説明

運転支援装置

【課題】カーナビゲーション装置のモニタ上に表示される注意情報を示す警告マークを、運転者に有用な情報として取得させることができるようにする。
【解決手段】ヒヤリハットの発生した位置を示す警告マークMをモニタの地図上に表示させるに際し、自車両Iの通過する季節、時間帯が、ヒヤリハットの発生した季節、時間帯と異なる場合(S13,S14)、警告マークMを表示させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モニタ上の地図情報に注意情報の発生位置を示す警告マークを表示させる運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)を利用したカーナビゲーション装置が広く普及している。この種のカーナビゲーション装置では、GPSアンテナで受信した複数の人工衛星からの信号を基に現在位置を計算し、記憶手段に記憶されている現在位置周辺の地図データを展開してモニタ上に表示するようにしている。
【0003】
又、例えば特許文献1(特開2007−115079号公報)に開示されているように、モニタに表示された地図データ上に、車両走行に際して注意を促す注意情報を示す警告マークを表示し、自車両が当該警告マークの表示されているエリアに接近、或いは進入した際に警告を発して運転者に注意を促し、更に、事故に至らなくても「ヒヤリハット」と称される注意エリアに侵入したことを運転者に報知する運転支援装置も知られている。
【0004】
この警告マークを表示するエリアは、例えば、衝突事故が発生する頻度が大きい交差点や左折時の巻き込み事故が多発する交差点、或いは急カーブが存在する個所、路面凍結する恐れのあるエリア等、車両運転において運転者に注意を促すことが必要なエリアが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−115079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば路面凍結の恐れのある道路に警告マークが表示されている場合、夏場おいては有用な情報とはなり得ない。同様に、単に、衝突事故が発生する頻度が大きい交差点や左折時の巻き込み事故が多発する交差点に警告マークを表示させても、交通量が極端に少なくなる時間帯に通過する場合には、有用な情報とはなり得ない。
【0007】
しかし、上述した路面凍結の恐れのある道路や雪の吹きだまりが発生し易い道路等の情報は冬場では有用となる。
【0008】
更に、衝突事故が発生する頻度が大きい交差点や左折時の巻き込み事故が多発する交差点にあっては、事故の発生しやすい時間帯などの情報を詳細に表示することで、より有用な情報となりえる。
【0009】
しかし、上述した文献に開示されている技術では、モニタ上の注意情報の発生した位置に警告マークが常時表示されるため、運転者が有用な情報かどうかを逐一確認しなければならず、車両を運転中に煩雑な作業が要求されてしまう不都合がある。更に、モニタに表示されている地図上の注意情報が発生した位置の全てに警告マークが表示されるため、地図情報を視覚的に明確に認識する際の邪魔になり、モニタの表示内容が乱雑な印象を受けてしまう不都合がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、カーナビゲーション装置のモニタ上に表示される地図情報に対して注意情報の発生位置を示す警告マークを有用な情報として表示させることのできる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記自車両を急停止させたときの自車位置情報を注意情報として記憶する記憶手段と、前記注意情報の発生位置をモニタの地図上に表示させる表示駆動手段とを備える運転支援装置において、前記記憶手段に記憶される前記注意情報には該注意情報が発生したときの日時が記憶されており、前記表示駆動手段は、前記自車両が前記記憶手段に記憶されている注意情報の発生位置を通過するに際し、現在の季節及び時間帯が、該注意情報が発生した日時に基づいて設定した季節及び時間帯と一致している場合、前記モニタに表示されている地図上の該注意情報の発生位置に警告マークを表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モニタ上に注意情報の発生位置を示す警告マークを、自車両の通過する際の季節、及び時間帯が一致している場合に表示させるようにしたので、運転者は当該注意情報の発生位置を示す警告マークを有用な情報として取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両システムの概略構成図
【図2】ヒヤリハット位置情報記憶処理ルーチンを示すフローチャート
【図3】ヒヤリハット位置情報表示処理ルーチンを示すフローチャート
【図4】ヒヤリハットポイントに対応する点灯色の説明図
【図5】カーナビゲーション装置のモニタ上に警告マークを表示した状態の説明図
【図6】図5の警告マークの表示されているエリアを異なる方向から走行する状態の説明図
【図7】図5の警告マークの表示されているエリアに同じ方向から接近する状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。車両には各種電子制御装置(ECU)が搭載されている。各ECUは、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体に構成されている。
