運転支援装置
【課題】 ユーザの視力に応じて撮像された道路標識データを拡大して表示することができる「運転支援装置」を提供する。
【解決手段】 運転支援装置は、自車の進行方向を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、道路標識が検出されたとき撮像データから道路標識データ320を抽出する抽出手段と、少なくともユーザの視力情報に基づき道路標識デー320タを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、決定された倍率に基づき道路標識データを加工する道路標識加工手段と、加工された道路標識データ320を表示する表示手段とを有する。
【解決手段】 運転支援装置は、自車の進行方向を撮像する撮像手段と、撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、道路標識が検出されたとき撮像データから道路標識データ320を抽出する抽出手段と、少なくともユーザの視力情報に基づき道路標識デー320タを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、決定された倍率に基づき道路標識データを加工する道路標識加工手段と、加工された道路標識データ320を表示する表示手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用撮像カメラにより撮像された撮像データを用いて道路標識を表示する機能を備えた運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、誘導案内時に、交差点案内図や撮像カメラによって撮像された実際の道路標識をディスプレイやフロントガラス上に表示している。例えば、特許文献1は、目的地までの誘導経路案内に対応した進行方向を示す矢印や交差点案内図を、フロントガラスの上部に表示する技術を開示している。これにより、目的地までの誘導経路情報確認する際にディスプレイに視線を移す必要がなくなり、安全性の高い走行を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−292031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の交通法規により、道路標識や周辺情況を見落とさないために、自動車の運転手は、両眼で0.7以上の視力を有することが義務付けられている。しかし、実際の視力は個人によってバラツキがあったり、加齢やその他の原因により気が付かないうちに低下していることもある。このような視力のバラツキあるいは低下によって、道路標識を早期に確認できる運転者もいれば、確認が遅れたり、見落としてしまう運転者もいる。さらに道路標識を視認することができる距離は、自車速度、車高、運転手の集中力、夜間、天候などの様々な要因によっても変動する。
【0005】
本発明は、このような課題に着眼し、撮像データから得られた道路標識をユーザの視力等に応じた倍率で拡大して表示することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、自車の進行方向を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出する抽出手段と、少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工する道路標識加工手段と、加工された道路標識データを表示する表示手段とを有する。
【0007】
好ましくは運転支援装置はさらに、ユーザの視力情報を入力する入力手段と、入力された視力情報を記憶する記憶手段とを含み、前記倍率決定手段は、前記記憶手段から読み出された視力情報に基づき前記道路標識データの倍率を決定する。
【0008】
好ましくは運転支援装置はさらに、前記道路標識までの距離を判定する距離判定手段を含み、前記倍率決定手段は、道路標識までの距離に基づき倍率を決定する。運転支援装置はさらに、自車の走行速度を判定する速度判定手段を含み、前記倍率決定手段は、自車の走行速度に基づき倍率を決定することができる。運転支援装置はさらに、道路標識データに含まれる文字サイズを判定するサイズ判定手段を含み、前記倍率決定手段は、文字サイズに基づき倍率を決定することができる。好ましくは前記表示手段は、道路標識に重複するように前記道路標識データを自車のフロントガラス上に表示する。
【0009】
本発明に係る撮像データを用いた道路標識の表示方法は、撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、加工された道路標識データを表示するステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像データから得られた道路標識データを少なくともユーザの視力情報に応じた倍率で表示するようにしたので、ユーザは、肉眼で道路標識を見るよりも確実に道路標識を視認することができる。また、道路標識が遠くにあっても、これを拡大することで、肉眼で道路標識を視認できる距離に到達する前に、道路標識を視認することが可能となる。これにより、交差点案内等の進行方向の確認を正確にかつ迅速に行うことができ、ユーザの視力の負担を軽減し、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る運転支援装置は、単体として車両に搭載することも可能であるが、好ましくは、車載用ナビゲーションシステムの一部として利用される。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。運転支援装置10は、ユーザからの指示等を入力する入力部20、少なくとも自車の前方を撮像する撮像部30、自車の速度や自車位置などの車両情報を取得する車両情報取得部40、道路標識等を視覚的に表示したり道路標識の案内内容を音声出力したりする出力部50、道路標識のフォーマット等の種々のデータを格納するデータベース60、運転支援装置の制御を行う制御部70、プログラムや撮像データ等を記憶する記憶部80、および各部を接続する内部バス90を含んで構成される。
【0013】
入力部20は、操作パネル、音声入力部、あるいはリモコン操作等を含み、ユーザは、入力部20を介して視力情報やその他の必要な情報を入力することができる。撮像部30は、自車の前方に取り付けられた少なくとも1つの撮像カメラを含み、撮像カメラにより自車の前方を撮像する。車両情報取得部40は、GPS衛星、車速センサ、ジャイロ、ミリ波レーダ等を用いて自車位置情報、車両の速度情報、あるいは必要に応じて目的物までの距離情報を取得する。出力部50は、例えばディスプレイやスピーカ等を含み、ナビゲーションシステムによる自車位置周辺の道路地図や誘導経路を表示したり、音声案内をする。また、表示方法は、ディスプレイに限らず、自車のフロントガラスにプロジェクタにより画像データを投射するものであってもよい。本実施例では、撮像部30で撮像された道路標識をフロントガラス上に表示するものとする。
