パラメータと前記第2パラメータの前記再生速度を同じとし、前記出力タイミングを異ならせ、前記出力タイミングの遅い方を速い方よりも前記音量が小さくなるように指定することで、前記サウンドデータに基づく音響に残響効果を施す。
【0014】
例えば、前記第1パラメータと前記第2パラメータの前記再生速度及び前記音量を同じとするが、前記出力タイミングを異ならせることで、前記サウンドデータに基づく音響に連続再生効果を施す。
【0015】
前記サウンドデータに基づき、前記第1音響信号及び前記第2音響信号とは異なる第3音響信号を発生する第3再生部を備え、
前記再生制御部は、さらに、前記第3音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するための第3パラメータを予め記憶し、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、前記第3パラメータの順で前記第1再生部乃至前記第3再生部へ出力し、
前記合成部は、前記第1音響信号乃至前記第3音響信号を合成して合成音響信号を出力し、
前記第2パラメータによる前記音量は、前記第1パラメータと前記第3パラメータによる音量のいずれよりも大きくなるように設定されている、ようにしてもよい。
【0016】
さらに、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ及び前記第3パラメータによる前記再生速度は、この順で小さくなるように設定されていてもよい。
【0017】
前記サウンドデータは、音響に係る複数のデータとともに、当該複数のデータの全部又は一部について予め求められた固有の特徴値(チェックサム、ハッシュ値、排他的論理和などの論理演算による値、ヘッダの値など)を含み、
前記再生制御部は、前記サウンドデータの前記固有の特徴値を予め記憶しており、
再生を開始するときに、前記サウンドデータに基づき前記固有の特徴値を取得し、これを予め記憶していた前記固有の特徴値と比較し、両者が一致したときに再生を開始するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、第1音響信号の音量、出力タイミング及び再生速度の一つ又は複数を制御するための第1パラメータと、第2音響信号の音量、出力タイミング及び再生速度の一つ又は複数を制御するためのパラメータであって前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを用意し、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに従って第1音響信号及び第2音響信号を発生し、これらを合成するようにしたので、ひとつのサウンドデータに基づき、多様な音響を発生することができる。音響の種類ごとにサウンドデータを用意する場合と比べて、データ量が少なくて済みメモリを有効に使用することができる。また、改変不能とされているサウンドデータであっても、さまざまな音響を発生することができ、改変可能とされているサウンドデータと同様の演出効果を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】前扉を閉めた状態を示すスロットマシンの正面図である。
【図2】前扉を180度開いた状態を示すスロットマシンの正面図である。
【図3】スロットマシンのブロック図である。
【図4】遊技機の音響発生系統のブロック図である。
【図5】発明の実施の形態に係るサウンドコントローラのブロック図である。
【図6】発明の実施の形態に係るサウンドエフェクトの説明図である。図6(a)はタイミングチャート、同図(b)はパラメータの説明図である。
【図7】発明の実施の形態に係る他のサウンドエフェクトの説明図である。図7(a)はタイミングチャート、同図(b)はパラメータの説明図である。
【図8】発明の実施の形態に係る他のサウンドエフェクトの説明図である。図8(a)はタイミングチャート、同図(b)はパラメータの説明図である。
【図9】発明の実施の形態に係る再生処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は前扉を閉めた状態を示すスロットマシンの正面図、図2は前扉を180度開いた状態を示すスロットマシンの正面図を示す。
【0021】
図1及び図2中、100はスロットマシンを示すもので、このスロットマシン100は、図1に示すように、スロットマシン本体120と、このスロットマシン本体120の前面片側にヒンジ等により開閉可能に取り付けられた前扉130とを備えている。前記前扉130の前面には、図1に示すように、ほぼ中央にゲーム表示部131を設け、ゲーム表示部131の右下隅部に、遊技者がメダルを投入するためのメダル投入口132を設け、メダル投入口132の下側には、メダル投入口132から投入され、詰まってしまったメダルをスロットマシン100外に強制的に排出するためのリジェクトボタン133が設けられている。
【0022】
また、前記ゲーム表示部131の左下方には、ゲームを開始するためのスタートスイッチ134を設けてあり、3つの回胴のそれぞれに対応して3つのストップスイッチ140を設けてある。前扉の下端部中央には、メダルの払出し口135を設けてある。前記ゲーム表示部131の上側には、液晶表示装置LCDが設けてある。
【0023】
スロットマシン本体120の内部には、図2に示すように、その内底面に固定され、内部に複数のメダルを貯留して、貯留したメダルを前扉130の前面に設けた払出し口135に1枚ずつ払い出すためのホッパ装置121が設置されている。このホッパ装置121の上部には、上方に向けて開口し、内部に複数のメダルを貯留するホッパタンク122を備えている。スロットマシン本体120の内部には、前扉130を閉めたときにゲーム表示部131が来る位置に三個の回胴からなるリール(回胴)ユニット203が設置されている。リールユニット203は、外周面に複数種類の図柄が配列されている3つの回胴(第1回胴〜第3回胴)を備えている。ゲーム表示部131には開口部が設けられていて、それを通して遊技者が前記リールユニット203の各回転回胴の図柄を見ることができるようになっている。ホッパ装置121の左側には電源部205が設けられている。
