説明

運転状態判断装置

【課題】本発明は、運転中に運転手のシートに作用する圧力分布を検出することにより運転手の覚醒状態を適切に判断することが可能な運転状態判断装置を提供する。
【解決手段】本発明の運転状態判断装置では、少なくとも運転手のシートバックおよびシート座部に作用する圧力分布を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段により検出された圧力分布の変化に基づいて運転者の覚醒状態を判断する判断手段とを備えている。また、
前記判断手段は、検出された圧力分布の変化に周期性を有するか否かに基づいて運転者の覚醒状態を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中に運転手のシートに作用する圧力分布を検出することにより運転手の覚醒状態を適切に判断することが可能な運転状態判断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転中の運転手が非覚醒状態に陥る所謂居眠り運転は交通事故の大きな要因である。したがって、従来よりこの居眠り運転を効率よく防止し得る装置の開発が求められてきた。とりわけこのような居眠り防止の装置の開発にあたっては、居眠りと称される交通事故の要因となり得る非覚醒状態とはどのような状態であるかを知得し、この知得に基づいて適正に居眠り状態を検出する必要がある。
【0003】
例えば、カメラにより撮影した運転手の頭部の画像に対する画像認識を行って運転手の覚醒状態を判断する装置が存在する(特許文献1)。具体的には、不審者侵入防止等のために既に設置されている室内カメラを活用して撮影された運転手の頭部の画像データからよそ見や居眠りを検出する方法である。
【0004】
また、他の例として運転手のシートに作用する圧力の低下によって居眠り状態を検出する装置も存在する(特許文献2)。具体的には、操舵ハンドルに作用する運転手の把持力や運転手のシートに作用する圧力によって運転手の運転姿勢を検出し、居眠りか否かの判断を行う方法である。また、居眠り状態の検出・判断を目的とするものではないがシートに作用する圧力から運転手の運転姿勢を検出することで脇見運転を回避する装置も存在する(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置の場合、運転手の視線方向や顔の傾きの挙動から覚醒状態を判断しており、正常な状態の頭部挙動と居眠りのような異常な状態の頭部挙動との区別が困難であるため誤検出の可能性がある。また、特許文献1の装置の場合、そもそも室内カメラを設置していない車両や新たな室内カメラの設置によるコストアップを望まない車両の場合には適用することができない。
【0006】
また、特許文献2の装置の場合も、運転手のシートに作用する圧力が低下しただけで居眠り状態を判断することとなり誤検出の可能性が高い。これに対して特許文献3の装置の場合、脇見運転とはいかなるものかという制御ロジックの構築がなされ、このロジックの一部として運転手のシートに作用する圧力条件を使用するが、居眠り状態に代表する非覚醒状態の検出には異なるロジック構築が必要とされるものであり特許文献3の装置を代替することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−62911号公報
【特許文献2】特開平4−78622号公報
【特許文献3】特開2000−172965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、運転手のシートに作用する圧力分布の変化に注目し、この圧力分布の変化を検出することで運転者の覚醒状態を判断することを可能とする運転状態判断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の運転状態判断装置は、少なくとも運転手のシートバックおよびヘッドレストに作用する圧力分布を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段により検出された圧力分布の変化に基づいて運転者の覚醒状態を判断する判断手段と、を備えている。
【0010】