【0014】
記憶部80は、入力部20によって入力されたユーザの視力情報や、撮像部30によって撮像された撮像データ、撮像データから抽出された道路標識データ、フロントガラスに表示するために道路標識データを拡大した拡大図データ等を記憶する。これらのデータは、必要に応じて記憶部80から読み出される。また、記憶部80は、運転支援装置が実行する種々のプログラムを格納することができる。例えば、撮像データにより撮像された道路標識を表示する道路標識表示プログラム等を含んでいる。制御部70は、これらのプログラムを実行し、運転支援装置の動作を制御する。
【0015】
図2は、道路標識表示プログラムの機能ブロック図である。道路標識表示プログラム100は、撮像部30によって撮像された撮像データを記憶部80に書込みこれを保持する撮像データ保持部110と、撮像データが道路標識を撮像したか否かを検出する道路標識検出部120と、道路標識が検出されたとき撮像データから道路標識領域のみを抽出する道路標識抽出部130と、ユーザの視力情報を記憶部80から読み出す視力情報取得部部140と、車両情報を取得する車両情報取得部150と、データベース60に格納された倍率決定テーブルと視力情報を参照して、道路標識データの倍率を決定する倍率決定部160と、倍率決定部で決定された倍率で道路標識データを拡大する道路標識拡大部170とを含んでいる。
【0016】
道路標識検出部120は、撮像データを画像解析することにより、道路標識が撮像されたか否かを検出する。第1の検出方法として、道路標識は、典型的に、背景色が青色(一般道路)又は緑色(高速道路)でありかつ矩形状であることから、撮像データ内に、一定のサイズ以上の青色又は緑色の矩形領域が認識されたとき、道路標識を撮像されたと判定することができる。また、第2の検出方法として、図3(a)ないし(d)に示すような道路標識フォーマット200〜230をデータベース60に格納しておき、これらの道路標識フォーマット200〜230と撮像データとをパターンマッチングして道路標識を検出することができる。さらには第1の検出方法と第2の検出方法の双方を用いて道路標識の検出を行うようにしてもよいし、これ以外の公知の画像処理技術を用いて行うようにしてもよい。
【0017】
図3(a)は、十字路の交差点の道路標識のフォーマット200である。白色の矢印で十字路の交差点の形と進行方向を示し、領域202には各進行方向にある都市名、地域名、施設名などが記載される。領域204には道路標識の設置位置から案内交差点までのおよその距離が記載される。図3(b)は、十字路の交差点の別の道路標識のフォーマット210であり、進行方向毎に標識が区切られている。各領域には、進行方向を示す白色の矢印と、各進行方向にある地名等を示す領域212と、交差点までの距離を示す領域214を含む。図3(c)は、図3(a)に示す道路標識のフォーマット200に、道路名を記載する領域222と領域224を加えたものである。領域222は、国道番号および県道番号を記載する。例えば国道1号線の場合は逆三角形の内部に「1」と表記し、県道134号線の場合には六角形の内部に「134」と表記する。領域224は、道路の具体的な名称や通称を記載する。図3(d)は、直進方向に在る地名情報と距離情報を示す道路標識のフォーマット230である。白色で示す矢印は直進を示し、領域232には地名情報等が記載され、領域234には領域232に記載されている場所までの距離情報が記載されている。
【0018】
道路標識抽出部130は、道路標識検出部120によって道路標識が検出されると、これに応答して撮像データから道路標識部分を抽出する。好ましくは、図3(a)ないし(d)に示す道路標識フォーマットを用い、撮像データから道路標識フォーマットと一致する領域を切り出す。但し、切り出しの方法は、必ずしも道路標識フォーマットを用いる必要はなく、撮像データに青色または緑色の矩形領域が含まれていれば、道路標識と推定し、切り出しを行うこともできる。切り出した道路標識データは、記憶部80に格納する。
【0019】
視力情報は、ユーザによって入力することができる。例えば、入力部20は、テンプレートなどを用意し、複数の視力(例えば、2.0、1.5、1.2、・・・0.1など)の中から所望の視力を選択させるようにしてもよい。また、視力情報としては、単なる視力の他に、近視、遠視などを入力しまたは選択できるようにしてもよい。さらに、入力部20は、視力判定画面を含み、視力判定画面によりユーザの視力を判定するようにしてもよい。例えば、各々の大きさが異なる複数の文字または図形を表示し、ユーザが肉眼にて視認することができる大きさの文字または図形を選択させ、ユーザの視力を判定し、これを視力情報とすることができる。
【0020】
倍率決定部160は、ユーザの視力情報を参照して道路標識データの倍率を決定する。好ましくは、図4に示すような視力情報と倍率との関係を規定した倍率判定テーブルを用いることができる。同図の倍率判定テーブルは一例であるが、各視力とそれに対応する推奨倍率が規定されている。この推奨倍率に合わせて道路標識データを拡大して表示すれば、ユーザは、遠くにあるような道路標識、あるいは小さな文字の道路標識であっても正確に視認することができる。このような推奨倍率は、ユーザ設定により変更できるようにしてもよい。また、倍率判定テーブルは、図4(b)に示すように、遠視や近視に応じて推奨倍率を変更するようにしてもよい。
【0021】
次に、本実施例の運転支援装置による撮像データを利用した道路標識の表示動作について図5のフローチャートを参照して説明する。まず、ユーザによって入力部20から視力情報が入力されると、その視力情報が記憶部80に記憶される(ステップS101)。次に、自車の走行の開始に伴い、撮像部30により自車の進行方向の撮像が開始される(ステップS102)。道路標識検出部120は、撮像データから道路標識の有無の検出を行い(ステップS103)、道路標識が検出されると、道路標識抽出部140は、撮像データをトリミングし、撮像データから道路標識に相当する道路標識データを抽出し、これを記憶部80に記憶する(ステップS104)。
【0022】
次に、倍率決定部160は、ユーザの視力情報に基づき道路標識データの倍率を決定する(ステップS105)。このとき、倍率決定部160は、車両情報取得部150から得られた自車の速度等の状況を考慮した係数を倍率に乗じるようにしてもよい。例えば、自車の速度が一定のしきい値以上であれば、道路標識に見難さを考慮し、係数を乗算して倍率をさらに大きくすることができる。