【0024】
前記前扉130の裏面には、図2に示すように、メダル(コイン)セレクタ1が、前扉130の前面に設けられたメダル投入口132の裏側に取り付けられている。このメダルセレクタ1は、メダル投入口132から投入されたメダルの通過を検出しながら、当該メダルをホッパ装置121に向かって転動させ、外径が所定寸法と違う異径メダルや、鉄又は鉄合金で作製された不正メダルを選別して排除するとともに、1ゲームあたりに投入可能な所定枚数以上のメダルを選別して排除するための装置である。
【0025】
また、メダルセレクタ1の下側には、図2に示すように、その下部側を覆って前扉130の払出し口135に連通する導出路136が設けられている。メダルセレクタ1により振り分けられたメダルは、この導出路136を介して払出し口135から遊技者に返却される。
【0026】
図3は発明の実施の形態に係るスロットマシン100の機能ブロック図を示す。
この図において電源系統についての表示は省略されている。図示しないが、スロットマシンは商用電源(AC100V)から直流電源(+5Vなど)を発生するための電源部を備える。
【0027】
スロットマシン100は、その主要な処理装置としてメイン基板(処理部)10とこれからコマンドを受けて動作するサブ基板20とを備える。なお、少なくともメイン基板10は、外部から接触不能となるようにケース内部に収容され、これら基板を取り外す際に痕跡が残るように封印処理が施されている。
【0028】
メイン基板10は、遊技者の操作を受けて内部抽選を行ったり、リールの回転・停止やメダルの払い出しなどの処理(遊技処理)を行うためのものである。メイン基板10は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。
【0029】
サブ基板20は、メイン基板10からコマンド信号を受けて内部抽選の結果を報知したり各種演出を行うためのものである。サブ基板20は、前記コマンド信号に応じた予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うCPUと、前記プログラムを記憶する記憶手段であるROMおよび処理結果などを一時的に記憶するRAMを含む。コマンドの流れはメイン基板10からサブ基板20への一方のみであり、逆にサブ基板20からメイン基板10へコマンド等が出されることはない。
【0030】
メイン基板10には、ベットスイッチBET、スタートスイッチ134,ストップボタン140,リールユニット(リール駆動装置を含む)203,リール位置検出回路71、ホッパ駆動部80、ホッパ81及びホッパ81から払い出されたメダルの枚数を数えるためのメダル検出部82(これらは前述のホッパ装置121を構成する)が接続されている。サブ基板20には液晶表示装置の制御用の液晶制御基板200、スピーカ基板201、LED基板202などの周辺基板(ローカル基板)が接続されている。
【0031】
メイン基板10には、さらに、メダルセレクタ1のメダルセンサS1及びS2が接続されている。
【0032】
メダルセレクタ1には、メダルを計数するためのメダルセンサS1及びS2が設けられている。メダルセンサS1及びS2は、メダルセレクタ1に設けられた図示しないメダル通路の下流側(出口近傍)に設けられている(メダル通路の上流側はメダル投入口132に連通している)。2つのメダルセンサS1とS2は、メダルの進行方向に沿って所定間隔を空けて並べて設けられている。メダルセンサS1、S2は、例えば、互いに対向した発光部と受光部とを有して断面コ字状に形成され、その検出光軸をメダル通路内に上方から臨ませて位置するフォトインタラプタである。各フォトインタラプタにより、途中で阻止されずに送られてきたメダルの通過が検出される。なお、フォトインタラプタを2つ隣接させたのは、メダル枚数を検出するだけでなく、メダルの通過が正常か否かを監視するためである。すなわち、フォトインタラプタを2つ隣接させて設けることにより、メダルの通過速度や通過方向を検出することができ、これによりメダル枚数だけでなく、逆方向に移動する不正行為を感知することができる。
【0033】
ホッパ駆動部80は、ホッパ81を回転駆動して、メイン基板10によって指示された払出数のメダルを払い出す動作を行う。遊技機は、メダルを1枚払い出す毎に作動するメダル検出部82を備えており、メイン基板10は、メダル検出部82からの入力信号に基づいてホッパ81から実際に払い出されたメダルの数を管理することができる。
【0034】
投入受付部1050は、メダルセレクタ1のメダルセンサS1とS2の出力を受け、遊技毎にメダルの投入を受け付けて、規定投入数に相当するメダルが投入されたことに基づいて、スタートスイッチ134に対する第1リール〜第3リールの回転開始操作を許可する処理を行う。なお、スタートスイッチ134の押下操作が、第1リール〜第3リールの回転を開始させる契機となっているとともに、内部抽選を実行する契機となっている。また、遊技状態に応じて規定投入数を設定し、通常状態およびボーナス成立状態では規定投入数を3枚に設定し、ボーナス状態では規定投入数を1枚に設定する。
【0035】
メダルが投入されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度として、投入されたメダルを投入状態に設定する。あるいは、遊技機にメダルがクレジットされた状態で、ベットスイッチBETが押下されると、遊技状態に応じた規定投入数を限度して、クレジットされたメダルを投入状態に設定する。メダルの投入を受け付けるかどうかは、メイン基板10が制御する。メダルの投入を受け付ける状態になっていないときは(許可されていないときは)、メダルを投入してもメダルセンサS1、S2でカウントされず、そのまま返却される。同様に、メイン基板10はベットスイッチBETの有効/無効を制御する。ベットスイッチBETが有効になっていないときは(許可されていないときは)、ベットスイッチBETを押下しても、それは無視される。
【0036】
メイン基板10は、乱数発生手段1100を内蔵する。乱数発生手段1100は、抽選用の乱数値を発生させる手段である。乱数値は、例えば、インクリメントカウンタ(所定のカウント範囲を循環するように数値をカウントするカウンタ)のカウント値に基づいて発生させることができる。なお本実施形態において「乱数値」には、数学的な意味でランダムに発生する値のみならず、その発生自体は規則的であっても、その取得タイミング等が不規則であるために実質的に乱数として機能しうる値も含まれる。
