説明

運転支援装置

【課題】運転者に対して、駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報を提供したい。
【解決手段】生成部22は、車両に設置された少なくともひとつの撮像装置によって撮像された画像をもとに、車両周辺の鳥瞰図画像を生成する。予想軌跡記憶部30は、鳥瞰図画像に対応すべき車両の予想軌跡であって、車両のハンドルを操作して車両を移動させる場合の予想軌跡をハンドルの舵角を変えながら複数記憶する。合成部32は、予想軌跡記憶部30において記憶した複数の予想軌跡を鳥瞰図画像に重畳して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援技術に関し、特に車両に設置された撮像装置によって撮像した画像をもとに、運転を支援する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリア部分に車載カメラを設置し、車載カメラによって撮像した画像を運転者に提示することによって、車両後方の様子を運転者に知らしめるための運転支援装置が開発されている。さらに、運転支援装置は、画像だけではなく、ハンドルの舵角に応じてタイヤが進むと想定される予想軌跡も表示することがある。その際、ハンドルの舵角は、舵角センサから取得されてもよいが、舵角センサの価格等を考慮すると、舵角センサは使用されない方が好ましい。そこで、舵角センサを使用せず、かつ駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるために、ハンドルを末切りしたときの予測軌跡に対する接線が、画像に重ねて表示されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−11762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転者が駐車を実行する際、車両後方だけではなく車両前方や側方にも、障害物は存在する場合がある。その際、運転者の利便性を考慮すれば、車両外周における様子が一目で確認できる方が好ましい。また、運転者が駐車を実行する際、ハンドルを末切りする場合だけではなく、その他の角度にハンドルを回転させることもある。その際、ハンドルを末切りしたときの予測軌跡だけでは、駐車の支援には不十分である。
【0004】
本発明者はこうした状況を認識して本発明をなしたものであり、その目的は、運転者に対して、駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報を提供する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の運転支援装置は、車両に設置された少なくともひとつの撮像装置によって撮像された画像をもとに、車両周辺の鳥瞰図画像を生成する画像生成部と、画像生成部において生成した鳥瞰図画像に対応すべき車両の予想軌跡であって、車両のハンドルを操作して車両を移動させる場合の予想軌跡をハンドルの舵角を変えながら複数記憶する記憶部と、記憶部において記憶した複数の予想軌跡を画像生成部において生成した鳥瞰図画像に重畳して表示する表示部と、を備える。
【0006】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者に対して、駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、車載カメラにて撮像した画像を表示するとともに、駐車する際の予想軌跡も表示する運転支援装置に関する。駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報として、車両外周における様子が一目で確認できる情報と、ハンドルを末切りしたときの予測軌跡以外の予想軌跡とを提供するために、本実施例に係る運転支援装置は以下の処理を実行する。車両には、後方だけではなく前方にも、車載カメラが設置される。例えば、車両のフロント部分の左右およびリア部分の左右に、合計4つの車載カメラが設置される。運転支援装置は、複数の車載カメラのそれぞれにおいて撮像した画像を取得し、全周鳥瞰図画像を生成する。
【0009】
また、運転支援装置は、末切りだけではなく、複数種類のハンドル舵角のそれぞれに応じた予想軌跡を予め記憶する。ここで、予想軌跡は、全周鳥瞰図画像に対応するので、後輪だけではなく前輪に対する軌跡も含まれている。また、各舵角に応じた予想軌跡は、色が異なるなど、運転者にとって舵角が容易に認識できるように表示される。このように、全周鳥瞰図画像を使用することによって、後方だけでなく前方の安全性も考慮した誘導が可能になる。また、ハンドルの舵角に応じて予め記憶された予想軌跡を表示するので、舵角センサとの通信が不要で低コストの実現が可能になる。また、複数のハンドル舵角に応じた予想軌跡を複数表示するので、運転者に詳細な情報を提供できる。