【0023】
倍率決定部160により道路標識データの倍率が決定されると、これに応答して道路標識拡大部170は道路標識データを倍率に応じて拡大する(ステップS106)。制御部70は、拡大された道路標識データをフロントガラス上に投影表示する(ステップS107)。好ましくは、肉眼で見える道路標識に道路標識データが重複するように道路標識データを表示する。
【0024】
制御部70は、道路標識データを表示してから一定距離を走行するまで道路標識データを表示させ、一定距離を走行したとき、道路標識データを更新させる(ステップS108)。つまり、道路標識に接近したときの撮像データから道路標識データを抽出し、これを拡大して表示する。そして、道路標識を通過したとき、すなわち撮像データから道路標識を検出することができなくなったとき、道路標識データを消去する。
【0025】
図6は、図5に示す倍率決定および道路標識データの拡大の詳細な動作フローを示す図である。まず、視力情報取得部140は、記憶部80からユーザの視力情報を取得し(ステップS201)、これを倍率決定部160へ提供する。倍率決定部160は、データベース60に格納されている倍率判定テーブル(図4を参照)を読み出し(ステップS202)、ユーザの視力情報に対応した推奨倍率を特定する。このとき、推奨倍率をディスプレイ等に表示し、ユーザによる最終決定を行うようにしてもよいし、あるいは、ユーザによる倍率変更の指定があればそれを優先してもよい。
【0026】
倍率決定部160による倍率が決定されると(ステップS203)、道路標識拡大部160は、記憶装置80から道路標識データを読み出し(ステップS204)、決定された倍率に従い道路標識データを拡大(必要であれば縮小)し、拡大された道路標識データを作成する(ステップS205)。拡大された道路標識データは記憶部80に記憶される(ステップS206)。
【0027】
次に、道路標識データの表示例について説明する。図7(a)は、本実施例により拡大された道路標識データ320をフロントガラス300へ表示したときの例であり、図7(b)は、フロントガラス300の前方に見える実際の道路標識310の例である。図7(a)に示すように、道路標識データ320は、実際の道路標識310が隠れるようにその上に拡大して表示されるため、運転者にとって特別な違和感はない。また、道路標識データ320は、視力に応じて拡大されているので、道路標識を見落としたり、誤認識することを防止することができる。他方、図7(b)では、実際の道路標識310が一定の大きさになるためには、道路標識310までもっと接近する必要がある。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、ユーザの視力情報に加えて、それ以外の要因、例えば、道路標識までの距離、自車の速度などを考慮して倍率を決定する。
【0029】
図8は、第2の実施例による道路標識データの倍率決定動作を説明するフローチャートである。まず、視力情報取得部140により記憶部80からユーザの視力情報が取得され(ステップS301)、次いで、車両情報取得部150により車両情報が取得される(ステップS302)。車両情報は、自車から道路標識までの距離情報、自車の走行速度などの情報である。道路標識までの距離は、ミリ波レーダや赤外線センサなどを用いる他、撮像データに映し出された道路標識の大きさから算出することができる。
【0030】
次に、倍率決定部160は、倍率を決定するための倍率判定テーブルをデータベース60から読み出す(ステップS304)。図9は、第2の実施例による倍率判定テーブルの一例である。図9(a)の判定テーブルは、ユーザの視力情報と、自車位置から道路標識までの距離との関係から倍率を決定している。一例として、ユーザの視力を0.7から1.2までの6段階に分け、自車から道路標識までの距離を100mから600mの6段階に分ける。視力が低いほど、かつ道路標識までの距離が大きくなるほど、推奨倍率が高くなる。なお、推奨倍率は、ユーザ設定により変更することも可能である。
【0031】
図9(b)の倍率判定テーブルは、ユーザの視力情報と自車の走行速度との関係から倍率を決定している。一例として、視力を0.7から1.2までの6段階に分け、速度を時速40kmから140kmの6段階に分ける。視力が低いほど、かつ速度が速くなるほど、推奨倍率が高くなる。なお、道路標識までの距離と走行速度の双方を考慮して倍率を決定するようにしてもよい。例えば、図9(a)に示す推奨倍率に、速度が速くなるに従い大きくなる係数を乗じてもよいし、図9(b)に示す推奨倍率に、道路標識までの距離が大きくなるに従い大きくなる係数を乗じてもよい。
【0032】
倍率決定部160は、このような倍率判定テーブルを利用して倍率を決定し(ステップS305)、あとは、第1の実施例のときと同様に、倍率に応じて道路標識データが拡大されるように道路標識データを加工し、これを記憶する(ステップS306〜S308)。
【0033】
図10は、道路標識までの距離に応じた道路標識データの表示例である。図10(a)は、道路標識手前600m地点、図10(b)は、道路標識手前300m地点、図10(c)は道路標識手前100m地点である。仮に、ユーザの視力を0.7としたとき、図10(a)に示すように自車が道路標識の手前600m地点のとき、道路標識データ320は、2倍に拡大されてフロントガラス300上に表示される。自車が道路標識手前300m地点に達すると、図10(b)に示すように、道路標識データ320の倍率1.4倍に低下するが、自車が道路標識に接近している分だけ道路標識データが大きくなっている。このため、倍率が小さくなっても、道路標識データ320の表示サイズは、ほとんど変わらない。自車が道路標識手前100m地点に達すると、道路標識データの320の倍率は1.0倍となってフロントガラス300に表示される。
【0034】
また、道路標識までの距離を判定する場合には、道路標識の手前一定距離の時点で、道路標識データの表示を終了するようにしてもよい。道路標識に接近した場合には、実際の道路標識の方が違和感が少なく、道路標識までの距離感をつかみ易いためである。この場合、道路標識データの表示サイズが実際の道路標識のサイズとがほぼ等しくなったときに、道路標識データの表示から実際の道路標識へ切り替えることが望ましい。
【0035】