【0037】
内部抽選手段1200は、遊技者がスタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、役の当否を決定する内部抽選を行う。すなわち、メイン基板10のメモリ(図示せず)に記憶されている抽選テーブル(図示せず)を選択する抽選テーブル選択処理、乱数発生手段1050から得た乱数の当選を判定する乱数判定処理、当選の判定結果で大当たりなどに当選したときにその旨のフラグを設定する抽選フラグ設定処理などを行う。
【0038】
抽選テーブル選択処理では、図示しない記憶手段(ROM)に格納されている複数の抽選テーブル(図示せず)のうち、いずれの抽選テーブルを用いて内部抽選を行うかを決定する。抽選テーブルでは、複数の乱数値(例えば、0〜65535の65536個の乱数値)のそれぞれに対して、リプレイ、小役(ベル、チェリー)、レギュラーボーナス(RB:ボーナス)、およびビッグボーナス(BB:ボーナス)などの各種の役が対応づけられている。また、遊技状態として、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態が設定可能とされ、さらにリプレイの抽選状態として、リプレイ無抽選状態、リプレイ低確率状態、リプレイ高確率状態が設定可能とされる。
【0039】
乱数判定処理では、スタートスイッチ134からのスタート信号に基づいて、遊技毎に前記乱数発生手段(図示せず)から乱数値(抽選用乱数)を取得し、取得した乱数値について前記抽選テーブルを参照して役に当選したか否かを判定する。
【0040】
抽選フラグ設定処理では、乱数判定処理の結果に基づいて、当選したと判定された役の抽選フラグを非当選状態(第1のフラグ状態、オフ状態)から当選状態(第2のフラグ状態、オン状態)に設定する。2種類以上の役が重複して当選した場合には、重複して当選した2種類以上の役のそれぞれに対応する抽選フラグが当選状態に設定される。抽選フラグの設定情報は、記憶手段(RAM)に格納される。
【0041】
入賞するまで次回以降の遊技に当選状態を持ち越し可能な抽選フラグ(持越可能フラグ)と、入賞の如何に関わらず次回以降の遊技に当選状態を持ち越さずに非当選状態にリセットされる抽選フラグ(持越不可フラグ)とが用意されていることがある。この場合、前者の持越可能フラグが対応づけられる役としては、レギュラーボーナス(RB)およびビッグボーナス(BB)があり、それ以外の役(例えば、小役、リプレイ)は後者の持越不可フラグに対応づけられている。すなわち抽選フラグ設定処理では、内部抽選でレギュラーボーナスに当選すると、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態を、レギュラーボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行い、内部抽選でビッグボーナスに当選すると、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態を、ビッグボーナスが入賞するまで持ち越す処理を行う。このときメイン基板10は、内部抽選機能により、レギュラーボーナスやビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技でも、レギュラーボーナスおよびビッグボーナス以外の役(小役およびリプレイ)についての当否を決定する内部抽選を行っている。すなわち抽選フラグ設定処理では、レギュラーボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているレギュラーボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定し、ビッグボーナスの抽選フラグの当選状態が持ち越されている遊技において、内部抽選で小役あるいはリプレイが当選した場合には、既に当選しているビッグボーナスの抽選フラグと内部抽選で当選した小役あるいはリプレイの抽選フラグとからなる2種類以上の役に対応する抽選フラグを当選状態に設定する。
【0042】
リプレイ処理手段1600は、所定条件下で内部抽選におけるリプレイの当選確率を変動させる制御を行うことがある。リプレイ処理手段1600については、後に再度説明を加える。リプレイの抽選状態として、リプレイが内部抽選の対象から除外されるリプレイ無抽選状態、リプレイの当選確率が約1/7.3に設定されるリプレイ低確率状態、およびリプレイの当選確率が約1/6に設定されるリプレイ高確率状態という複数種類の抽選状態を設定可能とされている。リプレイの抽選状態を変化させることにより、内部抽選におけるリプレイの当選確率を変動させる。
【0043】
リール制御手段1300は、遊技者がスタートスイッチ134の押下操作(回転開始操作)によるスタート信号に基づいて、第1リール〜第3リールをステッピングモータにより回転駆動して、第1リール〜第3リールの回転速度が所定速度(約80rpm:1分間あたり約80回転となる回転速度)に達した状態において回転中のリールにそれぞれ対応する3つのストップボタン140の押下操作(停止操作)を許可する制御を行うとともに、ステッピングモータにより回転駆動されている第1リール〜第3リールを抽選フラグの設定状態(内部抽選の結果)に応じて停止させる制御を行う。
【0044】
また、リール制御手段1300は、3つのストップボタン140に対する押下操作(停止操作)が許可(有効化)された状態において、遊技者が3つのストップボタン140を押下することにより、そのリール停止信号に基づいて、リールユニット203のステッピングモータへの駆動パルス(モータ駆動信号)の供給を停止することにより、第1リール〜第3リールの各リールを停止させる制御を行う。
【0045】