【0010】
図1は、本発明の実施例に係る車両100の構成を示す。車両100は、運転支援装置10、撮像装置12と総称される第1撮像装置12a、第2撮像装置12b、第3撮像装置12c、第4撮像装置12d、表示装置14を含む。なお、車両100には、エンジン、シャーシ、ハンドル、ブレーキ等のような、車両100の本来の動作を実現するための構成要素が含まれている。しかしながら、図を明瞭にするために、図1は、運転を支援するための画像を表示するために必要な構成要素以外を省略する。また、図1に示された車両100の左側が前方に相当する。
【0011】
撮像装置12は、画像を連続的に撮像し、撮像した画像を運転支援装置10へ出力する。ここでは、画像そのものあるいは画像のデータを区別せずに「画像」という。第1撮像装置12aと第2撮像装置12bは、車両100のフロント部分に設置され、第3撮像装置12cと第4撮像装置12dは、車両100のリア部分に設置されている。なお、撮像装置12の数は「4」に限定されない。運転支援装置10は、各撮像装置12からの画像を入力する。運転支援装置10は、入力した画像を鳥瞰図画像に変換し、さらに複数の撮像装置12のそれぞれに対応した鳥瞰図画像を合成することによって、全周鳥瞰図画像を生成する。
【0012】
運転支援装置10は、ハンドルの舵角に応じて複数種類の予想軌跡を記憶しており、生成した全周鳥瞰図画像に複数種類の予想軌跡を重ねる。ここでは、複数種類の予想軌跡が重ねられた全周鳥瞰図画像を「合成画像」という。運転支援装置10は、表示装置14へ合成画像を出力する。表示装置14は、運転支援装置10からの合成画像を受けつける。また、表示装置14は、モニタを備えており、モニタに合成画像を表示する。なお、運転支援装置10と表示装置14とが一体的に構成されていてもよい。
【0013】
図2は、運転支援装置10の構成を示す。運転支援装置10は、フレームバッファ20と総称される第1フレームバッファ20a、第2フレームバッファ20b、第3フレームバッファ20c、第4フレームバッファ20d、生成部22、変換テーブル記憶部24、制御部26、操作部28、予想軌跡記憶部30、合成部32を含む。
【0014】
フレームバッファ20は、図示しない各撮像装置12に対応づけられて配置されている。例えば、第1フレームバッファ20aから第4フレームバッファ20dは、第1撮像装置12aから第4撮像装置12dにそれぞれ対応づけられている。フレームバッファ20は、撮像装置12からの画像を記憶し、生成部22へ画像を出力する。生成部22は、複数のフレームバッファ20から画像を受けつけ、各画像を鳥瞰図画像へ変換する。このような変換には、公知の技術、例えば特開2008−48345号公報に開示された技術を使用すればよいので、ここでは説明を省略する。
【0015】
変換テーブル記憶部24は、画像から全周鳥瞰図画像への変換の際に使用される変換式を記憶しており、生成部22は、制御部26を介して、変換テーブル記憶部24に記憶された変換式を参照することによって、鳥瞰図画像を生成する。また、生成部22は、鳥瞰図画像を合成することによって、全周鳥瞰図画像を生成する。なお、全周鳥瞰図画像の生成にも、特開2008−48345号公報に開示された技術が使用されればよい。このような全周鳥瞰図画像は、車両100周辺の鳥瞰図画像ともいえる。ここで、生成部22は、各フレームバッファ20から連続的に画像を入力するので、全周鳥瞰図画像を連続的に生成する。生成部22は、全周鳥瞰図画像を合成部32へ出力する。
【0016】
予想軌跡記憶部30は、生成部22において生成した全周鳥瞰図画像に対応すべき車両100の予想軌跡を記憶する。ここで、予想軌跡は、車両100のタイヤが通過すると予想される経路であり、車両100のハンドルを操作して車両100を後退させる場合の経路に相当する。また、予想軌跡は、ハンドル舵角を変えながら複数記憶されている。さらに、ひとつのハンドル舵角に対して、ハンドルを左右に回転させたときのふたつの予想軌跡が記憶されている。なお、予想軌跡の詳細は後述する。ここで、ハンドル舵角に応じて、予想軌跡の色は、異なっているものとする。
【0017】