運転者が所謂居眠り状態に陥ると特有の挙動がなされることが知られている(一般的に「コックリコックリする」と称される状態である)。このような状態のときの運転手の挙動に周期性があることが知得された。本発明の運転状態判断装置では、この周期性のある運転手の挙動が表れるような状態こそが居眠りを代表とする危険な「非覚醒状態」に至ったものであるとする。具体的に本運転状態判断装置は、運転手のシートに作用する「圧力分布の変化」を検出し、この変化に「周期性」があるか否かを判断することで危険な「非覚醒状態」を判断することができる。
【0011】
また、本発明の運転状態判断装置では運転手のシートに作用する圧力分布のうち「シートバックおよびシート座部」の圧力分布変化の検出を行うだけで十分であることを知得し、これに基づいて運転手の「覚醒状態」を判断している点で運転手が「非覚醒状態」であるか否かの検出における簡易明確な制御構成を提供できる点で有利である。
【0012】
また、本発明の運転状態判断装置における前記判断手段は、検出された圧力分布の変化に周期性を有するか否かに基づいて運転者の覚醒状態を判断するものであることが好ましい。
【0013】
この運転状態判断装置では、運転手が「非覚醒状態」であるか否かの判断のうえで圧力分布の変化に「周期性」があるか否かを条件とすることとしている。運転状態判断装置における制御ロジックとして圧力分布の変化の周期性を条件とすることで運転手が「非覚醒状態」であるか否かの検出において明確な制御構成を提供できる点でさらに有利である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の運転状態判断装置によれば、運転手のシートに作用する圧力分布の変化に注目し、この圧力分布の変化を検出することで運転手の覚醒状態を判断することが可能となる運転状態判断装置を提供し、簡易明確な制御装置により運転手の覚醒状態(居眠り状態)を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の運転状態判断装置及びその周辺装置の一例を示すブロック図である。
【図2】図1の運転状態判断装置の詳細の一例を示したブロック図である。
【図3】運転手がシートに座った状態を模写した概略図である。
【図4】図2のブロック図に示す判断手段の詳細を示すブロック図である。
【図5】図4の覚醒状態判断手段で実行される居眠り判断工程(Aパターン)を示すフロー図である。
【図6】図5の居眠り判断工程を示したフロー図の続きである。
【図7】各圧力センサからの圧力分布の変化を示す一例である。
【図8】シート座部に作用する臀部近傍の圧力分布を示した模式図であり、(a)は通常時、(b)は居眠り時を示している。
【図9】図4の覚醒状態判断手段で実行される居眠り判断工程(Bパターン)を示すフロー図である。
【図10】図9の居眠り判断工程を示したフロー図の続きである。
【図11】各圧力センサからの圧力分布の変化を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図1は本発明の運転状態判断装置10及びその周辺装置の一例を示すブロック図であり、図2は図1の運転状態判断装置10の詳細の一例を示したブロック図である。また、図3では運転手がシートに座った状態を模写した概略図である。
【0017】
図1に示すように本運転状態判断装置10は、まず運転手のシート15に設置された圧力センサ16からの個々の圧力信号を受信する。図3に示すように車両の走行中に運転手11はシート15に担持されている。具体的にはシート15は運転手11の各部位を担持し、頭部11cはヘッドレスト15c、背部11aはシートバック15a、臀部11bはシート座部15bに担持されている。また、ヘッドレスト15c、シートバック15a、シート座部15bの中には、それぞれ頭部圧力センサ16c、背部圧力センサ16a、座部圧力センサ16bが配設(内蔵)されており、作用する圧力を検出する。但し、圧力センサ15は頭部、背部、座部に全て必要というわけではなく後述の居眠り判断ロジックに応じて決定される。
【0018】
再び図1に戻ると、背部圧力センサ16a、座部圧力センサ16b、頭部圧力センサ16cからの圧力信号は運転状態判断装置10に送信される。図2に示すようにこの運転状態判断装置10は圧力分布検出手段12と判断手段14とを有している。圧力分布検出手段12は圧力センサ16から受信した圧力信号から圧力ピークを検出し、設定する。
【0019】