すなわち、リール制御手段1300は、3つのストップボタン140の各ボタンが押下される毎に、第1リール〜第3リールのうち押下されたボタンに対応するリールの停止位置を決定して、決定された停止位置でリールを停止させる制御を行っている。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている停止制御テーブル(図示せず)を参照して3つのストップボタンの押下タイミングや押下順序等(停止操作の態様)に応じた第1リール〜第3リールの停止位置を決定し、決定された停止位置で第1リール〜第3リールを停止させる制御を行う。
【0046】
ここで停止制御テーブルでは、ストップボタン140の作動時点における第1リール〜第3リールの位置(押下検出位置)と、第1リール〜第3リールの実際の停止位置(または押下検出位置からの滑りコマ数)との対応関係が設定されている。抽選フラグの設定状態に応じて、第1リール〜第3リールの停止位置を定めるための停止制御テーブルが用意されることもある。
【0047】
遊技機では、リールユニット203がフォトセンサからなるリールインデックス(図示せず)を備えており、リール制御手段1300は、リールが1回転する毎にリールインデックスで検出される基準位置信号に基づいて、リールの基準位置(リールインデックスによって検出されるコマ)からの回転角度(ステップモータの回転軸の回転ステップ数)を求めることによって、現在のリールの回転状態を監視することができるようになっている。すなわち、メイン基板10は、ストップスイッチ140の作動時におけるリールの位置を、リールの基準位置からの回転角度を求めることにより得ることができる。
【0048】
リール制御手段1300は、いわゆる引き込み処理と蹴飛ばし処理とをリールを停止させる制御として行っている。引き込み処理とは、抽選フラグが当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止するように(当選した役を入賞させることができるように)リールを停止させる制御処理である。一方蹴飛ばし処理とは、抽選フラグが非当選状態に設定された役に対応する図柄が有効な入賞判定ライン上に停止しないように(当選していない役を入賞させることができないように)リールを停止させる制御処理である。すなわち本実施形態の遊技機では、上記引き込み処理及び蹴飛ばし処理を実現させるべく、抽選フラグの設定状態、ストップボタン140の押下タイミング、押下順序、既に停止しているリールの停止位置(表示図柄の種類)などに応じて各リールの停止位置が変化するように停止制御テーブルが設定されている。このように、メイン基板10は、抽選フラグが当選状態に設定された役の図柄を入賞の形態で停止可能にし、一方で抽選フラグが非当選状態に設定された役の図柄が入賞の形態で停止しないように第1リール〜第3リールを停止させる制御を行っている。
【0049】
本実施形態の遊技機では、第1リール〜第3リールが、ストップボタン140が押下された時点から190ms以内に、押下されたストップボタンに対応する回転中のリールを停止させる制御状態に設定されている。すなわち回転している各リールの停止位置を決めるための停止制御テーブルでは、ストップボタン140の押下時点から各リールが停止するまでに要するコマ数が0コマ〜4コマの範囲(所定の引き込み範囲)で設定されている。
【0050】
入賞判定手段1400は、第1リール〜第3リールの停止態様に基づいて、役が入賞したか否かを判定する処理を行う。具体的には、記憶手段(ROM)に記憶されている入賞判定テーブルを参照しながら、第1リール〜第3リールの全てが停止した時点で入賞判定ライン上に表示されている図柄組合せが、予め定められた役の入賞の形態であるか否かを判定する。
【0051】
入賞判定手段1400は、その判定結果に基づいて、入賞時処理を実行する。入賞時処理としては、例えば、小役が入賞した場合にはホッパ81を駆動してメダルの払出制御処理が行われるか、あるいはクレジットの増加され(規定の最大枚数例えば50枚まで増加され、それを超えた分だけ実際にメダル払い出される)、リプレイが入賞した場合にはリプレイ処理が行われ、ビッグボーナスやレギュラーボーナスが入賞した場合には遊技状態を移行させる遊技状態移行制御処理が行われる。
【0052】
払出制御手段1500は、遊技結果に応じたメダルの払い出しに関する払出制御処理を行う。具体的には、小役が入賞した場合に、役毎に予め定められている配当に基づいて遊技におけるメダルの払出数を決定し、決定された払出数に相当するメダルを、ホッパ駆動部80でホッパ81を駆動して払い出させる。この際に、ホッパ81に内蔵される図示しないモータに電流が流れることになる。
【0053】
メダルのクレジット(内部貯留)が許可されている場合には、ホッパ81によって実際にメダルの払い出しを行う代わりに、記憶手段(RAM)のクレジット記憶領域(図示省略)に記憶されているクレジット数(クレジットされたメダルの数)に対して払出数を加算するクレジット加算処理を行って仮想的にメダルを払い出す処理を行う。
【0054】
リプレイ処理手段1600は、リプレイが入賞した場合に、次回の遊技に関して遊技者の所有するメダルの投入を要さずに前回の遊技と同じ準備状態に設定するリプレイ処理(再遊技処理)を行う。リプレイが入賞した場合には、遊技者の手持ちのメダル(クレジットメダルを含む)を使わずに前回の遊技と同じ規定投入数のメダルが自動的に投入状態に設定される自動投入処理が行われ、遊技機が前回の遊技と同じ入賞判定ラインを有効化した状態で次回の遊技における回転開始操作(遊技者によるスタートスイッチ134の押下操作)を待機する状態に設定される。
【0055】
また、メイン基板10は、通常状態、ボーナス成立状態、およびボーナス状態の間で遊技状態を移行させる制御を行うことがある(遊技状態移行制御機能)。遊技状態の移行条件は、1の条件が定められていてもよいし、複数の条件が定められていてもよい。複数の条件が定められている場合には、複数の条件のうち1の条件が成立したこと、あるいは複数の条件の全てが成立したことに基づいて、遊技状態を他の遊技状態へ移行させることができる。
【0056】