また、図10の表示例では、道路標識までの距離が小さくなるにもかかわらず、道路標識データの表示サイズがほぼ一定となるような例を示したが、これに限らず、道路標識に近づくとそれに応じて道路標識データの表示サイズが大きくなるようにし、道路標識までの距離感を与えるようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、道路標識データに表記された文字を切り出し、文字サイズを判定して倍率を決定するものである。文字サイズは、例えば、図3に示すような道路標識のフォーマットの文字等の記載領域202、212、222、224、232、234の大きさから推測することができる。あるいは、公知の文字認識手段を用いて、記載領域から文字の切り出しを行い、切り出した文字から文字サイズを推測してもよい。
【0037】
好ましくは倍率決定部160は、図11に示す倍率判定テーブルを用いることができる。このテーブルは、ユーザの視力と文字サイズとの関係から倍率を規定している。例えば、複数のしきい値S1、S2、S3(S1<S2<S3)を用意しておき、道路標識データから抽出された文字サイズMとしきい値S1、S2、S3を比較し、文字サイズMが、M<S1、S1<M<S2、S2<M<S3、S3<Mを判定する。文字サイズMが小さいほど推奨倍率が大きく設定され、道路標識データは大きく表示される。なお、第3の実施例を、第1および第2の実施例との組合せることで(例えば係数を乗じることで)、倍率を決定するようにしてもよい。
【0038】
上記実施例では、道路標示データの倍率を決定するに際して倍率判定テーブルを用いたが、これに限らず、演算処理等によって倍率を決定するようにしてもよい。さらに上記実施例では、道路標識の表示をプログラムにより実行する例を示したが、例えば図2に示すような機能ブロックは、ハードウエアによって実行することも可能であるし、ハードウエアとソフトウエアの双方によって実行することも可能である。
【0039】
さらに、道路標識データの倍率は、車両情報以外にも、雨天、晴天のような天候情報、朝昼夜のような時間帯情報、山間部やトンネルなどの地形情報などを考慮して決定してもよい。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求項の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例の道路標識表示プログラムの機能ブロック図である。
【図3】道路標識のフォーマット例を示す図である。
【図4】本実施例に係る倍率判定テーブルの一例である。
【図5】本実施例による撮像データを利用した道路標識表示の動作フローチャートである。
【図6】道路標識の倍率決定および拡大の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)は拡大された道路標識データの表示例であり、図7(b)は実際の道路標識の例である。
【図8】本発明の第2の実施例による運転支援装置の道路標識表示の動作フローである。
【図9】図9(a)は、視力と道路標識までの距離との関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例、図9(b)は、視力と自車の走行速度との関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例である。
【図10】図10(a)は道路標識手前600m地点、図10(b)は道路標識手前300m地点、図10(c)は道路標識手前100m地点における道路標識データの表示例を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施例における視力と文字サイズとの関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例である。
【符号の説明】
【0042】
10:運転支援装置 20:入力部
30:撮像部 40:車両情報受信部
50:出力部 60:データベース
70:制御部 80:記憶部
90:内部バス 100:道路標識表示プログラム
110:撮像データ保持部 120:道路標識検出部
130:標識情報抽出部 140:視力情報取得部
150:車両情報取得部 160:倍率決定部
170:道路標識拡大部
200、210、220、230:道路標識のフォーマット
300:フロントガラス 320:拡大された道路標識データ
310:実際の道路標識
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用撮像カメラにより撮像された撮像データを用いて道路標識を表示する機能を備えた運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置は、誘導案内時に、交差点案内図や撮像カメラによって撮像された実際の道路標識をディスプレイやフロントガラス上に表示している。例えば、特許文献1は、目的地までの誘導経路案内に対応した進行方向を示す矢印や交差点案内図を、フロントガラスの上部に表示する技術を開示している。これにより、目的地までの誘導経路情報確認する際にディスプレイに視線を移す必要がなくなり、安全性の高い走行を行うことができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−292031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在の交通法規により、道路標識や周辺情況を見落とさないために、自動車の運転手は、両眼で0.7以上の視力を有することが義務付けられている。しかし、実際の視力は個人によってバラツキがあったり、加齢やその他の原因により気が付かないうちに低下していることもある。このような視力のバラツキあるいは低下によって、道路標識を早期に確認できる運転者もいれば、確認が遅れたり、見落としてしまう運転者もいる。さらに道路標識を視認することができる距離は、自車速度、車高、運転手の集中力、夜間、天候などの様々な要因によっても変動する。
【0005】
本発明は、このような課題に着眼し、撮像データから得られた道路標識をユーザの視力等に応じた倍率で拡大して表示することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運転支援装置は、自車の進行方向を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出する抽出手段と、少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工する道路標識加工手段と、加工された道路標識データを表示する表示手段とを有する。
【0007】
好ましくは運転支援装置はさらに、ユーザの視力情報を入力する入力手段と、入力された視力情報を記憶する記憶手段とを含み、前記倍率決定手段は、前記記憶手段から読み出された視力情報に基づき前記道路標識データの倍率を決定する。
【0008】