具体的には、シートバック15aに配設される背部圧力センサ16aの場合、シートバック15aの左右各1箇所、好ましくはこれが上下に各1箇所、配設され(すなわち背部に4箇所配設)、各箇所の圧力ピーク値とその位置とを検出する。また、シート座部15bに配設される座部圧力センサ16bの場合、背部圧力センサ16aと同様にシート座部15bの左右各1箇所、好ましくはこれが前後に各1箇所、配設され(すなわち座部に4箇所配設)、各箇所の圧力ピーク値とその位置とを検出する。さらに、ヘッドレスト15cに配設される頭部圧力センサ16cの場合、ヘッドレスト15cに1箇所配設され、その圧力ピーク値とその位置とを検出する。なお、この圧力センサ16は汎用のシート状のものでよい。また、検出される圧力ピークはノイズを防止するためにもある程度の領域をもっており、所謂面圧と称される程度の広さをもっていてもよい。
【0020】
また、圧力分布検出手段12からの圧力データは判断手段14によりそれぞれの判断がなされる。図4のブロック図に示すように判断手段14は、通常姿勢判断手段141と、覚醒状態判断手段142と、車速判断手段143と、マッサージモード選択手段144とを有している。まず、通常姿勢判断手段141において居眠りをしていない通常状態の運転姿勢(通常運転姿勢)を判断・記憶しておく。この通常運転姿勢の判断は2つの視点でなされる。まずは各個人特有の通常運転姿勢の設定である。1つは上記圧力分布検出手段12で検出された各圧力ピークの圧力値と位置とから通常運転姿勢として設定する。具体的には、各圧力センサ16a〜16cで検出された圧力ピークの位置およびその圧力値と、左右に配設された背部圧力センサ16や座部センサ16bの圧力ピーク位置の間の距離、上下に配設された背部圧力センサ16や座部センサ16bの圧力ピーク位置の間の距離で各個人の通常運転姿勢を設定する。もう1つは、圧力ピークの出現が長い圧力値とその位置とを設定することで時間的に一番多い姿勢を通常運転姿勢と判断することとしている。
【0021】
次に覚醒状態判断手段142では運転手11の覚醒状態を判断する、すなわち居眠り状態にあるか否かを判断する。この覚醒状態判断手段142ではシート15に作用する圧力分布の時間的変化から判断するが、この判断では、判断の前提条件が設定される。例えば、
(1) 運転開始から所定時間連続運転している。
(2) (1)の条件は満たさないが今回の運転より前の運転で所定時間以上運転している。
(3) 今回の運転より前の運転で居眠り判断がなされている。
などがあり、このような場合には特に居眠り状態に陥りやすいため居眠り判断の検出レベルを高く設定してもよい。
【0022】
また、居眠り判断の検出レベルの設定を、車速判断手段143を用いて車両の速度に依存させる場合もある。この場合、車速判断手段143は、速度センサ18からの車速信号18(図1参照)を受信して車速を複数のレベルに分類し、車速が大きいレベルになるほど居眠りと判断するように居眠り判断の検出レベルを設定する。車速が大きいほど大きな危険を伴うため居眠りと判断されやすいようにしている。
【0023】
次に覚醒状態判断手段142に戻って具体的な覚醒状態(居眠り状態)の判断概念について説明する。まず、シートバック15a、シート座部15b、ヘッドレスト15cで検出された圧力分布と覚醒状態との関係についての考え方を説明する。
【0024】
まず、シートバック15aの圧力分布の変化のみから覚醒状態を判断する場合がある。これは居眠り状態においては運転手11の背部11aがシートバック15aから離れる可能性が高いということに基づいたものである。さらに好ましくは、シートバック15aの圧力分布の変化のうち前述するシートバック15aの上部左右に配設された背部圧力センサ16aからの圧力分布に注目し、シートバック15aの上部の圧力分布が左右方向に変化したか否かに基づいて運転手11の覚醒状態を判断する。この判断によれば、居眠りをすると運転手11の背部11aの上部が左右に揺れるという現象を捉えることができ、運転手11の覚醒状態をより正確に判断できる。
【0025】
また、シート座部15bの圧力分布の変化のみから覚醒状態を判断する場合も考えられる。これは居眠り状態においては運転手11の臀部11bの重心がシート座部15bで移動する可能性が高いということに基づいたものである。さらに好ましくは、前述するようにシート座部15bの前後部に配設された座部圧力センサ16bからの圧力分布に注目し、シート座部15bの圧力分布が前後方向に変化したか否かに基づいて運転手11の覚醒状態を判断する。この判断によれば、居眠りをすると運転手11の臀部11bの重心が前後方向に揺れるという現象を捉えることができ、運転手11の覚醒状態をより正確に判断できる。