通常状態は、複数種類の遊技状態の中で初期状態に相当する遊技状態で、通常状態からはボーナス成立状態への移行が可能となっている。ボーナス成立状態は、内部抽選でビッグボーナスあるいはレギュラーボーナスに当選したことを契機として移行する遊技状態である。ボーナス成立状態では、通常状態における内部抽選でビッグボーナスが当選した場合、ビッグボーナスが入賞するまでビッグボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持され、通常状態における内部抽選でレギュラーボーナスが当選した場合、レギュラーボーナスが入賞するまでレギュラーボーナスに対応する抽選フラグが当選状態に維持される。ボーナス状態では、ボーナス遊技によって払い出されたメダルの合計数により終了条件が成立したか否かを判断し、入賞したボーナスの種類に応じて予め定められた払出上限数を超えるメダルが払い出されると、ボーナス状態を終了させて、遊技状態を通常状態へ復帰させる。
【0057】
リールユニット203は、図示しない3つのリールを備えるが、3つのリールそれぞれにひとつづつステッピングモータが取り付けられている。ステッピングモータは、回転子(ロータ)として歯車状の鉄心あるいは永久磁石を備え、固定子(ステータ)として複数の巻線(コイル)を備え、電流を流す巻線を切り替えることによって回転動作させるものである。すなわち、固定子の巻線に電流を流して磁力を発生させ、回転子を引きつけることで回転するものである。回転軸を指定された角度で停止させることが可能なことから、スロットマシンのリールの回転駆動に使用されている。複数の巻線がひとつの相を構成する。相の数として、例えば、2つ(二相)、4つ(4相)、5つ(5相)のものもある。
【0058】
ステッピングモータは、各相の巻線への電流の与え方を変えることにより、特性を変えることができる(励磁モードが変わる)。二相型については次の通りである。
【0059】
・一相励磁
常に巻線一相のみに電流を流す。位置決め精度は良い。
【0060】
・二相励磁
二相に電流を流す。一相励磁の約2倍の出力トルクが得られる。位置決め精度は良く、停止したときの静止トルクが大きいため、停止位置を確実に保持できる。
【0061】
・一−二相励磁
一相と二相を交互に切り替えて電流を流す。一相励磁・二相励磁の場合のステップ角度の半分にすることができるので、滑らかな回転を得られる。
【0062】
なお、ステッピングモータを「駆動する」とは、当該モータを上記励磁により回転させることとともに、所望の位置で停止させその位置を保持するために各相を励磁することも含むものとする。
【0063】
スロットマシンでは、例えば、4相の基本ステップ角度1.43度のステッピングモータを使用し、パルスの出力方法として一−二相励磁を採用している。
【0064】
前述のように、サブ基板20にはスピーカ基板201が接続されている。図4に、遊技機の音響発生系統のブロック図を示す。
【0065】
図4において、SCは、スピーカーSPから音響を発声させるサウンドコントローラである。サウンドコントローラSCは、サブ基板20からの指令に基づき所定の音響(台詞、音楽、効果音など)をスピーカーSPから出力させる。
【0066】
本発明の実施の形態では、サウンドコントローラSCは、例えばスピーカ基板201に内蔵されているが、サブ基板20に内蔵されていてもよい。
【0067】
図5は、サウンドコントローラSCの内部ブロック図を示す。同図は概念図であり、発明の実施の形態に係る音響系統の動作説明に必要な部分のみを示している。
【0068】
SC1は、少なくともひとつのサウンドデータであって改変不能として扱いたいサウンドデータ(例えばWAV)を予め記憶しているサウンドデータ記憶部である(なお、後述の図9の処理によるチェックサムによる判定は必ずしも行う必要はない)。ここに記憶されているサウンドデータが改変されていないことは、当該サウンドデータのチェックサムによって担保されている(この点はさらに後述する)。このために、再生制御部SC4は、サウンドデータ記憶部SC1のサウンドデータのチェックサムを求めることができるようになっている。
【0069】
SC2−1乃至SC2−4は、前記サウンドデータに基づきそれぞれ音響信号を発生する複数の再生部である。各再生部SC2−1乃至SC2−4が発生する音響信号は互いに異なるものであり、その内容は後述のパラメータで指定される。なお、以下に説明するエフェクトを音響にかけない場合は、複数の再生部のいずれかのみを動作させるようにすればよい。この場合、合成処理は不要である。各再生部SC2−1乃至SC2−4が同じ音響を発生するようにもできるが、以下の説明は複数の音響信号が互いに異なることを前提としている。
【0070】
各再生部SC2−1乃至SC2−4は、それぞれ、前記音響信号の音量を制御する音量調整部と、前記音響信号の出力タイミングを制御する遅延処理部と、前記音響信号の再生速度を制御する再生速度調整部とを含んでいる。図5では図面を見やすくする関係上、再生部SC2−1のみ音量調整部、遅延処理部、再生速度調整部を示しているが、他の再生部SC2−2乃至SC2−4も同様である。
【0071】
SC3は、前記複数の音響信号を合成してひとつの合成音響信号を出力する合成部である。図5は4つのチャンネルのサウンドデータを合成してひとつにする装置を示している。合成部SC3はデジタル回路又はアナログ回路で構成される。その入力がデジタル信号のときはデジタル回路、例えば加算器で構成される。その入力がアナログ信号のときはアナログ回路、例えば増幅器(演算増幅器による加算回路)で構成される。合成部SC3の出力はスピーカーSPへ送られる。
【0072】
SC4は、再生部SC2−1乃至SC2−4を制御する再生制御部である。
【0073】
再生制御部SC4は、各再生部SC2−1乃至SC2−4にどのような態様で音響再生を行わせるかを指定するためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部SC4−1乃至SC4−3を含む。図5の例では、パラメータとして、残響効果(エコー)を奏するためのパラメータA、連続再生効果を奏するためのパラメータB、及び、いわゆるドプラー効果のような残響効果(エコー)を奏するためのパラメータCを示している。
【0074】
連続再生効果は、例えば、室内(仮に縦100m、横5mとする。)において、聞き手の100m離れたところで音楽を奏でており(すなわち、縦方向における一端の場所に演奏者がいて、他端の場所に聞き手がいる)、かつその奏でた音楽をマイクで拾って聞き手のそばにあるスピーカーからも出力するような場合に、スピーカーから出力される音声と遠くから聞こえる音が、聞こえるタイミングが異なりつつ、重なって聞こえる、という効果である。