合成部32は、生成部22から全周鳥瞰図画像を入力し、予想軌跡記憶部30から複数の予想軌跡を入力する。合成部32は、複数の予想軌跡を全周鳥瞰図画像に重畳することによって、合成画像を生成する。その際、合成部32は、全周鳥瞰図画像上の車両100の座標と、予想軌跡の座標とを対応づける。つまり、予想軌跡の起点が車両100となるように合成画像が生成される。なお、合成画像の詳細は後述する。合成部32は、合成画像を図示しない表示装置14へ出力することによって、表示装置14に合成画像を表示させる。
【0018】
操作部28は、ボタン等を含むように構成されており、運転者からの指示を受けつける。操作部28によって受けつけられる指示の一例は、合成画像の表示に関する指示である。操作部28は、受けつけた指示を制御部26へ出力する。制御部26は、運転支援装置10全体の動作を制御する。また、操作部28は、制御部26から入力した指示に応じて、生成部22、変換テーブル記憶部24、予想軌跡記憶部30、合成部32を制御する。以下では、制御部26の動作を(1)停車前、(2)後退前、(3)後退中、(4)予想軌跡の生成の順に説明する。
【0019】
(1)停車前
運転者が車両100を運転して駐車スペースの近傍に到着したとき、操作部28は、合成画像を表示すべき旨の指示を運転者から受けつける。これは、運転者がボタン押下することによって実現される。なお、ボタンが押し下げられるまで、表示装置14には、合成画像が表示されておらず、例えば、ナビゲーション画面等が表示されている。そのため、駐車前にボタン押下によって、表示装置14の表示が切りかえられるともいえる。なお、操作部28は、ボタンによって指示を受けつけずに、例えば、タッチパネル、音声認識などによって指示を受けつけてもよい。前述のごとく、操作部28は、受けつけた指示を制御部26へ出力する。
【0020】
制御部26は、操作部28からの指示を受けつけると、合成画像が生成されるように、生成部22、合成部32の動作を制御する。生成部22は、前述のごとく、全周鳥瞰図画像を生成して合成部32へ出力する。合成部32は、予想軌跡記憶部30から、複数の予想軌跡を抽出する。ここで、複数の予想軌跡は、互いに異なった後退時のハンドル舵角に対応する。例えば、ふたつのハンドル舵角を説明の対象とすると、ハンドル舵角αに対応した予想軌跡と、ハンドル舵角βに対応した予想軌跡が抽出される。なお、α<βとし、ハンドル舵角βは末切りに対応してもよい。合成部32は、全周鳥瞰図画像に複数の予想軌跡を重畳することによって、合成画像を生成する。
【0021】
その結果、合成部32は、予め設定したハンドル舵角α、βのそれぞれに対して、ハンドルを左方向に回転させた場合の予想軌跡と、ハンドルを右方向に回転させた場合の予想軌跡とを含むような合成画像を生成する。図示しない表示装置14は、合成画像を表示することによって、複数種類のハンドル舵角のそれぞれに対応した予想軌跡を表示する。そのため、運転者が後退の際にハンドルを末切りまで回転させない場合であっても、いずれかの予想軌跡が、運転者の好みに応じたハンドル舵角に近くなる。その結果、運転者の運転流儀に合わせた表示となるため、ハンドル操作の誤りが低減される。
【0022】
また、運転者における予想軌跡の視認性を向上させるために、合成部32は、合成画像を生成する際、ハンドル舵角ごとに予想軌跡の色を変更する。表示の色は、操作部28を介して、運転者によって設定されてもよい。制御部26は、操作部28からの設定内容を予想軌跡記憶部30に記憶させる。合成部32は、予想軌跡記憶部30から予想軌跡を抽出する際に、設定内容も抽出することによって、合成画像の生成に設定内容を反映させる。
【0023】
図3は、合成部32において生成される合成画像を示す。これは、表示装置14に表示された合成画像ともいえる。合成画像の中央付近に車両100が示されている。また、合成画像の下部に駐車スペース70が示されている。また、ハンドル右舵角β予想軌跡50と総称される第1ハンドル右舵角β予想軌跡50a、第2ハンドル右舵角β予想軌跡50b、第3ハンドル右舵角β予想軌跡50cも示される。ハンドル右舵角β予想軌跡50は、ハンドル舵角βだけハンドルを右方向に回転させた場合の予想軌跡に相当する。また、第1ハンドル右舵角β予想軌跡50aは、右側後輪の予想軌跡に相当し、第2ハンドル右舵角β予想軌跡50bは、左側後輪の予想軌跡に相当し、第3ハンドル右舵角β予想軌跡50cは、左側前輪の予想軌跡に相当する。
【0024】