【0015】
図1に本実施形態で採用する電子制御装置を示す。符号1は位置情報取得手段としてのGPS測位装置(GPS_ECU)であり、GPS衛星(図示せず)からの信号をアンテナ1aで受信して自車両の現在位置を算出し位置情報を含む位置情報信号を生成する。
【0016】
プリクラッシュ制御装置(プリクラ_ECU)2は、図示しない前方認識カメラやミリ波レーダ等で検知した先行車や前方の立体障害物に自車両が衝突する危険性を常時判定しており、衝突の危険性が検出された場合、ブレーキアクチュエータ3に動作信号を出力しブレーキを作動させて、車両を緊急停止させる。
【0017】
車両制御装置(車両制御_ECU)4は、前後加速度(G)センサ4aからの検出信号に基づき、運転者が急ブレーキ操作を行って急停止させたか否かを調べる。
【0018】
又、表示駆動手段としての機能を備えるカーナビゲーション制御装置(カーナビ_ECU)5は、GPS_ECU1で求めた自車両の位置と自律航法による位置推定とを併用して、地図データから抽出した道路地図の道路と車両の位置とを対応づけるマップマッチング法により現在位置を設定する。この地図データは、HDDやCDやDVD等の記憶手段6に格納されている道路地図のデータベースから読込む。そして、モニタ7上に、カーナビ_ECU5から送信される表示信号に基づき、地図、自車位置マーク、誘導経路、その他の種々のメッセージを表示する。又、カーナビ_ECU5から送信されるオーディオ信号に基づいて、スピーカ8から誘導案内メッセージ等が音声出力される。尚、これら各ECU1,2,4,5が、CAN(Controller Area Network)通信等の車内通信回線8を通じて相互通信可能に接続されている。
【0019】
更に、カーナビ_ECU5では、プリクラ_ECU2でブレーキアクチュエータ3を動作させて緊急停止させたとき、及び車両制御_ECU4で、運転者の急ブレーキ操作を検出したときをヒヤリハットの発生と判定し、その日時、及び位置を記憶すると共に、モニタ7に表示されている地図上に注意情報を示す警告マークMを表示する。
【0020】
カーナビ_ECU5で実行されるヒヤリハット情報(注意情報に相当する)の記憶処理、及びこのヒヤリハット情報の表示処理は、具体的には、図2、図3に示すフローチャートに従って行われる。
【0021】
先ず、図2に示すヒヤリハット位置情報記憶処理ルーチンについて説明する。このルーチンでは、ステップS1で、ヒヤリハットが検出されたか否かを、上述したプリクラ_ECU2、及び車両制御_ECU4からの信号に基づいて判定し、ヒヤリハットが検出された場合、ステップS2へ進み、検出されなかった場合、そのままルーチンを抜ける。
【0022】
ステップS2へ進むと、GPS_ECU1でGPS信号(及び自律航法)に基づいて算出した現在地の位置座標、及び位置座標の移動に基づいて求めた自車両の進行方向を読込む。又、ステップS3で、現在の日時情報を読込む。
【0023】
そして、ステップS4でヒヤリハット情報として、発生位置を示す位置座標データ、進行方向データ、及び日時データを記憶手段6に記憶する。
【0024】
次いで、ステップS5へ進み、記憶手段6を検索して、同一座標データ上に過去のヒヤリハット位置情報が記憶されているか否かを調べ、記憶されている場合は、ステップS6へ進み、当該座標のデータポイントPnをインクリメントして(Pn←Pn+1)、ルーチンを抜ける。一方、過去のヒヤリハット位置情報がない場合は、ステップS7へ分岐し、当該座標のデータポイントPnを1でセットして(Pn←1)、ルーチンを抜ける。
【0025】
この記憶手段6に記憶したヒヤリハット情報は、図3に示すヒヤリハット位置情報表示処理ルーチンにおいて読込まれる。
【0026】
このルーチンでは、先ず、ステップS11で、モニタ7に表示されているカーナビ_ECU5から送信されて表示されている地図データの位置座標上に対応するヒヤリハット位置座標が、記憶手段6に記憶されているか否かを調べ、記憶されてない場合は、そのままルーチンを抜ける。一方、対応するヒヤリハット位置情報が記憶されている場合は、ステップS12へ進む。
【0027】
ステップS12へ進むと、現在の日時及び自車両の進行方向を読込み、ステップS13へ進み、記憶手段6に記憶されているヒヤリハット情報と、季節、及び時間帯が一致しているか否かを調べる。季節は、例えば1年を春夏秋冬の四季に区分し、該当する月で判断する。又、時間帯は、例えば早朝、日中、夜間で区分する。そして、一致している場合はステップS14へ進み、一致していない場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0028】
ステップS14へ進むと、自車両の進行とヒヤリハット情報に記憶されているヒヤリハット発生時の車両の進行方向とが一致しているか否かを調べる。そして、一致している場合は、ステップS15へ進み、一致していない場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0029】