【0075】
例えば、各再生部SC2−1乃至SC2−4がそれぞれ次の(ア)乃至(エ)の順番で音を再生するものとする。
(ア)音A→音B→音C→音D→無音→無音→無音
(イ)無音→音A→音B→音C→音D→無音→無音
(ウ)無音→無音→音A→音B→音C→音D→無音
(エ)無音→無音→無音→音A→音B→音C→音D
【0076】
上記例の左から4番目の時刻において、(ア)音D、(イ)音C、(ウ)音B、(エ)音Aの4つが同時に聞こえる。個別の音(例えば音A)に着目すると、(ア)乃至(エ)の4回聞こえることになる。
【0077】
各パラメータA乃至Cは、各再生部SC2−1乃至SC2−4の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の一つ又は複数を制御するためのパラメータである。例えば、図6(b)のパラメータA1は再生部SC2−1用のパラメータであり、パラメータA2は再生部SC2−2用のパラメータであり、パラメータA3は再生部SC2−3用のパラメータであり、パラメータA4は再生部SC2−4用のパラメータである。図7及び図8においても同様である。
【0078】
再生制御部SC4は、例えば図6(b)の各パラメータA1乃至A4を再生部SC2−1乃至SC2−4へそれぞれ送る。各再生部SC2−1乃至SC2−4は、与えられたパラメータに従ってサウンドデータ記憶部SC1からのサウンドデータを再生する。各再生部SC2−1乃至SC2−4は、所定のサウンドデータ(例えばWAV)を音響に戻すものである。この処理は公知であるので説明は省略する。
【0079】
再生制御部SC4は、さらに、サウンドデータSC1のサウンドデータのチェックサムを記憶しているチェックサム記憶部SC4−4を含む。当該チェックサムは、サウンドデータ記憶SC1に記憶されているサウンドデータが改変されていないことを担保するためのものである(このための処理は後述する)。
【0080】
次に、図6乃至図8を参照して発明の実施の形態に係る装置の動作について説明する。
【0081】
図6はひとつのサウンドデータに時間差を設け、かつ、音量を逓減させつつ複数のサウンドを再生することで残響効果(エコー)を生じさせるものである。
【0082】
すなわち、図6(a)のように、例えば再生部SC2−1によりサウンドデータを100%の音量で再生を開始し、この出力タイミングを基準として(=0)、遅延時間T、例えば0.03秒で再生部SC2−2により80%の音量で再生を開始する。同様に、再生部SC2−3とSC2−4で遅延時間2T、3T、音量=60%、40%で再生を開始する。なお、再生部SC2−1乃至SC2−4で再生するサウンド自体はいずれも同じものである。前述のようにサウンドデータが改変の許されないものであっても、その再生に際して少なくとも音量・遅延時間・再生速度については任意に設定することは問題がない。
【0083】
図6(a)の4つのサウンドが合成部SC3で合成されるのであるが、合成された音響はいわゆるエコーがかかったものとなる。すなわち、図6(a)のように再生することで残響効果を奏することができる。
【0084】
図6(b)は、図6(a)のように再生するためのパラメータの具体例を示す。これは、図5のパラメータAに相当する。最上段のパラメータA1は再生部SC2−1に送られるものであり、音量=100%、遅延=0でサウンドを再生する。次の段のパラメータA2は再生部SC2−2に送られるものであり、音量=80%、遅延=Tでサウンドを再生する。次の段のパラメータA3は再生部SC2−3に送られるものであり、音量=60%、遅延=2Tでサウンドを再生する。次の段のパラメータA4は再生部SC2−4に送られるものであり、音量=40%、遅延=3Tでサウンドを再生する。
【0085】
図7はひとつのサウンドデータに時間差を設けつつ連続して再生することで連続再生効果を生じさせるものである。連続再生効果は、前述のように、室内において、聞き手の100m離れたところで音楽を奏でており、かつその奏でた音楽をマイクで拾って聞き手のそばにあるスピーカーからも出力するような場合に、スピーカーから出力される音声と遠くから聞こえる音が、聞こえるタイミングが異なりつつ、重なって聞こえる、という効果である。
【0086】
すなわち、図7(a)のように、例えば再生部SC2−1によりサウンドデータを100%の音量で再生を開始し、この出力タイミングを基準として(=0)、遅延時間Tで再生部SC2−2により100%の音量で再生を開始する(どのチャンネルも音量は変わらない)。同様に、再生部SC2−3とSC2−4で遅延時間2T、3T、音量=100%で再生を開始する。なお、図7(a)においては、線が重なって見づらくならないように、サウンドを示す線を少しずらしているが、音量は上述のようにいずれも同じである。
【0087】
図7(a)の4つのサウンドが合成部SC3で合成されるのであるが、合成された音響は上述のようになり、連続再生効果を奏することができる。
【0088】
図7(b)は、図7(a)のように再生するためのパラメータの具体例を示す。これは、図5のパラメータBに相当する。最上段のパラメータB1は再生部SC2−1に送られるものであり、音量=100%、遅延=0でサウンドを再生する。次の段のパラメータB2は再生部SC2−2に送られるものであり、音量=100%、遅延=Tでサウンドを再生する。次の段のパラメータB3は再生部SC2−3に送られるものであり、音量=100%、遅延=2Tでサウンドを再生する。次の段のパラメータB4は再生部SC2−4に送られるものであり、音量=100%、遅延=3Tでサウンドを再生する。
【0089】
図8はひとつのサウンドデータに時間差を設け、かつ音量と再生速度を変化させつつ連続して再生することでドプラー効果のような残響効果(エコー)を生じさせるものである。この効果は、例えば救急車のサイレンの変化を演出に取り入れるときに有効である。
【0090】
すなわち、図8(a)のように、例えば再生部SC2−1によりサウンドデータを音量=80%、再生速度=150%で再生を開始し、この出力タイミングを基準として(=0)、遅延時間Tで再生部SC2−2により音量=100%、再生速度=130%で再生を開始する。同様に、再生部SC2−3とSC2−4で遅延時間2T、3T、音量=80%、60%、再生速度=100%、70%で再生を開始する。