【0026】
なお、図8を参照すればシート座部15bにおける臀部11bの圧力分布が車両前方に移動する様子を示した圧力分布模式図である。ハッチング処理がされた部分が圧力ピークを示している。
【0027】
また、覚醒状態判断手段142でさらに正確に居眠り状態を判断するためには、シートバック15aやシート座部15bでの圧力分布の変化に周期性がある、すなわち圧力分布の変化が所定時間内に何度か繰り返される、という条件が要求される。たまたま運転手11が居眠り状態に近い動作を行ったことを排除するためであり、同様の圧力分布の変化を繰り返すならば居眠り状態かそうでないかを確実に区別することができる。
【0028】
また、ヘッドレスト15cの圧力分布の変化の検出は必須ではないが要求されることもある。居眠り状態になるときに最初に動作するのは通常頭部11cであるからである。この場合、ヘッドレスト15cの圧力分布の変化は圧力値がゼロになるか否かで判断されることが通常である。
【0029】
ここで覚醒状態判断手段142において居眠り状態に陥っているか否かを判断するロジックの例をAパターンとBパターンとして詳細に説明する。第一にAパターンおける覚醒状態判断手段142の制御フローについては図5〜図6を、シートに作用する圧力分布の変化の時系列表示については図7を参照しつつ説明する。Aパターンは運転手11の頭部11cが前方に傾斜し、その後元に戻る動作を何回か繰り返す(反復する)状態を居眠り状態と判断するものである。まず、ヘッドレスト15cに作用する圧力が検出されるか否か判定される(S10)。これにより運転手11の頭部11cが前方に傾斜したことが判定される。図7の最上段ではヘッドレスト15cの圧力ピーク値がゼロに到達している様子がわかる。
【0030】
圧力が検出されない場合にはシートバック15aの上部の圧力ピークの圧力値(以下、「圧力ピーク値」と称する)が減少しているか否か判定される(S12)。これにより運転手11の背部11aがシートバック15aから前方に向かっていることが判定される。図7の上から2段目を参照すれば、シートバック15aの上部(背部11aの上側)の圧力ピーク値がヘッドレスト15cの圧力ピーク値に遅れて減少している様子がわかる。
【0031】
シートバック15aの上部の圧力ピーク値が減少したと判定されると、シート座部15bの圧力ピークの位置が前方に移動したか否かが判定される(S14)。これにより運転手11の体全体が前方に傾斜したことが判定される。圧力ピークの位置の前方移動はシート座部15bの後部の圧力ピーク値の減少またはシート座部15bの前部の圧力ピーク値の増加からも判定できる。図7の上から3〜4段目を参照すれば、シート座部15bの後部(臀部11bの後方)の圧力ピーク値がシートバック15aの圧力ピーク値に遅れて減少し、逆にシート座部15bの前部(臀部11bの前方)の圧力ピーク値がシート座部15bの後部(臀部11bの後方)の圧力ピーク値が増加している様子がわかる。
【0032】
さらに、上記一連の現象が所定時間以内(概ね数秒以内)に発生していることを判定する。すなわちS10〜S14の判定工程に要した時間t1が所定時間T1以内(t1≦T1)か否かを判定する(S16)。図7ではこのt1≦T1になる一例を示している。
さらに上記ヘッドレスト15c、シートバック15a、シート座部15bで検出された圧力ピーク値の変化率、すなわち圧力分布の変化率が緩やかであるか否かも判定される(S18)。居眠り状態では通常の運転姿勢よりも緩慢な動作になるからである。
【0033】
次に、変化した圧力分布が元に戻るまでの時間を設定する。具体的には、図7に示すように圧力ピーク値が変化してから元の圧力ピーク値に戻るまでの時間t2を計測する(S20)。この時間t2によって異なる居眠り判断がなされる。まず、圧力ピーク値が戻るまでの時間t2が所定時間T2より長いか否か(t2≧T2か否か)が判定される(S22)。t2が大きいということは圧力分布が変化した状態を長く継続したことであり、寝入ってしまった状態である。この状態になった場合は居眠りと判断される(S32)。
【0034】