さらに、ハンドル左舵角β予想軌跡52、ハンドル右舵角α予想軌跡54、ハンドル左舵角α予想軌跡56も同様に示される。車幅延長線58と総称される第1車幅延長線58a、第2車幅延長線58bは、ハンドルを切らずに車両100が後退した場合の軌跡である。図3では、ハンドル舵角αに対応したハンドル右舵角α予想軌跡54、ハンドル左舵角α予想軌跡56が実線で示され、ハンドル舵角βに対応したハンドル右舵角β予想軌跡50、ハンドル左舵角β予想軌跡52が点線で示されている。実線と点線とは、表示装置14における異なった色の表示に相当する。つまり、ハンドル舵角に応じて予想軌跡が異なった色によって表示されている。このような複数の予想軌跡を表示することによって、運転支援装置10は、前方や後方の障害物に接触することなく駐車スペース70に収まるような最適位置に誘導する。図2に戻る。
【0025】
(2)後退前
運転者が表示装置14に表示された合成画像を見ながら、駐車の開始となる位置にハンドルをまっすぐにして車両100を停止させたとき、つまり車両100の後退を開始させる前、操作部28は、ハンドル舵角や回転方向の選択の指示を運転者から受けつける。例えば、制御部26は、合成部32を介して、ハンドル右舵角β予想軌跡50からハンドル左舵角α予想軌跡56のいずれを選択するかの旨を表示装置14に表示する。運転者は、ボタンを操作することによって、ハンドル右舵角β予想軌跡50からハンドル左舵角α予想軌跡56のいずれかを選択する。また、操作部28は、左右ボタンの押下や、ボタン連続押し回数などをもとに、選択内容を認識してもよい。操作部28は、受けつけた選択内容を制御部26へ出力する。
【0026】
制御部26は、操作部28からの選択内容をもとに、ハンドル舵角や回転方向に関する情報を取得する。制御部26は、取得したハンドル舵角や回転方向をもとに、予想軌跡記憶部30に記憶した複数の予想軌跡のうちのひとつを選択する。つまり、取得したハンドル舵角や回転方向に応じた予想軌跡が選択される。制御部26は、選択した予想軌跡を合成部32へ出力する。合成部32は、複数の予想軌跡ではなく、選択された予想軌跡を全周鳥瞰図画像に重畳することによって、合成画像を生成する。なお、複数の予想軌跡を使用する場合と、選択された予想軌跡を使用する場合とを区別することなく、以下では合成画像と呼ぶ。合成部32は、前述のごとく、図示しない表示装置14へ合成画像を出力する。その際、制御部26は、図示しないスピーカから、「ハンドルをxx回左に切ってください」のような音声ガイダンス等を出力してもよい。
【0027】
図4は、合成部32において生成される別の合成画像を示す。ここで、図3に示された4種類の予想軌跡のうち、ハンドル左舵角β予想軌跡52が選択されたとする。その結果、図4のごとく、ハンドル左舵角β予想軌跡52、車幅延長線58が表示される。つまり、4種類の予想軌跡のうちのひとつが選択されて表示されている。このように、実際に後退をする際に、不要な予想軌跡を表示しないので、運転手による見間違いの発生を低減できる。図2に戻る。
【0028】
(3)後退中
制御部26は、操作部28からの選択内容を受けつけた後、タイマーを開始させることによって、操作部28からの選択内容を受けつけてからの期間を計測する。予め定めた期間が経過された後、つまり図4のような合成画像が表示装置14に表示されてから、一定の期間が経過した後、制御部26は、合成部32に対して、予想軌跡の重畳を中止させる。その結果、合成部32は、全周鳥瞰図画像に車幅延長線のみを重畳することによって、合成画像を生成し、表示装置14へ合成画像を出力する。
【0029】
図5は、合成部32において生成されるさらに別の合成画像を示す。図5では、図3において示されたすべての予想軌跡が消去され、車幅延長線58のみが表示されている。車両100の後退が開始されると、予想軌跡は一般的に不要になるので、全周鳥瞰図画像の視認性をよくするために、予想軌跡が消去される。図2に戻る。なお、制御部26は、図示しないシフト位置センサと接続されており、シフトが後退に入った旨をシフト位置センサから受けつける。その後、制御部26は、シフトが別の位置に入った旨をシフト位置センサから受けつけたときに、合成部32に対して、予想軌跡の重畳を中止させてもよい。あるいは、運転手によるボタンの再押下を操作部28が検出し、制御部26は、操作部28における検出がなされたときに、合成部32に対して、予想軌跡の重畳を中止させてもよい。
【0030】
(4)予想軌跡の生成
これまでは、運転手が車両100を駐車させる際の処理を説明した。つまり、運転支援装置10は、状況に応じて予想軌跡を変更しながら合成画像を生成していた。しかしながら、ここでは、以上の処理の前提として、予想軌跡の生成処理を説明する。操作部28は、運転手によるボタンの押し下げを検出することによって、予想軌跡の生成開始の指示を受けつける。操作部28は、予想軌跡の生成開始の指示を制御部26へ出力する。制御部26は、指示を受けつけると、生成部22は、全周鳥瞰図画像を連続的に生成するとともに、各全周鳥瞰図画像における車両100の位置を特定する。