好ましくは運転支援装置はさらに、前記道路標識までの距離を判定する距離判定手段を含み、前記倍率決定手段は、道路標識までの距離に基づき倍率を決定する。運転支援装置はさらに、自車の走行速度を判定する速度判定手段を含み、前記倍率決定手段は、自車の走行速度に基づき倍率を決定することができる。運転支援装置はさらに、道路標識データに含まれる文字サイズを判定するサイズ判定手段を含み、前記倍率決定手段は、文字サイズに基づき倍率を決定することができる。好ましくは前記表示手段は、道路標識に重複するように前記道路標識データを自車のフロントガラス上に表示する。
【0009】
本発明に係る撮像データを用いた道路標識の表示方法は、撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、加工された道路標識データを表示するステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像データから得られた道路標識データを少なくともユーザの視力情報に応じた倍率で表示するようにしたので、ユーザは、肉眼で道路標識を見るよりも確実に道路標識を視認することができる。また、道路標識が遠くにあっても、これを拡大することで、肉眼で道路標識を視認できる距離に到達する前に、道路標識を視認することが可能となる。これにより、交差点案内等の進行方向の確認を正確にかつ迅速に行うことができ、ユーザの視力の負担を軽減し、より安全性の高い運転支援を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態に係る運転支援装置は、単体として車両に搭載することも可能であるが、好ましくは、車載用ナビゲーションシステムの一部として利用される。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。運転支援装置10は、ユーザからの指示等を入力する入力部20、少なくとも自車の前方を撮像する撮像部30、自車の速度や自車位置などの車両情報を取得する車両情報取得部40、道路標識等を視覚的に表示したり道路標識の案内内容を音声出力したりする出力部50、道路標識のフォーマット等の種々のデータを格納するデータベース60、運転支援装置の制御を行う制御部70、プログラムや撮像データ等を記憶する記憶部80、および各部を接続する内部バス90を含んで構成される。
【0013】
入力部20は、操作パネル、音声入力部、あるいはリモコン操作等を含み、ユーザは、入力部20を介して視力情報やその他の必要な情報を入力することができる。撮像部30は、自車の前方に取り付けられた少なくとも1つの撮像カメラを含み、撮像カメラにより自車の前方を撮像する。車両情報取得部40は、GPS衛星、車速センサ、ジャイロ、ミリ波レーダ等を用いて自車位置情報、車両の速度情報、あるいは必要に応じて目的物までの距離情報を取得する。出力部50は、例えばディスプレイやスピーカ等を含み、ナビゲーションシステムによる自車位置周辺の道路地図や誘導経路を表示したり、音声案内をする。また、表示方法は、ディスプレイに限らず、自車のフロントガラスにプロジェクタにより画像データを投射するものであってもよい。本実施例では、撮像部30で撮像された道路標識をフロントガラス上に表示するものとする。
【0014】
記憶部80は、入力部20によって入力されたユーザの視力情報や、撮像部30によって撮像された撮像データ、撮像データから抽出された道路標識データ、フロントガラスに表示するために道路標識データを拡大した拡大図データ等を記憶する。これらのデータは、必要に応じて記憶部80から読み出される。また、記憶部80は、運転支援装置が実行する種々のプログラムを格納することができる。例えば、撮像データにより撮像された道路標識を表示する道路標識表示プログラム等を含んでいる。制御部70は、これらのプログラムを実行し、運転支援装置の動作を制御する。
【0015】
図2は、道路標識表示プログラムの機能ブロック図である。道路標識表示プログラム100は、撮像部30によって撮像された撮像データを記憶部80に書込みこれを保持する撮像データ保持部110と、撮像データが道路標識を撮像したか否かを検出する道路標識検出部120と、道路標識が検出されたとき撮像データから道路標識領域のみを抽出する道路標識抽出部130と、ユーザの視力情報を記憶部80から読み出す視力情報取得部部140と、車両情報を取得する車両情報取得部150と、データベース60に格納された倍率決定テーブルと視力情報を参照して、道路標識データの倍率を決定する倍率決定部160と、倍率決定部で決定された倍率で道路標識データを拡大する道路標識拡大部170とを含んでいる。
【0016】
道路標識検出部120は、撮像データを画像解析することにより、道路標識が撮像されたか否かを検出する。第1の検出方法として、道路標識は、典型的に、背景色が青色(一般道路)又は緑色(高速道路)でありかつ矩形状であることから、撮像データ内に、一定のサイズ以上の青色又は緑色の矩形領域が認識されたとき、道路標識を撮像されたと判定することができる。また、第2の検出方法として、図3(a)ないし(d)に示すような道路標識フォーマット200〜230をデータベース60に格納しておき、これらの道路標識フォーマット200〜230と撮像データとをパターンマッチングして道路標識を検出することができる。さらには第1の検出方法と第2の検出方法の双方を用いて道路標識の検出を行うようにしてもよいし、これ以外の公知の画像処理技術を用いて行うようにしてもよい。
【0017】
図3(a)は、十字路の交差点の道路標識のフォーマット200である。白色の矢印で十字路の交差点の形と進行方向を示し、領域202には各進行方向にある都市名、地域名、施設名などが記載される。領域204には道路標識の設置位置から案内交差点までのおよその距離が記載される。図3(b)は、十字路の交差点の別の道路標識のフォーマット210であり、進行方向毎に標識が区切られている。各領域には、進行方向を示す白色の矢印と、各進行方向にある地名等を示す領域212と、交差点までの距離を示す領域214を含む。図3(c)は、図3(a)に示す道路標識のフォーマット200に、道路名を記載する領域222と領域224を加えたものである。領域222は、国道番号および県道番号を記載する。例えば国道1号線の場合は逆三角形の内部に「1」と表記し、県道134号線の場合には六角形の内部に「134」と表記する。領域224は、道路の具体的な名称や通称を記載する。図3(d)は、直進方向に在る地名情報と距離情報を示す道路標識のフォーマット230である。白色で示す矢印は直進を示し、領域232には地名情報等が記載され、領域234には領域232に記載されている場所までの距離情報が記載されている。
【0018】