また、圧力ピーク値が戻るまでの時間t2が所定時間T2より短い(t2≦T2)と判定された場合(S22)には、寝入ってしまったとまでは言えないが何度も繰り返す場合は居眠り状態になっていると考えられる。そこでこの考えに沿うように、まずは一連のS10〜S22の判定工程全体を繰り返した回数C1(反復回数C1)を1回加算して設定する(S24)。その後、S10〜S22の判定工程全体をN回以上繰り返したか否か、すなわち反復回数C1≧Nか否かを判定する。S10〜S22の判定工程全体をN回以上繰り返したと判定された場合、この繰り返した回数(反復回数)C1に要した時間t3が所定時間T3以内(t3≦T3)と判定された場合(S28)、覚醒・非覚醒を繰り返し、所謂「コックリコックリする」状態であり、居眠り状態と判断される(S32)。なお、S10〜S22の判定工程全体を繰り返した回数(反復回数)C1に要した時間t3が所定時間T3以上(t3≧T3)と判定された場合(S28)、反復回数C1を1回分減算する処理がなされる(S30)。
【0035】
第二にBパターンおける覚醒状態判断手段142の制御フローについては図9〜図10を、シートに作用する圧力分布の変化の時系列表示については図11を参照しつつ説明する。また、Bパターンは運転手11の頭部11cが左側に傾斜し、その後元に戻る動作を何回か繰り返す(反復する)状態を居眠り状態と判断するものである。まず、ヘッドレスト15cに作用する圧力が検出されるか否か判定される(S40)。図11の最上段ではヘッドレスト15cの圧力ピーク値がゼロに到達している様子がわかる。
【0036】
圧力が検出されない場合にはシートバック15aの背部上右側の圧力ピーク値が減少しているか否か判定される(S42)。これにより運転手11の背部11aがシートバック15aから左側に向かっていることが判定される。図11の上から2段目を参照すれば、シートバック15aの背部上右側の圧力ピーク値がヘッドレスト15cの圧力ピーク値に遅れて減少している様子がわかる。
【0037】
シートバック15aの背部上右側の圧力ピーク値が減少したと判定されると、続いてシートバック15aの背部上左側の圧力ピーク値が減少しているか否か判定される(S44)。図11の上から3段目を参照すれば、シートバック15aの背部上左側の圧力ピーク値がシートバック15aの背部上右側の圧力ピーク値に遅れて減少している様子がわかる。また、図11の2〜3段目に示すようにシートバック15aの背部上右側の圧力ピーク値の減少後よりも背部上左側の圧力ピーク値の減少後の方が圧力ピーク値が大きいことがわかる。運転手11が左側前方に傾斜すると背部右側の方がシートバック15aから離間する方向に向かうからである。
【0038】
次に、シート座部15bの左側での圧力ピーク点の前方移動とピーク値とが増加したか否かが判定される(S45)。これにより運転手11の体全体が左側に傾斜したことが判定される。図11の上から4段目を参照すれば、シート座部15bの左側(臀部11bの左側)の圧力ピーク値がシートバック15aの圧力ピーク値と略同時に大きく増加する様子がわかる。
【0039】
さらに、シート座部15bの圧力ピーク値の増加が判定されると、上記一連の現象が所定時間以内(概ね数秒以内)に発生していることを判定する(S46)。すなわちS40〜S45の判定工程に要した時間t4が所定時間T4以内(t4≦T4)か否かを判定する(S48)。図11ではこのt4≦T4になる一例を示している。上記ヘッドレスト15c、シートバック15a、シート座部15bで検出された圧力ピーク値の変化率、すなわち圧力分布の変化率が緩やかであるか否かも判定される(S48)。居眠り状態では通常の運転姿勢よりも緩慢な動作になるからである。
【0040】
次に、変化した圧力分布が元に戻るまでの時間を設定する。具体的には、図11に示すように圧力ピーク値が変化してから元の圧力ピーク値に戻るまでの時間t5を計測する(S50)。この時間t5の長さによって異なる居眠り判断がなされる。まず、圧力ピーク値が戻るまでの時間t5が所定時間T5より長いか否か(t5≧T5か否か)が判定される(S52)。t5が大きいということは圧力分布が変化した状態を長く継続したことであり、寝入ってしまった状態である。この状態になった場合は居眠りと判断される(S62)。
【0041】