【0031】
また、生成部22は、複数の全周鳥瞰図画像にわたって、特定した車両100の位置をつなげていくことによって、車両100の移動の軌跡を生成する。その際、生成部22は、各全周鳥瞰図画像中において、共通の目標物を特定し、当該共通の目標物を位置の基準として軌跡を生成する。生成した移動の軌跡のうち、後輪や前輪に対応した部分、つまり曲線が予想軌跡となる。そのため、表示装置14において表示される全周鳥瞰図画像上における車両100の実際の軌跡を取得し、取得した軌跡をもとに新たな予想軌跡が生成される。その際、運転手がハンドル舵角を希望する角度や回転に合わせて、車両100が後退することによって、当該ハンドル舵角に応じた予想軌跡が生成される。つまり、運転者によって通常回転されるハンドル舵角に応じた予想軌跡が生成される。さらに、生成部22は、生成した予想軌跡を新たな予想軌跡として、予想軌跡記憶部30に記憶させる。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
以上の構成による運転支援装置10の動作を説明する。図6は、運転支援装置10における表示手順を示すフローチャートである。図6は、前述の(1)から(3)の処理に相当する。操作部28は、ボタンの押し下げを検出する(S10)。合成部32は、全周鳥瞰図画像および複数の予想軌跡をもとに合成画像を生成し、合成画像を表示装置14に表示させる(S12)。操作部28が、ハンドル舵角の選択指示を受けつけなければ(S14のN)、合成部32は、同様の合成画像を生成し続ける。
【0034】
一方、操作部28が、ハンドル舵角の選択指示を受けつけると(S14のY)、制御部26は、指示に応じて予想軌跡を選択し(S16)、合成部32は、全周鳥瞰図画像および選択された予想軌跡をもとに合成画像を生成し、合成画像を表示装置14に表示させる。また、制御部26は、選択内容に応じたガイダンスをスピーカから出力する(S18)。一定期間経過していなければ(S20のN)、合成部32は、同様の合成画像を生成し続ける。一方、一定期間経過すれば(S20のY)、合成部32は、予想軌跡の表示を消去する(S22)。
【0035】
図7は、運転支援装置10における予想軌跡の生成手順を示すフローチャートである。図7は、前述の(4)の処理に相当する。操作部28は、ボタンの押し下げを検出する(S50)。生成部22は、全周鳥瞰図画像を連続的に記憶する(S52)。記憶が完了しなければ(S54のN)、ステップ52に戻る。一方、記憶が完了すれば(S54のY)、生成部22は、各全周鳥瞰図画像における車両100および共通の目標物を検出する(S56)。また、生成部22は、複数の全周鳥瞰図画像にわたって、車両100および共通の目標物を対応づけながら、車両100の軌跡を生成する(S58)。さらに、生成部22は、生成した車両100の軌跡を新たな予想軌跡として予想軌跡記憶部30に記憶する(S60)。
【0036】
本発明の実施例によれば、全周鳥瞰図画像を使用するので、車両の後方だけでなく、前方外周における予想軌跡を表示できる。また、前方外周における予想軌跡も表示するので、運転者に対して、駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報を提供できる。また、全周鳥瞰図画像を使用するので、車両の後方だけでなく、前方の障害物、駐車車両に対する安全も考慮できる。また、車両の後方だけでなく、前方の障害物、駐車車両に対する安全も考慮するので、より最適な停車位置に誘導できる。また、ハンドル末切りだけでなく、複数のハンドル舵角のそれぞれに対応した予想軌跡を表示させるので、車両の後方だけでなく、前方の駐車車両や障害物等に対しても接触する危険のない位置に車両を誘導できる。
【0037】
また、ハンドル末切りだけでなく、複数のハンドル舵角のそれぞれに対応した予想軌跡を表示させるので、運転者に対して、駐車開始を実行する際の位置合わせの精度を向上させるための情報を提供できる。また、複数の予想軌跡を表示させるので、最適停車位置の目処をつけやすくできる。また、直進の車幅延長線に加え、ハンドルを左右に一定量だけ回転させた場合の予想軌跡を複数本表示するので、ユーザに対して、後退・縦列駐車前の最適な停車位置に関する情報を提供できる。また、後退開始前にガイダンスの音声を出力するので、正確なハンドル操作を指示できる。また、実操舵角を利用しないので、舵角センサを不要にできる。また、舵角センサが不要になるので、より簡易なシステム構成を実現できる。また、舵角センサを搭載した車両においても、舵角センサから得られる舵角情報をもとにリアルタイムで予想軌跡を計算する必要がなくなるので、処理を軽減できる。