道路標識抽出部130は、道路標識検出部120によって道路標識が検出されると、これに応答して撮像データから道路標識部分を抽出する。好ましくは、図3(a)ないし(d)に示す道路標識フォーマットを用い、撮像データから道路標識フォーマットと一致する領域を切り出す。但し、切り出しの方法は、必ずしも道路標識フォーマットを用いる必要はなく、撮像データに青色または緑色の矩形領域が含まれていれば、道路標識と推定し、切り出しを行うこともできる。切り出した道路標識データは、記憶部80に格納する。
【0019】
視力情報は、ユーザによって入力することができる。例えば、入力部20は、テンプレートなどを用意し、複数の視力(例えば、2.0、1.5、1.2、・・・0.1など)の中から所望の視力を選択させるようにしてもよい。また、視力情報としては、単なる視力の他に、近視、遠視などを入力しまたは選択できるようにしてもよい。さらに、入力部20は、視力判定画面を含み、視力判定画面によりユーザの視力を判定するようにしてもよい。例えば、各々の大きさが異なる複数の文字または図形を表示し、ユーザが肉眼にて視認することができる大きさの文字または図形を選択させ、ユーザの視力を判定し、これを視力情報とすることができる。
【0020】
倍率決定部160は、ユーザの視力情報を参照して道路標識データの倍率を決定する。好ましくは、図4に示すような視力情報と倍率との関係を規定した倍率判定テーブルを用いることができる。同図の倍率判定テーブルは一例であるが、各視力とそれに対応する推奨倍率が規定されている。この推奨倍率に合わせて道路標識データを拡大して表示すれば、ユーザは、遠くにあるような道路標識、あるいは小さな文字の道路標識であっても正確に視認することができる。このような推奨倍率は、ユーザ設定により変更できるようにしてもよい。また、倍率判定テーブルは、図4(b)に示すように、遠視や近視に応じて推奨倍率を変更するようにしてもよい。
【0021】
次に、本実施例の運転支援装置による撮像データを利用した道路標識の表示動作について図5のフローチャートを参照して説明する。まず、ユーザによって入力部20から視力情報が入力されると、その視力情報が記憶部80に記憶される(ステップS101)。次に、自車の走行の開始に伴い、撮像部30により自車の進行方向の撮像が開始される(ステップS102)。道路標識検出部120は、撮像データから道路標識の有無の検出を行い(ステップS103)、道路標識が検出されると、道路標識抽出部140は、撮像データをトリミングし、撮像データから道路標識に相当する道路標識データを抽出し、これを記憶部80に記憶する(ステップS104)。
【0022】
次に、倍率決定部160は、ユーザの視力情報に基づき道路標識データの倍率を決定する(ステップS105)。このとき、倍率決定部160は、車両情報取得部150から得られた自車の速度等の状況を考慮した係数を倍率に乗じるようにしてもよい。例えば、自車の速度が一定のしきい値以上であれば、道路標識に見難さを考慮し、係数を乗算して倍率をさらに大きくすることができる。
【0023】
倍率決定部160により道路標識データの倍率が決定されると、これに応答して道路標識拡大部170は道路標識データを倍率に応じて拡大する(ステップS106)。制御部70は、拡大された道路標識データをフロントガラス上に投影表示する(ステップS107)。好ましくは、肉眼で見える道路標識に道路標識データが重複するように道路標識データを表示する。
【0024】
制御部70は、道路標識データを表示してから一定距離を走行するまで道路標識データを表示させ、一定距離を走行したとき、道路標識データを更新させる(ステップS108)。つまり、道路標識に接近したときの撮像データから道路標識データを抽出し、これを拡大して表示する。そして、道路標識を通過したとき、すなわち撮像データから道路標識を検出することができなくなったとき、道路標識データを消去する。
【0025】
図6は、図5に示す倍率決定および道路標識データの拡大の詳細な動作フローを示す図である。まず、視力情報取得部140は、記憶部80からユーザの視力情報を取得し(ステップS201)、これを倍率決定部160へ提供する。倍率決定部160は、データベース60に格納されている倍率判定テーブル(図4を参照)を読み出し(ステップS202)、ユーザの視力情報に対応した推奨倍率を特定する。このとき、推奨倍率をディスプレイ等に表示し、ユーザによる最終決定を行うようにしてもよいし、あるいは、ユーザによる倍率変更の指定があればそれを優先してもよい。
【0026】
倍率決定部160による倍率が決定されると(ステップS203)、道路標識拡大部160は、記憶装置80から道路標識データを読み出し(ステップS204)、決定された倍率に従い道路標識データを拡大(必要であれば縮小)し、拡大された道路標識データを作成する(ステップS205)。拡大された道路標識データは記憶部80に記憶される(ステップS206)。
【0027】
次に、道路標識データの表示例について説明する。図7(a)は、本実施例により拡大された道路標識データ320をフロントガラス300へ表示したときの例であり、図7(b)は、フロントガラス300の前方に見える実際の道路標識310の例である。図7(a)に示すように、道路標識データ320は、実際の道路標識310が隠れるようにその上に拡大して表示されるため、運転者にとって特別な違和感はない。また、道路標識データ320は、視力に応じて拡大されているので、道路標識を見落としたり、誤認識することを防止することができる。他方、図7(b)では、実際の道路標識310が一定の大きさになるためには、道路標識310までもっと接近する必要がある。
【0028】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、ユーザの視力情報に加えて、それ以外の要因、例えば、道路標識までの距離、自車の速度などを考慮して倍率を決定する。
【0029】
図8は、第2の実施例による道路標識データの倍率決定動作を説明するフローチャートである。まず、視力情報取得部140により記憶部80からユーザの視力情報が取得され(ステップS301)、次いで、車両情報取得部150により車両情報が取得される(ステップS302)。車両情報は、自車から道路標識までの距離情報、自車の走行速度などの情報である。道路標識までの距離は、ミリ波レーダや赤外線センサなどを用いる他、撮像データに映し出された道路標識の大きさから算出することができる。
【0030】
次に、倍率決定部160は、倍率を決定するための倍率判定テーブルをデータベース60から読み出す(ステップS304)。図9は、第2の実施例による倍率判定テーブルの一例である。図9(a)の判定テーブルは、ユーザの視力情報と、自車位置から道路標識までの距離との関係から倍率を決定している。一例として、ユーザの視力を0.7から1.2までの6段階に分け、自車から道路標識までの距離を100mから600mの6段階に分ける。視力が低いほど、かつ道路標識までの距離が大きくなるほど、推奨倍率が高くなる。なお、推奨倍率は、ユーザ設定により変更することも可能である。