ステップS15へ進むと、当該ヒヤリハット情報に付されたデータポイントPnを読込み、ステップS16へ進み、このデータポイントPnに応じた色でヒヤリハット位置座標上に注意情報を示す警告マークMを表示させる。本実施形態では、ヒヤリハットの注意レベルを発生頻度に応じて段階的に設定している。すなわち、図4に示すように、データポイントPnが頻度n1(例えば、2)未満の場合は、頻度が少ないので注意レベルを最も軽い緑色に設定する。又、データポイントPnが頻度n1以上で頻度n2(例えば4)未満の場合は、注意レベルを黄色に設定し、やや注意すべきであることを運転者に知らせる。更に、データポイントPnが頻度n2以上で頻度n3(例えば6)未満の場合は、注意レベルを赤色に設定し、要注意であり徐行運転が必要であることを運転者に知らせる。又、データポイントPnが頻度n3以上の場合は、注意レベルを赤色点滅の警告マークMとし、最徐行が必要であることを運転者に知らせる。
【0030】
その後、ステップS17へ進み、状況情報の要求があるか否か調べられ、要求がない場合はそのままルーチンを抜ける。一方、要求がある場合は、ステップS18へ進み、過去の状況情報を表示してルーチンを抜ける。状況情報の要求は、運転者がカーナビゲーション装置のスイッチを操作して状況表示モードを選択することで自動実行となる。従って、状況表示モードを選択しなかった場合は、状況情報の要求がないと判定される。
【0031】
以上の結果、例えば図5に示すように、自車両Iが非優先道路から優先道路に進入しようとした場合、このT字路の交差点位置を示す座標上に、過去のヒヤリハット情報が存在している場合であって、進行方向、季節、時刻が一致していれば、当該交差点に警告マークMが、データポイントPnに応じた色で表示される。従って、運転者は警告マークMの点灯を認識するに際し、その表示色で当該警告マークMの危険レベルを同時に認識することができる。そして、当該交差点を自車両Iが通過すれば、進行方向が相違するため、警告マークMは非表示となる。
【0032】
一方、図6に示すように、自車両Iが同一の地域を異なる方向に走行している場合(図においては優先道路を走行)、進行方向が相違しているため、前述の交差点に警告マークMは表示されない。更に、図7に示すように、図5に示す非優先道路を遠方から優先道路に向かって走行している場合、季節、日時が一致してれば、進行方向が一致しているため、T字路の交差点に警告マークMが表示される。その際、例えば、運転者が自車両Iを、優先道路との交差点の手前で、図の矢印で示すように右折させた場合、進行方向が異なるため、警告マークMは非表示となる。
【0033】
又、上述したステップS17で状況情報表示が要求されていると判定した場合、ステップS18で表示される状況情報表示は、例えば警告マークMが表示されている部位の近傍に、過去に発生した当該位置座標上の全てのヒヤリハットの日時、進行方向が表示される。
【0034】
このように、本実施形態によれば、ヒヤリハット情報が季節毎、時間帯毎、及び進行方向別に表示されるため、自車両が異なる季節に走行し、或いは異なる時間帯で走行し、或いは進行方向が異なっている場合は、注意情報を示す警告マークMが非表示となるため、モニタに表示される地図情報が煩雑化せず、表示される警告マークMを有用な情報として取得することができる。従って、例えば路面凍結の恐れのある道路や雪の吹きだまりを原因とするヒヤリハット情報は、冬季以外は表示されず、運転者に与える煩わしさを軽減することができる。
【0035】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば警告マークで表示する注意レベルを、この警告マークの大きさで表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1…GPS測位装置
5…カーナビゲーション装置、
6…記憶手段、
7…モニタ、
I…自車両、
M…警告マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記自車両を急停止させたときの自車位置情報を注意情報として記憶する記憶手段と、
前記注意情報の発生位置をモニタの地図上に表示させる表示駆動手段と
を備える運転支援装置において、
前記記憶手段に記憶される前記注意情報には該注意情報が発生したときの日時が記憶されており、
前記表示駆動手段は、前記自車両が前記記憶手段に記憶されている注意情報の発生位置を通過するに際し、現在の季節及び時間帯が、該注意情報が発生した日時に基づいて設定した季節及び時間帯と一致している場合、前記モニタに表示されている地図上の該注意情報の発生位置に警告マークを表示させる
ことを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶されている前記注意情報には自車両の進行方向が記憶されており、前記表示駆動手段は前記自車両の進行方向が該注意情報に記憶されている進行方向と異なる場合、前記警告マークを前記モニタに表示させない
ことを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記表示駆動手段は、前記モニタに表示する前記警告マークを、同一位置での前記注意情報の発生頻度に応じて異なる色或いは大きさで表示させる
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記表示駆動手段は、状況情報の表示要求がある場合は前記モニタに前記注意情報の発生日時を表示させる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−73181(P2012−73181A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219655(P2010−219655)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】