また、圧力ピーク値が戻るまでの時間t5が所定時間T5より短い(t5≦T5)と判定された場合(S52)には、寝入ってしまったとまでは言えないが何度も繰り返す場合は居眠り状態になっていると考えられる。そこでこの考えに沿うように、まずは一連のS40〜S52の判定工程全体を繰り返した回数C2(反復回数C2)を1回加算して設定する(S54)。その後、S40〜S52の判定工程全体をN回以上繰り返したか否か、すなわち反復回数C2≧Nか否かを判定する(S56)。S40〜S52の判定工程全体をN回以上繰り返したと判定された場合、この繰り返した回数(反復回数)C2に要した時間t6が所定時間T6以内(t6≦T6)と判定された場合(S58)、覚醒・非覚醒を繰り返し、所謂「コックリコックリする」状態であり、居眠り状態と判断される(S62)。なお、S40〜S52の判定工程全体を繰り返した回数(反復回数)C2に要した時間t6が所定時間T6以上(t6≧T6)と判定された場合(S58)、反復回数C2を1回分減算する処理がなされる(S60)。
【0042】
また、上述するBパターンでは、運転手11の頭部11cが左側に傾斜し、その後元に戻る動作を何回か繰り返す(反復する)状態を居眠り状態と判断するものであるが、運転手11の頭部11cが右側に傾斜するケースでも左右に揺れるケースでも同様に考えられる。
【0043】
再び図1〜図2、図4に戻って説明する。図4に示すように本運転状態判断装置10の判断手段14は上述した通常姿勢判断手段141、覚醒状態判断手段142、車速判断手段143の他にマッサージモード選択手段144も存在する。本運転状態判断装置10では居眠り状態と判断された場合、検出レベル(上述)に応じて運転手11にマッサージを行うことで警告することとしている。マッサージによる警告は、検出レベルを低くして必要以上に居眠りと判断されるように設定しても警告音等に比べて運転手11に不快感がない点で有利である。この検出レベルに応じたマッサージの選択を判断手段14のマッサージモード選択手段144が行う。また図1を参照すれば本運転状態判断装置10は、モード選択スイッチ20からの信号を受信するが、マッサージモード選択手段144はモード選択スイッチ20からの信号に基づきマッサージモードを選択する処理も行っている。
【0044】
さらに運転状態判断装置10から判断信号は、制御駆動部22に送信される。その後、制御駆動部22において駆動信号に変換され、アクチュエータ24の駆動制御を行う。なお、アクチュエータ24は、背部のアクチュエータ24aと座部のアクチュエータ24bで構成され、それぞれシートバック15a、シート座部15bに内蔵される。
【0045】
以上、本発明の運転状態判断装置によれば、運転手のシートに作用する圧力分布の変化を検出することで運転手の覚醒状態を簡易明確な制御構成で判断することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の運転状態検出装置はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神と教示との範囲を逸脱しない他の変形例と改良例とが存在することは当業者に明白であろう。
【符号の説明】
【0046】
10 運転状態判断装置
12 圧力分布検出手段
14 判断手段
15 シート
15a シートバック
15b シート座部
15c ヘッドレスト
16 圧力センサ
16a 背部圧力センサ
16b 座部圧力センサ
16c 頭部圧力センサ
18 車速信号(速度センサ)
20 モード選択スイッチ
22 制御駆動部
24 アクチュエータ
141 通常運転姿勢判断手段
142 覚醒状態判断手段(居眠り判断手段)
143 車速判断手段
144 マッサージモード選択手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも運転手のシートバックおよびシート座部に作用する圧力分布を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段により検出された圧力分布の変化に基づいて運転者の覚醒状態を判断する判断手段と、を備えた運転状態判断装置。
【請求項2】
前記判断手段は、検出された圧力分布の変化に周期性を有するか否かに基づいて運転者の覚醒状態を判断する、請求項1に記載の運転状態判断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−164825(P2011−164825A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25399(P2010−25399)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】