【0038】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
本発明の実施例において、合成部32は、予想軌跡として、タイヤが通過すべき経路を表示装置14に表示させる。しかしながらこれに限らず例えば、合成部32は、予想軌跡として、車両100が走行する走行面を表示装置14に表示させてもよい。具体的に説明すると、図3において、第1ハンドル右舵角β予想軌跡50aと第2ハンドル右舵角β予想軌跡50bとの間にも着色することによって、走行面が表示される。また、予想軌跡の表示位置について、タイヤの通過経路ではなく、車体の外側に余裕を持たせた分の幅を表示させてもよい。本変形例によれば、車両100が通過する部分を運転手に容易に認識させることができる。
【0040】
さらに、予想軌跡に対して、後退駐車開始前の最適位置に停車した後、後退時にハンドルを所定の舵角だけ回転させるまでに車両が移動する分が考慮されてもよい。つまり、ハンドルを所定の舵角に回転するまでの期間が、運転者固有の期間であるとすると、その間に車両がクリープ現象によって進む距離が特定されるので、予想軌跡の始点にその距離分のオフセットが加えられる。本変形例によれば、実際の軌跡に近い予想軌跡を表示できる。
【0041】
本変形例に加えて、操作部28は、予想軌跡の表示本数、予想軌跡の色、予想軌跡として経路の表示あるいは走行面の表示の切りかえに関する指示を受けつけてもよい。制御部26は、操作部28において受けつけた指示に応じて、合成部32での設定を変更してもよい。本変形例によれば、運転者にとって情報を認識しやすい画面を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係る車両の構成を示す図である。
【図2】図1の運転支援装置の構成を示す図である。
【図3】図2の合成部において生成される合成画像を示す図である。
【図4】図2の合成部において生成される別の合成画像を示す図である。
【図5】図2の合成部において生成されるさらに別の合成画像を示す図である。
【図6】図2の運転支援装置における表示手順を示すフローチャートである。
【図7】図2の運転支援装置における予想軌跡の生成手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 運転支援装置、 12 撮像装置、 14 表示装置、 20 フレームバッファ、 22 生成部、 24 変換テーブル記憶部、 26 制御部、 28 操作部、 30 予想軌跡記憶部、 32 合成部、 100 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された少なくともひとつの撮像装置によって撮像された画像をもとに、車両周辺の鳥瞰図画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部において生成した鳥瞰図画像に対応すべき車両の予想軌跡であって、車両のハンドルを操作して車両を移動させる場合の予想軌跡をハンドルの舵角を変えながら複数記憶する記憶部と、
前記記憶部において記憶した複数の予想軌跡を前記画像生成部において生成した鳥瞰図画像に重畳して表示する表示部と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記表示部において表示される鳥瞰図画像上における車両の実際の軌跡を取得し、取得した軌跡をもとに新たな予想軌跡を生成する軌跡生成部をさらに備え、
前記記憶部は、前記軌跡生成部において生成した新たな予想軌跡を追加して記憶することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
ハンドルの回転方向に関する情報を取得する取得部をさらに備え、
前記記憶部は、各ハンドルの舵角に対して、ハンドルを右回転させた場合の予想軌跡と、ハンドルを左回転させた場合の予想軌跡とを記憶し、
前記表示部は、前記記憶部において記憶した複数の予想軌跡の中から、前記取得部において取得した情報に応じた回転方向の予想軌跡を選択して、前記画像生成部において生成した鳥瞰図画像に重畳して表示することを特徴とする請求項1または2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−161936(P2011−161936A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146117(P2008−146117)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】