【0091】
図8(a)の4つのサウンドが合成部SC3で合成されるのであるが、合成された音響は、音量が大きくなった後に小さくなるとともに、その音程が高から低に変化する。これによりドプラー効果を模擬することができる。
【0092】
図8(b)は、図8(a)のように再生するためのパラメータの具体例を示す。これは、図5のパラメータCに相当する。最上段のパラメータC1は再生部SC2−1に送られるものであり、音量=80%、遅延=0、再生速度=150%でサウンドを再生する。次の段のパラメータC2は再生部SC2−2に送られるものであり、音量=100%、遅延=T、再生速度=130%でサウンドを再生する。次の段のパラメータC3は再生部SC2−3に送られるものであり、音量=80%、遅延=2T、再生速度=100%でサウンドを再生する。次の段のパラメータC4は再生部SC2−4に送られるものであり、音量=60%、遅延=3T、再生速度=70%でサウンドを再生する。
【0093】
なお、図8において、再生速度を変化させないようにしてもよい(例えば100%で一定とする)。このようにしても音量は変化するから、音を出すものが一旦近づいて遠ざかるという効果を与えることがでる。
【0094】
発明の実施の形態によれば、パラメータを指定してサウンドを再生することにより、ひとつのサウンドデータに基づき多様な音響を発生することができる。音響の種類ごとにサウンドデータを用意する場合と比べて、データ量が少なくて済みメモリを有効に使用することができる。
【0095】
また、改変不能(改変不可)とされているサウンドデータであっても、さまざまな音響を発生することができ、改変可能とされているサウンドデータを同様の演出効果を提供できる。
【0096】
なお、以上の説明において、再生部は、音量調整部、遅延処理部及び再生速度調整部の3つの処理部を備えていたが、これらのうちの少なくともいずれかを備えていれば、上記効果を奏する。例えば、音量調整部を備えることで複数(4つ)の再生部SC2−1乃至SC2−4の音量を独立に調整できるので、各再生部の何らかの物理的な性質(例えば再生周波数帯域)の違いに基づき音質の微調整が可能になる。
【0097】
再生部SC2−1が音量調整部を備え、再生部SC2−2が遅延処理部を備えるというように、各再生部が異なる処理部を備えるのであれば、その違いに応じてやはり音質の微調整が可能である(再生速度調整部についても同様)。
【0098】
例えば、再生部が遅延処理部を備えることで前述の図7のような処理が可能であり、再生速度調整部を備えることで、前述の図8のような処理が可能である(音量調整できない点で調整可能な範囲が狭く効果が限定されるが、一定の効果を期待することができる)。
【0099】
上述の例と重複する部分があるが、様々なパターンを列挙する。
【0100】
・同じタイミング、同じ音量、異なる再生速度
再生速度調整部のみを備える場合に相当する。数人で同じリズム(太鼓など)を叩いているが、各人の叩くタイミングがズレてしまっているような音響を再生できる。
【0101】
・同じタイミング、異なる音量、同じ再生速度
音量調整部のみを備える場合に相当する。音質の微調整が可能である。例えば、奥行きのある音を聞かせることができる(同じ音が遠くと近くで鳴っているような聞こえ方)。
【0102】
・異なるタイミング、同じ音量、同じ再生速度
遅延処理部のみを備える場合に相当する。各々の音声を重ならないように再生すれば、連呼しているようにできる。
【0103】
・同じタイミング、異なる音量、異なる再生速度
複数人(音の高低、セリフの速度で表現)が、同じ言葉を同時に発声発生するも、ズレてしまうような音響を再生できる。
【0104】
・異なるタイミング、異なる音量、同じ再生速度
各々の音声を重ならないように再生すれば、山彦のような音響を再生できる。
【0105】
・異なるタイミング、異なる音量、異なる再生速度
複数人(音の高低、セリフの速度で表現)が、ロ々に同じ言葉を発声するような音響を再生できる。
【0106】
ところで、権利的な問題で加工することが不可能なサウンドデータであっても、技術的には加工可能である。したがって、一切の手を加えることなくそのままの状態で遊技機のメモリに記憶させておかなければならないという契約が存在する場合において、その実効性を担保する技術的手段を設けておくことが好ましい。
【0107】
図9は、そのための処理を示す。同図は、サウンドデータの加工の有無をチェックサムに基づき判定している。加工不可のサウンドデータのチェックサムは常に同じであるが、もし加工されるとチェックサムは変化する。そこで、再生制御部SC4にメモリSC4−4を用意し、オリジナルのサウンドデータのチェックサムをそこに記憶しておき、再生処理を開始する際に当該チェックサムを検査するようにすることで加工されたサウンドの再生を不可能にする。
【0108】
S1:再生制御部SC4は、サウンドデータ記憶部SC1のサウンドデータのチェックサムを求める。
サウンドデータの先頭から最後までのデータについて、あるいは予め定められた範囲のデータについてチェックサムを求める。チェックサムの対象となるデータの範囲は予め定められており、これに対応するチェックサムがメモリSC4−4に記憶されている。チェックサムの求め方は公知であるのでその説明は省略する。
【0109】
S2:再生制御部SC4は、S1で求めたチェックサムがメモリSC4−4のチェックサムと一致するかどうか判定する。
一致したときは(YES)、当該サウンドデータは改変されていないから処理を継続する。不一致のときは(NO)、当該サウンドデータは改変されたから再生処理S3乃至S5を行うことなく処理を終了する。
【0110】
S3:再生制御部SC4は所定のパラメータを読み出す。
【0111】
S4:再生制御部SC4は読み出したパラメータを再生部SC2−1乃至SC2−4へ送る。
【0112】
S5:再生部SC2−1乃至SC2−4は、受けたパラメータに従ってサウンドデータをデコードして音響信号を生成する。
【0113】