【0031】
図9(b)の倍率判定テーブルは、ユーザの視力情報と自車の走行速度との関係から倍率を決定している。一例として、視力を0.7から1.2までの6段階に分け、速度を時速40kmから140kmの6段階に分ける。視力が低いほど、かつ速度が速くなるほど、推奨倍率が高くなる。なお、道路標識までの距離と走行速度の双方を考慮して倍率を決定するようにしてもよい。例えば、図9(a)に示す推奨倍率に、速度が速くなるに従い大きくなる係数を乗じてもよいし、図9(b)に示す推奨倍率に、道路標識までの距離が大きくなるに従い大きくなる係数を乗じてもよい。
【0032】
倍率決定部160は、このような倍率判定テーブルを利用して倍率を決定し(ステップS305)、あとは、第1の実施例のときと同様に、倍率に応じて道路標識データが拡大されるように道路標識データを加工し、これを記憶する(ステップS306〜S308)。
【0033】
図10は、道路標識までの距離に応じた道路標識データの表示例である。図10(a)は、道路標識手前600m地点、図10(b)は、道路標識手前300m地点、図10(c)は道路標識手前100m地点である。仮に、ユーザの視力を0.7としたとき、図10(a)に示すように自車が道路標識の手前600m地点のとき、道路標識データ320は、2倍に拡大されてフロントガラス300上に表示される。自車が道路標識手前300m地点に達すると、図10(b)に示すように、道路標識データ320の倍率1.4倍に低下するが、自車が道路標識に接近している分だけ道路標識データが大きくなっている。このため、倍率が小さくなっても、道路標識データ320の表示サイズは、ほとんど変わらない。自車が道路標識手前100m地点に達すると、道路標識データの320の倍率は1.0倍となってフロントガラス300に表示される。
【0034】
また、道路標識までの距離を判定する場合には、道路標識の手前一定距離の時点で、道路標識データの表示を終了するようにしてもよい。道路標識に接近した場合には、実際の道路標識の方が違和感が少なく、道路標識までの距離感をつかみ易いためである。この場合、道路標識データの表示サイズが実際の道路標識のサイズとがほぼ等しくなったときに、道路標識データの表示から実際の道路標識へ切り替えることが望ましい。
【0035】
また、図10の表示例では、道路標識までの距離が小さくなるにもかかわらず、道路標識データの表示サイズがほぼ一定となるような例を示したが、これに限らず、道路標識に近づくとそれに応じて道路標識データの表示サイズが大きくなるようにし、道路標識までの距離感を与えるようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、道路標識データに表記された文字を切り出し、文字サイズを判定して倍率を決定するものである。文字サイズは、例えば、図3に示すような道路標識のフォーマットの文字等の記載領域202、212、222、224、232、234の大きさから推測することができる。あるいは、公知の文字認識手段を用いて、記載領域から文字の切り出しを行い、切り出した文字から文字サイズを推測してもよい。
【0037】
好ましくは倍率決定部160は、図11に示す倍率判定テーブルを用いることができる。このテーブルは、ユーザの視力と文字サイズとの関係から倍率を規定している。例えば、複数のしきい値S1、S2、S3(S1<S2<S3)を用意しておき、道路標識データから抽出された文字サイズMとしきい値S1、S2、S3を比較し、文字サイズMが、M<S1、S1<M<S2、S2<M<S3、S3<Mを判定する。文字サイズMが小さいほど推奨倍率が大きく設定され、道路標識データは大きく表示される。なお、第3の実施例を、第1および第2の実施例との組合せることで(例えば係数を乗じることで)、倍率を決定するようにしてもよい。
【0038】
上記実施例では、道路標示データの倍率を決定するに際して倍率判定テーブルを用いたが、これに限らず、演算処理等によって倍率を決定するようにしてもよい。さらに上記実施例では、道路標識の表示をプログラムにより実行する例を示したが、例えば図2に示すような機能ブロックは、ハードウエアによって実行することも可能であるし、ハードウエアとソフトウエアの双方によって実行することも可能である。
【0039】
さらに、道路標識データの倍率は、車両情報以外にも、雨天、晴天のような天候情報、朝昼夜のような時間帯情報、山間部やトンネルなどの地形情報などを考慮して決定してもよい。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求項の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例の道路標識表示プログラムの機能ブロック図である。
【図3】道路標識のフォーマット例を示す図である。
【図4】本実施例に係る倍率判定テーブルの一例である。
【図5】本実施例による撮像データを利用した道路標識表示の動作フローチャートである。
【図6】道路標識の倍率決定および拡大の詳細を示すフローチャートである。
【図7】図7(a)は拡大された道路標識データの表示例であり、図7(b)は実際の道路標識の例である。
【図8】本発明の第2の実施例による運転支援装置の道路標識表示の動作フローである。
【図9】図9(a)は、視力と道路標識までの距離との関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例、図9(b)は、視力と自車の走行速度との関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例である。
【図10】図10(a)は道路標識手前600m地点、図10(b)は道路標識手前300m地点、図10(c)は道路標識手前100m地点における道路標識データの表示例を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施例における視力と文字サイズとの関係から倍率を規定した倍率判定テーブルの例である。
【符号の説明】
【0042】
10:運転支援装置 20:入力部
30:撮像部 40:車両情報受信部
50:出力部 60:データベース
70:制御部 80:記憶部
90:内部バス 100:道路標識表示プログラム
110:撮像データ保持部 120:道路標識検出部
130:標識情報抽出部 140:視力情報取得部
150:車両情報取得部 160:倍率決定部
170:道路標識拡大部