なお、図9の処理は必須ではなく、再生制御部SC4はチェックサムの判定を行うことなく各再生部を制御するようにしてもよく。この場合、再生制御部SC4はチェックサムを記憶しておく必要はない。
【0114】
上記例ではチェックサムを用いていたが、これ以外のものも使用することができる。要するに、サウンドデータに含まれる音響に係る複数のデータの全部又は一部について予め求められた固有の特徴値で、当該サウンドデータを他のサウンドデータと区別できるものであればよい。例えば、公知のハッシュ値、排他的論理和などの論理演算による値を用いることができる。あるいは、サウンドデータの特定のアドレスのデータ(例えばサウンドデータの先頭データ(ヘッダに含まれるサウンドを特定するための固有のデジタルデータなど)を固有の特徴値として扱うことができる。
【0115】
以上の説明においてスロットマシンを例に取り上げたが、本発明の実施の形態はこれに限らずパチンコ機のようなほかの遊技機にも適用できることは言うまでもない。
【0116】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0117】
20 サブ基板(制御基板)
SC サウンドコントローラ(音響制御部)
SC1 サウンドデータ記憶部
SC2−1乃至SC2−4 再生部(第1再生部、第2再生部)
SC3 合成部
SC4 再生制御部
SP スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のコマンドに基づき演出に係る処理を行う制御基板と、前記演出に係る音響を発生する音響装置と、前記制御基板の制御に基づき前記音響装置を制御する音響制御部とを備える遊技機において、
前記音響制御部は、
少なくともひとつのサウンドデータを予め記憶しているサウンドデータ記憶部と、
前記サウンドデータに基づき第1音響信号を発生する第1再生部と、
前記サウンドデータに基づき、前記第1音響信号とは異なる第2音響信号を発生する第2再生部と、
前記第1音響信号と前記第2音響信号を合成して合成音響信号を出力する合成部とを備え、
前記第1再生部及び前記第2再生部は、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の音量をそれぞれ制御する音量調整部と、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の出力タイミングをそれぞれ制御する遅延処理部と、前記第1音響信号及び前記第2音響信号の再生速度をそれぞれ制御する再生速度調整部のうちの少なくともいずれかを、それぞれ含み、
さらに、前記第1音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するための第1パラメータと、前記第2音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するためのパラメータであって前記第1パラメータとは異なる第2パラメータを予め記憶するとともに、前記第1パラメータと前記第2パラメータを前記第1再生部と前記第2再生部へそれぞれ与える再生制御部を備え、
前記第1再生部及び前記第2再生部は、それぞれ、前記第1パラメータ及び前記第2パラメータに従って前記第1音響信号及び前記第2音響信号を発生することを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記第1パラメータと前記第2パラメータの前記再生速度を同じとし、前記出力タイミングを異ならせ、前記出力タイミングの遅い方を速い方よりも前記音量が小さくなるように指定することで、前記サウンドデータに基づく音響に残響効果を施すことを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記第1パラメータと前記第2パラメータの前記再生速度及び前記音量を同じとするが、前記出力タイミングを異ならせることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項4】
前記サウンドデータに基づき、前記第1音響信号及び前記第2音響信号とは異なる第3音響信号を発生する第3再生部を備え、
前記再生制御部は、さらに、前記第3音響信号の前記音量、前記出力タイミング及び前記再生速度の少なくともいずれかを制御するための第3パラメータを予め記憶し、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、前記第3パラメータの順で前記第1再生部乃至前記第3再生部へ出力し、
前記合成部は、前記第1音響信号乃至前記第3音響信号を合成して合成音響信号を出力し、
前記第2パラメータによる前記音量は、前記第1パラメータと前記第3パラメータによる音量のいずれよりも大きくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項5】
さらに、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ及び前記第3パラメータによる前記再生速度は、この順で小さくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項4記載の遊技機。
【請求項6】
前記サウンドデータは、音響に係る複数のデータとともに、当該複数のデータの全部又は一部について予め求められた固有の特徴値を含み、
前記再生制御部は、前記サウンドデータの前記固有の特徴値を予め記憶しており、
再生を開始するときに、前記サウンドデータに基づき前記固有の特徴値を取得し、これを予め記憶していた前記固有の特徴値と比較し、両者が一致したときに再生を開始することを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれかに記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99407(P2013−99407A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244325(P2011−244325)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(390031772)株式会社オリンピア (2,719)
【Fターム(参考)】