200、210、220、230:道路標識のフォーマット
300:フロントガラス 320:拡大された道路標識データ
310:実際の道路標識
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の進行方向を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出する抽出手段と、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工する道路標識加工手段と、
加工された道路標識データを表示する表示手段と、
を有する運転支援装置。
【請求項2】
運転支援装置はさらに、ユーザの視力情報を入力する入力手段と、入力された視力情報を記憶する記憶手段とを含み、前記倍率決定手段は、前記記憶手段から読み出された視力情報に基づき前記道路標識データの倍率を決定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
運転支援装置はさらに、前記道路標識までの距離を判定する距離判定手段を含み、前記倍率決定手段は、道路標識までの距離に基づき倍率を決定する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転支援装置はさらに、自車の走行速度を判定する速度判定手段を含み、前記倍率決定手段は、自車の走行速度に基づき倍率を決定する、請求項1ないし3いずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項5】
運転支援装置はさらに、道路標識データに含まれる文字サイズを判定するサイズ判定手段を含み、前記倍率決定手段は、文字サイズに基づき倍率を決定する、請求項1ないし4いずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記表示手段は、道路標識に重複するように前記道路標識データを自車のフロントガラス上に表示する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
撮像データを用いた道路標識の表示方法であって、
撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、
前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、
加工された道路標識データを表示するステップと、
を有する道路標識の表示方法。
【請求項8】
撮像データを用いた道路標識の表示プログラムであって、
撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、
前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、
加工された道路標識データを表示するステップと、
を有する道路標識の表示プログラム。
【請求項1】
自車の進行方向を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された撮像データから道路標識の有無を検出する道路標識検出手段と、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出する抽出手段と、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定する倍率決定手段と、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工する道路標識加工手段と、
加工された道路標識データを表示する表示手段と、
を有する運転支援装置。
【請求項2】
運転支援装置はさらに、ユーザの視力情報を入力する入力手段と、入力された視力情報を記憶する記憶手段とを含み、前記倍率決定手段は、前記記憶手段から読み出された視力情報に基づき前記道路標識データの倍率を決定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
運転支援装置はさらに、前記道路標識までの距離を判定する距離判定手段を含み、前記倍率決定手段は、道路標識までの距離に基づき倍率を決定する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転支援装置はさらに、自車の走行速度を判定する速度判定手段を含み、前記倍率決定手段は、自車の走行速度に基づき倍率を決定する、請求項1ないし3いずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項5】
運転支援装置はさらに、道路標識データに含まれる文字サイズを判定するサイズ判定手段を含み、前記倍率決定手段は、文字サイズに基づき倍率を決定する、請求項1ないし4いずれか1つに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記表示手段は、道路標識に重複するように前記道路標識データを自車のフロントガラス上に表示する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
撮像データを用いた道路標識の表示方法であって、
撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、
前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、
加工された道路標識データを表示するステップと、
を有する道路標識の表示方法。
【請求項8】
撮像データを用いた道路標識の表示プログラムであって、
撮像カメラを用いて自車の進行方向を撮像するステップと、
前記撮像カメラにより得られた撮像データから道路標識の有無を検出するステップと、
道路標識が検出されたとき、撮像データから道路標識データを抽出するステップと、
少なくともユーザの視力情報に基づき前記道路標識データを表示するときの倍率を決定するステップと、
前記決定された倍率に基づき前記道路標識データを加工するステップと、
加工された道路標識データを表示するステップと、
を有する道路標識の表示プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−210432(P2009−210432A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53942(P2008−53942)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】
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